物理/エネルギーと保存則
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(→仕事エネルギー定理(Work-energy theorem)) |
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この場合にも適用できるような記述にした。<br/> | この場合にも適用できるような記述にした。<br/> | ||
- | + | ⅰ)の証明;<br/> | |
2つの異なる方法で証明する。<br/> | 2つの異なる方法で証明する。<br/> | ||
第一の方法は、時刻tまでに力の行う仕事をW(t)と書き、<br/> | 第一の方法は、時刻tまでに力の行う仕事をW(t)と書き、<br/> | ||
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∫t2t1(→F⋅→v)(t)=[W(t)]_{t_1}^{t_2}=W(t_2)-W(t_1)=W$<br/> | ∫t2t1(→F⋅→v)(t)=[W(t)]_{t_1}^{t_2}=W(t_2)-W(t_1)=W$<br/> | ||
を得る。<br/> | を得る。<br/> | ||
- | + | 第2は、<br/> | |
+ | 曲線にそった仕事の定義(「2.3 質点の運動」の仕事の項の説明)にしたがって、<br/> | ||
+ | 質点の軌跡を細かく分割し、各小部分で力の行う仕事を求め、加え合わせて、 | ||
+ | 命題を証明する方法である。<br/> | ||
証明1:<br/> | 証明1:<br/> | ||
+ | 力→F(t)は連続関数と仮定して良い。<br/> | ||
+ | なぜなら、有限個の点で不連続の場合は、 | ||
+ | 連続となる小区間ごとに考えればよいから。<br/> | ||
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独立変数t∈[t1,t2]に対して、<br/> | 独立変数t∈[t1,t2]に対して、<br/> | ||
W(t)=時刻t1から時刻tまでの間に力の行った仕事<br/> | W(t)=時刻t1から時刻tまでの間に力の行った仕事<br/> | ||
で、[t1,t2]上の関数Wを定義する。この定義より、W(t_1)=0である。<br/> | で、[t1,t2]上の関数Wを定義する。この定義より、W(t_1)=0である。<br/> | ||
- | 時刻t∈(t1,t2)における、関数の微係数を求めよう。 | + | 時刻t∈(t1,t2)における、関数の微係数を求めよう。<br/> |
- | + | $\frac{dW}{dt}(t) | |
+ | =\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0}\frac{W(t+\delta)-W(t)}{\delta} | ||
+ | =\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)$<br/> | ||
+ | であることを以下に示す。<br/> | ||
+ | δが極めて微小な正数と考える(負数の場合も同様に証明出来る)。<br/> | ||
+ | 力が[t,t+δ]の間に行う仕事 | ||
+ | W(t+δ)−W(t)の考察から始める。 | ||
+ | この間、質点は→x=\vec{x}(t)$に従って、<br/> | ||
+ | →x(t)から→x(t+δ)まで移動する。<br/> | ||
+ | δがきわめて微小なので、<br/> | ||
+ | この軌跡は、ベクトル→x(t+δ)−→x(t)<br/> | ||
+ | (の始点を、位置ベクトル→x(t)の終点にしたもの)とみなせる。<br/> | ||
+ | 力は時間に関して連続なので、この微小時間中は→F(t)とみなした良い。<br/> | ||
+ | (みなせるという表現は厳密さに欠けるが直観的理解を優先した)。 | ||
+ | するを、[t,t+δ]の間に力の行う仕事は、<br/> | ||
+ | W(t+δ)−W(t)=→F(t)⋅(→x(t+δ)−→x(t))<br/> | ||
+ | となる。図参照のこと。<br/> | ||
+ | ゆえに、 | ||
+ | $\frac{dW}{dt}(t) | ||
+ | =\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0}\frac{W(t+\delta)-W(t)}{\delta}$<br/> | ||
+ | $=\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0}\frac{\vec{F}(t)\cdot | ||
+ | \left(\vec{x}(t+\delta)-\vec{x}(t)\right)}{\delta}$<br/> | ||
+ | $=\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0} | ||
+ | \vec{F}(t)\cdot\frac{\left(\vec{x}(t+\delta)-\vec{x}(t)\right)}{\delta}$<br/> | ||
+ | =→F(t)⋅→v(t)(1)<br/> | ||
+ | 式(1)は[t1,t2]上の連続関数関数なので<br/> | ||
+ | 積分可能である(8章物理数学の8.3積分参照)。<br/> | ||
+ | そこでこの区間上で積分すると<br/> | ||
+ | ∫t2t1dWdt(t)dt=∫t2t1→F(t)⋅→v(t)dt<br/> | ||
+ | 上式の左辺の被積分関数の原始関数はW(t)なので、<br/> | ||
+ | ∫t2t1dWdt(t)dt=[W(t)]t2t1=W(t2)−W(t1)=W<br/> | ||
+ | ゆえに、 | ||
+ | W=∫t2t1→F(t)⋅→v(t)dt<br/><br/> | ||
