物理/静電気と静電場(その2 静電誘導・誘電分極)
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2017年4月24日 (月) 08:42時点における版
目次 |
「5.2 静電気と静電場(その2) 静電誘導・誘電分極」
静電場中の導体と静電誘導
導体
移動可能な電荷を含む物質を導体(conductor)あるいは電気伝導体という。
金属など多くの物質は、自由に移動可能な電子(自由電子)を持つので、導体である。
*ウィキペディア(電気伝導体導体)
静電誘導
導体を静電場の中に置くと、導体中の移動可能な電荷が電場からの力で移動する。
負の電荷はこの電場の電気力線の上流側の導体表面に、
正の電荷は下流側の表面に帯電する。
この現象を静電誘導(electrostatic induction)という。
なぜこの現象が起こるか考えてみよう。
導体に静電場をかけると導体内部の自由電子は、
この電場から電気力線の上流方向の力を受けて移動し、
電気力線の上流側の導体表面に貯まっていく。(注参照)
反対側である電気力線の下流の導体表面は、
(自由電子が移動し欠乏するため)正に帯電していく。
すると、この正負の帯電電荷により、
導体内部に外部電場を打ち消すような電場が誘導され、
誘導電場と外部電場の和(導体内部の電場)が零になるまで、自由電子の移動は続く。
この移動はきわめて短時間のうちに終わり、導体は安定した帯電体になる。
こうして静電誘導が起こる。
(注)導体の外部に電子が飛び出すには非常に大きな力がいるため、通常は導体表面に留まる。
命題1(静電誘導状態の導体の電荷分布と表面電場)
電場中の静電誘導している導体を考える。この時、
ⅰ)電場の上流側の表面には負電荷、下流側の表面にはそれと逆符号の正電荷が生じ、
導体全体の電荷は零である。
ⅱ)導体内部の電場は零であり、導体内部には電荷は存在しない。
ⅲ)導体の表面が滑らか(注を参照のこと)ならば、導体表面の電場は、この表面に直交し、
この電場により表面電荷は、表面に垂直な外部に向けた力を受ける。
ⅳ)導体のどの点も等電位である。
証明;
ⅰ)すでに説明した。
ⅱ)静電誘導状態の導体の内部の電場が零であることは、すでに説明した。
導体内部には電荷がないことを示そう。
導体内部に、表面が滑らかな任意の小領域Rをとる。
この領域内の電荷総量をQとし、この領域の表面Sを考え、
ガウスの法則を適用する。
すると、導体の内部の電場が零なので球面を貫く電気力線の本数は零であり、
$0=\frac{Q}{\epsilon_0}$が得られる。
この式からQ=0が得られる。
導体内部のどんな、表面が滑らかな小領域にも電荷がないので、
導体内部には電荷がないことが分かる。
ⅲ)背理法を用いて証明しよう。
表面のある点の電場の向きが表面に直交しないと仮定する。
表面電荷に働く力は、
方向が電場の方向と等しいので表面には直交せず、
導体の外部に向いていることになる。
すると、この力を2つの直交する力の和に分解して、
少なくともその一方が導体内部への力になるものがある。(注参照)
するとこの力の成分により表面電荷は、導体内に移動してしまう。
これは、導体が静電誘導状態であることに矛盾する。
背理法により、表面の電場の向きが表面に直交することが示せた。
導体表面のある点xの電場 $\vec{E}(x)$と
その点における単位外法線 $\vec{n}(x)$の作る角の2等分線lと考える。
$\vec{n}(x)$と$\vec{E}(x)$を含む平面上で
この直線と直交し点xを通る直線mをとり、
$\vec{E}(x)$を、この2直線に直交分解すればよい。
☆☆一様な静電場の中に置かれた導体球RT
帯電していない導体で出来た球を考える。
導体内には自由に動ける負の電荷と
それと絶対値は等しく逆符号の正の電荷が一様に分布しているとみなせる
。
この球を一様な静電場の中に置くと,
自由に動ける負の電荷が、電場の向きと逆の向きの力を受け、
接地(アース)
地球は非常に大きい導体とみなせ、その電位は一定である。
そこで、地球の電位を基準(零)として、電位を決めることが多い。アース電位と呼ぶ。
導体を導線で地球とつなぐと、導体は地球の電位と同じ一定値(アース電位0)に保てる。
これを接地する、または、アースをとる、という。
はく検電器
静電誘導現象を用いて、物質が帯電しているか否かを調べる機器を作ることができる。
検電器と呼ぶ。一例として検電器について述べる。
図のように金属棒の一端に2枚の開閉できる金属箔が付き、他端には円形の金属板のついた装置を、はく検電器という。
中性(帯電していない)の、はく検電器の金属板に正の帯電体を近づけると、
