非線形計画法
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- | =ポートフォリオセレクション= | + | =1次等式制約条件下の2次計画問題(ポートフォリオセレクション)= |
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- | <math>J( | + | <math>J(s) = s - \alpha s^2 , s \in [-\infty, \frac{1}{\alpha}] \qquad (3) </math> |
- | これは利益<math>l</math>が<math> | + | これは利益<math>l</math>が<math>s \lt \frac{1}{\alpha} </math> である間は単調増加であるが,<math>s</math>が<math>\frac{1}{\alpha} </math> |
に近づくにつれ,曲線の傾斜が0に近づく.この曲線は高い利益を期待できるものは値下がりによる損出の危険もあり, 損出の危険をさけるため過大な利益の期待はしないとの投資家心理を反映している. | に近づくにつれ,曲線の傾斜が0に近づく.この曲線は高い利益を期待できるものは値下がりによる損出の危険もあり, 損出の危険をさけるため過大な利益の期待はしないとの投資家心理を反映している. | ||
- | この評価関数<math>J</math>を用いて,「投資の最適化問題」を | + | この評価関数<math>J</math>と<math>(2)式</math>を用いて,「投資の最適化問題」を |
制約条件 | 制約条件 | ||
<math>0 \leq x_1, 0 \leq x_2,x_1+x_2=w</math> | <math>0 \leq x_1, 0 \leq x_2,x_1+x_2=w</math> | ||
- | + | のもとに確率変数 | |
+ | <math>J(S)= S - \alpha S^2</math> | ||
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を最大化する問題として扱う. | を最大化する問題として扱う. | ||
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を用いて | を用いて | ||
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- | E(J(S))= E\{ S - \alpha S^2 \} | + | E(J(S))= E\{ S - \alpha S^2 \} |
- | = E\{ S \} - \alpha | + | = E\{ S \} - \alpha ( E\{S\} ^2 + V(S) ) |
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で与えられる. | で与えられる. | ||
- | (2) 式から | + | <math>(2)</math> 式から |
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- | E\{S\} = l_1 x_1 + l_2 x_2 \ | + | E\{S\} = l_1 x_1 + l_2 x_2 ,\quad l_1 = E\{L_1\},l_2 = E\{L_2\} \qquad (8) |
- | l_1 = E\{L_1\} | + | |
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+ | さらに<math>L_1</math>,<math>L_2</math> のそれぞれ分散 | ||
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+ | 及びこれらの共分散 | ||
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+ | = E\{L_1L_2\} - E\{L_1\}E\{L_2\} \\ | ||
+ | = E\{L_1L_2\} -l_1l_2 \\ | ||
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+ | を用いると | ||
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+ | V(S) =E\{ (L_1 x_1 + L_2 x_2)^2 \} - (l_1 x_1 + l_2 x_2) ^2 \\ | ||
+ | =E\{ (L_1 x_1) ^2 + L_1 L_2 x_1 x_2 + L_2 L_1 x_2 x_1 + (L_2x_2) ^2\} | ||
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+ | 結局,問題は1次等式制約条件 | ||
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+ | の下の最大化問題になり,容易に解ける. | ||
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+ | しかしながら一般の<math>n</math>個の | ||
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+ | <math> | ||
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+ | の下での評価関数 | ||
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+ | J(x_1,x_2 \cdots,x_n) | ||
+ | </math> | ||
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+ | の最大化・最小化問題は解くのは容易ではなく,勾配法その他,種々な解法が研究されている. | ||
+ | 特に評価式が<math>(12)</math>式のように2次式で与えられる問題は2次計画問題と呼ばれるが, | ||
+ | 制約条件式や評価式が非線形関数で記述される場合は,非線形計画問題に分類される. | ||
+ | [http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%9E%E7%B7%9A%E5%BD%A2%E8%A8%88%E7%94%BB%E6%B3%95 非線形計画法]には | ||
+ | 拘束条件のない問題についての | ||
+ | [http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%BE%E9%85%8D%E6%B3%95 勾配法] | ||
+ | や等式拘束条件のある問題についての | ||
+ | [http://ja.wikipedia.org/wiki/ラグランジュ未定乗数法 ラグランジュ未定乗数法] | ||
+ | などがある. | ||
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2020年11月23日 (月) 17:14 時点における最新版
1次等式制約条件下の2次計画問題(ポートフォリオセレクション)
資金額wを持つ投資家が株式1,2に資金を一か月間 x1,x2に分けて 分散して投資する.どのようにすれば「最適」な投資をできるかを考える.
