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物理/エネルギーと保存則

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目次

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エネルギーと保存則

質点や質点の集まりの運動を調べるときに有用な
各種の保存法則が、運動の法則から導かれる。
導出の仕方が理解できると、力学への理解が深まる。
下記の記事以外にも、導出法をインターネット検索して調べ、よく考えよう。

エネルギー

物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。

を参照のこと。

運動エネルギー(kinetic energy)

運動している粒子は、それを止めようとする物体に力を与え、動かすことが出来る。
運動している粒子は,運動に起因する何らかのエネルギーを持っていると考えられる。
止まった段階ではこのエネルギーは零になるので、
運動している粒子の持つエネルギーの量は、止まるまでに使った仕事で計れる。

質量mの粒子が速度vで運動しているとき、
止まるまでになす仕事を求めてみる。
速度方向をx軸とする座標Oxをとる。
力が作用しなければ、粒子はx軸の上をx正方向にむかって、速さv:=vで等速直線運動を続ける。
この粒子が原点を通過する瞬間(t=0)から、x軸の負方向に力F=ff>0を、止まるまで与え続ける。この間、粒子は、作用反作用の法則により、F=ff>0の力で、押し返しながら、止まるまで仕事をし続ける。
止まるまでの距離を求めるため、運動法則を用いる。
この粒子の運動方程式は
md2dt2x(t)=f (1),
ここで、x、vは、初期条件x(0)=0,v(0)=v (2)を満たす。
(1)式の両辺をmで割り、v(t):=ddtx(t)を代入すると、
ddtv(t)=fm
この方程式を満たし、初期条件(2)を満たす関数vは、
v(t)=fmt+v(3)
この式から、粒子が停止する時刻は
t1=mvf
このときの粒子の位置は、
ddtx(t)=fmt+v (4)
を解いて、停止時刻t1でのxを求めればよい。
初期条件式(2)を満たす(4)式の解は
x(t)=f2mt2+vt (4)
故に、止まる位置は
x(t1)=f2mt12+vt1=mv22f
粒子が止まるまでに,なした仕事は、
W=fmv22f=mv22
以上の考察より、粒子の運動エネルギーを次のように決める。
定義;
質量m、速度vの質点の運動エネルギーを、
mv22  
で定める。

仕事エネルギー定理(W^{n}ork-energy theorem)

仕事エネルギー定理
質量mの質点が時刻t1 に位置x(t1)にいて,速度v(t1)で動いているとする。
この粒子に、
連続あるいは不連続点が有限個の力 F(t)(注参照) を時刻t1からt2まで加える。
この間の運動エネルギーの変化量 12mv(t2)212mv(t1)2は、
その間、力が行った仕事 Wに等しい

(注)多くの自然界の力(万有引力や電磁気力)は、場所によって変化する。
場所を位置ベクトルxで表すと、力はF=F(x)
力を受けた物体は時間とともに変化するので、位置ベクトルは時間関数x=x(t)
で表される。
したがってこの間作用する力は
F=F(x(t))
という時間関数である。

