物理/平面と空間のベクトル
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+ | 証明は除いて、定義と性質だけを再度記載する。 | ||
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+ | ====和の定義==== | ||
+ | 定義;2つのベクトル$\vec{A}$とベクトル$\vec{B}$の和を、次のように定義する。<br/> | ||
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+ | $\vec{A}+\vec{B}:=\vec{OP}+\vec{PQ}=\vec{OQ}$;<br/> | ||
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+ | ・和の別の定義;<br/> | ||
+ | $\vec{A}=\vec{OP}$,$\vec{B}=\vec{OR}$と表現する。 <br/> | ||
+ | 有向線分$\vec{OP}$と有向線分$\vec{OR}$を2辺とする平行四辺形$OPQR$を作る。<br/>すると、 | ||
+ | $\vec{A}+\vec{B}=\vec{OQ}$;<br/> | ||
+ | が成り立つ。<br/> | ||
+ | この両者は同値である。 | ||
+ | ====和の性質==== | ||
+ | $\vec{A}+\vec{B}=\vec{B}+\vec{A}\qquad \qquad (1)$ ; 交換法則 <br/><br/> | ||
+ | $(\vec{A}+\vec{B})+\vec{C}=\vec{A}+(\vec{B}+\vec{C})\qquad \qquad (2)$ ;結合法則 | ||
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+ | ====零ベクトルの存在==== | ||
+ | 零ベクトル$\vec{0}$が存在し、 | ||
+ | すべてのベクトル$\vec{A}$に対して、 | ||
+ | $\vec{A}+\vec{0}=\vec{A}\qquad \qquad \qquad (3)$<br/> | ||
+ | が成り立つ。<br/> | ||
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+ | ====逆元の存在==== | ||
+ | 任意のベクトル$\vec{A}$は、$\vec{A}+\vec{B}=\vec{0}$を満たすベクトルを<br/> | ||
+ | 一つ、そして一つだけ持つ。<br/> | ||
+ | これを$\vec{A}$の逆元(逆ベクトル)と言い、$-\vec{A}$で表す。<br/> | ||
+ | それは、$\vec{A}$と大きさ、方向が同じで、向きが逆のベクトルである。<br/> | ||
+ | 定義から、$\vec{A}+(-\vec{A})=\vec{0}\qquad \qquad \qquad (4)$$ | ||
+ | $\vec{A}+(-\vec{B})$を、$\vec{A}-\vec{B}$で表す。<br/> | ||
+ | ====ベクトルの実数倍==== | ||
+ | $a$を任意の実数とする。 <br/> | ||
+ | $\vec{A}$が零ベクトルでない時、その$a$倍、$a\vec{A}$は次のように定義する。<br/> | ||
+ | ・$a$が正数のとき;$a\vec{A}$は、$\vec{A}$と方向・向きは同じで、大きさが$a$倍であるベクトルで定義する。<br/> | ||
+ | ・$a=0$のとき;$0\vec{A}=\vec{0}$で定義する。<br/> | ||
+ | ・$a< 0$のとき;$a\vec{A}=-(-a)\vec{A}$ <br/> | ||
+ | $\vec{A}=\vec{0}$のときは、$a\vec{0}=\vec{0}$とする。<br/> | ||
+ | このように定義すると、<br/> | ||
+ | ベクトルの実数倍がベクトルとして定まる。<br/> | ||
+ | 次の諸法則が成り立つ。<br/> | ||
+ | $a(\vec{A}+\vec{B})=a\vec{A}+a\vec{B}\qquad \qquad \qquad (5)$ <br/> | ||
+ | $(a+b)\vec{A}=a\vec{A}+b\vec{A}\qquad \qquad \qquad (6)$ <br/> | ||
+ | $(ab)\vec{A}=a(b\vec{A})\qquad \qquad \qquad (7) $ <br/> | ||
+ | $1\vec{A}=\vec{A}\qquad \qquad \qquad (8)$ | ||
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== 内積とノルム== | == 内積とノルム== | ||
