物理/運動法則の応用3
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運動の法則の応用(3)剛体の回転運動と釣合い
ある点の周りの力のモーメントUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-421-QINU が、その点をとおる、あらゆる回転軸にかんする回転力を表現していることがわかった。
この節では力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-422-QINUと運動量の変化の関係をあたえるニュートンの運動方程式(第2法則)を変形して、
回転力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-423-QINUにかんする方程式を導く。
またその応用として、剛体のつり合い条件を求める。
剛体の内部力についての仮定
直交右手座標系UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-424-QINU を定める。原点 UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-425-QINU は、考察に都合のよい点を選ぶ。
剛体をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-426-QINU個の(質点と考えてよい)微小部分UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-427-QINUに分け、
その質量をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-428-QINU、位置ベクトルをUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-429-QINUとする。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-430-QINUが外部から受ける力をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-431-QINU、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-432-QINU が剛体の他の部分UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-433-QINU から受ける力(内力)をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-434-QINUとおく。
後者は、剛体が変形しないよう、剛体の原子間に働かせる力に起因する。
この原子間の力は、原子の電荷による電気力と、
原子同士が接近しすぎたときに作用する量子力学的力により生じる。
作用・反作用の法則(運動の第3法則)から、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-435-QINU 。
さらに、剛体の2点間に働く内力の方向は、
その2点を結ぶ直線の方向と同じだと、仮定する。
各質点のニュートンの運動方程式
各質点ごとに、ニュートンの運動方程式を立てると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-436-QINU
これを変形して
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-437-QINU UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-438-QINU
この式から、
力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-439-QINUの回転力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-440-QINUにかんする式を導こう。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-441-QINUにかんする式の誘導
式(1)の両辺に左側から、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-442-QINU のベクトル積を施すと、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-443-QINU UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-444-QINU
ベクトル積の性質3と性質4により、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-445-QINU UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-446-QINU
ここで、ベクトル積の性質8より
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-447-QINU
なので、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-448-QINU
質点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-449-QINUの運動量をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-450-QINUと書くと、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-451-QINUなので、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-452-QINU
定義;角運動量(運動量のモーメントともいう)
質点の位置ベクトルをUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-453-QINU、運動量をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-454-QINUと書くとき、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-455-QINUを,この質点の角運動量と呼ぶ。
これを用いると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-456-QINU
回転の運動方程式の導出
故に、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-457-QINU
ここで、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-458-QINU
式(4)の右辺の第2項の上付き添え字i,jを、それぞれ、j'と i'でおきかえられるので、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-459-QINU
内力は作用反作用の法則が適用できると仮定しているので、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-460-QINU 。この式を上の式の右辺に代入すると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-461-QINU
この式の右辺の和をとる変数i',j' を i,j におきかえると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-462-QINU
この式を、式(5)の右辺の第2項に代入して整頓すると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-463-QINU
さらに、内力に関する第2の仮定により、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-464-QINU とUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-465-QINUは同じ方向なので、ベクトル積の定義より、この項は、零となることが分かる。
故に、式(4)の右辺の第2項は零となり、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-466-QINU
が得られる。全角運動量をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-467-QINUとおけば、
式(6)は、次のように書ける。
命題;回転運動の関するオイラーの運動方程式
剛体の内力に上述の2つの仮定を付ける。このとき、
剛体に作用する全ての外部力の原点周りの力のモーメントUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-468-QINUと、
全角運動量UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-469-QINUの間には、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-470-QINU (7)
この命題の導出までは詳しく述べたが、本テキストではこれ以上は深入りしない。
この先にも興味がある方は、次の記事をご覧ください。
固定軸の周りの剛体の回転運動の方程式
回転運動の運動方程式から、任意の軸の周りの回転運動の方程式が簡単に導出できる。
z軸周りの場合を例にとり、説明する。
z軸周りの回転力はUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-471-QINUなので、
回転運動の方程式から
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-472-QINU
この式の右辺に,UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-473-QINU を代入すると
右辺
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-474-QINU 微分の加法性から
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-475-QINU 内積の加法性から
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-476-QINU ベクトル積の性質8から
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-477-QINU UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-478-QINUを代入し、ベクトル積の性質を用いると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-479-QINU
故に、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-480-QINU
剛体はz軸の周りを回転するので、
その各点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-481-QINU(位置ベクトルUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-482-QINU)は、
z軸と直交する平面上を、z軸を中心とする円を描いて運動する。
この拘束条件を考慮して、
時刻UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-483-QINUの位置ベクトルUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-484-QINUの座標成分を書きなおすと、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-485-QINU
ここでUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-486-QINUは、点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-487-QINUとz軸との距離、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-488-QINUは、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-489-QINUをxy平面に正射影した像がx軸となす角度である。図参照。
剛体につけておいた印UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-490-QINUの位置ベクトルUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-491-QINUを
xy平面に正射影した像がx軸となす角(回転角)UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-492-QINUを用いると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-493-QINU
(UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-494-QINUは、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-495-QINUごとに決まる、定数)と書ける。
式(1)の右辺を、式(2)を利用して、変形すると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-496-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-497-QINU
ベクトル積の性質6より、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-498-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-499-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-500-QINU
ここで、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-501-QINUを代入すると
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-502-QINU
以上により、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-503-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-504-QINU
が得られた。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-505-QINUとおくと、この式は
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-506-QINU
と書ける。ここでUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-507-QINUを、剛体の軸まわりの慣性モーメントと呼ぶ。
これがz軸を固定軸とする剛体の回転運動の運動方程式である。
原点を始点とする任意の回転軸UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-508-QINUまわりの回転の方程式も同様に得られる。
この方程式の変数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-509-QINU は、一次元のスカラーなので、
質点がなめらかに拘束され、直線上を運動するときの運動方程式
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-510-QINU
と、対比させる。すると、
質点に作用する力 UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-511-QINU <===> 剛体に作用する回転力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-512-QINU
質点の質量 UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-513-QINU <===> 剛体のUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-514-QINU軸まわりの慣性モーメント
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-515-QINU、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-516-QINUは質量UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-517-QINUとUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-518-QINU軸を延長した直線との距離
質点の位置変数 UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-519-QINU <===> 剛体のUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-520-QINU軸周りの回転角変数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-521-QINU
質点の速度 UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-522-QINU <===>剛体のUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-523-QINU軸周りの角速度UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-524-QINU;
質点の運動量 UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-525-QINU <===> 剛体の角運動量UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-526-QINU;
運動方程式UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-527-QINU <===> UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-528-QINU
という、対応関係があることが分かる。
この節で得た固定軸まわりの回転運動の方程式から、
もしUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-529-QINU ならば、任意の軸まわりの回転力が零なので、
剛体の任意の軸まわりの角加速度が零、角速度が一定となることが分かる。
剛体の回転の運動エネルギー
剛体の各微小部分(質量UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-530-QINU)の速度を UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-531-QINUと書くと、
その運動エネルギーは UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-532-QINUなので、
剛体全体の運動エネルギーは、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-533-QINU
回転運動している各微小部分の速度は、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-534-QINUと書けるので、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-535-QINU
物理振り子
剛体は、重心を通らない水平軸の周りで、重力の作用を受け振動する。
これを物理振り子、あるいは実体振り子という。
水平回転軸をx軸とし、鉛直上方をz軸の正方向とし、yz平面が剛体の重心を通る座標系を考え、
回転軸とこの平面の交点を原点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-536-QINU、重心をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-537-QINUと記す。図参照。
回転はなめらかで摩擦力は無視できるとする。
すると、回転軸から、この剛体が受ける力は、剛体をこの軸に支える作用を持つだけで、剛体の振動に何の影響も与えない。
そこで、剛体にかかる力は、重力だけと考えて良い。
重力の原点周りの力のモーメントUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-538-QINUは、
剛体の重心UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-539-QINUに、剛体の全質量UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-540-QINUがあるとしたときの
重力の原点周りのモーメントに等しいことが分かっている。
故に、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-541-QINU
x軸まわりの力のモーメントは、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-542-QINU
従って、回転の運動方程式は
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-543-QINU
ここでUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-544-QINUは、軸まわりの、振り子の慣性質量。
剛体の慣性モーメントの計算(一次元の剛体)
剛体UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-545-QINUは、ごく細く、まっすぐな棒で,
長さUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-546-QINU、質量密度(単位長さあたりの質量)は一定でUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-547-QINUとする。
棒の左端からUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-548-QINUの場所UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-549-QINUを通り、棒に直交する軸まわりの慣性モーメントを具体的に計算しよう。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-550-QINUを原点とし、棒と同じ方向の数直線を考え、これを座標系として採用。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-551-QINUと表現する。
剛体UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-552-QINUの慣性モーメントは、
