物理/運動法則の応用2
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目次 |
運動法則の応用（２）質点系の運動と回転力
この節では複数の質点が集まって作る質点系と、硬くて形を変えない質点系である剛体を回転させる力について、考察する。
質点系の運動
2個以上の質点が集まって出来ている系を質点系という。
質点系というときは、各質点は密集していても、離れ離れでも良い。互いに固着しようが、自由に動けようが構わない。
すべての物質は、分子の集合と考えたり、細分化して極小部分に分け、それらの集合と考えれば、十分な精度で、質点系とみなすことができる。
そのため質点系の運動の法則を、ニュートンの運動法則から導出すれば、その応用範囲は非常に広い。
質点系の運動と重心
系の任意の２つの質点間には作用・反作用の法則を満たす力が働いていてもよい。
この力を質点系の”内力”という。
質点系の各質点に外部から力（外力という）が加わる時、この質点系はどんな運動をするだろうか。
質点系の各質点の位置をUNIQ646975795394e223-MathJax-263-QINU、質量をUNIQ646975795394e223-MathJax-264-QINUとし、
質点UNIQ646975795394e223-MathJax-265-QINU に作用する外力をUNIQ646975795394e223-MathJax-266-QINU、
UNIQ646975795394e223-MathJax-267-QINU に、他の質点UNIQ646975795394e223-MathJax-268-QINUから作用する内力をUNIQ646975795394e223-MathJax-269-QINUとする(UNIQ646975795394e223-MathJax-270-QINU)。
すると、各質点に対して、運動の第２法則により、
UNIQ646975795394e223-MathJax-271-QINU UNIQ646975795394e223-MathJax-272-QINU ここでUNIQ646975795394e223-MathJax-273-QINU、
各ベクトルを自由ベクトルとみなしてUNIQ646975795394e223-MathJax-274-QINUについて加え合わせると、UNIQ646975795394e223-MathJax-275-QINUなので、
UNIQ646975795394e223-MathJax-276-QINU
が得られる。
質点系の全質量UNIQ646975795394e223-MathJax-277-QINUと質点系に働く全外力UNIQ646975795394e223-MathJax-278-QINUを用いて書きなおすと、
UNIQ646975795394e223-MathJax-279-QINU
質点系の重心UNIQ646975795394e223-MathJax-280-QINUを UNIQ646975795394e223-MathJax-281-QINU で定義すると、
UNIQ646975795394e223-MathJax-282-QINU
この式は、力UNIQ646975795394e223-MathJax-283-QINUをうける質量UNIQ646975795394e223-MathJax-284-QINUの質点の運動方程式と同じである。
以下の解説も参考にしてください。
複雑にみえる運動も重心の運動をみれば簡単である
体操選手の運動は、跳躍などで空中をまいながら、回転や体の屈伸、ひねりなどを行う。大変複雑で美しい。
しかし、導出した質点系の重心の運動法則から、体の重心の運動は、投射体の運動であり、放物線をえがいて移動することが分かる。
空中に飛び出た瞬間の重心の位置と速度(速さと方向・向き）で、その軌跡は完全に決まってしまうのである。
剛体の運動と回転
剛体
剛体(Rigid body)とは、
質点系であって、それらの、どの2質点の間の距離も変わらない,特殊な質点系のことを言う。
どの2質点の間の距離も変わらなければ変形は起こらない。
固くて変形しにくい物体を理想化した概念である。
剛体の運動
剛体は変形しない質点系なので、その運動は、重心の運動と、重心の周りの回転運動を合成したものになる。
重心の運動は前の節で説明したように、質点の運動と同じように簡単に扱える。
重心の周りの回転運動について解析するには、少し難しい数学が必要になる。
- ウィキペディア（剛体の力学）を参照のこと。
このテキストでは、固定軸の周りの回転運動を中心に、 剛体運動の初歩と釣合の条件について学ぶ。
固定軸のまわりの回転運動
剛体が、剛体の中を通る固定軸の周りを回転する運動（車輪の回転など）を考える。
応用も考え、回転軸は重心を通らなくてもよいように一般化しておく。
（注）なお、軸が動かないようにするためには軸受が必要である。
工夫しても回転時に軸は軸受から多少の摩擦力を受け、回転にブレーキがかかる。
しかし、これは無視出来るほど小さいと仮定する。
すると軸が受ける力は、軸の変動を防ぎ、固定軸の周りの運動に限定させる作用を持ち、
回転を遅める作用は持たないことになる。