証明;
力を受けた質点は運動する。任意の時刻t,(t1tt2)の質点の位置を x(t)で表す。
時刻t1からt2までの質点の運動の軌跡は、
C:={x(t)t1tt2}t_1t_2n[s_{i-1},s_i]:=[t_1+(i-1)\Delta t,t_1+i\Delta t],\quad (i=1,2,,,n),$$(s_0=t_1,s_n=t_2)$
と表現できる。ここで、\Delta t=\frac{t_2-t_1}{n}$
これに対応して、軌跡$C$は、n個の小部分$C_i,(i=1,2,,,n)$に分割される。
ここで、原点$O$を適当に定め、直交座標$O-xyz$をいれる。
$C_i$の端点(の位置ベクトル)を$\vec{x}(s_{i-1})=\vec{OP_{i-1}$ 、 $\vec{x}(s_i)=\vec{OP_i}$と表現しておく 。
等分数nを十分大きくとっておけば、$\Delta t$が非常に小さくなり、
その間は質点はほぼ等速直線運動するので、$C_i$は有向線分$\vec{P_{i-1}P_i}$で近似できる。
力も時刻が$[s_{i-1},s_i]$の間、ほぼ一定なので、
このなかの任意の時刻${\xi}_i(s_{i-1}\leq {\xi}_i \leq s_i)$を代表点として選び、
$\vec{F}(t_i)$で近似する。
この近似を用いると、仕事の定義から、力が$C_i$で行った仕事は
$W_i(n,{\xi}_i)= \vec F({\xi}_i)\cdot \vec{P_{i-1}P_i} =\vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s_i)-\vec{x}(s_{i-1})$
故に、時間をn等分割したときの仕事Wの近似値は、
$W(n,\{t_i\}_{i=1}^{n})=\sum_{i=1}^{n} W_i(n,t_i) =\sum_{i=1}^{n} \vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s_i)-\vec{x}(s_{i-1})\qquad (1)$
微分に関する平均値の定理から、
ある$t_{(i,x)}\in [s_{i-1},s_i]が存在して
$\left(\vec{x}(s_i)-\vec{x}(s_{i-1})\right)_{x}=v_{x}(t_{(i,x)})(s_i-s_{i-1})$
同様にして、
ある$t_{(i,y)},t_{(i,z)}\in [s_{i-1},s_i]が存在して
$\left(\vec{x}(s_i)-\vec{x}(s_{i-1})\right)_{y}=v_{x}(t_{(i,y)})(s_i-s_{i-1})$
$\left(\vec{x}(s_i)-\vec{x}(s_{i-1})\right)_{z}=v_{x}(t_{(i,z)})(s_i-s_{i-1})$
故に、 $\vec{x}(s_i)-\vec{x}(s_{i-1})= 仕事は、
$W=\int_{C}\vec{G(x(t))}\cdot \vec{dx(t)} \quad (3)$
となる。
運動の第2法則$\vec F(s)=m\frac{d\vec{v}(s)}{ds}$ と、
$\vec{x}_(s_i)-\vec{x}_(s_{i-1})\approx \vec{v}(t_i)\Delta t$をもちいて
$W^{n}_i \approx m\frac{d\vec v }{ds}(t_i)\cdot \vec{v}(t_i)\Delta t$
$=\frac{m}{2}\frac{d(\vec v \cdot \vec v)}{ds}(t_i)\Delta t =\frac{m}{2}\frac{d(\|\vec v \|^2)}{ds}(t_i)(s_i-s_{i-1}) \qquad \qquad (3)$
ここで、$(s_i-s_{i-1})$は微小なので、
$\frac{\|\vec{v}(s_i) \|^2-\|\vec{v}(s_{i-1}) \|^2}{s_i-s_{i-1}} \approx \frac{d(\|\vec v \|^2)}{ds}(t_i)$、
この式を(3)式に代入すると
$W^{n}_i \approx \frac{m}{2}(\|\vec{v}(s_i)\|^2-\|\vec{v}(s_{i-1})\|^2)$
$=\frac{m}{2}\|\vec{v}(s_i)\|^2-\frac{m}{2}\|\vec{v}(s_{i-1})\|^2$
故に、
$W^{n}_i \approx \frac{m}{2}\|\vec{v}(s_i)\|^2-\frac{m}{2}\|\vec{v}(s_{i-1})\|^2$
この式を(1)式に代入すると、
$W^{n} \approx \frac{m}{2}\|\vec{v}(s_n)\|^2-\frac{m}{2}\|\vec{v}(s_0)\|^2$
$s_n=t_2,\quad s_0=t_1$なので、
$W^{n} \approx \frac{m}{2}\|\vec{v}(t_2)\|^2-\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_1)\|^2$
ここまでの議論は近似式を利用しているが、
分割数nを増やしていくと、代表点の選び方に関係なく、
これらの近似式の誤差が少なくなり、
$\lim_{n\to \infty}$をとると誤差はなくなるので、
$W^{n} =\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_2)\|^2-\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_1)\|^2$
が示せる。

