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物理/積分

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(リーマン積分と可積分条件)
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==リーマン積分と可積分条件==
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この節は、区間上で定義された関数のリーマン積分の初歩を述べる。<br/>
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参考記事
参考記事
*[[Wikipedia_ja:リーマン積分 |ウィキペディア(リーマン積分)]]
*[[Wikipedia_ja:リーマン積分 |ウィキペディア(リーマン積分)]]
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if(ξi)v(Vi)=if(ξi)(xixi1) <br/>
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y=f(x)のグラフとx軸、および2直線x=ax=bで囲まれる部分の面積を近似している。<br/>
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===リーマン可積分===
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記号で書くと<br/>
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fを、有界閉区間V上で定義され、実数の値をとる関数とする。<br/>
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命題5 積分区間に関する加法性<br/>
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===リーマン和の不足リーマン和と過剰リーマン和による評価===
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リーマン和を、代表点の選び方を変えて求めるとその値は変化する。<br/>
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そこで、その最小値と最大値を求め、差を計算する。<br/>
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証明は明らかなので省略。<br/>
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これらから、命題は成立することが分かる。<br/><br/>
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===不足リーマン和の上限と過剰リーマン和の下限===
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補題2から、分割の細分を繰り返していくと、その分割に対応する、<br/>
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不足リーマン和は、広義増加(増加するか、同じ値にとどまる)し、<br/>
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そこで最大値に近い命題を持つ上限と最小値に近い下限という概念を利用する。<br/>
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下限S(f)は、下界のなかの最大値なのでs(f)S(f)を得る。<br/>
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===分割を細かくしていくときの不足リーマン和と、過剰リーマン和の極限===
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を満たすことが証明できた。証明終わり。<br/>
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===区分的に連続(有限個の点を除いて連続)な閉区間上の関数は積分可能===
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色々な関数のグラフを書くとつながっているところを、跳んでいるところが出来る。<br/>
色々な関数のグラフを書くとつながっているところを、跳んでいるところが出来る。<br/>
y=Xのグラフはずっとつながっている。<br/>
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すると区分的連続なベクトル値関数の各成分は区分的連続なので積分可能となり、<br/>
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===原始関数を用いるリーマン積分の計算  ===
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=== 一変数関数の変数変換      ===
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==== 積分計算を便利にする記号法      ====
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=== 2変数関数のリーマン積分  ===
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概要のみ記す。

2015年3月21日 (土) 04:57時点における版

目次

[非表示]

リーマン積分と可積分条件

この節は、区間上で定義された関数のリーマン積分の初歩を述べる。
具体的には、リーマン積分の定義とリーマン積分が存在する(可積分)条件
について、数学的厳密性を保つように記述する。
参考記事

区間上の関数のリーマン和

区間V=[a,b]で定義され、実数に値をとる関数y=f(x)を考える。
この区間の分割
Δ={Vi=[xi1,xi]i=1,2,,,n},x0=a,xn=b
と、その代表点ξiVi(i=1,2,,,n)に関する、y=f(x)のリーマン和とは、
If,Δ(ξ1,,,ξn)=
if(ξi)v(Vi)=if(ξi)(xixi1)
で定義する。

リーマン和の意味 

リーマン和は、
y=f(x)のグラフを、棒グラフで近似したときの
棒グラフの作る面積(各角柱の面積和)であることが分かる。図参照。
y=f(x)のグラフとx軸、および2直線x=ax=bで囲まれる部分の面積を近似している。

リーマン可積分

リーマン可積分とリーマン積分の定義

分割を細かくしていくとき、
分割の仕方や代表点の選び方に関係なく
リーマン和がある一定値に収束するとする。
すると、この値は
y=f(x)のグラフとx軸、および2直線x=ax=bで囲まれる部分の面積
と考えられる。
定義;
Δ={Vi=[xi1,xi]i=1,2,,,n}の大きさd(Δ)とは、
この分割で得られた小区間の長さの、最大値で定義する。
記号で書くと
d(Δ)=max{xixi1i=1,2,,,n}
定義;リーマン可積分とリーマン積分
fを、有界閉区間V上で定義され、実数の値をとる関数とする。
もし、ある実数Iが存在して、
どんな分割Δ={Vi=[xi1,xi]i=1,2,,,,n}
代表点ξiVi(i=1,2,,n)であっても、
limd(Δ)0If,Δ(ξ1,,,ξn)=I
が成り立つ時、
fV上で(リーマン)可積分であるという。
このとき、IfV上での(リーマン)積分といい、
I=Vf=Vf(x)dx
などと書く。

