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物理/解析学入門(1)実数の性質、連続関数、導関数と微分

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目次

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8.2 解析学入門

一変数関数の解析学を紹介する。
解析学は実数の連続性と極限の概念を用いる無限算法(微分、積分)を扱う
数学の基幹分野の一つである。
高校でならう解析学の概略だけを知りたい方は、以下の(1)、(2)の教科書で学習してください。
(1)関数や方程式の知識

物理学では、指数関数や色々な関数とその微分をよく使う。
これについては下記の本に要約が説明されている。


指数関数や対数関数の上記の本の解説は不十分なので、
興味ある方は、本テキストの

をご覧ください。

(2)ネイピア数 e の理解に必要な数学
微分や積分で重要な役割を演じる実数にネイピア数eがある。
本テキストでも頻繁に登場する。
この数は、lim で定義される。
この極限が存在し、2と3の間の数になることを証明するには、2項定理が必要になる。
これについては

問題1
{}_5C_0,\quad {}_5C_1,\quad {}_5C_2,\quad {}_5C_3,\quad {}_5C_4,\quad {}_5C_5 は、いくつか?

(3)微分・積分
物理の学習には微分と積分が必須である。 関数の微分は、極限を利用して定義される。 極限がよくわからない場合には、高等学校数学III/極限(ウィキブックス)を概略理解してから、高等学校数学II 微分・積分の考え(ウィキブックス)に進むと良いだろう。

問題2
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
問題
(3)大学教養課程程度の解析学の基礎

この節は、解析学の基礎(実数の連続性とリーマン積分)について、さらに知りたい方のために書かれている。
厳密さをかなり重視し、程度は大学専門課程の入り口に相当する。

多変数関数の解析学については次章の「9章 物理数学2」で紹介する。

実数の連続性と極限

実数の連続性は、様々な極限の存在に根拠を与えるもので、
実数の持つ最も重要な性質といってもよい。

上界、下界と有界集合

{\bf R}を、全ての実数を要素とする集合とし、
Aをその部分集合(A \subset R)とする。
実数uA上界(upper bound)とは、
任意のa \in Aに対して、a \leq uがなりたつこと\Bigl((\forall{a})(a\in A \to a \leq u)\Bigr)
実数lA下界(lower bound)とは、
任意のa \in Aに対して、l \leq aがなりたつこと。
U_AAの上界をすべて集めた集合\Bigl(\{u \in R|(\forall{a})(a\in A \to a\leq u)\}\Bigr)
L_AAの下界をすべて集めた集合とする。
U_Aが空集合\emptysetでない(すなわち、Aの上界が少なくとも一つ存在する)とき、
A上に有界であるといい、
L_A\neq \emptysetの時、A下に有界であるという。
上に有界で、下にも有界な集合(\subset {\bf R})は、有界という。

実数の連続の公理と上限、下限

A \subset {\bf R}とする。

実数の連続性の公理
もし、U_A \neq \emptysetならば、U_Aは、最小元を持つ。
もし、L_A \neq \emptysetならば、L_Aは、最大元を持つ。

上限と下限の定義
U_Aの最小元をA上限(supremum)あるいは最小上界(least upper bound)という。
また、L_Aの最大元をA下限(infimum)あるいは最大下界(greatest lower bound)という。

命題1
uA(\subset {\bf R}) の上限となるための必要十分条件は、
ⅰ)uAの上界。すなわち任意のa\in Aにたいしてa \leq u   
ⅱ)x<uである任意のxAの上界ではない。すなわち、x<aとなるa\in Aが存在
である。
同様に、lA の下限となるための必要十分条件は、
ⅰ)lAの下界。すなわち任意のa\in Aにたいしてl\leq a   
ⅱ)l<xである任意のxAの下界ではない。すなわち、a<xとなるa\in Aが存在
である。
A の上限を\sup A、下限を\inf Aと書く。
さらに、
Aが最大値を持つ場合には、Aの上限はAの最大値と一致し、
Aが最小値を持つ場合には、Aの下限はAの最小値と一致する。

証明は、上限、下限の定義から、明らかなので省略する。
例;A=(0,1)のとき、\sup A=1,\inf A=0
これらは、ともにAの要素でないので、
上限1はAの最大元(最大値)ではなく、下限0はAの最小元(最小値)ではない。
A=[0,1]のとき、\sup A=1,\inf A=0
これらは、ともにAの要素なので、
上限は最大限であり、下限は最小限となる。

命題2
A \subset B \subset {\bf R}で、Bは有界集合とする。
このとき、\inf B \leq \inf A \leq \sup A \leq \sup B
証明は容易である。

実数列の極限 

実数列\{x(n)\}_{n=1}^{\infty}とは、
xが、自然数全体のなす集合Iから実数全体の作る集合Rへの写像であることと定義する。
論理記号で書けば、(\forall n \in I)(x(n) \in R)

