物理/静電気と静電場(その2 静電誘導・誘電分極)

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目次

静電場中の導体と静電誘導

導体に静電場をかけると、導体内部にもこの電場が及ぶ。
  導体内部の自由電子はこの電場から力を受けて電気力線の上流方向に速やかに移動する。
  電気力線の上流側の導体表面は負に、下流側の表面は(自由電子が欠乏するため)正に帯電する。
その正負の電荷により、導体内部に外部電場を打ち消すような電場が誘導される。
誘導された電場と外部電場の和が導体内部の電場となる(電場の重ね合わせの原理)。
この導体内部の電場が零になるまで自由電子は動き続けて、
きわめて短時間のうちに、導体内部の電場は零になる。
すると、導体内部は等電位になる。
これを静電誘導という。

命題1(静電誘導状態の導体の電荷分布と表面電場)
電場中の静電誘導している導体を考える。この時、
ⅰ)電場の上流側の表面には負電荷、下流側の表面にはそれと逆符号の正電荷が生じ、導体全体の電荷は零である。
ⅱ)導体内部には電荷は存在しない。
ⅲ)表面の電場は、表面に直交する向きをもつ。

証明;
ⅰ)すでに説明した。
ⅱ)導体内部の点xに電荷qが生じたとする。
xを中心とする導体内部にある小球面Sを考え、ガウスの法則を適用する。
すると、導体の内部の電場が零なので球面を貫く電気力線の本数は零であり、
$0=\frac{q}{\epsilon_0}\neq 0$
という矛盾が生じてしまう。背理法により導体内部には電荷は生じないことが示された。
ⅲ)表面の電場の向きが表面に直交しないと仮定すると、
表面電荷に働く力は導体内部方向の成分をもつので電荷は動いてしまい、
矛盾を生じてしまう。
背理法により、表面の電場の向きが表面に直交することが示せた。

命題2
電場中で静電誘導を起こしている導体を、
正の電荷が貯まっている部分と負の電荷が貯まっている部分の2つに分離する。
こんとき両部分とも再び静電分離して
電場上流の表面には負の電荷、電場下流の表面にはそれと同量で逆符号(正)の電荷がたまる。
すなわち真の電荷を取り出すことは出来ない。

証明は自明なので省略する。

接地(アース)

地球は非常に大きい導体とみなせ、その電位は一定である。
そこで、地球の電位を基準(零)として、電位を決めることが多い。アース電位と呼ぶ。
導体を導線で地球とつなぐと、導体は地球の電位と同じ一定値(アース電位0)に保てる。
これを接地する、または、アースをとる、という。

導体の帯電

命題2
導体は帯電(電気を貯めることが)できる。
一例を示す。
正の帯電体を導体に近づけると、
静電誘導でこの帯電体の近くの導体表面に、負電荷がたまり、
それと同量で反対符号の電荷が反対側の導体表面に集まる。
この状態で、導体を接地すると反対側導体表面の正電荷だけが地球に流れこみ(実際には、この部分に地球から自由電子が流れ込み)、反対側導体表面は電気的に中性になる。(注参照)。この状態で接地をやめれば導体は負に帯電する。

命題3
帯電 過度的な状態を除き、導体の内部には電荷はなく、すべて、導体表面にたまる。
証明;
もし、内部のある場所に電荷Qがたまって、安定していたとする。
すると、たまった電荷を囲む閉局面を考え、ガウスの法則を適用すると、
この局面を貫く電気力線の総数=$Q/\epsilon_0$ となる。
すなわち導体内部に電場が存在し、これにより自由電子がさらに移動してしまうことになり、
電荷がたまって一定であることに矛盾してしまう。

はく検電器

静電誘導を用いて、物質の帯電を検出する検電器が作れる。

図のように金属棒の一端に2枚の開閉できる金属箔が付き、他端には円形の金属板のついた装置を、はく検電器という。
帯電していない、はく検電器の金属板に正の帯電体(注参照)を近づけると、金属棒中の自由電子が金属板に引き付けられる。
すると、他端の2枚の金属箔が共に(電子欠乏で)正に帯電するため箔が開く。

(注)負の帯電体を近づけたときも、同様に考察できるので省略する。

はく検電器による蓄電

この状態で、検電器の金属板に手をふれて大地とつなげると、
検電器のはく(箔)にたまった電荷は大地に流れ出し(実際には大地から電子が、箔に流れ込み)、箔の電荷は消失して閉じ、
検電器の金属板には、帯電物体の電荷に引き付けられている自由電子が残る。
検電器全体でみると、負に帯電したことになる。
そこで検電器の金属板に近づけていた帯電体を遠ざけると、
たまった負電荷の一部が箔に流れ込み、2枚の箔は反発して開く。

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