物理/エネルギーと保存則
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(→仕事エネルギー定理(W^{n}ork-energy theorem)) |
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- | ==== | + | ====仕事エネルギー定理(Work-energy theorem)==== |
'''仕事エネルギー定理'''<br/> | '''仕事エネルギー定理'''<br/> | ||
質量mの質点が時刻t1 に位置→x(t1)にいて,速度→v(t1)で動いているとする。<br/> | 質量mの質点が時刻t1 に位置→x(t1)にいて,速度→v(t1)で動いているとする。<br/> | ||
この粒子に、<br/> | この粒子に、<br/> | ||
- | + | 力 →F(t)(注参照) を時刻t1からt2まで加える。<br/> | |
+ | 力は時間に関して連続であるか、区分的に連続(不連続点が有限個しかない)と仮定する。<br/> | ||
+ | すると<br/> | ||
この間の運動エネルギーの変化量 12m‖v(t2)‖2−12m‖v(t1)‖2は、<br/> | この間の運動エネルギーの変化量 12m‖v(t2)‖2−12m‖v(t1)‖2は、<br/> | ||
その間、力が行った仕事 ''W''に等しい<br/> | その間、力が行った仕事 ''W''に等しい<br/> | ||
- | (注)多くの自然界の力( | + | (注)多くの自然界の力(万有引力や電磁気力)は、場所によって変化するので、<br/> |
- | + | 運動中の質点の受ける力は時間とともに変動する。<br/> | |
- | + | 人為的に時間で力を変えて物体を運動を制御することもある。<br/> | |
- | + | この力が時刻sで連続とは、<br/> | |
- | + | sに収束するどんな点列x1,x2,,,Xn,,,に対しても<br/> | |
- | $\ | + | $\lim_{t_n\to s}\vec{F}(t_n)=\vec{F}(s)$が成り立つこと。<br/> |
- | + | 全ての時刻s∈[t1,t2]で連続のとき、連続という。<br/> | |
- | + | ||
証明;<br/> | 証明;<br/> | ||
力を受けた質点は運動する。任意の時刻t,(t1≤t≤t2)の質点の位置を | 力を受けた質点は運動する。任意の時刻t,(t1≤t≤t2)の質点の位置を | ||
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[si−1,si]:=[t1+(i−1)Δt,t1+iΔt],(i=1,2,,,n),(s0=t1,sn=t2)<br/> | [si−1,si]:=[t1+(i−1)Δt,t1+iΔt],(i=1,2,,,n),(s0=t1,sn=t2)<br/> | ||
と表現できる。ここで、Δt=t2−t1n<br/> | と表現できる。ここで、Δt=t2−t1n<br/> | ||
- | これに対応して、軌跡Cは、n個の小部分Ci,(i=1,2,,,n)に分割される。<br/> | + | |
- | + | これに対応して、軌跡Cは、n個の小部分$C_i=(P_{i-1},P_i),(i=1,2,,,n)$に分割される。<br/> | |
+ | ここで、Pi−1,PiはCiの端点を表す。<br/> | ||
+ | 原点Oを適当に定め、直交座標O−xyzをいれる。<br/> | ||
Ciの端点(の位置ベクトル)を→x(si−1)=→OPi−1 、 →x(si)=→OPiと表現しておく 。<br/> | Ciの端点(の位置ベクトル)を→x(si−1)=→OPi−1 、 →x(si)=→OPiと表現しておく 。<br/> | ||
等分数nを十分大きくとっておけば、Δtが非常に小さくなり、<br/> | 等分数nを十分大きくとっておけば、Δtが非常に小さくなり、<br/> | ||
その間は質点はほぼ等速直線運動するので、Ciは有向線分→Pi−1Piで近似できる。<br/> | その間は質点はほぼ等速直線運動するので、Ciは有向線分→Pi−1Piで近似できる。<br/> | ||
力も時刻が[si−1,si]の間、ほぼ一定なので、<br/> | 力も時刻が[si−1,si]の間、ほぼ一定なので、<br/> | ||
- | このなかの任意の時刻${\xi}_i | + | このなかの任意の時刻${\xi}_i\in [s_{i-1},s_i]$を代表点として選び、<br/> |
- | $\vec{F}( | + | $\vec{F}({\xi}_i)$で近似する。<br/> |
この近似を用いると、仕事の定義から、力がCiで行った仕事は<br/> | この近似を用いると、仕事の定義から、力がCiで行った仕事は<br/> | ||
$W_i(n,{\xi}_i)= \vec F({\xi}_i)\cdot \vec{P_{i-1}P_i} | $W_i(n,{\xi}_i)= \vec F({\xi}_i)\cdot \vec{P_{i-1}P_i} | ||
=\vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s_i)-\vec{x}(s_{i-1})$<br/> | =\vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s_i)-\vec{x}(s_{i-1})$<br/> | ||
