物理/静電気と静電場(その2 静電誘導・誘電分極)

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目次

「5.2 静電気と静電場(その2) 静電誘導・誘電分極」

静電場中の導体と静電誘導

導体に静電場をかけると、導体内部にもこの電場が及ぶ。
  導体内部の自由電子はこの電場から力を受けて電気力線の上流方向に速やかに移動する。
  電気力線の上流側の導体表面は負に、下流側の表面は正に帯電し、
その電荷により、導体内部で外部電場を打ち消すような電場が誘導される。
誘導された電場と外部電場の和が導体内部の電場となる。
この導体内部の電場が零になるまで自由電子は動き続けて、
きわめて短時間のうちに、導体内部の電場は零になる(注1参照)。
このとき、導体は全ての点で等電位になる。
これを静電誘導という。

(注1) 導体の表面にだけ、表面の法線方向の電場が生じる。
向きは導体表面にたまった電荷に外部方向の力を及ぼす向きである。
電荷は導体外部には簡単には飛び出せないので、導体中で電荷の流れがなくなる。
(注2)RT

接地(アース)

地球は非常に大きい導体とみなせ、その電位は一定である。
そこで、地球の電位を基準(零)として、電位を決めることが多い。アース電位と呼ぶ。
導体を導線で地球とつなぐと、導体は地球の電位と同じ一定値(アース電位0)に保てる。
これを接地する、または、アースをとる、という。

導体の帯電

命題1
RT 導体の表面が滑らかとする。
もし導体が静電場内にあり、導体内の電荷が静止しているならば、
導体表面の任意の点xのすぐ外側の点の電場 $\vec E(x)$ は、
方向は導体表面に垂直で、大きさは
$E(x)=\frac{\sigma(x)}{\epsilon_0}\qquad (1)$
である。ここで $\sigma(x)$は、表面の点xにおける表面電荷密度である。
証明; 導体表面は滑らかなので、導体表面にxの近傍$U(x)$を小さくとると,
平面の一部とみなせる。

導体は等電位で、導体表面は滑らかなので、
導体のすぐ外側の電場は導体表面に垂直である(注2参照RT)。
また、 そこで、$U(x)$を底面とし、高さが $\delta h(\gt 0$、無限小)の柱体を導体外側と、内側に立てる。

この2つの柱体を合わせてできる柱体 $C$ に ガウスの法則を適用する。
柱体Cの側面は、$U(x)$と直交し、これと直交する電気力線と平行になる。
故に柱体Cの側面を貫く電気力線の本数は零である。
導体内部にある下底では電場は零なので、この面を貫く電気力線の本数は零、
導体外部にある上底での電場は$\vec E(x)$であり、
上底と直交するので、この面を貫く電気力線の本数は
$E(x)|U(x)|$(ここで|U(x)|は上底の面積)
である。
そこで、ガウスの法則により、
$E(x)|U(x)|=\frac{Q}{\epsilon_0}\qquad (2)$
ここで、Qは柱体C内の総電荷。
電荷密度の定義から、$\sigma(x)\approx \frac{Q}{|U(x)|}$ なので、
面積$|U(x)|$が十分小さいとき、
$Q=\sigma(x)|U(x)|$ とみなせる。
この式を式(2)に代入して、両辺を$|U(x)|$で割ると
$E(x)=\frac{\sigma(x)}{\epsilon_0}$

命題2
導体は帯電(電気を貯めることが)できる。
一例を示す。
正の帯電体を導体に近づけると、
静電誘導でこの帯電体の 近くの導体表面に、負電荷がたまり、
それと同量で反対符号の電荷が反対側の導体表面に集まる。
この状態で、導体を接地すると反対側導体表面の正電荷だけが地球に流れ(実際には地球から自由電子が流れ込み)、導体は負に帯電する。

命題3
過度的な状態を除き、導体の内部には電荷はなく、すべて、導体表面にたまる。
証明;
もし、内部のある場所に電荷Qがたまって、安定していたとする。
すると、たまった電荷を囲む閉局面を考え、ガウスの法則を適用すると、
この局面を貫く電気力線の総数=$Q/\epsilon_0$ となる。
すなわち導体内部に電場が存在し、これにより自由電子がさらに移動してしまうことになり、
電荷がたまって一定であることに矛盾してしまう。

