物理/極限と微分
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極限と微分
集合
集合論の初歩の知識は前提にして記述するので、
なじみのない方は、下記を参考に、
集合の素朴な定義、集合の表記法、集合の和集合や共通集合、集合の包含関係
などについて学習してほしい。
実数の連続性と極限
実数の連続性は、色々な極限の存在の根拠を与えるもので、
実数の持つ最も重要な性質の一つである。
上界、下界と有界集合
Rを、全ての実数を要素とする集合とし、
Aをその部分集合とする。
実数uがAの上界(upper bound)とは、
任意のa∈Aに対して、a≤uがなりたつこと。
実数lがAの下界(lower bound)とは、
任意のa∈Aに対して、l≤aがなりたつこと。
UAをAの上界をすべて集めた集合、
LAをAの上界をすべて集めた集合とする。
UAが空集合∅でない(すなわち、Aの上界が少なくとも一つ存在する)とき、
Aは上に有界であるといい、
LA≠∅の時、Aは下に有界であるという。
上に有界で、下にも有界な集合(⊂R)は、有界という。
実数の連続の公理と上限、下限
A⊂Rとする。
実数の連続性の公理
もし、UA≠∅ならば、UAは、最小元を持つ。
もし、LA≠∅ならば、LAは、最大元を持つ。
上限と下限の定義
UAの最小元をAの上限(supremum)あるいは最小上界(least upper bound)という。
また、LAの最大元をAの下限(infimum)あるいは最大下界(greatest lower bound)という。
命題1
uがA(⊂R) の上限となるための必要十分条件は、
ⅰ)uはAの上界。すなわち任意のa∈Aにたいしてa≤u
ⅱ)x<uである任意のxはAの上界ではない。すなわち、x<aとなるa∈Aが存在。
ⅲ)Aが最大値を持つ場合には、上限は最大値と一致する。
同様に、lがA の下限となるための必要十分条件は、
ⅰ)lはAの下界。すなわち任意のa∈Aにたいしてl≤a
ⅱ)l<xである任意のxはAの下界ではない。すなわち、a<xとなるa∈Aが存在。
ⅲ)Aが最小値を持つ場合には、下限は最小値と一致する。
A の上限をsupA、下限をinfAと書く。
証明は、上限、下限の定義から、明らかなので省略する。
例;A=(0,1)のとき、supA=1,infA=0。
これらは、ともにAの要素でないので、
上限1はAの最大元(最大値)ではなく、下限0はAの最小元(最小値)ではない。
A=[0,1]のとき、supA=1,infA=0。
これらは、ともにAの要素なので、
上限は最大限であり、下限は最小限となる。
命題2
A⊂B⊂Rで、Bは有界集合とする。
このとき、infB≤infA≤supA≤supB
証明は容易である。
命題3
A⊂Rで、Aは有界集合とする。
s:=infA,S:=supA,d(A):=supx,y∈A(x−y)とおくと、
S−s=d(A)
証明
1)d(A)≤S−sを示す。
下限と上限の定義から、任意のa,b∈Aに対して、s≤a,b≤S
これより、|a−b|≤S−s。故にd(A)=supa,b∈A(a−b)≤S−s
2)S−s≤d(A)を示す。
d(A)<S−sだと仮定する。
この仮定から矛盾が生じれば、誤謬法により、2)が成立することが分かる。
仮定により、ある十分に小さい正数ϵを取れば、
d(A)<S−s−ϵ=(S−12ϵ)−(s+12ϵ)(1)
が成り立つ。
S−12ϵはAの最小上界Sより小さいのでAの上界ではない。
そのため、あるa0∈Aが存在して
S−12ϵ<a0(2)
s+12ϵは、同様に、Aの下界ではないので、あるb0∈Aが存在して
b0<s+12ϵ(3)
式(1),(2),(3)から、
d(A)<a0−b0
これは、d(A)=supa,b∈A(a−b)と矛盾する。
証明終わり。
実数列の収束と極限、極限の性質
順番に並んだ実数の列
a1,a2,,,an,,,,,
を実数列といい、
実数列{an}∞n=1,{an}n∈N,{an}
などとも書く。ここでNは、すべての自然数を要素とする集合である。
数列の収束と極限
定義
実数列{an}∞n=1が実数cに収束するとは、
nを大きくしていくときanがcに限りなく近づいていくこと(一致してもよい)。
厳密に述べると、
どんなに小さい正数ϵを選んでも、
それに対応する自然数nϵが存在して、
n≥nϵというどのような自然数nに対しても、
|c−an|<ϵ
が成立すること。
この時、cを数列{an}nの極限といい、c=limn→∞anと記す。
極限の性質
命題
α,βを任意の実数とし、
実数列{an}∞n=1と実数列{bn}∞n=1は収束すると仮定する。
このとき、以下の諸性質がある。
(1)実数列{αan+βbn}∞n=1は収束し、
limn→∞(αan+βbn)=αlimn→∞an+βlimn→∞bn
(2)実数列{anbn}∞n=1は収束し、
