物理/付録1 ベクトル積

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ベクトル積の命題と証明 

本節での全ての命題で、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-121-QINUは3次元ベクトル
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-122-QINUを実数とする。

命題1. UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-123-QINU を, UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-124-QINUと垂直な成分UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-125-QINU と,平行な成分UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-126-QINU の和に分解するとき、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-127-QINU
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-128-QINU
証明;ベクトル積の定義から、容易に示せる。
2つのベクトルの作る平行四辺形の面積と方向・向きを考えれば良い。

命題2.UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-129-QINU
証明;2つのベクトルを入れ替えても、それらが作る平行四辺形の面積は変わらず、この四辺形に直交する直線の方向も変わらない。
しかし、ベクトル積の向きは、逆向きになる。
ベクトル積の定義から、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-130-QINU が示せた。

命題3
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-131-QINU 
証明;実数UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-132-QINU が正、零、負の場合に分けて考える。
いずれの場合にも, ベクトル積の定義とベクトルと実数の積の性質から、容易に証明できる。

命題4.UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-133-QINU 
証明;
この証明には少し工夫が必要である。
ベクトル積の命題の中でも、もっとも大切なものなので、詳しく説明しよう。
① UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-134-QINU とUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-135-QINU が直交する場合。図参照のこと
・議論をやさしくするため、ベクトルを、空間の原点UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-136-QINU を始点とする有向線分で代表させる。
・UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-137-QINU と直交しUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-138-QINU を通る平面をUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-139-QINUとする。
・仮定よりUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-140-QINUは、ともに平面UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-141-QINU上のベクトルである。
・UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-142-QINUも、
ベクトル積の定義により、共にUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-143-QINU と直交するので、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-144-QINU上のベクトルである。
これら四つのベクトルはすべて平面UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-145-QINU上にあるので、今後の議論はこの平面上で進める。
 ⅰ)UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-146-QINU の張る平行四辺形は,
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-147-QINUの張る平行四辺形を、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-148-QINU倍し,原点周りに90度回転したものになることを、示そう。

・UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-149-QINUは、ベクトル積の定義から、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-150-QINU と直交する。
そのため、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-151-QINU を平面UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-152-QINU上で、原点まわりに、90度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致する。
・UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-153-QINUも、同様に考え、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-154-QINU を平面UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-155-QINU上で、原点まわりに、90度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致することが分かる。
・どちら周りの回転になるかは、ベクトル積の定義によって決まるが、
後者の回転の向きが、前者の回転の向きと一致することが分かる。
・UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-156-QINU の大きさは、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-157-QINU なので、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-158-QINU の大きさのUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-159-QINU倍になる。
同様に、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-160-QINU の大きさは、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-161-QINU の大きさのUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-162-QINU倍になる。
・以上の結果より、所望の結果は示された。

 ⅱ)UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-163-QINUを示そう。
・ ⅰ)と同じ議論により、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-164-QINUはUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-165-QINUの張る平行四辺形の対角線を、原点周りに90度、同じ向きに回転させ、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-166-QINU倍させたものであることが分かる。
・すると、ⅰ)で示したことから、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-167-QINUは
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-168-QINU の張る平行四辺形の対角線UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-169-QINU に等しいことが分かる。
・以上で①が示せた。

② 一般の場合。
命題1より、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-170-QINU をUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-171-QINUと垂直な成分を表すとすると、 UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-172-QINU(1)
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-173-QINUなので、(1)式は、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-174-QINU
①より、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-175-QINU UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-176-QINU 命題4の証明終わり。
 

命題4の系  
   UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-177-QINU
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-178-QINU
証明;
命題2より、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-179-QINU 命題3から
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-180-QINU 命題4より、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-181-QINU
再び命題2より、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-182-QINU前半の証明終わり
命題2より、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-183-QINU
再び命題2より、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-184-QINU UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-185-QINU証明終わり。
  


命題5.UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-186-QINU を
それぞれ大きさ(長さ)1で互いに直交し、右手系をなす、ベクトル(右手系をなす正規直交基底)とする。

この時、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-187-QINU
証明;ベクトル積とUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-188-QINU の定義から明らかである。

命題6.ベクトルUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-189-QINUを,命題5で用いた基底UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-190-QINU で決まる座標の座標成分で表示しておく。
するとUNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-191-QINU 
証明;UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-192-QINU,
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-193-QINUと表せるので、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-194-QINU 性質3の系から
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-195-QINU UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-196-QINU (1)

式(1)の第1項 UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-197-QINU に UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-198-QINU を代入して、性質3の系を使って変形すると、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-199-QINU UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-200-QINU (2)
性質4と性質5を使うと、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-201-QINU 。
同様の計算を行うと、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-202-QINU

UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-203-QINU

式(2)にこれらを代入して、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-204-QINU UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-205-QINU (3)

式(1)の第2項、第3項も同様に計算すると、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-206-QINU UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-207-QINU (4)

UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-208-QINU UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-209-QINU (5)

式(3),(4),(5) を、式 (1)に代入すると、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-210-QINU
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-211-QINU
性質6の証明終わり。

性質7の証明;
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-212-QINUを証明しよう。
残りも、同様に証明出来るので各自試みてください。
右手系をなす一つの直交座標を決める。
3つのベクトルを、この座標の成分で表示して、性質6と内積の性質を使えば、左右が等しいことが証明できる。
概略をスケッチしよう。
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-213-QINU 
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-214-QINUも、これと同じように計算する。
これら両式を整頓すると、同じものであることが分かる。


命題7.
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-215-QINU
証明
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-216-QINUを証明しよう。
残りも、同様に証明出来るので各自試みてください。
右手系をなす一つの直交座標を決める。
3つのベクトルを、この座標の成分で表示して、性質6と内積の性質を使えば、左右が等しいことが証明できる。
概略をスケッチしよう。
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-217-QINU 
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-218-QINUも、これと同じように計算する。
これら両式を整頓すると、同じものであることが分かる。
性質7の証明終わり。

命題8. UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-219-QINU と UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-220-QINUを,UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-221-QINUにかんして微分可能な、ベクトルに値をとる関数とする。すると、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-222-QINU は、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-223-QINUにかんして微分可能で、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-224-QINU 証明
すでにこのテキストで紹介した、ベクトル値関数の微分の定義
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-225-QINU UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-226-QINU (1)  
を用いて証明する。
この極限が存在し、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-227-QINU
になることを示せば性質8は証明できたことになる。
極限の計算が進むよう、右辺の式の分母は変形しよう。
関数の積の微分公式の証明と同じ技巧を用いる。
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-228-QINU  
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-229-QINU  
ベクトル積の性質3を利用すると、 
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-230-QINU

この式を式(1)の右辺の分子の項に代入し整頓すると
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-231-QINU  
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-232-QINU
ベクトル積の性質4を使い、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-233-QINU
極限の性質を使って、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-234-QINU
式中の極限は、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-235-QINUが、微分可能なので存在し、
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-236-QINU
UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-237-QINU
また、UNIQ16390e0b5ec6e043-MathJax-238-QINU なので、
所望の結果が得られた。性質8の証明終わり。

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