内積とノルムは物理学で良く使われる。<br/> | 内積とノルムは物理学で良く使われる。<br/> |
2015年3月17日 (火) 15:36時点における版
平面と空間のベクトル
平面や空間への直観を重視し、幾何学的な説明をする。
以下の説明では、集合についてのごく初歩的知識を使うので、
なじみのない方は、下記を参考に、
集合の素朴な定義、集合の表記法、集合の和集合や共通集合、集合の包含関係
などについて学習してほしい。
平面と空間
我々は、自分たちの暮らすこの世界は、縦、横、高さをもつ3次元の空間であると認識してきた。
また、この空間のなかの、縦、横をもち、高さのない平らな無限の拡がりを
平面として認識してきた。
この空間や平面、その中にある色々な図形の性質を厳密に理解しようとして、
平面幾何学や立体幾何学(ユークリッド幾何学)を生み出してきた。
この中で考えられた平面や空間は、2次元および3次元のユークリッド空間と呼ばれる。
下記の記事中の「序文」と「1. 直観的な説明」をお読みください。
また、この章の「1.5 我々の住む空間の数学的モデル」も御覧ください。
ベクトルの和と実数倍
ベクトルの和や実数倍については2章力学の1節で説明したが、重要なので 証明は除いて、定義と性質だけを再度記載する。
2つのベクトルの和=
和の定義
定義;2つのベクトル$\vec{A}$とベクトル$\vec{B}$の和を、次のように定義する。
・$\vec{A}=\vec{OP}$,$\vec{B}=\vec{PQ}$と表現して、
$\vec{A}+\vec{B}:=\vec{OP}+\vec{PQ}=\vec{OQ}$;
・和の別の定義;
$\vec{A}=\vec{OP}$,$\vec{B}=\vec{OR}$と表現する。
有向線分$\vec{OP}$と有向線分$\vec{OR}$を2辺とする平行四辺形$OPQR$を作る。
すると、
$\vec{A}+\vec{B}=\vec{OQ}$;
が成り立つ。
この両者は同値である。
和の性質
$\vec{A}+\vec{B}=\vec{B}+\vec{A}\qquad \qquad (1)$ ; 交換法則
$(\vec{A}+\vec{B})+\vec{C}=\vec{A}+(\vec{B}+\vec{C})\qquad \qquad (2)$ ;結合法則
零ベクトルの存在
零ベクトル$\vec{0}$が存在し、
すべてのベクトル$\vec{A}$に対して、
$\vec{A}+\vec{0}=\vec{A}\qquad \qquad \qquad (3)$
が成り立つ。
逆元の存在
任意のベクトル$\vec{A}$は、$\vec{A}+\vec{B}=\vec{0}$を満たすベクトルを
一つ、そして一つだけ持つ。
これを$\vec{A}$の逆元(逆ベクトル)と言い、$-\vec{A}$で表す。
それは、$\vec{A}$と大きさ、方向が同じで、向きが逆のベクトルである。
定義から、$\vec{A}+(-\vec{A})=\vec{0}\qquad \qquad \qquad (4)$$
$\vec{A}+(-\vec{B})$を、$\vec{A}-\vec{B}$で表す。
====ベクトルの実数倍====
$a$を任意の実数とする。
$\vec{A}$が零ベクトルでない時、その$a$倍、$a\vec{A}$は次のように定義する。
・$a$が正数のとき;$a\vec{A}$は、$\vec{A}$と方向・向きは同じで、大きさが$a$倍であるベクトルで定義する。
・$a=0$のとき;$0\vec{A}=\vec{0}$で定義する。
・$a< 0$のとき;$a\vec{A}=-(-a)\vec{A}$
$\vec{A}=\vec{0}$のときは、$a\vec{0}=\vec{0}$とする。
このように定義すると、
ベクトルの実数倍がベクトルとして定まる。
次の諸法則が成り立つ。
$a(\vec{A}+\vec{B})=a\vec{A}+a\vec{B}\qquad \qquad \qquad (5)$
$(a+b)\vec{A}=a\vec{A}+b\vec{A}\qquad \qquad \qquad (6)$
$(ab)\vec{A}=a(b\vec{A})\qquad \qquad \qquad (7) $
$1\vec{A}=\vec{A}\qquad \qquad \qquad (8)$
== 内積とノルム==
内積とノルムは物理学で良く使われる。
本テキストで必要となる命題と証明を紹介する。
以下では、
$\vec a,\vec b,\vec c$は、すべて同じ次元(2か3)のベクトルとし、 $\alpha$は実数とする。
なお、全ての命題は、4次元以上のベクトルに対しても成り立つが省略する(注参照)。
座標成分表示が必要な命題では、直交座標系表示を用いる。
(注)n次元(>3)も含めた一般のn次元ベクトルの内積は、後述の命題2
===ノルムと内積の定義===
ベクトル$\vec a$のノルムとは、
$\|\vec a\|:=\sqrt{\sum_{i}a_{i}^2}$のことで、
ベクトルの長さ(大きさ)を表す。
ベクトル$\vec a,\vec b$の内積とは
$ \vec a \cdot \vec b:=\|\vec{a}\|\|\vec{b}\|\cos\theta$
