物理/8章の付録
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8章の付録
問の解答
問
limn→∞(1+1n)n が存在し、2より大きく3以下であることを証明する。
(1)準備; 2項定理;を用いた展開
an≜(1+1n)n(nは自然数) とおく。
すると、
2≤a1=1+11=2<a2=(1+12)2=214である。
以下に、数列 {an}∞n=1 が単調増大で、有界(2より大、3より小)である事を示す。
するとテキストの定理により、この数列は2より大きく、3以下のある実数に収束することが分かる。
nが3以上の自然数の時は、anを2項定理を用いて展開すると
an=(1+1n)n=∑nm=0nCm1n−m(1n)m(1)
ここで nCm は、n個のものからm個取り出す取り出し方の総数で、
mが1以上でn 以下の自然数の時は
nCm=n!m!(n−m)!(2)
ここで、m が1以上の自然数の時は m!≜1⋅2⋅3⋯(m−1)⋅m
mが零の時は 0!≜1 と定義。
すると、
nC0=n!0!n!=1(3)
m≥1のとき、nCm=n!m!(n−m)!=n⋅(n−1)⋅(n−2)⋯(n−(m−1))m!(4)
式(1)に式(2)を代入し,式(3)、(4)を利用して計算すると
an=1+∑nm=1n(n−1)(n−2)⋯(n−(m−1))m!1n−m(1n)m
=2+∑nm=21(1−1n)(1−2n)⋯(1−m−1n)m!(5)
ここで、n より小さい全ての自然数 i に対して
0<1−in<1 なので、
2<an<2+∑nm=21m!(6)
(2)すべての2以上の自然数 n に関して、
2<an<3(7)
であることを示す。
式(6)から
2<an,
an<2+∑nm=21m!(8)
右辺の m は2以上の自然数なので、
1m!≤1(m−1)m=1m−1−1m
である。故に、
an<2+∑nm=2(1m−1−1m)=2+(1−1n)=3−1n<3
(3)数列 {an}∞n=1 は単調増加
n≥2 の時、常に an<an+1 を示せばよい。
式(5)を利用すると(注参照)、
an+1=2+∑n+1m=21(1−1n+1)(1−2n+1)⋯(1−m−1n+1)m!
すると、
an+1−an=∑n+1m=21(1−1n+1)(1−2n+1)⋯(1−m−1n+1)m!−∑nm=21(1−1n)(1−2n)⋯(1−m−1n)m!
右辺の第一項の和を2つに分けると、
=1(1−1n+1)(1−2n+1)⋯(1−nn+1)m!
+∑nm=21(1−1n+1)(1−2n+1)⋯(1−m−1n+1)m!−∑nm=21(1−1n)(1−2n)⋯(1−m−1n)m!
=1(1−1n+1)(1−2n+1)⋯(1−nn+1)m!
+∑nm=21(1−1n+1)(1−2n+1)⋯(1−m−1n+1)−1(1−1n)(1−2n)⋯(1−m−1n)m!
上の式で、全てのi∈{1,2,,,,n}に対して,(1−in+1)>0と(1−in+1)>(1−in) なので、
an+1−an>0
(注)式(3)のnに n+1 を代入すればよい。
ネイピア数 e について
定義;e≜lim(1+1n)n をネイピア数と呼ぶ。
命題1
(1)2<e≤3
(2)e=∑∞m=01m!ただし、0!≜1,m!≜1⋅2⋅3⋯(m−1)⋅m(9)
三角関数の微分
準備
次の命題が、三角関数の微分を求めるうえで中心的役割を果たす。
命題2
limθ→0,θ≠0sinθθ=1
証明
まず、θ を正に保ちながら零に近づける場合を考える。
すると、0<θ<π/2 と考えて良い。
点Oを中心にし、半径1の円を考え、円周上に一点Aをさだめる。
図のように、円周上の点Bを、線分OBが直線OAとなす角がx(ラジアン)となるようにとる。
図から△OAB⊂扇形OAB⊂△OAP
ここで、点PはAを通り線分OAと垂直な直線と半直線OBの交点。
すると、
△OABの面積< 扇形OABの面積 < △OAPの面積
ここで、△OABの面積=1⋅sinθ2,扇形OABの面積=π⋅12⋅θ2π△OAPの面積=1⋅tanθ2なので、
sinθ2 <θ2<tanθ2=sinθ2cosθ各項を2倍すると、
sinθ<θ<sinθcosθ
ここで sinθ>0 なので、これで上式の各項を割ると、
1<θsinθ<1cosθ
1>sinθθ>cosθ
故に、極限の性質から
1≥limθ→0,θ≠0sinθθ≥limθ→0,θ≠0cosθ=1
