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物理/解析入門(1)実数の性質、連続関数、導関数と微分

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( 三角関数の導関数)
( 三角関数の導関数)
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となる。
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2017年12月4日 (月) 02:45時点における版

目次

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 8.2 解析入門(1)実数の性質、連続関数、微分と導関数

 序

一変数関数の解析学を紹介する。
解析学は実数の連続性と極限の概念を用いる無限算法(微分、積分)を扱う
数学の基幹分野の一つである。
高校でならう解析学の概略だけを知りたい方は、以下の教科書で学習してください。
(1)関数や方程式の知識

物理学では、指数関数をはじめ色々な関数をよく使う。
これについては下記の本に要約が説明されている。


指数関数や対数関数の上記の本の解説は不十分なので、
興味ある方は、本テキストの

をご覧ください。

(2)ネイピア数 e の理解に必要な数学
微分や積分で重要な役割を演じる実数にネイピア数eがある。
本テキストでも頻繁に登場する。
この数は、limn(1+1n)n で定義される。
この極限が存在し、2と3の間の数になることを証明するには、2項定理が必要になる。
これについては

問題1
{}_5C_0,\quad {}_5C_1,\quad {}_5C_2,\quad {}_5C_3,\quad {}_5C_4,\quad {}_5C_5 は、いくつか?

(3)微分・積分
物理の学習には微分と積分が必須である。
関数の微分は、極限を利用して定義される。
極限がよくわからない場合には、高等学校数学III/極限(ウィキブックス)を概略理解してから、
高等学校数学II 微分・積分の考え(ウィキブックス)に進むと良いだろう。

問題2
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
(3)大学教養課程程度の解析学の基礎

この節は、解析学の基礎(実数の連続性とリーマン積分)について、さらに知りたい方のために書かれている。
厳密さをかなり重視し、程度は大学専門課程の入り口に相当する。

多変数関数の解析学については次章の「9章 物理数学2」で紹介する。

 実数の連続性と極限

実数の連続性は、様々な極限の存在に根拠を与えるもので、
実数の持つ最も重要な性質といってもよい。

 上界、下界と有界集合

{\bf R}を、全ての実数を要素とする集合とし、
Aをその部分集合(A \subset R)とする。
実数uA上界(upper bound)とは、
任意のa \in Aに対して、a \leq uがなりたつこと\Bigl((\forall{a})(a\in A \to a \leq u)\Bigr)
実数lA下界(lower bound)とは、
任意のa \in Aに対して、l \leq aがなりたつこと。
U_AAの上界をすべて集めた集合\Bigl(\{u \in R|(\forall{a})(a\in A \to a\leq u)\}\Bigr)
L_AAの下界をすべて集めた集合とする。
U_Aが空集合\emptysetでない(すなわち、Aの上界が少なくとも一つ存在する)とき、
A上に有界であるといい、
L_A\neq \emptysetの時、A下に有界であるという。
上に有界で、下にも有界な集合(\subset {\bf R})は、有界という。

 実数の連続の公理と上限、下限

A \subset {\bf R}とする。

実数の連続性の公理
もし、U_A \neq \emptysetならば、U_Aは、最小元を持つ。
もし、L_A \neq \emptysetならば、L_Aは、最大元を持つ。

上限と下限の定義
U_Aの最小元をA上限(supremum)あるいは最小上界(least upper bound)という。
また、L_Aの最大元をA下限(infimum)あるいは最大下界(greatest lower bound)という。

命題1
uA(\subset {\bf R}) の上限となるための必要十分条件は、
ⅰ)uAの上界。すなわち任意のa\in Aにたいしてa \leq u   
ⅱ)x<uである任意のxAの上界ではない。すなわち、x<aとなるa\in Aが存在
である。
同様に、lA の下限となるための必要十分条件は、
ⅰ)lAの下界。すなわち任意のa\in Aにたいしてl\leq a   
ⅱ)l<xである任意のxAの下界ではない。すなわち、a<xとなるa\in Aが存在
である。
A の上限を\sup A、下限を\inf Aと書く。
さらに、
Aが最大値を持つ場合には、Aの上限はAの最大値と一致し、
Aが最小値を持つ場合には、Aの下限はAの最小値と一致する。