故に、時間をn等分割したときの仕事Wの近似値は、<br/> | 故に、時間をn等分割したときの仕事Wの近似値は、<br/> | ||
- | $W(n,\{ | + | $W(n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\sum_{i=1}^{n} W_i(n,{\xi}_i)$<br/> |
- | + | ||
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- | + | $=\sum_{i=1}^{n} \vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s_i)-\vec{x}(s_{i-1})\qquad (1)$<br/> | |
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+ | ここで、<br/> | ||
+ | $\vec{x}(s_i)-\vec{x}(s_{i-1}) | ||
+ | =\int_{s_{i-1}}^{s_i}\frac{d\vec{x}(t)}{dt}dt | ||
+ | =\int_{s_{i-1}}^{s_i}\vec{v}(t)dt$<br/> | ||
+ | $=\int_{s_{i-1}}^{s_i} | ||
+ | \left(\vec{v}({\xi}_i)+(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt$<br/> | ||
+ | $=\vec{v}({\xi}_i)(s_i-s_{i-1}) | ||
+ | +\int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)$<br/> | ||
+ | この式を(1)式に代入すると、<br/> | ||
+ | W(n,{ξi}ni=1)<br/> | ||
+ | $=\sum_{i=1}^{n} (\vec{F}\cdot \vec{v})({\xi}_i)(s_i-s_{i-1}) | ||
+ | +\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot | ||
+ | \int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \qquad (2)$<br/> | ||
+ | (2)式の右辺の第一項は、実数値関数<br/> | ||
+ | (→F⋅→v)(t):=→F(t)⋅→v(t)<br/> | ||
+ | の、n等分割と代表点{ξi}ni=1に対応するリーマン和I^{f,n}(\xi_1,,,\xi_n)$である。<br/> | ||
+ | この関数は区分的に連続なので、<br/> | ||
+ | リーマン積分の定理(物理数学のリーマン積分参照)から、積分可能で<br/> | ||
+ | $\lim_{n\to \infty}\sum_{i=1}^{n} (\vec{F}\cdot \vec{v})({\xi}_i)(s_i-s_{i-1}) | ||
+ | =\int_{[t_1,t_2}}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt$<br/> | ||
+ | である。<br/> | ||
+ | 補題;(2)式右辺の第2項は、nを無限にしていくと、0に収束する。<br/> | ||
+ | 記号で書くと、<br/> | ||
+ | $\lim_{n\to \infty}\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot | ||
+ | \int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt=0$<br/><br/> | ||
+ | この補題を用いると、<br/> | ||
+ | W=\lim_{n\to\infty}W(n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\int_{[t_1,t_2}}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt<br/> | ||
+ | 運動の第2法則から、→F(t)=md→v(t)dtなので、<br/> | ||
+ | W=\int_{[t_1,t_2}}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt<br/> | ||
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+ | $=\frac{m}{2}\int_{[t_1,t_2}}\frac{d}{dt}\|\vec{v}(t)\|^2 | ||
+ | =\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_2)\|^2-\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_1)\|^2$<br/> | ||
+ | 定理の証明おわり。<br/> | ||
- | + | 補題の証明;<br/> | |
