物理/付録 物理数学
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目次 |
付録 物理数学
ベクトル積
本節での全ての命題で、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-459-QINUは3次元ベクトル
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-460-QINUを実数とする。
命題1. UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-461-QINU を, UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-462-QINUと垂直な成分UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-463-QINU と,平行な成分UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-464-QINU の和に分解するとき、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-465-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-466-QINU
証明;ベクトル積の定義から、容易に示せる。
2つのベクトルの作る平行四辺形の面積と方向・向きを考えれば良い。
命題2.UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-467-QINU
証明;2つのベクトルを入れ替えても、それらが作る平行四辺形の面積は変わらず、この四辺形に直交する直線の方向も変わらない。
しかし、ベクトル積の向きは、逆向きになる。
ベクトル積の定義から、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-468-QINU が示せた。
命題3
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-469-QINU
証明;実数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-470-QINU が正、零、負の場合に分けて考える。
いずれの場合にも,
ベクトル積の定義とベクトルと実数の積の性質から、容易に証明できる。
命題4.UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-471-QINU
証明;
この証明には少し工夫が必要である。
ベクトル積の命題の中でも、もっとも大切なものなので、詳しく説明しよう。
① UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-472-QINU とUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-473-QINU が直交する場合。図参照のこと
・議論をやさしくするため、ベクトルを、空間の原点UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-474-QINU を始点とする有向線分で代表させる。
・UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-475-QINU と直交しUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-476-QINU を通る平面をUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-477-QINUとする。
・仮定よりUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-478-QINUは、ともに平面UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-479-QINU上のベクトルである。
・UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-480-QINUも、
ベクトル積の定義により、共にUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-481-QINU と直交するので、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-482-QINU上のベクトルである。
これら四つのベクトルはすべて平面UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-483-QINU上にあるので、今後の議論はこの平面上で進める。
ⅰ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-484-QINU の張る平行四辺形は,
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-485-QINUの張る平行四辺形を、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-486-QINU倍し,原点周りに90度回転したものになることを、示そう。
・UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-487-QINUは、ベクトル積の定義から、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-488-QINU と直交する。
そのため、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-489-QINU を平面UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-490-QINU上で、原点まわりに、90度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致する。
・UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-491-QINUも、同様に考え、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-492-QINU を平面UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-493-QINU上で、原点まわりに、90度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致することが分かる。
・どちら周りの回転になるかは、ベクトル積の定義によって決まるが、
後者の回転の向きが、前者の回転の向きと一致することが分かる。
・UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-494-QINU の大きさは、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-495-QINU なので、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-496-QINU の大きさのUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-497-QINU倍になる。
同様に、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-498-QINU の大きさは、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-499-QINU の大きさのUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-500-QINU倍になる。
・以上の結果より、所望の結果は示された。
ⅱ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-501-QINUを示そう。
・ ⅰ)と同じ議論により、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-502-QINUはUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-503-QINUの張る平行四辺形の対角線を、原点周りに90度、同じ向きに回転させ、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-504-QINU倍させたものであることが分かる。
・すると、ⅰ)で示したことから、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-505-QINUは
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-506-QINU の張る平行四辺形の対角線UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-507-QINU に等しいことが分かる。
・以上で①が示せた。
② 一般の場合。
命題1より、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-508-QINU をUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-509-QINUと垂直な成分を表すとすると、 UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-510-QINU(1)
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-511-QINUなので、(1)式は、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-512-QINU
①より、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-513-QINU UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-514-QINU 命題4の証明終わり。
命題4の系
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-515-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-516-QINU
証明;
命題2より、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-517-QINU 命題3から
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-518-QINU
命題4より、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-519-QINU
再び命題2より、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-520-QINU前半の証明終わり
命題2より、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-521-QINU
再び命題2より、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-522-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-523-QINU証明終わり。
命題5.UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-524-QINU を
それぞれ大きさ(長さ)1で互いに直交し、右手系をなす、ベクトル(右手系をなす正規直交基底)とする。
この時、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-525-QINU
証明;ベクトル積とUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-526-QINU の定義から明らかである。
命題6.ベクトルUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-527-QINUを,命題5で用いた基底UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-528-QINU で決まる座標の座標成分で表示しておく。
するとUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-529-QINU
証明;UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-530-QINU,
