物理/速度・加速度・ベクトル

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物理2章 力学(1) 速度、加速度とヴェクトル

目次

力学(ニュートン力学あるいは古典力学)とは何か(What is classical mechanics?)

物体の運動の根本法則を明らかにする、物理学の一分野です。

この理論の根幹は、力の法則(本テキスト3章)と力と運動の関係を与える運動法則(本テキスト4章)です。

質点の運動の表し方

高校では主に質点(大きさがなく重さだけがある点状の物体)の運動を学び、その法則を明らかにします。 何故ならば、大きさのある物体では、物体のどの部分かによってその位置がことなり、また変形なども起こるため物体の位置を表すのが難しいからです。さらに運動も並進移動だけでなく回転などを行い複雑となるからです。質点は、大きさのない点なので位置は明確で、変形も回転もなく、並進運動だけです。 しかし、重さがあって大きさのない、仮想の物質である質点の運動法則など何の役にも立たないと思う人もいるでしょう。 ところが、応用範囲は結構広いのです。例えば、地球の公転運動は、地球を質点とみなして解析してもほぼ正しいです。 さらに、大きさを考慮して解析しなければならない物体の運動も、質点の運動法則を利用して解明できます。しかしこれには高校数学より高度な数学を必要とするため、高校の物理では扱わず、大学で学びます。

質点の運動を数式で表すにはどうするか?

時間と距離

我々が住む世界は、3次元 空間 で、時間という時の経過が存在します。時間は時計で正確に測れます。3次元空間には長さという概念があり、距離の原器を使って正確に測れます。時間については、ウィキペディア(時間) の4.1 ニュートン力学での時間を、距離(あるいは長さ)については、ウィキペディア(距離) をみてください。

運動を調べたい時間範囲のすべての時刻tにたいしてその位置がわかれば、物体がどのように動いているか、完全にわかります。そこで、質点の位置を時間の関数として表すことで、運動は数式で記述出来ることになります。これは16世紀のガリレオの偉大な発見です。ガリレオはこの方法で落体運動の法則を明らかにしました。現代の物理学はここから始まりました。

質点の位置、および変位の表し方

(1)位置ベクトル
質点の位置は、原点 O と質点 P とを結ぶ \vec{OP} で与えられる位置ベクトルを用いて表示する。これは高校の数学で扱う通常のベクトルと異なり、始点を原点に固定して考えるので、束縛ベクトルということがある。物理学であつかうベクトルには数学のベクトルと違って、使用法に限定がつくことがある。
物理的意味を考えて、ベクトル演算を適用して良いか判断しましょう。
(2)変位ベクトル
質点が位置をP_1 から P_2 に移動したとき、その変位を始点 P1 終点 P2 のベクトル \vec{P_1 P_2} で表し、変位ベクトルという。始点がどこであっても、変化後の質点をみたとき方向と距離が同じならば、変位としては同じなので、始点の違いは無視して、同じベクトルとみなす。このようなベクトルを自由ベクトルという。数学で扱うベクトルは、通常、自由ベクトルである。 ある質点の位置ベクトルを\vec{OP} とする。この質点を点Qまで動かすと変位ベクトルは\vec{PQ} だが、\vec{OP}+\vec{PQ}=\vec{OQ}(ベクトル和)は移動後の質点の位置ベクトルになっている。このように、ベクトル演算を用いると、質点の位置を求めることができる。ベクトルについて、詳しくない方は次の文献をご覧ください。

(3)ベクトルの座標表示
具体的に位置や変位を計算するには、ベクトルを実数であらわして数の計算を用いなければならない。そのため座標の原点と座標軸を定め、位置ベクトルや変位ベクトルを座標表示する。運動の種類に応じて、解析しやすいように色々な座標系が考案されている。良く使われる座標系は直交座標系と極座標系である。座標系については次の解説を参考にしてください。座標系を利用して位置を数字の組で表示し、数の計算をつかって、図形等の性質を調べることは16世紀にデカルトが見つけた偉大な方法である。 座標系と座標表示については下記を参照のこと。

極座標については

質点の速度と加速度

空間に原点を決め、質点の位置Pを時間の関数として\vec{OP}=\vec{r(t)} と表わせば、質点の動き方がわかるので、その速度や速度の増加の仕方(加速度)も計算できる。
位置ベクトルは必要ならば座標系を定め座標表示しておく。
例えば、xyz直交座標系ならば、\vec{OP}=(x(t),y(t),z(t)),
極座標系(球座標)ならば\vec{OP}=(r(t),\theta(t),\phi(t))という形で表せる。