- | $\ | + | $\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot |
- | $ | + | \int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|$<br/> |
- | $ | + | $\leq \sum_{i=1}^{n}\| \vec{F}({\xi}_i)\cdot \int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \|$<br/> |
- | =\ | + | $\leq \sum_{i=1}^{n}\| \vec{F}({\xi}_i)\|\|\int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|$<br/> |
- | + | $M:=max_{t\in [t_1,t_2]}\|\vec{F}(t)\|$とおくと、<br/> | |
- | $ | + | $\leq M\sum_{i=1}^{n}\int_{s_{i-1}}^{s_i}\|\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|\qquad (3)$<br/> |
- | \ | + | $\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)=\int_{{\xi}_i}^{t}\frac{d\vec{v}(s)}{ds}ds |
- | + | =\int_{{\xi}_i}^{t}\frac{\vec{F}(s)}{m}ds$<br/> | |
- | $ | + | なので、<br/> |
- | $=\frac{ | + | $\|\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\| |
+ | \leq \int_{{\xi}_i}^{t}\|\frac{\vec{F}(s)}{m}\|ds | ||
+ | \leq | ||
+ | \frac{M}{m}(s_i-s_{i-1}) \qquad \qquad (4)$<br/> | ||
+ | (4)式を(3)式に代入すると<br/> | ||
+ | $\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot | ||
+ | \int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \| | ||
+ | \leq \frac{M^2}{m}\sum_{i=1}^{n}(s_i-s_{i-1})^2$<br/> | ||
+ | ここで、$s_i-s_{i-1}=\frac{t_2-t_1}{n}$なので、<br/> | ||
+ | $\leq \frac{M^{2}(t_2-t_1)^2}{m}\frac{1}{n}$<br/> | ||
故に、<br/> | 故に、<br/> | ||
- | $ | + | $\lim_{n\to\infty}\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot |
- | + | \int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\| | |
- | + | \leq | |
- | + | \frac{M^{2}(t_2-t_1)^2}{m}\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n} | |
- | + | =0$<br/> | |
- | + | 補題の証明終わり。 | |
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*[[W^{n}ikipedia_ja:線積分 |ウィキペディア(線積分)]] | *[[W^{n}ikipedia_ja:線積分 |ウィキペディア(線積分)]] | ||
2015年2月13日 (金) 17:25時点における版
目次[非表示] |
エネルギーと保存則
質点や質点の集まりの運動を調べるときに有用な
各種の保存法則が、運動の法則から導かれる。
導出の仕方が理解できると、力学への理解が深まる。
下記の記事以外にも、導出法をインターネット検索して調べ、よく考えよう。
エネルギー
物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。
- ウィキブックス(高等学校理科 物理Ⅰ運動とエネルギー) の3章
- エネルギー(ウィキペディア)の自然科学の項
を参照のこと。
運動エネルギー(kinetic energy)
運動している粒子は、それを止めようとする物体に力を与え、動かすことが出来る。
運動している粒子は,運動に起因する何らかのエネルギーを持っていると考えられる。
止まった段階ではこのエネルギーは零になるので、
運動している粒子の持つエネルギーの量は、止まるまでに使った仕事で計れる。
質量mの粒子が速度→vで運動しているとき、
止まるまでになす仕事を求めてみる。
速度方向をx軸とする座標O−xをとる。
力が作用しなければ、粒子はx軸の上をx正方向にむかって、速さv:=‖→v‖で等速直線運動を続ける。
この粒子が原点を通過する瞬間(t=0)から、x軸の負方向に力F=−f、f>0を、止まるまで与え続ける。この間、粒子は、作用反作用の法則により、F=f、f>0の力で、押し返しながら、止まるまで仕事をし続ける。