+ | 第2の方法による証明<br/> | ||
時刻t1からt2までの質点の運動の軌跡は、向きのついた曲線<br/> | 時刻t1からt2までの質点の運動の軌跡は、向きのついた曲線<br/> | ||
→C:={→x(t)∣t1≤t≤t2}<br/> | →C:={→x(t)∣t1≤t≤t2}<br/> | ||
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=∫t2t1→F(t)⋅→v(t)dt<br/> | =∫t2t1→F(t)⋅→v(t)dt<br/> | ||
に収束する(8章の8.3 積分に証明あり)。<br/><br/> | に収束する(8章の8.3 積分に証明あり)。<br/><br/> | ||
- | + | ||
- | + | 正確な証明に戻る;<br/> | |
- | →F(ξi)で近似する。<br/> | + | 任意の時刻ξi∈[sni−1,sni]を代表点として選び、<br/> |
- | この近似を用いると、仕事の定義から、力がCi | + | この区間上の力を→F(ξi)で近似する。<br/> |
+ | この近似を用いると、仕事の定義から、力がCiで行う仕事は<br/> | ||
$W_i(\Delta^n,{\xi}_i)= \vec F({\xi}_i)\cdot \vec{P_{i-1}P_i} | $W_i(\Delta^n,{\xi}_i)= \vec F({\xi}_i)\cdot \vec{P_{i-1}P_i} | ||
=\vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s^{n}_i)-\vec{x}(s^{n}_{i-1})$<br/> | =\vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s^{n}_i)-\vec{x}(s^{n}_{i-1})$<br/> |
2015年3月18日 (水) 11:04時点における版
目次[非表示] |
エネルギーと保存則
質点や質点の集まりの運動を調べるときに有用な
各種の保存法則が、運動の法則から導かれる。
導出の仕方が理解できると、力学への理解が深まる。
エネルギー
物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。
この規定は抽象的で具体例を知らないと、良く分からないだろう。
その方たち向けに簡単に説明する。
人間が地表の石(質量m)を、非常にゆっくりと高さhまで持ち上げたとする。
この時、人間が石に行った仕事は、上向きの力(㎎+無限に小さい正の力)でhだけ動かしたのでmghとなる。
何故なら、上に移動させるため加えた小さい正の力は無限に小さく出来るので無視出来るから。
上に持ち上げられた物体は、支えをなくせば、引力㎎に引かれて落下運動する。
これを利用して、直接この石に仕事をさせることができる。
例えば、石に紐をつけ、延ばした紐の他端に動かしたい物体をつけて、石を自由にすれば、
石は物体を力㎎で引っ張りながら、地表まで落ちる。
この時物体はhだけ移動するので、石が物体に行う仕事はmghとなる。
このようにhの高さに持ち上げられた石は、仕事をする能力を持つ。
その量はmghで、最初人間が石に対して行った仕事に等しい。
位置に依存して有する能力なので、石は、位置エネルギーを持つという。
仕事量も表したい時には、「石の位置エネルギーはmgh」と表現する。
また、地表からhの高さに持ち上げられた石は、
支えをなくして自由にすると落下運動を行う。
運動物体は仕事をする能力を持つ。
何故なら、運動している物体は他の物体に接触すると力を与えて動かし、
仕事をするからである。
速度が速いほど、この能力は増す。
この場合の「仕事する能力」は、運動に基因するので、運動エネルギーという。
従って、位置エネルギーは直接に仕事をする能力だけでなく、
運動エネルギーという形態に変化する能力ももつ。
石は落下するに従って位置エネルギーをへらし、運動エネルギーは増していく(速度が速くなるため)。
こうして人間の行った仕事は、
石の位置エネルギーになり、
それは仕事をしたり、
運動エネルギーなど他のエネルギーに変換され、
その後仕事にも変換できる。
これ等の過程でエネルギーは保存されるのか、
工夫したら、最初に人間の行った仕事より多くの仕事が得られのではないか。
この節では、このようなエネルギーの問題を調べる。
- エネルギー(ウィキペディア)の自然科学の項を参照のこと。
運動エネルギー(kinetic energy)
運動している粒子は、それを止めようとする物体に力を与え、動かすことが出来る。
運動している粒子は,運動に起因する何らかのエネルギーを持っていると考えられる。
止まった段階ではこのエネルギーは零になるので、
運動している粒子の持つエネルギーの量は、止まるまでに使った仕事で計れる。
質量mの粒子が速度→vで運動しているとき、
止まるまでになす仕事を求めてみる。
速度方向をx軸とする座標O−xをとる。
力が作用しなければ、粒子はx軸の上をx正方向にむかって、速さv:=‖で等速直線運動を続ける。
この粒子が原点を通過する瞬間(t=0)から、x軸方向の力 F=-f、f>0(負の向き)を、止まるまで与え続ける。この間、粒子は、作用反作用の法則により、 F=f、f>0の力で、止めようとする物体を押し返しながら、止まるまで仕事をし続ける。
止まるまでの距離を求めるため、運動法則を用いる。
この粒子の運動方程式は
m\frac{d^2}{dt^2}x(t)=-f \qquad (1) ,
ここで、x(0)=0,v(0)=v(初期条件)\qquad (2)
(1)式の両辺をmで割り、v(t):=\frac{d}{dt}x(t)を代入すると、
\frac{d}{dt}v(t)=-\frac{f}{m}
この方程式を満たし、初期条件(2)を満たす関数vは、
v(t)=-\frac{f}{m}t+v \qquad \qquad (3)
この式から、粒子が停止する時刻は
t_1=\frac{mv}{f}
このときの粒子の位置は、
