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目次

論理学と文章

 思考のための文章も、人を説得するための文章も、公式の文章も、名文である前に、論理的に正しい表現をしていなくてはならない。

論理学の必要性

 論理について知るには、論理学を学ばなければならない。このスクールのコースに論理学の科目があるので、それで勉強しなければいけないのだが、一般の人は殆ど論理学を知らない。しかし、多くの人は論理的に間違った文章は滅多に書かない。むしろ政治家や財界の大物や著名な学者などの発言を文章にしたものは論理的に重要な間違いが多い。即ち巧妙な詭弁が多いのである。逆の見方をすると、詭弁がうまくないと偉くなれないのかもしれない。

 人を説得するのではなく、恐れを抱かせて屈服させるには、論理的な発言より、獅子の吼え声のような言い方の方がいいのだろう。例えばある球団のワンマン経営者の行動を非難した部下に対して、「彼は悪質なデマゴギーである。(だから私への非難は全て嘘である)」と発言した。しかしその経営者が事実と異なることを言っていることはTVで報道されているので(相矛盾することを2回カメラの前で発言した)、部下はいつもデマを言いふらしているわけではない。

論理的文章のルール

 上の例から言える、論理学の簡単なルールがある。

  • ルール1: A であり、Aでない、という矛盾を言ったり書いたりしてはいけない

その経営者の場合、A=「彼と会っていない」 と not A=「彼と会った」が矛盾するのである。

  • ルール2: 「すべて」と「ある」を混同してはいけない

これは論理学のうちの述語論理と言う分野の基本である。部下はデマを言ったことはあるかもしれないが、彼の言うことが全てデマというわけではない。

  • ルール3: 証明できない無定義な言葉をやたら使ってはけない

「悪質な」という言葉がそうである。これは相手を罵る言葉ではあっても、自己の正当性を知らしめるためには適当でない言葉である。また次のような詭弁もある。

  • ルール4: 「もしAならBである。よってBである。」という論法

例えば、「もしそれが本当なら大変なことである。企業倫理が厳しく問われる問題である。」とうような言い方。その時点では本当かどうか分かっていないので、その言い方は偉そうだが何も言っていないのと同じである。仮定を含んだ言い方から結論を言ってはいけない。この変形として次のような、ある国の総理の言い方がある。「(消費税引き上げについて)国会内で十分議論していただきたい。そして12月末までに引き上げ幅、引き上げ時期について法制化したい。」 「議論した結果引き上げが妥当だということになれば」という仮定が隠されており、いきなり引き上げのプロセスの提案になっている。

  • ルール5: 誰でもが急を要すると納得する前提を述べることで、必ずしも直接的な関連があるとは限らない問題の結論を、自己の思うがままに通そうとするような言い方

例えば、「大震災によって被災地の人々は肉親を失い、家を失い悲惨な状況にある。従って国会内で各派が争っているときではなく、消費税引き上げは早く決めなければいけない」というような、言い方。これはかつて日本で青年将校達が、「東北の農村は惨めな状況にある」という理由で、クーデターを起こそうとしたときと似ている。東北の農村が貧しいのは他に理由があるかもしれないし、その処方箋は別のものかもしれないときに、時の首相を殺してみても解決するものではない(解決するときもあるかもしれないが)。

詭弁を見抜く

 また第4章でも挙げた「詭弁」について、特に論理的考察の部分が参考になる。ここには論理的に間違った、いわゆる詭弁という文がたくさん紹介されている。それらは新聞などでよく目にするものであり、いかに多くの人が詭弁に振り回されているかが分かる。人の詭弁を見抜き、自分もそのような詭弁を書いたり弁じたりしないように、各詭弁の形をよく学習して欲しい。


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