物理/付録2 リーマン積分と可積分条件
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目次 |
リーマン積分と可積分条件
この節は、区間上で定義された関数のリーマン積分の初歩を述べる。
具体的には、リーマン積分の定義とリーマン積分が存在する(可積分)条件
について、数学的厳密性を保つように記述する。
大学の教養コース程度の数学を使うが、テキスト中で理解できるように説明する。
興味のない方は、とばしてください。
準備;集合論の初歩
集合論の初歩の知識は前提にして記述するので、
なじみのない方は、下記を参考に、
集合の素朴な定義、集合の表記法、集合の和集合や共通集合、集合の包含関係
などについて学習してほしい。
区間上の関数のリーマン和
定義;リーマン和
区間UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-346-QINUで定義され、実数に値をとる関数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-347-QINUを考える。
この区間の分割
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-348-QINU
と、その代表点UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-349-QINUに関する、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-350-QINUのリーマン和とは、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-351-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-352-QINU
で定義する。
リーマン和は、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-353-QINUのグラフを、棒グラフで近似したときの
棒グラフの作る面積(各角柱の面積和)であることが分かる。図参照。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-354-QINUのグラフとx軸、および2直線UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-355-QINU、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-356-QINUで囲まれる部分の面積を近似している。
リーマン可積分
分割を細かくしていくとき、
分割の仕方や代表点の選び方に関係なく
リーマン和がある一定値に収束するとする。
すると、この値は
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-357-QINUのグラフとx軸、および2直線UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-358-QINU、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-359-QINUで囲まれる部分の面積
と考えられる。
定義;
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-360-QINUの大きさUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-361-QINUとは、
この分割で得られた小区間の長さの、最大値で定義する。
記号で書くと
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-362-QINU
定義;リーマン可積分
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-363-QINUを、有界閉区間UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-364-QINU上で定義され、実数の値をとる関数とする。
もし、ある実数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-365-QINUが存在して、
どんな分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-366-QINUと
代表点UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-367-QINUであっても、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-368-QINU
が成り立つ時、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-369-QINUはUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-370-QINU上で(リーマン)可積分であるという。
このとき、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-371-QINU をUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-372-QINUのUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-373-QINU上での(リーマン)積分といい、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-374-QINU
などと書く。
リーマン積分の性質
命題1 線形性
命題2 積分の単調性
命題3 平均値定理
命題4 三角不等式
命題5 積分区間に関する加法性
リーマン和の不足リーマン和と過剰リーマン和による評価
リーマン和を、代表点の選び方を変えて求めるとその値は変化する。
そこで、その最小値と最大値を求め、差を計算する。
もしこの差が分割を細かくしていくと零に収束するならば、可積分となろう。
以下、この方針で議論を進める。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-375-QINUを分割して得られた小区間UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-376-QINUを考える。
関数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-377-QINUをこの小区間上に限定した時、
関数は、この区間上の点で最大値と最小値をとると仮定する(注参照)。
関数の最大値UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-378-QINUと最小値UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-379-QINUを、
それぞれ、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-380-QINUと書く。
(注) 区間上で最大値、最小値を取らない関数では、
有界な関数でありさえすれば、最大値、最小値と殆ど同じ性質をもち、常に存在する
上限、下限に置き換えれば以後の、議論は成り立つ。
上限、下限については「不足リーマン和の上限と過剰リーマン和の下限」で説明する。
すると、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-381-QINUの任意の点UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-382-QINU に対して、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-383-QINU
故に、
補題1
ⅰ)どのような代表点UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-384-QINUに対しても
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-385-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-386-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-387-QINU
そこで、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-388-QINUをUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-389-QINUに関するUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-390-QINUの不足リーマン和、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-391-QINUを過剰リーマン和と呼ぶ。
ⅱ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-392-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-393-QINU
証明は明らかなので省略。
分割の細分とリーマン和の評価式
定義;分割の細分
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-394-QINUの分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-395-QINUが分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-396-QINUの細分というのは、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-397-QINUの分点の集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-398-QINUが、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-399-QINUの分点の集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-400-QINUに真に含まれることと定義する。
記号でかけば、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-401-QINU。
記号では、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-402-QINUと記す。
補題2
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-403-QINUという分割に対し、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-404-QINU
が成り立つ。
(証明)
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-405-QINUの小区間UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-406-QINUが分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-407-QINUでは、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-408-QINUの2つに分割されたとする。