\frac{d}{dt}x(t)=-\frac{f}{m}t+v \qquad (4)
を解いて、停止時刻でのxを求めればよい。
初期条件式(2)を満たす(4)式の解は
x(t)=-\frac{f}{2m}t^2+vt \qquad (4)
故に、止まる位置は
x(t_1)=-\frac{f}{2m}{t_1}^2+vt_1=\frac{mv^2}{2f}
粒子が止まるまで,なした仕事は、
W=f \frac{mv^2}{2f}= \frac{mv^2}{2}
以上の考察より、粒子の運動エネルギーを次のように決める。
定義;
質量m、速度\vec vの質点の運動エネルギーを、
\frac{mv^2}{2}
で定める。
- ウィキペディア(運動エネルギー)
- ウィキペディア(Kinetic_energy) in English
仕事エネルギー定理(Work-energy theorem)
空間には適当に原点Oを定めておく。
必要ならば直交座標O-x_{1}x_{2}x_{3}をいれる。
仕事エネルギー定理
質量mの質点が力 \vec F(t)を受けて運動している(注参照のこと)。
力は時間に関して連続であるか、区分的に連続(不連続点が有限個しかない)と仮定する。
時刻t の質点の位置を\vec{x}(t)、速度を\vec{v}(t_1)とおく。
すると
ⅰ)時刻t_1から t_2までに力の行う仕事は
W=\int_{t_1}^{t_2}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt
ここで(\vec{F}\cdot \vec{v})(t):=\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)
ⅱ)W=\frac{1}{2}m\|v(t_2)\|^2 - \frac{1}{2}m\|v(t_1)\|^2
すなわち力がなした仕事は、運動エネルギーの変化量に等しい。
(注)万有引力や電磁気力は、場所によって変化するので、
位置ベクトル\vec xにいる質点の受ける力は\vec{G}(\vec x)の形に書ける。
すると、時刻tに質点の受ける力は時間の関数\vec{F}(t):=\vec{G}(\vec{x}(t))となる。
人為的に時間により力を変えて物体の運動を制御することもある。
この場合にも適用できるような記述にした。
ⅰ)の証明;
2つの異なる方法で証明する。
第一の方法は、時刻tまでに力の行う仕事をW(t)と書き、
この実数値関数が微分可能で\frac{dW}{dt}(t)=(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)であることを導き、
次に実数値関数(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)が積分可能であることを示す。
すると、\int_{t_1}^{t_2}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)の被積分関数(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)の原始関数がW(t)になる。
すると、
「2.6 剛体の回転運動と釣合い」の「1.8.6 慣性モーメントの計算(2)原始関数を利用する方法」で証明した定理より、
\int_{t_1}^{t_2}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)=[W(t)]_{t_1}^{t_2}=W(t_2)-W(t_1)=W
を得る。
第2は、
曲線にそった仕事の定義(「2.3 質点の運動」の仕事の項の説明)にしたがって、
質点の軌跡を細かく分割し、各小部分で力の行う仕事を求め、加え合わせて、
命題を証明する方法である。
証明1:
力\vec{F}(t)は連続関数と仮定して良い。
なぜなら、有限個の点で不連続の場合は、
連続となる小区間ごとに考えればよいから。
独立変数t\in [t_1,t_2]に対して、
W(t)=時刻t_1から時刻tまでの間に力の行った仕事
で、[t_1,t_2]上の関数Wを定義する。この定義より、W(t_1)=0である。
時刻t\in (t_1,t_2)における、関数の微係数を求めよう。
\frac{dW}{dt}(t)
=\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0}\frac{W(t+\delta)-W(t)}{\delta}
=\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)
であることを以下に示す。
\deltaが極めて微小な正数と考える(負数の場合も同様に証明出来る)。
力が[t,t+\delta]の間に行う仕事
W(t+\delta)-W(t)の考察から始める。
この間、質点は\vec x=\vec{x}(t)に従って、
\vec{x}(t)から\vec{x}(t+\delta)まで移動する。
\deltaがきわめて微小なので、
この軌跡は、ベクトル\vec{x}(t+\delta)-\vec{x}(t)
(の始点を、位置ベクトル\vec{x}(t)の終点にしたもの)とみなせる。
力は時間に関して連続なので、この微小時間中は\vec{F}(t)とみなした良い。
(みなせるという表現は厳密さに欠けるが直観的理解を優先した)。
するを、[t,t+\delta]の間に力の行う仕事は、
W(t+\delta)-W(t)=\vec{F}(t)\cdot \left(\vec{x}(t+\delta)-\vec{x}(t)\right)
となる。図参照のこと。
ゆえに、
\frac{dW}{dt}(t)
=\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0}\frac{W(t+\delta)-W(t)}{\delta}
=\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0}\frac{\vec{F}(t)\cdot
