物理/光と光波
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==== 可視光の波長 ==== | ==== 可視光の波長 ==== |
2016年6月6日 (月) 05:43時点における版
目次[非表示] |
光と光波
可視光と呼ばれる、目に見える光は、1つの媒質中では、粒子のように直進する(注参照)。
しかし、同時に、回折や干渉という波としての性質も示す。
光の(粒子と波動の)二重性という。
そこで長い間、光の粒子説と波動説が対立してきた。
19世紀における電磁気学の発展により電磁波が発見され、
可視光は周期がある帯域の中にある電磁波であることが分かった。
電磁波については、次章で簡単な紹介をする。
こうして最終的には、光は波であることで決着したかに思われたが、
20世紀になって、光を粒子と考えなければ、説明がつかない
光の光電効果がみつかった。
現代の物理学では、原子レベルの微粒子はすべて、同時に波動の性質をもち、
マクロレベルで観測される2重性の原因であると理解されている。
これらについては6章で簡単に説明する。
(注)単に光というときは、
可視光のほかに赤外線、紫外線を含める。
光の伝わり方
光の速さ
光速の測定
フィゾーの実験(外部リンク)
真空中の光速
真空中では全ての波長の光の速さは同一である。
現代の物理学では
真空中の光の速さcは最も基本的な物理定数であり、
c=2.99792458×108m/s
である。
物質中の光速
物質中では光は遅くなる。
例えば、空気中では、少し遅くなるだけだが、
水中ではおよそ2.25×108m/sであり、かなり遅くなる。
また同じ物質中でも、光は波長によって、速さが多少変わる。
これを利用して白色光の分光ができる(プリズム、虹など。後述)。
可視光と物体の色
可視光の波長
可視光の真空中での波長は、
一番長い赤色で 770nm=7.70×10−7m 程度で
一番短い紫色が 380nm=3.80×10−7m 程度である。
物体の色
太陽光は全ての波長の可視光を同じように含む。
このためは太陽光は、白色光とよばれ、色合いの感覚を与えない光である。
この光が物体にあたると、その一部は吸収され、残りは、反射したり、透過する。
我々の目に入る光は反射光と透過光であり、その波長により見える色が決まる。
赤く見える物体は、赤色をよく反射・透過し、その他の色をたくさん吸収する。
赤色LED照明のように、特定の波長しか出さない光の下で、物体をみると、
あらゆる物体が、濃淡は異なるが光源と同じ色に見える。
光の反射と屈折
光も波なので、「4.1 波の性質」で説明したホイヘンスの原理が成立ち、
反射の法則や屈折にかんするスネルの法則が成り立つ。
反射の法則
反射は、反射境界面の法線(注参照)と入射光線を含む平面内で起こり、
入射角と反射角は等しい。
スネルの法則
媒質1から媒質2に進入する光の屈折は、その境界面の法線(注参照)と入射光線を含む平面内で起こる。
媒質1中の光速を c1 、媒質2中の光速を c2 とすると、
媒質1から媒質2に光が進入するときの入射角 θ1 と屈折角 θ2 の間には
sinθ1sinθ2=c1c2(1)
が成立つ。
定義;
n12:=c1c2=sinθ1sinθ2(2)
を媒質1に対する媒質2の屈折率(相対的屈折率)という。
命題
光の媒質 i 中の速さを ci 、
媒質 i に対する、媒質 j の屈折率を
nij:=cicj とする(i,j=1,2,3)。
このとき、任意のk(=1,2,3)に対して
nij=nkj/nki(3)
が成立する。
証明;
nij=cicj=cickckcj=1nkinkj
全反射
水中から大気との境界(水面)に入射角θ2で入射した光は、
一部は屈折して、屈折角(水面の垂線との角度のこと)θ1で
大気中に進入する。
残りは、水中に反射される。
このとき、スネルの屈折の法則から、
sinθ1sinθ2=c1c2>1
ここで、c2 は水中での光速、c1 は大気中での光速。c2<c1
そこで、入射角θ2が大きくなっていくと、屈折角θ1 は90度(sinθ1=1)になる。
このときの入射角は1sinθ2=c1c2
を満たす。変形して、
sinθ2=c2c1
θ2=sin−1c2c1(4)
で与えられる。
この入射角を臨界角という。
臨界角より大きな入射角では、光は屈折できなくなり、すべて反射するようになる。
全反射という。
屈折率(絶対屈折率)
真空中の光速cを物質中の光速c1(より正確には位相速度)で割った値 n1:=cc1<1 を、その物質の屈折率(refractive index)という(注参照)。
光が真空中からこの物質に入射するときの屈折率に等しい(スネルの法則)。
相対屈折率と区別するため、絶対屈折率ともいう。
n12=c1c2=cc2/cc1=n2/n1