金属箔と金属棒中の自由電子が金属板に引き付けられる。
すると、2枚の金属箔が共に(電子欠乏で)正に帯電するため反発し合って箔が開く。
中性の物質を近づけても、電気的変化は起きず箔は閉じたままである。
(注)負の帯電体を近づけたときは、2枚の金属箔は共に負に帯電し箔が開く。
はく検電器による蓄電
この状態で、検電器の金属板に手をふれて大地とつなげると、
検電器のはく(箔)にたまった電荷は大地に流れ出し(実際には大地から電子が、箔に流れ込み)、箔の電荷は消失して閉じ、
検電器の金属板には、帯電物体の電荷に引き付けられている自由電子が残る。
検電器全体でみると、負に帯電したことになる。
そこで検電器の金属板に近づけていた帯電体を遠ざけると、
たまった負電荷の一部が箔に流れ込み、2枚の箔は反発して開く。
帯電導体の性質
導体を帯電すると電気は反発しあって、互いに離れようとする。
命題2(帯電導体の電荷分布と表面電場)
真空中の帯電導体を考える。この時、
ⅰ)帯電した電荷の作る電場が導体内部では零であり、導体は等電位である。
ⅱ)電荷はすべて導体表面に分布し、内部にはない。
ⅲ)導体の表面が滑らかならば、導体表面の電場は、この表面に直交し、
この電場により表面電荷は、表面に垂直な外部に向けた力を受ける。
証明は、命題1と同様にしてできる。
命題3;
導体表面は滑らかで、電荷分布が$\sigma$で与えられるとき、
導体表面の電場の大きさは$E=\frac{\sigma}{\epsilon_0}$
導体の表面上の一点xを含む微小な直方体を図のようにとる。
ここで下底面は、導体表面の近くの導体内部の面で、表面に平行であり、
上底面は導体表面近くの外部の面で表面に平行であるとし、
側面は表面と直交するようにとってある。
この直方体の表面にガウスの法則を適用する。
直方体の内部にある電荷量は、底面の面積をSとおくと、$Q=\sigma S$である。
次に直方体表面を貫く電気力線の本数を求める。
下底面の電場は零(命題2)なのでそれを貫く電気力線はなく、
側面を貫く電気力線もない(電場と側面が平行のため)。
従って、上底面を貫く電気力線の本数=ESが直方体表面を貫く電気力線の総本数。
ガウスの法則より、
$ES=\frac{\sigma S}{\epsilon_0}$
この式から所望の結果が得られる。
命題4;導体球の帯電
半径aの導体球に電荷量Qを帯電する.
ⅰ)この電荷は導体表面に一様に分布する。
ⅱ)導体球の中心から距離$r(\ge 0)$の点の電場の大きさEは、
$\qquad r\lt a$ ならば E=0
$\qquad r\geq a$ ならば $E=\frac{Q}{4\pi \epsilon_0 r^2}$
ⅲ)導体球の中心からの距離rの点に、この電場が作る(無限遠を零とする)電位$\phi(r)$は、
$\phi(r)=\frac{Q}{4\pi \epsilon_0 a }\qquad $ ;$r\leq a$のとき。
$\phi(r)=\frac{Q}{4\pi \epsilon_0 r }\qquad $ ;$r\gt a$のとき。
証明;
静電遮蔽
静電場の中に置かれた導体の箱の中の空間には、
電荷が存在しない限り、電場は存在せず、電位は一定である。
このように,導体の箱の内部は外部の静電場から遮蔽されている。
問い。何故か、考察せよ。
ヒント: 背理法で証明する。
解;
もし、箱の内部の電位が一定でないとすると、
「電位は、ある内部の点pで最大値をとり、その値は導体箱の電位(一定)より大きい」か、
「ある内部の点p’で最小値をとり、その値は導体箱の電位より小さい」
かのいずれか一方は必ず起こる。
前者では、p点を含む小さな立体を考えると、それを内から外へ貫く電気力線の数は正となり、
ガウスの法則に反する。
後者でも同様。
コンデンサー
コンデンサーは,蓄電器あるいはキャパシターともいわれ、電気を蓄える道具である。
真空などの不導体(絶縁物)によって分離され、
対向して置かれた2枚の電極ないし電極板によって構成される。
電極間に(直流電池につなぐなど)電圧を加えると、
一方の電極の自由電子が他方の極に流れ、
前者が正に、後者が負に帯電して電気を蓄える。
帯電中に電気が外部に漏れないようにするため、
正電極から発生する電気力線が、
殆どすべて負の電極に終わるように作られている。
平行板コンデンサー
同じ形、大きさの2枚の金属の薄い平板を、距離 $d[m]$ を隔てて平行に置き、
それぞれの板に電極を付けたものを、平行板コンデンサーという。図参照のこと。
なお、以下の議論では、厳密にはコンデンサーの極板間は真空であると仮定するが、
空気でも誤差は無視できるほど小さい(後述する)ので、空気と考えて差し支えない。