はく検電器

静電誘導を用いて、物質の帯電を検出する検電器が作れる。

図のように金属棒の一端に2枚の開閉できる金属箔が付き、他端には円形の金属板のついた装置を、はく検電器という。
帯電していない、はく検電器の金属板に正の帯電体(注参照)を近づけると、金属棒中の自由電子が金属板に引き付けられる。
すると、他端の2枚の金属箔が共に(電子欠乏で)正に帯電するため箔が開く。

(注)負の帯電体を近づけたときも、同様に考察できるので省略する。

はく検電器による蓄電

この状態で、検電器の金属板に手をふれて大地とつなげると、
検電器のはく(箔)にたまった電荷は大地に流れ出し(実際には大地から電子が、箔に流れ込み)、箔の電荷は消失して閉じ、
検電器の金属板には、帯電物体の電荷に引き付けられている自由電子が残る。
検電器全体でみると、負に帯電したことになる。
そこで検電器の金属板に近づけていた帯電体を遠ざけると、
たまった負電荷の一部が箔に流れ込み、2枚の箔は反発して開く。

静電遮蔽

静電場の中に置かれた、導体の箱の中の空間には、電荷が存在しない限り、電場は存在せず、電位は一定である。
このように導体の箱の内部は、外部の静電場から遮蔽されている。   
問い。何故か、考察せよ。   
ヒント: 背理法で証明する。
もし、箱の内部の電位が一定でないとすると、
「電位は、ある内部の点pで最大値をとり、その値は導体箱の電位(一定)より大きい」か、
「ある内部の点p’で最小値をとり、その値は導体箱の電位より小さい」。
前者では、p点を含む小さな立体を考えると、それを内から外へ貫く電気力線の数は正となり、ガウスの法則に反する。
後者でも同様。

コンデンサー

コンデンサーは,蓄電器あるいはキャパシターともいわれ、電気を蓄える道具である。
真空などの不導体(絶縁物)によって分離され、対向して置かれた2枚の電極ないし電極板によって構成される。
電極間に(直流電池につなぐなど)電圧を加えると、一方の電極の自由電子が他方の極に流れ、前者が正に、後者が負に帯電して電気を蓄える。 効率よく電気を蓄えるために、正電極から発生する電気力線が、
殆どすべて負の電極に終わるように作られている。

平行板コンデンサー

同じ形、大きさの2枚の金属の薄い平板を、距離 $d[m]$ を隔てて平行に置き、
 それぞれの板に電極を付けたものを、平行板コンデンサーという。図参照のこと。

ファイル:GENPHY00010502-03.pdf
図 平行板コンデンサー

コンデンサーに蓄えられる電気量Qと電圧Vの関係

命題; コンデンサーの両極板間の電圧Vと正極板の帯電量$Q$ は正比例する。
$Q = C V $


重ね合わせの原理から、
  コンデンサーの両極板の帯電量$\pm Q$と、この電荷の作る電場は正比例する。
  電場と電圧も正比例するので、帯電量Qは、極板間の電圧Vに正比例する。
$Q = C V $
Cはコンデンサーの電気容量と呼ばれる。
 

平行板コンデンサーの電気容量

命題4;
極板の面積をS,極板間の距離をdとすると、
$C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}.......(9-9) $
ここで、$\varepsilon_0 = 8.85418782*10^{-12} $
[F/m] は真空の誘電率, [F/m]=$[\frac{C^2}{N m^2}]$ 。

(何故なら)
$Q = CV$の両辺に$d/S$をかけた式$\frac{Q}{S}d = CVd/S$に、 電荷密度 $\sigma=\frac{Q}{S}$ と$V = E d=\frac{\sigma}{\varepsilon_0}d $(注参照)を代入して得られる式
$\sigma d = CEd^2/S$ 
に $E=\frac{\sigma}{\varepsilon_0} $ を代入し、
Cについて整頓すると、所望の式が得られる。