limn→∞anbn=limn→∞anlimn→∞bn=
これらの性質は、極限への収束の定義から明らかである。
有界な単調数列は収束する
定義;単調数列
実数列{an}が単調増加とはai≤ai+1,(i=1,2,3,,,,)がなりたつこと。
実数列{an}が単調減少とはai≥ai+1,(i=1,2,3,,,,)がなりたつこと。
実数列{an}が単調とは、単調増加か単調減少のこと。
実数列の単調収束定理
1)上に有界な単調増加の実数列{an}は収束し、
その極限はsupn∈Nanに等しい。
2)下に有界な単調減少の数列{an}は収束し、
その極限はinfn∈Nanに等しい。
証明;
1)。上に有界な数列は、実数の連続の公理から、
上限s=supn∈Nanを持つ。
上限の定義から、どんなに小さい正数ϵを選んでも、
s−ϵ<an0≤sをみたす数列の要素an0が存在する。
数列は単調増加なので、n≥n0ならばan0≤an≤s.
ゆえに、任意の正数ϵにたいして、ある番号n0が存在して、
任意のn≥n0にたいして、
s−ϵ<an0≤an≤s
が言えた。ゆえに、この数列はsに収束する。
2)の証明も同様に行えるので省略。
収束する部分列
定義;
数列{bn}∞n=1が
数列{an}∞n=1の部分列{bn}∞n=1であるとは、
全ての自然数を要素とする集合Nから、Nへの
関数gが存在して、
bn=ag(n),(n=1,2,3,,,)となること。
ここで、gは i≤g(i)≤g(i+1),(i=1,2,3,,,)をみたすものとする。
ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理
有界な実数列{xn}∞n=1は収束する部分列を持つ。
証明;
数列の各項xnを要素とする集合{x1,x2,x3,,,}は有界集合なので、
実数の連続性の公理から、
上限b:=sup{xn∣n=1,2,3,,,}と
下限a:=sup{xn∣n=1,2,3,,,}をもつ。
I:=[a,b]という閉区間を考えると、数列の全ての要素はこの区間に含まれる。
1)閉区間Iを2等分し部分列の最初の項をきめる。
閉区間Iを2等分して
2つの閉区間[a,a+b2],[a+b2,b]に分ける。
どちらかの区間には数列{xn}∞n=1の項が無限に沢山含まれる。
それをI1=[a1,b1]と表現する。
数列{xn}∞n=1の中で
I1に含まれる、最も番号の小さいものxg(1)を取り出す。g(1)≥1である。
2)この手順を繰り返し部分列を作る。
次にI1を2等分する。このどちらかの区間に数列{xn}∞n=1の項が無限に沢山含まれる。
そこで、数列要素を無限に多く含む方の区間を選び、I2=[a2,b2]と表現する。
{n∈N∣an∈I2のなかで、g(1)より大きいもののなかで最小のものg(2)を取り出す。
これを無限に続けていくと、
数列{xg(i)}∞i=1が得られる。
ここで、作り方から、
gはNからNへの狭義の増加関数なので数列{xi}∞i=1の部分列。
ai≤xg(i)≤bi,(i=1,2,3,,,,,)、すなわちxg(i)∈Ii,(i=1,2,3,,,)
a1≤a2≤⋯≤an≤⋯≤bn≤⋯≤b2≤b1
d(Ii)=bi−ai=b−a2i
である。
yi:=xg(i),(i=1,2,3,,,)とおく。
3)部分列{yi}∞i=1は収束する
ai≤xg(i)=yi≤bi,(i=1,2,3,,,,,)(1)
数列{ai}∞i=1は有界な単調増加数列、
数列{bi}∞i=1は有界な単調減少数列
なので、単調収束定理により、
其々極限s:=limi→∞anとS:=limi→∞bnに収束する。
S−s≤bi−ai=b−a2iがすべての自然数iに対してなるたつので
S=s(2)
式(1)と(2)から、
limi→∞yi=s=S
コーシー数列は収束する
コーシー数列の定義
実数列{an}がコーシー列とは、
どんなに小さい正数ϵを選んでも、
ある番号n0が存在して、
m,n≥n0ならば、|am−an|<ϵ
となること。
定理(コーシー)
実数列{an}に対して
数列が収束する ⇔ コーシー列である。
証明;
(=>)実数列{an}が極限sに収束すると仮定する。
どんなに小さい正数ϵを選んでも、
ある番号n0が存在して、
n≥n0ならば|an−s|<ϵ2
そこで、m,n≥n0ならば、|am−an|≤|am−s|+|s−an|<ϵ
ゆえに、コーシー列である。
(<=)実数列{an}がコーシー列とする。
1)数列は有界
何故なら、正数1に対して、ある番号n0が存在して、
m,n≥n0ならば、|am−an|<1
これより、m≥n0ならば、|am−an0|<1
これより、an0−1<am<an0+1
すると数列の全ての要素は
M:=maxa1,a2,,,an0−1,an0+1
以下となり上に有界である。
下に有界であることも、同様にして分かる。
2)収束する部分列の存在