剛体を質点とみなせるほど細かい部分UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-553-QINUに分割して、
各UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-554-QINUの質量UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-555-QINUと、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-556-QINUとUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-557-QINUとの距離UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-558-QINUを用いて、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-559-QINUで定義した。但しUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-560-QINU
剛体の分割と慣性モーメントの近似式・リーマン和
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-561-QINUの質量UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-562-QINUは、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-563-QINUの長さUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-564-QINUに質量密度UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-565-QINUを掛ければ得られるので
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-566-QINUであり、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-567-QINU
と書ける。
しかし、剛体UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-568-QINUをいくら細かく分割しても、
各小区間UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-569-QINUは大きさ(長さ)をもつので、
原点との距離UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-570-QINUは、一つに定まらない。
そこで、各小区間UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-571-QINUから、代表点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-572-QINUを選びだし、その点の原点からの距離UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-573-QINU、(UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-574-QINU絶対値)を、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-575-QINUとみなす。
すると、慣性モーメントUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-576-QINUの式は
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-577-QINU
で近似される。
そこで、この分割を
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-578-QINU
と表し、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-579-QINU
で,慣性モーメントの近似式を表すことにする。
すると、
慣性モーメントの近似式は、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-580-QINU
と書ける。
この値は分割の仕方と分割小区間の代表点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-581-QINUの選び方によって変化する。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-582-QINUの中で、原点に最も近い点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-583-QINUにとると
最小値
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-584-QINU
をとり、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-585-QINUの中で、原点に最も遠い点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-586-QINUにとると
最大値 UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-587-QINU
を取る。
関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-588-QINUを使って表現すれば、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-589-QINU
であり、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-590-QINUを満たす。
質量密度が場所で変わるときは、、関数はUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-591-QINUになり、
剛体の重心を求めるときは、後述するように、別の関数が現れる。
そこで、数学の分野では、一般の関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-592-QINUにたいして
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-593-QINU
を求め、分割UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-594-QINUとUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-595-QINUの代表点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-596-QINUに関する関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-597-QINUのリーマン和と呼ぶ。
その最小値UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-598-QINUと最大値UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-599-QINUも,同様に定義される。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-600-QINU
慣性モーメントの近似式(1)は、関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-601-QINUにたいするリーマン和である。
慣性モーメントの近似式の意味
今後、関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-602-QINUは、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-603-QINUで定義された有界関数として、
議論を進める。
有界関数とは、十分大きな正数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-604-QINUを選べば、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-605-QINUの全ての点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-606-QINUに対して、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-607-QINUとなること。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-608-QINUを代入すれば、考察対象の剛体の慣性モーメントの話になる。
リーマン和
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-609-QINU
は、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-610-QINUのグラフを、棒グラフで近似したときの棒グラフの作る面積(各角柱の面積和)であることが分かる。図参照。
また、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-611-QINUは一点鎖線でしめす、小さいほうの長方形の和であり、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-612-QINUは点線でしめす、大きいほうの長方形の和である。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-613-QINUは、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-614-QINUのグラフとx軸およびy軸と平行な直線UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-615-QINU、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-616-QINUで囲まれる部分の面積UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-617-QINUを近似している。
また、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-618-QINU
であり、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-619-QINUは面積を下から評価し、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-620-QINUは面積を上から評価していることがわかる。
分割を限りなく細かくしていくとき、
リーマン和が分割や代表点の選び方に関係ない数に収束するならば、
その極限値は、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-621-QINUのグラフとx軸およびy軸と平行な直線UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-622-QINU、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-623-QINUで囲まれる部分の面積
と考えられる。
もし、分割UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-624-QINUを細かくしていくとき