回転運動の表示法
固定軸まわりの剛体の運動はどのように表示したらよいだろうか。
・剛体の位置を表す変数；回転角
剛体が幾ら回転したか分かるように、剛体の、回転軸上にない一点UNIQ646975795394e223-MathJax-285-QINUに印を付ける。
次に、角度を測る基準線をきめるため、座標系を決めよう。
UNIQ646975795394e223-MathJax-286-QINUから固定軸へ垂線をひき、その足を原点UNIQ646975795394e223-MathJax-287-QINUとし,固定軸をｚ座標とする(静止した)３次元直交座標UNIQ646975795394e223-MathJax-288-QINUを考える。
剛体が固定軸の周りを回転すると、印UNIQ646975795394e223-MathJax-289-QINUはxy平面上を、原点UNIQ646975795394e223-MathJax-290-QINUを中心に円を描いて動くことになる。
その位置ベクトルUNIQ646975795394e223-MathJax-291-QINUがx軸の正方向となす角度UNIQ646975795394e223-MathJax-292-QINUを、回転角と呼ぶ。図参照。
但し、x軸から反時計回りの角を正にする。
また一回転した後ならば、一回転の角UNIQ646975795394e223-MathJax-293-QINUを加え、逆周りに一回転した後ならUNIQ646975795394e223-MathJax-294-QINUを引き、
角度だけでなく回転数も分かるようにする。
回転角が指定されると、点UNIQ646975795394e223-MathJax-295-QINUの位置が決まる。
それだけでなく剛体は変形しないので、剛体のすべての点の位置がきまる。
そこで回転角UNIQ646975795394e223-MathJax-296-QINUの時間変化UNIQ646975795394e223-MathJax-297-QINUを明らかにすれば、剛体の回転運動は定まる。
固定軸のまわりの回転運動において回転角の果たし役割は、質点の運動において質点の位置が果たし役割に対応していることが分かる。
・回転の角速度と角加速度
UNIQ646975795394e223-MathJax-298-QINUを時間で微分したUNIQ646975795394e223-MathJax-299-QINUを回転の角速度と呼ぶ。
直観的には、時刻UNIQ646975795394e223-MathJax-300-QINUの瞬間の、回転の速さ（回転角の時間に対する変化率）を表す。
さらにもう一回時間微分したUNIQ646975795394e223-MathJax-301-QINUを回転の角加速度と呼ぶ。
剛体に作用する力の回転力(トルク）
質点の運動に倣って、剛体に作用する力によって、その位置(＝回転角）がどう変化するかの法則を導出したい。
しかし、剛体の回転の場合、ある方向の力は、剛体の回転に全く関係しない。
例えば、回転軸から放射状にでる半直線方向の力は全く回転の変化に寄与しない。
そこで剛体の回転を変化させる力とはなにかという問題から考察する必要が起こる。
質点運動における力の定義(力と運動量の変化の関係）や力と仕事の関係など力の係っている式のなかから、
剛体の回転運動に容易に拡張出来るものを選び、その式から、回転に関する力を求めることを試みる。
力の定義からは、回転運動への拡張を、推測することは難しい。
力と仕事の関係の考察をしてみよう。
力と仕事の関係からの考察
適当な直交座標系をさだめ、ベクトルは、座標成分で表示する。
質点に、一定の力UNIQ646975795394e223-MathJax-302-QINUを作用させて、x軸方向に変位させる。
質点はこの軸の上でしか動けないように拘束され、摩擦はないと仮定する。
質点の変位ベクトルは一次元の変数UNIQ646975795394e223-MathJax-303-QINUを使ってUNIQ646975795394e223-MathJax-304-QINUと表せる。
すると力のなす仕事は、UNIQ646975795394e223-MathJax-305-QINUである。
逆に物体に一定の力を加え、x軸上でUNIQ646975795394e223-MathJax-306-QINUだけ変位させた時の仕事UNIQ646975795394e223-MathJax-307-QINUが分かれば、質点を動かした力は
UNIQ646975795394e223-MathJax-308-QINU
で求められる。
UNIQ646975795394e223-MathJax-309-QINUは、質点をx軸上で動かすことには全く寄与せず、
x軸に拘束された質点を動かす力は、UNIQ646975795394e223-MathJax-310-QINUなのである。
固定軸まわりの回転もその変位は一次元の変数である回転角度で表わせるので、
これに倣って、
UNIQ646975795394e223-MathJax-311-QINU回転した角度
を、回転にかんする力であると考える。これを回転力と呼ぶ。トルクともいう。