止まるまでの距離を求めるため、運動法則を用いる。
この粒子の運動方程式は
md2dt2x(t)=−f (1),
ここで、x、vは、初期条件x(0)=0,v(0)=v (2)を満たす。
(1)式の両辺をmで割り、v(t):=ddtx(t)を代入すると、
ddtv(t)=−fm
この方程式を満たし、初期条件(2)を満たす関数vは、
v(t)=−fmt+v(3)
この式から、粒子が停止する時刻は
t1=mvf
このときの粒子の位置は、
ddtx(t)=−fmt+v (4)
を解いて、停止時刻t1でのxを求めればよい。
初期条件式(2)を満たす(4)式の解は
x(t)=−f2mt2+vt (4)
故に、止まる位置は
x(t1)=−f2mt12+vt1=mv22f
粒子が止まるまでに,なした仕事は、
W=fmv22f=mv22
以上の考察より、粒子の運動エネルギーを次のように決める。
定義;
質量m、速度→vの質点の運動エネルギーを、
mv22
で定める。
- ウィキペディア(運動エネルギー)
- ウィキペディア(Kinetic_energy) in English
仕事エネルギー定理(Work-energy theorem)
仕事エネルギー定理
質量mの質点が時刻t1 に位置→x(t1)にいて,速度→v(t1)で動いているとする。
この粒子に、
力 →F(t)(注参照) を時刻t1からt2まで加える。
力は時間に関して連続であるか、区分的に連続(不連続点が有限個しかない)と仮定する。
すると
この間の運動エネルギーの変化量 12m‖v(t2)‖2−12m‖v(t1)‖2は、
その間、力が行った仕事 Wに等しい
(注)多くの自然界の力(万有引力や電磁気力)は、場所によって変化するので、
運動中の質点の受ける力は時間とともに変動する。
人為的に時間で力を変えて物体を運動を制御することもある。
この力が時刻sで連続とは、
sに収束するどんな点列x1,x2,,,Xn,,,に対しても
limtn→s→F(tn)=→F(s)が成り立つこと。
全ての時刻s∈[t1,t2]で連続のとき、連続という。
証明;
力を受けた質点は運動する。任意の時刻t,(t1≤t≤t2)の質点の位置を
→x(t)で表す。
時刻t1からt2までの質点の運動の軌跡は、
C:={→x(t)∣t1≤t≤t2}
で、運動方向に向きを入れる。
時刻t1からt2までのあいだをn等分して、n個の小区間に分ける。
n個の小区間は
[si−1,si]:=[t1+(i−1)Δt,t1+iΔt],(i=1,2,,,n),(s0=t1,sn=t2)
と表現できる。ここで、Δt=t2−t1n
これに対応して、軌跡Cは、n個の小部分Ci=(Pi−1,Pi),(i=1,2,,,n)に分割される。
ここで、Pi−1,PiはCiの端点を表す。
原点Oを適当に定め、直交座標O−xyzをいれる。
Ciの端点(の位置ベクトル)を→x(si−1)=→OPi−1 、 →x(si)=→OPiと表現しておく 。
等分数nを十分大きくとっておけば、Δtが非常に小さくなり、
その間は質点はほぼ等速直線運動するので、Ciは有向線分→Pi−1Piで近似できる。
力も時刻が[si−1,si]の間、ほぼ一定なので、
このなかの任意の時刻ξi∈[si−1,si]を代表点として選び、
→F(ξi)で近似する。
この近似を用いると、仕事の定義から、力がCiで行った仕事は
Wi(n,ξi)=→F(ξi)⋅→Pi−1Pi=→F(ξi)⋅(→x(si)−→x(si−1)
故に、時間をn等分割したときの仕事Wの近似値は、
W(n,{ξi}ni=1)=∑ni=1Wi(n,ξi)
=∑ni=1→F(ξi)⋅(→x(si)−→x(si−1)(1)
ここで、
→x(si)−→x(si−1)=∫sisi−1d→x(t)dtdt=∫sisi−1→v(t)dt
=∫sisi−1(→v(ξi)+(→v(t)−→v(ξi))dt
=→v(ξi)(si−si−1)+∫sisi−1(→v(t)−→v(ξi))
この式を(1)式に代入すると、
W(n,{ξi}ni=1)
=∑ni=1(→F⋅→v)(ξi)(si−si−1)+∑ni=1→F(ξi)⋅∫sisi−1(→v(t)−→v(ξi))dt(2)
(2)式の右辺の第一項は、実数値関数
(→F⋅→v)(t):=→F(t)⋅→v(t)
の、n等分割と代表点{ξi}ni=1に対応するリーマン和I^{f,n}(\xi_1,,,\xi_n)である。この関数は区分的に連続なので、リーマン積分の定理(物理数学のリーマン積分参照)から、積分可能で\lim_{n\to \infty}\sum_{i=1}^{n} (\vec{F}\cdot \vec{v})({\xi}_i)(s_i-s_{i-1})
=\int_{[t_1,t_2}}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dtである。補題;(2)式右辺の第2項は、nを無限にしていくと、0に収束する。記号で書くと、\lim_{n\to \infty}\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt=0この補題を用いると、W=\lim_{n\to\infty}W(n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\int_{[t_1,t_2}}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt運動の第2法則から、\vec{F}(t)=m\frac{d\vec v(t)}{dt}なので、W=\int_{[t_1,t_2}}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt=\int_{[t_1,t_2}}(m\frac{d\vec v(t)}{dt} \cdot \vec{v})(t)dt