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-625-QINUとUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-626-QINUが同じ値に収束することが示せれば、
(3)式と(4)式から、リーマン和は、関数のグラフの作る面積UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-627-QINUに収束することが分かった。
可積分の定義と積分
「分割を細かくしていくとき、リーマン和が収束する」ということは、
面積を決める上で決定的に重要がことなので、
可積分という名を付けて、数学的に厳密に定義する。
このためにはまず、分割の大きさを定める必要がある。
定義:分割の大きさ
分割 UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-628-QINUの大きさとは、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-629-QINU
定義:可積分と積分
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-630-QINUを、有界閉区間UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-631-QINU上で定義され、実数の値をとる関数とする。
もし、ある実数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-632-QINUが存在して、
どんな分割UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-633-QINUと代表点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-634-QINUであっても、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-635-QINU
が成り立つ時、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-636-QINUはUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-637-QINU上で(リーマン)可積分であるという。
このとき、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-638-QINU をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-639-QINUのUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-640-QINU上での(リーマン)積分といい、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-641-QINU
などと書く。
積分の性質
定理(積分の線形性)
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-642-QINUを、区間UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-643-QINU上で定義された、任意の実数値関数であり、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-644-QINUを任意の実数とする。
このとき、
(1)UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-645-QINUがUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-646-QINU上で可積分ならば、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-647-QINUもUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-648-QINU上で可積分
(2)このとき、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-649-QINU
証明;リーマン和の定義から、区間UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-650-QINUの任意の分割UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-651-QINUと
分割区間の任意の代表点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-652-QINU(UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-653-QINUはUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-654-QINUに含まれる意)に対して、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-655-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-656-QINUは可積分なので、その定義から、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-657-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-658-QINU
(1)式の両辺の極限UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-659-QINU をとろう。
右辺の極限
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-660-QINU
極限の性質から、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-661-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-662-QINU
従って(1)式の左辺の極限UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-663-QINU も存在して、右辺の極限と一致する。
証明終わり。
慣性モーメントの計算(1)リーマン和の極限を求める方法
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-664-QINUは、先述の、ごく細い一様な質量密度UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-665-QINUのまっすぐな棒で、
座標系を入れて、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-666-QINUと表現しておく。
原点を通りこの棒と直交する軸のまわりの(この棒の)慣性モーメントを、
リーマン和の極限を取って求めよう。
区間UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-667-QINUをn(UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-668-QINU)等分して得られる点列,
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-669-QINU
を分点とする分割をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-670-QINUと記す。すると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-671-QINU, UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-672-QINUであり、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-673-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-674-QINUという分割の列は、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-675-QINUを満たす。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-676-QINUがリーマン可積分であることを認めれば、
可積分の定義から、どんな代表点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-677-QINUを選んでも、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-678-QINUとなる。
そこで、代表点をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-679-QINUと選ぶ。
関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-680-QINUを用いると、
分割UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-681-QINUを用いた慣性モーメントの近似値は次のようになる。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-682-QINU
ここで、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-683-QINU(注参照)を利用して、この式を計算すると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-684-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-685-QINUなので、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-686-QINU
故に、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-687-QINU
(注)UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-688-QINUの証明
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-689-QINU なので、両辺のj=1,2,,,n に関する和を取る。
左辺の和はUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-690-QINU
右辺の和はUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-691-QINU
故に、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-692-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-693-QINU UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-694-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-695-QINUの略証
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-696-QINUなので、この両辺のj=1,2,,,nに関する和を取る。