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-531-QINUと表せるので、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-532-QINU
性質3の系から
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-533-QINU UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-534-QINU (1)
式(1)の第1項
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-535-QINU
に
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-536-QINU
を代入して、性質3の系を使って変形すると、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-537-QINU UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-538-QINU (2)
性質4と性質5を使うと、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-539-QINU 。
同様の計算を行うと、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-540-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-541-QINU
式(2)にこれらを代入して、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-542-QINU UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-543-QINU (3)
式(1)の第2項、第3項も同様に計算すると、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-544-QINU UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-545-QINU (4)
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-546-QINU UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-547-QINU (5)
式(3),(4),(5) を、式 (1)に代入すると、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-548-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-549-QINU
性質6の証明終わり。
性質7の証明;
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-550-QINUを証明しよう。
残りも、同様に証明出来るので各自試みてください。
右手系をなす一つの直交座標を決める。
3つのベクトルを、この座標の成分で表示して、性質6と内積の性質を使えば、左右が等しいことが証明できる。
概略をスケッチしよう。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-551-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-552-QINUも、これと同じように計算する。
これら両式を整頓すると、同じものであることが分かる。
命題7.
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-553-QINU
証明
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-554-QINUを証明しよう。
残りも、同様に証明出来るので各自試みてください。
右手系をなす一つの直交座標を決める。
3つのベクトルを、この座標の成分で表示して、性質6と内積の性質を使えば、左右が等しいことが証明できる。
概略をスケッチしよう。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-555-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-556-QINUも、これと同じように計算する。
これら両式を整頓すると、同じものであることが分かる。
性質7の証明終わり。
命題8. UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-557-QINU と UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-558-QINUを,UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-559-QINUにかんして微分可能な、ベクトルに値をとる関数とする。すると、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-560-QINU は、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-561-QINUにかんして微分可能で、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-562-QINU
証明
すでにこのテキストで紹介した、ベクトル値関数の微分の定義
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-563-QINU UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-564-QINU (1)
を用いて証明する。
この極限が存在し、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-565-QINU
になることを示せば性質8は証明できたことになる。
極限の計算が進むよう、右辺の式の分母は変形しよう。
関数の積の微分公式の証明と同じ技巧を用いる。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-566-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-567-QINU
ベクトル積の性質3を利用すると、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-568-QINU
この式を式(1)の右辺の分子の項に代入し整頓すると
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-569-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-570-QINU
ベクトル積の性質4を使い、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-571-QINU
極限の性質を使って、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-572-QINU
式中の極限は、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-573-QINUが、微分可能なので存在し、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-574-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-575-QINU
また、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-576-QINU なので、
所望の結果が得られた。性質8の証明終わり。
可積分条件
この節は、区間上で定義された関数の
積分可能な条件を紹介する。
大学の教養コース程度の数学を使うが、テキスト中で理解できるように説明する。
興味のない方は、とばしてください。
準備;集合論の初歩
集合論の初歩の知識は前提にして記述するので、
なじみのない方は、下記を参考に、
集合の素朴な定義、集合の和集合や共通集合、集合の包含関係などについて学習してほしい。
区間上の関数のリーマン和
定義;リーマン和
区間UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-577-QINUで定義され、実数に値をとる関数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-578-QINUを考える。
この区間の分割
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-579-QINU
と、その代表点UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-580-QINUに関する、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-581-QINUのリーマン和とは、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-582-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-583-QINU
で定義する。
リーマン和は、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-584-QINUのグラフを、棒グラフで近似したときの
棒グラフの作る面積(各角柱の面積和)であることが分かる。図参照。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-585-QINUのグラフとx軸、および2直線UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-586-QINU、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-587-QINUで囲まれる部分の面積を近似している。
リーマン可積分
分割を細かくしていくとき、
分割の仕方や代表点の選び方に関係なく
リーマン和がある一定値に収束するとする。
すると、この値は
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-588-QINUのグラフとx軸、および2直線UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-589-QINU、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-590-QINUで囲まれる部分の面積
と考えられる。
定義;
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-591-QINUの大きさUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-592-QINUとは、
この分割で得られた小区間の長さの、最大値で定義する。
記号で書くと
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-593-QINU
定義;リーマン可積分
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-594-QINUを、有界閉区間UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-595-QINU上で定義され、実数の値をとる関数とする。
もし、ある実数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-596-QINUが存在して、
どんな分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-597-QINUと
代表点UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-598-QINUであっても、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-599-QINU
が成り立つ時、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-600-QINUはUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-601-QINU上で(リーマン)可積分であるという。
