物理/運動法則の応用4

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目次

運動法則の応用(4)気体・液体の圧力

この節では気体や液体を、
分子や原子という粒子から構成されるという微視的立場でなく、
巨視的に捉え空間的に滑らかな連続体であるとみなす。
連続体の内部の微小部分に働く力を考え、其の釣合いについて考え、
圧力の性質を導く。

 気体や液体とは何か

 気体と液体の特徴

気体と液体は体積の変化には抵抗するが、
形の変化には、抵抗しない。(ただし非常に速い変化には抵抗する)。
但し、気体の体積変化への抵抗は小さく、液体は非常に大きい。

 静止気体と液体の圧力

気体や液体は、その表面または内部に任意の面を考えると、その面で2分される部分は、
互いに他を押している。それらは大きさ・方向は等しく、逆向きである(作用反作用の法則)
単位面積当たりのこの力を応力とよぶ。
その発生は、重力の存在と前述の気体や液体の特徴(形の変化に抵抗しない)に起因する。
この力の性質を、気体・液体の特徴から導こう。

応力は面に垂直に働く 

説明は便宜上、液体の語で述べる。
命題1:
静止した液体(気体)の表面あるいは内部に任意のなめらかな面(注参照)を考える。
この面上の応力は、常にこの面に直角に働く。
面と常に直角に働く応力を、圧力と呼ぶ。
(注)面のどの一点においても、その点にごく近い面の部分だけをみれば、平面とみなせる曲面のこと。 理由;
もし、ある面上のある一点UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-84-QINUの周辺の微小面部分(Sと書く)で、押し合う力がこの面と平行な成分を持つとする。
Sは仮定より、平面(の一部)と考えてよい。

図のように、面部分Sとそれと平行な平面の一部S’から作られる、
非常に薄い液体の板状部分Vを考える。

するとVがSを通して液体から受ける力の総和UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-85-QINUは、面Sと平行な成分をもつ。
面SとS’は、非常に近いので、
Sを挟んで押し合う力と、S’を挟んで押し合う力は、単位面積当たり、ほぼ等しいと考えてよい。
すると、VがS’を通して液体から受ける力UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-86-QINUは、
Sを通して受ける力と大きさと方向はほぼ同じで、逆向きになる。
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-87-QINUの面Sと平行な成分も、UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-88-QINUのSと平行な成分と大きさはおなじで、逆向きになる。
液体は自由に形を変えられるので、VのS面とS’面は逆方向に動いてしまい、
静水という条件に反してしまう。
従って、
「ある面上のある一点UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-89-QINUの周辺の微小面部分Sで、押し合う力がこの面と平行な成分を持つ」
という仮定はあり得ないことが示された。

命題2
どの面にも直角に働く応力(圧力)は、どの点でも面の方向によらず一定の強さ(大きさ)をもつ。
証明;
液体中の任意の点をUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-90-QINUとする。
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-91-QINUを原点とする、直交右手系UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-92-QINUを定める。
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-93-QINUを通る任意の面UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-94-QINUをとる。
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-95-QINU点における、
この面における圧力UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-96-QINUとxy平面における圧力UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-97-QINU、yz平面、zx平面における圧力UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-98-QINU
が等しいことを示そう。
平面UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-99-QINUと平行でUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-100-QINU点の近くを通る平面UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-101-QINUが
x軸、y軸、z軸と交わる点をそれぞれ、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-102-QINUとおく。図参照。
四面体UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-103-QINUの外部の液体が、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-104-QINUを押す力をUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-105-QINU,UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-106-QINUを押す力をUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-107-QINU,UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-108-QINUを押す力をUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-109-QINU,UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-110-QINUを押す力をUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-111-QINU
とおく。
四面体内の液体が静止しているので、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-112-QINU
が成り立つ。
この式を圧力で表示しよう。
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-113-QINUなので、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-114-QINUが十分小さければ
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-115-QINU
故に、UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-116-QINU
同様にUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-117-QINU、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-118-QINU
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-119-QINU
これらを(1)式に代入して
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-120-QINU
これを計算すると、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-121-QINU
これより、UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-122-QINU   証明終わり。

命題3
ⅰ)一様な重力のもとで静止している気体・液体内では、同一水平面上での圧力の大きさは一定である。 
ⅱ)もし液体の密度UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-123-QINUが圧力によって変化しないならば、 
深さUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-124-QINUの水平面UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-125-QINU上の圧力UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-126-QINUと  
深さUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-127-QINUの水平面UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-128-QINU上の圧力UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-129-QINUには  
次の関係が成り立つ。 
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-130-QINU  

図示した液体部分UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-131-QINUが静止しているので、UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-132-QINUに作用する力の総和が零になっている。
このことから、この命題は容易に証明できる。

命題4 アルキメデスの原理


気体の圧力と大気圧

気体は圧力が増すと縮むので、命題3のⅱ)の結論は成立しない。
大気は静止していると仮定し、地表の大気圧から高度zでの大気圧を求めてみよう。 地表の一点を原点とし、鉛直上方をz軸の正方向になる座標UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-133-QINUをいれる。
図のように、下底面が高さUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-134-QINU、上底面が高さUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-135-QINUの、単位断面積の角柱UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-136-QINUを考える。
その部分の気体が受ける力の和は零となるので、
次式が成り立つ。
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-137-QINU
ここで
・UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-138-QINUは高さUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-139-QINUの地点の大気圧(命題3のⅰ)から、高度が同じ水平面上で圧力は一定)
・UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-140-QINUはUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-141-QINUの質量。UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-142-QINUの体積UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-143-QINUと平均質量密度UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-144-QINUの積。
圧力が大きいと空気は縮み質量密度は高くなるので、両者の関係を求めねばならない。
空気体積の変動にともなう温度変化がないとすると、
ボイルの法則(3章1節 熱とエネルギー参照)から、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-145-QINU(UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-146-QINUは温度だけに依存する数)
質量密度UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-147-QINUを代入すると、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-148-QINU,ゆえに、UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-149-QINU
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-150-QINUを、UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-151-QINUとおくと、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-152-QINU
この質量密度と圧力の関係を用いると、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-153-QINU(hが小さいほど差は少なくなる)
この式を(1)式に代入して、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-154-QINU、変形すると 
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-155-QINU。これより
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-156-QINU
を得る。これを積分して
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-157-QINU
を得る。
ここでUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-158-QINUは、地表での圧力、UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-159-QINUはネイピア数である。
地表での質量密度がUNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-160-QINUならば,(2)式から、
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-161-QINU

圧力の単位

圧力は、単位面積当たりの力なので、その単位は面積の単位UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-162-QINUと力の単位UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-163-QINUから得られる。
UNIQ20d4b6f042397c51-MathJax-164-QINU
が圧力の単位で、パスカルと呼ばれる。

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