物理/速度・加速度・ベクトル
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力学(ニュートン力学あるいは古典力学)とは何か(What is classical mechanics?)。
物体の運動の基本法則を明らかにする、物理学の一分野です。
この理論の根幹は、力の法則(3章)と力と運動の関係を与える運動法則(4章)です。
次の解説も参考にして下さい。
無料で公開された力学にかんする高校程度の教科書には下記のものがあるがまだ未完成である。
質点の運動の表し方
高校では主に質点(大きさがなく重さだけがある点状の物体)の運動を学び、
その法則を明らかにします。
なぜ質点の運動から、学ぶのか
大きさのある物体は、物体の箇所によって位置がことなる。また大きさのある物体は変形する。
このため、その位置を表すのが難しい。
さらに運動も平行移動だけでなく回転などを行い複雑となる。
質点は、大きさのない点なので位置は明確で、その場所を簡単に表示できる。しかも変形も回転もない。
このため、その取り扱いは、大きさのある物体に比べて、格段に、易しくなる。
しかし、重さがあって大きさのない、仮想の物質である質点の運動法則など何の役にも立たないと思う人もいるでしょう。
ところが、応用範囲は結構広いのです。
例えば、地球の公転運動(太陽の周りの回転)は、地球を質点とみなして解析してもほぼ正しい。
さらに、大きさを考慮して解析しなければならない物体の運動も、質点の運動法則を利用して解明できる。
これには高校数学より高度な数学を必要とする。
そこで、大きさのある物体の運動は主に、大学で学ぶ。
質点の運動を数式で表すにはどうするか?
我々が住む世界は、3次元 の空間 であり、縦、横、高さという3つの方向がある。この空間には距離という概念がある。
。また時間のいう時の経過が存在する。この世界の物質は運動していて、その場所を時間とともに変える。
1章の4節で紹介したように近代の力学は、
運動を質点の位置の時間変化と考え、質点の位置や速度を正確に測定し、それらの変化の法則を明らかにして、数式で正確にあらわすという方法で発展した。
まず、時間と距離の測り方から紹介する。
時間と距離の測り方
時間は時計で正確に測れる。
詳しくはウィキペディア(時間) の4.1 ニュートン力学での時間
を参照のこと。
また距離(あるいは長さ)は、距離の原器を使って正確に測れる。
詳しくは、
空間の点の位置の表現
位置ベクトルとベクトル
3次元空間の適当な点Oをとる。原点と呼ぶ。
空間の任意の点Pに対し原点Oを始点とし、点Pを終点にする矢印を引く。
この矢印を位置ベクトルといい、→OPで表現する。
このベクトルの終点で点Pの位置は表現出来るので、点Pと同一視できる。
今後、点の位置は、その位置ベクトルで表示する。
しかし、平面の場合でさえ、位置ベクトルを正確に図示することはできず、手間も大変である。
点が移動しているときは、その速度なども、図から概略値を読み取るしかない。
3次元空間では、平面である紙の上には、正確に書くことは出来ない。
物理学では、位置ベクトル以外にも、速度や、加速度、力などの、向きと大きさを持つ量が沢山登場する。 これらも図示する方法しかないと、正確な議論は多くの場合出来なくなってしまう。
そこでベクトル→OPをいくつかの数字の組で表わす座標表示という方法が考えだされた。
(注)3次元ベクトルの数学的定義
3次元の空間における向きをもった線分を、その始点Pと終点Qを用いて→PQで表す。
2つの向き付線分が、平行移動で重ね合わせが出来るとき、同一であるとみなした時、向き付線分を、3次元ベクトルという。
数学であつかうベクトルは、始点がどこにあっても、向きと大きさが、同じならば、同じものと定義している事に注意の事。
ベクトルの座標表示
図ではなく数字を使ってベクトルを表せるなら、運動を調べるとき、数学の計算方法が利用でき、点の位置やその運動速度なども正確に効率よく、求められる。
最も広く利用されている方法を説明しよう。
空間に定めた原点Oをとおる、縦と横と高さ方向の直交する3つの直線を引く。
各直線上の原点から単位の距離にある点(原点の両側にある)の一方に+1を、他方にー1を振る。他の点にも原点からの距離に+-符合をつけて、割り振ると3本の数直線がが得られる。
縦方向の数直線をx軸、横方向の数直線をy軸、高さ方向の数直線をz軸と呼ぶ。
任意の3次元ベクトルは、これ等の数直線を利用して、以下のようにして、3つの実数の組で表示できる。
・ベクトルを平行移動して、始点を空間の原点に重ねる。このベクトルを
任意の点Pの位置は、この点からx軸に下ろした垂線の足の数値Px,