このとき、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-602-QINU をUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-603-QINUのUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-604-QINU上での(リーマン)積分といい、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-605-QINU
などと書く。
リーマン和の不足リーマン和と過剰リーマン和による評価
リーマン和を、代表点の選び方を変えて求めるとその値は変化する。
そこで、その最小値と最大値を求め、差を計算する。
もしこの差が分割を細かくしていくと零に収束するならば、可積分となろう。
以下、この方針で議論を進める。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-606-QINUを分割して得られた小区間UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-607-QINUを考える。
関数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-608-QINUをこの小区間上に限定した時、
関数は、この区間上の点で最大値と最小値をとると仮定する(注参照)。
関数の最大値UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-609-QINUと最小値UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-610-QINUを、
それぞれ、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-611-QINUと書く。
(注) 区間上で最大値、最小値を取らない関数では、
有界な関数でありさえすれば、最大値、最小値と殆ど同じ性質をもち、常に存在する
上限、下限に置き換えれば以後の、議論は成り立つ。
上限、下限については「不足リーマン和の上限と過剰リーマン和の下限」で説明する。
すると、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-612-QINUの任意の点UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-613-QINU に対して、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-614-QINU
故に、
補題1
ⅰ)どのような代表点UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-615-QINUに対しても
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-616-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-617-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-618-QINU
そこで、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-619-QINUをUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-620-QINUに関するUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-621-QINUの不足リーマン和、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-622-QINUを過剰リーマン和と呼ぶ。
ⅱ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-623-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-624-QINU
証明は明らかなので省略。
分割の細分とリーマン和の評価式
定義;分割の細分
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-625-QINUの分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-626-QINUが分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-627-QINUの細分というのは、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-628-QINUの分点の集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-629-QINUが、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-630-QINUの分点の集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-631-QINUに真に含まれることと定義する。
記号でかけば、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-632-QINU。
記号では、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-633-QINUと記す。
補題2
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-634-QINUという分割に対し、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-635-QINU
が成り立つ。
(証明)
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-636-QINUの小区間UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-637-QINUが分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-638-QINUでは、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-639-QINUの2つに分割されたとする。
すると、区間上の関数の最大値と最小値の定義から、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-640-QINU UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-641-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-642-QINU UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-643-QINU
これらから、命題は成立することが分かる。
不足リーマン和の上限と過剰リーマン和の下限
補題2から、分割の細分を繰り返していくと、その分割に対応する、
不足リーマン和は、広義増加(増加するか、同じ値にとどまる)し、
過剰リーマン和は、広義減少する。
分割を細かくしていったとき、これらの極限が一致すれば、補題1から、
リーマン和の極限値は、代表点に無関係に、定まることになる。
そこで色々な分割に対応する不足リーマン和のなかの最大値と
過剰リーマン和の最小値を求めることが、重要になる。
しかし一般にはこれらは存在しないことが示せる。
そこで最大値に近い性質を持つ上限と最小値に近い下限という概念を利用する。
上界と下界
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-644-QINUを、全ての実数を要素とする集合とし、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-645-QINUをその部分集合とする。
実数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-646-QINUがUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-647-QINUの上界(upper bound)とは、
任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-648-QINUに対して、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-649-QINUがなりたつこと。
実数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-650-QINUがUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-651-QINUの下界(lower bound)とは、
任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-652-QINUに対して、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-653-QINUがなりたつこと。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-654-QINUをUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-655-QINUの上界をすべて集めた集合、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-656-QINUをUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-657-QINUの上界をすべて集めた集合とする。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-658-QINUが空集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-659-QINUでない(すなわち、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-660-QINUの上界が少なくとも一つ存在する)とき、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-661-QINUは上に有界であるといい、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-662-QINUの時、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-663-QINUは下に有界であるという。
上に有界で、下にも有界な集合(UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-664-QINUは、有界という。
実数の連続の公理
以下の性質は、色々な極限の存在の根拠を与えるもので、
実数の持つ最も重要な性質の一つである。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-665-QINUとする。
もし、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-666-QINUならば、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-667-QINUは、最小元を持つ。
これをUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-668-QINUの上限(supremum)あるいは最小上界(least upper bound)という。
もし、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-669-QINUならば、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-670-QINUは、最大元を持つ。
これをUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-671-QINUの下限(infimum)あるいは最大下界(greatest lower bound)というという。
補題3
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-672-QINUがUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-673-QINU の上限となるための必要十分条件は、