リーマン積分の命題

命題1 線形性
命題2 積分の単調性
命題3 平均値定理
命題4 三角不等式
命題5 積分区間に関する加法性

リーマン和の不足リーマン和と過剰リーマン和による評価

リーマン和を、代表点の選び方を変えて求めるとその値は変化する。
そこで、その最小値と最大値を求め、差を計算する。
もしこの差が分割を細かくしていくと零に収束するならば、可積分となろう。
以下、この方針で議論を進める。
Vを分割して得られた小区間Vi=[xi1,xi]を考える。
関数y=f(x)をこの小区間上に限定した時、
関数は、この区間上の点で最大値と最小値をとると仮定する(注参照)。
関数の最大値max{f(x)xVi}と最小値min{f(x)xVi}を、
それぞれ、m(f;Vi),M(f;Vi)と書く。
(注) 区間上で最大値、最小値を取らない関数では、
有界な関数でありさえすれば、最大値、最小値と殆ど同じ命題をもち、常に存在する
上限、下限に置き換えれば以後の、議論は成り立つ。
上限、下限については「不足リーマン和の上限と過剰リーマン和の下限」で説明する。

すると、Viの任意の点ξ に対して、
m(f;Vi)f(ξ)M(f;Vi)  
故に、
補題1
ⅰ)どのような代表点{ξi}i,(ξiVi,i=1,2,,,n)に対しても
Im(f,Δ):=If,Δ(ξm1,,,ξmn)=im(f;Vi)v(Vi)
If,Δ(ξ1,,,ξn)=if(ξi)v(Vi)
iM(f;Vi)v(Vi)=IM(f,Δ)=If,Δ(ξM1,,,ξMn) (1)
そこで、Im(f,Δ)Δ)に関するf不足リーマン和IM(Δ)過剰リーマン和と呼ぶ。
ⅱ)Im(f,Δ)=minξiVi,i=1,2,,,nIf,Δ(ξM1,,,ξMn) 
IM(f,Δ)=maxξiVi,i=1,2,,,nIf,Δ(ξM1,,,ξMn) 
証明は明らかなので省略。

分割の細分とリーマン和の評価式

定義;分割の細分
Vの分割Δが分割Δの細分というのは、
Δの分点の集合{x0,x1,,,,xn}が、
Δの分点の集合{x0,x1,,,,xn}に真に含まれることと定義する。
記号でかけば、{x0,x1,,,,xn}{x0,x1,,,,xn},{x0,x1,,,,xn}{x0,x1,,,,xn}
記号では、ΔΔと記す。


補題2
Δ Δという分割に対し、
Im(f,Δ)Im(f,Δ)IM(f,Δ)IM(f,Δ)(2)
が成り立つ。
(証明)
Δの小区間Vi=[xi1,xi]が分割Δでは、
{Vj=[xi1,xj],Vj+1=[xj,xi]}の2つに分割されたとする。

すると、区間上の関数の最大値と最小値の定義から、
m(f;Vi)m(f;Vj) m(f;Vi)m(f;Vj+1)
M(f;Vi)M(f;Vj) \quad M(f;V_i) \geq M(f;V'_{j+1})
これらから、命題は成立することが分かる。

不足リーマン和の上限と過剰リーマン和の下限

補題2から、分割の細分を繰り返していくと、その分割に対応する、
不足リーマン和は、広義増加(増加するか、同じ値にとどまる)し、
過剰リーマン和は、広義減少する。
分割を細かくしていったとき、これらの極限が一致すれば、補題1から、
リーマン和の極限値は、代表点に無関係に、定まることになる。