(注)ガウスの法則の応用の「2:平行版コンデンサー」を参照のこと。

電気容量Cの単位

電気容量Cの単位は,$Q = C V $ を用いて以下のように定める。
$C = Q/V $ なので、
電位Vの単位はボルト$[V] $、電荷Qの単位はクーロン$[C] $を用い、
$[F]=[C/V]$ 
この単位[F]をファラッドという。
  ここで、$[V]=[J/C]=[Nm/C]$([N]は力の単位、ニュートン)なので
$[F]=[\frac{C^2}{J}]=[\frac{C^2}{N m}]$とも書ける。
普通に使われるコンデンサー容量は、1Fに比べてはるかに小さいので、
次の単位が使われることが多い。
μF=$10^{-6}F$(マイクロファラッド)
pF=$10^{-12}F$(ピコファラッド)

真空の誘電率$\varepsilon_0 $の単位

真空の誘電率$\varepsilon_0 $ は、
$\varepsilon_0\fallingdotseq 8.9\times 10^{-12} [\frac{C^2}{N m^2}]$
であった。
$[F]=[\frac{C^2}{N m}]$を用いて、単位を書き直せば
$[\frac{C^2}{N m^2}]=\frac{F}{m}$

コンデンサーに蓄電するのに必要なエネルギー

命題5
容量Cのコンデンサーに電荷$ Q $を蓄えるのに必要なエネルギー は、
$ \mathcal{E} = \frac{1}{2} Q V =\frac{1}{2} C V^2=\frac{Q^2}{2C}$ である。
ここで、$ V $は、$ Q = C V $を満たす値。
理由:
横軸にq軸(電荷量),縦軸にv軸(極板間の電圧)をとり、$v = q/C $ のグラフ(直線)を書く。
図を参照のこと。


電荷量$\tilde{q}$ を$0 \le \tilde{q} \lt Q $ とし、nを大きな自然数に取り$d\tilde{q}=\frac{Q}{n}$を非常に小さな数とする。
電荷量を$\tilde{q}$から$\tilde{q}+d\tilde{q} $まで増やすのに必要なエネルギーを求めよう。
増加する電荷$d\tilde{q}$は微小なのでこの間、極板間の電圧$v = \tilde{q}/C $は一定とみなせる。
そこで、電荷量を$d\tilde{q}$増やすのに必要なエネルギー$d\mathcal{E}$は
$d\mathcal{E}=v d\tilde{q}=(\tilde{q}/C) d\tilde{q}$と考えられる。
$v = q/C $ のグラフでいえば、これは、図の斜線部の面積にあたり、
q軸と直交する2本の直線$ q=\tilde{q}, q=\tilde{q}+d\tilde{q} $ と直線$v=0 $(q軸)、直線$v= q/C$ で囲まれた領域の面積にほぼ等しい。
全エネルギーの近似値$\mathcal{E}_{\tilde{q}}$は、$ \tilde{q} = 0 $ で $ d\mathcal{E} $を求め始め、
$\tilde{q}=d\tilde{q} $ 、 $\tilde{q}=2(d\tilde{q})$ 、、、、と増やして
$ \tilde{q}=Q-d\tilde{q}$ までの$ d\mathcal{E}$を求め,加え合わせる。
これは、
q軸と直交する直線$ q=Q $ ,直線$v = q/C$とq軸によって囲まれる3角形を、
底辺の長さが $d\tilde{q} $ の長方形の和で近似して面積を求めた値である。
正確なエネルギー$\mathcal{E}$は、 $d\tilde{q} $を無限に小さくしていくときの$\mathcal{E}_{\tilde{q}}$の極限であたえられ、
q軸と直交する直線$ q=Q $ ,直線$v = q/C$とq軸によって囲まれる3角形の面積になる。
故に$ \mathcal{E}= \frac{1}{2} Q V =\frac{1}{2} C V^2=\frac{Q^2}{2C}$ (終わり)
(注)数学が強い方は積分計算で簡単に\mathcal{E}を求められる。
$\mathcal{E} =\int_0^{Q}(q/C)d\tilde{q}=[q^{2}/2C]_0^{Q}=Q^{2}/2C= C V^2/2$

コンデンサーに蓄えられたエネルギー

命題6;
容量Cのコンデンサーに電荷が$ Q $蓄えられているとき、
この電荷は、外部に仕事
$ \mathcal{E}=\frac{Q^2}{2C}$
をなすことができる。

電場中の不導体と誘電分極(RT) 

