非線形計画法
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1次等式制約条件下の2次計画問題(ポートフォリオセレクション)
資金額\(w\)を持つ投資家が株式1,2に資金を一か月間 \(x_1,x_2\)に分けて 分散して投資する.どのようにすれば「最適」な投資をできるかを考える.
株式1,2の現在価格を\(q_1,q_2\)としこれらの一か月後の価格は\(0 \sim \infty\)の値を取り得る 不確定な値のため 確率変数\(Q_1,Q_2\)で表す。
資金の分散投資
\(0 \leq x_1, 0 \leq x_2,x_1+x_2=w \qquad (1)\)
による一か月後の利益は,同様に確率変数
\(S= \frac{Q_1}{q_1}x_1+\frac{Q_2}{q_2}x_2-w =\frac{Q_1}{q_1}x_1+\frac{Q_2}{q_2}x_2-(x_1+x_2) =L_1 x_1 + L_2 x_2 \)
\( L_1= \frac{Q_1-q_1}{q_1},L_2= \frac{Q_2-q_2}{q_2} \qquad (2) \)
で表さられる.
ここで,最適な投資の定義はどのようなものになるか. 一つの方法として一か月後の利益についての評価関数
を用いて定義することが考えられる.
この評価関数は 利益\(l\)が増加するに従って値が増加する単調増加関数になるであろう.
しかしながら,一般に高い利益を期待できるものは,逆に株価が値下がりして損出を出す可能性も低くない。
この評価関数が具体的にどのような単調増加関数 になるのか,これは,投資した株式が購入した価格よりも下がり損をするという危険も覚悟の上で,より高い利益を期待するのか, あるいは,利益は期待しつつも,損出は極力避けたい,むしろ利益は少なくとも損出の可能性を極力小さくしたいとの 投資家の心理的問題も大きく影響し単純には決められない.
ここでは議論を簡単にするため評価関数を微小な正数\(0 \lt \alpha\)を使って以下のように定める
\(J(s) = s - \alpha s^2 , s \in [-\infty, \frac{1}{\alpha}] \qquad (3) \)
これは利益\(l\)が\(s \lt \frac{1}{\alpha} \) である間は単調増加であるが,\(s\)が\(\frac{1}{\alpha} \)
に近づくにつれ,曲線の傾斜が0に近づく.この曲線は高い利益を期待できるものは値下がりによる損出の危険もあり, 損出の危険をさけるため過大な利益の期待はしないとの投資家心理を反映している.
この評価関数\(J\)と\((2)式\)を用いて,「投資の最適化問題」を 制約条件 \(0 \leq x_1, 0 \leq x_2,x_1+x_2=w\) のもとに確率変数
\(J(S)= S - \alpha S^2\)
の期待値(平均値)
\( E(J(S))= E\{J(L_1 x_1 + L_2 x_2)\} \qquad (4) \)
を最大化する問題として扱う.
\((3)\)式から\((4)\)式は
\( E(J(S))= E\{ S - \alpha S^2 \} = E\{ S \} - \alpha E\{ S^2 \} \qquad (5) \)
と\(S\)の分散
\( V(S) = E\{ (S-E\{S\})^2 \} \\ = E\{ S^2-S\cdot E\{S\}-\{S\}\cdot S +E\{S\}^2 \} \\ = E\{ S^2 \} -2 E\{S\} ^2 + E\{ E\{S\})^2 \} \\ = E\{ S^2 \} -2 E\{S\} ^2 + E\{S\}^2 \\ = E\{ S^2 \} - E\{S\} ^2 \qquad (6) \)
を用いて
\(
E(J(S))= E\{ S - \alpha S^2 \}
= E\{ S \} - \alpha ( E\{S\} ^2 + V(S) )
\qquad (7)
\)
で与えられる.