ここで、$\theta$は、ベクトル$\vec a,\vec b$のなす角($0\le \theta \le \pi$ )である。
この定義から、
$\vec a \cdot \vec a=\|\vec{a}\|^2 $
であることが分かる。
===内積とノルムの性質===
命題1
$\vec a \cdot \vec b =\vec b \cdot \vec a$
証明;内積の定義から明らか。
命題2
$\vec a \cdot \vec b =\sum_{i}a_ib_i$
ここで$a_1,b_1$はそれぞれ$\vec a,\vec b$のx座標成分、同様に、添え字2はy座標成分、3はz座標成分
直交座標系はどんなものでも良い。しかしすべてのベクトルは同じ座標系で座標成分表示しなければならない。
証明
次の三角形の余弦定理を利用する。
三角形の[[wikipedia_ja:余弦定理|第2余弦定理]];
図のような$\triangle {ABC}$を考える。
頂点A,B,Cの対辺の長さをそれぞれ$a,b,c$とし、$\angle{ACB}=\theta$とする。
すると、$c^2=a^2+b^2-2ab\cos\theta$
余弦定理の証明;頂点$A$から対辺$BC$におろした垂線の足を$H$とする。
[[wikipedia_ja:ピタゴラスの定理 |ピタゴラスの定理]]により、
$c^2=\overline{BH}^2+\overline{AH}^2$。$\qquad$ 右辺の第2項に、再び、ピタゴラスの定理を適用して、
$=\overline{BH}^2+(b^2-\overline{CH}^2)$ $\qquad$ $\overline{BH}=a-\overline{CH}$を代入すると、
$=(a-\overline{CH})^2+(b^2-\overline{CH}^2)=a^2+b^2-2a\overline{CH}$,$\quad$ $\overline{CH}=b\cos\theta$なので、代入すると
$=a^2+b^2-2ab\cos\theta$
余弦定理の証明終わり。
命題2の証明
ベクトル$\vec a $と$\vec b $を、
始点が点$C$である有向線分で表現し、その終点を$B$,$C$で表す。
すると$\vec a=\vec{CB}$, $\vec b=\vec{CA}$である。
ベクトル$\vec c=\vec a-\vec b$を導入すると、
$\vec c=\vec a-\vec b=\vec{CB}-\vec{CA}=\vec{CB}+\vec{AC}=\vec{AB}$
3角形$\triangle {ABC}$を考え、第2余弦定理を適用しよう。
$\angle{ACB}=\theta$とおく。すると、
$\|\vec c\|^2=\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-2\|\vec a\|\|\vec b\|\cos{\theta}$
$=\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-2\vec a \cdot \vec b$が得られる。
この式を変形して$\vec a \cdot \vec b$だけを左辺に置くと、
$\vec a \cdot \vec b=(\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-\|\vec c\|^2)/2$ 。
$\vec c=\vec{AB}=\vec{AC}+\vec{CB}=-\vec b+\vec a$なので、
$\vec a \cdot \vec b=(\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-\|\vec a-\vec b\|^2)/2 $
この右辺を、ベクトルの直交座標成分で表すと、次式が得られる。
$\vec a \cdot \vec b=(\sum_{i}a_i^2+\sum_{i}b_i^2-\sum_{i}(a_i-b_i)^2 )/2 $
$=\sum_{i}a_i b_i$
命題2の証明終わり。
命題3
$(\vec a +\vec b) \cdot \vec c =\vec a \cdot \vec c+\vec b \cdot \vec c$
証明
ある一つの直交座標系をさだめ、両辺を、命題(2)を利用して、座標成分であらわす。両辺が等しいことが分かる。
系; $\vec a \cdot (\vec b+\vec c) =\vec a \cdot \vec b+\vec a \cdot \vec c$
証明;命題1を利用して、左辺の項の順番を入れ替え、命題3を適用し、再び命題1を用いればよい。
命題4
$(\alpha \vec a)\cdot \vec b =\vec a \cdot (\alpha \vec b)=\alpha (\vec a \cdot \vec b)$
が成り立つ。
証明
同様に、3つの式を、座標成分表示すれば、みな等しいことが、簡単に分かる。
命題5
$\|\vec a \cdot \vec b\| \leq \|\vec a\|\|\vec b\|$