そこで色々な分割に対応する不足リーマン和のなかの最大値と
過剰リーマン和の最小値を求めることが、重要になる。
しかし一般にはこれらは存在しないことが示せる。
そこで最大値に近い命題を持つ上限と最小値に近い下限という概念を利用する。

2つの分割の共通の細分

分割\Deltaの分点の集合\{x_j \mid j=1,2,,,m\}と、
分割{\Delta}' の分点の集合\{x'_j \mid j=1,2,,,n\}
和集合\{x_j \mid j=1,2,,,m\} \cup \{x'_j \mid j=1,2,,,n\}を分点とする分割を\Delta \vee {\Delta}'と書く。
すると新しい分割は
\Delta \leq \Delta\vee {\Delta}' \qquad  と {\Delta}' \leq \Delta\vee {\Delta}' \quad
を満たす。
これを用いると、
不足リーマン和の上限\mathscr{s}(f)
過剰リーマン和の下限\mathscr{S}(f)が存在することが証明できる。

補題5
fを区間V=[a,b]で定義され実数値をとる有界関数
すなわち、\{f(x)\mid x\in V\}{\bf R}の有界部分集合となる関数とする。
V=[a,b]の分割を全て集めて作った集合を\mathscr{D}(V)と書く。
すると、
ⅰ)任意の\Delta,{\Delta}'\in \mathscr{D}(V)に対して、
I_m(f,\Delta) \leq I_M(f,{\Delta)}')
ⅱ)集合\{I_m(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は上に有界、
集合\{I_M(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は下に有界
ⅲ)\mathscr{s}(f):=\sup\{I_m(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}
\mathscr{S}(f):=\inf\{I_M(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は存在し、
\mathscr{s}(f) \leq \mathscr{S}(f) 
証明;
ⅰ)\Delta \leq \Delta\vee {\Delta}' なので、補題2から、
I_m(f,\Delta) \leq I_m(f,\Delta\vee {\Delta}')  \leq I_M(f,\Delta\vee {\Delta}')  \leq I_M(f,{\Delta}')
ⅱ)1)で証明した不等式で、分割{\Delta}' は固定する。
すると全ての分割 \Deltaに対して、I_m(f,\Delta) \leq I_M(f,{\Delta)}')なので
集合\{I_m(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は、上界I_M(f,{\Delta)}')を持ち、上に有界である。
後者も同様にして下に有界であることが示せる。
ⅲ)従って、実数の連続性の公理から、
集合\{I_m(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は上限\mathscr{s}(f)をもち、
集合\{I_M(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は下限\mathscr{S}(f)をもつ。
上限は、上界の中の最小値なので、
\mathscr{s}(f)\leq I_M(f,{\Delta}')
この式は任意の{\Delta}'について成立するので、
\mathscr{s}(f)は、集合\{I_M(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}の下界である。
下限\mathscr{S}(f)は、下界のなかの最大値なので\mathscr{s}(f) \leq \mathscr{S}(f)を得る。

分割を細かくしていくときの不足リーマン和と、過剰リーマン和の極限

定理(ダルブー;Darboux)
V=[a,b]
fを、Vで定義され、実数に値を取る有界関数とする。
このとき、
ⅰ)\lim_{d(\Delta) \to 0}I_m(f,\Delta)=\mathscr{s}(f)
ⅱ)\lim_{d(\Delta) \to 0}I_M(f,\Delta)=\mathscr{S}(f)
証明;
ⅰ)を示す。( ⅱ)は同じようにして証明できるので略す)
これを示すには、
どんなに小さい正の実数\epsilonに対しても、それに応じた小さい正の実数\delta_{\epsilon}を適切に選べば、
分割の大きさが\delta_{\epsilon}より小さい、どんな分割\Deltaも、
\mathscr{s}(f)-I_m(f,\Delta)<\epsilon
であることを示せばよい。
以下に、数段階に分けて、これを証明する。

\quad 1) 上限の命題(補題3)から、
ある分割
D=\{{V^D}_i=[{x^D}_{i-1},{x^D}_i] \mid i=1,2,,,n\}in \mathscr{D}(V)
が存在して、
\mathscr{s}(f)-I_m(f,D)<\frac{\epsilon}{2} \qquad (1)
今後このDを使って、証明を進める。