=\frac{m}{2}\int_{[t_1,t_2}}\frac{d}{dt}\vec{v}(t) \cdot \vec{v}(t)dt=\frac{m}{2}\int_{[t_1,t_2}}\frac{d}{dt}\|\vec{v}(t)\|^2
=\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_2)\|^2-\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_1)\|^2定理の証明おわり。補題の証明;\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|\leq \sum_{i=1}^{n}\| \vec{F}({\xi}_i)\cdot \int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \|\leq \sum_{i=1}^{n}\| \vec{F}({\xi}_i)\|\|\int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|M:=max_{t\in [t_1,t_2]}\|\vec{F}(t)\|とおくと、\leq M\sum_{i=1}^{n}\int_{s_{i-1}}^{s_i}\|\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|\qquad (3)\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)=\int_{{\xi}_i}^{t}\frac{d\vec{v}(s)}{ds}ds
=\int_{{\xi}_i}^{t}\frac{\vec{F}(s)}{m}dsなので、\|\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\|
\leq \int_{{\xi}_i}^{t}\|\frac{\vec{F}(s)}{m}\|ds
\leq
\frac{M}{m}(s_i-s_{i-1}) \qquad \qquad (4)(4)式を(3)式に代入すると\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \|
\leq \frac{M^2}{m}\sum_{i=1}^{n}(s_i-s_{i-1})^2ここで、s_i-s_{i-1}=\frac{t_2-t_1}{n}なので、\leq \frac{M^{2}(t_2-t_1)^2}{m}\frac{1}{n}故に、\lim_{n\to\infty}\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s_{i-1}}^{s_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|
\leq
\frac{M^{2}(t_2-t_1)^2}{m}\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}
=0補題の証明終わり。∗[[Wnikipediaja:線積分|ウィキペディア(線積分)]]===保存力と位置エネルギー=======保存力と保存力場====質点がどこにあろうが、その場所\vec xに応じて力\vec{F}(\vec x)が作用するとする。このような空間を力の場という。質点が任意の点Pから任意の点Qまで動くとき、力\vec{F}(\vec x)の行う仕事が移動経路に関係なく2点P、Qだけで決まるならば、この力を‴保存力‴(conservativeforce)といい、このような空間は‴保存力場‴という。 保存力は次のように言いかえることができる。物体にかかる力 \vec{F}(\vec x) に逆らって、力-\vec{F}(\vec x)+\deltaを加えて、物体をQ点からP点に非常にゆっくり動かす時、この力-\vec{F}(\vec x) の行う仕事が移動経路に関係なく2点の位置だけで決まる時、力 \vec{F} を保存力という。ここで力 -\vec{F} は、物体に作用する力 \vec{F} とつり合いをとるための力であり、力 \delta は、力がつりあって静止する物体を、移動経路に沿って、無限にゆっくりと動かすのに必要な、無限に小さい力である。このため\deltaのなす仕事は零とみなせる。====位置エネルギー ====この仕事の量を、Q点を基準としたP点でのこの物体の‴位置エネルギー‴(あるいはポテンシャルエネルギー potentialenergy)と言う。∗[[wikipediaja:ポテンシャル|ウィキペディア(ポテンシャル)]]の保存力の項∗[[wikipediaja:位置エネルギー|ウィキペディア(位置エネルギー)]]∗[[wikipedia:Potentialenergy|ウィキペディア(Potentialenergy)]]inEnglishを参照のこと。==== 保存力の十分条件 ====質点Aが質点Bに力\vec{F_{A}(B)} を及ぼしているとする。