y軸に下ろした垂線の足の数値Py,z軸に下ろした垂線の足の数値Pzを、この順に並べた,3つの実数の組(Px,Py,Pz)であらわされる。右図参照。
(Px,Py,Pz)を点Pの座標という。
x軸、y軸、z軸は、空間の点の座標を決めるときに使われるので座標軸と呼ばれる。
さらに、3本の軸は直交するようにとってあるので、以後は直交座標、直交座標軸と呼ぶ。
直交座標を与えれば、その点の位置が唯一つ、正確に、分かるので、点とその座標をまとめて、P(Px,Py,Pz)と書くことがある。
詳しくは、ウィキペディア(直交座標系)
を参照のこと。
色々な座標
直交座標のように
運動の種類に応じて、解析しやすいように色々な座標が考案されている。
良く使われる座標は直交座標以外では極座標である。
極座標については、ウィキペディア(極座標系)
その他の座標系も含む色々な座標系についてはウィキペディア(座標)
を参照のこと。
(注)座標系をつかい、数字の計算で図形等の性質を調べることは16世紀にデカルトが見つけた偉大な方法である。この方法が、運動を法則を解明する時に、不可欠の役割を果たしている。
物理で利用するベクトルの演算についての注意
数学で扱うベクトルは、文字通り、大きさと方向・向きの等しいベクトルは皆同じものとみなし、平行移動したり、ベクトル同士の演算も自由にできる。自由ベクトルと呼ばれる。
ところが位置ベクトルは始点を原点に固定して考えるので、数学で習うベクトルと違う。
力も大きさと方向・向きを持つのでベクトルだが、作用する場所が変われば、その効果もまったく異なる。すなわち、ベクトルの始点がどこにあるかが、重要なベクトルである。そこで平行移動や始点の異なるベクトルの和は許さない。このようなベクトルは束縛ベクトルという。物理に現れるベクトルは束縛ベクトルであることが良く起こるので、物理的意味を考えて、数学を利用する必要がある。
自由ベクトルについて詳しくない方は次の文献をご覧ください。
変位ベクトル
質点が位置をP1 から P2 に移動したとき、その変位を、始点が P1で 終点がP2のベクトル →P1P2で表し、変位ベクトルという。
変位は、始点から終点をみたときの向き・方向と距離で決まり、始点の位置自体はどこにあっても、同じである。変位ベクトルは、自由ベクトルである。
ある質点の位置ベクトルを→OPとする。
この質点を点Qまで動かすと変位ベクトルは→PQである。
そのベクトル和を求めると、
→OP+→PQ=→OQとなり、移動後の質点の位置ベクトルになっている。
このように、ベクトル演算を用いると、質点の位置を求めることができる。
質点の位置ベクトルの時間関数表示
質点の時刻tの位置を位置ベクトル→r(t)であらわす。
必要に応じて、適切な座標系を用いて座標表示する。例えば直交座標系xyzでは、(x(t),y(t),z(t))とあらわす。
運動が分かっているときは、→r(t)やx(t),y(t),z(t))の具体的形を定められる。
運動が未知で、運動方程式を解いて求めねばならない時は、未知関数x(t),y(t),z(t))を変数とする運動方程式をといて、x(t),y(t),z(t))を具体的に求めることができる。今後学ぶ。
質点の速度と加速度
空間に原点を決め、質点の位置Pを時間の関数として→OP=→r(t)と表わせば、質点の動き方がわかるので、その速度や加速度(速度の増加の仕方)も計算できる。
位置ベクトルは必要ならば座標系を定め座標表示しておく。
例えば、xyz直交座標系ならば、→OP=(x(t),y(t),z(t)),
極座標系ならば→OP=(r(t),θ(t),ϕ(t))という形で表せる。
速度
質点の速度は、質点の位置が単位時間あたり幾ら変化するかを表わす。向きと大きさをもつのでベクトルである。
しかし2つの速度のベクトル和は、限定されたときしか意味を持たない。例えば異なる質点の速度のベクトル和を計算しても物理的な意味はない。ベクトル和を用いて良いか、物理的に良く考えて、判断する必要がある。
平均速度
任意の時刻tにおける質点の位置が→r(t)で表される時、
時刻tから時刻s(>t)の間の平均の速度は、 (→r(s)−→r(t))/(s−t) で定義する。平均速度はベクトルである。
ベクトル→r(t) を直交座標系xyzにかんして座標表示し、(x(t),y(t),z(t)) と表すと、
上記の平均の速度は、((x(s)−x(t))/(s−t),(y(s)−y(t))/(s−t),(z(s)−z(t))/(s−t)) となる。
瞬間速度、略して速度とベクトル値関数の微分
落下する物体は時々刻々速さを増し、一定の速さに留まることはない。
そのような運動の速度を正確にとらえようとして、ガリレオは、平均速度をとる時間間隔s-tを無限に小さくした時の、平均速度を考えた(微分学の始まり)。