\quad 2)
分割Dの小区間{V^D}_iの長さ({x^D}_i-{x^D}_{i-1})(i=1,2,,,n)の 最小値をeとおくと
e=min_{i=1}^{n}({x^D}_i-{x^D}_{i-1})
eに比べて非常に小さい大きさを持つ分割、
\Delta=\{V^{\Delta}_i=[{x^{\Delta}}_{i-1},{x^{\Delta}}_i] \mid i=1,2,,,N\}
d(\Delta)=max_{i=1,2,,,N}({x^{\Delta}}_i-{x^{\Delta}}_{i-1}) \ll e

を考える。
もし、D \leq \Deltaならば補題2より、
I_m(f,D) \leq I_m(f,\Delta)
すると\mathscr{s}(f)-I_m(f,\Delta)\leq \mathscr{s}(f)-I_m(f,D) \leq \frac{\epsilon}{2}\leq \epsilon 
通常、分割\Deltaは、Dの細分になっていない。
この場合は、高々(n-1)個の\Deltaの小区間が、Dの小区間には含まれず、
Dの分点{x^D}_i(i=1,2,,,n-1)をまたぐことになる。図参照のこと。
議論を簡単にするため、
Dの分点{x^D}_i(i=1,2,,,n-1)が全て、\Deltaの小区間によって跨がれている
と仮定し、議論を進める。
他のケースでも、証明はおなじようにできるので、
このように仮定しても何の問題も起こらない。
Dの分点{x^D}_iを跨ぐ\Deltaの小区間をV^{\Delta}_{m_i}とする(i=1,2,,,n-1)。
\quad 3)
2つの分割D、\Deltaから{\Delta}':=D \vee \Deltaを作る。
すると
{\Delta}'=\{V^{\Delta}_1,V^{\Delta}_2,,,,,,,,,V^{\Delta}_{m_{1}-1},
\qquad \quad [x^{\Delta}_{m_{1}-1},x^{D}_1],[x^{D}_1,x^{\Delta}_{m_{1}}],
\qquad \quad V^{\Delta}_{m_{1}+1},V^{\Delta}_{m_{1}+2},,,,,,,,,V^{\Delta}_{m_{2}-1},
\qquad \quad [x^{\Delta}_{m_{2}-1},x^{D}_2],[x^{D}_2,x^{\Delta}_{m_{2}}],
\qquad \quad V^{\Delta}_{m_{2}+1},V^{\Delta}_{m_{2}+2},,,V^{\Delta}_{m_{3}-1},

\qquad \quad ,,,,,,,,,

\qquad \quad V^{\Delta}_{m_{n-1}+1},V^{\Delta}_{m_{n-1}+2},,,,,,,,,V^{\Delta}_N\} \qquad (2)
と書ける。