この方針を実行して回転力を具体的に求めよう。
剛体に力を加え微小角動かす時の、力のなす仕事の算出
図4.1のように剛体の任意の一点UNIQ646975795394e223-MathJax-312-QINUを考える。
z座標の上方からxy平面を見下ろしているので、ｚ座標は点になりUNIQ646975795394e223-MathJax-313-QINUと書いてある。
まず一点UNIQ646975795394e223-MathJax-314-QINUに力UNIQ646975795394e223-MathJax-315-QINUが作用して、微小角UNIQ646975795394e223-MathJax-316-QINUだけ回転したときの
仕事UNIQ646975795394e223-MathJax-317-QINUを計算し回転力を求めよう。
UNIQ646975795394e223-MathJax-318-QINU点から回転軸（ｚ軸）に垂線を下ろし、その足をUNIQ646975795394e223-MathJax-319-QINUとする。
UNIQ646975795394e223-MathJax-320-QINUの長さをUNIQ646975795394e223-MathJax-321-QINU、x軸となす角をUNIQ646975795394e223-MathJax-322-QINU(ラジアン)と置く。
この角度は、
剛体につけた印の位置ベクトルUNIQ646975795394e223-MathJax-323-QINUがｘ軸となす回転角UNIQ646975795394e223-MathJax-324-QINUと
このベクトルとUNIQ646975795394e223-MathJax-325-QINU（をｘｙ平面に平行移動したベクトル）の間の角の和である。
後者は、剛体なので、運動しても変わらない定数である。そこで、UNIQ646975795394e223-MathJax-326-QINU定数,と書ける。
剛体がｚ軸の周りを微小角UNIQ646975795394e223-MathJax-327-QINU回転して、点UNIQ646975795394e223-MathJax-328-QINUが図の点UNIQ646975795394e223-MathJax-329-QINUに移動したとする。
すると角UNIQ646975795394e223-MathJax-330-QINUはほぼ直角（=UNIQ646975795394e223-MathJax-331-QINU）でUNIQ646975795394e223-MathJax-332-QINUの長さUNIQ646975795394e223-MathJax-333-QINUは、UNIQ646975795394e223-MathJax-334-QINU。
UNIQ646975795394e223-MathJax-335-QINUのｘ成分とｙ成分は、図4－１中に示したように、それぞれ、UNIQ646975795394e223-MathJax-336-QINU、UNIQ646975795394e223-MathJax-337-QINU。
UNIQ646975795394e223-MathJax-338-QINUを代入すると、
UNIQ646975795394e223-MathJax-339-QINU、UNIQ646975795394e223-MathJax-340-QINU、UNIQ646975795394e223-MathJax-341-QINU
点UNIQ646975795394e223-MathJax-342-QINUに作用する力UNIQ646975795394e223-MathJax-343-QINUが、物体をUNIQ646975795394e223-MathJax-344-QINUだけ動かしたので、
その仕事は、UNIQ646975795394e223-MathJax-345-QINU（内積）。
この右辺を内積の性質を用いて座標成分で表すと、
UNIQ646975795394e223-MathJax-346-QINU
UNIQ646975795394e223-MathJax-347-QINU
ｚ軸まわりの回転力の導出
ゆえに、力UNIQ646975795394e223-MathJax-348-QINUのｚ軸まわりの回転力（トルク）UNIQ646975795394e223-MathJax-349-QINUはUNIQ646975795394e223-MathJax-350-QINU
に等しい。
これより、UNIQ646975795394e223-MathJax-351-QINUが得られる。
この式と、直線上に拘束された質点の運動における、力と仕事の関係式( 節 項）と対比させると、
UNIQ646975795394e223-MathJax-352-QINU は、拘束された直線の上を動かすときに、働いた力の成分が対応し、
UNIQ646975795394e223-MathJax-353-QINU は、変位量 に対応していることが分かる。
ｚ軸まわりの回転力（トルク）の性質
(1)力UNIQ646975795394e223-MathJax-354-QINUのｚ軸まわりの回転力は,UNIQ646975795394e223-MathJax-355-QINUには関係しない。