\left(\vec{x}(t+\delta)-\vec{x}(t)\right)}{\delta}
=\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0}
\vec{F}(t)\cdot\frac{\left(\vec{x}(t+\delta)-\vec{x}(t)\right)}{\delta}
=\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)\qquad \qquad (1)
式(1)は[t_1,t_2]上の連続関数関数なので
積分可能である(8章物理数学の8.3積分参照)。
そこでこの区間上で積分すると
\int_{t_1}^{t_2}\frac{dW}{dt}(t)dt=\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)dt
上式の左辺の被積分関数の原始関数はW(t)なので、
\int_{t_1}^{t_2}\frac{dW}{dt}(t)dt=[W(t)]_{t_1}^{t_2}=W(t_2)-W(t_1)=W
ゆえに、
W=\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)dt
第2の方法による証明
時刻t_1からt_2までの質点の運動の軌跡は、向きのついた曲線
\vec{C}:=\{\vec{x}(t) \mid t_1\leq t \leq t_2\}
で表わせる。向きは時刻が進むときに進む方向にいれる。
時刻t_1からt_2までを、n個の小区間
[s^{n}_{i-1},s^{n}_i](i=1,2,,,n)に分割する。ここで(s^{n}_0=t_{1}<s^{n}_{1}<s^{n}_{2},,,,<s^{n}_{n}=t_2)
この分割を\Delta^{n}:=\{[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]\mid i=1,2,3,,,n\}と書く。
n個の小区間の長さの最大値を|\Delta^{n}|と記す。|\Delta^{n}|:=\max_{i}(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})
これに対応して軌跡Cは、
n個の小部分\vec{C^{n}_i}=\{\vec{x}(t) \mid t \in [s^{n}_{i-1},s^{n}_i] \},(i=1,2,,,n)に分割される。
\vec{C^{n}_i}の端点をP^{n}_{i-1},P^{n}_iとおくと、
\vec{x}(s^{n}_{i-1})=\vec{OP^{n}_{i-1}} 、
\vec{x}(s^{n}_i)=\vec{OP^{n}_i}である 。
時間の分割数nを増やし、\lim_{n\to \infty}|\Delta^{n}|=0となるように分割する。
するとnが十分大きい時、
各時間分割[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]の間に質点はほぼ等速直線運動するので、
対応する軌跡Cの小部分C^{n}_iは、有向線分\vec{P^{n}_{i-1}P^{n}_i}=\vec{x}(s^{n}_i)- \vec{x}(s^{n}_{i-1}) で近似できる。
力も時刻が[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]の間、ほぼ一定である。
(注)この後の証明は少し難しい。
そこで、正確さに欠けるが直観的に、命題が成り立つ理由を書いてみる。
各時間分割[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]の間に力が行う仕事W^{n}_iは
W^{n}_i=\vec{F}(s^{n}_{i-1})\cdot \left(\vec{x}(s^{n}_i)- \vec{x}(s^{n}_{i-1})\right)
にほぼ等しい。
ここで、s^{n}_i- s^{n}_{i-1}が小さいので、微分の定義から
\frac{\vec{x}(s^{n}_i)- \vec{x}(s^{n}_{i-1})}{s^{n}_i)- s^{n}_{i-1}}
\approx \frac{d\vec{x}}{dt} (s^{n}_{i-1})=\vec{v}(s^{n}_{i-1})
そこで、
\vec{x}(s^{n}_i)- \vec{x}(s^{n}_{i-1})
\approx
\vec{v}(s^{n}_{i-1})(s^{n}_i)- s^{n}_{i-1})
故に、
W^{n}_i \approx \vec{F}(s^{n}_{i-1})\cdot\vec{v}(s^{n}_{i-1})(s^{n}_i)- s^{n}_{i-1})
=(\vec{F}\cdot\vec{v})((s^{n}_{i-1}) (s^{n}_i)- s^{n}_{i-1})
力が時間[t_1,t_2]の間に行う仕事W^nは、
W^n=\sum_{i=1}^{n}W^{n}_i
\approx
\sum_{i=1}^{n}(\vec{F}\cdot\vec{v})((s^{n}_{i-1}) (s^{n}_i)- s^{n}_{i-1})
この式は、nが大きくなるほど、等式に近くなる。
最後の項\sum_{i=1}^{n}(\vec{F}\cdot\vec{v})((s^{n}_{i-1}) (s^{n}_i)- s^{n}_{i-1})は、
[t_1,t_2]上で定義された区分的に連続な実数値関数
f(t):=(\vec{F}\cdot\vec{v})(t)=\vec{F}(t)\cdot\vec{v}(t)
の、時間分割\Delta^{n}:=\{[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]\mid i=1,2,3,,,n\}に対応する
リーマン和である。
そこで、nを無限に大きくしていくと、最後の式は