コンデンサーに蓄えられる電気量Qと電圧Vの関係
命題5;
コンデンサーの極板間に電圧をかけ帯電する。この時、
ⅰ)正極板の帯電量が$Q(\gt 0)$のとき、負極板の帯電量は$-Q$である。
ⅱ)コンデンサーの両極板間の電圧Vと帯電量$Q$ は正比例する。
$Q = C V \qquad\qquad \qquad (1)$
上式の比例定数Cをコンデンサーの容量(capacity)と呼ぶ。
証明:
ⅰ)明らか。
ⅱ)コンデンサーの両極板の帯電量$\pm Q$とこの電荷の作る電場は、
重ね合わせの原理から正比例することが分かる(注参照)。
電場と電圧も正比例するので、帯電量Qは、極板間の電圧Vに正比例する。
$Q = C V $
(注)それぞれの極板の電荷の作る電場は重ね合わせの原理から電荷に正比例する。
コンデンサーの作る電場は重ね合わせの原理から、
それぞれの極板に貯まった電荷の作る電場の和である。
この2つから、両極板の帯電量$\pm Q$とこの電荷の作る電場が正比例することが分かる。
命題6;
コンデンサーの極板間に電圧をかけ帯電する。この時、
正極板に貯まった電荷はすべて、負の極板に近い表面に分布し、極板内には電場はなく、電荷もない。
負の極板でも同様である。
証明は容易なので省略する。
平行板コンデンサーの電気容量
命題7;
極板の面積をS,極板間の距離をdとすると、
$C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}\qquad \qquad (2) $
ここで、$\varepsilon_0 = 8.85418782*10^{-12} $
[F/m] は真空の誘電率, [F/m]=$[\frac{C^2}{N m^2}]$ 。
(何故なら)
極板間の電場の大きさを、Eとかく。
$Q = CV$の両辺に$d/S$をかけた式$\frac{Q}{S}d = CVd/S$に、
電荷密度 $\sigma=\frac{Q}{S}$ と$V = E d=\frac{\sigma}{\varepsilon_0}d $(注1参照)を代入して得られる式
$\sigma d = CEd^2/S$
に $E=\frac{\sigma}{\varepsilon_0} \qquad \qquad $ を代入し、
Cについて整頓すると、所望の式が得られる。
(注1)ガウスの法則の応用の「2:平行版コンデンサー」を参照のこと。
電気容量Cの単位
電気容量Cの単位は,$Q = C V $ を用いて以下のように定める。
$C = Q/V $ なので、
電位Vの単位はボルト$[V] $、電荷Qの単位はクーロン$[C] $を用い、
$[F]=[C/V]$
この単位[F]をファラッドという。
ここで、$[V]=[J/C]=[Nm/C]$([N]は力の単位、ニュートン)なので
$[F]=[\frac{C^2}{J}]=[\frac{C^2}{N m}]$とも書ける。
普通に使われるコンデンサー容量は、1Fに比べてはるかに小さいので、
次の単位が使われることが多い。
μF=$10^{-6}F$(マイクロファラッド)
pF=$10^{-12}F$(ピコファラッド)
真空の誘電率$\varepsilon_0 $の単位
真空の誘電率$\varepsilon_0 $ は、
$\varepsilon_0\fallingdotseq 8.9\times 10^{-12} [\frac{C^2}{N m^2}]$
であった。
$[F]=[\frac{C^2}{N m}]$を用いて、単位を書き直せば
$[\frac{C^2}{N m^2}]=\frac{F}{m}$
コンデンサーに蓄電するのに必要なエネルギー
命題8;
容量Cのコンデンサーに電荷$ Q $を蓄えるのに必要なエネルギー は、
$ \mathcal{E} = \frac{1}{2} Q V =\frac{1}{2} C V^2=\frac{Q^2}{2C}$ である。
ここで、$ V $は、$ Q = C V $を満たす値。
理由:
横軸にq軸(電荷量),縦軸にv軸(極板間の電圧)をとり、$v = q/C $ のグラフ(直線)を書く。
図を参照のこと。
電荷量$\tilde{q}$ を$0 \le \tilde{q} \lt Q $ とし、nを大きな自然数に取り$d\tilde{q}=\frac{Q}{n}$を非常に小さな数とする。
電荷量を$\tilde{q}$から$\tilde{q}+d\tilde{q} $まで増やすのに必要なエネルギーを求めよう。
増加する電荷$d\tilde{q}$は微小なのでこの間、極板間の電圧$v = \tilde{q}/C $は一定とみなせる。
そこで、電荷量を$d\tilde{q}$増やすのに必要なエネルギー$d\mathcal{E}$は