言いかえるとz軸を固定軸とする剛体にｚ軸の方向の力を加えても、ｚ軸の周りの回転は起こらない。
(2)剛体の１点UNIQ646975795394e223-MathJax-356-QINUに作用する力UNIQ646975795394e223-MathJax-357-QINUを考える。
点UNIQ646975795394e223-MathJax-358-QINUからｚ軸に下ろした垂線の足をUNIQ646975795394e223-MathJax-359-QINUと書く。
力UNIQ646975795394e223-MathJax-360-QINUを、,
UNIQ646975795394e223-MathJax-361-QINU方向の成分UNIQ646975795394e223-MathJax-362-QINUと、
ｚ軸まわりの回転によりUNIQ646975795394e223-MathJax-363-QINUの描く、UNIQ646975795394e223-MathJax-364-QINUを中心とする回転円の（左回りの）接線方向の成分UNIQ646975795394e223-MathJax-365-QINU
および、これら２成分に直交する成分(ｚ軸と平行)
に分解する(図参照）。この時、
・力UNIQ646975795394e223-MathJax-366-QINUのｚ軸まわりの回転力は、零である。
すなわち、動径方向の力は回転に寄与しない。
・力UNIQ646975795394e223-MathJax-367-QINUのｚ軸まわりの回転力は、UNIQ646975795394e223-MathJax-368-QINUのｚ軸まわりの回転力に等しい。
数式で表すと、UNIQ646975795394e223-MathJax-369-QINU
(3)剛体に作用する力の作用点を、力の作用線上で動かす限り、回転力は変化しない。
ここで、力の作用線とは、力の作用点を通り、力の方向と重なる直線のこと。
これらはいずれも直観と合致する。
証明は、試みてほしい。
他の軸の周りの回転力
力UNIQ646975795394e223-MathJax-370-QINUのｘ軸、y軸まわりの回転力も同様に計算できる。結果は、
x軸まわりの回転力；UNIQ646975795394e223-MathJax-371-QINU
y軸まわりの回転力；UNIQ646975795394e223-MathJax-372-QINU
原点まわりの力のモーメント
位置ベクトルUNIQ646975795394e223-MathJax-373-QINUの剛体の点UNIQ646975795394e223-MathJax-374-QINUに作用する力UNIQ646975795394e223-MathJax-375-QINUの原点まわりの力のモーメントを、
UNIQ646975795394e223-MathJax-376-QINUx軸まわりのトルク、y軸まわりのトルク、z軸まわりのトルクUNIQ646975795394e223-MathJax-377-QINUで定義する。
数式で書くと、
UNIQ646975795394e223-MathJax-378-QINU,
ベクトル積と力のモーメントのベクトル積表示
以上の結果は、ベクトル積（クロス積ともいう）を用いると簡潔、正確に表現でき、
回転運動の性質を調べるのが容易になる。
3次元ベクトルUNIQ646975795394e223-MathJax-379-QINU のベクトル積UNIQ646975795394e223-MathJax-380-QINUとは、3次元ベクトルであり,
大きさはUNIQ646975795394e223-MathJax-381-QINU を2辺とする平行四辺形の面積に等しく、
方向はこの四辺形に垂直で、向きは、UNIQ646975795394e223-MathJax-382-QINUが右手系をなすように定めたものである。
すると、ベクトル積に関して以下の8つの命題が成り立つ。
ベクトル積にかんする命題
以下に述べる全ての命題で、
UNIQ646975795394e223-MathJax-383-QINUは3次元ベクトル
UNIQ646975795394e223-MathJax-384-QINUは実数とする。
命題１．
UNIQ646975795394e223-MathJax-385-QINU を, UNIQ646975795394e223-MathJax-386-QINUと垂直な成分UNIQ646975795394e223-MathJax-387-QINU と,平行な成分UNIQ646975795394e223-MathJax-388-QINU の和に分解するとき、
UNIQ646975795394e223-MathJax-389-QINU
UNIQ646975795394e223-MathJax-390-QINU
命題２．
UNIQ646975795394e223-MathJax-391-QINU
命題３
UNIQ646975795394e223-MathJax-392-QINU
命題４．
UNIQ646975795394e223-MathJax-393-QINU
