物理/付録2 可積分条件
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目次 |
積分条件
この節は、区間上で定義された関数の
積分可能な条件を紹介する。
大学の教養コース程度の数学を使うが、テキスト中で理解できるように説明する。
興味のない方は、とばしてください。
(1)準備;集合論の初歩
集合論の初歩の知識は前提にして記述するので、
なじみのない方は、下記を参考に、
集合の素朴な定義、集合の和集合や共通集合、集合の包含関係などについて学習してほしい。
(2)区間上の関数のリーマン和=
定義;リーマン和
区間UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-327-QINUで定義され、実数に値をとる関数UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-328-QINUを考える。
この区間の分割
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-329-QINU
と、その代表点UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-330-QINUに関する、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-331-QINUのリーマン和とは、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-332-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-333-QINU
で定義する。
リーマン和は、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-334-QINUのグラフを、棒グラフで近似したときの
棒グラフの作る面積(各角柱の面積和)であることが分かる。図参照。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-335-QINUのグラフとx軸、および2直線UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-336-QINU、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-337-QINUで囲まれる部分の面積を近似している。
(3)リーマン和の不足リーマン和と過剰リーマン和による評価
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-338-QINUを分割して得られた小区間UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-339-QINUを考える。
関数UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-340-QINUをこの小区間上に限定した時、
関数は、この区間上の点で最大値と最小値をとると仮定する(注参照)。
関数の最大値UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-341-QINUと最小値UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-342-QINUを、
それぞれ、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-343-QINUと書く。
(注) 区間上で最大値、最小値を取らない関数では、
有界な関数でありさえすれば、最大値、最小値と殆ど同じ性質をもち、常に存在する
上限、下限に置き換えれば以後の、議論は成り立つ。
上限、下限については「(5)不足リーマン和の上限と過剰リーマン和の下限」で説明する。
すると、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-344-QINUの任意の点UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-345-QINU に対して、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-346-QINU
故に、
補題1
ⅰ)どのような代表点UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-347-QINUに対しても
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-348-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-349-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-350-QINU
そこで、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-351-QINUをUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-352-QINUに関するUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-353-QINUの不足リーマン和、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-354-QINUを過剰リーマン和と呼ぶ。
ⅱ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-355-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-356-QINU
証明は明らかなので省略。
(4)分割の細分とリーマン和の評価式
定義;分割の細分
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-357-QINUの分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-358-QINUが分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-359-QINUの細分というのは、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-360-QINUの分点の集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-361-QINUが、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-362-QINUの分点の集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-363-QINUに真に含まれることと定義する。
記号でかけば、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-364-QINU。
記号では、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-365-QINUと記す。
補題2
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-366-QINUという分割に対し、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-367-QINU
が成り立つ。
(証明)
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-368-QINUの小区間UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-369-QINUが分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-370-QINUでは、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-371-QINUの2つに分割されたとする。
すると、区間上の関数の最大値と最小値の定義から、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-372-QINU UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-373-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-374-QINU UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-375-QINU
これらから、命題は成立することが分かる。
(5)不足リーマン和の上限と過剰リーマン和の下限
補題2から、分割の細分を繰り返していくと、その分割に対応する、
不足リーマン和は、広義増加(増加するか、同じ値にとどまる)し、
過剰リーマン和は、広義減少する。
分割を細かくしていったとき、これらの極限が一致すれば、補題1から、
リーマン和の極限値は、代表点に無関係に、定まることになる。
そこで色々な分割に対応する不足リーマン和のなかの最大値と
過剰リーマン和の最小値を求めることが、重要になる。
しかし一般にはこれらは存在しないことが示せる。
下限と上限
そこで最大値に近い性質を持つ上限と最小値に近い下限という概念を利用する。
定義;上界と下界
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-376-QINUを、全ての実数を要素とする集合とし、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-377-QINUをその部分集合とする。
実数UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-378-QINUがUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-379-QINUの上界(upper bound)とは、
任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-380-QINUに対して、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-381-QINUがなりたつこと。
実数UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-382-QINUがUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-383-QINUの下界(lower bound)とは、
任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-384-QINUに対して、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-385-QINUがなりたつこと。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-386-QINUをUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-387-QINUの上界をすべて集めた集合、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-388-QINUをUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-389-QINUの上界をすべて集めた集合とする。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-390-QINUが空集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-391-QINUでない(すなわち、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-392-QINUの上界が少なくとも一つ存在する)とき、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-393-QINUは上に有界であるといい、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-394-QINUの時、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-395-QINUは下に有界であるという。
上に有界で、下にも有界な集合(UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-396-QINUは、有界という。
実数の連続の公理
以下の性質は、色々な極限の存在の根拠を与えるもので、
実数の持つ最も重要な性質の一つである。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-397-QINUとする。
もし、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-398-QINUならば、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-399-QINUは、最小元を持つ。
これをUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-400-QINUの上限(supremum)あるいは最小上界(least upper bound)という。