W:=\lim_{n\to \infty}W^n=\int_{t_1}^{t_2}f(t)dt
=\int_{t_1}^{t_2}(\vec{F}\cdot\vec{v})(t)
=\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)\cdot\vec{v}(t)dt
に収束する(8章の8.3 積分に証明あり)。
正確な証明に戻る;
任意の時刻{\xi}_i\in [s^{n}_{i-1},s^{n}_i]を代表点として選び、
この区間上の力を\vec{F}({\xi}_i)で近似する。
この近似を用いると、仕事の定義から、力がC_iで行う仕事は
W_i(\Delta^n,{\xi}_i)= \vec F({\xi}_i)\cdot \vec{P_{i-1}P_i}
=\vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s^{n}_i)-\vec{x}(s^{n}_{i-1})
故に、時間をn分割したときの仕事Wの近似値は、
W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\sum_{i=1}^{n} W_i(\Delta^n,{\xi}_i)
=\sum_{i=1}^{n} \vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s^{n}_i)-\vec{x}(s^{n}_{i-1})\qquad (1)
ここで、
\vec{x}(s^{n}_i)-\vec{x}(s^{n}_{i-1})
=\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\frac{d\vec{x}(t)}{dt}dt
=\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\vec{v}(t)dt
=\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}
\left(\vec{v}({\xi}_i)+(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt
=\vec{v}({\xi}_i)(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})
+\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)
この式を(1)式に代入すると、
W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})
=\sum_{i=1}^{n} (\vec{F}\cdot \vec{v})({\xi}_i)(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})
+\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \qquad (2)
(2)式の右辺の第一項は、実数値関数
(\vec{F}\cdot \vec{v})(t):=\vec{F}(t)\cdot\vec{v}(t)
の、n等分割と代表点\{\xi_i\}_{i=1}^{n}に対応するリーマン和
I^{\vec{F}\cdot \vec{v} ,\Delta^n}(\xi_1,,,\xi_n)である。
この関数は区分的に連続なので、
リーマン積分の定理(物理数学のリーマン積分参照)から、積分可能で
W=\lim_{n\to \infty}W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\lim_{n\to \infty}\sum_{i=1}^{n} (\vec{F}\cdot \vec{v})({\xi}_i)(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})
=\int_{t_1}^{t_2}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt
である。
補題;(2)式右辺の第2項は、nを無限にしていくと、0に収束する。
記号で書くと、
\lim_{n\to \infty}\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt=0
この補題を用いると、
W=\lim_{n\to\infty}W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\int_{[t_1,t_2]}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt
これで定理のⅰ)の証明はできた。
定理のⅱ)の証明
運動の第2法則から、\vec{F}(t)=m\frac{d\vec v(t)}{dt}なので、
W=\int_{[t_1,t_2]}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt
=\int_{[t_1,t_2]}(m\frac{d\vec v}{dt} \cdot \vec{v})(t)dt
ここで、
\frac{d(\vec{v} \cdot \vec{v})}{dt}(t)=2(\frac{d\vec v}{dt} \cdot \vec{v})(t)(「8章の8.3 積分」のベクトル値関数の微分参照のこと)なので
=\frac{m}{2}\int_{[t_1,t_2]}\frac{d(\vec{v} \cdot \vec{v})}{dt}(t)dt
ここで、被積分関数\frac{d(\vec{v} \cdot \vec{v})}{dt}(t)の
原始関数は\vec{v} \cdot \vec{v}なので、
=\frac{m}{2}[(\vec{v} \cdot \vec{v})(t)]_{t_1}^{t_2}