その力の方向が2質点を結ぶ直線方向の引力あるいは斥力で、大きさが2点間の距離で決まると仮定する。この仮定を数式で書こう。質点A,Bの位置ベクトルをを其々\vec{P_{A}}, \vec{P_{B}} と表すと、\vec{F_{A}(B)} =f(||\vec{P_{B}}- \vec{P_{A}} ||) \times (\vec{P_{B}}-\vec{P_{A}})/||\vec{P_{B}}- \vec{P_{A}} || 。ここで<f は任意の関数。この時、この力\vec{F_{A}(B)}は保存力になる。証明。質点BをP点から、経路Cに沿って、Q点まで動かすときの仕事が、経路Cに無関係であることを示せばよい。簡単にするため、質点Aと経路Cは同一平面に含まれると仮定し、この平面上で議論する。経路Cを質点Aを中心とする円弧の一部と質点Aに向かう線分を交互につなぐ線で、つぎのように、近似する。 ⅰ)P点からQ点まで向かう経路Cの長さをn等分する点をP_0=P,P_1,\ldots,P_n=Q とする。 ⅱ)質点Aを中心とし、P_0 を通る円と、質点AとP_1 を結ぶ直線の交点をP_{0}' とし、経路CのP_0 とP_1 の間を、この円の弧(P_0,P_{0}') と線分[P{0}',P_1 ] で近似する。ⅲ)経路CのP_1 とP_2 の間も同様に、質点Aを中心とする円弧(P_1,P_{1}') と線分[P_{1}',P_2 ] で近似する。ⅳ)以下同様にして、経路CのP_{n-1} とP_{n}=Q の間を、質点Aを中心とする円弧(P_{n-1},P_{n-1}') と線分[P_{n-1}',P_n]で近似する。等分数nを大きくすると、この近似経路にそって移動する時の力のなす仕事は、経路Cに沿った移動の仕事と殆ど同じになり、\lim_{n \to \infty}のとき一致する。近似経路のうち質点Aを中心とする円弧を動く時の力のなす仕事は、零となる(力の方向が2質点を結ぶ直線方向の引力あるいは斥力なので、移動経路と常に直交するから)。次に、近似経路のうち、質点Aを通る直線上を動く経路の仕事を計算しよう。線分[P_{i-1}',P_i ],i=1,2,,,nという経路を、質点AとP点を結ぶ直線lに含まれる線分に、次のように移し替える。ⅰ)質点Aを中心とし点P_iを通る円と直線lとの交点を P_{i},(i=1,2,,,n) とおき、 P_{0}=P とおく。
ⅱ)線分[P_{i-1}',P_i ],(i=1,2,,,n)を直線l上の線分[P_{i-1},P_{i}],(i=1,2,,,n)でおきかえる。
すると力に関する仮定から、
線分[P_{i-1}',P_i ]での移動にさいして力のなす仕事は、
線分[P_{i-1},P_{i} ]での移動のとき力のなす仕事に等しい。
従って任意の経路Cにそって移動するときに力のなす仕事は、
常に、線分[P,P_{n} ]にそって移動するとき、力のなす仕事に等しい。(証明終わり)
問:質点Aを固定する。この質点が他の質点に及ぼす重力は保存力であることを確かめてください。
==== ポテンシャルから力を求める方法 ====
ある基準点Qから見た,
保存力\vec{F}(未知)のポテンシャルエネルギー\phiが既知の時、
\vec{F}を、\phiから求めることができる。
Q点を原点とする直交座標系を1つ固定する。
この力で、質点を位置ベクトル\vec{r} の点から、
位置ベクトル\vec{r}+(\Delta_{x},0,0) の点まで動かす時
\Delta_{x}は微小にとる。
するとこの間の力は一定値\vec{F}(r)で近似できる)、
力のする仕事は、ほぼ \vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}である。
すると、
\phi(\vec r)+\vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}は、
質点を原点から位置ベクトル\vec{r} の点まで動かし、
引き続いて位置ベクトル\vec{r}+(\Delta_{x},0,0) の点まで動かす時の、
力のなす仕事になるので、保存力であることから、\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0)) にほぼ等しい。
従って\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0))\simeq \phi(\vec r)+\vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}
故に \lim_{\Delta_{x} \to 0}\frac{\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0))-\phi(\vec r)}{\Delta_{x}}=\vec{F}_{x}(\vec{r});力のx成分。
同様にして
\lim_{\Delta_{y} \to 0}\frac{\phi(\vec r+(0,\Delta_{y},0))-\phi(\vec r)}{\Delta_{y}}=\vec{F}_{y}(\vec{r});力のy成分。
\lim_{\Delta_{z} \to 0}\frac{\phi(\vec r+(0,0,\Delta_{z}))-\phi(\vec r)}{\Delta_{z}}=\vec{F}_{z}(\vec{r});力のz成分。
==力学的エネルギーと力学的エネルギー保存則(kinetic energy and conservation of kinetic energy )==
