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物理/エネルギーと保存則

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(版間での差分)
(保存則の応用)
(仕事エネルギー定理(Work-energy theorem))
50 行: 50 行:
====仕事エネルギー定理(Work-energy theorem)====
====仕事エネルギー定理(Work-energy theorem)====
'''仕事エネルギー定理'''<br/>
'''仕事エネルギー定理'''<br/>
-
質量mの質点が時刻t1 に位置x(t1)にいて,速度v(t1)で動いているとする。<br/>
+
質量mの質点が力 F(t)を受けて運動している(注参照のこと)。<br/>
-
この粒子に、<br/>
+
-
F(t)(注参照) を時刻t1からt2まで加える。<br/>
+
力は時間に関して連続であるか、区分的に連続(不連続点が有限個しかない)と仮定する。<br/>
力は時間に関して連続であるか、区分的に連続(不連続点が有限個しかない)と仮定する。<br/>
 +
時刻t の質点の位置をx(t)、速度をv(t1)とおく。<br/>
すると<br/>
すると<br/>
-
ⅰ)この間力の行う仕事はW=[t1,t2](Fv)(t)dt<br/>
+
ⅰ)時刻t1から t2までに力の行う仕事は<br/>
-
ⅱ)この間の運動エネルギーの変化量  12mv(t2)212mv(t1)2は、<br/>
+
W=[t1,t2](Fv)(t)dt<br/>
-
その間、力が行った仕事 ''W''に等しい。ここで(Fv)(t):=F(t)v(t)<br/>
+
ここで$(\vec{F}\cdot \vec{v})(t):=\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)$<br/>
 +
ⅱ)$W=\frac{1}{2}m\|v(t_2)\|^2 - \frac{1}{2}m\|v(t_1)\|^2 $
 +
すなわち力がなした仕事は、運動エネルギーの変化量に等しい。<br/>
(注)万有引力や電磁気力は、場所によって変化するので、<br/>
(注)万有引力や電磁気力は、場所によって変化するので、<br/>
位置ベクトルxにいる質点の受ける力はG(x)の形に書ける。
位置ベクトルxにいる質点の受ける力はG(x)の形に書ける。
-
力を受けた質点は動くので、$\vec x=\vec x(t)$<br/>
+
すると、時刻tに質点の受ける力は時間の関数F(t):=G(x(t))となる。<br/>
-
するとこの質点の受ける力は、G(x(t))となり時間の関数と見ることができる。<br/>
+
人為的に時間により力を変えて物体の運動を制御することもある。<br/>
-
そこでF(t):=G(x(t))とおけば良い。
+
この場合にも使えるようにした。<br/>
-
人為的に時間で力を変えて物体を運動を制御することもある。<br/>
+
-
この場合にも使えるように命題を述べた。
+
証明;<br/>
証明;<br/>
-
力を受けた質点は運動する。任意の時刻t,(t1tt2)の質点の位置を
+
時刻t1からt2までの質点の運動の軌跡は、向きのついた曲線<br/>
-
x(t)で表す。<br/>
+
$\vec{C}:=\{\vec{x}(t) \mid t_1\leq t \leq t_2\}$<br/>
-
時刻t1からt2までの質点の運動の軌跡は、<br/>
+
で表す。向きは時刻が進むときに進む方向にいれる。<br/>
-
C:={x(t)t1tt2}<br/>
+
-
で、運動方向に向きを入れる。<br/>
+
時刻t1からt2までを、n個の小区間<br/>
時刻t1からt2までを、n個の小区間<br/>
[sni1,sni](i=1,2,,,n)に分割する。ここで(sn0=t1<sn1<sn2,,,,<snn=t2)<br/>
[sni1,sni](i=1,2,,,n)に分割する。ここで(sn0=t1<sn1<sn2,,,,<snn=t2)<br/>
この分割をΔn:={[sni1,sni]i=1,2,3,,,n}と書く。<br/>
この分割をΔn:={[sni1,sni]i=1,2,3,,,n}と書く。<br/>
n個の小区間の長さの最大値を|Δn|と記す。|Δn|:=max<br/>
n個の小区間の長さの最大値を|\Delta^{n}|と記す。|\Delta^{n}|:=\max_{i}(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})<br/>
-
これに対応して、軌跡Cは、n個の小部分C_i=\{\vec{x}(t) \mid t \in [s^{n}_{i-1},s^{n}_i] \},(i=1,2,,,n)に分割される。<br/>
+
これに対応して、軌跡Cは、n個の小部分$\vec{C_i}=\{\vec{x}(t) \mid t \in [s^{n}_{i-1},s^{n}_i] \},(i=1,2,,,n)$に分割される。<br/>
原点Oを適当に定め、直交座標O-xyzをいれる。<br/>
原点Oを適当に定め、直交座標O-xyzをいれる。<br/>
-
C_iの端点をP_{i-1},P_iとおくと、\vec{x}(s^{n}_{i-1})=\vec{OP_{i-1}}\vec{x}(s^{n}_i)=\vec{OP_i}である 。<br/>
+
$\vec{C_i}の端点をP_{i-1},P_iとおくと、\vec{x}(s^{n}_{i-1})=\vec{OP_{i-1}}\vec{x}(s^{n}_i)=\vec{OP_i}$である 。<br/>
分割数nを大きくしていくと、|\Delta^n |が零に収束するような、
分割数nを大きくしていくと、|\Delta^n |が零に収束するような、
分割列\Delta^{n},(n=1,2,3,,,,)をとる。  <br/>
分割列\Delta^{n},(n=1,2,3,,,,)をとる。  <br/>
166 行: 163 行:
===保存力と位置エネルギー===
===保存力と位置エネルギー===
====保存力と保存力場====
====保存力と保存力場====
-
質点がどこにあろうが、その場所\vec xに応じて力\vec{F}(\vec x)が作用するとする。このような空間を力の場という。<br/>
+
質点がどこにあろうが、その場所\vec xに応じて力\vec{F}(\vec x)が作用するとする。
 +
このような空間を'''力の場'''という。<br/>
質点が任意の点Pから任意の点Q まで動くとき、<br/>
質点が任意の点Pから任意の点Q まで動くとき、<br/>
\vec{F}(\vec x)の行う仕事が移動経路に関係なく2点PQだけで決まるならば、<br/>
\vec{F}(\vec x)の行う仕事が移動経路に関係なく2点PQだけで決まるならば、<br/>
-
この力を'''保存力'''(conservative force ) といい、このような空間は'''保存力場'''という。<br/>   
+
この力を'''保存力'''(conservative force ) といい、<br/>
-
議論を簡単にするため、経路としては、区分的に滑らかな曲線に限定する。
+
このような空間は'''保存力場'''という。<br/>   
 +
議論を簡単にするため、経路としては、区分的に滑らかな曲線(注参照)に限定する。<br/>
 +
(注)曲線\vec{C}を、<br/>
 +
[0,1]で定義された<br/>
 +
連続でしかも有限個の点を除いて微分可能なベクトル関数の<br/>
 +
軌跡で表すことが出来ることをいう。<br/>
 +
 