左辺の和はUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-697-QINU、右辺の和はUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-698-QINU,故にUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-699-QINU
慣性モーメントの計算(2)原始関数を利用する方法
積分可能な関数の積分をリーマン和の極限から求める計算は煩雑であり、複雑な形状の剛体の慣性モーメントを求めるにはふさわしくない。
次の定理が強力な計算法を提供する。
定理
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-700-QINUを数直線上の区間、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-701-QINUをUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-702-QINU上可積分な実数値関数
とする。
もしUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-703-QINUが、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-704-QINU上で微分可能で
全てのUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-705-QINUの点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-706-QINUで、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-707-QINU
を満たす関数ならば(注参照)、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-708-QINU
上記の条件を満たす関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-709-QINUを、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-710-QINUの原始関数という。
(注)関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-711-QINUは、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-712-QINU上でしか定義されていないので、
端点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-713-QINUでは、通常の微分は定義できない。そこで、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-714-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-715-QINU
と定義する。
証明;
区間UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-716-QINUの任意の分割
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-717-QINU
に対して、
代表点をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-718-QINU(UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-719-QINUはUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-720-QINUの点の意)とすると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-721-QINUのリーマン和は
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-722-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-723-QINU
小区間UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-724-QINUでの関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-725-QINUの平均勾配
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-726-QINU
は、平均値の定理により、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-727-QINUの中のある一点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-728-QINUにおけるUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-729-QINUの接線の勾配
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-730-QINUに等しので、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-731-QINU
故に、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-732-QINU
そこで、各小区間UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-733-QINUの代表点をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-734-QINUと選べば、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-735-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-736-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-737-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-738-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-739-QINUは可積分なので、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-740-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-741-QINU
証明終わり。
さて、慣性モーメントを求めたい剛体では、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-742-QINUなので、その原始関数は、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-743-QINU
従って、慣性モーメントは、定理を適用して、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-744-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-745-QINU,UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-746-QINUを代入して、整頓すると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-747-QINU
重心の計算
質量密度が場所により変わる、長さUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-748-QINUのごく細い棒UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-749-QINUの重心を求めてみよう。
考えやすくするため、
棒の一端を原点にし、他端がx軸の正の位置にくるように座標系UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-750-QINUをいれる。
この座標系で剛体はUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-751-QINUと書ける。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-752-QINUを小区間UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-753-QINUに分割(分割UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-754-QINUと記す)し、これらの小区間を質点とみなせば、その重心は、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-755-QINU
で定義された(1.1.1節参照)。ここでUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-756-QINU は第i質点の質量、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-757-QINU、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-758-QINUは第i質点の位置ベクトル。
ベクトルを座標成分表示すると、この問題では一次元なので、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-759-QINU、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-760-QINU
しかし、実際には UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-761-QINUは、質点ではないので、
位置ベクトルは、定まらない。
またその質量も密度が一定ならば、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-762-QINUできまるが、
密度が変化するならば、定まらない。
そこで、各小区間 UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-763-QINUの代表点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-764-QINUを選び
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-765-QINU,UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-766-QINU
で近似する。
すると分割UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-767-QINUと代表点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-768-QINUに対応する、
質量UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-769-QINUと重心UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-770-QINUの近似値は、それぞれ
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-771-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-772-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-773-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-774-QINU