ⅰ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-674-QINUはUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-675-QINUの上界。すなわち任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-676-QINUにたいしてUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-677-QINU
ⅱ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-678-QINUである任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-679-QINUはUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-680-QINUの上界ではない。すなわち、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-681-QINUとなるUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-682-QINUが存在。
ⅲ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-683-QINUが最大値を持つ場合には、上限は最大値と一致する。
同様に、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-684-QINUがUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-685-QINU の下限となるための必要十分条件は、
ⅰ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-686-QINUはUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-687-QINUの下界。すなわち任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-688-QINUにたいしてUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-689-QINU
ⅱ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-690-QINUである任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-691-QINUはUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-692-QINUの下界ではない。すなわち、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-693-QINUとなるUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-694-QINUが存在。
ⅲ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-695-QINUが最小値を持つ場合には、下限は最小値と一致する。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-696-QINU の上限をUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-697-QINU、下限をUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-698-QINUと書く。
証明は、上限、下限の定義から、明らかなので省略する。
例;UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-699-QINUのとき、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-700-QINU,UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-701-QINU。
これらは、ともにUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-702-QINUの要素でないので、
上限1はUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-703-QINUの最大元(最大値)ではなく、下限0はUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-704-QINUの最小元(最小値)ではない。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-705-QINUのとき、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-706-QINU,UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-707-QINU。
これらは、ともにUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-708-QINUの要素なので、
上限は最大限であり、下限は最小限となる。
補題4.
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-709-QINUで、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-710-QINUは有界集合とする。
このとき、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-711-QINU
証明は容易である。
関数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-712-QINUが連続でない時は、区間上で最大値や最小値を取らないことがある。
この場合も考慮して、最大値を上限に、最小値を下限に置き換えて、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-713-QINUで定義すれば、
有界関数に対して、これらは常に定義され、今までの議論はすべて成り立つ。
2つの分割の共通の細分
分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-714-QINUの分点の集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-715-QINUと、
分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-716-QINU の分点の集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-717-QINUの
和集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-718-QINUを分点とする分割をUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-719-QINUと書く。
すると新しい分割は
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-720-QINU と
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-721-QINU
を満たす。
これを用いると、
不足リーマン和の上限UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-722-QINUと
過剰リーマン和の下限UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-723-QINUが存在することが証明できる。
補題5
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-724-QINUを区間UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-725-QINUで定義され実数値をとる有界関数
すなわち、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-726-QINUがUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-727-QINUの有界部分集合となる関数とする。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-728-QINUの分割を全て集めて作った集合をUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-729-QINUと書く。
すると、
ⅰ)任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-730-QINUに対して、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-731-QINU
ⅱ)集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-732-QINUは上に有界、
集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-733-QINUは下に有界
ⅲ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-734-QINUと
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-735-QINUは存在し、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-736-QINU
証明;
ⅰ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-737-QINU なので、補題2から、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-738-QINU
ⅱ)1)で証明した不等式で、分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-739-QINU は固定する。
すると全ての分割 UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-740-QINUに対して、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-741-QINUなので
集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-742-QINUは、上界UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-743-QINUを持ち、上に有界である。
後者も同様にして下に有界であることが示せる。
ⅲ)従って、実数の連続性の公理から、
集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-744-QINUは上限UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-745-QINUをもち、
集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-746-QINUは下限UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-747-QINUをもつ。
上限は、上界の中の最小値なので、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-748-QINU
この式は任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-749-QINUについて成立するので、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-750-QINUは、集合UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-751-QINUの下界である。
下限UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-752-QINUは、下界のなかの最大値なのでUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-753-QINUを得る。
分割を細かくしていくときの不足リーマン和と、過剰リーマン和の極限
定理(ダルブー;Darboux)