====位置エネルギー ====
====位置エネルギー ====
保存力は次のように言いかえることができる。<br/>
保存力は次のように言いかえることができる。<br/>
180 行: 184 行:
\vec{F} を保存力という。<br/>
\vec{F} を保存力という。<br/>
ここで力 -\vec{F} は、物体に作用する力 \vec{F} とつり合いをとるための力であり、<br/>
ここで力 -\vec{F} は、物体に作用する力 \vec{F} とつり合いをとるための力であり、<br/>
-
\delta  は、力がつりあって静止する物体を、<br/>
+
\delta  は、力がつりあって静止している物体を、<br/>
移動経路に沿って、無限にゆっくりと動かすのに必要な、無限に小さい力である。<br/>このため \delta のなす仕事は零とみなせる。<br/>
移動経路に沿って、無限にゆっくりと動かすのに必要な、無限に小さい力である。<br/>このため \delta のなす仕事は零とみなせる。<br/>
190 行: 194 行:
を参照のこと。
を参照のこと。
==== 力の場が保存的である必要十分条件 ====
==== 力の場が保存的である必要十分条件 ====
 +
命題<br/>
 +
\Omegaを空間{\bf R^3}から有限個の点を除いた領域とする。<br/>
 +
次の2条件は同値である。
 +
(1)\Omega上で定義された連続な力の場<br/>
 +
\vec{F}(\vec x),(\vec x\in \Omega)が<br/>
 +
保存力場である。<br/>
 +
(2)\Omega上で定義され実数に値を取るC^1級関数U(\vec x)が存在して<br/>
 +
\vec{F}_i=-\frac{\partial U}{\partial x_i} ,(i=1,2,3)  \qquad \qquad (1)<br/>
 +
\Omega上で成り立つこと。<br/>
 +
記述を簡略化するため、Uの勾配(gradient)<br/>
 +
$\mathrm{grad}U(\vec x):=(\frac{\partial U}{\partial x_1}(\vec x),
 +
\frac{\partial U}{\partial x_2}(\vec x),\frac{\partial U}{\partial x_3}(\vec x)$<br/>
 +
を導入すると、<br/>
 +
\vec{F}=-\mathrm{grad}U\Omega上で成り立つこと。<br/>
 +
 +
ここで\frac{\partial U}{\partial x_i}とは、<br/>
 +
U(\vec x)を、独立変数の第i成分 x_i:=(\vec x)_iの関数とみるため<br/>
 +
他の変数は固定して、V_i(x_i):=U(x_1,x_2,x_3)という実変数で実数値の関数を考え、<br/>
 +
x_iで微分したものを表す。記号で表示すると、<br/>
 +
\frac{\partial U}{\partial x_i}(\vec x):=\frac{dV_i}{dx_i}(x_i)<br/>
 +
関数\frac{\partial U}{\partial x_i}は<br/>
 +
変数\vec xに、その点のx_iについての偏微分係数\frac{\partial U}{\partial x_i}(\vec x)を対応させるもので、<br/>
 +
x_iについての偏導関数と呼ばれる。<br/>
 +
U(\vec x)C^1級とは、<br/>
 +
全ての偏導関数\frac{\partial U}{\partial x_i}、(i=1,2,3)が存在し、<br/>
 +
しかも連続関数となることをいう。<br/>
 +
多変数関数の連続性や微分については、<br/>
 +
「第8章 物理数学」の「極限と微分」で要点を説明してある。<br/>
 +
証明;<br/>
 +
(1)ならば(2)を示す。<br/>
 +
領域\Omegaの一点Oを原点にした、直交座標系O-xyzを決める。<br/>
 +
この領域の任意の点P(x_1,x_2,x_3)(x_iはPの座標)の、原点からみた、ポテンシャルエネルギー<br/>
 +
U(P)=\int_{C(O \to P)}-\vec{F}(\vec y)\cdot \vec{dy}<br/>
 +
を定める。この値は経路C(O \to P)に関係なくきまる。<br/>
 +
1)\frac{\partial U}{\partial x_1}(\vec x)=-{\vec F}_{1}(\vec x)を示す。<br/>\vec{e_1}:=(1,0,0)とおき、Uの偏微分を定義に従って計算する。<br/>
 +
$\frac{\partial U}{\partial x_1}(\vec x)
 +
=\lim_{\delta \to 0,\delta\neq 0}\frac{U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3)}{\delta}$<br/>
 +
ここで、<br/>
 +
$U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3)
 +
=-\int_{\{{\vec x}(t)=\vec x+t\vec{e_1}\mid 0\leq t\leq \delta\}}\vec{F}(\vec y)\cdot \vec{dy}$<br/>
 +
仕事エネルギー定理の(1)で証明したように、<br/>
 +
-\int_{0}^{\delta}{\vec F}(\vec{x}(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)}{t}dt<br/>
 +
\frac{d\vec{x}(t)}{t}=\vec{e_1}であり、<br/>
 +
{\vec F}(\vec{x}(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)={\vec F}_1(\vec{x}(t))となるので<br/>
 +
=-\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dt<br/>
 +
故に、$U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3)
 +
=-\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dt$<br/>
 +
 +
\lim_{\delta \to 0,\delta\neq 0}\frac{U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3)}{\delta}=-\frac{1}{\delta}\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dt <br/>
 +
ここで、{\vec F}_1(\vec x+t\vec{e_1})はtの連続関数なので、<br/>
 +
|t|が十分小さければ、{\vec F}_1(\vec x)にいくらでも近くなる。<br/>
 +
そこで、区間[0,\delta]での平均値<br/>
 +
\frac{1}{\delta}\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dtは、<br/>
 +
\deltaが零に収束するとき、{\vec F}_1(\vec x)に収束する。<br/>
 +
これで(2)が証明できた。<br/>
 +
(2)を仮定して(1)を示す。<br/>
 +
任意の2点P,Q\in \Omegaに対し、それを結ぶPからQへの区分的に滑らかな曲線<br/>
 +
{\vec C}:=\{{\vec x}(t)\mid 0\leq t\leq 1\},{\vec x}(0)=P,{\vec x}(1)=Q<br/>
 +
を選んだとき、これに沿って力の成す仕事<br/>
 +
$W_{\vec C}=\int_{\vec C}{\vec F}(\vec x) \cdot \vec{dx}
 +
=-\int_{\vec C}\mathrm{grad}U(\vec x)\cdot \vec{dx}  \qquad \qquad (2)$<br/>
 +
が、曲線に依存しないことを示せば良い。<br/>
 +
{\vec C}:=\{{\vec x}(t)\mid 0\leq t\leq 1\} なので
 +
式(2)=-\int_{0}^{1}\mathrm{grad}U(\vec x(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)}{dt}dt <br/>
 +
補題;<br/>
 +
\frac{dU(\vec x(t))}{dt}=\mathrm{grad}U(\vec x(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)}{dt}<br/>
 +
これは、多変数の場合の合成関数の微分公式である。本テキストの「8章 物理数学」
 +
で説明してある。<br/>
 +
これを用いると、
 +
式(2)=-\int_{0}^{1}\frac{dU(\vec x(t))}{dt}dt <br/>
 +
\frac{dU(\vec x(t))}{dt}の原始関数はU(\vec x(t))なので、<br/>
 +
この定積分は<br/>
 +
=-U(\vec x(1))+U(\vec x(0))=-U(Q))+U(P)<br/>
 +
この値は経路に依存しないので、保存力であることが示された。<br/>
 +
証明終わり。<br/>
 +
 +
==== 保存力の十分条件 ====
==== 保存力の十分条件 ====
-
静止している質点Aが質点Bに力を及ぼしているとする。<br/>
+
万有引力で作られる力の場などは、保存力場である。<br/>
-
その力の方向が2質点を結ぶ直線方向の引力あるいは斥力で、<br/>
+
これを示すため、もう少し一般の力の場が、保存力場であることを示す命題を述べる。<br/>
-
大きさが2点間の距離で決まると仮定する。<br/>
+
 
