物理/物理学とは何か

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物理物理学とは何か

目次

解説

物理学の本(Text books of physics)

(注)上記2冊の本は、編集半ばであり重要でも記載のない項目が相当ある。そこで本テキストでは重要事項の多くは説明する。
なお、英文では次の本を参照のここと。

物理学とは何か(What is physics)

・物質の構造を探究し,微視的および巨視的な自然現象を支配する法則を,物質の構成要素間の相互作用として捉え探究する自然科学の最も基礎的な分野(新辞林 三省堂)。
・自然界の(主に無機的)現象を量的に把握し、観察と実験により、その現象を支配する基本法則をあきらかにすること。(朝永 振一郎;物理学とは何だろうか〈上〉 (岩波新書) より)

物理学の特徴(Features of physics)

自然界の現象を量的にとらえる

下記のガリレオの項を参照のこと。

数学が大きな役割を果たす

自然という書物は、数学という言葉で書かれている(ガリレオ・ガリレイの言葉)。

(注)自然界の現象を量的にとらえると、その法則が数式を利用して正確・簡潔に記述できるため、冒頭のガリレオによる有名な言葉が残された。

理論の正否をきめるのは実験

どんなに理論が美しくても、実験結果と合わないものは否定される。

古典物理学の誕生の概観

天体の運動

天動説

私たちが太陽や夜空の星たちをみると、東の空から西の空へ動き、毎日一周するように見える。
そこで古代、人々は地球は宇宙の中心にあり、その周りを太陽や星星が一日一回、回転すると考えた。 これを天動説という。
また多くの星(恒星とよばぶ)は、同じ時刻に見える場所が、規則的に移動し、同じ季節になると、元の場所に戻ること、
少数の星(惑星という)は、同じ時刻に見える位置が不規則に変わること、に気づいた。

2世紀にプトレマイオスは、肉眼で観察できる恒星と惑星の動きを正確に説明・予測できる天動説を体系的にまとめた。

 天動説のほころびと地動説 

プトレマイオスの天動説は長い間信じられてきた。
15世紀頃、商工業が発展し大航海時代になり、方位磁石と星図による航海が行われるようになると、プトレマイオスによる星やとりわけ惑星の位置の誤差が問題になってきた。
また、一年の長さの食い違いも問題であった。
これを正そうとしてコペルニクスは地動説(地球も星達も、太陽を中心にして円運動)を唱えた。

 

火星の不思議な運動;大きな逆行の謎

どちらの説によっても、惑星の運航、特に火星の運航の説明は困難で、謎であった。

ティコブラーエとケプラーの挑戦

天動説が正しいか地動説が正しいか、火星を始め惑星はなぜ複雑な運動をするのか?。
ティコ・ブラーエは正確な天体運動の観測こそが、これらを解明する鍵であると認識した。
自ら天文台をつくり、当時としては最高の精度の観測を約20年間、毎晩続けた。
所員としてむかえられたケプラーは、地動説を信じていた。彼は、ティコ・ブラーエの観測データをもとに、太陽の周りの火星の運行の仕方を明らかにしようとした。
多くの失敗の末、
太陽の位置=星座のどこにいるか、と、太陽と火星の間の角度の観測データから、火星軌道を求める
ユークリッド幾何学を利用した天才的方法を思いつき、火星の運動の謎を解いた。
この方法については、朝永 振一郎;物理学とは何だろうか〈上〉岩波新書 に優れた解説がある。
さらに他の惑星のデータも解析し、惑星の3つの運動法則を発見した。

 惑星運動に関するケプラーの法則 

この法則により惑星の位置は正確に予測できるようになった。

地上の物体の運動

古代の運動の認識

日々の生活や労働の中で、重いものは軽いものより動かすのに力がいるなど力と運動にかんする認識が芽生え、少ない力で重いものを持ち上げる梃子は紀元前5,000年頃のエジプトのピラミッド建設で使われていた。

アリストテレス(ギリシア・BC384~322頃)の運動論

人や動物が物体に力を加えると荷物は動く。強い力を加えれば早く動き、力を加えるのを止めれば、動かなくなる。
他方、物体は、力を加えなくても、落下や上昇運動を行う。重いものは落下し、その速さは落ちるにつれて早くなる。重いものほど早くおちる。
炎など軽いものは上に昇っていく。
アリストテレスはこのような多くの運動を注意深く観察し、運動について思索し、次のような運動論を唱えた。
①物の本性は静止であり,運動している物体には絶えず力が働いている。
②運動には次の2つの種類がある。
  ⅰ)自然運動;外部からの力でなく、物体の内部にある力で生じる運動。
物質には本来の居場所が決まっており、そこに向かおうとする力が内在している。
例えば石の居場所は地球の中心。そこに向かおうとする内在力で落ち続ける。
あるべき場所が近くなるほど、この力が強くなり、石の落下は早くなっていく。
重いものほど、内在力が大きいので早く落ちる。
  ⅱ)強制運動;外部から力が加えられて起こる運動。強い力を加えるほど、早く動く。力を加えるのをやめればこの運動はなくなる。