命題４の系
UNIQ646975795394e223-MathJax-394-QINU
UNIQ646975795394e223-MathJax-395-QINU
命題５．
UNIQ646975795394e223-MathJax-396-QINU を
それぞれ大きさ(長さ)１で互いに直交し、右手系をなす、ベクトル(右手系をなす正規直交基底)とする。
この時、
UNIQ646975795394e223-MathJax-397-QINU
命題６．
ベクトルUNIQ646975795394e223-MathJax-398-QINUを,命題５で用いた基底UNIQ646975795394e223-MathJax-399-QINU で決まる座標の座標成分で表示しておく。
するとUNIQ646975795394e223-MathJax-400-QINU
命題７．
UNIQ646975795394e223-MathJax-401-QINU
命題８．
UNIQ646975795394e223-MathJax-402-QINU と UNIQ646975795394e223-MathJax-403-QINUを,UNIQ646975795394e223-MathJax-404-QINUにかんして微分可能な、ベクトルに値をとる関数とする。すると、
UNIQ646975795394e223-MathJax-405-QINU は、UNIQ646975795394e223-MathJax-406-QINUにかんして微分可能で、
UNIQ646975795394e223-MathJax-407-QINU
これらの証明は、後節で扱う。 ベクトル積に関しては以下を参照のこと。
力のモーメントのベクトル積表示
ベクトル積の命題６を用いると、
位置ベクトルUNIQ646975795394e223-MathJax-408-QINUの点に作用するUNIQ646975795394e223-MathJax-409-QINU の
原点まわりの力のモーメントは、UNIQ646975795394e223-MathJax-410-QINU
x軸まわりの回転力(トルク）は、UNIQ646975795394e223-MathJax-411-QINU と表せることが分かる。
ｙ軸とｚ軸周りの回転力も、それぞれ
UNIQ646975795394e223-MathJax-412-QINU ,UNIQ646975795394e223-MathJax-413-QINUで
表せる。
力のモーメントの性質
もっと一般に、どんな軸の周りの回転力も、UNIQ646975795394e223-MathJax-414-QINU から得られる。
定理；
UNIQ646975795394e223-MathJax-415-QINUを、原点を始点とする大きさ１の任意のベクトルとする。
すると、
UNIQ646975795394e223-MathJax-416-QINU UNIQ646975795394e223-MathJax-417-QINUは、力UNIQ646975795394e223-MathJax-418-QINUのUNIQ646975795394e223-MathJax-419-QINU軸の周りの回転力になる。式で書くと、UNIQ646975795394e223-MathJax-420-QINU
この式を、回転力の定義に基づいて言い換えると、
力UNIQ646975795394e223-MathJax-421-QINUのもとで、剛体をUNIQ646975795394e223-MathJax-422-QINU軸の右まわりに角度UNIQ646975795394e223-MathJax-423-QINUだけ回転させたとき、
UNIQ646975795394e223-MathJax-424-QINUのなす仕事UNIQ646975795394e223-MathJax-425-QINUは、UNIQ646975795394e223-MathJax-426-QINU
証明；
９つに分けて示す。
ⅰ）準備
図のように、剛体の点 UNIQ646975795394e223-MathJax-427-QINU から、UNIQ646975795394e223-MathJax-428-QINU 軸に垂線を下ろし、その足を UNIQ646975795394e223-MathJax-429-QINU とする。
力 UNIQ646975795394e223-MathJax-430-QINU のもとで、剛体が UNIQ646975795394e223-MathJax-431-QINU を固定軸にして、
微小時間に、微小角UNIQ646975795394e223-MathJax-432-QINU だけ回転したとする。
このとき、UNIQ646975795394e223-MathJax-433-QINU が移った先を、UNIQ646975795394e223-MathJax-434-QINU とする。
ⅱ）回転角 UNIQ646975795394e223-MathJax-435-QINU が微小なので、