-
この仮定を数式で書こう。<br/>
+
-
質点Aの位置を原点に選び、Bの位置ベクトルを\vec x と表すと、力は<br/>
+
-
\vec{G}(\vec x) =k\vec x
+
-
ここで 力が引力ならばk<0, 斥力ならば k>0。<br/>
+
命題;<br/>
命題;<br/>
-
原点に静止する質点Aが、位置ベクトル$\vec x $の点にある質点Bに$\vec{G}(\vec x)=k\vec x $という力を及ぼすとする。するとこの力は保存力になる。<br/>
+
領域$\Omega$を3次元空間から原点を取り除いた領域とする。<br/>
-
証明。<br/>
+
この領域で定義された力の場<br/>
-
質点BをP点からQ点まで動かすときの仕事が、その経路Cに無関係であることを示せばよい。<br/>
+
${\vec F}(\vec x)=h(\|\vec x\|)\frac{\vec x}{\|\vec x\|}$<br/>
-
ある閉区間[a,b]上で定義された区分的に滑らかなベクトル値関数$\vec x=\vec{x}(t)$でこの経路を<br/>
+
は保存力場である。但し、関数hは、実変数の実数値連続関数とする。<br/>
-
$C=\{\vec{x}(t)\mid t\in [a,b]$<br/>
+
証明;<br/>
-
と表現する。<br/>
+
hは連続関数なので、<br/>
-
するとt\in [a,b]で質点Bが受ける力は$\vec{F}(t)=\vec{G}(\vec{x}(t))=k\vec{x}(t)$である。<br/>
+
任意の正数xに対して、定積分$\int_{0}{x}h(x)dx$が存在する。<br/>
-
エネルギー仕事定理を、この力に適用すると、この力が質点Bに行った仕事は、<br/>
+
そこで関数$H(x):=\int_{0}{x}h(x)dx$を導入する。<br/>
-
$W=\int_{[a,b]}(\vec{F}\cdot \frac{d\vec{x}}{dt})(t)dt$<br/>
+
この関数Hを微分すると関数hが得られる。<br/>
-
$=\int_{[a,b]}(k\vec{x}(t)\cdot \frac{d\vec{x}}{dt}(t)dt
+
$U(\vec x):=H(\|x\|)$という多変数関数を定義すると,<br/>
-
=\frac{k}{2} \int_{[a,b]}\frac{d}{dt}(\vec{x}(t)\cdot \vec{x}(t))dt$<br/>
+
合成関数の微分公式より、<br/>
-
$=frac{k}{2}(\vec{x}(b)\cdot \vec{x}(b)-\vec{x}(a)\cdot \vec{x}(a)
+
$\frac{\partial U}{\partial x_i}=\frac{dH}{dy}(\|\vec x\|)\frac{\partial \|\vec x\|}{\partial x_}=h(\|\vec x\|)\frac{\vec x}{\|\vec x\|}={\vec F}_i(\vec x)$<br/>
-
=frac{k}{2}(\|\vec{OQ}\|^2-\|\vec{OP}\|^2$<br/>
+
すでに「力の場が保存的である必要十分条件」中の命題により、<br/>
-
仕事が経路Cに無関係で、PとQにだけ依存することが分かった。
+
保存力場であることが証明された。<br/><br/>
-
(証明終わり)<br/>
+
-
<br/>
+
==== ポテンシャルから力を求める方法 ====
==== ポテンシャルから力を求める方法 ====