これより、limθ→0,θ≠0sinθθ=1 が得られる。
定理1 三角関数の微分
(1)ddθsinθ=cosθ
(2)ddθcosθ=−sinθ
証明
(1); ddθsinθ≜limh→0,h≠0sin(θ+h)−sinθh
ここで、
sin(θ+h)−sinθ=sin((θ+h2)+h2)−sin((θ+h2)−h2)
サイン関数の加法定理を適用すると
=sin(θ+h2)cosh2+cos(θ+h2)sinh2−(sin(θ+h2)cosh2−cos(θ+h2)sinh2)=2⋅cos(θ+h2)sinh2
故に、
ddθsinθ≜limh→0,h≠0sin(θ+h)−sinθh=limh→0,h≠02⋅cos(θ+h2)sinh2h=limh→0,h≠0cos(θ+h2)sinh2h/2
=limh→0,h≠0cos(θ+h2)limh→0,h≠0sinh2h/2
ここで、
limh→0,h≠0cos(θ+h2)=cosθ
limh→0,h≠0sinh2h/2=1(上の命題2より)
なので、
=cosθ
指数関数と対数関数
実数の累乗
a を任意の実数、n を2以上の自然数とする。
a1=a,a2=a⋅a,a3=a2⋅a=a˙a⋅a⋯an=an−1⋅a, ⋯
を総称して、a の累乗と呼ぶ。
an を、a の n 乗 、n をその指数と呼ぶ。
命題1
a,b を任意の実数、m,nを任意の自然数とすると、
(1) aman=am+n
(2) (am)n=amn
(3) (ab)n=anbn
そこで次の累乗に関する計算規則を定義する。
累乗に関する計算規則
a,b を任意の正の実数、α,βを指数を表わす数とすると、
(1) aαaβ=aα+β(累乗規則1)
(2) (aα)β=aαβ(累乗規則2)
(3) (ab)β=aβbβ(累乗規則3)
命題2
(1)a を1より小さい正の実数とすると、数列 {an}∞n=1 は単調減少し、零に収束。
(2)a を1より大きい正の実数とすると、数列 {an}∞n=1 は単調増加し、いくらでも大きくなる(無限大に発散)。
これより、累乗に関する3つの規則が、そのまま成り立つようにしながら、指数を実数まで拡げよう。
指数の整数への拡張
まず指数を、累乗に関する3つの規則が成り立つようにしながら、整数に拡張する。
累乗の定義から、
a≠0 の時は、任意の自然数m、nに対し、
am÷an=am−n(m>n) (1)
=1(m=n)(2)
=1an−m(m<n)(3)
であることが分かる。
これを一つの式 am−n で表わせるように、a の指数を取決めたい。
そのためには、指数が零の時、a0≜1、
指数 m−n が負数の時 am−n≜1an−m
と定義すればよい。
言い換えると、a(≠0) の指数nが 零と負の整数のとき、
a0≜1,an≜1a−n(n<0)(4)
と定義する。
すると、指数が整数の時、3つの累乗規則を満たすことは、容易に確かめられる。
指数の有理数への拡張
a を任意の正の実数、 mn を任意の有理数のとき、
a の有理数乗 amn を、次のような計算規則を満たすように定義しよう。
amn=a−m−n なので、指数n を任意の自然数(正の整数)、 m を任意の整数と仮定してよい。
累乗規則(2)を満たすように定義するには、
(amn)n=(amn)n1=am
でなければならない。
そこで、 n乗すると、am となる正の実数をamn と決めることが
自然であろう。
最初に、この定義できちんと正の実数が一つだけ決まることを証明しよう。
命題3
a を任意の正の実数、m,n を任意の整数とする。
すると、n乗すると am になる正の実数 b が存在し、ただ一つに限る。
証明;
f(x)≜xn という、零と正の実数の上で定義された、関数を考える。
この関数はxが増加するにつれて、連続的に、零から正の無限大に狭義に単調に増加(注参照)していく。
一方、am は必ず正の実数である。
そのため、xが零のときは、 f(x)<am であり、
xを少し増加させても、同じ関係が成り立つ。
関数は単調に零から∞まで増加していくので、
ある正の実数(b と書こう)まで、f(x)<am であり
b以上の実数xに対しては、f(x)≥am となることが分かる。
関数値は、x の変化につれて連続に変化するのでf(b)=am である。
関数fが狭義単調増加なので,b以外の正の実数xでは、f(x)≠am である。
(証明終り)
(注) 関数fが狭義単調増加とは、x<y⇒f(x)<f(y) を満たすこと。