これを瞬間速度という。物理学では、単に速度と言えば、瞬間速度のことをいう。
高校の数学で学ぶ微分を、ベクトルに値をとる関数に拡張すると、時刻tの速度→v(t)は、
→v(t)=d→r(t)dt=lims→t(→r(s)−→r(t))/(s−t)
で表せる。
ベクトル→r(t) をxyz直交座標の成分で表示(→r(t)=(x(t),y(t),z(t)))すると、上記の速度は、
→v(t)=lims→t(→r(s)−→r(t))/(s−t)
=lims→t(x(s)−x(t))/(s−t),(y(s)−y(t))/(s−t),(z(s)−z(t))/(s−t))
=(lims→t(x(s)−x(t))/(s−t),lims→t(y(s)−y(t))/(s−t),lims→t(z(s)−z(t))/(s−t))
=(dx(t)dt,dy(t)dt,dz(t)dt)
と表せる。
速度については、下記の記事も参考のこと。
ウィキペディア(速度)
等速円運動の速度
質点がxy 平面上の原点 O を中心とする半径 rの円上を等速vで運動するとする。
質点の角速度ωは、ω=v/r(ラジアン/単位時間)である。
時刻tの質点の位置ベクトル→r(t)のx,y座標を(x(t), y(t))、極座標を(r、θ(t))と書くと、
x(t)=rcos(θ(t)),y(t)=rsin(θ(t))
θ(t)=ωt+θ0
ここでθ0 は、時刻0における質点の位相角である。
これらを時間tで微分すると、速度のx成分とy成分
˙x(t)=−rsin(θ(t))˙θ(t)
˙y(t)=rcos(θ(t))˙θ(t)
が得られる。
但し、˙x(t) は、関数x(t) を時間変数tで微分したことを意味する記法で、
˙x(t)=dx(t)dt ということである。
˙θ(t)=ωなので
速度ベクトルは→v(t)=(˙x(t),˙y(t))=(−rsin(θ(t))ω,rcos(θ(t))ω),
このベクトルは、質点の位置ベクトル→r(t)=(x(t),y(t))=(rcos(θ(t)),rsin(θ(t)))
と直交している。
何故なら、→r(t)の傾きはtan(θ(t))、→v(t)の傾きは−1tan(θ(t))なので、傾きの積が-1となるからである。
関連事項については次の記事を参照のこと。
ウィキペディア(円運動)
加速度
質点の加速度は、速度が単位時間あたり幾ら変化するかを表わす、向きと大きさをもつベクトルである。
速度と同じように平均加速度と瞬間加速度が考えられるが、単に加速度といえば瞬間加速度のことである。
平均加速度
任意の時刻tにおける質点の速度が→v(t)=˙→r(t)で表される時、
時刻tから時刻s(>t)の間の平均の加速度は、
(→v(s)−→v(t))/(s−t)=(˙→r(s)−˙→r(t))/(s−t)
で定義する。平均加速度はベクトルである。
瞬間加速度、略して加速度
落下する物体は、速度をますが、その増し方も絶えず増加する。
そのような運動の速度の増加の仕方を正確にとらえるためには、平均加速度をとる時間間隔s-tを無限に小さくした時の、平均加速度を考える必要がある。
これを瞬間加速度というが、物理学では、単に加速度と言えば、瞬間加速度のことをいう。
数式を用いると、時刻tの加速度→α(t)は、
→α(t)=d→v(t)/dt
→v(t)=d→r(t)/dtなので、
→α(t)=d2→r(t)/dt2 と書ける。
加速度については、下記の記事も参照のこと。
ウィキペディア(加速度)
等速円運動の加速度
質点が xy 平面上で原点 O を中心とする半径 r の円上を等速で運動するとき、加速度はどうなるか?
速度ベクトルは→v(t)=(˙x(t),˙y(t))=(−rsin(θ(t))ω,rcos(θ(t))ω) であった。すると加速度は→α(t)=d→v(t)dt=−rω2(cos(θ(t)),sin(θ(t)))=v2r(−→r(t)r) となる。すなわち大きさがv2rで向きは、質点の位置から運動の中心である原点Oに向いた、ベクトルである。
以下の記事も参考にしてください。
ウィキペディア(円運動)
時間、長さ、速度、加速度の単位
色々な単位系があるが、通常はSI国際単位系が用いられる。
この単位系では時間や長さ等、基本的なものを基本単位として定める。
その他の速度や加速度、力等の単位は、それぞれの定義や物理法則を利用して、基本単位を用いて組み立てる。SI組み立て単位と呼ばれる。
例えば、速度の定義は、
→v(t)=d→r(t)dt=lims→t(→r(s)−→r(t))/(s−t)
なので、速度の単位は距離の単位m(メートル)を時間の単位s(秒)で割った、m/s である。
加速度の単位は、その定義が
→α(t)=d→v(t)/dt
なので、m/s2 である。