2015年2月25日 (水) 17:04時点における版

目次

[非表示]

エネルギーと保存則

質点や質点の集まりの運動を調べるときに有用な
各種の保存法則が、運動の法則から導かれる。
導出の仕方が理解できると、力学への理解が深まる。
下記の記事以外にも、導出法をインターネット検索して調べ、よく考えよう。

エネルギー

物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。

運動エネルギー(kinetic energy)

運動している粒子は、それを止めようとする物体に力を与え、動かすことが出来る。
運動している粒子は,運動に起因する何らかのエネルギーを持っていると考えられる。
止まった段階ではこのエネルギーは零になるので、
運動している粒子の持つエネルギーの量は、止まるまでに使った仕事で計れる。

質量mの粒子が速度\vec vで運動しているとき、
止まるまでになす仕事を求めてみる。
速度方向をx軸とする座標O-xをとる。
力が作用しなければ、粒子はx軸の上をx正方向にむかって、速さv:=\|\vec v\|で等速直線運動を続ける。
この粒子が原点を通過する瞬間(t=0)から、x軸方向の力 F=-f、f>0(負の向き)を、止まるまで与え続ける。この間、粒子は、作用反作用の法則により、 F=f、f>0の力で、止めようとする物体を押し返しながら、止まるまで仕事をし続ける。
止まるまでの距離を求めるため、運動法則を用いる。
この粒子の運動方程式は
m\frac{d^2}{dt^2}x(t)=-f \qquad (1) ,
ここで、x(0)=0,v(0)=v(初期条件)\qquad (2)
(1)式の両辺をmで割り、v(t):=\frac{d}{dt}x(t)を代入すると、
\frac{d}{dt}v(t)=-\frac{f}{m}
この方程式を満たし、初期条件(2)を満たす関数vは、
v(t)=-\frac{f}{m}t+v \qquad \qquad (3)
この式から、粒子が停止する時刻は
t_1=\frac{mv}{f}
このときの粒子の位置は、
\frac{d}{dt}x(t)=-\frac{f}{m}t+v \qquad (4) 
を解いて、停止時刻でのxを求めればよい。
初期条件式(2)を満たす(4)式の解は
x(t)=-\frac{f}{2m}t^2+vt \qquad (4) 
故に、止まる位置は
x(t_1)=-\frac{f}{2m}{t_1}^2+vt_1=\frac{mv^2}{2f}
粒子が止まるまで,なした仕事は、
W=f \frac{mv^2}{2f}= \frac{mv^2}{2}
以上の考察より、粒子の運動エネルギーを次のように決める。
定義;
質量m、速度\vec vの質点の運動エネルギーを、
\frac{mv^2}{2}  
で定める。