$d\mathcal{E}=v d\tilde{q}=(\tilde{q}/C) d\tilde{q}$と考えられる。
$v = q/C $ のグラフでいえば、これは、図の斜線部の面積にあたり、
q軸と直交する2本の直線$ q=\tilde{q}, q=\tilde{q}+d\tilde{q} $ と直線$v=0 $(q軸)、直線$v= q/C$ で囲まれた領域の面積にほぼ等しい。
全エネルギーの近似値$\mathcal{E}_{\tilde{q}}$は、$ \tilde{q} = 0 $ で $ d\mathcal{E} $を求め始め、
$\tilde{q}=d\tilde{q} $ 、 $\tilde{q}=2(d\tilde{q})$ 、、、、と増やして
$ \tilde{q}=Q-d\tilde{q}$ までの$ d\mathcal{E}$を求め,加え合わせる。
これは、
q軸と直交する直線$ q=Q $ ,直線$v = q/C$とq軸によって囲まれる3角形を、
底辺の長さが $d\tilde{q} $ の長方形の和で近似して面積を求めた値である。
正確なエネルギー$\mathcal{E}$は、
$d\tilde{q} $を無限に小さくしていくときの$\mathcal{E}_{\tilde{q}}$の極限であたえられ、
q軸と直交する直線$ q=Q $ ,直線$v = q/C$とq軸によって囲まれる3角形の面積になる。
故に$ \mathcal{E}= \frac{1}{2} Q V =\frac{1}{2} C V^2=\frac{Q^2}{2C}$ (終わり)
(注)数学が強い方は積分計算で簡単に$\mathcal{E}$を求められる。
$\mathcal{E} =\int_0^{Q}(q/C)d\tilde{q}=[q^{2}/2C]_0^{Q}=Q^{2}/2C= C V^2/2$
電場中の不導体と誘電分極
不導体は動く電荷をもたないので、電場のなかに置いても何の変化も起こさないように思える。
しかし、ファラデーは、
コンデンサーの極板間の電圧を一定にしていても、極板間に不導体をいれると、
極板の帯電量が増加することを発見した。
コンデンサー容量が増えるのである。
ファラデーの発見した経験則と比誘電率
容量Cの平行板コンデンサーの極板間に電圧Vをかけると、
2枚の極板には$\pm Q=\pm CV$の電荷がそれぞれ貯まる。
コンデンサーの極板面積をS、極板間の距離をdとして、
上式を極板の単位面積当たりの式に直すと、
$\pm \sigma=\pm \frac{C}{S}V \qquad (ここで、\sigma:=\frac{Q}{S}は電荷の面密度)$
この電荷密度が極板間に作る電場の強さEは、
ガウスの法則の応用の「2:平行版コンデンサー」により、
$E=\frac{\sigma}{\varepsilon_0} $
この式から、
$\sigma=\varepsilon_0 E \qquad \qquad (3)$ (下記の注参照)
$\quad $(注)この式は、真空中で導体の表面の電場がEであれば、
$\quad $表面電荷$\sigma$の帯電を引き起こしていることを表わしている。
$\quad $そのため、比例係数$\varepsilon_0 $は真空の誘電率となずけられた。
ファラデーが実験で発見したことは、
(1)コンデンサーの極板間の電圧V(極板間電場Eを)を保ちながら、
極板間を不導体で隙間なく満たすと、
帯電量$Q_{o}$ は、元の帯電量Qの$\varepsilon_r $倍に増え、
$Q_{r} = \varepsilon_r Q,\quad (\varepsilon_r \gt 1)$ 。
(2)$ \varepsilon_r $は、同じ不導体で作れば、
コンデンサーの形状や極板間の電圧に関係なく一定である。
$ \varepsilon_r $を比誘電率
(relative permittivity、 dielectric constant)といい、
1以上の不導体に固有の値である。
不導体の種類が変わると、比誘電率は変わる。
また、
$\varepsilon_r \varepsilon_0 $を、この不導体の誘電率と呼び、
$\varepsilon $ で表す。
空気の比誘電率は1.00059で、
誘電率はほぼ真空の誘電率$\varepsilon_0$ に等しい。
その他の主な不導体の比誘電率などは以下を参照のこと。
極板間を完全には満たさない薄い不導体の板をいれても、
不導体の種類とその厚さに応じて、コンデンサーの容量は増加する。
ファラデーの発見から導かれる性質
なぜ、コンデンサーの帯電量が増えるのだろうか?