速度

質点の速度は、質点の位置が単位時間あたり幾ら変化するかを表わす。向きと大きさをもつのでベクトルである。
しかし2つの速度のベクトル和は、限定されたときしか意味を持たない。物理的に良く考えて、ベクトル和を計算すれば良いか、否かを判断する必要がある。

平均速度

任意の時刻tにおける質点の位置が\vec{r(t)} で表される時、
時刻tから時刻s(>t)の間の平均の速度は、(\vec{r(s)}- \vec{r(t)})/(s-t)で定義する。平均速度はベクトルである。

瞬間速度、略して速度

落下する物体は時々刻々速さを増し、一定の速さで留まることはない。
そのような運動の速度を正確にとらえようとして、ガリレオは、平均速度をとる時間間隔s-tを無限に小さくした時の、平均速度を考えた(微分学の始まり)。
これを瞬間速度というが、物理学では、単に速度と言えば、瞬間速度のことをいう。
高校の数学で学ぶ微分を用いると、 時刻tの速度\vec{v(t)} は、\frac{d\vec{r(t)}}{dt}=\lim_{s \to t}(\vec{r(s)}- \vec{r(t)})/(s-t)
速度については、下記の記事も参考のこと。

等速円運動の速度

質点が xy 平面上で原点 O を中心とする半径 r の円上を等速vで運動するとする。質点の角速度\omegaは、\omega=v/rである。
時刻tの質点の位置ベクトル\vec{r(t)} のx、y座標を(x(t),y(t))、極座標を(r、\theta(t))と書くと、
x(t)=r\cos(\theta(t)),y(t)=r\sin(\theta(t))
\theta(t)=\omega t + \theta_0
ここで \theta_0 は、時刻0における質点の位相角である。
これらを時間tで微分すると、速度のx成分とy成分
\dot{x(t)}=-r\sin(\theta(t))\dot{\theta(t)}
\dot{y(t)}=r\cos(\theta(t))\dot{\theta(t)}
が得られる。 \dot{\theta(t)}=\omega なので 
速度ベクトルは\vec{v(t)}=(\dot{x(t)},\dot{y(t)})=(-r\sin(\theta(t))\omega ,r\cos(\theta(t))\omega),
このベクトルは、質点の位置ベクトル\vec{r(t)}=(x(t),y(t))=(r\cos(\theta(t)),r\sin(\theta(t)))
と直交している。
何故なら、\vec{r(t)}の傾きは\tan(\theta(t))\vec{v(t)}の傾きは-\frac{1}{\tan(\theta(t))}なので、傾きの積が-1となるからである。
関連事項については次の記事を参照のこと。

加速度

質点の速度が単位時間あたり幾ら変化するかを表わす。向きと大きさをもつのでベクトルである。   
速度と同じように平均加速度と瞬間加速度が考えられるが、単に加速度といえば瞬間加速度のことである。

平均加速度

任意の時刻tにおける質点の速度が\vec{v(t)}= \dot{\vec{r(t)}}で表される時、
時刻tから時刻s(>t)の間の平均の加速度は、(\vec{v(s)}- \vec{v(t)})/(s-t)=(\dot{\vec{r(s)}}- \dot{\vec{r(t)}})/(s-t)で定義する。平均加速度はベクトルである。

瞬間加速度、略して加速度

落下する物体は、速度をますが、その増し方も絶えず増加する。
そのような運動の速度の増加の仕方を正確にとらえるためには、平均加速度をとる時間間隔s-tを無限に小さくした時の、平均加速度を考える必要がある。
これを瞬間加速度というが、物理学では、単に加速度と言えば、瞬間加速度のことをいう。
数式を用いると、 時刻tの加速度\vec{\alp(t)} は、\vec{\alp(t)}=\frac{d\vec{v(t)}}{dt}=\lim_{s \to t}(\vec{v(s)}- \vec{v(t)})/(s-t)
\vec{v(t)}= \dot{\vec{r(t)}}なので、\vec{\alp(t)}=\frac{d^2\vec{r(t)}}{dt^2} と書ける。 加速度については、下記の記事も参照のこと。

等速円運動の加速度

質点が xy 平面上で原点 O を中心とする半径 r の円上を等速で運動するとき、加速度はどうなるか?
速度ベクトルは\vec{v(t)}=(\dot{x(t)},\dot{y(t)})=(-r\sin(\theta(t))\omega ,r\cos(\theta(t))\omega) であった。すると加速度は\vec{\alp(t)}=\frac{d\vec{v(t)}}{dt}=-r\omega^2(\cos(\theta(t)),\sin(\theta(t)))=\frac{v^2}{r}(-\frac{\vec{r(t)}}{r}) となる。すなわち大きさが\frac{v^2}{r}で向きは、質点の位置から運動の中心である原点Oに向いた、ベクトルである。
以下の記事も参考にしてください。

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