=\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_2)\|^2-\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_1)\|^2
ⅱ)の証明終わり。
補題の証明;
\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|
\leq \sum_{i=1}^{n}\| \vec{F}({\xi}_i)\cdot \int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \|
\leq \sum_{i=1}^{n}\| \vec{F}({\xi}_i)\|\|\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|
M:=max_{t\in [t_1,t_2]}\|\vec{F}(t)\|とおくと、
\leq M\sum_{i=1}^{n}\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\|\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|\qquad (3)
\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)=\int_{{\xi}_i}^{t}\frac{d\vec{v}(s)}{ds}ds
=\int_{{\xi}_i}^{t}\frac{\vec{F}(s)}{m}ds
なので、
\|\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\|
\leq \int_{{\xi}_i}^{t}\|\frac{\vec{F}(s)}{m}\|ds
\leq
\frac{M}{m}(s^{n}_i-s^{n}_{i-1}) \qquad \qquad (4)
(4)式を(3)式に代入すると
\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \|
\leq \frac{M^2}{m}\sum_{i=1}^{n}(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})^2
ここで、s^{n}_i-s^{n}_{i-1}\leq |\Delta^n|,(i=1,2,,,n)なので、
\leq
\frac{M^{2}(t_2-t_1)}{m}|\Delta^n|
故に、
\lim_{n\to\infty}\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|
\leq
\frac{M^{2}(t_2-t_1)}{m}\lim_{n\to\infty}|\Delta^n|
=0
補題の証明終わり。
保存力と位置エネルギー
保存力と保存力場
質点がどこにあろうが、その場所\vec xに応じて力\vec{F}(\vec x)が作用するとする。
このような空間を力の場という。
質点が任意の点Pから任意の点Q まで動くとき、
力\vec{F}(\vec x)の行う仕事が移動経路に関係なく2点P、Qだけで決まるならば、
この力を保存力(conservative force ) といい、
このような空間は保存力場という。
議論を簡単にするため、経路としては、区分的に滑らかな曲線(注参照)に限定する。
(注)曲線\vec{C}を、
[0,1]で定義された
連続でしかも有限個の点を除いて微分可能なベクトル値関数の
軌跡で表すことが出来ることをいう。
位置エネルギー
保存力は次のように言いかえることができる。
物体にかかる力 \vec{F}(\vec x) に逆らって、
力 -\vec{F}(\vec x)+\deltaを加えて、
物体をQ点からP点に非常にゆっくり動かす時、
この力-\vec{F}(\vec x) の行う仕事が
移動経路に関係なく2点の位置だけで決まる時、
力 \vec{F} を保存力という。
ここで力 -\vec{F} は、物体に作用する力 \vec{F} とつり合いをとるための力であり、
力 \delta は、力がつりあって静止している物体を、
移動経路に沿って、無限にゆっくりと動かすのに必要な、無限に小さい力である。
このため \delta のなす仕事は零とみなせる。
力 -\vec{F} の行う仕事を、Q 点を基準とした P 点でのこの物体のポテンシャルエネルギー(potential energy)(あるいは位置エネルギー)と言う。
- ウィキペディア(ポテンシャル)の保存力の項
- ウィキペディア(位置エネルギー)
- ウィキペディア(Potential_energy) in English
を参照のこと。
力の場が保存的である必要十分条件
命題
\Omegaを空間{\bf R^3}から有限個の点を除いた領域とする。
次の2条件は同値である。
(1)\Omega上で定義された連続な力の場
\vec{F}(\vec x),(\vec x\in \Omega)が
保存力場である。
(2)\Omega上で定義され実数に値を取るC^1級関数U(\vec x)が存在して
\vec{F}_i=-\frac{\partial U}{\partial x_i} ,(i=1,2,3) \qquad \qquad (1)
が\Omega上で成り立つこと。
記述を簡略化するため、Uの勾配(gradient)
\mathrm{grad}U(\vec x):=(\frac{\partial U}{\partial x_1}(\vec x),
\frac{\partial U}{\partial x_2}(\vec x),\frac{\partial U}{\partial x_3}(\vec x))
を導入すると、
\vec{F}=-\mathrm{grad}Uが\Omega上で成り立つこと。
ここで\frac{\partial U}{\partial x_i}とは、
U(\vec x)を、独立変数の第i成分 x_i:=(\vec x)_iの関数とみるため