数列が有界なので、ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理より、
収束する部分列{yi:=xg(i)}∞i=1がある。
その極限をs:=limi→∞yiとおく。
3)s:=limn→∞anを示す。
数列{an}がコーシー列なので、
どんなに小さい正数ϵをとっても、
ある番号n0が存在して、m,n≥n0である自然数m、nに対して
|am−an|≤ϵ
s=limi→∞yiなので
ある番号i0が存在してj≥i0である自然数jに対して、
|yj−s|≤ϵ
すると、i1:=mini∈N∣g(i)≥n0,i≥i0とおくと、
n≥g(i1)である自然数nに対して
|an−s|≤|an−ag(i1)|+|ag(i1)−s|≤2ϵ
故に数列{an}は収束しその極限がsであることが証明された。
閉区間の中の数列の極限
命題;
収束する実数列{an}の各項anが閉区間I=[a,b]に含まれれば、
その極限x0:=limn→∞anもIに含まれる。
証明
もしx0∉[a,b]とすると、x0>b か x0<aである。
前者のとき、ϵ:=x0−b2とえらぶと、
x0:=limn→∞anなので、
ある番号から先はすべて|x0−an|<ϵ,
これよりan>b,an∉I
となりan∈In⊂Iに矛盾してしまう。
後者の場合も、同様に、矛盾が生じる。
関数の連続性
関数の連続性の定義;
実数の区間Iで定義された実数値あるいはベクトル値の関数 f(x) が
ある点 x0∈Iで連続であるとは、
x∈Iがx0 に限りなく近づくならば、f(x) が f(x0) に限りなく近づく
ことを言う。
limx→x0f(x)=f(x0)と記す。
これはイプシロン-デルタ論法(ε-δ論法)を用いれば次のように定式化できる。
(小さな)正の数 ε が任意に与えられたとき、
(小さな)正の数 δ を適切にえらべば、
x0 と δ 以内の距離にあるどんな x∈I に対しても、
f(x0) と f(x) の差が ε より小さいようにすることができる。
記号でかくと
(|x−x0|<δ,x∈I)⟹|f(x)−f(x0)|<ϵ
(注)関数がn次元空間Rnの区間Inで定義され
関数値がベクトルのときも、関数の連続性の定義は変わらない。
この場合には、|∙|は∙のノルムを表す。
数列の極限を用いた連続性の表現
命題
関数fは
n次元の開区間In=∏ni=1[ai,bi]:={(x1,x2,,,xn)∣xi∈[ai,bi],(i=1,2,,,n)}で定義され、
m次元ベクトルに値を取る関数とする。
すると任意のa∈Inに対して、次の(1)と(2)は同値である。
(1)limx→af(x)=f(a)
(2)xn∈In,(n=1,2,3,,,,)をa∈Inに収束する任意の点列とすると
limn→∞f(xn)=f(a)
証明
(1)ならば(2)を示す。
(1)を仮定したとき、
任意のϵ>0に対して、ある番号n0が存在し、
任意の自然数n(≥n0)に対して、‖を示せばよい。
仮定から、この\epsilonに対して、正数\deltaが存在して、
\|a-x\|<\deltaを満たす任意のx\in I^nに対して
\|f(a)-f(x)\|<\epsilon \quad \qquad (1)
x_n\in I^n,(n=1,2,3,,,,)はa\in I^nに収束するので、
ある番号n_0が存在して,n\geq n_0である任意の自然数nに対して、
\|a-x_n\|<\delta
故に、式(1)から\|f(a)-f(x_n)\|<\epsilon
(2)ならば(1)を示す。
背理法を用いる。
(1)が成り立たないと仮定する。
すると、ある\epsilon>0が存在して、
どんなに小さい正数\delta>0に対しても、
|x-a|<\delta、\|f(a)-f(x)\|\geq \epsilon
を満たすx\in I^nが存在する。
そこで、任意の自然数nに対して、
|x-a|<\frac{1}{n}、\|f(a)-f(x)\|\geq \epsilon
をみたすx\in I^nを一つ選び、x_nとおく(n=1,2,3,,,,)。
数列\{x_n\}_{n=1}^{\infty}を作ると、
この数列は明らかにaに収束する。
ところが\|f(a)-f(x_n)\|\geq \epsilon,(n=1,2,3,,,)
なので、関数値のつくる数列\{f(x_n)\}_{n=1}^{\infty}
はf(a)に収束しない。
これは条件(2)に反し、矛盾である。
証明終わり。
連続関数の性質
命題1.有界閉区間I=[a,b]で定義された実数値の連続関数fは有界である。
但し、fが有界とは\{f(x)\mid x\in I\}が有界集合のこと。
証明;
上に有界でないと仮定して矛盾が生じることを示せば良い。
下に有界でない場合も全く同じように証明できる。