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-754-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-755-QINUを、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-756-QINUで定義され、実数に値を取る有界関数とする。
このとき、
ⅰ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-757-QINU
ⅱ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-758-QINU
証明;
ⅰ)を示す。( ⅱ)は同じようにして証明できるので略す)
これを示すには、
どんなに小さい正の実数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-759-QINUに対しても、それに応じた小さい正の実数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-760-QINUを適切に選べば、
分割の大きさがUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-761-QINUより小さい、どんな分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-762-QINUも、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-763-QINU
であることを示せばよい。
以下に、数段階に分けて、これを証明する。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-764-QINU上限の性質(補題3)から、
ある分割
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-765-QINU
が存在して、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-766-QINU
今後このUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-767-QINUを使って、証明を進める。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-768-QINU
分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-769-QINUの小区間UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-770-QINUの長さUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-771-QINUの
最小値をUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-772-QINUとおくと
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-773-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-774-QINUに比べて非常に小さい大きさを持つ分割、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-775-QINU、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-776-QINU
を考える。
もし、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-777-QINUならば補題2より、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-778-QINU、
するとUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-779-QINU
通常、分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-780-QINUは、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-781-QINUの細分になっていない。
この場合は、高々(n-1)個のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-782-QINUの小区間が、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-783-QINUの小区間には含まれず、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-784-QINUの分点UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-785-QINUをまたぐことになる。図参照のこと。
議論を簡単にするため、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-786-QINUの分点UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-787-QINUが全て、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-788-QINUの小区間によって跨がれている
と仮定し、議論を進める。
他のケースでも、証明はおなじようにできるので、
このように仮定しても何の問題も起こらない。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-789-QINUの分点UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-790-QINUを跨ぐUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-791-QINUの小区間をUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-792-QINUとする(i=1,2,,,n-1)。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-793-QINU
2つの分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-794-QINUからUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-795-QINUを作る。
すると
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-796-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-797-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-798-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-799-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-800-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-801-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-802-QINU
と書ける。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-803-QINUで、 UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-804-QINU なので、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-805-QINU, UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-806-QINU
後者の式から、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-807-QINU
この式と(1)式から、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-808-QINU
そこで、
「UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-809-QINUならば、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-810-QINU
が示せれば、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-811-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-812-QINU
が示され、証明が終わる。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-813-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-814-QINU
であり、
(2)式から、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-815-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-816-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-817-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-818-QINU
なので、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-819-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-820-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-821-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-822-QINU
関数はUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-823-QINU上で有界なので、適切に正の実数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-824-QINUを選ぶと、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-825-QINUがUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-826-QINUの要素ならば
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-827-QINUが成立する。
するとUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-828-QINU
が成り立つ。また
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-829-QINUで、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-830-QINU
なので
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-831-QINU
そこで、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-832-QINU
と選べば、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-833-QINUをみたすどのような分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-834-QINUも、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-835-QINU
を満たすことが証明できた。証明終わり。
可積分条件
定理;可積分条件
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-836-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-837-QINUを、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-838-QINUで定義され、実数に値を取る有界関数とする。
