物理/運動の法則の応用2

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目次

解説

この節では複数の質点が集まって作る質点系と、硬くて形を変えない質点系である剛体の運動を、運動法則を用いて解析しよう。

質点系の運動

2個以上の質点が集まって出来ている系を質点系という。
質点系というときは、各質点は密集していても、離れ離れでも良い。互いに固着しようが、自由に動けようが構わない。
すべての物質は、分子の集合と考えたり、細分化して極小部分に分け、それらの集合と考えれば、十分な精度で、質点系とみなすことができる。
そのため質点系の運動の法則を、ニュートンの運動法則から導出すれば、その応用範囲は非常に広い。

質点系の運動と重心

系の任意の2つの質点間には作用・反作用の法則を満たす力が働いていてもよい。
この力を質点系の”内力”という。  
質点系の各質点に外部から力(外力という)が加わる時、この質点系はどんな運動をするだろうか。
質点系の各質点の位置をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-762-QINU、質量をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-763-QINUとし、
質点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-764-QINU に作用する外力をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-765-QINU、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-766-QINU に、他の質点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-767-QINUから作用する内力をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-768-QINUとする(UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-769-QINU)。
すると、各質点に対して、運動の第2法則により、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-770-QINU  UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-771-QINU ここでUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-772-QINU、
各ベクトルを自由ベクトルとみなしてUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-773-QINUについて加え合わせると、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-774-QINUなので、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-775-QINU
が得られる。
質点系の全質量UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-776-QINUと質点系に働く全外力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-777-QINUを用いて書きなおすと、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-778-QINU
質点系の重心UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-779-QINUを UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-780-QINU で定義すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-781-QINU
この式は、力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-782-QINUをうける質量UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-783-QINUの質点の運動方程式と同じである。
以下の解説も参考にしてください。

複雑にみえる運動も重心の運動をみれば簡単である  

体操選手の運動は、跳躍などで空中をまいながら、回転や体の屈伸、ひねりなどを行う。大変複雑で美しい。
しかし、導出した質点系の重心の運動法則から、体の重心の運動は、投射体の運動であり、放物線をえがいて移動することが分かる。
空中に飛び出た瞬間の重心の位置と速度(速さと方向・向き)で、その軌跡は完全に決まってしまうのである。

剛体の運動とつり合い

剛体

剛体(Rigid body)とは、
質点系であって、それらの、どの2質点の間の距離も変わらない,特殊な質点系のことを言う。
どの2質点の間の距離も変わらなければ変形は起こらない。
固くて変形しにくい物体を理想化した概念である。

剛体の運動 

剛体は変形しない質点系なので、その運動は、重心の運動と、重心の周りの回転運動を合成したものになる。
重心の運動は前の節で説明したように、質点の運動と同じように簡単に扱える。
重心の周りの回転運動について解析するには、少し難しい数学が必要になる。

このテキストでは、固定軸の周りの回転運動を中心に、 剛体運動の初歩と釣合の条件について学ぶ。

固定軸のまわりの回転運動 

剛体が、剛体の中を通る固定軸の周りを回転する運動(車輪の回転など)を考える。
応用も考え、回転軸は重心を通らなくてもよいように一般化しておく。
(注)なお、軸が動かないようにするためには軸受が必要である。
工夫しても回転時に軸は軸受から多少の摩擦力を受け、回転にブレーキがかかる。
しかし、これは無視出来るほど小さいと仮定する。
すると軸が受ける力は、軸の変動を防ぎ、固定軸の周りの運動に限定させる作用を持ち、
回転を遅める作用は持たないことになる。

回転運動の表示法 

固定軸まわりの剛体の運動はどのように表示したらよいだろうか。
・剛体の位置を表す変数;回転角
剛体が幾ら回転したか分かるように、剛体の、回転軸上にない一点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-784-QINUに印を付ける。
次に、角度を測る基準線をきめるため、座標系を決めよう。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-785-QINUから固定軸へ垂線をひき、その足を原点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-786-QINUとし,固定軸をz座標とする(静止した)3次元直交座標UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-787-QINUを考える。
剛体が固定軸の周りを回転すると、印UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-788-QINUはxy平面上を、原点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-789-QINUを中心に円を描いて動くことになる。
その位置ベクトルUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-790-QINUがx軸の正方向となす角度UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-791-QINUを、回転角と呼ぶ。図参照。
但し、x軸から反時計回りの角を正にする。
また一回転した後ならば、一回転の角UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-792-QINUを加え、逆周りに一回転した後ならUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-793-QINUを引き、
角度だけでなく回転数も分かるようにする。
回転角が指定されると、点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-794-QINUの位置が決まる。
それだけでなく剛体は変形しないので、剛体のすべての点の位置がきまる。
そこで回転角UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-795-QINUの時間変化UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-796-QINUを明らかにすれば、剛体の回転運動は定まる。
固定軸のまわりの回転運動において回転角の果たし役割は、質点の運動において質点の位置が果たし役割に対応していることが分かる。
・回転の角速度と角加速度
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-797-QINUを時間で微分したUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-798-QINUを回転の角速度と呼ぶ。
直観的には、時刻UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-799-QINUの瞬間の、回転の速さ(回転角の時間に対する変化率)を表す。
さらにもう一回時間微分したUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-800-QINUを回転の角加速度と呼ぶ。

回転力(トルク) 

質点の運動に倣って、剛体に作用する力によって、その位置(=回転角)がどう変化するかの法則を導出したい。
しかし、剛体の回転の場合、ある方向の力は、剛体の回転に全く関係しない。 例えば、回転軸から放射状にでる半直線方向の力は全く回転の変化に寄与しない。
そこで剛体の回転を変化させる力とはなにかという問題から考察する必要が起こる。
質点運動における力の定義(力と運動量の変化の関係)や力と仕事の関係など力の係っている式のなかから、
剛体の回転運動に容易に拡張出来るものを選び、その式から、回転に関する力を求めることを試みる。
力の定義からは、回転運動への拡張を、推測することは難しい。
力と仕事の関係の考察をしてみよう。