最も単純な仮説は、極板と接する不導体の表面に逆符号の電荷$\mp Q_P:=\mp (Q_{r}-Q)$が現れると仮定することである
誘導電荷$Q_P$は、分極電荷(Polarization charge)と呼ばれる。
分極電荷$\mp Q_P$が極板の電荷を打ち消し、極板の実質の電荷は$\pm Q$になる。
極板間が真空の時と同じ物理現象がおきているに過ぎない。
この仮説のもとで、ファラデーの発見を数式で表示してみよう。
極板間が真空の場合
$\varepsilon_0 E =\sigma qquad \qquad (3)$
極板間を比誘電率$ \varepsilon_r $の不導体でみたす場合
$\varepsilon_0 E =\sigma =\sigma_r - \sigma_P \qquad \qquad (4)$
$\frac{\sigma_r}{\sigma}=\varepsilon_r \qquad \qquad (5)$
ここで、$\sigma_P:=\frac{Q_P}{S}$は分極電荷の密度。
この時、次の命題が成り立つ。
命題9
$\sigma_P=(\varepsilon_r - 1)\varepsilon_0 E \qquad \qquad (6)$
$\sigma_r=\varepsilon_r \varepsilon_0 E=\varepsilon E \qquad \qquad (7)$
$\quad $ 証明
誘電分極
コンデンサーの電極間に挿入された不導体の表面に(しかも表面だけに)電荷が現れるという
仮定は正しいのだろうか。
(1)原子のスケールから考えると
一様な電場が掛かると不導体の原子の中の電子達(負電荷-q)と原子核(正電荷;+q)は電場から互いに逆の力をうける。
不導体では(自由電子がなく)すべての電子は原子核と電気力で強く引き合っているので
電場の大きさに比例して電子は、わずかに電場の上流側に、原子核はわずかに下流側にずれていく。
不導体の原子は皆同じなので、このずれは同期して、同じ速さで進行し、同時に安定する。
その為、各原子に現れる電荷も、ずれの距離も、すべて同じである。
こうして、各原子には、同量の正負の電荷が電場の方向に同じ距離離れて現出する。
このため電場のなかの不導体は、膨大な個数の同じ大きさで、電場方向を向いた電気双極子の集まりであると考えられる。
不導体の内部では、各原子の正電荷が、隣接する原子の負電荷と相殺されるが、
電場の上流側の不導体の表面の各原子はみな表面側に負電荷を持つため、
不導体表面は負に帯電する。
電場の下流側も同様に考察できる。
(2)マクロなスケールで考えると
電場が作用していないとき、不導体の内部では、
正の電荷とそれと逆符号の負の電荷が同じ密度で一様に重なり合って分布している。
これに一様な電場がかかると
負の電荷の分布は電場上流側の方向の力を受け、
正の電荷の分布は電場下流側への力を受ける。
電場が一様で電荷も一様に分布しているので、
単位体積当たりのこれらの力は、どの場所でも同一である。
不導体では、正電荷と負電荷はどの場所でも一様に強く引き合っている。
このため負の電荷は、一様分布を保ちながら極わずか電場上流側に移動し、
正の電荷分布は極わずか電場下流側に移動する。