次の条件のうち1つが成立すれば、残り2つは成立する(互いに同値という)。
ⅰ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-839-QINUはUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-840-QINU上で(リーマン)可積分
ⅱ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-841-QINU
ⅲ)UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-842-QINU
証明
ⅰ)を仮定する。ⅱ)が成立することを示そう。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-843-QINUの積分値をUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-844-QINUとおくと、可積分の定義から、
任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-845-QINUに対して、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-846-QINUが存在して、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-847-QINUである任意の分割と、その分割の任意の代表点UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-848-QINUに対し,
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-849-QINU
が成立する。
変形すると
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-850-QINU
ここで、補題1のⅱ)から、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-851-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-852-QINU
なので、
(1)式から、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-853-QINU
これより、任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-854-QINUに対して、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-855-QINUが存在して、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-856-QINU
ⅱ)が示せた。
ⅱ)を仮定する。 ⅲ)が成り立つことを示す。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-857-QINU
なので、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-858-QINU
故に、分割を細かくしていき、極限をとると、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-859-QINU
ⅱ)が成立するので、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-860-QINU
ⅲ)が示せた。
ⅲ)を仮定する。 UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-861-QINUとおく。
ⅰ)が成り立つことを示そう。
補題1のⅰ)から、どのような分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-862-QINUと、その代表点UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-863-QINUに対しても
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-864-QINU
ここで、ダルブーの定理から、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-865-QINU,
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-866-QINU
が成り立つので、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-867-QINU
が成り立つ。
ⅰ)が示せた。
有限個の点を除いて連続な閉区間上の関数は積分可能
色々な関数のグラフを書くとつながっているところを、跳んでいるところが出来る。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-868-QINUのグラフはずっとつながっている。
関数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-869-QINUを、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-870-QINUのとき UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-871-QINU, UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-872-QINUのとき UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-873-QINU
で定義すると、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-874-QINUのところでそのグラフは跳んでいる。
連続や不連続は関数の非常に重要な性質であり、
それを調べることはとても豊かな知識をもたらす。
しかし正確に議論するには、連続とは何かをきちんと定義する必要がある。
関数の連続性の定義;
実数値関数 UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-875-QINU がある点 UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-876-QINUで連続であるとは、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-877-QINUがUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-878-QINU に限りなく近づくならば、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-879-QINU が UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-880-QINU に限りなく近づく
ことを言う。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-881-QINUと記す。
これはイプシロン-デルタ論法(ε-δ論法)を用いれば次のように定式化できる。
(小さな)正の数 ε が任意に与えられたとき、
(小さな)正の数 δ をうまくとってやれば、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-882-QINU と δ 以内の距離にあるどんな UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-883-QINU に対しても、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-884-QINU と UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-885-QINU の差が ε より小さいようにすることができる。
関数 UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-886-QINU がある区間UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-887-QINU で連続であるとは、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-888-QINU に属するそれぞれの点において連続であることを言う。
定理
有界閉区間上UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-889-QINUで定義され、実数に値を取る連続関数UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-890-QINUは、V上で可積分である。
略証;
有界閉区間上の連続関数は一様連続なので、
任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-891-QINUに対して、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-892-QINUが存在して、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-893-QINUを満たすUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-894-QINUの任意の2点に対して、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-895-QINU
が成立する。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-896-QINUの分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-897-QINUを細かくして、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-898-QINU
を満たすようにする。
すると、その分割によって得られた小区間UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-899-QINUの長さは、
全てUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-900-QINUより小さくなるので、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-901-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-902-QINUの定義から
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-903-QINU
これを用いると、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-904-QINU
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-905-QINU
故に、
任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-906-QINUに対して、UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-907-QINUが存在して、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-908-QINUを満たす任意の分割UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-909-QINUにたいして、
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-910-QINUが示せた。
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-911-QINU
なので
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-912-QINU
が任意のUNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-913-QINUにたいして成立する。故に
UNIQ718ae72970dddc8f-MathJax-914-QINU
可積分条件のⅲ)が示せた。証明終わり。
定理の系;有限個の不連続点をもつ、有界閉区間上の関数は積分可能である。