$0\leq |\cos\theta|\leq 1$なので内積の定義から、ただちに分かる。
命題6 ノルムの三角不等式
$\|\vec a + \vec b\| \leq \|\vec a\| + \|\vec b\|$
証明
$\|\vec a + \vec b\|^2=(\vec a + \vec b)\cdot (\vec a + \vec b)$
命題3を使って計算すると、
$=\vec a \cdot \vec a +\vec b \cdot \vec b +2\vec a \cdot \vec b$
命題5より、
$\leq \vec a \cdot \vec a +\vec b \cdot \vec b +2\|\vec a\|\|\vec b\|
=\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2+2\|\vec a\|\|\vec b\|=(\|\vec a\|+\|\vec b\|)^2$
故に$\|\vec a + \vec b\|^2 \leq (\|\vec a\|+\|\vec b\|)^2$
両辺の平方根をとれば所要の不等式を得る。
== ベクトル積 ==
本節での全ての命題で、
$ \vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$は3次元ベクトル
$\alpha$を実数とする。
命題1. $ \quad \vec{a} $ を, $\vec{c} $と垂直な成分$ \vec{a_\perp}$ と,平行な成分$\vec{a_\parallel}$ の和に分解するとき、
$\quad \vec{a} \times \vec{c}= \vec{a_\perp} \times \vec{c}$
$\quad \vec{a_\parallel} \times \vec{c}= 0$
証明;ベクトル積の定義から、容易に示せる。
2つのベクトルの作る平行四辺形の面積と方向・向きを考えれば良い。
命題2.$ \quad \vec{a} \times \vec{b}= -\vec{b} \times \vec{a}$
証明;2つのベクトルを入れ替えても、それらが作る平行四辺形の面積は変わらず、この四辺形に直交する直線の方向も変わらない。
しかし、ベクトル積の向きは、逆向きになる。
ベクトル積の定義から、$\quad \vec{a} \times \vec{b}= -\vec{b} \times \vec{a}$ が示せた。
命題3
$(\alpha\vec{a})\times \vec{b}= \alpha(\vec{a} \times \vec{b})= \vec{a}\times (\alpha\vec{b})$
証明;実数$\alpha$ が正、零、負の場合に分けて考える。
いずれの場合にも,
ベクトル積の定義とベクトルと実数の積の命題から、容易に証明できる。
命題4.$ \quad (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}= \vec{a} \times \vec{c} + \vec{b} \times \vec{c}$
証明;
この証明には少し工夫が必要である。
ベクトル積の命題の中でも、もっとも大切なものなので、詳しく説明しよう。
① $ \vec{a}, \vec{b}$ と$\quad \vec{c}\quad$ が直交する場合。図参照のこと
・議論をやさしくするため、ベクトルを、空間の原点$O$ を始点とする有向線分で代表させる。
・$ \vec{c}$ と直交し$O$ を通る平面を$H$とする。
・仮定より$ \vec{a},\quad \vec{b}$は、ともに平面$H$上のベクトルである。
・$\vec{a} \times \vec{c} ,\quad \vec{b} \times \vec{c}$も、
ベクトル積の定義により、共に$ \vec{c}$ と直交するので、$H$上のベクトルである。
これら四つのベクトルはすべて平面$H$上にあるので、今後の議論はこの平面上で進める。
ⅰ)$\vec{a} \times \vec{c}, \vec{b} \times \vec{c}$ の張る平行四辺形は,
$\vec{a}, \vec{b}$の張る平行四辺形を、$\| \vec{c}\|$倍し,原点周りに90度回転したものになることを、示そう。
・$\vec{a} \times \vec{c} $は、ベクトル積の定義から、$ \vec{a}$ と直交する。
そのため、$\vec{a}$ を平面$H$上で、原点まわりに、90度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致する。
・$\vec{b} \times \vec{c} $も、同様に考え、$\vec{b}$ を平面$H$上で、原点まわりに、90度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致することが分かる。
・どちら周りの回転になるかは、ベクトル積の定義によって決まるが、
後者の回転の向きが、前者の回転の向きと一致することが分かる。