定理;
1) 単調増加で上に有界な数列x(i.e. (\exists{U\in R} )(\forall{m} \in I)(\forall{n} \in I)( m\lt n \to x(m) \leq x(n) \leq U) は収束する(極限値を持つ)。
2)単調減少で下に有界な数列は収束する。
証明
1)だけ示す。
A \triangleq \{x(n)|n\in I\}とおくと、仮定からAは上に有界な集合なので、
実数の連続性から上限(最小上界)u を持つ。
この u が数列xの極限であることを示そう。
任意の小さい正数  \epsilon をとると、u-\epsilon は集合Aの上界ではなくなるので 
(\exists{m}\in I)\Bigl(x(m) \gt u-\epsilon \Bigr)
数列は単調増加なので、(\forall{n})\Bigl(n \gt m \to x(n) \gt u-\epsilon \Bigr) \qquad \qquad \qquad (1)
他方、u は数列xの上界なので、
(\forall{n})\Bigl(n\in I \to u \geq x(n)\Bigr) \qquad \qquad \qquad (2)
式(1)と(2)から、
どんなに小さな正数  \epsilon をとってもある自然数mが定まり、
それより大きな自然数n に対して、x(n) \in [u-\epsilon,u+\epsilon] が示せた。
収束の定義から、数列xがuに収束することが示せた。
2)の証明も同様である。

収束に関連するさらなる情報は下記を参照のこと。

定理の応用;ネイピア数 e 

次の命題は、高等学校数学III/微分法(ウィキブックス)では証明せず利用しているものである。

命題
数列 \{x(n)\}_{n=1}^{\infty}\triangleq \{(1+\frac{1}{n})^{n}\}_{n=1}^{\infty} は、
2より大きく3より小さい実数 e に収束する。
\lim_{n\to \infty}(1+\frac{1}{n})^{n}= e
この e をネイピア数と呼ぶ。

練習問題
上の命題を証明してください。
ヒント;
(1+\frac{1}{n})^{n} を2項展開して、nとともに単調に増大すること、
常に2と3の間の実数であることを示せばよい。

解答は、8.3 8章の付録の 問の解答

極限の性質

関数の連続性

関数の連続性の定義;
実数値関数 f(x) がある点 x_0で連続であるとは、
xx_0 に限りなく近づくならば、f(x)f(x_0) に限りなく近づく
ことを言う。
\lim_{x\to x_0} f(x) = f(x_0)と記す。

これはイプシロン-デルタ論法(ε-δ論法)を用いれば次のように定式化できる。
(小さな)正の数 ε が任意に与えられたとき、
(小さな)正の数 δ をうまくとってやれば、
x_0 と δ 以内の距離にあるどんな x に対しても、
f(x)f(x_0) の差が ε より小さくなる。

関数 f(x) がある区間I で連続であるとは、
I に属するそれぞれの点において連続であることを言う。

一変数の実数値関数とベクトル値関数の微分

このテキストを理解するための必要最小限のことを記述する。
以下の文献も必要に応じて参考にしてください。
一冊では不十分なので色々あげておく。

実数値関数の微分

実数の開区間I=(a,b)上で定義された実数値関数y=f(x)を考える。
定義;微分可能性
関数fs\in Iで微分可能であるとは、極限
\lim_{h \to 0,h\neq 0}\frac{f(s+h)-f(s)}{h}=c \qquad \qquad (1)
が存在することである。
この時cfsにおける微分係数あるいは導値といい、
f'(s)、\frac{df}{dt}(s)、(Df)(s)
などと書く。
I=(a,b)の各点でfが微分可能であるとき、f微分可能関数(あるいは 微分可能)という。
この時、任意のs\in Iに対して、f'(s)\in Iが定まるので、
関数f'が定まる。これをf{\bf 導関数}(derivative)という。

微分係数の意味

(1)\frac{f(s+h)-f(s)}{h}は、区間[s,s+h]における関数値の平均変化率である。
その極限である微分係数f'(s)は、関数値のsにおける瞬間的な変化率と考えられる。
(2)2次元空間(平面のこと)に直交座標座標系O-xyをいれ、
関数y=f(x)のグラフG=\{(x,y)\mid x\in I,y=f(x)\}を書く。
すると、
f'(s)が存在することは、x=sにおいてグラフGが接線をもつことと同等であり、
接線の方程式は
y=f'(s)(x-s)+f(s)である。
これは、接線の定義からただちに分かる。
(3)hを零に近づけていったときの極限の意味をさらに深めるため
微分可能の定義を、それと同等の別の表現に変換しよう。
(1)式の右辺の定数を左辺に移行すると
\lim_{h \to 0,h\neq 0}\frac{f(s+h)-f(s)-ch}{h}=0
次に、
o_{s}(h):=\frac{f(s+h)-f(s)-ch}{h}\qquad \qquad (2)
という、変数hの関数を定義する。
すると関数fs\in Iで微分可能で、微分係数がcである必要十分条件は
\lim_{h \to 0,h\neq 0}o_{s}(h)=0
である。
(2)式を変形すると
f(s+h)=f(s)+ch+o_{s}(h)h
ゆえに次の命題が証明できた。
命題;
次の3つの条件は同等である。
1)関数fs\in Iで微分可能で、微分係数はcである
2)関数fは、
f(s+h)=f(s)+ch+o_{s}(h)h \qquad \qquad (3)
と表現できる。
ここで、o_{s}(h)
\lim_{h \to 0,h\neq 0}o_{s}(h)=0 \qquad \qquad (4)
を満たす関数