すると、区間上の関数の最大値と最小値の定義から、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-409-QINU UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-410-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-411-QINU UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-412-QINU
これらから、命題は成立することが分かる。
不足リーマン和の上限と過剰リーマン和の下限
補題2から、分割の細分を繰り返していくと、その分割に対応する、
不足リーマン和は、広義増加(増加するか、同じ値にとどまる)し、
過剰リーマン和は、広義減少する。
分割を細かくしていったとき、これらの極限が一致すれば、補題1から、
リーマン和の極限値は、代表点に無関係に、定まることになる。
そこで色々な分割に対応する不足リーマン和のなかの最大値と
過剰リーマン和の最小値を求めることが、重要になる。
しかし一般にはこれらは存在しないことが示せる。
そこで最大値に近い性質を持つ上限と最小値に近い下限という概念を利用する。
上界と下界
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-413-QINUを、全ての実数を要素とする集合とし、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-414-QINUをその部分集合とする。
実数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-415-QINUがUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-416-QINUの上界(upper bound)とは、
任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-417-QINUに対して、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-418-QINUがなりたつこと。
実数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-419-QINUがUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-420-QINUの下界(lower bound)とは、
任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-421-QINUに対して、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-422-QINUがなりたつこと。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-423-QINUをUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-424-QINUの上界をすべて集めた集合、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-425-QINUをUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-426-QINUの上界をすべて集めた集合とする。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-427-QINUが空集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-428-QINUでない(すなわち、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-429-QINUの上界が少なくとも一つ存在する)とき、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-430-QINUは上に有界であるといい、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-431-QINUの時、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-432-QINUは下に有界であるという。
上に有界で、下にも有界な集合(UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-433-QINUは、有界という。
実数の連続の公理
以下の性質は、色々な極限の存在の根拠を与えるもので、
実数の持つ最も重要な性質の一つである。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-434-QINUとする。
もし、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-435-QINUならば、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-436-QINUは、最小元を持つ。
これをUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-437-QINUの上限(supremum)あるいは最小上界(least upper bound)という。
もし、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-438-QINUならば、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-439-QINUは、最大元を持つ。
これをUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-440-QINUの下限(infimum)あるいは最大下界(greatest lower bound)というという。
補題3
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-441-QINUがUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-442-QINU の上限となるための必要十分条件は、
ⅰ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-443-QINUはUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-444-QINUの上界。すなわち任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-445-QINUにたいしてUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-446-QINU
ⅱ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-447-QINUである任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-448-QINUはUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-449-QINUの上界ではない。すなわち、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-450-QINUとなるUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-451-QINUが存在。
ⅲ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-452-QINUが最大値を持つ場合には、上限は最大値と一致する。
同様に、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-453-QINUがUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-454-QINU の下限となるための必要十分条件は、
ⅰ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-455-QINUはUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-456-QINUの下界。すなわち任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-457-QINUにたいしてUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-458-QINU
ⅱ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-459-QINUである任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-460-QINUはUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-461-QINUの下界ではない。すなわち、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-462-QINUとなるUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-463-QINUが存在。
ⅲ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-464-QINUが最小値を持つ場合には、下限は最小値と一致する。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-465-QINU の上限をUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-466-QINU、下限をUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-467-QINUと書く。
証明は、上限、下限の定義から、明らかなので省略する。
例;UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-468-QINUのとき、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-469-QINU,UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-470-QINU。
これらは、ともにUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-471-QINUの要素でないので、
上限1はUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-472-QINUの最大元(最大値)ではなく、下限0はUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-473-QINUの最小元(最小値)ではない。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-474-QINUのとき、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-475-QINU,UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-476-QINU。
これらは、ともにUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-477-QINUの要素なので、
上限は最大限であり、下限は最小限となる。
補題4.