仕事エネルギー定理(Work-energy theorem)

仕事エネルギー定理
質量mの質点が力 \vec F(t)を受けて運動している(注参照のこと)。
力は時間に関して連続であるか、区分的に連続(不連続点が有限個しかない)と仮定する。
時刻t の質点の位置を\vec{x}(t)、速度を\vec{v}(t_1)とおく。
すると
ⅰ)時刻t_1から t_2までに力の行う仕事は
W=\int_{[t_1,t_2]}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt
ここで(\vec{F}\cdot \vec{v})(t):=\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)
ⅱ)W=\frac{1}{2}m\|v(t_2)\|^2 - \frac{1}{2}m\|v(t_1)\|^2 すなわち力がなした仕事は、運動エネルギーの変化量に等しい。

(注)万有引力や電磁気力は、場所によって変化するので、
位置ベクトル\vec xにいる質点の受ける力は\vec{G}(\vec x)の形に書ける。 すると、時刻tに質点の受ける力は時間の関数\vec{F}(t):=\vec{G}(\vec{x}(t))となる。
人為的に時間により力を変えて物体の運動を制御することもある。
この場合にも使えるようにした。

証明;
時刻t_1からt_2までの質点の運動の軌跡は、向きのついた曲線
\vec{C}:=\{\vec{x}(t) \mid t_1\leq t \leq t_2\}
で表す。向きは時刻が進むときに進む方向にいれる。
時刻t_1からt_2までを、n個の小区間
[s^{n}_{i-1},s^{n}_i](i=1,2,,,n)に分割する。ここで(s^{n}_0=t_{1}<s^{n}_{1}<s^{n}_{2},,,,<s^{n}_{n}=t_2)
この分割を\Delta^{n}:=\{[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]\mid i=1,2,3,,,n\}と書く。
n個の小区間の長さの最大値を|\Delta^{n}|と記す。|\Delta^{n}|:=\max_{i}(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})
これに対応して、軌跡Cは、n個の小部分\vec{C_i}=\{\vec{x}(t) \mid t \in [s^{n}_{i-1},s^{n}_i] \},(i=1,2,,,n)に分割される。
原点Oを適当に定め、直交座標O-xyzをいれる。
\vec{C_i}の端点をP_{i-1},P_iとおくと、\vec{x}(s^{n}_{i-1})=\vec{OP_{i-1}}\vec{x}(s^{n}_i)=\vec{OP_i}である 。
分割数nを大きくしていくと、|\Delta^n |が零に収束するような、 分割列\Delta^{n},(n=1,2,3,,,,)をとる。  
するとnが十分大きい時、分割\Delta^{n}の各小区間は微小となり、 
その時刻中には質点はほぼ等速直線運動する。このため運動の軌跡C_iは有向線分\vec{P_{i-1}P_i}で近似できる。
力も時刻が[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]の間、ほぼ一定なので、
このなかの任意の時刻{\xi}_i\in [s^{n}_{i-1},s^{n}_i]を代表点として選び、
\vec{F}({\xi}_i)で近似する。
この近似を用いると、仕事の定義から、力がC_iで行った仕事は
W_i(\Delta^n,{\xi}_i)= \vec F({\xi}_i)\cdot \vec{P_{i-1}P_i} =\vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s^{n}_i)-\vec{x}(s^{n}_{i-1})
故に、時間をn等分割したときの仕事Wの近似値は、
W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\sum_{i=1}^{n} W_i(\Delta^n,{\xi}_i)

=\sum_{i=1}^{n} \vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s^{n}_i)-\vec{x}(s^{n}_{i-1})\qquad (1)

ここで、
\vec{x}(s^{n}_i)-\vec{x}(s^{n}_{i-1}) =\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\frac{d\vec{x}(t)}{dt}dt =\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\vec{v}(t)dt
=\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i} \left(\vec{v}({\xi}_i)+(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt
=\vec{v}({\xi}_i)(s^{n}_i-s^{n}_{i-1}) +\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)
この式を(1)式に代入すると、
W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})
=\sum_{i=1}^{n} (\vec{F}\cdot \vec{v})({\xi}_i)(s^{n}_i-s^{n}_{i-1}) +\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot \int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \qquad (2)

(2)式の右辺の第一項は、実数値関数
(\vec{F}\cdot \vec{v})(t):=\vec{F}(t)\cdot\vec{v}(t)
の、n等分割と代表点\{\xi_i\}_{i=1}^{n}に対応するリーマン和
I^{\vec{F}\cdot \vec{v} ,\Delta^n}(\xi_1,,,\xi_n)である。
この関数は区分的に連続なので、
リーマン積分の定理(物理数学のリーマン積分参照)から、積分可能で
W=\lim_{n\to \infty}W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\lim_{n\to \infty}\sum_{i=1}^{n} (\vec{F}\cdot \vec{v})({\xi}_i)(s^{n}_i-s^{n}_{i-1}) =\int_{[t_1,t_2]}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt
である。
補題;(2)式右辺の第2項は、nを無限にしていくと、0に収束する。
記号で書くと、
\lim_{n\to \infty}\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot \int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt=0