力学的エネルギーは
*[[wikipedia_ja:力学的エネルギー|ウィキペディア(力学的エネルギー)]]
*[[wikipedia:Kinetic_energy|ウィキペディア(Kinetic_energy)]] in English
を見てください。
仕事エネルギー定理の仕事量W(=\vec{F}\cdot\vec{PQ} 。 ここで\vec{PQ} は変位ベクトル)をきめる力\vec{F}が
保存力\vec{Fc}と外力\vec{Fo}の和からなるとき、
W=(\vec{Fc}+\vec{Fo})\cdot\vec{PQ}=\vec{Fc}\cdot\vec{PQ} +\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}
=Pのポテンシャルエネルギー(U(P)-U(Q))+\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}となる。
一方仕事エネルギー定理から、W=\frac{1}{2}m{V(Q)}^2-\frac{1}{2}m{V(P)}^2なので、この両式から、
\left(\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)\right)-\left( \frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P)\right)=\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}が得られる。
もし保存力以外の力\vec{Fo} が零ならば、\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)=\frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P)
(力学エネルギー保存則)が得られる。
もっと知りたい方は次をどうぞ。
*[[wikipedia_ja:力学的エネルギー保存の法則|ウィキペディア(力学的エネルギー保存の法則)]]
*[[wikipedia:Conservation_of_energy#Mechanics|ウィキペディア(Conservation_of_energy#Mechanics)]] in English
エネルギー保存則は物理学のなかで最も基本的な原理です。
熱エネルギーも含めたもっと一般的なエネルギー保存則は、後の章で学びます。
==運動量と保存則==
===運動量と力積 (momentum or linear momentum and Impulse) ===
質点に力\vec{F}(t)が作用しているとする。
運動の第2法則\vec{F}(t)=\frac{d\vec{p}(t)}{dt} の両辺を
時間に関してt_1から t_2まで積分してみよう。ここで\vec{p}(t)=m\vec{v}(t)は質点の運動量。
すると、
\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)dt=\vec{p}(t_2)-\vec{p}(t_1)
となる。
質点に作用する力を時間で積分した\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)dtを力積と呼ぶ。
力積は、運動量の変化に等しい。
*[[wikibooks_ja:高等学校理科 物理II 力と運動|ウィキブックス(高等学校理科 物理Ⅱ)]] の1.1.2 運動量と力積
n個の質点を持つ質点系の運動量は、各質点の運動量の和で定義する。
この場合にも質点系への力積は質点系の運動量の変化に等しいことが、
運動の第2法則から導ける。
===運動量保存則( law of conservation of momentum )===
質点の場合、外力がなければ、その運動量は保存される(一定である)。
質点系(質点の集まり)の場合でも、質点系に作用する外力のベクトル和が零ならば、 内力(質点系内の質点間に働く力)があっても、運動量が保存されることが示せる。(注)
これを'''運動量保存則'''とよぶ。
*[[wikipedia_ja:運動量保存の法則|ウィキペディア(運動量保存の法則)]]
(注)質点系の各質点の位置を\vec{r_i}、質量をm_i とし、
質点m_i に作用する外力を\vec{f_i}、
m_i に、質点系の他の質点m_j から作用する内力を\vec{f_{ij}}とする(i,j=1 \ldots N)。
すると、各質点に対して、運動の第2法則により、
\frac{d\vec{p}_i(t)}{dt}=\vec{f_i}+\sum_{j\neq i}\vec{f_{ij}}
各ベクトルを自由ベクトルとみなして,上の式をi=1 \ldots Nについて加え合わせると、
\sum_i{\vec{f_i}}=0 \qquad \vec{f_{ij}}+\vec{f_{ji}}=0(作用反作用の法則)なので、
\frac{d}{dt} \sum_i{\vec{p}_i(t)} =0
が得られる。ゆえに、\sum_i{\vec{p}_i(t)}$は保存される。
保存則の応用
衝突の問題
2質点の衝突
質点の壁との衝突
力学に必要な物理量(時間、距離、速度、加速度、質量、力)の単位と単位変換
- ウィキペディア(物理単位)
- wikibooks(High_School_Physics/Si_units) ,in English