3) 関数fは、
sの近傍の点xf(x)=f(s)+c(x-s)+\left(o_{s}(x-s)\right)(x-s) \qquad \qquad (3)
ここで、o_{s}(x-s)
\lim_{x \to s,x\neq s}o_{s}(x-s)=0 \qquad \qquad (4)
を満たす関数

この定理の3)により、
「関数がsで微分可能であり、微分係数がcであること」は、
「この関数がsの近傍の点xで直線y=f(s)+c(x-s)で近似でき、
誤差|f(x)-(f(s)+c(x-s))|=|\left(o_{s}(x-s)\right)(x-s)| が,
xsに近づけていくとき、h=x-sより高次で0に収束する(注参照)
ことと同等であることが分かる。
(注)\lim_{h\to 0,h\neq 0}\frac{o_{s}(h)h}{h}=0 命題の系;関数がsで微分可能であれば、sで連続である。
証明;命題の2)を用いると、
f(s+h)=f(s)+ch+o_{s}(h)h
この式から、|f(s+h)-f(s)|=|(c+o_{s}(h))h|
\lim_{h \to 0,h\neq 0}o_{s}(h)=0なので\lim_{h \to 0,h\neq 0}|(c+o_{s}(h))h|=0
ゆえに、\lim_{h \to 0,h\neq 0}|f(s+h)-f(s)|=0
これは、関数がsで連続であることの定義そのものである。

導関数の性質

定理1(線形性)
f,gI=(a,b)上で定義された、微分可能な実数値関数で、 \alpha,\betaが任意の実数ならば
\alpha f+\beta gfg(s):=f(s)g(s)は微分可能で
(\alpha f+\beta g )'=\alpha f'+\beta g'

証明は、微分の定義式と極限の性質から容易に導ける。 定理2 (積の導関数)
f,gが微分可能ならば、それらの積 f(x)g(x) も微分可能で
(fg)'=f'g+fg'
定理3(商の導関数)
定理4 (合成関数の導関数)

三角関数、指数関数の微分 

対数関数、逆三角関数の微分 

平均値の定理

 高階導関数とテイラー展開

 高階導関数
 テイラー展開とテイラーの定理

RT

C^{1}級の関数

I=(a,b)上の関数 f が連続的微分可能(continuously differentiable)であるとは,
I上で導関数 f' が存在して、しかもf'I上で連続であることをいう。
I=(a,b)上で連続的微分可能である関数をC^{1}級関数という。

ベクトル値関数の微分

実数の開区間I=(a,b)上で定義され,n次元の実ベクトル(\in {\bf R^n})に 値をとる関数\vec fを考える。
定義;微分可能性
実数値関数の場合と同じである。

導関数の線形性の性質も成り立つ。

ベクトル値関数の微分とその成分関数の微分の関係

関数値\vec f(s){\bf R^n}の要素なので
\vec f(s)=(f_1(s),f_2(s),\cdots f_n(s))
と表示できる。
すると\vec fのn個の成分関数
f_i,(i=1,2,\cdots n)
が得られる。
命題;
\vec fs\in Iで微分可能\Leftrightarrowf_i(i=1,2,\cdots n)s\in Iで微分可能。
この時、{\vec f}'(s)=({f_1}'(s),{f_2}'(s)\cdots {f_n}'(s))

ベクトル積の微分

命題
\vec{a(t)} \vec{b(t)} は、開区間I上で定義され、 微分可能なベクトル値関数とする。すると、
\quad \vec{a(t)} \times \vec{b(t)} は微分可能で、
\quad \frac{d}{dt}(\vec{a(t)} \times \vec{b(t)}) =(\frac{d}{dt}\vec{a(t)} )\times \vec{b(t)}+\vec{a(t)}\times (\frac{d}{dt}\vec{b(t)}) 証明
すでにこのテキストで紹介した、ベクトル値関数の微分の定義
\quad \frac{d}{dt}(\vec{a(t)} \times \vec{b(t)}) =\lim_{\delta t \to 0} (\vec a(t+\delta t)\times \vec{b(t+\delta t)}- \vec{a(t)} \times \vec{b(t)})/\delta t \qquad (1)  
を用いて証明する。
この極限が存在し、
\frac{d}{dt}\vec{a(t)} \times \vec{b(t)}+\vec{a(t)}\times \frac{d}{dt}\vec{b(t)}
になることを示せば命題は証明できたことになる。
極限の計算が進むよう、右辺の式の分母は変形しよう。
関数の積の微分公式の証明と同じ技巧を用いる。
\vec a(t+\delta t)\times \vec{b(t+\delta t)} - \vec{a(t)} \times \vec{b(t)}  
= \vec a(t+\delta t)\times \vec{b(t+\delta t)} -\vec a(t)\times \vec{b(t+\delta t)} +\vec a(t)\times \vec{b(t+\delta t)} - \vec{a(t)} \times \vec{b(t)}  
ベクトル積の命題3を利用すると、 
= \left(\vec a\left(t+\delta t\right) -\vec a\left(t\right)\right) \times \vec b\left(t+\delta t\right) +\vec a\left(t\right)\times \left(\vec b\left(t+\delta t\right)- \vec b\left(t\right)\right)