この補題を用いると、
W=\lim_{n\to\infty}W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\int_{[t_1,t_2]}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt
これで定理のⅰ)の証明はできた。
定理のⅱ)の証明
運動の第2法則から、\vec{F}(t)=m\frac{d\vec v(t)}{dt}なので、
W=\int_{[t_1,t_2]}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt
=\int_{[t_1,t_2]}(m\frac{d\vec v(t)}{dt} \cdot \vec{v})(t)dt =\frac{m}{2}\int_{[t_1,t_2]}\frac{d}{dt}\vec{v}(t) \cdot \vec{v}(t)dt
=\frac{m}{2}\int_{[t_1,t_2]}\frac{d}{dt}\|\vec{v}(t)\|^2 =\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_2)\|^2-\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_1)\|^2
ⅱ)の証明終わり。

補題の証明;
\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot \int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|
\leq \sum_{i=1}^{n}\| \vec{F}({\xi}_i)\cdot \int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \|
\leq \sum_{i=1}^{n}\| \vec{F}({\xi}_i)\|\|\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|
M:=max_{t\in [t_1,t_2]}\|\vec{F}(t)\|とおくと、
\leq M\sum_{i=1}^{n}\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\|\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|\qquad (3)
\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)=\int_{{\xi}_i}^{t}\frac{d\vec{v}(s)}{ds}ds =\int_{{\xi}_i}^{t}\frac{\vec{F}(s)}{m}ds
なので、
\|\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\| \leq \int_{{\xi}_i}^{t}\|\frac{\vec{F}(s)}{m}\|ds \leq \frac{M}{m}(s^{n}_i-s^{n}_{i-1}) \qquad \qquad (4)
(4)式を(3)式に代入すると
\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot \int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \| \leq \frac{M^2}{m}\sum_{i=1}^{n}(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})^2
ここで、s^{n}_i-s^{n}_{i-1}\leq |\Delta^n|,(i=1,2,,,n)なので、
\leq \frac{M^{2}(t_2-t_1)}{m}|\Delta^n|
故に、
\lim_{n\to\infty}\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot \int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\| \leq \frac{M^{2}(t_2-t_1)}{m}\lim_{n\to\infty}|\Delta^n| =0
補題の証明終わり。

保存力と位置エネルギー

保存力と保存力場

質点がどこにあろうが、その場所\vec xに応じて力\vec{F}(\vec x)が作用するとする。 このような空間を力の場という。
質点が任意の点Pから任意の点Q まで動くとき、
\vec{F}(\vec x)の行う仕事が移動経路に関係なく2点PQだけで決まるならば、
この力を保存力(conservative force ) といい、
このような空間は保存力場という。
    議論を簡単にするため、経路としては、区分的に滑らかな曲線(注参照)に限定する。
(注)曲線\vec{C}を、
[0,1]で定義された
連続でしかも有限個の点を除いて微分可能なベクトル関数の
軌跡で表すことが出来ることをいう。

位置エネルギー 

保存力は次のように言いかえることができる。
物体にかかる力 \vec{F}(\vec x)  に逆らって、
-\vec{F}(\vec x)+\deltaを加えて、
物体をQ点からP点に非常にゆっくり動かす時、
この力-\vec{F}(\vec x) の行う仕事が
移動経路に関係なく2点の位置だけで決まる時、
\vec{F} を保存力という。
ここで力 -\vec{F} は、物体に作用する力 \vec{F} とつり合いをとるための力であり、
\delta は、力がつりあって静止している物体を、
移動経路に沿って、無限にゆっくりと動かすのに必要な、無限に小さい力である。
このため \delta のなす仕事は零とみなせる。

-\vec{F} の行う仕事を、Q 点を基準とした P 点でのこの物体のポテンシャルエネルギー(potential energy)(あるいは位置エネルギー)と言う。

を参照のこと。

力の場が保存的である必要十分条件

命題
\Omegaを空間{\bf R^3}から有限個の点を除いた領域とする。
次の2条件は同値である。 (1)\Omega上で定義された連続な力の場
\vec{F}(\vec x),(\vec x\in \Omega)
保存力場である。
(2)\Omega上で定義され実数に値を取るC^1級関数U(\vec x)が存在して
\vec{F}_i=-\frac{\partial U}{\partial x_i} ,(i=1,2,3)  \qquad \qquad (1)
\Omega上で成り立つこと。
記述を簡略化するため、Uの勾配(gradient)
\mathrm{grad}U(\vec x):=(\frac{\partial U}{\partial x_1}(\vec x), \frac{\partial U}{\partial x_2}(\vec x),\frac{\partial U}{\partial x_3}(\vec x)
を導入すると、
\vec{F}=-\mathrm{grad}U\Omega上で成り立つこと。