こうして電場の上流側の表面に負電荷が、電場下流側の導体表面には正電荷がにじみだす。
この現象を誘電分極(dielectric polarization)という。
絶縁体は誘電分極を起こすので、誘電体とも呼ばれる。
- ウィキペディア(誘電分極)を参照のこと。
定量的な説明
RT;項たての変更必要;
①分極ベクトルP;まくろな定義も加える。分極電荷=|P|
②分極ベクトルと電場の関係。P=χ$\epsilon_0$E
③平行板コンデンサー;真の電荷、分極電荷、見かけの電荷を電場の強さで表示
電位感受率、誘電率
④電束密度と不導体の中のガウス法則
分極ベクトル
原始的なスケールで、誘電分極を定量的に説明しよう。
電場が作用すると、絶縁体中の各原子は電場上流側に負電荷、
下流側に正電荷がある電気双極子になる。
電荷量を$ \pm q $、負の電荷の中心から正の電荷の中心へのベクトルを $\vec d$と置くと、
その向きは、多くの元素で電場の向きと一致する。
そこで、誘電体の各原子は双極子モーメント$\vec{p}=q\vec{d}=qd\vec{E}/E$を持つ電気双極子になる。
この現象が原子のスケールでみた誘電分極である。
単位体積中の双極子モーメントの和を $\vec{P}$ と書き、
分極ベクトルと呼ぶ。
不導体の単位体積中の原子数をNとすると、$\vec{P}=Nq\vec{d}=Nqd(\vec{E}/E)$
RT
分極ベクトルが$\vec{P}$の不導体の表面の分極電荷密度
コンデンサーの例で考える。
極板間に挿入された不導体に極板電荷のつくる電場が作用して不導体の原子が分極して、$q\vec{d}$という双極モーメントを持つとする。
単位体積あたりの双極モーメントは、単位体積当たりの原子数をNとして、$\vec P=Nq\vec{d}$となる。
導体の各表面の$\vec{d}$方向(多くの不導体では$\vec{E}$方向に同じ)に長さ$d$の範囲にわたって電荷が誘導される。
正の極板に接する不導体の面は、$\vec{d}$と直交するので、深さ$d$までの領域が負に帯電。
この部分の単位表面から深さdまでの体積は$d$なので、その部分の原子の総個数はNd,その個々の原子の分極電荷は-qなので、
誘導電荷の総量は $-Nqd=-\|\vec{P}\|$となる。
この電荷は、$d$が小さいので、表面電荷密度とみなせる。
同様に、負の極板に接する不導体の面では、$ Nqd = ||\vec{P}|| $が表面電荷密度。
他方、$\sigma_p$は負の電極に接する不導体表面に現れる誘導電荷密度を表わすので、$\sigma_p = Nqd = ||\vec{P}|| $。
これが、分極ベクトルが$\vec{P}$ の不導体の表面の分極電荷密度である。
次に誘電体の分極ベクトルが$\vec{P}$であるとき、
これと直交しない誘電体の表面に現れる分極電荷を算出しよう。
誘電体の表面の単位長の外法線(表面に直交し、誘電体内部から外部に向かう、単位長さのベクトル)を$\vec{n}$と書くと、
その表面に現れる、分極電荷の面密度$\sigma_p$ は、$\vec P \cdot \vec n$
であることが導ける。
(注)RT;何故?