この式を式(1)の右辺の分子の項に代入し整頓すると
\quad \frac{d}{dt}(\vec{a(t)} \times \vec{b(t)}) =\lim_{\delta t \to 0} \frac{\vec a(t+\delta t)\times \vec b(t+\delta t)- \vec a(t) \times \vec b(t)} {\delta t}  
=\lim_{\delta t \to 0} \frac{\left(\vec a\left(t+\delta t\right) -\vec a\left(t\right)\right) \times \vec b\left(t+\delta t\right) +\vec a\left(t\right)\times \left(\vec b\left(t+\delta t\right)- \vec b\left(t\right)\right) } {\delta t}
ベクトル積の命題4を使い、
=\lim_{\delta t \to 0}\left( \frac{\vec a(t+\delta t) -\vec a(t)}{\delta t} \times \vec b\left(t+\delta t\right) + \vec a(t)\times \frac{\vec b(t+\delta t)- \vec b(t)} {\delta t} \right)
極限の命題を使って、
=\lim_{\delta t \to 0} \frac{\vec a(t+\delta t) -\vec a(t)}{\delta t} \times \lim_{\delta t \to 0}\vec b(t+\delta t) + \vec a(t)\times \lim_{\delta t \to 0}\frac{\vec b(t+\delta t)- \vec b(t)}{\delta t}
式中の極限は、\vec a,\vec bが、微分可能なので存在し、
\lim_{\delta t \to 0} \frac{\vec a(t+\delta t) -\vec a(t)}{\delta t} =\frac{d\vec a(t)}{dt}
\lim_{\delta t \to 0} \frac{\vec b(t+\delta t) -\vec b(t)}{\delta t} =\frac{d\vec b(t)}{dt}

リーマン積分

この節は、区間上で定義された関数のリーマン積分の初歩を述べる。
具体的には、リーマン積分の定義とリーマン積分が存在する(可積分)条件
について、数学的厳密性を保つように記述する。
参考記事

区間上の関数のリーマン和

区間V=[a,b]で定義され、実数に値をとる関数y=f(x)を考える。
この区間の分割
\Delta=\{V_i=[x_{i-1},x_i] \mid i=1,2,,,n\},x_0=a,x_n=b
と、その代表点\xi_i\in V_i(i=1,2,,,n)に関する、y=f(x)のリーマン和とは、
I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n)=
\sum_i f(\xi_i)v(V_i)=\sum_i f(\xi_i)(x_i-x_{i-1})
で定義する。

リーマン和の意味 

リーマン和は、
y=f(x)のグラフを、棒グラフで近似したときの
棒グラフの作る面積(各角柱の面積和)であることが分かる。図参照。
y=f(x)のグラフとx軸、および2直線x=ax=bで囲まれる部分の面積を近似している。

リーマン可積分とリーマン積分の定義

分割を細かくしていくとき、
分割の仕方や代表点の選び方に関係なく
リーマン和がある一定値に収束するとする。
すると、この値は
y=f(x)のグラフとx軸、および2直線x=ax=bで囲まれる部分の面積
と考えられる。
定義;
\Delta=\{V_i=[x_{i-1},x_i] \mid i=1,2,,,n\}の大きさd(\Delta)とは、
この分割で得られた小区間の長さの、最大値で定義する。
記号で書くと
d(\Delta)=max\{x_{i}-x_{i-1} \mid i=1,2,,,n\}
定義;リーマン可積分
fを、有界閉区間V上で定義され、実数の値をとる関数とする。
もし、ある実数Iが存在して、
どんな分割\Delta=\{V_i=[x_{i-1},x_i] \mid i=1,2,,,,n\}
代表点\xi_i\in V_i(i=1,2,\cdots ,n)であっても、
\lim_{d(\Delta) \to 0}I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n)=I
が成り立つ時、
fV上で(リーマン)可積分であるという。
このとき、IfV上でのリーマン積分といい、
I=\int_{V}f=\int_{V} f(x)dx
などと書く。

リーマン積分の命題

命題1 線形性
命題2 積分の単調性
命題3 平均値定理
命題4 三角不等式
命題5 積分区間に関する加法性

可積分条件(RT;短縮化)

どのような関数は、積分できるだろうか。
積分出来ない関数はあるのか。
これらについて考察しよう。

不足リーマン和と過剰リーマン和によるリーマン和の評価

リーマン和を、代表点の選び方を変えて求めるとその値は変化する。
そこで、その最小値と最大値を求め、差を計算する。
もしこの差が分割を細かくしていくと零に収束するならば、可積分となろう。
以下、この方針で議論を進める。
Vを分割して得られた小区間V_i=[x_{i-1},x_i]を考える。
関数y=f(x)をこの小区間上に限定した時、
関数は、この区間上の点で最大値と最小値をとると仮定する(注参照)。
関数の最大値max\{f(x)\mid x\in V_i\}と最小値min\{f(x)\mid x\in V_i\}を、
それぞれ、m(f;V_i),M(f;V_i)と書く。
(注) 区間上で最大値、最小値を取らない関数では、
有界な関数でありさえすれば、最大値、最小値と殆ど同じ性質をもつ
上限、下限に置き換えれば以後の、議論は成り立つ。