不導体は自由電子をもたないので、電場のなかに置いても何の変化も起こさないように思える。
しかし、ファラデーは、コンデンサーの極板間に不導体をいれると、
その容量が増すことを発見した。

ファラデーの発見した経験則と比誘電率 

平行板コンデンサーの極板間の電圧を一定に保ちながら、
極板間を不導体で隙間なく満たすと、
コンデンサーの容量$C_{r}$ は$\varepsilon_r $倍に増える。
$C_{r} = \varepsilon_r C,\quad (\varepsilon_r \gt 1)$ 。
ここで、$ \varepsilon_r $は比誘電率といい、
1以上の、不導体に固有な値である。
$\varepsilon_r \varepsilon_0 $を、この不導体の誘電率と呼び、
$\varepsilon $ で表す。  

極板間を完全には満たさない薄い不導体の板をいれても、
不導体の種類とその厚さに応じて、コンデンサーの容量は増加する。

不導体表面に電荷が誘導される

RT;大幅に短縮可能で、分かりやすくなりそうである。

ファラデーの発見した経験則をもとに、不導体に何が起こるのか、
なぜコンデンサー容量が増すのかを考察しよう。 
(1) 帯電増加量
極板間に不導体が入っていない時、両極板の間に電圧Vをかけると、
極板にはそれぞれ$ \pm Q=\pm CV $の電荷が帯電する。
次に比誘電率$ \varepsilon_r $で厚さ$ d $の不導体をコンデンサー間に(隙間なく)挿入すると、
両極板には、それぞれ$ \pm Q_{r}=\pm C_{r}V=\pm \varepsilon_r Q $の電気が貯まる。
増加した帯電量は、$ \delta Q=C_{r}V-CV= \varepsilon_r CV-CV=(\varepsilon_r-1)CV $ 。

(2) 両極板の電荷のつくる電場の大きさRT
極板間に不導体が入っていない時;
極板間の電圧がVの時、両極板の電荷は$ \pm Q=\pm CV $なので、
両極板の表面電荷密度は$ \pm \sigma =\pm Q/S=\pm CV/S $、ここでSは極板面積。
これが極板間につくる電場$ \vec E $は、
方向が正電極から負電極へむかう垂線の方向と一致し、大きさは、$E=\sigma/\varepsilon_0$

極板間に不導体を挿入した場合;
極板間電圧がVの時、極板電荷は$ \pm Q_{r}=\pm C_{r}Q$に増えるので、
極板の表面電荷密度は$ \pm \sigma_{r} =\pm Q_{r}/S=\pm \varepsilon_r \sigma$。
これが極板間につくる電場$ \vec E_{r} $は、
方向が正電極から負電極へむかう垂線の方向と一致し、
大きさは、$E_{r}=\sigma_{r}/\varepsilon_0=\varepsilon_r \sigma/\varepsilon_0=\varepsilon_r E\qquad \qquad (2)$

(3) 正極板がわの不導体の表面に負電荷が誘導され、正の電荷が負極板側の表面に誘導される。RT
不導体を挿入したときも、極板電圧Vは変えていないので、
厚さdの不導体の内部の電場の大きさは、$ V/d=E $ となっているはずである。
もし不導体に何の変化もないならば、
不導体内部の電場の大きさは式(2)より、$E_{r}=\varepsilon_r E$ であり、
内部電場が$ E $ であることと矛盾する。
これより正極板に接する不導体の表面に、
正極で増加した帯電量を相殺する$ -\delta Q=-(Q_{r}-Q)= -(\varepsilon_r-1 )Q $の負電荷が誘導され、
負極板に接する不導体の表面に、
負極で減少した帯電量を相殺する$ \delta Q=(Q_{r}-Q)= (\varepsilon_r-1 )Q $の正電荷が誘導される
ことが類推できる。
この時、極板とそれに接する不導体の表面に帯電する電荷は合計すると、$ \pm Q$となる。
この電荷がつくる電場の大きさはEとなり、極板間電圧はEd=Vでうまくいく。
なお、不導体の正負の表面電荷は、電場がかかっている時だけ現れ、かからなくなると消失する。
このように電場のなかで不導体の表面に現れる電荷は、真の電荷ではない(注参照のこと)。
次の節で説明するように、誘電分極という現象よって誘導された電荷なので、分極電荷といい、
不導体のことを誘電体とも呼ぶ。
(注)電場のなかで、電場の下流側の不導体の表面に正電荷、上流側の表面にそれと同量の負電荷が現れる。
しかし、この状態で、正の側と負の側が分離するように不導体を2分すると、
それぞれの部分の電場の下流側表面に正電荷、上流側表面に同量の負電荷が現れてしまい、電荷を取り出すことは出来ない。