ここで\frac{\partial U}{\partial x_i}とは、
U(\vec x)を、独立変数の第i成分 x_i:=(\vec x)_iの関数とみるため
他の変数は固定して、V_i(x_i):=U(x_1,x_2,x_3)という実変数で実数値の関数を考え、
x_iで微分したものを表す。記号で表示すると、
\frac{\partial U}{\partial x_i}(\vec x):=\frac{dV_i}{dx_i}(x_i)
関数\frac{\partial U}{\partial x_i}
変数\vec xに、その点のx_iについての偏微分係数\frac{\partial U}{\partial x_i}(\vec x)を対応させるもので、
x_iについての偏導関数と呼ばれる。
U(\vec x)C^1級とは、
全ての偏導関数\frac{\partial U}{\partial x_i}、(i=1,2,3)が存在し、
しかも連続関数となることをいう。
多変数関数の連続性や微分については、
「第8章 物理数学」の「極限と微分」で要点を説明してある。
証明;
(1)ならば(2)を示す。
領域\Omegaの一点Oを原点にした、直交座標系O-xyzを決める。
この領域の任意の点P(x_1,x_2,x_3)(x_iはPの座標)の、原点からみた、ポテンシャルエネルギー
U(P)=\int_{C(O \to P)}-\vec{F}(\vec y)\cdot \vec{dy}
を定める。この値は経路C(O \to P)に関係なくきまる。
1)\frac{\partial U}{\partial x_1}(\vec x)=-{\vec F}_{1}(\vec x)を示す。
\vec{e_1}:=(1,0,0)とおき、Uの偏微分を定義に従って計算する。
\frac{\partial U}{\partial x_1}(\vec x) =\lim_{\delta \to 0,\delta\neq 0}\frac{U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3)}{\delta}
ここで、
U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3) =-\int_{\{{\vec x}(t)=\vec x+t\vec{e_1}\mid 0\leq t\leq \delta\}}\vec{F}(\vec y)\cdot \vec{dy}
仕事エネルギー定理の(1)で証明したように、
-\int_{0}^{\delta}{\vec F}(\vec{x}(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)}{t}dt
\frac{d\vec{x}(t)}{t}=\vec{e_1}であり、
{\vec F}(\vec{x}(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)={\vec F}_1(\vec{x}(t))となるので
=-\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dt
故に、U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3) =-\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dt

\lim_{\delta \to 0,\delta\neq 0}\frac{U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3)}{\delta}=-\frac{1}{\delta}\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dt
ここで、{\vec F}_1(\vec x+t\vec{e_1})はtの連続関数なので、
|t|が十分小さければ、{\vec F}_1(\vec x)にいくらでも近くなる。
そこで、区間[0,\delta]での平均値
\frac{1}{\delta}\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dtは、
\deltaが零に収束するとき、{\vec F}_1(\vec x)に収束する。
これで(2)が証明できた。
(2)を仮定して(1)を示す。
任意の2点P,Q\in \Omegaに対し、それを結ぶPからQへの区分的に滑らかな曲線
{\vec C}:=\{{\vec x}(t)\mid 0\leq t\leq 1\},{\vec x}(0)=P,{\vec x}(1)=Q
を選んだとき、これに沿って力の成す仕事
W_{\vec C}=\int_{\vec C}{\vec F}(\vec x) \cdot \vec{dx} =-\int_{\vec C}\mathrm{grad}U(\vec x)\cdot \vec{dx} \qquad \qquad (2)
が、曲線に依存しないことを示せば良い。
{\vec C}:=\{{\vec x}(t)\mid 0\leq t\leq 1\} なので 式(2)=-\int_{0}^{1}\mathrm{grad}U(\vec x(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)}{dt}dt
補題;
\frac{dU(\vec x(t))}{dt}=\mathrm{grad}U(\vec x(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)}{dt}
これは、多変数の場合の合成関数の微分公式である。本テキストの「8章 物理数学」 で説明してある。
これを用いると、 式(2)=-\int_{0}^{1}\frac{dU(\vec x(t))}{dt}dt
\frac{dU(\vec x(t))}{dt}の原始関数はU(\vec x(t))なので、
この定積分は
=-U(\vec x(1))+U(\vec x(0))=-U(Q))+U(P)
この値は経路に依存しないので、保存力であることが示された。
証明終わり。


 保存力の十分条件 

万有引力で作られる力の場などは、保存力場である。
これを示すため、もう少し一般の力の場が、保存力場であることを示す命題を述べる。

命題;
領域\Omegaを3次元空間から原点を取り除いた領域とする。
この領域で定義された力の場
{\vec F}(\vec x)=h(\|\vec x\|)\frac{\vec x}{\|\vec x\|}
は保存力場である。但し、関数hは、実変数の実数値連続関数とする。
証明;
hは連続関数なので、
任意の正数xに対して、定積分\int_{0}{x}h(x)dxが存在する。
そこで関数H(x):=\int_{0}{x}h(x)dxを導入する。
この関数Hを微分すると関数hが得られる。
U(\vec x):=H(\|x\|)という多変数関数を定義すると,
合成関数の微分公式より、
\frac{\partial U}{\partial x_i}=\frac{dH}{dy}(\|\vec x\|)\frac{\partial \|\vec x\|}{\partial x_}=h(\|\vec x\|)\frac{\vec x}{\|\vec x\|}={\vec F}_i(\vec x)
すでに「力の場が保存的である必要十分条件」中の命題により、
保存力場であることが証明された。