証明は、上限、下限の定義から、明らかなので省略する。
例;A=(0,1)のとき、\sup A=1,\inf A=0
これらは、ともにAの要素でないので、
上限1はAの最大元(最大値)ではなく、下限0はAの最小元(最小値)ではない。
A=[0,1]のとき、\sup A=1,\inf A=0
これらは、ともにAの要素なので、
上限は最大限であり、下限は最小限となる。

命題2
A \subset B \subset {\bf R}で、Bは有界集合とする。
このとき、\inf B \leq \inf A \leq \sup A \leq \sup B
証明は容易である。

 実数列の極限 

実数列\bigl(x_{n}\bigr)_{n \in N}とは、
xが、自然数全体のなす集合Nから実数全体の作る集合Rへの写像であることと定義する。
論理記号で書けば、(\forall n \in N)(x_{n} \in R)

定理1;
1) 単調増加で上に有界な数列\bigl(x_{n}\bigr)_{n\in N}(注参照)は収束する(極限値を持つ)。
2)単調減少で下に有界な数列は収束する。
(注)数理論理学における論理の数学的モデルの一つであり、命題論理を拡張した一階述語論理で表現すると、
(\exists{U\in R} )(\forall{m} \in N)(\forall{n} \in N)( m\lt n \to x(m) \leq x_{n} \leq U)

証明
1)だけ示す。
A \triangleq \{x_{n}|n\in N \}とおくと、仮定からAは上に有界な集合なので、
実数の連続性から上限(最小上界)u を持つ。
この u が数列xの極限であることを示そう。
任意の小さい正数  \epsilon をとると、u-\epsilon は集合Aの上界ではなくなるので 
(\exists{m}\in N)\bigl(x(m) \gt u-\epsilon \bigr)
数列は単調増加なので、(\forall{n})\bigl(n \gt m \to x_{n} \gt u-\epsilon \bigr) \qquad \qquad \qquad (1)
他方、u は数列xの上界なので、
(\forall{n})\bigl(n\in N \to u \geq x_{n}\bigr) \qquad \qquad \qquad (2)
式(1)と(2)から、
どんなに小さな正数  \epsilon をとってもある自然数mが定まり、
それより大きな自然数n に対して、x_{n} \in [u-\epsilon,u+\epsilon] が示せた。
収束の定義から、数列xがuに収束することが示せた。
2)の証明も同様である。

数列(x_{n})_{n \in N} の項の中から番号の小さい順に次々と無限個を取り出すことにより、
新しい数列が得られる。
このようにして作られる新しい数列を、元の数列の部分列という。
定義1 部分列
自然数の集合NからNの中への狭義の単調増加関数 n; N \to N  を用いて(注参照)
数列 (x_{n})_{n \in N} からつくる数列 (x_{n(k)})_{k\in N} を、数列 (x_{n})_{n \in N} の部分列という。
(注)n; N \to N が狭義単調増加とは、任意の自然数kと、それより大きい全ての自然数lに対してn(k)\lt n(l)