ここで、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-775-QINU
もし、関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-776-QINUが積分可能ならば、分割UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-777-QINUを細かくしていけば
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-778-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-779-QINU
もし関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-780-QINUの原始関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-781-QINUが存在する(UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-782-QINU)ならば
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-783-QINU
もし関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-784-QINUも積分可能ならば、分割UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-785-QINUを細かくしていけば
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-786-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-787-QINU
もし関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-788-QINUの原始関数UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-789-QINUが存在する(UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-790-QINU)ならば
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-791-QINU
例;UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-792-QINUならば、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-793-QINUなので UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-794-QINU
また、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-795-QINUとなるのでUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-796-QINU
となり、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-797-QINU
例;UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-798-QINUならば、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-799-QINUなので UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-800-QINU
このときUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-801-QINUなので
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-802-QINUである。UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-803-QINU
2次元以上の物体の慣性モーメントについて
てこの原理と力のモーメント
図のように剛体の棒の中間に支点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-804-QINUがあり、
この点をとおり、図面に垂直な軸の周りを自由に回転する装置を梃子(てこ)と呼ぶ。
てこの原理
梃子の端UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-805-QINUに力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-806-QINUが作用し、他端UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-807-QINUに力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-808-QINUが作用して、
つりあう(静止し続ける)とき、2つの力の間にはどのような関係があるだろうか。
棒は軽くて無視できるとして考察する。
軸周りに静止し続けるということは、
固定軸まわりの運動方程式(1.4.3.5節)から、
梃子に働く外力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-809-QINUの、回転軸まわり回転力が零であることを意味する。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-810-QINUを原点、回転軸をz軸,梃子の棒をx軸とする、直交座標系UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-811-QINUを導入すると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-812-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-813-QINU
と表現できる。
そこで、1.4.3.2.3節(z軸まわりの回転力の導出)から
z軸まわりのトルク(回転力)は
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-814-QINU
となる。
従って
つりあい条件は、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-815-QINU
これをてこの原理という。
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-816-QINU をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-817-QINUに比べて、非常に大きくとれば、
少しの力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-818-QINUで非常に大きな力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-819-QINUと釣り合わせることが出来ることが分かる。
てこの原理については、
も参照のこと。
剛体に働く力の作用線
力が作用する点を着力点といい、
着力点を通り力のベクトルと方向が等しい直線を、力の作用線という。
剛体に働く力は、その着力点をかえると、一般には、剛体の運動への効果が異なってしまう。
しかし、力のベクトル和と、力のモーメント和が不変となるように力の着力点を移動したり力の合成をすることは、
剛体の運動には全く影響がでないので、許される。
例えば、力の着力点をその作用線にそってうごかしたり、
同じ着力点をもつ複数の力を、それらのベクトル和に置き換えることは許される。。
剛体のつり合い
いくつかの力が作用し、剛体が静止したままであるか、
重心UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-820-QINUが等速直線運動(静止も含む)を続け、
重心の周りの回転が変化しない(回転しないままか、同じ回転を続ける)場合に、
剛体(に作用している力)は釣り合っているという。
重心が等速直線運動を行うのは、
剛体に作用する外力のベクトル和が0になることであり、その場合に限る。
これについては、「1.1.1 質点系の運動と重心」で説明した。
重心周りの回転が変化しないのは、重心まわりの外力のモーメントの総和が0になることであり、この場合に限る。これについては、「1.2.3.5 固定軸の周りの剛体の回転運動の方程式」で説明した。
定理;剛体のつり合い
剛体に、外力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-821-QINUがはたらいている。
このとき、次の条件は同等である。
ⅰ)剛体は釣り合っている。
ⅱ)外力のベクトル和が零で、重心UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-822-QINUまわりの外力のモーメントの和が零。
ⅲ)外力のベクトル和が零で、任意の固定点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-823-QINUまわりの外力のモーメントの和が零。
証明;条件ⅰ)とⅱ)が同等であることは、すでに、説明した。
条件ⅱ)とⅲ)の同等性を示そう。
外力の和が零であるという条件の下で、
「任意の固定点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-824-QINUまわりの外力のモーメントの和UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-825-QINUは常に等しい」
ことを示せば良い。
外力UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-826-QINUの作用点をUNIQ633b507a6b06595b-MathJax-827-QINUとする。
すると、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-828-QINUまわりの外力のモーメントの和UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-829-QINUは
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-830-QINU
任意の点UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-831-QINUまわりの外力のモーメントの和UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-832-QINUは
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-833-QINU
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-834-QINUを(1)式に代入すると
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-835-QINU
ベクトル積の性質から、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-836-QINU
仮定と(2)式から、
UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-837-QINU
故に、UNIQ633b507a6b06595b-MathJax-838-QINU
証明終わり。