力と仕事の関係からの考察 

適当な直交座標系をさだめ、ベクトルは、座標成分で表示する。
質点に、一定の力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-801-QINUを作用させて、x軸方向に変位させる。
質点はこの軸の上でしか動けないように拘束され、摩擦はないと仮定する。
質点の変位ベクトルは一次元の変数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-802-QINUを使ってUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-803-QINUと表せる。
すると力のなす仕事は、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-804-QINUである。 
逆に物体に一定の力を加え、x軸上でUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-805-QINUだけ変位させた時の仕事UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-806-QINUが分かれば、質点を動かした力は
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-807-QINU
で求められる。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-808-QINUは、質点をx軸上で動かすことには全く寄与せず、
x軸に拘束された質点を動かす力は、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-809-QINUなのである。
固定軸まわりの回転もその変位は一次元の変数である回転角度で表わせるので、
これに倣って、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-810-QINU回転した角度 
を、回転にかんする力であると考える。これを回転力と呼ぶ。トルクともいう。

この方針を実行して回転力を具体的に求めよう。

剛体に力を加え微小角動かす時の、力のなす仕事の算出 

図4.1のように剛体の任意の一点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-811-QINUを考える。
z座標の上方からxy平面を見下ろしているので、z座標は点になりUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-812-QINUと書いてある。

図4.1 ☆☆キャプションはココに書いて下さい☆☆

まず一点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-813-QINUに力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-814-QINUが作用して、微小角UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-815-QINUだけ回転したときの
仕事UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-816-QINUを計算し回転力を求めよう。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-817-QINU点から回転軸(z軸)に垂線を下ろし、その足をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-818-QINUとする。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-819-QINUの長さをUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-820-QINU、x軸となす角をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-821-QINU(ラジアン)と置く。
この角度は、
剛体につけた印の位置ベクトルUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-822-QINUがx軸となす回転角UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-823-QINUと
このベクトルとUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-824-QINU(をxy平面に平行移動したベクトル)の間の角の和である。
後者は、剛体なので、運動しても変わらない定数である。そこで、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-825-QINU定数,と書ける。
剛体がz軸の周りを微小角UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-826-QINU回転して、点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-827-QINUが図の点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-828-QINUに移動したとする。
すると角UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-829-QINUはほぼ直角(=UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-830-QINU)でUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-831-QINUの長さUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-832-QINUは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-833-QINU。

UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-834-QINUのx成分とy成分は、図4-1中に示したように、それぞれ、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-835-QINU、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-836-QINU。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-837-QINUを代入すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-838-QINU、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-839-QINU、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-840-QINU
点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-841-QINUに作用する力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-842-QINUが、物体をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-843-QINUだけ動かしたので、
その仕事は、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-844-QINU(内積)。
この右辺を内積の性質を用いて座標成分で表すと、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-845-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-846-QINU

z軸まわりの回転力の導出 

ゆえに、力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-847-QINUのz軸まわりの回転力(トルク)UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-848-QINUはUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-849-QINU に等しい。
これより、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-850-QINUが得られる。
この式と、直線上に拘束された質点の運動における、力と仕事の関係式(  節  項)と対比させると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-851-QINU は、拘束された直線の上を動かすときに、働いた力の成分が対応し、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-852-QINU は、変位量   に対応していることが分かる。

z軸まわりの回転力(トルク)の性質

(1)力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-853-QINUのz軸まわりの回転力は,UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-854-QINUには関係しない。
言いかえるとz軸を固定軸とする剛体にz軸の方向の力を加えても、z軸の周りの回転は起こらない。
(2)剛体の1点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-855-QINUに作用する力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-856-QINUを考える。
点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-857-QINUからz軸に下ろした垂線の足をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-858-QINUと書く。 力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-859-QINUを、, UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-860-QINU方向の成分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-861-QINUと、
z軸まわりの回転によりUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-862-QINUの描く、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-863-QINUを中心とする回転円の(左回りの)接線方向の成分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-864-QINU
および、これら2成分に直交する成分(z軸と平行)
に分解する(図参照)。この時、
・力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-865-QINUのz軸まわりの回転力は、零である。
すなわち、動径方向の力は回転に寄与しない。  
・力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-866-QINUのz軸まわりの回転力は、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-867-QINUのz軸まわりの回転力に等しい。
数式で表すと、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-868-QINU
(3)剛体に作用する力の作用点を、力の作用線上で動かす限り、回転力は変化しない。
ここで、力の作用線とは、力の作用点を通り、力の方向と重なる直線のこと。

これらはいずれも直観と合致する。
証明は、試みてほしい。

他の軸の周りの回転力

力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-869-QINUのx軸、y軸まわりの回転力も同様に計算できる。結果は、
x軸まわりの回転力;UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-870-QINU
y軸まわりの回転力;UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-871-QINU


原点まわりの力のモーメント

位置ベクトルUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-872-QINUの剛体の点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-873-QINUに作用する力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-874-QINUの原点まわりの力のモーメントを、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-875-QINUx軸まわりのトルク、y軸まわりのトルク、z軸まわりのトルクUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-876-QINUで定義する。
数式で書くと、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-877-QINU,

ベクトル積と力のモーメントのベクトル積表示

以上の結果は、ベクトル積(クロス積ともいう)を用いると簡潔、正確に表現でき、
回転運動の性質を調べるのが容易になる。
3次元ベクトルUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-878-QINU のベクトル積UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-879-QINUとは、3次元ベクトルであり,
大きさはUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-880-QINU を2辺とする平行四辺形の面積に等しく、
方向はこの四辺形に垂直で、向きは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-881-QINUが右手系をなすように定めたものである。
すると、ベクトル積に関して以下の8つの命題が成り立つ。

ベクトル積にかんする命題    

以下に述べる全ての命題で、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-882-QINUは3次元ベクトル
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-883-QINUは実数とする。
命題1.
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-884-QINU を, UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-885-QINUと垂直な成分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-886-QINU と,平行な成分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-887-QINU の和に分解するとき、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-888-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-889-QINU

命題2.
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-890-QINU

命題3
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-891-QINU 

命題4.
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-892-QINU 

命題4の系  
   UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-893-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-894-QINU

命題5. 
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-895-QINU を
それぞれ大きさ(長さ)1で互いに直交し、右手系をなす、ベクトル(右手系をなす正規直交基底)とする。
この時、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-896-QINU
 