定理2
有界な数列 (x_{n})_{n \in N} は、収束する部分列をもつ。
証明
数列が有界なので、2つの実数l,uが存在して、全ての自然数nに対し、
x_n \in [l,u]  
閉区間I_0\triangleq [l,u] の中に、数列の無限個の項が含まれているので、
この区間を2等分した区間のいずれかには、数列の無限個の項が含まれる。
その区間を I_1=[l_1,u_1] と書く。(注参照)
すると この区間は [l_1,u_1] \subset [l,u] \quad ,長さは u_1-l_1=\frac{1}{2}(u-l) 
この区間 I_1 を2等分しても、いずれかの部分区間は、数列の無限の項を含む。
そこでその部分区間を I_2=[l_2,u_2] とする。 I_2 \subset I_1|I_2|=\frac{1}{2^2}(u-l)
これを続けると閉区間の縮小列 I_n=[l_n,u_n] を得る(n=1,2,3,4,,,,)。 すると、
数列 \bigl(l_n \bigr)_{n\in N} は単調増加で有界な数列、
数列 \bigl(u_n \bigr)_{n\in N} は単調減少で有界な数列、
定理1から、どちらの数列も収束する。
しかも、 0 \lt u_n -l_n \lt \frac{1}{2^n}(u-l) なので
それぞれの極限を l_{\infty} ,u_{\infty} とかくと、l_{\infty} = u_{\infty}
この点を x_{\infty} とかく。
・最後に、x_{\infty} に収束する、(x_{n})_{n \in N} の部分列を選び出そう。
部分区間I_1 の中には数列(x_{n})_{n \in N}の無限の項があるので、その中で最小の項順n(1)を選び、部分列の初項x_{n(1)} に選ぶ。
I_2 にはI_1のなかの数列(x_{n})_{n \in N}の項が無限に含まれるので、
その中で、項順mが n(1)\lt m を満たすものも無限にある。
その中で最小の項順のものを選び、第2項 x_{n(2)} とする。
すると、x_{n(2)} \in I_2 \quad n(1)\lt n(2)
これを繰り返すと任意の自然数iに対して
x_{n(i)} \in I_i であって、n(i-1)\lt n(i) である,
数列 \bigl( x_{n(i)}\bigr)_{i \in N}を得る。
この数列が元の数列の部分列であり、\lim_{i \to \infty}x_{n(i)}= x_{\infty}
であることは明らかである。
(注)2つの部分区間のどちらも無限個の項を含むときは、どちらの部分区間を採用してもよい。

数列が収束するための条件を求めるためには、コーシー列という概念が必要になる。
定義
実数列\bigl(x_{n}\bigr)_{n=1}^{\infty}コーシー列(または基本列)とは
任意の \epsilon\gt 0 に対して、 n_0 \in N が存在して、
m, n \geq n_0 (\in N ) ならば |x_{m}-x_{n}| \lt \epsilon  となること。

定理3
(1)実数列 \bigl(x_n \bigr)_{n\in N} がコーシー列ならば、収束する。
(2)逆に、\bigl(x_n \bigr)_{n\in N} が収束するならば、コーシー列である。
証明
(1)を証明する。
ⅰ)\bigl(x_n \bigr)_{n\in N} がコーシー列ならば、有界である。
∵ コーシー列なので、 \epsilon = 1 のとき、 n_0 \in N が存在して、
m \geq n_0 (\in N ) ならば |x_{m}-x_{n_0}| \lt 1  
故に、この数列の全ての項は、
l\triangleq min\{x_1,x_2,x_3,,,,x_{n_0}-1 \}u\triangleq max\{x_1,x_2,x_3,,,,x_{n_0}+1 \} の間にある。
ⅱ)\bigl(x_n \bigr)_{n\in N} がコーシー列ならば、収束する。
∵ 
数列がコーシー列なので,
任意の正数  \epsilon に対して、ある自然数 n_0 が存在して、
m, n \geq n_0 ならば、 |x_m-x_n| \lt \epsilon
また、コーシー列は有界なので、定理2から、収束する部分列 (x_{n(k)})_{k\in N} を持つ。
この極限値を a とおくと、
n(k_0) \geq n_0 を満たす或る番号 k_0 が定まって、 k \geq k_0 なる任意のkに対して
|a - x_{n(k)}| \lt \epsilon
すると任意の n \bigl(\geq n(k_0)\bigr) に対して、
|a - x_n| \leq |a - x_{n(k_0)}|+ |x_{n(k_0)}-x_n| \lt 2\epsilon
故に、元の数列は a に収束する。
(2)の証明は簡単なので、略す。 証明終わり。

収束に関連するさらなる情報は下記を参照のこと。

 定理の応用;ネイピア数 e 

次の命題は、高等学校数学III/微分法(ウィキブックス)では証明せず利用しているものである。

命題
数列 \{x_{n}\}_{n=1}^{\infty}\triangleq \{(1+\frac{1}{n})^{n}\}_{n=1}^{\infty} は、
2より大きく3より小さい実数 e に収束する。
\lim_{n\to \infty}(1+\frac{1}{n})^{n}= e
この e をネイピア数と呼ぶ。

