文章作成/通信手段としての文章

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目次

通信手段としての文章

ニューススタイルの規則

 人間は単に叫び声で仲間に何かを伝えるだけでなく、冷静に筋書きだって何かを他人に伝えることができるようになってきた。すなわち文章を高度な通信手段として使うようになった。

 新聞の文章はその典型である。新聞のニューススタイルの規則では、リードには以下の「5W」の多くを含むべきとされている。すなわち、

Who(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(なぜ)したのか

である。しかし日本においては、「5W」にさらにHow(どのように) の「1H」を含む「5W1H」であるべきとされる。

例えば、「今朝近くの川にあざらしがいた」

という文は

What: いた
Who:  あざらし
When: 今朝
Where:近くの川
Why:  ?
How:  ?

客観性について

 そしてその新聞が広域の読者を持てば持つほど、それぞれの情報には客観性が求められる。近くの川は、「日本の埼玉県の荒川」でなくてはいけないし、今朝は「2011年10月15日の朝7時ころ」でなくてはいけない。

 読者が暗黙のうちに何を知っているか、によって文章の良し悪しの評価も変わってくる。例えば上のようにあまり情報を客観化すると面白みが欠けてしまうこともある。

 またWhen を通常の時を表す単語を使わずに、「季語」と呼ばれる単語を文章中に使うことで、時(=季節)をシンボリックに表す、という日本の俳句の技法もある。その象徴性が読者に理解される、というところに作者との共感が生まれ、彼らに良い文章として認められるのである。

Wikinews

 なお、これからは紙の新聞でなく、電子的な新聞が重要になり、一般の人がニュース原稿を書く機会が出てきた。一般の人も記者になれる良く知られた電子新聞に Wikinews がある。ここにニュース記事の書き方が出ているので、事実を知らせる文章の書き方の参考にして欲しい。

 ウィキニュースへの投稿の仕方は、これからの文章作成の方法について示唆に富む提案をしている。投稿者は文章を書くというより、5W1Hの情報を個別に入力する。すると自動的に文章が出来てしまうのである。ニュースの文章はそのような方法で作成した方が、名文家の記者が書くより正確でかつ能率的で、これからはより望ましいのかもしれない。ウィキニュースは文章とは何か、という哲学的な問題を投げかけている。

 この教科の学習者はウィキニュースに少なくとも1つの記事を投稿してみるとよい。そのとき自分が独自に正しい情報を伝えるとうことがいかにむずかしいかを実感するだろう。既存の新聞記事を写すとは簡単である。しかしそれでは独自な取材とはいえない。例え交通事故などの現場にあなたが居合わせたとしても、正確に5W1Hの情報を取得するのは実に困難である。勢い警察などの発表に頼ることになる。それは情報を行政にコントロールされる道につながり、実に危険なことなのである。

 つまり文章作成のテクニックより、事実そのものを知るほうがむずかしいのである。

 そういう事実を知るだけでも、あなたの新聞などの他人が書いた記事の信用の仕方に、重要な変化を迫るであろう。

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