この回転中の UNIQ646975795394e223-MathJax-436-QINU の軌跡(円弧の微小部分）は、有向線分UNIQ646975795394e223-MathJax-437-QINU で精度高く、近似できる。
ⅲ）この間に力 UNIQ646975795394e223-MathJax-438-QINU がなした仕事 UNIQ646975795394e223-MathJax-439-QINU は、UNIQ646975795394e223-MathJax-440-QINU
この仕事を、回転角UNIQ646975795394e223-MathJax-441-QINUで割ると、力の UNIQ646975795394e223-MathJax-442-QINU 軸周りの回転力が得られる。そこで、UNIQ646975795394e223-MathJax-443-QINU を、この定理で与えられている諸量を使って表現し、これを用いて、仕事を計算しよう。
ⅳ）有向線分UNIQ646975795394e223-MathJax-444-QINUの方向を求める。
UNIQ646975795394e223-MathJax-445-QINU は、UNIQ646975795394e223-MathJax-446-QINU 軸と垂直でUNIQ646975795394e223-MathJax-447-QINU を通る平面UNIQ646975795394e223-MathJax-448-QINU上にあり、
UNIQ646975795394e223-MathJax-449-QINUを中心とする円の弧の微小部分をなすので、線分UNIQ646975795394e223-MathJax-450-QINU と直交する。UNIQ646975795394e223-MathJax-451-QINU
また、UNIQ646975795394e223-MathJax-452-QINU 軸と垂直でUNIQ646975795394e223-MathJax-453-QINU を通る平面UNIQ646975795394e223-MathJax-454-QINU上にあるので、
UNIQ646975795394e223-MathJax-455-QINUはUNIQ646975795394e223-MathJax-456-QINU 軸とも直交し、従って線分UNIQ646975795394e223-MathJax-457-QINUと直交する。UNIQ646975795394e223-MathJax-458-QINU
ゆえに、UNIQ646975795394e223-MathJax-459-QINU は、３点O,Q,Pを通る平面 UNIQ646975795394e223-MathJax-460-QINU と直交する。
すると、UNIQ646975795394e223-MathJax-461-QINU は、平面 UNIQ646975795394e223-MathJax-462-QINU 上のすべての線分と直交する。
ゆえに、UNIQ646975795394e223-MathJax-463-QINU,UNIQ646975795394e223-MathJax-464-QINU
これで、UNIQ646975795394e223-MathJax-465-QINU の方向は、求まった。
ⅴ）有向線分UNIQ646975795394e223-MathJax-466-QINU の向き
点 UNIQ646975795394e223-MathJax-467-QINU は、UNIQ646975795394e223-MathJax-468-QINU 軸の周りを右周りに回転するので、その向きは、
UNIQ646975795394e223-MathJax-469-QINU と同じ向きである。
ⅵ）UNIQ646975795394e223-MathJax-470-QINU の大きさ。
UNIQ646975795394e223-MathJax-471-QINUは、 UNIQ646975795394e223-MathJax-472-QINU を中心とする、半径 UNIQ646975795394e223-MathJax-473-QINU の円弧の一部なので、
その中心角UNIQ646975795394e223-MathJax-474-QINU を用いて、UNIQ646975795394e223-MathJax-475-QINU
ⅶ）ⅳ）、ⅴ）、ⅵ）から
UNIQ646975795394e223-MathJax-476-QINU
ⅷ）UNIQ646975795394e223-MathJax-477-QINUが成り立つ。
なぜなら、
UNIQ646975795394e223-MathJax-478-QINU ,ここで UNIQ646975795394e223-MathJax-479-QINU はUNIQ646975795394e223-MathJax-480-QINU とUNIQ646975795394e223-MathJax-481-QINU の間の角。
この式をⅶ)で得られた式に代入すれば、所望の結果が得られる。
ⅸ）UNIQ646975795394e223-MathJax-482-QINU
ⅹ）UNIQ646975795394e223-MathJax-483-QINU
定理の証明終わり。