練習問題
上の命題を証明してください。
ヒント;
(1+\frac{1}{n})^{n} を2項展開して、nとともに単調に増大すること、
常に2と3の間の実数であることを示せばよい。

解答は、8.3 8章の付録の 問の解答


 関数とその連続性

関数の定義

ある範囲内の任意の数値をとりえる文字を変数という。
2つの変数x、yがあって、xの値を定めれば、ある規則により、yの値が決まるようになっているとき、
yはxの関数といい、
xにより決まるyの値を、 関数記号 f,g などを用いて、y=f(x) ,y=g(x) などと書く。
変数xは独立変数、yは従属変数という。

実は、或るものに何かを対応させるという操作は社会に満ち溢れてる。
人々に名前を付ける、あるスーパーで売っている各食品に100g当たりの価格やカロリー量を対応させて表示する等。
そこで広くこうした場合にも対応できるように、上記の関数の概念を拡張する。
定義
2つの非空の集合A、Bを考える。
集合Aの非空の部分集合 A_1 の各要素に対して、
集合 B の一つの要素を定める規則を関数という。
この規則により  A_1 の任意の要素 a に対応するBの要素bを、
この規則を表す関数記号(例えば)fを用いて、b=f(a) と表す(注1参照のこと)。
A_1 を関数fの定義域、Bを関数fの値域(注2参照)という。
スーパーの例では、そのスーパーで扱っている商品の種類の集合をAとし、
食品という商品の部分集合を A_1 
各食品に100g当たりのエネルギーを対応させる規則を、
100gあたりのカロリー関数f、
値域Bは自然数の集合(円)とすればよい。

(注1)この定義は若干不明瞭である。厳密には、
関数fは、直積集合 A_1\times B の部分集合 f であって、
任意の a(\in A_1) に対して、唯一のB の要素 b が存在して、<a,b>\in f を満たすものと定義する。
この唯一のbのことを、f(a) と書く。
(注2)本によっては 値域をBの部分集合 \{f(a)|a\in A_1\} で定義することもあるので注意が必要である。 

開集合と閉集合

関数の連続性

(1) 定義域が全空間に等しい関数の連続性
定義域が、n次元実空間 R^n \quad (n;自然数) に一致する関数を考える。
実数値関数 f(x) がある点 a (\in R^n)で連続であるとは、
xa に限りなく近づくならば、f(x)f(a) に限りなく近づく
ことを言う。
\lim_{x\to a} f(x) = f(a)と記す。

これはイプシロン-デルタ論法(ε-δ論法)を用いれば次のように定式化できる。
任意の(小さな)正の数 ε 与えられたとき、
(小さな)正の数 δ をうまくとってやれば、
a と δ 以内の距離にあるどんな x に対しても、
f(a) と f(x) の差が ε より小さくなる。
(2) 定義域Dが全空間 R^n \quad (n;自然数  の真の部分集合である関数の連続性
定義
D を n次元空間 R^n  の部分集合、
関数fを、定義域Dの実数値関数とする。
関数fが、点  a (\in D) で連続とは
Dの中の点xa に限りなく近づくならば、f(x)f(a) に限りなく近づく
ことを言う(注参照)。
\lim_{x\to a,x\in D} f(x) = f(a) と記す。
関数 f(x)連続であるとは、
D のすべての点で連続であることを言う。

(注)ε-δ論法を用いれば次のように述べることができる。
任意の正数εに対して、ある正数δが存在して、
a と δ 以内の距離にあるどんなDの中の点x に対しても、
f(a) と f(x) の差が ε より小さくなる。

連続関数は多くの重要な性質を持つ。
その一つを紹介する。
命題
有界閉区間 I=[a,b] 上で連続な関数fは、この上で最大値と最小値をとる。

 一変数の実数値関数とベクトル値関数の微分

このテキストを理解するための必要最小限のことを記述する。
以下の文献も必要に応じて参考にしてください。
一冊では不十分なので色々あげておく。

 実数値関数の微分

実数の開区間I=(a,b)上で定義された実数値関数y=f(x)を考える。
定義;微分可能性
関数fs\in Iで微分可能であるとは、極限
\lim_{h \to 0,h\neq 0}\frac{f(s+h)-f(s)}{h}=c \qquad \qquad (1)
が存在することである。
この時cfsにおける微分係数あるいは導値といい、
f'(s)、\frac{df}{dt}(s)、(Df)(s)
などと書く。
I=(a,b)の各点でfが微分可能であるとき、f微分可能関数(あるいは 微分可能)という。
この時、任意のs\in Iに対して、f'(s)\in Iが定まるので、
関数f'が定まる。これをf{\bf 導関数}(derivative)という。
命題
関数 f が微分可能ならば、連続である。