\Delta \leq {\Delta}'で、 D \leq {\Delta}' なので、
I_m(f,\Delta) \leq I_m(f,{\Delta}'), \quad I_m(f,D) \leq I_m(f,{\Delta}')
後者の式から、
0 \leq \mathscr{s}(f)-I_m(f,{\Delta}') \leq \mathscr{s}(f)-I_m(f,D)
この式と(1)式から、
0 \leq \mathscr{s}(f)-I_m(f,{\Delta}')<\frac{\epsilon}{2}
そこで、
d(\Delta) \to 0 ならば、I_m(f,{\Delta}')-I_m(f,\Delta)<\frac{\epsilon}{2}
が示せれば、
0 \leq \mathscr{s}(f)-I_m(f,\Delta)
=(\mathscr{s}(f)-I_m(f,{\Delta}')+(I_m(f,{\Delta}'-I_m(f,\Delta)\leq \epsilon
が示され、証明が終わる。
\quad 4)
I_{m}(f,\Delta)=\sum_{i=1}^{N} m(f;V^{\Delta}_i)v(V^{\Delta}_i) であり、
(2)式から、
I_m(f,{\Delta}')
=\sum_{i\notin \{m_1,m_2,,,,m_{n-1}\}} m(f;V^{\Delta}_i)v(V^{\Delta}_i)
+\sum_{k=1}^{n-1} m(f;[x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])v([x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])
+\sum_{k=1}^{n-1} m(f;[x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])v([x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])
なので、
I_m(f,{\Delta}')-I_m(f,\Delta)
=\sum_{k=1}^{n-1} m(f;[x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])v([x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])
+\sum_{k=1}^{n-1} m(f;[x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])v([x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])
-\sum_{i\in \{m_1,m_2,,,,m_{n-1}\}} m(f;V^{\Delta}_i)v(V^{\Delta}_i)
関数はV上で有界なので、適切に正の実数Mを選ぶと、xVの要素ならば
|f(x)|\leq Mが成立する。
すると|m(f;[x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])|, |m(f;[x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])| \leq M
が成り立つ。また
v(V^{\Delta}_{m_k}) =v([x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])+v([x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])で、
v(V^{\Delta}_i)\leq d(\Delta)
なので
|I_m(f,{\Delta}')-I_m(f,\Delta)|\leq 2M\sum_{i\in \{m_1,m_2,,,,m_{n-1}\}} v(V^{\Delta}_i)\leq 2M(n-1)d(\Delta)
そこで、
\delta_{\epsilon}=\frac{\epsilon}{4Mn} と選べば、
d(\Delta)\leq \delta_{\epsilon}をみたすどのような分割\Deltaも、
0\leq I_m(f,{\Delta}')-I_m(f,\Delta)|\leq \frac{\epsilon}{2}
を満たすことが証明できた。証明終わり。

可積分条件

定理;可積分条件 
V=[a,b]
fを、Vで定義され、実数に値を取る有界関数とする。
次の条件のうち1つが成立すれば、残り2つは成立する(互いに同値という)。
ⅰ)fV上で(リーマン)可積分
ⅱ)\lim_{d(\Delta) \to 0}(I_M(f,\Delta)-I_m(f,\Delta))=0
ⅲ)\mathscr{S}(f)=\mathscr{s}(f)

証明
ⅰ)を仮定する。ⅱ)が成立することを示そう。
fの積分値を\alphaとおくと、可積分の定義から、
任意の\epsilon>0に対して、\delta>0が存在して、
d(\Delta)<\deltaである任意の分割と、その分割の任意の代表点\xi_i,(i=1,2,,,)に対し,
|I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n)-\alpha |<\frac{1}{2}\epsilon
が成立する。
変形すると
\alpha-\frac{1}{2}\epsilon <I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n) <\alpha+\frac{1}{2}\epsilon \qquad (1)  
ここで、補題1のⅱ)から、
\inf_{\{\xi_i\}}I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n) =I_{m}(f,\Delta)
\sup_{\{\xi_i\}}I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n) =I_{M}(f,\Delta)
なので、
(1)式から、
\alpha-\frac{1}{2}\epsilon \leq I_{m}(f,\Delta) \leq I_{M}(f,\Delta) \leq \alpha+\frac{1}{2}\epsilon
これより、任意の\epsilon>0に対して、\delta>0が存在して、
d(\Delta)<\delta \implies (0\leq I_{M}(f,\Delta)-I_{m}(f,\Delta)\leq \epsilon)
ⅱ)が示せた。
ⅱ)を仮定する。 ⅲ)が成り立つことを示す。

I_{m}(f,\Delta) \leq \mathscr{s}(f):=\sup_{\Delta}I_{m}(f,\Delta) \leq \mathscr{S}(f):=\inf_{\Delta}I_{M}(f,\Delta) \leq I_{M}(f,\Delta)
なので、
0 \leq \mathscr{S}(f)-\mathscr{s}(f) \leq I_{M}(f,\Delta)-I_{m}(f,\Delta)
故に、分割を細かくしていき、極限をとると、
0 \leq \mathscr{S}(f)-\mathscr{s}(f) \leq \lim_{d(\Delta)\to 0}(I_{M}(f,\Delta)-I_{m}(f,\Delta))
ⅱ)が成立するので、
=0
ⅲ)が示せた。
ⅲ)を仮定する。 \alpha=\mathscr{S}(f)=\mathscr{s}(f)とおく。
ⅰ)が成り立つことを示そう。
補題1のⅰ)から、どのような分割\Deltaと、その代表点\{\xi_i\}_{i}, (\xi_i \in V_i,i=1,2,,,n)に対しても
I_{m}(f,\Delta) \leq I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n) \leq I_{M}(f,\Delta)
ここで、ダルブーの定理から、
\lim_{d(\Delta) \to 0}I_{m}(f,\Delta)=\mathscr{s}(f)=\alpha,
\lim_{d(\Delta) \to 0}I_{M}(f,\Delta)=\mathscr{S}(f)=\alpha
が成り立つので、
\lim_{d(\Delta) \to 0}I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n)=\alpha 
が成り立つ。
ⅰ)が示せた。