(4)誘電体の内部の電場は外部から作用する電場と分極電荷の作る電場の和である。
不導体の表面に誘導された電荷$ \mp \delta Q=(Q_{r}-Q)= \mp(\varepsilon_r-1 )Q $は,
今まで何回も使ったガウスの法則を利用した論法により、 誘電体の内部に電場をつくり、その大きさは、$ E_p= \delta Q/(S \varepsilon_0)=\sigma_p/\varepsilon_0$、ここで $\sigma_p=\delta Q/S =(Q_r-Q)/S=\sigma_r-\sigma$は不導体の表面の分極電荷の面密度で、分極電荷密度あるいは分極の大きさという。電場の方向は、$ \vec E_{r}$と逆向き。
故に、$ \vec E_{r}+\vec{E_{p}}$の大きさは、$E_{r}-E_{p}=\sigma_{r}/\varepsilon_0-\sigma_p/\varepsilon_0= (\sigma_{r}-\sigma_p)/\varepsilon_0=(\sigma_{r}-(\sigma_r-\sigma))/\varepsilon_0=\sigma/\varepsilon_0 =E$で、向きは$ \vec E_{r}$の向きと等しい($\vec E$の向きと同じ)。故に、$ \vec E_{r}+\vec{E_{p}}=\vec E$

(5)誘電体に外部から作用する電場$ \vec E_{r}$,分極の大きさ$\sigma_p$と誘電体の内部の電場$\vec E$の関係
$\sigma_p=\sigma_r-\sigma=(Q_r-Q)/S=(C_r-C)V/S=(\varepsilon_r-1)CV/S=(\varepsilon_r-1)CEd/S$
上の式に$C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}.......(9-9) $ を代入し、整頓すると、
$\sigma_p=(\varepsilon_r-1)\varepsilon_0 E$;;分極の大きさと誘電体の内部の電場の関係
$\vec E_{r}=\varepsilon_r \vec E$;; 誘電体に外部から作用する電場と誘電体の内部の電場の関係  
$\sigma_r=Q_r/S=C_rV/S=\varepsilon_r CEd/S$に$C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}$ を代入し整頓すると、
$\sigma_r=\varepsilon_0 \varepsilon_r E $あるいは $E=\sigma_r/\varepsilon_0 \varepsilon_r $;; 比誘電率$\varepsilon_r $の不導体を挿入したコンデンサーの電極電荷と不導体内部の電場の大きさの関係。

誘電分極 

では、何故コンデンサーの電極間に挿入された(電場のかかった)不導体の表面に、電荷が現れるのだろうか?  
電場が掛かると誘電体を作っている原子の中の電子達(負電荷-q)と原子核(正電荷;+q)は電場から互いに逆の力をうける。
不導体では(自由電子がなく)すべての電子は原子核と電気力で引き合っている(ばねで引き合っているかのように)。
このため電場の大きさに比例して上流側に電子が、下流側に原子核がづれて、電場からの力と電気力が釣り合ったところで止る。
づれた電子達の電荷総量$ -q $の重心から原子核の重心へのベクトルを $\vec d$と置くと、
その向きは、多くの元素では、電場の向きと一致する。
誘電体の各原子は双極子モーメント$\vec{p}=q\vec{d}=qd\vec{E}/E$を持つ電気双極子になる。 
この現象を誘電分極(dielectric polarization)という。  
単位体積中の双極子モーメントの和を $\vec{P}$ と書き、単位体積あたりの双極モーメントと呼ぶ。
不導体の単位体積中の原子数をNとすると、$\vec{P}=Nq\vec{d}=Nqd(\vec{E}/E)$