 ガリレオによる地上の物体の運動法則の発見と数学 

ガリレオは、アリストテレスの運動論に疑問をもった。

落体の運動法則

(1)物体の落下の速さは重さによらず一定である
重い物体ほど早く落ちると仮定すると、次のように推論して、矛盾が起こることを示した。
   重いものAと軽いものBを結びつけたABの落下速度$V_{AB}$は,どうなるか?
   ⅰ)$V_{AB}> V_A>V_B$  ∵ABはAより重たいから。
   ⅱ)$V_A> V_{AB}>V_B$ ∵BはAより遅く落ちるので、一緒に結んだ状態ではAの落下速度を遅くする作用をする。$V_A> V_{AB}$。
$\qquad$ $\quad$ Aと結んだBは早く落ちようとするAから引っ張られるので、B単独の速度より早くなる。$ V_{AB}>V_B$

実験でこの正しさを確かめた;速度を小さくして空気抵抗の影響を小さくするため、斜面上で重い球と軽い球を同時に落下させ、その速さが同じことを、確かめた。
(2)落下速度は落下時間に比例して増大(等加速度運動) 
さらに、物体が落下するとき、その速さがどのように変化するかに関心を持った。
速度を数量で表しその変化の仕方を明らかにしようとした。このことに関心をもったのはガリレオが初めてであった。
自然は単純であるという信念に基づき、
まず落下速度は落下距離に比例するという仮説をたてた。この仮説から、数学を使って、落下時間と落下距離の関係を導こうとしたが、いくら時間が経過しても落下しないという結果が得られ、この仮説をあきらめた。
次に落下速度は、時間に比例して増大するという仮説をたてた。
当時の技術水準では速度を計測することは出来なかった。そこで、この仮説から、数学を使って落下距離は時間の2次関数で表せることを示した。
この式から、等時間間隔毎の落下距離を算出。斜面上のこれらの位置に鈴をつけ、転がり落ちる球が、この位置を通過するとき鈴がなるようにした。水時計で時間をはかり、実際に等間隔で鈴がなることを確かめた。
斜面の角度を急にして、落下速度をはやくしても、落下速度は、時間に比例して増大することが実験で確かめら、仮説の正しさが検証された。

こうして、落体の運動法則が明らかにされた。

微積分学の端著を開く

この探求にさいして、時々刻々増加する速度を扱うことになり、瞬間速度の概念を考案した。
一様に増加する瞬間速度のグラフを書き、その面積が位置であることを示した。これらは微積分学の端著を開くものであった。

慣性の法則 

アリストテレスの唱えた強制運動論(力を加えなければ運動は止まる)にも疑問を持った。
振り子の長さを段々長くしていき無限にしたときの振り子運動の考察から、物体は力を加えなければ、同じ速さで運動し続けるという、慣性法則を発見した。

投射体の運動

落体の法則と慣性法則を使って投射体の運動(物体を斜めに投げ上げるときの運動)を明らかにした。

ガリレオの相対性原理  

一定の速度で移動している船のうえで、物体を落としても、船に乗っている人がみれば、真下におちる。
地上での落下運動とおなじこと。
これを落下の運動法則と慣性法則から、論証し、実験で確かめた。
これより力学の法則は、一定の速度で動いている観測系で観測するかぎり、同一であるという仮説(ガリレオの相対性原理)を唱え、地動説を擁護した。

ニュートン力学(古典力学)の誕生;天体と地上の物体の運動の統一 

・ニュートンは、地上の物体の運動も、惑星(天体の物体)の運動も、 同じ法則にしたがっていると考えた。
・先人の発見した運動の法則のなかから根本的なものを選びだし、
自ら発見した運動法則を付け加えて、運動の3法則に纏めた。
・さらにケプラーの法則と運動の3法則から物体間に働く万有引力の法則を得た。
・多くの地上の物体の運動と天体の運行を、これら4つの法則から厳密に導き、本にした。

 

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