すると、V_iの任意の点\xi に対して、
m(f;V_i)\leq f(\xi) \leq M(f;V_i)  
故に、
補題1
ⅰ)どのような代表点\{\xi_i\}_{i}, (\xi_i \in V_i,i=1,2,,,n)に対しても
I_{m}(f,\Delta):=I^{f,\Delta}(\xi_{1}^m,,,\xi_{n}^m) =\sum_i m(f;V_i)v(V_i)
\leq I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n)=\sum_i f(\xi_i)v(V_i)
\leq \sum_i M(f;V_i)v(V_i) =I_{M}(f,\Delta)=I^{f,\Delta}(\xi_{1}^M,,,\xi_{n}^M)  \qquad (1)
そこで、I_{m}(f,\Delta)\Delta)に関するf不足リーマン和I_{M}(\Delta)過剰リーマン和と呼ぶ。
ⅱ)I_{m}(f,\Delta)=\min_{\xi_i \in V_i,i=1,2,,,n}I^{f,\Delta}(\xi_{1}^M,,,\xi_{n}^M) 
I_{M}(f,\Delta)=\max_{\xi_i \in V_i,i=1,2,,,n}I^{f,\Delta}(\xi_{1}^M,,,\xi_{n}^M) 
証明は明らかなので省略。

分割の細分とリーマン和の評価式

定義;分割の細分
Vの分割{\Delta}'が分割\Deltaの細分というのは、
\Deltaの分点の集合\{x_0,x_1,,,,x_n\}が、
{\Delta}'の分点の集合\{x'_0,x'_1,,,,x'_{n'}\}に真に含まれることと定義する。
記号でかけば、\{x_0,x_1,,,,x_n\}\subset \{x'_0,x'_1,,,,x'_{n'}\}, \{x_0,x_1,,,,x_n\}\neq \{x'_0,x'_1,,,,x'_{n'}\}
記号では、\Delta \leq {\Delta}'と記す。


補題2
\Delta \leq {\Delta}'という分割に対し、
I_{m}(f,\Delta) \leq I_{m}(f,\Delta') \leq I_{M}(f,\Delta') \leq I_{M}(f,\Delta) \qquad (2)
が成り立つ。
(証明)
\Deltaの小区間V_i=[x_{i-1},x_i]が分割{\Delta}'では、
\{V'_j=[x_{i-1},x'_j],V'_{j+1}=[x'_j,x_i]\}の2つに分割されたとする。

すると、区間上の関数の最大値と最小値の定義から、
m(f;V_i) \leq m(f;V'_j) \quad m(f;V_i) \leq m(f;V'_{j+1})
M(f;V_i) \geq M(f;V'_j) \quad M(f;V_i) \geq M(f;V'_{j+1})
これらから、命題は成立することが分かる。

不足リーマン和の上限と過剰リーマン和の下限

補題2から、分割の細分を繰り返していくと、その分割に対応する、
不足リーマン和は、広義増加(増加するか、同じ値にとどまる)し、
過剰リーマン和は、広義減少する。
分割を細かくしていったとき、これらの極限が一致すれば、補題1から、
リーマン和の極限値は、代表点に無関係に、定まることになる。

そこで色々な分割に対応する不足リーマン和のなかの最大値と
過剰リーマン和の最小値を求めることが、重要になる。
しかし一般にはこれらは存在しないことが示せる。
そこで最大値に近い命題を持つ上限と最小値に近い下限という概念を利用する。

2つの分割の共通の細分

分割\Deltaの分点の集合\{x_j \mid j=1,2,,,m\}と、
分割{\Delta}' の分点の集合\{x'_j \mid j=1,2,,,n\}
和集合\{x_j \mid j=1,2,,,m\} \cup \{x'_j \mid j=1,2,,,n\}を分点とする分割を\Delta \vee {\Delta}'と書く。
すると新しい分割は
\Delta \leq \Delta\vee {\Delta}' \qquad  と {\Delta}' \leq \Delta\vee {\Delta}' \quad
を満たす。
これを用いると、
不足リーマン和の上限\mathscr{s}(f)
過剰リーマン和の下限\mathscr{S}(f)が存在することが証明できる。