数学的に厳密な証明を求める方は、下記をご覧ください。 *[[W^{n}ikipedia_ja:リーマン積分 |ウィキペディア(リーマン積分)]] *[[W^{n}ikipedia_ja:線積分 |ウィキペディア(線積分)]] ===保存力と位置エネルギー=== ====保存力と保存力場==== 質点がどこにあろうが、その場所$\vec x$に応じて力$\vec{F}(\vec x)$が作用するとする。このような空間を力の場という。
質点が任意の点$P$から任意の点$Q$ まで動くとき、
力$\vec{F}(\vec x)$の行う仕事が移動経路に関係なく2点$P$、$Q$だけで決まるならば、
この力を'''保存力'''(conservative force ) といい、このような空間は'''保存力場'''という。
    保存力は次のように言いかえることができる。
物体にかかる力 $ \vec{F}(\vec x) $ に逆らって、
力 $-\vec{F}(\vec x)+\delta$を加えて、
物体をQ点からP点に非常にゆっくり動かす時、 この力$-\vec{F}(\vec x) $の行う仕事が移動経路に関係なく2点の位置だけで決まる時、力 $ \vec{F} $を保存力という。ここで力 $ -\vec{F} $は、物体に作用する力 $ \vec{F} $とつり合いをとるための力であり、力 $ \delta $は、力がつりあって静止する物体を、移動経路に沿って、無限にゆっくりと動かすのに必要な、無限に小さい力である。このため $\delta$ のなす仕事は零とみなせる。 ====位置エネルギー ==== この仕事の量を、Q 点を基準とした P 点でのこの物体の'''位置エネルギー'''(あるいはポテンシャルエネルギー potential energy)と言う。
*[[wikipedia_ja:ポテンシャル|ウィキペディア(ポテンシャル)]]の保存力の項 *[[wikipedia_ja:位置エネルギー|ウィキペディア(位置エネルギー)]] *[[wikipedia:Potential_energy|ウィキペディア(Potential_energy)]] in English を参照のこと。 ==== 保存力の十分条件 ==== 質点Aが質点Bに力  $\vec{F_{A}(B)} $を及ぼしているとする。
その力の方向が2質点を結ぶ直線方向の引力あるいは斥力で、
大きさが2点間の距離で決まると仮定する。
この仮定を数式で書こう。
質点A,Bの位置ベクトルをを其々$\vec{P_{A}}, \vec{P_{B}} $と表すと、
$\vec{F_{A}(B)} =f(||\vec{P_{B}}- \vec{P_{A}} ||) \times (\vec{P_{B}}-\vec{P_{A}})/||\vec{P_{B}}- \vec{P_{A}} || $。 ここで< $f $は任意の関数。
この時、この力 $\vec{F_{A}(B)}$は保存力になる。
証明。質点BをP点から、経路Cに沿って、Q点まで動かすときの仕事が、経路Cに無関係であることを示せばよい。簡単にするため、質点Aと経路Cは同一平面に含まれると仮定し、この平面上で議論する。
経路Cを質点Aを中心とする円弧の一部と質点Aに向かう線分を交互につなぐ線で、つぎのように、近似する。 
ⅰ)P点からQ点まで向かう経路Cの長さをn等分する点を $P_0=P,P_1,\ldots,P_n=Q $とする。 
ⅱ)質点Aを中心とし、 $P_0 $を通る円と、質点Aと $P_1 $を結ぶ直線の交点を $P_{0}' $とし、経路Cの $P_0 $と $P_1 $の間を、この円の弧 $(P_0,P_{0}') $と線分 $[P{0}',P_1 ] $で近似する。
ⅲ)経路Cの $P_1 $と $P_2 $の間も同様に、質点Aを中心とする円弧 $(P_1,P_{1}') $と線分 $[P_{1}',P_2 ] $で近似する。
ⅳ)以下同様にして、経路Cの $P_{n-1} $と $P_{n}=Q $の間を、
質点Aを中心とする円弧 $(P_{n-1},P_{n-1}') $と線分$[P_{n-1}',P_n]$で近似する。
等分数nを大きくすると、この近似経路にそって移動する時の力のなす仕事は、経路Cに沿った移動の仕事と殆ど同じになり、$\lim_{n \to \infty}$のとき一致する。
近似経路のうち質点Aを中心とする円弧を動く時の力のなす仕事は、零となる(力の方向が2質点を結ぶ直線方向の引力あるいは斥力なので、移動経路と常に直交するから)。
次に、近似経路のうち、質点Aを通る直線上を動く経路の仕事を計算しよう。
線分$[P_{i-1}',P_i ],i=1,2,,,n$という経路を、
質点AとP点を結ぶ直線$l$に含まれる線分に、
次のように移し替える。
ⅰ)質点Aを中心とし点$P_i$を通る円と直線$l$との交点を$ P_{i},(i=1,2,,,n)P_{0}=P[P_{i-1}',P_i ],(i=1,2,,,n)l[P_{i-1},P_{i}],(i=1,2,,,n)[P_{i-1}',P_i ][P_{i-1},P_{i} ][P,P_{n} ]====  ====,\vec{F}\phi\vec{F}\phi1\vec{r}\vec{r}+(\Delta_{x},0,0)\Delta_{x}\vec{F}(r)\vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}\phi(\vec r)+\vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}\vec{r}\vec{r}+(\Delta_{x},0,0)\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0))\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0))\simeq \phi(\vec r)+\vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}\lim_{\Delta_{x} \to 0}\frac{\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0))-\phi(\vec r)}{\Delta_{x}}=\vec{F}_{x}(\vec{r})\lim_{\Delta_{y} \to 0}\frac{\phi(\vec r+(0,\Delta_{y},0))-\phi(\vec r)}{\Delta_{y}}=\vec{F}_{y}(\vec{r})\lim_{\Delta_{z} \to 0}\frac{\phi(\vec r+(0,0,\Delta_{z}))-\phi(\vec r)}{\Delta_{z}}=\vec{F}_{z}(\vec{r})==(kineticenergyandconservationofkineticenergy)==[[wikipediaja:|]][[wikipedia:Kineticenergy|Kineticenergy]]inEnglishW=\vec{F}\cdot\vec{PQ} \vec{PQ}\vec{F}\vec{Fc}\vec{Fo}W=(\vec{Fc}+\vec{Fo})\cdot\vec{PQ}=\vec{Fc}\cdot\vec{PQ} +\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}=P(U(P)-U(Q))+\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}W=\frac{1}{2}m{V(Q)}^2-\frac{1}{2}m{V(P)}^2\left(\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)\right)-\left( \frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P)\right)=\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}\vec{Fo}\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)=\frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P)(力学エネルギー保存則)が得られる。 
もっと知りたい方は次をどうぞ。
*[[wikipedia_ja:力学的エネルギー保存の法則|ウィキペディア(力学的エネルギー保存の法則)]]
*[[wikipedia:Conservation_of_energy#Mechanics|ウィキペディア(Conservation_of_energy#Mechanics)]] in English
  