命題6.
ベクトルUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-897-QINUを,命題5で用いた基底UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-898-QINU で決まる座標の座標成分で表示しておく。
するとUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-899-QINU 

命題7.
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-900-QINU

命題8.
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-901-QINU と UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-902-QINUを,UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-903-QINUにかんして微分可能な、ベクトルに値をとる関数とする。すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-904-QINU は、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-905-QINUにかんして微分可能で、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-906-QINU

これらの証明は、後節で扱う。 ベクトル積に関しては以下を参照のこと。

 力のモーメントのベクトル積表示   

ベクトル積の命題6を用いると、
位置ベクトルUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-907-QINUの点に作用するUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-908-QINU の
原点まわりの力のモーメントは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-909-QINU
x軸まわりの回転力(トルク)は、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-910-QINU と表せることが分かる。
y軸とz軸周りの回転力も、それぞれ 
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-911-QINU ,UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-912-QINUで 表せる。

力のモーメントの性質

もっと一般に、どんな軸の周りの回転力も、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-913-QINU から得られる。
定理;
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-914-QINUを、原点を始点とする大きさ1の任意のベクトルとする。
すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-915-QINU UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-916-QINUは、力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-917-QINUのUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-918-QINU軸の周りの回転力になる。式で書くと、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-919-QINU 
この式を、回転力の定義に基づいて言い換えると、
力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-920-QINUのもとで、剛体をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-921-QINU軸の右まわりに角度UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-922-QINUだけ回転させたとき、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-923-QINUのなす仕事UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-924-QINUは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-925-QINU
証明;
9つに分けて示す。
ⅰ)準備 
図のように、剛体の点 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-926-QINU から、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-927-QINU 軸に垂線を下ろし、その足を UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-928-QINU とする。
力 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-929-QINU のもとで、剛体が UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-930-QINU を固定軸にして、
微小時間に、微小角UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-931-QINU だけ回転したとする。
このとき、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-932-QINU が移った先を、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-933-QINU とする。
ⅱ)回転角 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-934-QINU が微小なので、
この回転中の UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-935-QINU の軌跡(円弧の微小部分)は、有向線分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-936-QINU で精度高く、近似できる。
ⅲ)この間に力 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-937-QINU がなした仕事 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-938-QINU は、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-939-QINU
この仕事を、回転角UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-940-QINUで割ると、力の UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-941-QINU 軸周りの回転力が得られる。そこで、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-942-QINU を、この定理で与えられている諸量を使って表現し、これを用いて、仕事を計算しよう。
ⅳ)有向線分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-943-QINUの方向を求める。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-944-QINU は、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-945-QINU 軸と垂直でUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-946-QINU を通る平面UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-947-QINU上にあり、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-948-QINUを中心とする円の弧の微小部分をなすので、線分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-949-QINU と直交する。UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-950-QINU
また、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-951-QINU 軸と垂直でUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-952-QINU を通る平面UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-953-QINU上にあるので、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-954-QINUはUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-955-QINU 軸とも直交し、従って線分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-956-QINUと直交する。UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-957-QINU
ゆえに、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-958-QINU は、3点O,Q,Pを通る平面 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-959-QINU と直交する。
すると、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-960-QINU は、平面 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-961-QINU 上のすべての線分と直交する。
ゆえに、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-962-QINU,UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-963-QINU 
これで、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-964-QINU の方向は、求まった。
ⅴ)有向線分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-965-QINU の向き 
点 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-966-QINU は、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-967-QINU 軸の周りを右周りに回転するので、その向きは、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-968-QINU と同じ向きである。
ⅵ)UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-969-QINU の大きさ。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-970-QINUは、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-971-QINU を中心とする、半径 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-972-QINU の円弧の一部なので、 その中心角UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-973-QINU を用いて、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-974-QINU
ⅶ)ⅳ)、ⅴ)、ⅵ)から  UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-975-QINU
ⅷ)UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-976-QINUが成り立つ。
なぜなら、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-977-QINU ,ここで UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-978-QINU はUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-979-QINU とUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-980-QINU の間の角。
この式をⅶ)で得られた式に代入すれば、所望の結果が得られる。
ⅸ)UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-981-QINU
ⅹ)UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-982-QINU
定理の証明終わり。

(注)剛体が固定軸の周りでなく、自由に回転するときでも、
ある瞬間には、ある軸の周りの回転になっている。
力のモーメントは、どんな軸周りの回転力の情報も含んでいることが証明されたので、
  回転運動一般に有効な概念であることが分かる。

剛体の複数個所に作用する力の回転力 

次に剛体の多くの点に力を加えたときの回転力を求めよう。
力の作用点をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-983-QINU、力をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-984-QINUとする。
これらの力のもとで剛体がz軸まわりをUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-985-QINUだけ微小回転するときの、各力のなす仕事の合計は、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-986-QINU
従って、作用点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-987-QINUの力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-988-QINUの全体がもつz軸まわりの回転力は、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-989-QINU ここでUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-990-QINUは力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-991-QINUのz軸まわりの回転力。

同様に、x軸まわりとy軸まわりの回転力も、それぞれ
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-992-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-993-QINU
力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-994-QINUの原点周りに力のモーメントUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-995-QINUはUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-996-QINUで定義した。
全ての力の原点周りの力のモーメントも、同様に
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-997-QINUで定義する。すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-998-QINU
全ての力の原点周りの力のモーメントUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-999-QINUも、上述の定理と同様の定理(定理の系と呼ぶ)が成り立つ。
定理の系
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1000-QINUを剛体に作用する全ての力のモーメントとし、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1001-QINUを、原点を始点とする大きさ1の任意のベクトルとする。
すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1002-QINU UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1003-QINUは、力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1004-QINUのUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1005-QINU軸の周りの回転力になる。
式で書くと、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1006-QINU 
この式を、回転力の定義に基づいて言い換えると、
力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1007-QINUのもとで、剛体をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1008-QINU軸の右まわりに角度UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1009-QINUだけ回転させたとき、
これらの力のなす仕事UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1010-QINUは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1011-QINU