fが上に有界でないので、任意の自然数nにたいして、
f(x_n)\geq nとなる点x_n\in Iが存在する。
数列\{x_n\}_{n=1}^{\infty}は有界なので
ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理から、
収束する部分列\{x_{g(i)}\}_{i=1}^{\infty}が存在する。
その極限を\xiとおく。
すると関数値から作られる数列\{f(x_{g(i)})\}_{i=1}^{\infty}は、
関数の連続性から、収束しf(\xi)=\lim_{i\to \infty}f(x_{g(i)})
ところが、f(x_{g(i)})\geq g(i)\geq iなので、
この極限は存在せず無限大に発散。矛盾が生じる。
証明終わり。
命題2
fは、有界閉区間I=[a,b]で定義された実数値の連続関数とする。
すると、fは、I上で最大値と最小値を持つ。
証明;
1)命題1からfは有界関数なので、{\bf R(f)}:=\{f(x) \mid x\in I\}は実数からなる有界集合。
実数の連続性の公理から、{\bf R(f)}の下限と上限m:=\inf {\bf R(f)},M:=\sup{\bf R(f)}が存在。
2)MはfのI上の最大値、
Mが{\bf R(f)}の上界なので任意のIの要素xに対してf(x)\leq M。
f(\xi)=Mとなる\xi\in Iが存在することを証明すれば良い。以下に、これを示す。
1)任意の自然数nにたいしてM-\frac{1}{n}は{\bf R(f)}の上界でなくなるので、
M-\frac{1}{n}<f(x_n)を満たすx_n\in Iが存在する。
これらの数の作る数列\{x_n\}_{n=1}^{\infty}は、有界なので、
ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理から、
収束する部分列\{x_{g(i)}\}_{i=1}^{\infty}が存在する。
この極限を\xi:=\lim_{i\to \infty}x_{g(i)}とおく。
ここで、部分列は閉区間Iのなかにあるので、すでに証明した命題から、
\xi\in I
そこで関数の連続性から、
\xi\in I \qquad \qquad (1)
数列\{f(x_{g(i)})\}_{i=1}^{\infty}は収束し、その極限は
f(\xi)=\lim_{i\to \infty}f(x_{g(i)}) \qquad \qquad (2)
ところが、全ての自然数nに対して、M-\frac{1}{n}<f(x_n)\leq M,g(n)\geq nなので
M-\frac{1}{i}<f(x_{g(i)})\leq M,(i=1,2,3,,,)
この式のiについての極限をとると
\lim_{i\to \infty}f(x_{g(i)})=M
この式と式(2)から、
f(\xi)=M \qquad \qquad (3)
式(1)と式(3)から、Mが最大値であることが示せた。
証明終わり。
実数値関数とベクトル値関数の微分
このテキストを理解するための必要最小限のことを記述する。
以下の文献も必要に応じて参考にしてください。
一冊では不十分な内容なので色々あげてある。
実数値関数の微分
実数の開区間I=(a,b)上で定義された実数値関数y=f(x)を考える。
定義;微分可能性
関数fがs\in Iで微分可能であるとは、極限
\lim_{h \to 0,h\neq 0}\frac{f(s+h)-f(s)}{h}=c \qquad \qquad (1)
が存在することである。
この時cをfのsにおける微分係数あるいは導値といい、
f'(s)、\frac{df}{dt}(s)、(Df)(s)
などと書く。
I=(a,b)の各点でfが微分可能であるとき、fは微分可能関数(あるいは
微分可能)という。
この時、任意のs\in Iに対して、f'(s)が定まるので、
関数f'が定まる。これをfの{\bf 導関数}(derivative)という。
微分係数の意味
(1)\frac{f(s+h)-f(s)}{h}は、区間[s,s+h]における関数値の平均変化率である。
その極限である微分係数f'(s)は、関数値のsにおける瞬間的な変化率と考えられる。
(2)2次元空間(平面のこと)に直交座標座標系O-xyをいれ、
関数y=f(x)のグラフG=\{(x,y)\mid x\in I,y=f(x)\}を描く。
すると、
f'(s)が存在することは、x=sにおいてグラフGが接線をもつことと同等であり、
接線の方程式は
y=f'(s)(x-s)+f(s)である。
これは、接線の定義からただちに分かる。
(3)hを零に近づけていったときの極限の意味をさらに深めるため
微分可能の定義を、それと同等の別の表現に変換しよう。
(1)式の右辺の定数を左辺に移行すると