もし、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-401-QINUならば、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-402-QINUは、最大元を持つ。
これをUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-403-QINUの下限(infimum)あるいは最大下界(greatest lower bound)というという。
補題3
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-404-QINUがUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-405-QINU の上限となるための必要十分条件は、
ⅰ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-406-QINUはUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-407-QINUの上界。すなわち任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-408-QINUにたいしてUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-409-QINU
ⅱ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-410-QINUである任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-411-QINUはUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-412-QINUの上界ではない。すなわち、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-413-QINUとなるUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-414-QINUが存在。
ⅲ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-415-QINUが最大値を持つ場合には、上限は最大値と一致する。
同様に、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-416-QINUがUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-417-QINU の下限となるための必要十分条件は、
ⅰ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-418-QINUはUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-419-QINUの下界。すなわち任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-420-QINUにたいしてUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-421-QINU
ⅱ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-422-QINUである任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-423-QINUはUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-424-QINUの下界ではない。すなわち、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-425-QINUとなるUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-426-QINUが存在。
ⅲ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-427-QINUが最小値を持つ場合には、下限は最小値と一致する。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-428-QINU の上限をUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-429-QINU、下限をUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-430-QINUと書く。
証明は、上限、下限の定義から、明らかなので省略する。
例;UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-431-QINUのとき、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-432-QINU,UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-433-QINU。
これらは、ともにUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-434-QINUの要素でないので、
上限1はUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-435-QINUの最大元(最大値)ではなく、下限0はUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-436-QINUの最小元(最小値)ではない。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-437-QINUのとき、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-438-QINU,UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-439-QINU。
これらは、ともにUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-440-QINUの要素なので、
上限は最大限であり、下限は最小限となる。
補題4.
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-441-QINUで、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-442-QINUは有界集合とする。
このとき、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-443-QINU
証明は容易である。
関数UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-444-QINUが連続でない時は、区間上で最大値や最小値を取らないことがある。
この場合も考慮して、最大値を上限に、最小値を下限に置き換えて、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-445-QINUで定義すれば、
有界関数に対して、これらは常に定義され、今までの議論はすべて成り立つ。
===2つの分割の共通の細分 ===
分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-446-QINUの分点の集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-447-QINUと、
分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-448-QINU の分点の集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-449-QINUの
和集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-450-QINUを分点とする分割をUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-451-QINUと書く。
すると新しい分割は
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-452-QINU と
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-453-QINU
を満たす。
これを用いると、
不足リーマン和の上限UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-454-QINUと
過剰リーマン和の下限UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-455-QINUが存在することが証明できる。
補題5
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-456-QINUを区間UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-457-QINUで定義され実数値をとる有界関数
すなわち、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-458-QINUがUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-459-QINUの有界部分集合となる関数とする。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-460-QINUの分割を全て集めて作った集合をUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-461-QINUと書く。
すると、
ⅰ)任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-462-QINUに対して、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-463-QINU
ⅱ)集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-464-QINUは上に有界、
集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-465-QINUは下に有界
ⅲ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-466-QINUと
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-467-QINUは存在し、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-468-QINU
証明;
ⅰ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-469-QINU なので、補題2から、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-470-QINU
ⅱ)1)で証明した不等式で、分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-471-QINU は固定する。
すると全ての分割 UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-472-QINUに対して、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-473-QINUなので
集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-474-QINUは、上界UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-475-QINUを持ち、上に有界である。
後者も同様にして下に有界であることが示せる。
ⅲ)従って、実数の連続性の公理から、
集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-476-QINUは上限UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-477-QINUをもち、
集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-478-QINUは下限UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-479-QINUをもつ。
上限は、上界の中の最小値なので、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-480-QINU
この式は任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-481-QINUについて成立するので、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-482-QINUは、集合UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-483-QINUの下界である。