エネルギー保存則は物理学のなかで最も基本的な原理です。 
熱エネルギーも含めたもっと一般的なエネルギー保存則は、後の章で学びます。

==運動量と保存則==

===運動量と力積 (momentum or linear momentum and Impulse) ===
質点に力
\vec{F}(t)\vec{F}(t)=\frac{d\vec{p}(t)}{dt}t_1t_2\vec{p}(t)=m\vec{v}(t)\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)dt=\vec{p}(t_2)-\vec{p}(t_1)\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)dt[[wikibooksja:II|]]1.1.2===(lawofconservationofmomentum)===()()()([[wikipediaja:|]]\vec{r_i}m_i m_i\vec{f_i}m_im_j \vec{f_{ij}}(i,j=1 \ldots N)\frac{d\vec{p}_i(t)}{dt}=\vec{f_i}+\sum_{j\neq i}\vec{f_{ij}} ,i=1 \ldots N\sum_i{\vec{f_i}}=0 \qquad \vec{f_{ij}}+\vec{f_{ji}}=0()\frac{d}{dt} \sum_i{\vec{p}_i(t)} =0 \sum_i{\vec{p}_i(t)}$は保存される。


保存則の応用

衝突の問題

2質点の衝突

質点の壁との衝突

力学に必要な物理量(時間、距離、速度、加速度、質量、力)の単位と単位変換

個人用ツール