\lim_{h \to 0,h\neq 0}\frac{f(s+h)-f(s)-ch}{h}=0
次に、
o_{s}(h):=\frac{f(s+h)-f(s)-ch}{h}\qquad \qquad (2)
という、変数hの関数を定義する。
すると関数fがs\in Iで微分可能で、微分係数がcである必要十分条件は
\lim_{h \to 0,h\neq 0}o_{s}(h)=0
である。
(2)式を変形すると
f(s+h)=f(s)+ch+o_{s}(h)h
ゆえに次の命題が証明できた。
命題;
次の3つの条件は同等である。
1)関数fはs\in Iで微分可能で、微分係数はcである
2)関数fは、
f(s+h)=f(s)+ch+o_{s}(h)h \qquad \qquad (3)
と表現できる。
ここで、o_{s}(h)は
\lim_{h \to 0,h\neq 0}o_{s}(h)=0 \qquad \qquad (4)
を満たす関数
3) 関数fは、
sの近傍の点xで
f(x)=f(s)+c(x-s)+\left(o_{s}(x-s)\right)(x-s) \qquad \qquad (3)
ここで、o_{s}(x-s)は
\lim_{x \to s,x\neq s}o_{s}(x-s)=0 \qquad \qquad (4)
を満たす関数
この定理の3)により、
「関数がsで微分可能であり、微分係数がcであること」は、
「この関数がsの近傍の点xで直線y=f(s)+c(x-s)で近似でき、
誤差|f(x)-(f(s)+c(x-s))|=|\left(o_{s}(x-s)\right)(x-s)| が,
xをsに近づけていくとき、h=x-sより高次で0に収束する(注参照)
ことと同等であることが分かる。
(注)\lim_{h\to 0,h\neq 0}\frac{o_{s}(h)h}{h}=0
命題の系;関数がsで微分可能であれば、sで連続である。
証明;命題の2)を用いると、
f(s+h)=f(s)+ch+o_{s}(h)h
この式から、|f(s+h)-f(s)|=|(c+o_{s}(h))h|
\lim_{h \to 0,h\neq 0}o_{s}(h)=0なので\lim_{h \to 0,h\neq 0}|(c+o_{s}(h))h|=0。
ゆえに、\lim_{h \to 0,h\neq 0}|f(s+h)-f(s)|=0
これは、関数がsで連続であることの定義そのものである。
導関数の性質
(1)f,gがI=(a,b)上で定義された、微分可能な実数値関数ならば
\alpha f+\beta g、fg(s):=f(s)g(s)は微分可能で
それらの導関数の間には、
(\alpha f+\beta g )'=\alpha f'+\beta g'(線形性)ここで\alpha,\betaは任意の実数。
(2) (fg)'=f'g+fg'
証明は、微分の定義式と極限の性質から容易に導ける。
平均値の定理
ロールの定理
fを有界閉区間I=[a,b],(b>a)で定義された実数値関数とする。
fがI=[a,b]で連続、開区間I^{\circ}=(a,b)で微分可能,しかもf(a)=f(b)ならば、
f'(\xi)=0を満たす\xi\in (a,b)が存在する。
証明;
「関数の連続性」の命題2から、閉区間上の連続関数は最大値Mと最小値mをもつ。
すると、m \leq f(a)=f(b)\leq M
1)m =f(a)=f(b)=Mの場合
I上でf\equiv f(a)
すると、f'\equiv 0なのでこの定理は成り立つ。
2)f(a)=f(b)<Mの場合
f(\xi)=Mとなる数\xi\in (a,b)が存在する。
a<\xi+h<bをみたす、絶対値が十分小さい数hにたいして
f(\xi+h)\leq f(\xi)=M なので、f(\xi+h)-f(\xi)\leq 0
hが正のとき
\frac{f(\xi+h)-f(\xi)}{h}\leq 0 \qquad \qquad (1)
hが負のとき
\frac{f(\xi+h)-f(\xi)}{h}\geq 0 \qquad \qquad (2)
関数は、\xi\in (a,b)で微分可能なので、
\lim_{h\to 0,h>0}\frac{f(\xi+h)-f(\xi)}{h}=\lim_{h\to 0,h<0}\frac{f(\xi+h)-f(\xi)}{h}=f'(\xi)
ところが式(1)から
\lim_{h\to 0,h>0}\frac{f(\xi+h)-f(\xi)}{h} \leq 0
式(2)から
\lim_{h\to 0,h>0}\frac{f(\xi+h)-f(\xi)}{h} \geq 0
なので
f'(\xi)=0
3)f(a)=f(b)>mの場合
2)と同様に証明できる。
証明終わり。
平均値の定理
fを有界閉区間I=[a,b],(b>a)で定義された実数値関数とする。