この系は、内積の性質を使えば、定理から、容易に導かれる。

質点系に作用する重力のモーメント

n個の質点系を考える。
第i質点の質量をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1012-QINU、位置ベクトルをUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1013-QINUとする。
鉛直上方をz軸の正方向とする直交座標系UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1014-QINUをいれる。
この質点系に作用する重力の原点周りのモーメントUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1015-QINUを求めよう。
第i質点に働く重力は、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1016-QINU
なので、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1017-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1018-QINU
すでに学んだことから、この質点系の重心は、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1019-QINU
であった。ここで、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1020-QINU 。
これを用いて、モーメントを書きなおすと、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1021-QINU
となる。
これは、質点系の重心の位置に質点系の全質量が集中している時の、 原点周りの重力のモーメントに等しい。

回転運動の方程式 

UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1022-QINU が、あらゆる回転軸にかんする回転力を表現していることがわかった。
力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1023-QINUと運動量の変化の関係をあたえるニュートンの運動方程式(第2法則)を変形して、
回転力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1024-QINUにかんする方程式を導こう。
直交右手座標系UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1025-QINU を定める。原点 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1026-QINU は、考察対象に都合のよい点を選ぶ。

剛体をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1027-QINU個の(質点と考えてよい)微小部分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1028-QINUに分け、
その質量をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1029-QINU、位置ベクトルをUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1030-QINUとする。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1031-QINUが外部から受ける力をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1032-QINU、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1033-QINU が剛体の他の部分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1034-QINU から受ける力(内力)をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1035-QINUとおく。
後者は、剛体が変形しないよう、剛体の原子間に働かせる力に起因する。
この原子間の力は、原子の電荷による電気力と、
原子同士が接近しすぎたときに作用する量子力学的力により生じる。
作用・反作用の法則(運動の第3法則)から、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1036-QINU 。
さらに、剛体の2点間に働く内力の方向は、
その2点を結ぶ直線の方向と同じだと、仮定する。

各質点のニュートンの運動方程式  

各質点ごとに、ニュートンの運動方程式を立てると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1037-QINU
これを変形して
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1038-QINU UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1039-QINU 
この式から、
力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1040-QINUの回転力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1041-QINUにかんする式を導こう。

UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1042-QINUにかんする式の誘導  

式(1)の両辺に左側から、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1043-QINU のベクトル積を施すと、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1044-QINU UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1045-QINU
ベクトル積の性質3と性質4により、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1046-QINU UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1047-QINU
ここで、ベクトル積の性質8より
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1048-QINU
なので、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1049-QINU
質点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1050-QINUの運動量をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1051-QINUと書くと、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1052-QINUなので、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1053-QINU
定義;角運動量(運動量のモーメントともいう)
質点の位置ベクトルをUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1054-QINU、運動量をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1055-QINUと書くとき、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1056-QINUを,この質点の角運動量と呼ぶ。
これを用いると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1057-QINU

 回転の運動方程式の導出  

故に、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1058-QINU
ここで、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1059-QINU
式(4)の右辺の第2項の上付き添え字i,jを、それぞれ、j'と i'でおきかえられるので、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1060-QINU
内力は作用反作用の法則が適用できると仮定しているので、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1061-QINU 。この式を上の式の右辺に代入すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1062-QINU
この式の右辺の和をとる変数i',j' を i,j におきかえると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1063-QINU
この式を、式(5)の右辺の第2項に代入して整頓すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1064-QINU
さらに、内力に関する第2の仮定により、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1065-QINU とUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1066-QINUは同じ方向なので、ベクトル積の定義より、この項は、零となることが分かる。
故に、式(4)の右辺の第2項は零となり、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1067-QINU
が得られる。全角運動量をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1068-QINUとおけば、
式(6)は、次のように書ける。

命題;回転運動の関するオイラーの運動方程式
剛体の内力に上述の2つの仮定を付ける。このとき、
剛体に作用する全ての外部力の原点周りの力のモーメントUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1069-QINUと、
全角運動量UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1070-QINUの間には、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1071-QINU (7)

この命題の導出までは詳しく述べたが、本テキストではこれ以上は深入りしない。
この先にも興味がある方は、次の記事をご覧ください。

固定軸の周りの剛体の回転運動の方程式

回転運動の運動方程式から、任意の軸の周りの回転運動の方程式が簡単に導出できる。
z軸周りの場合を例にとり、説明する。
z軸周りの回転力はUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1072-QINUなので、
回転運動の方程式から
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1073-QINU
この式の右辺に,UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1074-QINU を代入すると
右辺
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1075-QINU 微分の加法性から
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1076-QINU 内積の加法性から
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1077-QINU ベクトル積の性質8から
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1078-QINU UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1079-QINUを代入し、ベクトル積の性質を用いると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1080-QINU
故に、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1081-QINU
剛体はz軸の周りを回転するので、
その各点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1082-QINU(位置ベクトルUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1083-QINU)は、
z軸と直交する平面上を、z軸を中心とする円を描いて運動する。
この拘束条件を考慮して、
時刻UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1084-QINUの位置ベクトルUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1085-QINUの座標成分を書きなおすと、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1086-QINU
ここでUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1087-QINUは、点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1088-QINUとz軸との距離、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1089-QINUは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1090-QINUをxy平面に正射影した像がx軸となす角度である。図参照。
剛体につけておいた印UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1091-QINUの位置ベクトルUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1092-QINUを
xy平面に正射影した像がx軸となす角(回転角)UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1093-QINUを用いると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1094-QINU
(UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1095-QINUは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1096-QINUごとに決まる、定数)と書ける。

式(1)の右辺を、式(2)を利用して、変形すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1097-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1098-QINU
ベクトル積の性質6より、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1099-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1100-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1101-QINU
ここで、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1102-QINUを代入すると
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1103-QINU
以上により、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1104-QINU 
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1105-QINU
が得られた。 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1106-QINUとおくと、この式は
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1107-QINU
と書ける。ここでUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1108-QINUを、剛体の軸まわりの慣性モーメントと呼ぶ。
これがz軸を固定軸とする剛体の回転運動の運動方程式である。
原点を始点とする任意の回転軸UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1109-QINUまわりの回転の方程式も同様に得られる。