電束と電束密度
以後RT
電荷Qの作る電場中に不導体があると、
電場の下流側と上流側の面にそれぞれ正、負同量の分極電荷が現れて、電荷Qの作る電場を弱める電場をつくり、
不導体中の電場は、両者の和になる。
このため、不導体中の電場は外部の電場より弱くなる。電気力線の本数は、電場の強さに比例するようにとりきめたので、不導体の中では本数は減少してしまう。
このため、電荷を内部に含む立体の表面の一部あるいは全部が不導体に含まれる場合、立体表面を貫く電気力線の本数は$\frac{Q}{\varepsilon_0} $より少なくなってしまい、[ガウスの法則]は成り立たないように見える。
しかし、これは電場が分極電荷のつくる電場も加えたものなのに電荷は分極電荷をくわえてないためにおこった現象であり、
電荷として真の電荷だけでなく分極電荷も考慮すれば、ガウスの法則は成立する。
「立体を貫く電気力線の本数は$\frac{Q+Q_{p}}{\varepsilon_0} $となる。
ここで$Q_{p}$は、この立体に含まれる分極電荷の総量。しかし$Q_{p}$は測定も難しく、この方法は手間がかかる。
そこで電気力線に代わって不導体中でも量の変わらないものを考え、ガウスの法則をその量を使って記述することを考える。
点電荷の電束と電束密度
点電荷qがある時、そこから(実際には流れるものはないが)qに等しい流体のようなものが湧き出し、
電気力線にそって色々な方向に流れると考える。
各方向への流量は、電場の強さに比例して配分されると考える。
この流れを電束といい、その量を電束量と呼ぼう
真空中に置かれたqを中心とする半径rの球面S上での単位面積当たりの電束量を求めよう。
qという量の電束が点電荷から湧き出し、放射状の電場にそって流れ出し、球面Sを通り抜けるが、
この球面上では、電場の大きさは等しい(E=$q/4\pi r^2 \varepsilon_0$)ので、
どの方向にも等しい密度で流れることがわかる。
そこで球面Sの単位面積当たりの電束量は、qをSの面積で割った、$q/4\pi r^2$となる。
これは、$\varepsilon_0 E$に等しい。
次に、電束の密度と方向を与える電束密度ベクトル(通常は単に電束密度と呼ぶ)を次のように定める。
電荷qを原点とする位置ベクトル$\vec r$の点での電束密度$\vec D$とは、
ベクトルの方向は電気力線の向き(=電場の向き)、
その大きさは、その点をとおり、電気力線と直交する小平面$ds$をとり、そこをとおり抜ける単位面積あたりの電束量
で定義する。
$ds$は小さく、電気力線と直交するので、
qを中心とする半径r=$||\vec r||$の球面の一部と考えてよい。
前述の議論から
ここを通りぬける電束量は、単位面積当たり$\varepsilon_0 E=q/4\pi r^2$である。
これは、$\varepsilon_0 \vec E $ が電束密度であることを示している。
真空中のガウスの法則は、
Vを球や立方体などの立体、Sをその表面(=閉曲面)とすると、
$\varepsilon_0 \vec E $ の外法線成分のS全体での平均値×面Sの面積
は、Vの内部にある電荷量であると記述された。
電束密度Dを用いて表現すると
$D$ の外法線成分のS全体での平均値×面Sの面積は、Vの内部にある電荷量である。
RT
真空中の多数の点電荷の電束と電束密度
点電荷の集まりである電荷Qの作る電場Eは、
重ね合わせの原理から、
それぞれの点電荷の作る電場$E_{q}$ のなので、
Eの作る電束も、$E_{q}$ の作る電束の和となり、
電束密度は、$D=\varepsilon_0 \vec E=\sum_{q}\varepsilon_0 \vec E_{q}$
誘電体中のガウスの法則PT
真空以外の不導体の媒質中の場合、不導体の原子が電荷の作る電場によって、多かれ少なかれ誘電分極して、かってに分極電荷を持ってしまうため、
ガウスの法則は、この電荷を考慮して、
$\varepsilon_0 \vec E $ の「Vの外法線」成分のS全体での平均値×面Sの面積=
V内の真の電荷量Q+V内の分極電荷$Q_p$
としなければならない。
$Q_p$は測定も難しく、どこに発生するかも、分かりにくいので、これを扱いやすくしよう。
まず、分極ベクトル(単位体積あたりの双極モーメント)$\vec{P}=Nq\vec{d}$ が分かる場合;
立体Vの内部に現れる分極電荷の総量は
$-\vec P$の「Vの外法線」成分の、S上の平均値×Sの面積
となる。
何故ならRT
これを前述のガウスの法則の式に代入して、
$\varepsilon_0 \vec E+\vec P $ の「Vの外法線」成分のS全体での平均値×面Sの面積=V内の真の電荷量Q
分極電荷$Q_p$ を使わないで、ガウスの法則が記述できた。
しかし、$\vec{P}=Nq\vec{d}$ も知ることは難しい。
多くの不導体では、、$\vec{P}$ は$\vec{E}$と同じ向きになり、比誘電率$ \varepsilon_r $の誘電体では、$\vec{P}=(\varepsilon_r -1)\varepsilon_0 \vec E$ であった。
これを上式に代入すると、
$\varepsilon_r \varepsilon_0 \vec E $ の「Vの外法線」成分のS全体での平均値×面Sの面積=V内の電荷量Q
となる。