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-478-QINUで、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-479-QINUは有界集合とする。
このとき、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-480-QINU
証明は容易である。
関数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-481-QINUが連続でない時は、区間上で最大値や最小値を取らないことがある。
この場合も考慮して、最大値を上限に、最小値を下限に置き換えて、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-482-QINUで定義すれば、
有界関数に対して、これらは常に定義され、今までの議論はすべて成り立つ。
2つの分割の共通の細分
分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-483-QINUの分点の集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-484-QINUと、
分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-485-QINU の分点の集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-486-QINUの
和集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-487-QINUを分点とする分割をUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-488-QINUと書く。
すると新しい分割は
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-489-QINU と
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-490-QINU
を満たす。
これを用いると、
不足リーマン和の上限UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-491-QINUと
過剰リーマン和の下限UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-492-QINUが存在することが証明できる。
補題5
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-493-QINUを区間UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-494-QINUで定義され実数値をとる有界関数
すなわち、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-495-QINUがUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-496-QINUの有界部分集合となる関数とする。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-497-QINUの分割を全て集めて作った集合をUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-498-QINUと書く。
すると、
ⅰ)任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-499-QINUに対して、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-500-QINU
ⅱ)集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-501-QINUは上に有界、
集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-502-QINUは下に有界
ⅲ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-503-QINUと
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-504-QINUは存在し、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-505-QINU
証明;
ⅰ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-506-QINU なので、補題2から、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-507-QINU
ⅱ)1)で証明した不等式で、分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-508-QINU は固定する。
すると全ての分割 UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-509-QINUに対して、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-510-QINUなので
集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-511-QINUは、上界UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-512-QINUを持ち、上に有界である。
後者も同様にして下に有界であることが示せる。
ⅲ)従って、実数の連続性の公理から、
集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-513-QINUは上限UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-514-QINUをもち、
集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-515-QINUは下限UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-516-QINUをもつ。
上限は、上界の中の最小値なので、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-517-QINU
この式は任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-518-QINUについて成立するので、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-519-QINUは、集合UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-520-QINUの下界である。
下限UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-521-QINUは、下界のなかの最大値なのでUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-522-QINUを得る。
分割を細かくしていくときの不足リーマン和と、過剰リーマン和の極限
定理(ダルブー;Darboux)
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-523-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-524-QINUを、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-525-QINUで定義され、実数に値を取る有界関数とする。
このとき、
ⅰ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-526-QINU
ⅱ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-527-QINU
証明;
ⅰ)を示す。( ⅱ)は同じようにして証明できるので略す)
これを示すには、
どんなに小さい正の実数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-528-QINUに対しても、それに応じた小さい正の実数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-529-QINUを適切に選べば、
分割の大きさがUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-530-QINUより小さい、どんな分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-531-QINUも、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-532-QINU
であることを示せばよい。
以下に、数段階に分けて、これを証明する。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-533-QINU上限の性質(補題3)から、
ある分割
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-534-QINU
が存在して、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-535-QINU
今後このUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-536-QINUを使って、証明を進める。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-537-QINU
分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-538-QINUの小区間UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-539-QINUの長さUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-540-QINUの
最小値をUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-541-QINUとおくと
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-542-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-543-QINUに比べて非常に小さい大きさを持つ分割、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-544-QINU、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-545-QINU
を考える。
もし、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-546-QINUならば補題2より、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-547-QINU、
するとUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-548-QINU
通常、分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-549-QINUは、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-550-QINUの細分になっていない。
この場合は、高々(n-1)個のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-551-QINUの小区間が、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-552-QINUの小区間には含まれず、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-553-QINUの分点UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-554-QINUをまたぐことになる。図参照のこと。
議論を簡単にするため、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-555-QINUの分点UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-556-QINUが全て、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-557-QINUの小区間によって跨がれている
と仮定し、議論を進める。
他のケースでも、証明はおなじようにできるので、
このように仮定しても何の問題も起こらない。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-558-QINUの分点UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-559-QINUを跨ぐUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-560-QINUの小区間をUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-561-QINUとする(i=1,2,,,n-1)。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-562-QINU
2つの分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-563-QINUからUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-564-QINUを作る。
すると
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-565-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-566-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-567-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-568-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-569-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-570-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-571-QINU
と書ける。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-572-QINUで、 UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-573-QINU なので、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-574-QINU, UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-575-QINU
後者の式から、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-576-QINU
この式と(1)式から、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-577-QINU
そこで、
「UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-578-QINUならば、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-579-QINU
が示せれば、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-580-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-581-QINU
が示され、証明が終わる。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-582-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-583-QINU
であり、