他の変数は固定して、V_i(x_i):=U(x_1,x_2,x_3)という実変数で実数値の関数を考え、
x_iで微分したものを表す。記号で表示すると、
\frac{\partial U}{\partial x_i}(\vec x):=\frac{dV_i}{dx_i}(x_i)
関数\frac{\partial U}{\partial x_i}は
変数\vec xに、その点のx_iについての偏微分係数\frac{\partial U}{\partial x_i}(\vec x)を対応させるもので、
x_iについての偏導関数と呼ばれる。
U(\vec x)がC^1級とは、
全ての偏導関数\frac{\partial U}{\partial x_i}、(i=1,2,3)が存在し、
しかも連続関数となることをいう。
多変数関数の連続性や微分については、
「第8章 物理数学」の「極限と微分」で要点を説明してある。
証明;
(1)ならば(2)を示す。
領域\Omegaの一点Oを原点にした、直交座標系O-xyzを決める。
この領域の任意の点P(x_1,x_2,x_3)(x_iはPの座標)の、原点からみた、ポテンシャルエネルギー
U(P)=\int_{C(O \to P)}-\vec{F}(\vec y)\cdot \vec{dy}
を定める。この値は経路C(O\to P)に関係なくきまる。
1)\frac{\partial U}{\partial x_1}(\vec x)=-{\vec F}_{1}(\vec x)を示す。
\vec{e_1}:=(1,0,0)とおき、Uの偏微分を定義に従って計算する。
\frac{\partial U}{\partial x_1}(\vec x)
=\lim_{\delta \to 0,\delta\neq 0}\frac{U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3)}{\delta}
ここで、
U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3)
=-\int_{\{{\vec x}(t)=\vec x+t\vec{e_1}\mid 0\leq t\leq \delta\}}\vec{F}(\vec y)\cdot \vec{dy}
仕事エネルギー定理の(1)で証明したように、
=-\int_{0}^{\delta}{\vec F}(\vec{x}(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)}{t}dt
\frac{d\vec{x}(t)}{t}=\vec{e_1}であり、
{\vec F}(\vec{x}(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)}{dt}={\vec F}_1(\vec{x}(t))となるので
=-\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dt
故に、U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3)
=-\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dt
\lim_{\delta \to 0,\delta\neq 0}\frac{U(x_1+\delta,x_2,x_3)-U(x_1,x_2,x_3)}{\delta}=-\frac{1}{\delta}\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dt
ここで、{\vec F}_1(\vec x+t\vec{e_1})はtの連続関数なので、
|t|が十分小さければ、{\vec F}_1(\vec x)にいくらでも近くなる。
そこで、区間[0,\delta]での平均値
\frac{1}{\delta}\int_{0}^{\delta}{\vec F}_1(\vec{x}(t))dtは、
\deltaが零に収束するとき、{\vec F}_1(\vec x)に収束する。
これで(2)が証明できた。
(2)を仮定して(1)を示す。
任意の2点P,Q\in \Omegaに対し、それを結ぶPからQへの区分的に滑らかな曲線
{\vec C}:=\{{\vec x}(t)\mid 0\leq t\leq 1\},{\vec x}(0)=P,{\vec x}(1)=Q
を選んだとき、これに沿って力の成す仕事
W_{\vec C}=\int_{\vec C}{\vec F}(\vec x) \cdot \vec{dx}
=-\int_{\vec C}\mathrm{grad}U(\vec x)\cdot \vec{dx} \qquad \qquad (2)
が、曲線に依存しないことを示せば良い。
{\vec C}:=\{{\vec x}(t)\mid 0\leq t\leq 1\} なので
式(2)=-\int_{0}^{1}\mathrm{grad}U(\vec x(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)}{dt}dt
補題;
\frac{dU(\vec x(t))}{dt}=\mathrm{grad}U(\vec x(t))\cdot \frac{d\vec{x}(t)}{dt}
これは、多変数の場合の合成関数の微分公式である。本テキストの「8章 物理数学」
で説明してある。
これを用いると、
式(2)=-\int_{0}^{1}\frac{dU(\vec x(t))}{dt}dt
\frac{dU(\vec x(t))}{dt}の原始関数はU(\vec x(t))なので、
この定積分は
=-[U(\vec x(t))]_{0}{1}=-U(\vec x(1))+U(\vec x(0))=-U(Q))+U(P)
この値は経路に依存しないので、保存力であることが示された。
証明終わり。
保存力の十分条件
万有引力で作られる力の場などは、保存力場である。
これを示すため、もう少し一般の力の場が、保存力場であることを示す命題を述べる。