\((2)\) 式から
\( E\{S\} = l_1 x_1 + l_2 x_2 ,\quad l_1 = E\{L_1\},l_2 = E\{L_2\} \qquad (8) \)
さらに\(L_1\),\(L_2\) のそれぞれ分散
\( \sigma_1 = V(L_1) = E\{L_1^2\} - E\{L_1\}^2 = E\{L_1^2\} -l_1^2 \\ \sigma_2 = V(L_2) = E\{L_2^2\} - E\{L_2\}^2 = E\{L_2^2\} -l_2^2 \qquad (9) \)
及びこれらの共分散
\( \sigma_{12} = E\{( L_1-E\{L_1\} ) \cdot ( L_2-E\{L_2\} ) \} \\ = E\{L_1L_2\} - E\{L_1\}E\{L_2\} \\ = E\{L_1L_2\} -l_1l_2 \\ \sigma_{21} = E\{( L_2-E\{L_2\} ) \cdot ( L_1-E\{L_1\} ) \} \\ = E\{L_2L_1\} - E\{L_1\}E\{L_2\} \\ = E\{L_2L_1\} -l_2l_1 \qquad (10) \)
と \( \sigma_{12} = \sigma_{21} \) を用いると
\( V(S) =E\{ (L_1 x_1 + L_2 x_2)^2 \} - (l_1 x_1 + l_2 x_2) ^2 \\ =E\{ (L_1 x_1) ^2 + L_1 L_2 x_1 x_2 + L_2 L_1 x_2 x_1 + (L_2x_2) ^2\} - (l_1^2 x_1^2 + 2l_1l_2 x_1x_2+ l_2^2 x_2^2) \\ = ( E\{ L_1 ^2 \} - l_1^2 ) x_1^2 + ( E\{ L_2 ^2 \} - l_2^2 ) x_2^2 +(E\{L_1 L_2 \} - l_1l_2) x_1 x_2 + ( E\{L_2 L_1 \} -l_2l_1) x_2 x_1 \\ = \sigma_1 x_1^2 + 2 \sigma_{12}x_1x_2 + \sigma_2 x_2^2 \qquad (11) \)
\((7),(8),(11)\)式から
\( E(J(S))= E\{ S \} - \alpha ( E\{S\} ^2 + V(S) \} \\ =l_1 x_1 + l_2 x_2 - \alpha ( (l_1 x_1 + l_2 x_2)^2 + \sigma_1 x_1^2 + 2 \sigma_{12}x_1x_2 + \sigma_2 x_2^2 ) \\ =l_1 x_1 + l_2 x_2 - \alpha ( (l_1^2 + \sigma_1)x_1^2 + (l_2^2 + \sigma_2)x_2^2 + 2(l_1l_2+ \sigma_{12})x_1x_2) \qquad (12) \)
結局,問題は1次等式制約条件
\(0 \leq x_1, 0 \leq x_2,x_1+x_2=w \qquad (1)\)
のもとに\(x_1,x_2\)についての2次式である評価式\((12)\)を最大化する問題に帰着する.
この場合は,変数は\(x_1,x_2\)の2個だけであり,\((1)\)から
\(x_2=w-x_1\)
とおけば,\((12)\)式は\(x_1\)だけの 2次式となり,これの制約条件 \(0 \leq x_1 \leq w \) の下の最大化問題になり,容易に解ける.
しかしながら一般の\(n\)個の 変数 \( x_1,x_2 \cdots,x_n \)
についての 等式制約条件
\( f(x_1,x_2 \cdots,x_n) = c \)
の下での評価関数
\( J(x_1,x_2 \cdots,x_n) \)
の最大化・最小化問題は解くのは容易ではなく,勾配法その他,種々な解法が研究されている. 特に評価式が\((12)\)式のように2次式で与えられる問題は2次計画問題と呼ばれるが, 制約条件式や評価式が非線形関数で記述される場合は,非線形計画問題に分類される. [https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%9E%E7%B7%9A%E5%BD%A2%E8%A8%88%E7%94%BB%E6%B3%95#:~:text=%E9%9D%9E%E7%B7%9A%E5%BD%A2%E8%A8%88%E7%94%BB%E6%B3%95%EF%BC%88%E3%81%B2%E3%81%9B%E3%82%93,%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%82%8B%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%BB%E3%82%B9%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82
非線形計画法には] 種々な解法がある.