 ポテンシャルから力を求める方法 

ある基準点Qから見た, 保存力\vec{F}(未知)のポテンシャルエネルギー\phiが既知の時、
\vec{F}を、\phiから求めることができる。
Q点を原点とする直交座標系を1つ固定する。
この力で、質点を位置ベクトル\vec{r} の点から、
位置ベクトル\vec{r}+(\Delta_{x},0,0) の点まで動かす時
\Delta_{x}は微小にとる。
するとこの間の力は一定値\vec{F}(r)で近似できる)、
力のする仕事は、ほぼ \vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}である。
すると、
\phi(\vec r)+\vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}は、
質点を原点から位置ベクトル\vec{r} の点まで動かし、
引き続いて位置ベクトル\vec{r}+(\Delta_{x},0,0) の点まで動かす時の、
力のなす仕事になるので、保存力であることから、\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0)) にほぼ等しい。
従って\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0))\simeq \phi(\vec r)+\vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}
故に \lim_{\Delta_{x} \to 0}\frac{\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0))-\phi(\vec r)}{\Delta_{x}}=\vec{F}_{x}(\vec{r});力のx成分。
同様にして
\lim_{\Delta_{y} \to 0}\frac{\phi(\vec r+(0,\Delta_{y},0))-\phi(\vec r)}{\Delta_{y}}=\vec{F}_{y}(\vec{r});力のy成分。
\lim_{\Delta_{z} \to 0}\frac{\phi(\vec r+(0,0,\Delta_{z}))-\phi(\vec r)}{\Delta_{z}}=\vec{F}_{z}(\vec{r});力のz成分。

力学的エネルギーと力学的エネルギー保存則(kinetic energy and conservation of kinetic energy )

力学的エネルギーは

を見てください。
仕事エネルギー定理の仕事量W(=\vec{F}\cdot\vec{PQ} 。 ここで\vec{PQ} は変位ベクトル)をきめる力\vec{F}が 保存力\vec{Fc}と外力\vec{Fo}の和からなるとき、
W=(\vec{Fc}+\vec{Fo})\cdot\vec{PQ}=\vec{Fc}\cdot\vec{PQ} +\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}
=Pのポテンシャルエネルギー(U(P)-U(Q))+\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}となる。
一方仕事エネルギー定理から、W=\frac{1}{2}m{V(Q)}^2-\frac{1}{2}m{V(P)}^2なので、この両式から、
\left(\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)\right)-\left( \frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P)\right)=\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}が得られる。
もし保存力以外の力\vec{Fo} が零ならば、\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)=\frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P) (力学エネルギー保存則)が得られる。
もっと知りたい方は次をどうぞ。


エネルギー保存則は物理学のなかで最も基本的な原理です。
熱エネルギーも含めたもっと一般的なエネルギー保存則は、後の章で学びます。

運動量と保存則

運動量と力積 (momentum or linear momentum and Impulse)

質点に力\vec{F}(t)が作用しているとする。
運動の第2法則\vec{F}(t)=\frac{d\vec{p}(t)}{dt} の両辺を
時間に関してt_1から t_2まで積分してみよう。ここで\vec{p}(t)=m\vec{v}(t)は質点の運動量。
すると、
\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)dt=\vec{p}(t_2)-\vec{p}(t_1)
となる。
質点に作用する力を時間で積分した\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)dtを力積と呼ぶ。
力積は、運動量の変化に等しい。

n個の質点を持つ質点系の運動量は、各質点の運動量の和で定義する。
この場合にも質点系への力積は質点系の運動量の変化に等しいことが、
運動の第2法則から導ける。

運動量保存則( law of conservation of momentum )

質点の場合、外力がなければ、その運動量は保存される(一定である)。
質点系(質点の集まり)の場合でも、質点系に作用する外力のベクトル和が零ならば、
内力(質点系内の質点間に働く力)があっても、運動量が保存されることが示せる。(注)
これを運動量保存則とよぶ。

(注)質点系の各質点の位置を\vec{r_i}、質量をm_i とし、
質点m_i に作用する外力を\vec{f_i}
m_i に、質点系の他の質点m_j から作用する内力を\vec{f_{ij}}とする(i,j=1 \ldots N)。
すると、各質点に対して、運動の第2法則により、
\frac{d\vec{p}_i(t)}{dt}=\vec{f_i}+\sum_{j\neq i}\vec{f_{ij}}  
各ベクトルを自由ベクトルとみなして,上の式をi=1 \ldots Nについて加え合わせると、
\sum_i{\vec{f_i}}=0 \qquad \vec{f_{ij}}+\vec{f_{ji}}=0(作用反作用の法則)なので、
\frac{d}{dt} \sum_i{\vec{p}_i(t)} =0
が得られる。ゆえに、\sum_i{\vec{p}_i(t)}は保存される。


保存則の応用

衝突の問題

2質点の衝突

力学に必要な物理量(時間、距離、速度、加速度、質量、力)の単位と単位変換

個人用ツール