命題;
領域\Omegaを3次元空間から原点を取り除いた領域とする。
この領域で定義された力の場
{\vec F}(\vec x)=h(\|\vec x\|)\frac{\vec x}{\|\vec x\|}
は保存力場である。但し、関数hは、実変数の実数値連続関数とする。
証明;
hは連続関数なので、
任意の正数xに対して、定積分\int_{0}^{x}h(x)dxが存在する。
そこで関数H(x):=\int_{0}^{x}h(x)dxを導入する。
この関数Hを微分すると関数hが得られる。
U(\vec x):=-H(\|x\|)という多変数関数を定義すると,
合成関数の微分公式より、
\frac{\partial U}{\partial x_i}
=-\frac{dH}{dy}(\|\vec{x} \|)\frac{\partial \|\vec{x}\|}{\partial x_i}
=-h(\|\vec x\|)\frac{x_i}{\|\vec x\|}=-{\vec F}_i(\vec x)
すでに証明した「力の場が保存的である必要十分条件」中の命題により、
保存力場であることが証明された。
力学的エネルギーと力学的エネルギー保存則(kinetic energy and conservation of kinetic energy )
力学的エネルギーは
- ウィキペディア(力学的エネルギー)
- ウィキペディア(Kinetic_energy) in English
を見てください。
仕事エネルギー定理の仕事量W(=\vec{F}\cdot\vec{PQ} 。 ここで\vec{PQ} は変位ベクトル)をきめる力\vec{F}が
保存力\vec{Fc}と外力\vec{Fo}の和からなるとき、
W=(\vec{Fc}+\vec{Fo})\cdot\vec{PQ}=\vec{Fc}\cdot\vec{PQ} +\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}
=Pのポテンシャルエネルギー(U(P)-U(Q))+\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}となる。
一方仕事エネルギー定理から、W=\frac{1}{2}m{V(Q)}^2-\frac{1}{2}m{V(P)}^2なので、この両式から、
\left(\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)\right)-\left( \frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P)\right)=\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}が得られる。
もし保存力以外の力\vec{Fo} が零ならば、\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)=\frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P)
(力学エネルギー保存則)が得られる。
もっと知りたい方は次をどうぞ。
エネルギー保存則は物理学のなかで最も基本的な原理です。
熱エネルギーも含めたもっと一般的なエネルギー保存則は、後の章で学びます。
運動量と保存則
運動量と力積 (momentum or linear momentum and Impulse)
質点に力\vec{F}(t)が作用しているとする。
運動の第2法則\vec{F}(t)=\frac{d\vec{p}(t)}{dt} の両辺を
時間に関してt_1から t_2まで積分してみよう。ここで\vec{p}(t)=m\vec{v}(t)は質点の運動量。
すると、
\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)dt=\vec{p}(t_2)-\vec{p}(t_1)
となる。
質点に作用する力を時間で積分した\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)dtを力積と呼ぶ。
力積は、運動量の変化に等しい。
- ウィキブックス(高等学校理科 物理Ⅱ) の1.1.2 運動量と力積
n個の質点を持つ質点系の運動量は、各質点の運動量の和で定義する。
この場合にも質点系への力積は質点系の運動量の変化に等しいことが、
運動の第2法則から導ける。
運動量保存則( law of conservation of momentum )
質点の場合、外力がなければ、その運動量は保存される(一定である)。
質点系(質点の集まり)の場合でも、質点系に作用する外力のベクトル和が零ならば、
内力(質点系内の質点間に働く力)があっても、運動量が保存されることが示せる。(注)
これを運動量保存則とよぶ。
(注)質点系の各質点の位置を\vec{r_i}、質量をm_i とし、
質点m_i に作用する外力を\vec{f_i}、
m_i に、質点系の他の質点m_j から作用する内力を\vec{f_{ij}}とする(i,j=1 \ldots N)。
すると、各質点に対して、運動の第2法則により、
\frac{d\vec{p}_i(t)}{dt}=\vec{f_i}+\sum_{j\neq i}\vec{f_{ij}}
各ベクトルを自由ベクトルとみなして,上の式をi=1 \ldots Nについて加え合わせると、
\sum_i{\vec{f_i}}=0 \qquad \vec{f_{ij}}+\vec{f_{ji}}=0(作用反作用の法則)なので、
\frac{d}{dt} \sum_i{\vec{p}_i(t)} =0
が得られる。ゆえに、\sum_i{\vec{p}_i(t)}は保存される。
保存則の応用
衝突の問題
2質点の衝突
力学に必要な物理量(時間、距離、速度、加速度、質量、力)の単位と単位変換
- ウィキペディア(物理単位)
- wikibooks(High_School_Physics/Si_units) ,in English