下限UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-484-QINUは、下界のなかの最大値なのでUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-485-QINUを得る。
===(6)分割を細かくしていくときの不足リーマン和と、過剰リーマン和の極限===
以下の定理を正確に述べるには、
まず、分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-486-QINUの大きさを、きちんと定める必要がある。
定義;UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-487-QINUの大きさUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-488-QINUとは、
この分割で得られた小区間の長さの、最大値で定義する。記号で書くと
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-489-QINU
定理(ダルブー;Darboux)
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-490-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-491-QINUを、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-492-QINUで定義され、実数に値を取る有界関数とする。
このとき、
ⅰ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-493-QINU
ⅱ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-494-QINU
証明;
ⅰ)を示す。( ⅱ)は同じようにして証明できるので略す)
これを示すには、
どんなに小さい正の実数UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-495-QINUに対しても、それに応じた小さい正の実数UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-496-QINUを適切に選べば、
分割の大きさがUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-497-QINUより小さい、どんな分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-498-QINUも、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-499-QINU
であることを示せばよい。
以下に、数段階に分けて、これを証明する。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-500-QINU上限の性質(補題3)から、
ある分割
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-501-QINU
が存在して、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-502-QINU
今後このUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-503-QINUを使って、証明を進める。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-504-QINU
分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-505-QINUの小区間UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-506-QINUの長さUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-507-QINUの
最小値をUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-508-QINUとおくと
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-509-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-510-QINUに比べて非常に小さい大きさを持つ分割、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-511-QINU、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-512-QINU
を考える。
もし、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-513-QINUならば補題2より、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-514-QINU、
するとUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-515-QINU
通常、分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-516-QINUは、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-517-QINUの細分になっていない。
この場合は、高々(n-1)個のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-518-QINUの小区間が、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-519-QINUの小区間には含まれず、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-520-QINUの分点UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-521-QINUをまたぐことになる。図参照のこと。
議論を簡単にするため、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-522-QINUの分点UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-523-QINUが全て、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-524-QINUの小区間によって跨がれている
と仮定し、議論を進める。
他のケースでも、証明はおなじようにできるので、
このように仮定しても何の問題も起こらない。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-525-QINUの分点UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-526-QINUを跨ぐUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-527-QINUの小区間をUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-528-QINUとする(i=1,2,,,n-1)。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-529-QINU
2つの分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-530-QINUからUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-531-QINUを作る。
すると
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-532-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-533-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-534-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-535-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-536-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-537-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-538-QINU
と書ける。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-539-QINUで、 UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-540-QINU なので、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-541-QINU, UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-542-QINU
後者の式から、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-543-QINU
この式と(1)式から、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-544-QINU
そこで、
「UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-545-QINUならば、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-546-QINU
が示せれば、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-547-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-548-QINU
が示され、証明が終わる。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-549-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-550-QINU
であり、
(2)式から、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-551-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-552-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-553-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-554-QINU
なので、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-555-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-556-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-557-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-558-QINU
関数はUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-559-QINU上で有界なので、適切に正の実数UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-560-QINUを選ぶと、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-561-QINUがUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-562-QINUの要素ならば
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-563-QINUが成立する。
するとUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-564-QINU
が成り立つ。また
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-565-QINUで、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-566-QINU
なので
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-567-QINU
そこで、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-568-QINU