 微分係数の意味

(1)\frac{f(s+h)-f(s)}{h}は、区間[s,s+h]における関数値の平均変化率である。
その極限である微分係数f'(s)は、関数値のsにおける瞬間的な変化率と考えられる。
(2)2次元空間(平面のこと)に直交座標座標系O-xyをいれ、
関数y=f(x)のグラフG=\{(x,y)\mid x\in I,y=f(x)\}を書く。
すると、
f'(s)が存在することは、x=sにおいてグラフGが接線をもつことと同等であり、
接線の方程式は
y=f'(s)(x-s)+f(s)である。
これは、接線の定義からただちに分かる。
(3)hを零に近づけていったときの極限の意味をさらに深めるため
微分可能の定義を、それと同等の別の表現に変換しよう。
(1)式の右辺の定数を左辺に移行すると
\lim_{h \to 0,h\neq 0}\frac{f(s+h)-f(s)-ch}{h}=0
次に、
\epsilon_{s}(h):=\frac{f(s+h)-f(s)-ch}{h}\qquad \qquad (2)
という、変数hの関数を定義する。
すると関数fs\in Iで微分可能で、微分係数がcである必要十分条件は
\lim_{h \to 0,h\neq 0}\epsilon_{s}(h)=0
である。
(2)式を変形すると
f(s+h)=f(s)+ch+\epsilon_{s}(h)h
ゆえに次の命題が証明できた。
命題;
次の4つの条件は同等である。
1)関数fs\in Iで微分可能で、微分係数はcである
2)関数fは、
f(s+h)=f(s)+ch+\epsilon_{s}(h)h \qquad \qquad (3)
と表現できる。
ここで、\epsilon_{s}(h)
\lim_{h \to 0,h\neq 0}\epsilon_{s}(h)=0 \qquad \qquad (4)
を満たす関数
3)関数fは、
f(s+h)=f(s)+ch+\delta(s,h)\qquad \qquad (5)
と表現できる。
ここで、\delta(s,h)
\lim_{h \to 0,h\neq 0}\frac{\delta(s,h)}{h} = 0 \qquad \qquad (6)
を満たす関数。ランダウの記号では、\delta(s,h)=o(h),(h\to 0)
3') 関数fは、
sの近傍の点xf(x)=f(s)+c(x-s)+\epsilon_{s}(x-s)\cdot (x-s) \qquad \qquad (3')
ここで、\epsilon_{s}(x-s)
\lim_{x \to s,x\neq s}\epsilon_{s}(x-s)=0 \qquad \qquad (4')
を満たす関数
証明
条件1)から条件2)はすでに説明した。
条件2)から条件3)は、\delta(s,h)\triangleq \epsilon_{s}(h)h と置けば良い。
条件3)から条件1)は容易に導ける。

この定理の3)あるいは4)により、
「関数がsで微分可能であり、微分係数がcであること」は、
「この関数がsの近傍の点xで直線y=f(s)+c(x-s)で近似でき、
誤差|f(x)-(f(s)+c(x-s))|=|\left(\epsilon_{s}(x-s)\right)(x-s)| が,
xsに近づけていくとき、h=x-sより高次で0に収束する(注参照)
ことと同等であることが分かる。
(注)\lim_{x\to s,x\neq s}\frac{\epsilon_{s}(x-s)\cdot (x-s)}{x-s}=0