誘電体の各原子が、向きの揃った電気双極子になると、
誘電体の表面にある原子の中でも、電子は電場$\vec{E} $ と逆向きに、原子核は$\vec{E} $ の方向に少しずれ、両者は距離$d=||\vec{d}|| $だけずれるので、
電気力線の上流側の誘電体の表面には、負電荷が現れ、下流側($\vec{E} $ の方向)の誘電体表面には、正電荷が現れる。
誘電体の内部は、誘電体の外部から見る限り、正負の電荷が打ち消し合って、電気を持たないように見える。

この現象を巨視的にながめよう。
一つの原子は移動可能電荷$\pm q $をもち単位体積中にN個の原子があるので、不導体中には単位体積あたり$\pm Nq $の電荷が(流体のように)一様に分布している。
電場のかからないときは、正と負の電荷が、ぴったりかさなって、打ち消し合い帯電してないようにふるまうが、
電場がかかると負電荷は電場の上流側に全く形を変えないで少し移動し、正電荷は電場の下流方向に少し移動(負電荷からみると正電荷は$\vec{d}$だけ移動)し、
不導体のそれどれの表面に電荷があらわれる。
この議論から、分極電荷は表面から、いくらかの厚さをもった部分に現れることがわかったが、非常に薄いので、表面に分布する電荷のように扱える。

単位体積あたりの双極モーメントが$\vec{P}$ の不導体の表面の分極電荷密度 

コンデンサーの例で考える。
極板間に挿入された不導体に極板電荷のつくる電場が作用して不導体の原子が分極して、$q\vec{d}$という双極モーメントを持つとする。
単位体積あたりの双極モーメントは、単位体積当たりの原子数をNとして、$\vec P=Nq\vec{d}$となる。
導体の各表面の$\vec{d}$方向(多くの不導体では$\vec{E}$方向に同じ)に長さ$d$の範囲にわたって電荷が誘導される。
正の極板に接する不導体の面は、$\vec{d}$と直交するので、深さ$d$までの領域が負に帯電。

この部分の単位表面から深さdまでの体積は$d$なので、その部分の原子の総個数はNd,その個々の原子の分極電荷は-qなので、
誘導電荷の総量は $-Nqd=-|\vec{P}|$となる。
この電荷は、$d$が小さいので、表面電荷密度とみなせる。

同様に、負の極板に接する不導体の面では、$ Nqd = ||\vec{P}|| $が表面電荷密度。
他方、$\sigma_p$は負の電極に接する不導体表面に現れる誘導電荷密度を表わすので、$\sigma_p = Nqd = ||\vec{P}|| $。
これが、単位体積あたりの双極モーメントが$\vec{P}$ の不導体の表面の分極電荷密度である。 

次に一様な電場$\vec{E}$に、任意の方向に置かれた誘電体の単位体積あたりの双極モーメントが$\vec{P}$であるとき、誘電体の表面に現れる分極電荷を算出しよう。

誘電体の表面の単位長の外法線(表面に直交し、誘電体内部から外部に向かう、単位長さのベクトル)を$\vec{n}$と書くと、

その表面に現れる、分極電荷の面密度$\sigma_p$ は、$\vec P \cdot \vec n$ であることが導ける。
(注)RT;何故?

電束と電束密度

電荷Qの作る電場中に不導体があると、
電場の下流側と上流側の面にそれぞれ正、負同量の分極電荷が現れて、電荷Qの作る電場を弱める電場をつくり、
不導体中の電場は、両者の和になる。
このため、不導体中の電場は外部の電場より弱くなる。電気力線の本数は、電場の強さに比例するようにとりきめたので、不導体の中では本数は減少してしまう。
このため、電荷を内部に含む立体の表面の一部あるいは全部が不導体に含まれる場合、立体表面を貫く電気力線の本数は$\frac{Q}{\varepsilon_0} $より少なくなってしまい、[ガウスの法則]は成り立たないように見える。
しかし、これは電場が分極電荷のつくる電場も加えたものなのに電荷は分極電荷をくわえてないためにおこった現象であり、
電荷として真の電荷だけでなく分極電荷も考慮すれば、ガウスの法則は成立する。
「立体を貫く電気力線の本数は$\frac{Q+Q_{p}}{\varepsilon_0} $となる。
 ここで$Q_{p}$は、この立体に含まれる分極電荷の総量。しかし$Q_{p}$は測定も難しく、この方法は手間がかかる。
そこで電気力線に代わって不導体中でも量の変わらないものを考え、ガウスの法則をその量を使って記述することを考える。