命題4
任意の正の実数 a にたいして、その有理数乗を上記のように定義すると
3つの累乗規則 (1)~(3) が成り立つ。
証明;
① 累乗規則(1)が成り立つことを示す。
2個の有理数の指数を 自然数n,˜nと整数m,˜m を用いて、
α=mn,β=˜m˜nと表現する。
すると、累乗規則(1)は、次のように表される。
amna˜m˜n=amn+˜m˜n
この左辺を b≜amna˜m˜n,
右辺を c≜amn+˜m˜n とおく。
bn˜n=cn˜n (A)
であることを示せば、b=c が得られ,
累乗規則(1)が成立することが分かる。
まず左辺を考える。
bn˜n= (amna˜m˜n)n˜n
指数が自然数の累乗規則(3)から
=(amn)n˜n(a˜m˜n)n˜n
指数が自然数の累乗規則(2)から
=((amn)n)˜n((a˜m˜n)˜n)n
実数の有理数乗の定義から、
=(am)˜n(a˜m)n
指数が整数の累乗規則(2)から
=am˜na˜mn
指数が整数の累乗規則(1)から
=am˜n+˜mn
故に、bn˜n=am˜n+˜mn
次に、右辺を考える。
cn˜n=(amn+˜m˜n)n˜n
=(am˜n+n˜mn˜n)n˜n
実数の有理数乗の定義から、
=am˜n+n˜m=bn˜n
これで、式(A)が示され、累乗規則(1)が成り立つことが証明できた。
② 累乗規則(2)が成り立つことを示す。
③ 累乗規則(3)が成り立つことを示す。
証明終わり。
指数が有理数の場合,命題2は次のように拡張出来きる。
命題5
有理数全体の上で定義される関数
fa(α)≜aα (αは有理数)を考える。
(1)a が1より小さい正の実数ととき、
faは単調減少し、
limα→∞fa(α)=0limα→−∞fa(α)=∞
2)a を1より大きい正の実数とすると、
faは単調増大で
limα→∞fa(α)=∞ limα→−∞fa(α)=0
3)a = 1 のとき、fa ≡ 1
証明
証明終わり
指数の実数への拡張
任意の実数 α に対して aα を次のように定義する。
定義
{αn}∞n=1 を α に収束する有理数の単調増加数列とするとき、
aα≜limn→∞aαn
この定義により、唯一の実数が必ず定まることが次のようにして分かる。
命題6
① 上記の有理数の単調増加列 {αn}∞n=1 は収束する。
② α に収束する、別の有理数の単調増加数列 {βn}∞n=1 に対して、limn→∞aβn=limn→∞aαn
証明
証明終わり
指数関数
aを任意の正の実数とする。
定義
fa(x)≜ax(x は任意の実数) という関数を指数関数と呼ぶ。
命題1
(1)a が 1 より大きい実数の時,fa(x)=ax は単調増加
(2)a が 1 より小さい実数の時,fa(x)=ax は単調減少
(3)a=1 のとき、f1(x)=1x≡1
命題2
指数関数 fa(x)=ax は
(1) 連続である。
(2) 定義域は実数全体R
(3) a≠1 の時、
値域 R≜{ax|x∈R}は (0,∞)≜{x|x∈R,x>0} に等しく、
(4) 一対一関数(x≠x′→ax≠ax′)
である。
命題3
e をネイピア数とすると
ex=∑∞n=0xnn!(xは任意の実数)(1)
証明
補助命題
実数全体の上の関数 Exp を
Exp(x)≜∑∞n=0xnn!
で定義する。
この関数は次の性質をもつ。
(1) Exp(1)=e
(2) Exp(x+y)=Exp(x)Exp(y)(x,yは任意の実数)
(3) 任意の有理数 α に対して Exp(α)=eα
(4) 関数 Exp は微分可能、従って連続関数。
補助命題の証明
補助命題の証明終り。
証明終わり。
対数関数
1と異なる正の実数 a を考える。
指数関数 fa(x)=ax は,命題2から、
R から (0,∞) の上への、一対一、連続関数である。
すると、その逆関数(0,∞)∋ax→x∈R が定義できる。
定義
a を1と異なる正の実数とする。
logaax≜x(1)
この関数を、a を底とする対数関数とよぶ。
定理1
a を 1と異なる正の実数とする。
この時、a を底とする対数関数 loga は、
(0,∞) から R の上への一対一で
連続な関数である。
定理2
a を 1と異なる正の実数とする。
すると
1) 任意の2つの正の実数b、cに対して,
logab+logac=logabc(2)
2) 任意の2つの正の実数b、cに対して,
logab−logac=logabc(3)