・$\vec{a}\times \vec{c}$ の大きさは、
$\|\vec{a}\times \vec{c}\|=\|\vec{a}\|\|\vec{c}\|\cos(\pi/2)=\|\vec{a}\|\|\vec{c}\|$ なので、$\vec{a}$ の大きさの$\|\vec{c}\|$倍になる。
同様に、$\vec{b}\times \vec{c}$ の大きさは、$\vec{a}$ の大きさの$\|\vec{c}\|$倍になる。
・以上の結果より、所望の結果は示された。
ⅱ)$ \qquad (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}= \vec{a} \times \vec{c} + \vec{b} \times \vec{c}$を示そう。
・ ⅰ)と同じ議論により、
$(\vec{a}+ \vec{b}) \times \vec{c}$は$\vec{a}, \vec{b}$の張る平行四辺形の対角線を、原点周りに90度、同じ向きに回転させ、$\|\vec{c}\|$倍させたものであることが分かる。
・すると、ⅰ)で示したことから、$(\vec{a}+ \vec{b}) \times \vec{c}$は
$\vec{a} \times \vec{c}, \vec{b} \times \vec{c}$ の張る平行四辺形の対角線$\vec{a} \times \vec{c}+\vec{b} \times \vec{c}$ に等しいことが分かる。
・以上で①が示せた。
② 一般の場合。
命題1より、$\perp$ を$\vec{c}$と垂直な成分を表すとすると、 $ (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}= (\vec{a}+ \vec{b})_\perp \times \vec{c} \qquad \qquad \qquad $(1)
$(\vec{a}+ \vec{b})_\perp =\vec{a}_\perp +\vec{b}_\perp$なので、(1)式は、
$ = (\vec{a}_\perp +\vec{b}_\perp) \times \vec{c}$
①より、
$ = \vec{a}_\perp \times \vec{c}+\vec{b}_\perp\times \vec{c}=\vec{a} \times \vec{c}+\vec{b} \vec{c}$ $ \qquad $ 命題4の証明終わり。
命題4の系
$ \quad \vec{a} \times (\vec{b}+ \vec{c})= \vec{a} \times \vec{b} + \vec{a} \times \vec{c}$
$ \quad (\vec{a}+ \vec{b}+\vec{c})\times \vec{d}=\vec{a}\times \vec{d}+\vec{b}\times \vec{d}+\vec{c}\times \vec{d}$
証明;
命題2より、
$\vec{a} \times (\vec{b}+ \vec{c})= -\left((\vec{b}+ \vec{c})\times \vec{a}\right) $ 命題3から
$=\left(-(\vec{b}+ \vec{c})\right)\times \vec{a}$
命題4より、
$= -(\vec{b} \times \vec{a}+ \vec{c} \times \vec{a})$
再び命題2より、
$=\vec{a} \times \vec{b} + \vec{a} \times \vec{c} \quad $前半の証明終わり
命題2より、
$ (\vec{a}+ \vec{b}+\vec{c})\times \vec{d}=(\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{d}+\vec{c})\times \vec{d}$
再び命題2より、
$ =\vec{a}\times \vec{d}+\vec{b}\times \vec{d}+\vec{c}\times \vec{d}$
$\quad$証明終わり。
命題5.$\quad (\vec{e_1},\vec{e_2}, \vec{e_3})$ を
それぞれ大きさ(長さ)1で互いに直交し、[[wikipedia_ja:右手系|右手系]]をなす、ベクトル(右手系をなす正規直交基底)とする。
この時、
$ \quad \vec{e_1} \times \vec{e_2} = \vec{e_3}, \quad
\vec{e_2} \times \vec{e_3} = \vec{e_1}, \quad
\vec{e_3} \times \vec{e_1} = \vec{e_2}$
証明;ベクトル積と$(e_1,e_2,e_3)$ の定義から明らかである。
命題6.ベクトル$\vec a, \vec b$を,命題5で用いた基底$ (\vec{e_1},\vec{e_2}, \vec{e_3})$ で決まる座標の座標成分で表示しておく。
すると$\vec a \times \vec b=(a_yb_z-a_zb_y,a_zb_x-a_xb_z,a_xb_y-a_yb_x)$
