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ベクトル積　

本節での全ての命題で、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-121-QINUは3次元ベクトル
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-122-QINUを実数とする。

命題１． UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-123-QINU を, UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-124-QINUと垂直な成分UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-125-QINU と,平行な成分UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-126-QINU の和に分解するとき、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-127-QINU
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-128-QINU
証明；ベクトル積の定義から、容易に示せる。
２つのベクトルの作る平行四辺形の面積と方向・向きを考えれば良い。

命題２．UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-129-QINU
証明；２つのベクトルを入れ替えても、それらが作る平行四辺形の面積は変わらず、この四辺形に直交する直線の方向も変わらない。
しかし、ベクトル積の向きは、逆向きになる。
ベクトル積の定義から、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-130-QINU が示せた。

命題３
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-131-QINU　
証明；実数UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-132-QINU が正、零、負の場合に分けて考える。
いずれの場合にも, ベクトル積の定義とベクトルと実数の積の性質から、容易に証明できる。

命題４．UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-133-QINU　
証明；
この証明には少し工夫が必要である。
ベクトル積の命題の中でも、もっとも大切なものなので、詳しく説明しよう。
①　UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-134-QINU とUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-135-QINU が直交する場合。図参照のこと
・議論をやさしくするため、ベクトルを、空間の原点UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-136-QINU を始点とする有向線分で代表させる。
・UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-137-QINU と直交しUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-138-QINU を通る平面をUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-139-QINUとする。
・仮定よりUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-140-QINUは、ともに平面UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-141-QINU上のベクトルである。
・UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-142-QINUも、
ベクトル積の定義により、共にUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-143-QINU と直交するので、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-144-QINU上のベクトルである。
これら四つのベクトルはすべて平面UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-145-QINU上にあるので、今後の議論はこの平面上で進める。
　ⅰ）UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-146-QINU の張る平行四辺形は,
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-147-QINUの張る平行四辺形を、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-148-QINU倍し,原点周りに９０度回転したものになることを、示そう。

・UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-149-QINUは、ベクトル積の定義から、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-150-QINU と直交する。
そのため、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-151-QINU を平面UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-152-QINU上で、原点まわりに、９０度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致する。
・UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-153-QINUも、同様に考え、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-154-QINU を平面UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-155-QINU上で、原点まわりに、９０度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致することが分かる。
・どちら周りの回転になるかは、ベクトル積の定義によって決まるが、
後者の回転の向きが、前者の回転の向きと一致することが分かる。
・UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-156-QINU の大きさは、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-157-QINU なので、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-158-QINU の大きさのUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-159-QINU倍になる。
同様に、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-160-QINU の大きさは、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-161-QINU の大きさのUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-162-QINU倍になる。
・以上の結果より、所望の結果は示された。

　ⅱ）UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-163-QINUを示そう。
・　ⅰ)と同じ議論により、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-164-QINUはUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-165-QINUの張る平行四辺形の対角線を、原点周りに９０度、同じ向きに回転させ、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-166-QINU倍させたものであることが分かる。
・すると、ⅰ)で示したことから、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-167-QINUは
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-168-QINU の張る平行四辺形の対角線UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-169-QINU に等しいことが分かる。
・以上で①が示せた。

②　一般の場合。
命題1より、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-170-QINU をUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-171-QINUと垂直な成分を表すとすると、 UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-172-QINU(1)
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-173-QINUなので、(1)式は、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-174-QINU
①より、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-175-QINU UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-176-QINU 命題４の証明終わり。
　

命題４の系　　
　　 UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-177-QINU
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-178-QINU
証明；
命題２より、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-179-QINU 命題３から
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-180-QINU 命題４より、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-181-QINU
再び命題２より、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-182-QINU前半の証明終わり
命題２より、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-183-QINU
再び命題２より、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-184-QINU UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-185-QINU証明終わり。
　　

命題５．UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-186-QINU を
それぞれ大きさ(長さ)１で互いに直交し、右手系をなす、ベクトル(右手系をなす正規直交基底)とする。

この時、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-187-QINU
証明；ベクトル積とUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-188-QINU の定義から明らかである。

命題６．ベクトルUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-189-QINUを,命題５で用いた基底UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-190-QINU で決まる座標の座標成分で表示しておく。
するとUNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-191-QINU　
証明；UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-192-QINU,
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-193-QINUと表せるので、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-194-QINU 性質３の系から
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-195-QINU UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-196-QINU (1)

式(1)の第１項 UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-197-QINU に UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-198-QINU を代入して、性質３の系を使って変形すると、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-199-QINU UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-200-QINU (2)
性質４と性質５を使うと、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-201-QINU 。
同様の計算を行うと、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-202-QINU

UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-203-QINU

式(2)にこれらを代入して、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-204-QINU UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-205-QINU　(3)

式(1)の第２項、第３項も同様に計算すると、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-206-QINU UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-207-QINU (4)

UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-208-QINU UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-209-QINU (5)

式(3),(4),(5) を、式 (1)に代入すると、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-210-QINU
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-211-QINU
性質６の証明終わり。

性質７の証明；
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-212-QINUを証明しよう。
残りも、同様に証明出来るので各自試みてください。
右手系をなす一つの直交座標を決める。
３つのベクトルを、この座標の成分で表示して、性質６と内積の性質を使えば、左右が等しいことが証明できる。
概略をスケッチしよう。
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-213-QINU　
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-214-QINUも、これと同じように計算する。
これら両式を整頓すると、同じものであることが分かる。

命題７．
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-215-QINU
証明
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-216-QINUを証明しよう。
残りも、同様に証明出来るので各自試みてください。
右手系をなす一つの直交座標を決める。
３つのベクトルを、この座標の成分で表示して、性質６と内積の性質を使えば、左右が等しいことが証明できる。
概略をスケッチしよう。
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-217-QINU　
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-218-QINUも、これと同じように計算する。
これら両式を整頓すると、同じものであることが分かる。
性質７の証明終わり。

命題８． UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-219-QINU と UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-220-QINUを,UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-221-QINUにかんして微分可能な、ベクトルに値をとる関数とする。すると、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-222-QINU は、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-223-QINUにかんして微分可能で、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-224-QINU 証明
すでにこのテキストで紹介した、ベクトル値関数の微分の定義
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-225-QINU UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-226-QINU (1)　　
を用いて証明する。
この極限が存在し、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-227-QINU
になることを示せば性質８は証明できたことになる。
極限の計算が進むよう、右辺の式の分母は変形しよう。
関数の積の微分公式の証明と同じ技巧を用いる。
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-228-QINU　　
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-229-QINU　　
ベクトル積の性質３を利用すると、　
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-230-QINU

この式を式(１)の右辺の分子の項に代入し整頓すると
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-231-QINU 　
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-232-QINU
ベクトル積の性質４を使い、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-233-QINU
極限の性質を使って、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-234-QINU
式中の極限は、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-235-QINUが、微分可能なので存在し、
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-236-QINU
UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-237-QINU
また、UNIQ73fb7f21207ff185-MathJax-238-QINU なので、
所望の結果が得られた。性質８の証明終わり。