この方程式の変数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1110-QINU は、一次元のスカラーなので、
質点がなめらかに拘束され、直線上を運動するときの運動方程式
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1111-QINU
と、対比させる。すると、
質点に作用する力 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1112-QINU  <===> 剛体に作用する回転力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1113-QINU
質点の質量 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1114-QINU     <===> 剛体のUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1115-QINU軸まわりの慣性モーメント
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1116-QINU、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1117-QINUは質量UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1118-QINUとUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1119-QINU軸を延長した直線との距離
質点の位置変数 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1120-QINU  <===> 剛体のUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1121-QINU軸周りの回転角変数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1122-QINU
質点の速度 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1123-QINU <===>剛体のUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1124-QINU軸周りの角速度UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1125-QINU;
質点の運動量 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1126-QINU <===> 剛体の角運動量UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1127-QINU;
運動方程式UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1128-QINU <===> UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1129-QINU

という、対応関係があることが分かる。
この節で得た固定軸まわりの回転運動の方程式から、
もしUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1130-QINU ならば、任意の軸まわりの回転力が零なので、
剛体の任意の軸まわりの角加速度が零、角速度が一定となることが分かる。

剛体の回転の運動エネルギー  

剛体の各微小部分(質量UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1131-QINU)の速度を UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1132-QINUと書くと、
その運動エネルギーは UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1133-QINUなので、
剛体全体の運動エネルギーは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1134-QINU
回転運動している各微小部分の速度は、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1135-QINUと書けるので、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1136-QINU

物理振り子

剛体は、重心を通らない水平軸の周りで、重力の作用を受け振動する。
これを物理振り子、あるいは実体振り子という。

水平回転軸をx軸とし、鉛直上方をz軸の正方向とし、yz平面が剛体の重心を通る座標系を考え、
回転軸とこの平面の交点を原点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1137-QINU、重心をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1138-QINUと記す。図参照。
回転はなめらかで摩擦力は無視できるとする。
すると、回転軸から、この剛体が受ける力は、剛体をこの軸に支える作用を持つだけで、剛体の振動に何の影響も与えない。
そこで、剛体にかかる力は、重力だけと考えて良い。
重力の原点周りの力のモーメントUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1139-QINUは、
剛体の重心UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1140-QINUに、剛体の全質量UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1141-QINUがあるとしたときの
重力の原点周りのモーメントに等しいことが分かっている。 故に、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1142-QINU
x軸まわりの力のモーメントは、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1143-QINU
従って、回転の運動方程式は
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1144-QINU
ここでUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1145-QINUは、軸まわりの、振り子の慣性質量。

剛体の慣性モーメントの計算(一次元の剛体) 

剛体UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1146-QINUは、ごく細く、まっすぐな棒で,
長さUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1147-QINU、質量密度(単位長さあたりの質量)は一定でUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1148-QINUとする。
棒の左端からUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1149-QINUの場所UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1150-QINUを通り、棒に直交する軸まわりの慣性モーメントを具体的に計算しよう。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1151-QINUを原点とし、棒と同じ方向の数直線を考え、これを座標系として採用。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1152-QINUと表現する。
剛体UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1153-QINUの慣性モーメントは、
剛体を質点とみなせるほど細かい部分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1154-QINUに分割して、
各UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1155-QINUの質量UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1156-QINUと、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1157-QINUとUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1158-QINUとの距離UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1159-QINUを用いて、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1160-QINUで定義した。但しUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1161-QINU

剛体の分割と慣性モーメントの近似式・リーマン和 

UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1162-QINUの質量UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1163-QINUは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1164-QINUの長さUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1165-QINUに質量密度UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1166-QINUを掛ければ得られるので
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1167-QINUであり、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1168-QINU
と書ける。
しかし、剛体UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1169-QINUをいくら細かく分割しても、
各小区間UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1170-QINUは大きさ(長さ)をもつので、
原点との距離UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1171-QINUは、一つに定まらない。
そこで、各小区間UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1172-QINUから、代表点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1173-QINUを選びだし、その点の原点からの距離UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1174-QINU、(UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1175-QINU絶対値)を、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1176-QINUとみなす。
すると、慣性モーメントUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1177-QINUの式は
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1178-QINU
で近似される。

そこで、この分割を
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1179-QINU と表し、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1180-QINU
で,慣性モーメントの近似式を表すことにする。
すると、

慣性モーメントの近似式は、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1181-QINU
と書ける。
この値は分割の仕方と分割小区間の代表点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1182-QINUの選び方によって変化する。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1183-QINUの中で、原点に最も近い点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1184-QINUにとると
最小値 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1185-QINU
をとり、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1186-QINUの中で、原点に最も遠い点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1187-QINUにとると
最大値 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1188-QINU
を取る。
関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1189-QINUを使って表現すれば、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1190-QINU
であり、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1191-QINUを満たす。
質量密度が場所で変わるときは、、関数はUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1192-QINUになり、
剛体の重心を求めるときは、後述するように、別の関数が現れる。
そこで、数学の分野では、一般の関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1193-QINUにたいして
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1194-QINU
を求め、分割UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1195-QINUとUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1196-QINUの代表点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1197-QINUに関する関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1198-QINUのリーマン和と呼ぶ。
その最小値UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1199-QINUと最大値UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1200-QINUも,同様に定義される。

UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1201-QINU 慣性モーメントの近似式(1)は、関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1202-QINUにたいするリーマン和である。

慣性モーメントの近似式の意味 

今後、関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1203-QINUは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1204-QINUで定義された有界関数として、 議論を進める。
有界関数とは、十分大きな正数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1205-QINUを選べば、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1206-QINUの全ての点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1207-QINUに対して、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1208-QINUとなること。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1209-QINUを代入すれば、考察対象の剛体の慣性モーメントの話になる。
リーマン和
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1210-QINU
は、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1211-QINUのグラフを、棒グラフで近似したときの棒グラフの作る面積(各角柱の面積和)であることが分かる。図参照。
また、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1212-QINUは一点鎖線でしめす、小さいほうの長方形の和であり、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1213-QINUは点線でしめす、大きいほうの長方形の和である。


UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1214-QINUは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1215-QINUのグラフとx軸およびy軸と平行な直線UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1216-QINU、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1217-QINUで囲まれる部分の面積UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1218-QINUを近似している。
また、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1219-QINU
であり、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1220-QINUは面積を下から評価し、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1221-QINUは面積を上から評価していることがわかる。
分割を限りなく細かくしていくとき、
リーマン和が分割や代表点の選び方に関係ない数に収束するならば、
その極限値は、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1222-QINUのグラフとx軸およびy軸と平行な直線UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1223-QINU、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1224-QINUで囲まれる部分の面積
と考えられる。
もし、分割UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1225-QINUを細かくしていくとき
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1226-QINUとUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1227-QINUが同じ値に収束することが示せれば、
(3)式と(4)式から、リーマン和は、関数のグラフの作る面積UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1228-QINUに収束することが分かった。

可積分の定義と積分 

「分割を細かくしていくとき、リーマン和が収束する」ということは、
面積を決める上で決定的に重要がことなので、
可積分という名を付けて、数学的に厳密に定義する。 このためにはまず、分割の大きさを定める必要がある。
定義:分割の大きさ
分割 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1229-QINUの大きさとは、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1230-QINU

定義:可積分と積分
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1231-QINUを、有界閉区間UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1232-QINU上で定義され、実数の値をとる関数とする。

もし、ある実数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1233-QINUが存在して、
どんな分割UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1234-QINUと代表点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1235-QINUであっても、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1236-QINU
が成り立つ時、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1237-QINUはUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1238-QINU上で(リーマン)可積分であるという。
このとき、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1239-QINU をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1240-QINUのUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1241-QINU上での(リーマン)積分といい、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1242-QINU
などと書く。

 積分の性質 

定理(積分の線形性)
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1243-QINUを、区間UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1244-QINU上で定義された、任意の実数値関数であり、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1245-QINUを任意の実数とする。
このとき、
(1)UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1246-QINUがUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1247-QINU上で可積分ならば、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1248-QINUもUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1249-QINU上で可積分
(2)このとき、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1250-QINU

証明;リーマン和の定義から、区間UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1251-QINUの任意の分割UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1252-QINUと 分割区間の任意の代表点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1253-QINU(UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1254-QINUはUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1255-QINUに含まれる意)に対して、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1256-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1257-QINUは可積分なので、その定義から、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1258-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1259-QINU
(1)式の両辺の極限UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1260-QINU をとろう。
右辺の極限
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1261-QINU
極限の性質から、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1262-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1263-QINU
従って(1)式の左辺の極限UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1264-QINU も存在して、右辺の極限と一致する。 証明終わり。

慣性モーメントの計算(1)リーマン和の極限を求める方法

UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1265-QINUは、先述の、ごく細い一様な質量密度UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1266-QINUのまっすぐな棒で、
座標系を入れて、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1267-QINUと表現しておく。
原点を通りこの棒と直交する軸のまわりの(この棒の)慣性モーメントを、
リーマン和の極限を取って求めよう。
区間UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1268-QINUをn(UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1269-QINU)等分して得られる点列,
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1270-QINU
を分点とする分割をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1271-QINUと記す。すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1272-QINU, UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1273-QINUであり、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1274-QINU  
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1275-QINUという分割の列は、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1276-QINUを満たす。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1277-QINUがリーマン可積分であることを認めれば、
可積分の定義から、どんな代表点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1278-QINUを選んでも、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1279-QINUとなる。

そこで、代表点をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1280-QINUと選ぶ。
関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1281-QINUを用いると、 分割UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1282-QINUを用いた慣性モーメントの近似値は次のようになる。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1283-QINU
ここで、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1284-QINU(注参照)を利用して、この式を計算すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1285-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1286-QINUなので、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1287-QINU
故に、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1288-QINU

(注)UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1289-QINUの証明
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1290-QINU なので、両辺のj=1,2,,,n に関する和を取る。
左辺の和はUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1291-QINU
右辺の和はUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1292-QINU
故に、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1293-QINU UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1294-QINU UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1295-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1296-QINUの略証
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1297-QINUなので、この両辺のj=1,2,,,nに関する和を取る。
左辺の和はUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1298-QINU、右辺の和はUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1299-QINU,故にUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1300-QINU


慣性モーメントの計算(2)原始関数を利用する方法

積分可能な関数の積分をリーマン和の極限から求める計算は煩雑であり、複雑な形状の剛体の慣性モーメントを求めるにはふさわしくない。
次の定理が強力な計算法を提供する。

定理
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1301-QINUを数直線上の区間、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1302-QINUをUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1303-QINU上可積分な実数値関数
とする。
もしUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1304-QINUが、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1305-QINU上で微分可能で
全てのUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1306-QINUの点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1307-QINUで、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1308-QINU
を満たす関数ならば(注参照)、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1309-QINU
上記の条件を満たす関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1310-QINUを、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1311-QINUの原始関数という。
(注)関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1312-QINUは、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1313-QINU上でしか定義されていないので、
端点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1314-QINUでは、通常の微分は定義できない。そこで、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1315-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1316-QINU
と定義する。
証明;
区間UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1317-QINUの任意の分割
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1318-QINU
に対して、
代表点をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1319-QINU(UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1320-QINUはUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1321-QINUの点の意)とすると、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1322-QINUのリーマン和は
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1323-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1324-QINU
小区間UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1325-QINUでの関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1326-QINUの平均勾配
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1327-QINU
は、平均値の定理により、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1328-QINUの中のある一点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1329-QINUにおけるUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1330-QINUの接線の勾配
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1331-QINUに等しので、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1332-QINU
故に、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1333-QINU
そこで、各小区間UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1334-QINUの代表点をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1335-QINUと選べば、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1336-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1337-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1338-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1339-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1340-QINUは可積分なので、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1341-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1342-QINU
証明終わり。

さて、慣性モーメントを求めたい剛体では、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1343-QINUなので、その原始関数は、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1344-QINU
従って、慣性モーメントは、定理を適用して、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1345-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1346-QINU,UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1347-QINUを代入して、整頓すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1348-QINU