と選べば、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-569-QINUをみたすどのような分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-570-QINUも、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-571-QINU
を満たすことが証明できた。証明終わり。
(7)可積分条件
定理;可積分条件
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-572-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-573-QINUを、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-574-QINUで定義され、実数に値を取る有界関数とする。
次の条件のうち1つが成立すれば、残り2つは成立する(互いに同値という)。
ⅰ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-575-QINUはUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-576-QINU上で(リーマン)可積分
ⅱ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-577-QINU
ⅲ)UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-578-QINU
証明
ⅰ)を仮定する。ⅱ)が成立することを示そう。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-579-QINUの積分値をUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-580-QINUとおくと、可積分の定義から、
任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-581-QINUに対して、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-582-QINUが存在して、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-583-QINUである任意の分割と、その分割の任意の代表点UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-584-QINUに対し,
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-585-QINU
が成立する。
変形すると
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-586-QINU
ここで、補題1のⅱ)から、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-587-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-588-QINU
なので、
(1)式から、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-589-QINU
これより、任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-590-QINUに対して、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-591-QINUが存在して、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-592-QINU
ⅱ)が示せた。
ⅱ)を仮定する。 ⅲ)が成り立つことを示す。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-593-QINU
なので、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-594-QINU
故に、分割を細かくしていき、極限をとると、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-595-QINU
ⅱ)が成立するので、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-596-QINU
ⅲ)が示せた。
ⅲ)を仮定する。 UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-597-QINUとおく。
ⅰ)が成り立つことを示そう。
補題1のⅰ)から、どのような分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-598-QINUと、その代表点UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-599-QINUに対しても
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-600-QINU
ここで、ダルブーの定理から、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-601-QINU,
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-602-QINU
が成り立つので、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-603-QINU
が成り立つ。
ⅰ)が示せた。
(8)有限個の点を除いて連続な閉区間上の関数は積分可能
色々な関数のグラフを書くとつながっているところを、跳んでいるところが出来る。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-604-QINUのグラフはずっとつながっている。
関数UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-605-QINUを、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-606-QINUのとき UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-607-QINU, UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-608-QINUのとき UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-609-QINU
で定義すると、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-610-QINUのところでそのグラフは跳んでいる。
連続や不連続は関数の非常に重要な性質であり、
それを調べることはとても豊かな知識をもたらす。
しかし正確に議論するには、連続とは何かをきちんと定義する必要がある。
関数の連続性の定義;
実数値関数 UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-611-QINU がある点 UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-612-QINUで連続であるとは、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-613-QINUがUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-614-QINU に限りなく近づくならば、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-615-QINU が UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-616-QINU に限りなく近づく
ことを言う。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-617-QINUと記す。
これはイプシロン-デルタ論法(ε-δ論法)を用いれば次のように定式化できる。
(小さな)正の数 ε が任意に与えられたとき、
(小さな)正の数 δ をうまくとってやれば、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-618-QINU と δ 以内の距離にあるどんな UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-619-QINU に対しても、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-620-QINU と UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-621-QINU の差が ε より小さいようにすることができる。
関数 UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-622-QINU がある区間UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-623-QINU で連続であるとは、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-624-QINU に属するそれぞれの点において連続であることを言う。
定理
有界閉区間上UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-625-QINUで定義され、実数に値を取る連続関数UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-626-QINUは、V上で可積分である。
略証;
有界閉区間上の連続関数は一様連続なので、
任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-627-QINUに対して、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-628-QINUが存在して、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-629-QINUを満たすUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-630-QINUの任意の2点に対して、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-631-QINU
が成立する。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-632-QINUの分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-633-QINUを細かくして、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-634-QINU
を満たすようにする。
すると、その分割によって得られた小区間UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-635-QINUの長さは、
全てUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-636-QINUより小さくなるので、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-637-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-638-QINUの定義から
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-639-QINU
これを用いると、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-640-QINU
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-641-QINU
故に、
任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-642-QINUに対して、UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-643-QINUが存在して、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-644-QINUを満たす任意の分割UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-645-QINUにたいして、
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-646-QINUが示せた。
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-647-QINU
なので
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-648-QINU
が任意のUNIQf282d6dab16cfd-MathJax-649-QINUにたいして成立する。故に
UNIQf282d6dab16cfd-MathJax-650-QINU
可積分条件のⅲ)が示せた。証明終わり。
定理の系;有限個の不連続点をもつ、有界閉区間上の関数は積分可能である。