fがI=[a,b]で連続で、開区間I^{\circ}=(a,b)で微分可能ならば、
ある数\xi\in (a,b)が存在して、
f(b)-f(a)=f'(\xi)(b-a)
証明;
関数gを次式で定義する。
g(x):=f(x)-\frac{f(b)-f(a)}{b-a}(x-a)
すると、
gはI=[a,b]で連続で、開区間I^{\circ}=(a,b)で微分可能
g(a)=g(b)=f(a)
gはロールの定理の仮定を満たす。
そこでロールの定理から、
g'(\xi)=0を満たす\xi\in (a,b)が存在する。
gの定義から
g'(\xi)=f'(\xi)-\frac{f(b)-f(a)}{b-a}
故に、
0=f'(\xi)-\frac{f(b)-f(a)}{b-a}
が得られる。この式を整頓すると
f(b)-f(a)=f'(\xi)(b-a)
証明終わり。
系;fがI=(a,b)上で定数\Leftrightarrow I上で恒等的にf'(t)=0
ベクトル値関数の微分
実数の開区間I=(a,b)上で定義され,n次元の実ベクトル(\in {\bf R^n})に
値をとる関数\vec fを考える。
定義;微分可能性
実数値関数の場合と同じである。
導関数の線形性の性質も成り立つ。
ベクトル値関数の微分とその成分関数の微分の関係
関数値\vec f(s)は{\bf R^n}の要素なので
\vec f(s)=(f_1(s),f_2(s),\cdots f_n(s))
と表示できる。
すると\vec fのn個の成分関数
f_i,(i=1,2,\cdots n)
が得られる。
命題;
\vec fがs\in Iで微分可能\Leftrightarrowf_i(i=1,2,\cdots n)がs\in Iで微分可能。
この時、{\vec f}'(s)=({f_1}'(s),{f_2}'(s)\cdots {f_n}'(s))
ベクトル積の微分
命題
\vec{a(t)} と \vec{b(t)} は、開区間I上で定義され、
微分可能なベクトル値関数とする。すると、
\quad \vec{a(t)} \times \vec{b(t)} は微分可能で、
\quad \frac{d}{dt}(\vec{a(t)} \times \vec{b(t)}) =(\frac{d}{dt}\vec{a(t)} )\times \vec{b(t)}+\vec{a(t)}\times (\frac{d}{dt}\vec{b(t)})
証明
すでにこのテキストで紹介した、ベクトル値関数の微分の定義
\quad \frac{d}{dt}(\vec{a(t)} \times \vec{b(t)})
=\lim_{\delta t \to 0}
(\vec a(t+\delta t)\times \vec{b(t+\delta t)}- \vec{a(t)} \times \vec{b(t)})/\delta t \qquad (1)
を用いて証明する。
この極限が存在し、
\frac{d}{dt}\vec{a(t)} \times \vec{b(t)}+\vec{a(t)}\times \frac{d}{dt}\vec{b(t)}
になることを示せば命題は証明できたことになる。
極限の計算が進むよう、右辺の式の分母は変形しよう。
関数の積の微分公式の証明と同じ技巧を用いる。
\vec a(t+\delta t)\times \vec{b(t+\delta t)}
- \vec{a(t)} \times \vec{b(t)}
= \vec a(t+\delta t)\times \vec{b(t+\delta t)}
-\vec a(t)\times \vec{b(t+\delta t)}
+\vec a(t)\times \vec{b(t+\delta t)}
- \vec{a(t)} \times \vec{b(t)}
ベクトル積の命題3を利用すると、
= \left(\vec a\left(t+\delta t\right) -\vec a\left(t\right)\right)
\times
\vec b\left(t+\delta t\right)
+\vec a\left(t\right)\times \left(\vec b\left(t+\delta t\right)- \vec b\left(t\right)\right)
この式を式(1)の右辺の分子の項に代入し整頓すると
\quad \frac{d}{dt}(\vec{a(t)} \times \vec{b(t)})
=\lim_{\delta t \to 0}
\frac{\vec a(t+\delta t)\times \vec b(t+\delta t)- \vec a(t) \times \vec b(t)}
{\delta t}
=\lim_{\delta t \to 0}