重心の計算への応用 

質量密度が場所により変わる、長さUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1349-QINUのごく細い棒UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1350-QINUの重心を求めてみよう。
考えやすくするため、 棒の一端を原点にし、他端がx軸の正の位置にくるように座標系UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1351-QINUをいれる。
この座標系で剛体はUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1352-QINUと書ける。 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1353-QINUを小区間UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1354-QINUに分割(分割UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1355-QINUと記す)し、これらの小区間を質点とみなせば、その重心は、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1356-QINU
で定義された(1.1.1節参照)。ここでUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1357-QINU は第i質点の質量、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1358-QINU、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1359-QINUは第i質点の位置ベクトル。
ベクトルを座標成分表示すると、この問題では一次元なので、 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1360-QINU、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1361-QINU
しかし、実際には UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1362-QINUは、質点ではないので、 位置ベクトルは、定まらない。
またその質量も密度が一定ならば、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1363-QINUできまるが、
密度が変化するならば、定まらない。
そこで、各小区間 UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1364-QINUの代表点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1365-QINUを選び
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1366-QINU,UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1367-QINU
で近似する。
すると分割UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1368-QINUと代表点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1369-QINUに対応する、 質量UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1370-QINUと重心UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1371-QINUの近似値は、それぞれ
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1372-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1373-QINU

UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1374-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1375-QINU
ここで、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1376-QINU
もし、関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1377-QINUが積分可能ならば、分割UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1378-QINUを細かくしていけば UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1379-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1380-QINU
もし関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1381-QINUの原始関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1382-QINUが存在する(UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1383-QINU)ならば
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1384-QINU
もし関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1385-QINUも積分可能ならば、分割UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1386-QINUを細かくしていけば UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1387-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1388-QINU
もし関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1389-QINUの原始関数UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1390-QINUが存在する(UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1391-QINU)ならば
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1392-QINU
例;UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1393-QINUならば、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1394-QINUなので UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1395-QINU
また、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1396-QINUとなるのでUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1397-QINU となり、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1398-QINU
例;UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1399-QINUならば、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1400-QINUなので UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1401-QINU
このときUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1402-QINUなので
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1403-QINUである。UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1404-QINU

 2次元以上の物体の慣性モーメントについて 

てこの原理と力のモーメント

図のように剛体の棒の中間に支点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1405-QINUがあり、
この点をとおり、図面に垂直な軸の周りを自由に回転する装置を梃子(てこ)と呼ぶ。

てこの原理

梃子の端UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1406-QINUに力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1407-QINUが作用し、他端UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1408-QINUに力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1409-QINUが作用して、
つりあう(静止し続ける)とき、2つの力の間にはどのような関係があるだろうか。
棒は軽くて無視できるとして考察する。
軸周りに静止し続けるということは、
固定軸まわりの運動方程式(1.4.3.5節)から、
梃子に働く外力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1410-QINUの、回転軸まわり回転力が零であることを意味する。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1411-QINUを原点、回転軸をz軸,梃子の棒をx軸とする、直交座標系UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1412-QINUを導入すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1413-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1414-QINU
と表現できる。
そこで、1.4.3.2.3節(z軸まわりの回転力の導出)から
z軸まわりのトルク(回転力)は UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1415-QINU
となる。
従って
つりあい条件は、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1416-QINU
これをてこの原理という。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1417-QINU をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1418-QINUに比べて、非常に大きくとれば、
少しの力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1419-QINUで非常に大きな力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1420-QINUと釣り合わせることが出来ることが分かる。
てこの原理については、

も参照のこと。

剛体に働く力の作用線

力が作用する点を着力点といい、
着力点を通り力のベクトルと方向が等しい直線を、力の作用線という。
剛体に働く力は、その着力点をかえると、一般には、剛体の運動への効果が異なってしまう。
しかし、力のベクトル和と、力のモーメント和が不変となるように力の着力点を移動したり力の合成をすることは、
剛体の運動には全く影響がでないので、許される。
例えば、力の着力点をその作用線にそってうごかしたり、
同じ着力点をもつ複数の力を、それらのベクトル和に置き換えることは許される。。

剛体のつり合い

いくつかの力が作用し、剛体が静止したままであるか、
重心UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1421-QINUが等速直線運動(静止も含む)を続け、
重心の周りの回転が変化しない(回転しないままか、同じ回転を続ける)場合に、
剛体(に作用している力)は釣り合っているという。
重心が等速直線運動を行うのは、
剛体に作用する外力のベクトル和が0になることであり、その場合に限る。
これについては、「1.1.1  質点系の運動と重心」で説明した。
重心周りの回転が変化しないのは、重心まわりの外力のモーメントの総和が0になることであり、この場合に限る。これについては、「1.2.3.5 固定軸の周りの剛体の回転運動の方程式」で説明した。
定理;剛体のつり合い
剛体に、外力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1422-QINUがはたらいている。
このとき、次の条件は同等である。
ⅰ)剛体は釣り合っている。
ⅱ)外力のベクトル和が零で、重心UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1423-QINUまわりの外力のモーメントの和が零。
ⅲ)外力のベクトル和が零で、任意の固定点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1424-QINUまわりの外力のモーメントの和が零。
証明;条件ⅰ)とⅱ)が同等であることは、すでに、説明した。
条件ⅱ)とⅲ)の同等性を示そう。
外力の和が零であるという条件の下で、
「任意の固定点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1425-QINUまわりの外力のモーメントの和UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1426-QINUは常に等しい」
ことを示せば良い。
外力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1427-QINUの作用点をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1428-QINUとする。
すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1429-QINUまわりの外力のモーメントの和UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1430-QINUは
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1431-QINU

任意の点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1432-QINUまわりの外力のモーメントの和UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1433-QINUは
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1434-QINU

UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1435-QINUを(1)式に代入すると
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1436-QINU
ベクトル積の性質から、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1437-QINU
仮定と(2)式から、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1438-QINU
故に、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1439-QINU
証明終わり。  

気体と液体の圧力

この節では気体や液体を、
分子や原子という粒子から構成されるという微視的立場でなく、
巨視的に捉え空間的に滑らかな連続体であるとみなす。
連続体の内部の微小部分に働く力を考え、其の釣合いについて考え、
圧力の性質を導く。

 気体や液体とは何か。

 気体と液体の特徴

気体と液体は体積の変化には抵抗するが、
形の変化には、抵抗しない。(ただし非常に速い変化には抵抗する)。
但し、気体の体積変化への抵抗は小さく、液体は非常に大きい。