補題5
fを区間V=[a,b]で定義され実数値をとる有界関数
すなわち、\{f(x)\mid x\in V\}{\bf R}の有界部分集合となる関数とする。
V=[a,b]の分割を全て集めて作った集合を\mathscr{D}(V)と書く。
すると、
ⅰ)任意の\Delta,{\Delta}'\in \mathscr{D}(V)に対して、
I_m(f,\Delta) \leq I_M(f,{\Delta)}')
ⅱ)集合\{I_m(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は上に有界、
集合\{I_M(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は下に有界
ⅲ)\mathscr{s}(f):=\sup\{I_m(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}
\mathscr{S}(f):=\inf\{I_M(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は存在し、
\mathscr{s}(f) \leq \mathscr{S}(f) 
証明;
ⅰ)\Delta \leq \Delta\vee {\Delta}' なので、補題2から、
I_m(f,\Delta) \leq I_m(f,\Delta\vee {\Delta}')  \leq I_M(f,\Delta\vee {\Delta}')  \leq I_M(f,{\Delta}')
ⅱ)1)で証明した不等式で、分割{\Delta}' は固定する。
すると全ての分割 \Deltaに対して、I_m(f,\Delta) \leq I_M(f,{\Delta)}')なので
集合\{I_m(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は、上界I_M(f,{\Delta)}')を持ち、上に有界である。
後者も同様にして下に有界であることが示せる。
ⅲ)従って、実数の連続性の公理から、
集合\{I_m(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は上限\mathscr{s}(f)をもち、
集合\{I_M(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}は下限\mathscr{S}(f)をもつ。
上限は、上界の中の最小値なので、
\mathscr{s}(f)\leq I_M(f,{\Delta}')
この式は任意の{\Delta}'について成立するので、
\mathscr{s}(f)は、集合\{I_M(f,\Delta) \mid \Delta \in \mathscr{D}(V)\}の下界である。
下限\mathscr{S}(f)は、下界のなかの最大値なので\mathscr{s}(f) \leq \mathscr{S}(f)を得る。

分割を細かくしていくときの不足リーマン和と、過剰リーマン和の極限

定理(ダルブー;Darboux)
V=[a,b]
fを、Vで定義され、実数に値を取る有界関数とする。
このとき、
ⅰ)\lim_{d(\Delta) \to 0}I_m(f,\Delta)=\mathscr{s}(f)
ⅱ)\lim_{d(\Delta) \to 0}I_M(f,\Delta)=\mathscr{S}(f)
証明;
ⅰ)を示す。( ⅱ)は同じようにして証明できるので略す)
これを示すには、
どんなに小さい正の実数\epsilonに対しても、それに応じた小さい正の実数\delta_{\epsilon}を適切に選べば、
分割の大きさが\delta_{\epsilon}より小さい、どんな分割\Deltaも、
\mathscr{s}(f)-I_m(f,\Delta)<\epsilon
であることを示せばよい。
以下に、数段階に分けて、これを証明する。

\quad 1) 上限の命題(補題3)から、
ある分割
D=\{{V^D}_i=[{x^D}_{i-1},{x^D}_i] \mid i=1,2,,,n\}in \mathscr{D}(V)
が存在して、
\mathscr{s}(f)-I_m(f,D)<\frac{\epsilon}{2} \qquad (1)
今後このDを使って、証明を進める。

\quad 2)
分割Dの小区間{V^D}_iの長さ({x^D}_i-{x^D}_{i-1})(i=1,2,,,n)の 最小値をeとおくと
e=min_{i=1}^{n}({x^D}_i-{x^D}_{i-1})
eに比べて非常に小さい大きさを持つ分割、
\Delta=\{V^{\Delta}_i=[{x^{\Delta}}_{i-1},{x^{\Delta}}_i] \mid i=1,2,,,N\}
d(\Delta)=max_{i=1,2,,,N}({x^{\Delta}}_i-{x^{\Delta}}_{i-1}) \ll e

を考える。
もし、D \leq \Deltaならば補題2より、
I_m(f,D) \leq I_m(f,\Delta)
すると\mathscr{s}(f)-I_m(f,\Delta)\leq \mathscr{s}(f)-I_m(f,D) \leq \frac{\epsilon}{2}\leq \epsilon 
通常、分割\Deltaは、Dの細分になっていない。
この場合は、高々(n-1)個の\Deltaの小区間が、Dの小区間には含まれず、
Dの分点{x^D}_i(i=1,2,,,n-1)をまたぐことになる。図参照のこと。
議論を簡単にするため、
Dの分点{x^D}_i(i=1,2,,,n-1)が全て、\Deltaの小区間によって跨がれている
と仮定し、議論を進める。
他のケースでも、証明はおなじようにできるので、
このように仮定しても何の問題も起こらない。
Dの分点{x^D}_iを跨ぐ\Deltaの小区間をV^{\Delta}_{m_i}とする(i=1,2,,,n-1)。
\quad 3)
2つの分割D、\Deltaから{\Delta}':=D \vee \Deltaを作る。
すると
{\Delta}'=\{V^{\Delta}_1,V^{\Delta}_2,,,,,,,,,V^{\Delta}_{m_{1}-1},
\qquad \quad [x^{\Delta}_{m_{1}-1},x^{D}_1],[x^{D}_1,x^{\Delta}_{m_{1}}],
\qquad \quad V^{\Delta}_{m_{1}+1},V^{\Delta}_{m_{1}+2},,,,,,,,,V^{\Delta}_{m_{2}-1},
\qquad \quad [x^{\Delta}_{m_{2}-1},x^{D}_2],[x^{D}_2,x^{\Delta}_{m_{2}}],
\qquad \quad V^{\Delta}_{m_{2}+1},V^{\Delta}_{m_{2}+2},,,V^{\Delta}_{m_{3}-1},