（注）剛体が固定軸の周りでなく、自由に回転するときでも、
ある瞬間には、ある軸の周りの回転になっている。
力のモーメントは、どんな軸周りの回転力の情報も含んでいることが証明されたので、
回転運動一般に有効な概念であることが分かる。
剛体の複数個所に作用する力の回転力
次に剛体の多くの点に力を加えたときの回転力を求めよう。
力の作用点をUNIQ646975795394e223-MathJax-484-QINU、力をUNIQ646975795394e223-MathJax-485-QINUとする。
これらの力のもとで剛体がz軸まわりをUNIQ646975795394e223-MathJax-486-QINUだけ微小回転するときの、各力のなす仕事の合計は、
UNIQ646975795394e223-MathJax-487-QINU
従って、作用点UNIQ646975795394e223-MathJax-488-QINUの力UNIQ646975795394e223-MathJax-489-QINUの全体がもつz軸まわりの回転力は、
UNIQ646975795394e223-MathJax-490-QINU ここでUNIQ646975795394e223-MathJax-491-QINUは力UNIQ646975795394e223-MathJax-492-QINUのｚ軸まわりの回転力。
同様に、x軸まわりとy軸まわりの回転力も、それぞれ
UNIQ646975795394e223-MathJax-493-QINU
UNIQ646975795394e223-MathJax-494-QINU
力UNIQ646975795394e223-MathJax-495-QINUの原点周りに力のモーメントUNIQ646975795394e223-MathJax-496-QINUはUNIQ646975795394e223-MathJax-497-QINUで定義した。
全ての力の原点周りの力のモーメントも、同様に
UNIQ646975795394e223-MathJax-498-QINUで定義する。すると、
UNIQ646975795394e223-MathJax-499-QINU
全ての力の原点周りの力のモーメントUNIQ646975795394e223-MathJax-500-QINUも、上述の定理と同様の定理(定理の系と呼ぶ）が成り立つ。
定理の系
UNIQ646975795394e223-MathJax-501-QINUを剛体に作用する全ての力のモーメントとし、
UNIQ646975795394e223-MathJax-502-QINUを、原点を始点とする大きさ１の任意のベクトルとする。
すると、
UNIQ646975795394e223-MathJax-503-QINU UNIQ646975795394e223-MathJax-504-QINUは、力UNIQ646975795394e223-MathJax-505-QINUのUNIQ646975795394e223-MathJax-506-QINU軸の周りの回転力になる。
式で書くと、UNIQ646975795394e223-MathJax-507-QINU
この式を、回転力の定義に基づいて言い換えると、
力UNIQ646975795394e223-MathJax-508-QINUのもとで、剛体をUNIQ646975795394e223-MathJax-509-QINU軸の右まわりに角度UNIQ646975795394e223-MathJax-510-QINUだけ回転させたとき、
これらの力のなす仕事UNIQ646975795394e223-MathJax-511-QINUは、UNIQ646975795394e223-MathJax-512-QINU
この系は、内積の性質を使えば、定理から、容易に導かれる。
質点系に作用する重力のモーメント
ｎ個の質点系を考える。
第ｉ質点の質量をUNIQ646975795394e223-MathJax-513-QINU、位置ベクトルをUNIQ646975795394e223-MathJax-514-QINUとする。
鉛直上方をｚ軸の正方向とする直交座標系UNIQ646975795394e223-MathJax-515-QINUをいれる。
この質点系に作用する重力の原点周りのモーメントUNIQ646975795394e223-MathJax-516-QINUを求めよう。
第ｉ質点に働く重力は、
UNIQ646975795394e223-MathJax-517-QINU
なので、
UNIQ646975795394e223-MathJax-518-QINU
UNIQ646975795394e223-MathJax-519-QINU
すでに学んだことから、この質点系の重心は、
UNIQ646975795394e223-MathJax-520-QINU
であった。ここで、 UNIQ646975795394e223-MathJax-521-QINU 。
これを用いて、モーメントを書きなおすと、
UNIQ646975795394e223-MathJax-522-QINU
となる。
これは、質点系の重心の位置に質点系の全質量が集中している時の、
原点周りの重力のモーメントに等しい。