 静止気体と液体の圧力

気体や液体は、その表面または内部に任意の面を考えると、その面で2分される部分は、
互いに他を押している。それらは大きさ・方向は等しく、逆向きである(作用反作用の法則)
単位面積当たりのこの力を応力とよぶ。
その発生は、重力の存在と前述の気体や液体の特徴(形の変化に抵抗しない)に起因する。
この力の性質を、気体・液体の特徴から導こう。

応力は面に垂直に働く 

説明は便宜上、液体の語で述べる。
命題1:
静止した液体(気体)の表面あるいは内部に任意のなめらかな面(注参照)を考える。
この面上の応力は、常にこの面に直角に働く。
面と常に直角に働く応力を、圧力と呼ぶ。
(注)面のどの一点においても、その点にごく近い面の部分だけをみれば、平面とみなせる曲面のこと。 理由;
もし、ある面上のある一点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1440-QINUの周辺の微小面部分(Sと書く)で、押し合う力がこの面と平行な成分を持つとする。
Sは仮定より、平面(の一部)と考えてよい。

図のように、面部分Sとそれと平行な平面の一部S’から作られる、
非常に薄い液体の板状部分Vを考える。

するとVがSを通して液体から受ける力の総和UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1441-QINUは、面Sと平行な成分をもつ。
面SとS’は、非常に近いので、
Sを挟んで押し合う力と、S’を挟んで押し合う力は、単位面積当たり、ほぼ等しいと考えてよい。
すると、VがS’を通して液体から受ける力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1442-QINUは、
Sを通して受ける力と大きさと方向はほぼ同じで、逆向きになる。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1443-QINUの面Sと平行な成分も、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1444-QINUのSと平行な成分と大きさはおなじで、逆向きになる。
液体は自由に形を変えられるので、VのS面とS’面は逆方向に動いてしまい、
静水という条件に反してしまう。
従って、
「ある面上のある一点UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1445-QINUの周辺の微小面部分Sで、押し合う力がこの面と平行な成分を持つ」
という仮定はあり得ないことが示された。

命題2
どの面にも直角に働く応力(圧力)は、どの点でも面の方向によらず一定の強さ(大きさ)をもつ。
証明;
液体中の任意の点をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1446-QINUとする。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1447-QINUを原点とする、直交右手系UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1448-QINUを定める。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1449-QINUを通る任意の面UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1450-QINUをとる。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1451-QINU点における、
この面における圧力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1452-QINUとxy平面における圧力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1453-QINU、yz平面、zx平面における圧力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1454-QINU
が等しいことを示そう。
平面UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1455-QINUと平行でUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1456-QINU点の近くを通る平面UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1457-QINUが
x軸、y軸、z軸と交わる点をそれぞれ、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1458-QINUとおく。図参照。
四面体UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1459-QINUの外部の液体が、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1460-QINUを押す力をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1461-QINU,UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1462-QINUを押す力をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1463-QINU,UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1464-QINUを押す力をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1465-QINU,UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1466-QINUを押す力をUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1467-QINU
とおく。
四面体内の液体が静止しているので、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1468-QINU
が成り立つ。
この式を圧力で表示しよう。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1469-QINUなので、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1470-QINUが十分小さければ
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1471-QINU
故に、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1472-QINU
同様にUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1473-QINU、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1474-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1475-QINU
これらを(1)式に代入して
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1476-QINU
これを計算すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1477-QINU
これより、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1478-QINU   証明終わり。

命題3
ⅰ)一様な重力のもとで静止している気体・液体内では、同一水平面上での圧力の大きさは一定である。 
ⅱ)もし液体の密度UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1479-QINUが圧力によって変化しないならば、 
深さUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1480-QINUの水平面UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1481-QINU上の圧力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1482-QINUと  
深さUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1483-QINUの水平面UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1484-QINU上の圧力UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1485-QINUには  
次の関係が成り立つ。 
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1486-QINU  

図示した液体部分UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1487-QINUが静止しているので、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1488-QINUに作用する力の総和が零になっている。
このことから、この命題は容易に証明できる。

命題4 アルキメデスの原理


気体の圧力と大気圧

気体は圧力が増すと縮むので、命題3のⅱ)の結論は成立しない。
大気は静止していると仮定し、地表の大気圧から高度zでの大気圧を求めてみよう。 地表の一点を原点とし、鉛直上方をz軸の正方向になる座標UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1489-QINUをいれる。
図のように、下底面が高さUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1490-QINU、上底面が高さUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1491-QINUの、単位断面積の角柱UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1492-QINUを考える。
その部分の気体が受ける力の和は零となるので、
次式が成り立つ。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1493-QINU
ここで
・UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1494-QINUは高さUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1495-QINUの地点の大気圧(命題3のⅰ)から、高度が同じ水平面上で圧力は一定)、
・UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1496-QINUはUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1497-QINUの質量。UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1498-QINUの体積UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1499-QINUと平均質量密度UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1500-QINUの積。
圧力が大きいと空気は縮み質量密度は高くなるので、両者の関係を求めねばならない。
空気体積の変動にともなう温度変化がないとすると、
ボイルの法則(3章1節 熱とエネルギー参照)から、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1501-QINU(UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1502-QINUは温度だけに依存する数)
質量密度UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1503-QINUを代入すると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1504-QINU,ゆえに、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1505-QINU
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1506-QINUを、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1507-QINUとおくと、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1508-QINU
この質量密度と圧力の関係を用いると、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1509-QINU(hが小さいほど差は少なくなる)
この式を(1)式に代入して、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1510-QINU、変形すると 
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1511-QINU。これより
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1512-QINU
を得る。これを積分して
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1513-QINU
を得る。
ここでUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1514-QINUは、地表での圧力、UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1515-QINUはネイピア数である。
地表での質量密度がUNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1516-QINUならば,(2)式から、
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1517-QINU

圧力の単位

圧力は、単位面積当たりの力なので、その単位は面積の単位UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1518-QINUと力の単位UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1519-QINUから得られる。
UNIQ30278d4d5ce4dbf1-MathJax-1520-QINU
が圧力の単位で、パスカルと呼ばれる。

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