(2)式から、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-584-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-585-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-586-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-587-QINU
なので、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-588-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-589-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-590-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-591-QINU
関数はUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-592-QINU上で有界なので、適切に正の実数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-593-QINUを選ぶと、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-594-QINUがUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-595-QINUの要素ならば
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-596-QINUが成立する。
するとUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-597-QINU
が成り立つ。また
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-598-QINUで、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-599-QINU
なので
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-600-QINU
そこで、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-601-QINU
と選べば、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-602-QINUをみたすどのような分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-603-QINUも、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-604-QINU
を満たすことが証明できた。証明終わり。
可積分条件
定理;可積分条件
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-605-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-606-QINUを、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-607-QINUで定義され、実数に値を取る有界関数とする。
次の条件のうち1つが成立すれば、残り2つは成立する(互いに同値という)。
ⅰ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-608-QINUはUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-609-QINU上で(リーマン)可積分
ⅱ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-610-QINU
ⅲ)UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-611-QINU
証明
ⅰ)を仮定する。ⅱ)が成立することを示そう。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-612-QINUの積分値をUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-613-QINUとおくと、可積分の定義から、
任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-614-QINUに対して、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-615-QINUが存在して、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-616-QINUである任意の分割と、その分割の任意の代表点UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-617-QINUに対し,
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-618-QINU
が成立する。
変形すると
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-619-QINU
ここで、補題1のⅱ)から、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-620-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-621-QINU
なので、
(1)式から、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-622-QINU
これより、任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-623-QINUに対して、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-624-QINUが存在して、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-625-QINU
ⅱ)が示せた。
ⅱ)を仮定する。 ⅲ)が成り立つことを示す。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-626-QINU
なので、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-627-QINU
故に、分割を細かくしていき、極限をとると、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-628-QINU
ⅱ)が成立するので、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-629-QINU
ⅲ)が示せた。
ⅲ)を仮定する。 UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-630-QINUとおく。
ⅰ)が成り立つことを示そう。
補題1のⅰ)から、どのような分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-631-QINUと、その代表点UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-632-QINUに対しても
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-633-QINU
ここで、ダルブーの定理から、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-634-QINU,
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-635-QINU
が成り立つので、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-636-QINU
が成り立つ。
ⅰ)が示せた。
区分的に連続(有限個の点を除いて連続)な閉区間上の関数は積分可能
色々な関数のグラフを書くとつながっているところを、跳んでいるところが出来る。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-637-QINUのグラフはずっとつながっている。
関数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-638-QINUを、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-639-QINUのとき UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-640-QINU, UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-641-QINUのとき UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-642-QINU
で定義すると、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-643-QINUのところでそのグラフは跳んでいる。
連続や不連続は関数の非常に重要な性質であり、
それを調べることはとても豊かな知識をもたらす。
しかし正確に議論するには、連続とは何かをきちんと定義する必要がある。
関数の連続性の定義;
実数値関数 UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-644-QINU がある点 UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-645-QINUで連続であるとは、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-646-QINUがUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-647-QINU に限りなく近づくならば、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-648-QINU が UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-649-QINU に限りなく近づく
ことを言う。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-650-QINUと記す。
これはイプシロン-デルタ論法(ε-δ論法)を用いれば次のように定式化できる。
(小さな)正の数 ε が任意に与えられたとき、
(小さな)正の数 δ をうまくとってやれば、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-651-QINU と δ 以内の距離にあるどんな UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-652-QINU に対しても、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-653-QINU と UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-654-QINU の差が ε より小さいようにすることができる。
関数 UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-655-QINU がある区間UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-656-QINU で連続であるとは、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-657-QINU に属するそれぞれの点において連続であることを言う。
定理
有界閉区間上UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-658-QINUで定義され、実数に値を取る連続関数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-659-QINUは、V上で可積分である。
略証;
有界閉区間上の連続関数は一様連続なので、
任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-660-QINUに対して、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-661-QINUが存在して、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-662-QINUを満たすUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-663-QINUの任意の2点に対して、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-664-QINU
が成立する。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-665-QINUの分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-666-QINUを細かくして、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-667-QINU
を満たすようにする。
すると、その分割によって得られた小区間UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-668-QINUの長さは、
全てUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-669-QINUより小さくなるので、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-670-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-671-QINUの定義から
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-672-QINU
これを用いると、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-673-QINU
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-674-QINU
故に、
任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-675-QINUに対して、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-676-QINUが存在して、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-677-QINUを満たす任意の分割UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-678-QINUにたいして、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-679-QINUが示せた。
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-680-QINU
なので
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-681-QINU
が任意のUNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-682-QINUにたいして成立する。故に
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-683-QINU
可積分条件のⅲ)が示せた。証明終わり。
定理の系;有界閉区間上で定義され、区分的に連続な(有限個の不連続点をもつ)実数値関数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-684-QINUは積分可能である。
証明は容易なので略す。
ベクトル値関数の場合
ベクトル値関数UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-685-QINUの場合も、リーマン和とリーマン可積分の定義は実数値関数の場合と変わらない。
可積分条件については、
座標系をいれ、関数の各座標成分UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-686-QINUを考える。ここで、UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-687-QINUである。他も同様。
すると区分的連続なベクトル値関数の各成分は区分的連続なので積分可能となり、
UNIQd2754b3dd5d9d9-MathJax-688-QINUの積分可能性が示せる。