\frac{\left(\vec a\left(t+\delta t\right) -\vec a\left(t\right)\right)
\times
\vec b\left(t+\delta t\right)
+\vec a\left(t\right)\times \left(\vec b\left(t+\delta t\right)- \vec b\left(t\right)\right) }
{\delta t}
ベクトル積の命題4を使い、
=\lim_{\delta t \to 0}\left(
\frac{\vec a(t+\delta t) -\vec a(t)}{\delta t}
\times
\vec b\left(t+\delta t\right)
+
\vec a(t)\times \frac{\vec b(t+\delta t)- \vec b(t)}
{\delta t}
\right)
極限の命題を使って、
=\lim_{\delta t \to 0}
\frac{\vec a(t+\delta t) -\vec a(t)}{\delta t}
\times
\lim_{\delta t \to 0}\vec b(t+\delta t)
+
\vec a(t)\times
\lim_{\delta t \to 0}\frac{\vec b(t+\delta t)- \vec b(t)}{\delta t}
式中の極限は、\vec a,\vec bが、微分可能なので存在し、
\lim_{\delta t \to 0} \frac{\vec a(t+\delta t) -\vec a(t)}{\delta t}
=\frac{d\vec a(t)}{dt}
\lim_{\delta t \to 0} \frac{\vec b(t+\delta t) -\vec b(t)}{\delta t}
=\frac{d\vec b(t)}{dt}
C^{1}級の関数
開I=(a,b)上の関数 f が連続的微分可能(continuously differentiable)であるとは,
I上で導関数 f' が存在して、しかもf' がI上で連続であることをいう。
I=(a,b)上で連続的微分可能である関数をC^{1}級関数という。
多変数の実数値関数の微分
{\bf R^n}=\{(x_1,x_2,,,x_n) \mid x_i\in{\bf R},i=1,2,\cdots n\}
の開区間
I^n=\prod_{i=1}^{n}(a_i,b_i)上で定義された実関数y=f(x_1,x_2,,,x_n)
を考える。
一変数関数の議論から類推しやすくするため、以後
{\bf x}:=(x_1,x_2,,,x_n)とおき、y=f({\bf x})と書くこともある。
この上で定義された実数値関数y=f({\bf x})=f(x_1,x_2,,,x_n)の微分について説明する。
最初に思いつくのは、一変数のときと同じ定義をもちいることであり
\lim_{{\bf h} \to 0,{\bf h}\neq 0}\frac{f({\bf s}+{\bf h})-f({\bf s})}{{\bf h} }=c
が存在するときsで微分可能と定義すること。
しかし、
{\bf h}はn次元ベクトルなので割り算は不可能。
方向微分
そこで、{\bf p}\in {\bf R^n}、{\bf p}\neq 0を用いて、
この方向にそってh=t{\bf p}が零に近づく(t \to 0)ときの
関数値の瞬間的変化率を考える。
定義;{\bf p}方向の微分可能性
関数fが{\bf s}\in I^nで{\bf p}方向に微分可能であるとは、極限
\lim_{t \to 0,\neq 0}\frac{f({\bf s}+t{\bf p})-f({\bf s})}{t}=c \qquad \qquad (1)
が存在することである。
この時cをfの{\bf s}における{\bf p}方向の微分係数あるいは{\bf p}方向の導値といい、
\frac{\partial f}{\partial{\bf p} }({\bf s})、(D_{\bf p}f)({\bf s})
などと書く。
I^n=\prod_{i}(a_i,b_i)の各点でfが{\bf p}方向に微分可能であるとき、
fは{\bf p}方向に微分可能関数という。
この時、任意の{\bf s}\in I^nに対して、\frac{\partial f}{\partial{\bf p} }({\bf s})が定まるので、
関数\frac{\partial f}{\partial{\bf p} }が定まる。
これをfの{\bf p}方向の{\bf 導関数}という。
偏微分
{\bf R^n}の自然基底{\bf e_1}=(1,0,\cdots 0),,,,,{\bf e_n}=(0,0,,,1)を、
方向に選んだときの方向微分は、良くつかわれる。
定義;偏微分