証明;$\vec a=a_x\vec{e_x}+a_y\vec{e_y}+a_z\vec{e_z}$,
$\vec b=b_x\vec{e_x}+b_y\vec{e_y}+b_z\vec{e_z}$と表せるので、
$\vec a \times \vec b=(a_x\vec{e_x}+a_y\vec{e_y}+a_z\vec{e_z})\times \vec b$
命題3の系から
$=a_x\vec{e_x}\times \vec b
+a_y\vec{e_y}\times \vec b
+a_z\vec{e_z}\times \vec b$ $\qquad$ (1)
式(1)の第1項
$a_x\vec{e_x}\times \vec b$
に
$\vec b=b_x\vec{e_x}+b_y\vec{e_y}+b_z\vec{e_z}$
を代入して、命題3の系を使って変形すると、
$a_x\vec{e_x}\times \vec b
=a_x\vec{e_x}\times b_x\vec{e_x}
+a_x\vec{e_x}\times b_y\vec{e_y}
+a_x\vec{e_x}\times b_z\vec{e_z}$ $\qquad$ (2)
命題4と命題5を使うと、
$a_x\vec{e_x}\times b_x\vec{e_x}
=a_x b_x\vec{e_x}\times \vec{e_x}
=\vec 0$ 。
同様の計算を行うと、
$a_x\vec{e_x}\times b_y\vec{e_y}
=a_x b_y\vec{e_x}\times \vec{e_y}
=a_x b_y\vec{e_z}$
$a_x\vec{e_x}\times b_z\vec{e_z}
=a_x b_z\vec{e_x}\times \vec{e_z}
=-a_x b_z\vec{e_y}$
式(2)にこれらを代入して、
$a_x\vec{e_x}\times \vec b
=a_x b_y\vec{e_z} - a_x b_z\vec{e_y} $ $\qquad$ (3)
式(1)の第2項、第3項も同様に計算すると、
$a_y\vec{e_y}\times \vec b
=a_y b_z\vec{e_x} - a_y b_x\vec{e_z} $ $\qquad$ (4)
$a_z\vec{e_z}\times \vec b
=a_z b_x\vec{e_y} - a_z b_y\vec{e_x} $ $\qquad$ (5)
式(3),(4),(5) を、式 (1)に代入すると、
$\vec a \times \vec b
=a_x b_y\vec{e_z} - a_x b_z\vec{e_y}
+a_y b_z\vec{e_x} - a_y b_x\vec{e_z}
+a_z b_x\vec{e_y} - a_z b_y\vec{e_x}$
$ =(a_y b_z - a_z b_y)\vec{e_x}
+(a_z b_x - a_x b_z)\vec{e_y}
+(a_x b_y - a_y b_x)\vec{e_z}$
命題6の証明終わり。
命題7の証明;
$ \quad (\vec{a} \times \vec{b})\cdot \vec{c}= (\vec{c} \times \vec{a})\cdot\vec{b}$を証明しよう。
残りも、同様に証明出来るので各自試みてください。
右手系をなす一つの直交座標を決める。
3つのベクトルを、この座標の成分で表示して、命題6と内積の命題を使えば、左右が等しいことが証明できる。
概略をスケッチしよう。
$ \quad (\vec{a} \times \vec{b})\cdot \vec{c}
=(a_yb_z-a_zb_y,a_zb_x-a_xb_z,a_xb_y-a_yb_x)
\cdot (c_x,c_y,c_z)
=(a_yb_z-a_zb_y)c_x+(a_zb_x-a_xb_z)c_y+(a_xb_y-a_yb_x)c_z$
$ \quad (\vec{c} \times \vec{a})\cdot\vec{b}$も、これと同じように計算する。
これら両式を整頓すると、同じものであることが分かる。
命題7.
$(\vec{a} \times \vec{b})\cdot \vec{c}= (\vec{c} \times \vec{a})\cdot\vec{b} =(\vec{b} \times \vec{c})\cdot\vec{a}$
証明
$(\vec{a} \times \vec{b})\cdot \vec{c}= (\vec{c} \times \vec{a})\cdot\vec{b}$を証明しよう。
残りも、同様に証明出来るので各自試みてください。
右手系をなす一つの直交座標を決める。
3つのベクトルを、この座標の成分で表示して、命題6と内積の命題を使えば、左右が等しいことが証明できる。
概略をスケッチしよう。
$(\vec{a} \times \vec{b})\cdot \vec{c}
=(a_yb_z-a_zb_y,a_zb_x-a_xb_z,a_xb_y-a_yb_x)
\cdot (c_x,c_y,c_z)