 点電荷の電束と電束密度 

点電荷qがある時、そこから(実際には流れるものはないが)qに等しい流体のようなものが湧き出し、電気力線にそって色々な方向に流れると考える。
各方向への流量は、電場の強さに比例して配分されると考える。この流れを電束といい、その量を電束量と呼ぼう

真空中に置かれたqを中心とする半径rの球面S上での単位面積当たりの電束量を求めよう。
qという量の電束が点電荷から湧き出し、放射状の電場にそって流れ出し、球面Sを通り抜けるが、
この球面上では、電場の大きさは等しい(E=$q/4\pi r^2 \varepsilon_0$)ので、どの方向にも等しい密度で流れることがわかる。
そこで球面Sの単位面積当たりの電束量は、qをSの面積で割った、$q/4\pi r^2$となる。
これは、$\varepsilon_0 E$に等しい。

次に、電束の密度と方向を与える、電束密度ベクトル(通常は単に電束密度と呼ぶ)を次のように定める。
電荷qを原点とする位置ベクトル$\vec r$の点での電束密度$\vec D$とは、
ベクトルの方向は電気力線の向き(=電場の向き)、
その大きさは、その点をとおり、電気力線と直交する小平面$ds$をとり、そこをとおり抜ける単位面積あたりの電束量
で定義する。
$ds$は小さく、電気力線と直交するので、qを中心とする半径r=$||\vec r||$の球面にほぼ、のっているため、球面の一部と考えてよい。
前述の議論からここを通りぬける電束量は、単位面積当たり、$\varepsilon_0 E=q/4\pi r^2$である。
これは、$\varepsilon_0 \vec E $ が電束密度であることを示している。

真空中のガウスの法則は、Vを球や立方体などの立体、Sをその表面(=閉曲面)とすると、
$\varepsilon_0 \vec E $ の外法線成分のS全体での平均値×面Sの面積=q;qがVの内部のとき。   =0;qがVの外部のとき。
であった。
電束密度Dを用いて表現すると
$D$ の外法線成分のS全体での平均値×面Sの面積=q

 真空中の多数の点電荷の電束と電束密度 

点電荷の集まりである電荷Qの作る電場Eは、
重ね合わせの原理から、
それぞれの点電荷の作る電場$E_{q}$ のなので、
Eの作る電束も、$E_{q}$ の作る電束の和となり、
電束密度は、$D=\varepsilon_0 \vec E=\sum_{q}\varepsilon_0 \vec E_{q}$

 誘電体中の多数の点電荷の電束密度とガウスの法則PT 

真空以外の不導体の媒質中の場合、不導体の原子が電荷の作る電場によって、多かれ少なかれ誘電分極して、かってに分極電荷を持ってしまうため、
ガウスの法則は、この電荷を考慮して、
$\varepsilon_0 \vec E $ の「Vの外法線」成分のS全体での平均値×面Sの面積= V内の真の電荷量Q+V内の分極電荷$Q_p$
としなければならない。
$Q_p$は測定も難しく、どこに発生するかも、分かりにくいので、これを扱いやすくしよう。
まず、分極ベクトル(単位体積あたりの双極モーメント)$\vec{P}=Nq\vec{d}$ が分かる場合;
立体Vの内部に現れる分極電荷の総量は
$-\vec P$の「Vの外法線」成分の、S上の平均値×Sの面積
となる。
何故なら
これを前述のガウスの法則の式に代入して、
$\varepsilon_0 \vec E+\vec P $ の「Vの外法線」成分のS全体での平均値×面Sの面積=V内の真の電荷量Q
分極電荷$Q_p$ を使わないで、ガウスの法則が記述できた。
しかし、$\vec{P}=Nq\vec{d}$ も知ることは難しい。
多くの不導体では、、$\vec{P}$ は$\vec{E}$と同じ向きになり、比誘電率$ \varepsilon_r $の誘電体では、$\vec{P}=(\varepsilon_r -1)\varepsilon_0 \vec E$ であった。
これを上式に代入すると、
$\varepsilon_r \varepsilon_0 \vec E $ の「Vの外法線」成分のS全体での平均値×面Sの面積=V内の電荷量Q
となる。

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