命題の系;関数がsで微分可能であれば、sで連続である。
証明;命題の2)を用いると、
f(s+h)=f(s)+ch+\epsilon_{s}(h)h
この式から、|f(s+h)-f(s)|=|(c+\epsilon_{s}(h))h|
\lim_{h \to 0,h\neq 0}\epsilon_{s}(h)=0なので\lim_{h \to 0,h\neq 0}|(c+\epsilon_{s}(h))h|=0
ゆえに、\lim_{h \to 0,h\neq 0}|f(s+h)-f(s)|=0
これは、関数がsで連続であることの定義そのものである。

 導関数の性質

定理1(線形性)
f,gI=(a,b)上で定義された、微分可能な実数値関数で、 \alpha,\betaが任意の実数ならば
\alpha f+\beta gfg(s):=f(s)g(s)は微分可能で
(\alpha f+\beta g )'=\alpha f'+\beta g'

証明は、微分の定義式と極限の性質から容易に導ける。
定理2 (積の導関数)
2つの関数f,gが微分可能ならば、それらの積 fg も微分可能で
(fg)'=f'g+fg'
定理3(商の導関数)
定理4 (合成関数の導関数)

 三角関数の導関数

  • (\sin x )' = \cos x
  • (\cos x )' = -1\sin x
  • (\tan x )' = \frac{1}{\cos{x^2}}

となる。

を参照のこと。

 対数関数の導関数 

 逆三角関数の導関数

  • (\sin^{-1} x )' = \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}
  • (\cos^{-1} x )' = \frac{-1}{\sqrt{1-x^2}}
  • (\tan^{-1} x )' = \frac{1}{1 + x^2}

となる。

導出

 平均値の定理

平均値の定理(へいきんちのていり、英: mean-value theorem)または有限増分の定理とは、
実函数に対して有界な領域上の積分に関わる大域的な値を、微分によって定まる局所的な値として実現する点が領域内に存在することを主張する。
平均値の定理にはいくつかバリエーションがあるが、単に 「平均値の定理」 と言った場合は、ラグランジュの平均値の定理と呼ばれる微分に関する平均値の定理のことを指す場合が多い。

平均値の定理は微積分学の他の定理の証明(例えば、テイラーの定理、微分積分学の基本定理)にしばしば利用される、大変有用なものである(ウィキペディア;平均値の定理 より)。

 ロルの定理

平均値の定理の準備として、ロルの定理を用いる。
この定理自体も有用である。

 平均値の定理

 テイラー展開とテイラーの定理

微分可能な関数 f(x) の導関数 f'(x) (あるいは\frac{df(x)}{dx}) が微分可能ならば、
その導関数 (f')'(x) (あるいは\frac{d^{2}f(x)}{dx^2}) が考えられる。
これをfの2階の導関数という。
例えば、変数tの関数 f(t) が時刻tの質点の位置とすると、
その導関数は速度、2階導関数は加速度を表すことを第2章の力学で学んだ。
さらに高階の微分が可能な関数を考え、その性質を考察しよう。

 テイラー展開とテイラーの定理

微分可能な関数 f(x) の導関数 f'(x) (あるいは\frac{df(x)}{dx}) が微分可能ならば、
その導関数 (f')'(x) (あるいは\frac{d^{2}f(x)}{dx^2}) が考えられる。
これをfの2階の導関数という。
例えば、変数tの関数 f(t) が時刻tの質点の位置とすると、
その導関数は速度、2階導関数は加速度を表すことを第2章の力学で学んだ。
さらに高階の微分が可能な関数を考え、その性質を考察しよう。

 テイラー展開とテイラーの定理

テイラー展開、テイラー級数についての入門書は

より高度なテイラーの定理などは以下の記事を。但し証明はない。

 C^{1}級の関数

I=(a,b)上の関数 f が連続的微分可能(continuously differentiable)であるとは,
I上で導関数 f' が存在して、しかもf'I上で連続であることをいう。
I=(a,b)上で連続的微分可能である関数をC^{1}級関数という。

 ベクトル値関数の微分

実数の開区間I=(a,b)上で定義され,n次元の実ベクトル(\in {\bf R^n})に 値をとる関数\vec fを考える。
定義;微分可能性
実数値関数の場合と同じである。