株式1,2の現在価格をq1,q2としこれらの一か月後の価格は0∼∞の値を取り得る 不確定な値のため 確率変数Q1,Q2で表す。
資金の分散投資
0≤x1,0≤x2,x1+x2=w(1)
による一か月後の利益は,同様に確率変数
S=Q1q1x1+Q2q2x2−w=Q1q1x1+Q2q2x2−(x1+x2)=L1x1+L2x2
L1=Q1−q1q1,L2=Q2−q2q2(2)
で表さられる.
ここで,最適な投資の定義はどのようなものになるか. 一つの方法として一か月後の利益についての評価関数
を用いて定義することが考えられる.
この評価関数は 利益lが増加するに従って値が増加する単調増加関数になるであろう.
しかしながら,一般に高い利益を期待できるものは,逆に株価が値下がりして損出を出す可能性も低くない。
この評価関数が具体的にどのような単調増加関数 になるのか,これは,投資した株式が購入した価格よりも下がり損をするという危険も覚悟の上で,より高い利益を期待するのか, あるいは,利益は期待しつつも,損出は極力避けたい,むしろ利益は少なくとも損出の可能性を極力小さくしたいとの 投資家の心理的問題も大きく影響し単純には決められない.
ここでは議論を簡単にするため評価関数を微小な正数0<αを使って以下のように定める
J(s)=s−αs2,s∈[−∞,1α](3)
これは利益lがs<1α である間は単調増加であるが,sが1α
に近づくにつれ,曲線の傾斜が0に近づく.この曲線は高い利益を期待できるものは値下がりによる損出の危険もあり, 損出の危険をさけるため過大な利益の期待はしないとの投資家心理を反映している.
この評価関数Jと(2)式を用いて,「投資の最適化問題」を 制約条件 0≤x1,0≤x2,x1+x2=w のもとに確率変数
J(S)=S−αS2
の期待値(平均値)
E(J(S))=E{J(L1x1+L2x2)}(4)
を最大化する問題として扱う.
(3)式から(4)式は
E(J(S))=E{S−αS2 }=E{S}−αE{S2 } (5)
とSの分散
V(S)=E{(S−E{S})2}=E{S2−S⋅E{S}−{S}⋅S+E{S}2}=E{S2}−2E{S}2+E{E{S})2}=E{S2}−2E{S}2+E{S}2=E{S2}−E{S}2(6)
を用いて
E(J(S))=E{S−αS2 }=E{S}−α(E{S}2+V(S))(7)
で与えられる.
(2) 式から
E{S}=l1x1+l2x2,l1=E{L1},l2=E{L2}(8)
さらにL1,L2 のそれぞれ分散
σ1=V(L1)=E{L21}−E{L1}2=E{L21}−l21σ2=V(L2)=E{L22}−E{L2}2=E{L22}−l22(9)
及びこれらの共分散
σ12=E{(L1−E{L1})⋅(L2−E{L2})}=E{L1L2}−E{L1}E{L2}=E{L1L2}−l1l2σ21=E{(L2−E{L2})⋅(L1−E{L1})}=E{L2L1}−E{L1}E{L2}=E{L2L1}−l2l1(10)
と σ12 = σ21 を用いると
V(S)=E{(L1x1+L2x2)2}−(l1x1+l2x2)2=E{(L1x1)2+L1L2x1x2+L2L1x2x1+(L2x2)2}−(l21x21+2l1l2x1x2+l22x22) =(E{L21}−l21)x21+(E{L22}−l22)x22+(E{L1L2}−l1l2)x1x2+(E{L2L1}−l2l1)x2x1=σ1x21+2σ12x1x2+σ2x22(11)
(7),(8),(11)式から
E(J(S))=E{S}−α(E{S}2+V(S)}=l1x1+l2x2−α((l1x1+l2x2)2+σ1x21+2σ12x1x2+σ2x22)=l1x1+l2x2−α((l21+σ1)x21+(l22+σ2)x22+2(l1l2+σ12)x1x2)(12)
結局,問題は1次等式制約条件
0≤x1,0≤x2,x1+x2=w(1)
のもとにx1,x2についての2次式である評価式(12)を最大化する問題に帰着する.
この場合は,変数はx1,x2の2個だけであり,(1)から
x2=w−x1
とおけば,(12)式はx1だけの 2次式となり,これの制約条件 0≤x1≤w の下の最大化問題になり,容易に解ける.
しかしながら一般のn個の 変数 x1,x2⋯,xn
についての 等式制約条件
f(x1,x2⋯,xn)=c
の下での評価関数
J(x1,x2⋯,xn)
の最大化・最小化問題は解くのは容易ではなく,勾配法その他,種々な解法が研究されている. 特に評価式が(12)式のように2次式で与えられる問題は2次計画問題と呼ばれるが, 制約条件式や評価式が非線形関数で記述される場合は,非線形計画問題に分類される. 非線形計画法には 拘束条件のない問題についての 勾配法 や等式拘束条件のある問題についての ラグランジュ未定乗数法 などがある.