区分的に連続(有限個の点を除いて連続)な閉区間上の関数は積分可能

色々な関数のグラフを書くとつながっているところを、跳んでいるところが出来る。
y=Xのグラフはずっとつながっている。
関数y=f(x)を、
x<0のとき f(x)=0, 0\leq xのとき f(x)=1
で定義すると、
x=0のところでそのグラフは跳んでいる。
連続や不連続は関数の非常に重要な性質であり、
それを調べることはとても豊かな知識をもたらす。

定理 
有界閉区間上V=[a,b]で定義され、実数に値を取る連続関数fは、V上で可積分である。
略証;
有界閉区間上の連続関数は一様連続なので、
任意の\epsilon>0に対して、\delta>0が存在して、
|x-x'|\leq \deltaを満たすVの任意の2点に対して、
|f(x)-f(x')|< \frac{\epsilon}{b-a}
が成立する。
V=[a,b]の分割\Deltaを細かくして、
d(\Delta)<\delta
を満たすようにする。
すると、その分割によって得られた小区間V_i(i=1,2,,,n)の長さは、
全て\deltaより小さくなるので、
\sup \{f(x)\mid x\in V_i\}-\inf\{f(x)\mid x\in V_i\}<\frac{\epsilon}{b-a}
M(f;V_i),m(f;V_i)の定義から
M(f;V_i)-m(f;V_i)<\frac{\epsilon}{b-a}, (i=1,2,,,n) これを用いると、
I_M(f,\Delta)-I_m(f,\Delta)=\sum_{i=1}^{n} M(f;V_i)v(V_i)-\sum_i m(f;V_i)v(V_i)
=\sum_i(M(f;V_i)- m(f;V_i))v(V_i) \leq \sum_i \frac{\epsilon}{b-a}v(V_i) =\frac{\epsilon}{b-a}\sum_{i=1}^{n}v(V_i) =\frac{\epsilon}{b-a}(b-a) =\epsilon
故に、
任意の\epsilon>0に対して、\delta>0が存在して、
d(\Delta)<\deltaを満たす任意の分割\Deltaにたいして、
I_M(f,\Delta)-I_m(f,\Delta)\leq \epsilonが示せた。
\mathscr{S}(f)-\mathscr{s}(f)\leq I_M(f,\Delta)-I_m(f,\Delta)
なので
\mathscr{S}(f)-\mathscr{s}(f)\leq \epsilon
が任意の\epsilon>0にたいして成立する。故に
\mathscr{S}(f)=\mathscr{s}(f)
可積分条件のⅲ)が示せた。証明終わり。

定理の系;有界閉区間上で定義され、区分的に連続な(有限個の不連続点をもつ)実数値関数fは積分可能である。
証明は容易なので略す。

ベクトル値関数の場合

ベクトル値関数\vec fの場合も、リーマン和とリーマン可積分の定義は実数値関数の場合と変わらない。
可積分条件については、
座標系をいれ、関数の各座標成分\vec{f}_x,\vec{f}_y,\vec{f}_zを考える。ここで、\vec{f}_x(t):=\vec{f}(t)_xである。他も同様。
すると区分的連続なベクトル値関数の各成分は区分的連続なので積分可能となり、
\vec fの積分可能性が示せる。

原始関数を用いるリーマン積分の計算

一変数関数の変数変換

積分計算を便利にする記号法

2変数関数のリーマン積分

概要のみ記す。

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