\qquad \quad ,,,,,,,,,

\qquad \quad V^{\Delta}_{m_{n-1}+1},V^{\Delta}_{m_{n-1}+2},,,,,,,,,V^{\Delta}_N\} \qquad (2)
と書ける。

\Delta \leq {\Delta}'で、 D \leq {\Delta}' なので、
I_m(f,\Delta) \leq I_m(f,{\Delta}'), \quad I_m(f,D) \leq I_m(f,{\Delta}')
後者の式から、
0 \leq \mathscr{s}(f)-I_m(f,{\Delta}') \leq \mathscr{s}(f)-I_m(f,D)
この式と(1)式から、
0 \leq \mathscr{s}(f)-I_m(f,{\Delta}')<\frac{\epsilon}{2}
そこで、
d(\Delta) \to 0 ならば、I_m(f,{\Delta}')-I_m(f,\Delta)<\frac{\epsilon}{2}
が示せれば、
0 \leq \mathscr{s}(f)-I_m(f,\Delta)
=(\mathscr{s}(f)-I_m(f,{\Delta}')+(I_m(f,{\Delta}'-I_m(f,\Delta)\leq \epsilon
が示され、証明が終わる。
\quad 4)
I_{m}(f,\Delta)=\sum_{i=1}^{N} m(f;V^{\Delta}_i)v(V^{\Delta}_i) であり、
(2)式から、
I_m(f,{\Delta}')
=\sum_{i\notin \{m_1,m_2,,,,m_{n-1}\}} m(f;V^{\Delta}_i)v(V^{\Delta}_i)
+\sum_{k=1}^{n-1} m(f;[x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])v([x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])
+\sum_{k=1}^{n-1} m(f;[x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])v([x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])
なので、
I_m(f,{\Delta}')-I_m(f,\Delta)
=\sum_{k=1}^{n-1} m(f;[x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])v([x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])
+\sum_{k=1}^{n-1} m(f;[x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])v([x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])
-\sum_{i\in \{m_1,m_2,,,,m_{n-1}\}} m(f;V^{\Delta}_i)v(V^{\Delta}_i)
関数はV上で有界なので、適切に正の実数Mを選ぶと、xVの要素ならば
|f(x)|\leq Mが成立する。
すると|m(f;[x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])|, |m(f;[x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])| \leq M
が成り立つ。また
v(V^{\Delta}_{m_k}) =v([x^{\Delta}_{m_{k}-1},x^{D}_k])+v([x^{D}_k,x^{\Delta}_{m_{k}}])で、
v(V^{\Delta}_i)\leq d(\Delta)
なので
|I_m(f,{\Delta}')-I_m(f,\Delta)|\leq 2M\sum_{i\in \{m_1,m_2,,,,m_{n-1}\}} v(V^{\Delta}_i)\leq 2M(n-1)d(\Delta)
そこで、
\delta_{\epsilon}=\frac{\epsilon}{4Mn} と選べば、
d(\Delta)\leq \delta_{\epsilon}をみたすどのような分割\Deltaも、
0\leq I_m(f,{\Delta}')-I_m(f,\Delta)|\leq \frac{\epsilon}{2}
を満たすことが証明できた。証明終わり。

可積分条件

定理;可積分条件 
V=[a,b]
fを、Vで定義され、実数に値を取る有界関数とする。
次の条件のうち1つが成立すれば、残り2つは成立する(互いに同値という)。
ⅰ)fV上で(リーマン)可積分
ⅱ)\lim_{d(\Delta) \to 0}(I_M(f,\Delta)-I_m(f,\Delta))=0
ⅲ)\mathscr{S}(f)=\mathscr{s}(f)

証明
ⅰ)を仮定する。ⅱ)が成立することを示そう。
fの積分値を\alphaとおくと、可積分の定義から、
任意の\epsilon>0に対して、\delta>0が存在して、
d(\Delta)<\deltaである任意の分割と、その分割の任意の代表点\xi_i,(i=1,2,,,)に対し,
|I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n)-\alpha |<\frac{1}{2}\epsilon
が成立する。
変形すると
\alpha-\frac{1}{2}\epsilon <I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n) <\alpha+\frac{1}{2}\epsilon \qquad (1)  
ここで、補題1のⅱ)から、
\inf_{\{\xi_i\}}I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n) =I_{m}(f,\Delta)
\sup_{\{\xi_i\}}I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n) =I_{M}(f,\Delta)
なので、
(1)式から、
\alpha-\frac{1}{2}\epsilon \leq I_{m}(f,\Delta) \leq I_{M}(f,\Delta) \leq \alpha+\frac{1}{2}\epsilon
これより、任意の\epsilon>0に対して、\delta>0が存在して、
d(\Delta)<\delta \implies (0\leq I_{M}(f,\Delta)-I_{m}(f,\Delta)\leq \epsilon)
ⅱ)が示せた。
ⅱ)を仮定する。 ⅲ)が成り立つことを示す。