導関数の線形性の性質も成り立つ。

 ベクトル値関数の微分とその成分関数の微分の関係

関数値\vec f(s){\bf R^n}の要素なので
\vec f(s)=(f_1(s),f_2(s),\cdots f_n(s))
と表示できる。
すると\vec fのn個の成分関数
f_i,(i=1,2,\cdots n)
が得られる。
命題;
\vec fs\in Iで微分可能\Leftrightarrowf_i(i=1,2,\cdots n)s\in Iで微分可能。
この時、{\vec f}'(s)=({f_1}'(s),{f_2}'(s)\cdots {f_n}'(s))

 ベクトル積の微分

命題
\vec{a(t)} \vec{b(t)} は、開区間I上で定義され、 微分可能なベクトル値関数とする。すると、
\quad \vec{a(t)} \times \vec{b(t)} は微分可能で、
\quad \frac{d}{dt}(\vec{a(t)} \times \vec{b(t)}) =(\frac{d}{dt}\vec{a(t)} )\times \vec{b(t)}+\vec{a(t)}\times (\frac{d}{dt}\vec{b(t)}) 証明
すでにこのテキストで紹介した、ベクトル値関数の微分の定義
\quad \frac{d}{dt}(\vec{a(t)} \times \vec{b(t)}) =\lim_{\delta t \to 0} (\vec a(t+\delta t)\times \vec{b(t+\delta t)}- \vec{a(t)} \times \vec{b(t)})/\delta t \qquad (1)  
を用いて証明する。
この極限が存在し、
\frac{d}{dt}\vec{a(t)} \times \vec{b(t)}+\vec{a(t)}\times \frac{d}{dt}\vec{b(t)}
になることを示せば命題は証明できたことになる。
極限の計算が進むよう、右辺の式の分母は変形しよう。
関数の積の微分公式の証明と同じ技巧を用いる。
\vec a(t+\delta t)\times \vec{b(t+\delta t)} - \vec{a(t)} \times \vec{b(t)}  
= \vec a(t+\delta t)\times \vec{b(t+\delta t)} -\vec a(t)\times \vec{b(t+\delta t)} +\vec a(t)\times \vec{b(t+\delta t)} - \vec{a(t)} \times \vec{b(t)}  
ベクトル積の命題3を利用すると、 
= \left(\vec a\left(t+\delta t\right) -\vec a\left(t\right)\right) \times \vec b\left(t+\delta t\right) +\vec a\left(t\right)\times \left(\vec b\left(t+\delta t\right)- \vec b\left(t\right)\right)

この式を式(1)の右辺の分子の項に代入し整頓すると
\quad \frac{d}{dt}(\vec{a(t)} \times \vec{b(t)}) =\lim_{\delta t \to 0} \frac{\vec a(t+\delta t)\times \vec b(t+\delta t)- \vec a(t) \times \vec b(t)} {\delta t}  
=\lim_{\delta t \to 0} \frac{\left(\vec a\left(t+\delta t\right) -\vec a\left(t\right)\right) \times \vec b\left(t+\delta t\right) +\vec a\left(t\right)\times \left(\vec b\left(t+\delta t\right)- \vec b\left(t\right)\right) } {\delta t}
ベクトル積の命題4を使い、
=\lim_{\delta t \to 0}\left( \frac{\vec a(t+\delta t) -\vec a(t)}{\delta t} \times \vec b\left(t+\delta t\right) + \vec a(t)\times \frac{\vec b(t+\delta t)- \vec b(t)} {\delta t} \right)
極限の命題を使って、
=\lim_{\delta t \to 0} \frac{\vec a(t+\delta t) -\vec a(t)}{\delta t} \times \lim_{\delta t \to 0}\vec b(t+\delta t) + \vec a(t)\times \lim_{\delta t \to 0}\frac{\vec b(t+\delta t)- \vec b(t)}{\delta t}
式中の極限は、\vec a,\vec bが、微分可能なので存在し、
\lim_{\delta t \to 0} \frac{\vec a(t+\delta t) -\vec a(t)}{\delta t} =\frac{d\vec a(t)}{dt}
\lim_{\delta t \to 0} \frac{\vec b(t+\delta t) -\vec b(t)}{\delta t} =\frac{d\vec b(t)}{dt}

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