光の干渉と回折
ヤングの干渉実験
回折
光は波長が非常に短いのであまりはっきりした回折をおこさず、直進するようにみえる。そのため、粒子説も唱えられた。 しかし、十分にせまい隙間(スリット)をつくり、そこに光を通すと、回折の結果、光はスリット幅より広がりぼんやりとして、回折していることがわかる。
回折格子
格子状のスリットによる回折を利用して干渉縞を作ることができる。
幾何光学
光の波長は大変短く、巨視的な現象においては無視でき、
粒子のように直進するように見える。
この光の直進性を前提にして、光の進路を幾何学的な直線として扱い、
幾何学・数学を利用して光の性質を調べる方法が幾何光学である。
このときの指導原理にフェルマーの原理がある。
フェルマーの原理と反射と屈折の法則
フェルマーの原理
この原理は、「任意の2点A,B(A≠B)を通る光は、その間を、通過にかかる時間を最小にする経路(最短時間経路)にそって進む」というもの(注参照のこと)。
フェルマーの原理を用いて反射や屈折現象を説明できる。
(注)多少厳密にいえば、通過に要する時間が極小値をとる経路。
厳密にいえば、2点を通過するあらゆる滑らかな曲線のうち、
それに沿った通過時間が、停留値をとる曲線にそって光は進行する。
この原理に従って経路を求めるには、変分法という方法が必要になる。
本テキストの範囲をこえるので、扱わない。
フェルマー原理に基づく、光の直進、反射の法則、屈折の法則の証明
(1)直進性
命題4.1; 同じ媒質中では、光は直進する。
同じ媒質では光の速さは一定なので、最短経路が最短時間経路になる。
2点を結ぶ最短経路は直線なので、光は直進する。
(2)反射の法則
直進性の場合と殆ど同じように証明できる。
(3)屈折の法則
図のように、媒質 i での光速を ci(i=1,2) として、
媒質1の点A(x1,y1)から出て、媒質2の点B(x2,y2) を通る光を考える。
入射角を θ1、反射角を θ2、光が媒質2に入射する点を P(x,0) とする。
命題4.2
入射角 θ1 と反射角 θ2 の間には
sinθ1sinθ2=c1c2
という関係が成立つ。
証明;媒質1中の光の経路長は l1=√(x−x1)2+y21
媒質2中の光の経路長は l2=√(x2−x)2+y22
通過にかかる時間は、 t=t(x)=l1c1+l2c2
これを最小にするxが満たす(必要)条件は
t′(x)=dtdx(x)=0
これを計算すると、
1c1x−x1l1=1c2x2−xl2
を得る(注を参照のこと)。
ここで、 x−x1l1=sinθ1、 x2−xl2=sinθ2 なので、
1c1sinθ1=1c2sinθ2
この式から所望の結果が得られる。証明終わり。
(注)dl1dx(x)=ddx((x−x1)2+y21)12
合成関数の微分法則を用いて計算すると、
=12((x−x1)2+y21)−12ddx((x−x1)2+y21)=12l12(x−x1)=x−x1l1
故に、dl1dx(x)=x−x1l1
同様にして
dl2dx(x)=−x2−xl2
0=t′(x)=dtdx(x)=1c1x−x1l1−1c2x2−xl2
レンズ
レンズとは、ガラスなど透明な物質を、両面が球面の一部になるような形状にし、両面を磨いたもの。
周りの媒質との屈折率の違いを利用して、レンズ両面で光を屈折させて、
光線束を収束させたり、発散させたりする、光学部品である。
凸レンズ、凹レンズなどがある。
望遠鏡、顕微鏡、メガネ等々に利用され、大変重要な道具である。
レンズの性質を調べるのには、幾何学的光学が利用される。
球面鏡
虚像
物体の各点から出た光が、
レンズを通過したときや反射鏡で反射したときなどで、
それらの光線が発散して像を結ばず、
その光線を逆向きに延長すると像を作るとき、この像を虚像という。
屈折による虚像
2つの媒質が平面状の境界で接触(例;水と大気。水面が境界面)しているとき、
一方の媒質中の物体を、他の媒質中にいる人間が見ると、
物体の任意の点Pから出た光が、屈折して人間の目に入ってくる。
P点から出た光線の作るP点の像は、
実際のP点ではなく、
両目に入ってくるp点の光線を逆に伸ばして、交わるところにできる。
これも虚像である。
レンズによる屈折
視覚とレンズ
虚像
物体の各点から出た光が、
レンズを通過したときや反射鏡で反射したときなどで、
それらの光線が発散して像を結ばず、
その光線を逆向きに延長すると像を作るとき、この像を虚像という。
屈折による虚像
2つの媒質が平面状の境界で接触(例;水と大気。水面が境界面)しているとき、
一方の媒質中の物体を、他の媒質中にいる人間が見ると、
物体の任意の点Pから出た光が、屈折して人間の目に入ってくる。
P点から出た光線の作るP点の像は、
実際のP点ではなく、
両目に入ってくるp点の光線を逆に伸ばして、交わるところにできる。
これも虚像である。