I_{m}(f,\Delta) \leq \mathscr{s}(f):=\sup_{\Delta}I_{m}(f,\Delta) \leq \mathscr{S}(f):=\inf_{\Delta}I_{M}(f,\Delta) \leq I_{M}(f,\Delta)
なので、
0 \leq \mathscr{S}(f)-\mathscr{s}(f) \leq I_{M}(f,\Delta)-I_{m}(f,\Delta)
故に、分割を細かくしていき、極限をとると、
0 \leq \mathscr{S}(f)-\mathscr{s}(f) \leq \lim_{d(\Delta)\to 0}(I_{M}(f,\Delta)-I_{m}(f,\Delta))
ⅱ)が成立するので、
=0
ⅲ)が示せた。
ⅲ)を仮定する。 \alpha=\mathscr{S}(f)=\mathscr{s}(f)とおく。
ⅰ)が成り立つことを示そう。
補題1のⅰ)から、どのような分割\Deltaと、その代表点\{\xi_i\}_{i}, (\xi_i \in V_i,i=1,2,,,n)に対しても
I_{m}(f,\Delta) \leq I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n) \leq I_{M}(f,\Delta)
ここで、ダルブーの定理から、
\lim_{d(\Delta) \to 0}I_{m}(f,\Delta)=\mathscr{s}(f)=\alpha,
\lim_{d(\Delta) \to 0}I_{M}(f,\Delta)=\mathscr{S}(f)=\alpha
が成り立つので、
\lim_{d(\Delta) \to 0}I^{f,\Delta}(\xi_1,,,\xi_n)=\alpha 
が成り立つ。
ⅰ)が示せた。

区分的に連続(有限個の点を除いて連続)な閉区間上の関数は積分可能

色々な関数のグラフを書くとつながっているところを、跳んでいるところが出来る。
y=Xのグラフはずっとつながっている。
関数y=f(x)を、
x<0のとき f(x)=0, 0\leq xのとき f(x)=1
で定義すると、
x=0のところでそのグラフは跳んでいる。
連続や不連続は関数の非常に重要な性質であり、
それを調べることはとても豊かな知識をもたらす。

定理 
有界閉区間上V=[a,b]で定義され、実数に値を取る連続関数fは、V上で可積分である。
略証;
有界閉区間上の連続関数は一様連続なので、
任意の\epsilon>0に対して、\delta>0が存在して、
|x-x'|\leq \deltaを満たすVの任意の2点に対して、
|f(x)-f(x')|< \frac{\epsilon}{b-a}
が成立する。
V=[a,b]の分割\Deltaを細かくして、
d(\Delta)<\delta
を満たすようにする。
すると、その分割によって得られた小区間V_i(i=1,2,,,n)の長さは、
全て\deltaより小さくなるので、
\sup \{f(x)\mid x\in V_i\}-\inf\{f(x)\mid x\in V_i\}<\frac{\epsilon}{b-a}
M(f;V_i),m(f;V_i)の定義から
M(f;V_i)-m(f;V_i)<\frac{\epsilon}{b-a}, (i=1,2,,,n) これを用いると、
I_M(f,\Delta)-I_m(f,\Delta)=\sum_{i=1}^{n} M(f;V_i)v(V_i)-\sum_i m(f;V_i)v(V_i)
=\sum_i(M(f;V_i)- m(f;V_i))v(V_i) \leq \sum_i \frac{\epsilon}{b-a}v(V_i) =\frac{\epsilon}{b-a}\sum_{i=1}^{n}v(V_i) =\frac{\epsilon}{b-a}(b-a) =\epsilon
故に、
任意の\epsilon>0に対して、\delta>0が存在して、
d(\Delta)<\deltaを満たす任意の分割\Deltaにたいして、
I_M(f,\Delta)-I_m(f,\Delta)\leq \epsilonが示せた。
\mathscr{S}(f)-\mathscr{s}(f)\leq I_M(f,\Delta)-I_m(f,\Delta)
なので
\mathscr{S}(f)-\mathscr{s}(f)\leq \epsilon
が任意の\epsilon>0にたいして成立する。故に
\mathscr{S}(f)=\mathscr{s}(f)
可積分条件のⅲ)が示せた。証明終わり。

定理の系;有界閉区間上で定義され、区分的に連続な(有限個の不連続点をもつ)実数値関数fは積分可能である。
証明は容易なので略す。

ベクトル値関数の場合

ベクトル値関数\vec fの場合も、リーマン和とリーマン可積分の定義は実数値関数の場合と変わらない。
可積分条件については、
座標系をいれ、関数の各座標成分\vec{f}_x,\vec{f}_y,\vec{f}_zを考える。ここで、\vec{f}_x(t):=\vec{f}(t)_xである。他も同様。
すると区分的連続なベクトル値関数の各成分は区分的連続なので積分可能となり、
\vec fの積分可能性が示せる。

リーマン積分の性質

命題1 線形性
命題2 積分の単調性
命題3 平均値定理
命題4 三角不等式
命題5 積分区間に関する加法性

リーマン積分の計算法

原始関数を用いるリーマン積分の計算

一変数関数の変数変換

積分計算を便利にする記号法

部分積分法

未完

不定積分の計算法

未完 

個人用ツール