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物理/静磁気と静磁場
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= 「 5.3 静磁気と静磁場 」 = 古代ギリシアでは、鉄を引き寄せる石として磁石はすでに知られていた。<br/> 磁石は互いに引き合ったり反発したりする。<br/> このような現象の根源となるものを磁気という。 ==磁石について== 磁石はN極とS極という2種の磁極を対で持つ[[wikipedia_ja: 磁気双極子|磁気双極子]]である。<br/> 2つの磁石のS極どうしを近づけたり、N極どうしを近づけると反發し、<br/> S極とN極を近づけると引き合う。<br/> 電荷と同じような性質をもつのである。<br/> そこで、かっては、静電気にならって、S極には負の磁荷が、N極には正の磁荷があり、<br/>これにより磁気作用が現れると考えられた。<br/> 磁荷の間にも、次項で説明するように、クーロンの法則が成り立ち、<br/> 磁荷は電荷と極めて類似した性質を持つ。<br/> しかし両者には、決定的な違いがある。<br/> それは、正の磁荷や負の磁荷が、<br/> 現在まで、単独では自然界に発見されず、実験でも作り出せていないことである。<br/> 例えば、磁石を、N極とS極に分けようと切断しても、<br/> N極のあるほうの切断面にS極が、S極のほうの切断面にはN極が現れてしまう。<br/> そこで現在では、次の仮説が正しいと考えられている。<br/><br/> '''仮説''' どのような物体中にも、<br/> N極だけ、あるいはS極だけの磁荷(単磁荷という)は存在せず、<br/> 必ず同じ大きさの正負の磁荷が対になって存在する。<br/> 従って、物体全体の磁荷は零になる。<br/><br/> 電磁気学は、この仮説のもとに、理論が作られている。<br/> 詳しくは *[[wikipedia_ja:磁石|ウィキペディア(磁石)]] *[[wikipedia_ja:磁荷|ウィキペディア(磁荷)]] === 磁荷や磁気現象の根源について === それでは、なぜ単独磁荷は存在しないのか、<br/> そもそも磁荷とは何者で、なぜ磁気現象は起こるのか。<br/> また磁気現象と電気現象の間には、どのような関係があるのだろうか。<br/> これらの疑問の解明への道は、エルステッドの実験で開かれた。<br/> ==== 磁気現象の根源==== エルステッドは、方位磁石を水平に置き、<br/> この真上に、この磁針と平行になるように導線を南北方向に水平にはり、<br/> 導線に南から北に向かう電流を流すと、<br/> 磁針が少し回転し、N極(正の磁荷)の磁針が西の方に移動するのを発見した。<br/> [[File:GENPHY00010503-01.pdf|right|frame|図 エルステッドの実験]] 電流は磁場を作るという事実が明らかになった。<br/> これが契機となり、電流の磁気作用が詳しく研究され、<br/> 磁石も原子の中の電荷(電子)の運動が原因であることが分かるなど、電荷の運動(電流)が磁気現象の根源であると認識されるようになった。<br/> 次項「5.4 電流と磁場」で説明する。 ==磁荷のクーロン則== S極どうしやN極どうしの磁荷は反発し合い、異種の磁荷どうしは引き合う。<br/> そこで、電荷にならってN極の磁荷の大きさは正、S極の磁荷の大きさは負の数で表すように決めた。<br/> 単磁荷は存在しないが、対になる磁荷の影響を小さくしたクーロンの実験により、<br/> 磁荷間の力についても、電荷間に働くクーロン力と同じ形の力が働くことが分かった。<br/><br/> '''磁荷のクーロン法則'''<br/> 位置ベクトル $\vec {r_1}$ にある磁荷 $m_1$ に、<br/> 位置ベクトル $\vec {r_2}$ にある磁荷 $m_2$ が及ぼす力 $\vec{F_{1,2}}$ は<br/> $\vec{F_{1,2}}=k_m \frac{m_1m_2}{r^2}\frac{\vec {r_1}-\vec {r_2}}{r}\qquad \qquad \qquad \qquad (1)$<br/> ここで $r=\|\vec {r_1}-\vec {r_2} \| \qquad $(磁荷間の距離) <br/> $\qquad k_m=\frac{10^7}{(4\pi)^2}=6.33\times 10^4[Nm^2/Wb^2]\qquad (2)$<br/> は比例定数。これは、次のように表されることが多い。<br/> $k_m=\frac{1}{4\pi \mu_0 }\qquad \qquad \qquad \qquad (3)$<br/> ここで、<br/> $\mu_0=\frac{1}{4\pi k_m}=\frac{4\pi}{10^7}=1.257\times 10^{-6}[Wb^2/Nm^2]\quad (4)$ *[[wikipedia_ja:クーロンの法則|ウィキペディア(クーロンの法則)]]の「3 磁荷に関するクーロンの法則」 ====磁荷の単位==== 磁荷のクーロンの法則、式(2)に基づき、<br/> 真空中に同じ大きさの磁荷A,Bを1m離して置いたときに、<br/> $6.33 \times 10^4[N] $の力を及ぼし合うとき、<br/> 磁荷の大きさを1Wb(1ウェーバ)ときめる。 *[[wikipedia_ja:ウェーバ|ウィキペディア(ウェーバ)]] ==磁場と磁力線== 電荷の場合と全く同じように、磁荷の間の力を近接作用としてとらえる。<br/> すると、磁荷によって周りの空間は磁気的に歪み(磁場あるいは磁界という)、<br/> ここに他の磁荷を置くと、その点の磁場によって力を受けると考えられる。<br/> 各点Pにおける磁場''$\vec{H}_P$''は、<br/> その点に置いた磁荷が受ける、単位磁荷(1Wb)当たりの磁気力で定義する。<br/> 従って、点Pに置いた磁荷 m の受ける力は、<br/> $\vec F=m \vec{H}_P\qquad \qquad \qquad \qquad (5)$<br/> で表せる(注参照)。<br/> この式から明らかなように、磁場の単位は[N/Wb] となる。<br/> (注)点Pの電荷qが電場から受ける力は$\vec F=q \vec{E}_P$だった。全く同じ形式である。<br/> ● 磁力線:N極の磁荷を正の電荷に対応させて考えると、<br/> 電場に対応して電気力線を考えたように、磁場にたいして'''磁力線'''を考えることができる。 ==磁場に対するガウスの法則== 磁場$\vec H$に対しても電場の時と同様な議論が行え、<br/> 次のようなガウスの法則が成り立つ。 <br/><br/> '''磁場に関するガウスの法則''';<br/> 任意の形状の立体Vの表面Sを貫いて出ていく磁力線の総数=0$\qquad \qquad (6)$<br/><br/> 証明<br/> 電場のガウスの法則の場合と完全に同じ議論により、<br/> 任意の形状の立体Vの表面Sを貫いて出ていく磁力線の総数=立体V内部の総磁荷/$\mu_0$<br/> V内部の磁荷の総和は常にゼロなので、(6)式が成立する。<br/> ==静磁荷の作る静磁場は保存力場== 磁石のような磁気双極子のつくる静磁場は、<br/> 静電力場と同じ議論ができて、保存力場であることが分かる。<br/> 空間に基準点を決めれば、<br/> この点から見た空間の各点の磁位(ポテンシャルエネルギー)も、<br/> 電位と全く同じように定められる。<br/> ===静磁荷の作る静磁場は保存力場=== しかし、電流がつくる磁場は保存力場にならない。<br/> これが磁場と電場の決定的違いである。<br/> これについては、次項「5.4 電流と磁場」で説明する。<br/>
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