関数fが{\bf s}\in I^nで{\bf e_i}方向に微分可能であるとき、
fは、{\bf s}\in I^nで第i座標x_iにかんして偏微分可能という。
方向微分係数D_{\bf e_i}({\bf s})を,
fの {\bf s}における x_i についての偏微分係数といい、
\frac{\partial f}{\partial x_i}({\bf s}),f_{x_{i}}({\bf s}),(D_if)({\bf s})
などと書く。
C^{1}級の関数
I^n=\prod_{i=1}^{n}(a_i,b_i)上の関数 f が連続的微分可能(continuously differentiable)であるとは,
I^n上ですべての偏導関数 \frac{\partial f}{\partial x_i},(i=1,2,,,n) が存在して、しかもI^n上で連続であることをいう。
連続的微分可能な関数をC^{1}級関数という。
n次元開区間I^n上のC^{1}級関数を全て集めた、(関数)集合をC^{1}(I^n)と記す。
定理;
I^nをn次元開区間
fをI^nで定義されたn変数の実関数
とする。
もしf\in C^{1}(I^n)ならば、
(1){\bf p}をn次元の零でない任意のベクトルとすると
fはI^n上で{\bf p}方向に微分可能
(2)(D_{\bf p}f)({\bf s})
=\sum_{i=1}^{n} p_{i}\frac{\partial f}{\partial x_i}({\bf s})
ここで、p_{i}は {\bf p}の第i成分。
証明
次元が増えると数式にして書くのに工夫が必要となり複雑になるので、
n=2の場合に証明するが、高次でも証明の方法は同じである。
\lim_{t \to 0,t \neq 0}\frac{f({\bf s}+t{\bf p})-f({\bf s})}{t}
=\sum_{i=1}^{2}p_i \frac{\partial f}{\partial x_i}
を示せばよい。
上式の左辺の分子を
\Delta(t):=f({\bf s}+t{\bf p})-f({\bf s})とおく。
すると
\lim_{t \to 0,t \neq 0}\frac{\Delta(t)}{t}=\sum_{i=1}^{2}p_i \frac{\partial f}{\partial x_i}
を示せばよい。
\Delta(t)を次のように変形する。
\Delta(t)=f(s_1+tp_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2)
=\left(f(s_1+tp_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2+tp_2)\right)
+\left(f(s_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2)\right) \qquad \qquad (1)
1)f(s_1+tp_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2+tp_2)の変形をする。
g(u):=f(s_1+up_1,s_2+tp_2)という関数を考える。
定義域はD_g:=\{u\in{\bf R} \mid a_1<s_1+up_1<b_1\}で、0を含む開区間である。
すると、g(t)=f(s_1+tp_1,s_2+tp_2),g(0)=f(s_1,s_2+tp_2)なので、
f(s_1+tp_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2+tp_2)=g(t)-g(0)\qquad \qquad (2)
2)関数gはD_g上で微分可能であることを示す。
任意のu\in D_gをとる。
D_gは開区間なので、絶対値が小さい実数\delta \neq 0をとると,
u+\delta \in D_g
\frac{g(u+\delta)-g(u)}{\delta} \qquad \qquad (3)
の極限\lim_{\delta \to 0,\delta\neq 0}が存在することを言えば良い。
式(3)を関数fに戻して表現しよう。
式(3)=\frac{f\left((s_1+up_1)+p_1\delta,s_2+tp_2\right) -f(s_1+up_1,s_2+tp_2)}{\delta}
もしp_1=0ならば式(3)=0
p_1\neq 0ならば
式(3)=p_1\frac{f\left((s_1+up_1)+p_1\delta,s_2+tp_2\right) -f(s_1+up_1,s_2+tp_2)}{p_1\delta}
fは偏微分可能なので
\lim_{\delta \to 0,\delta\neq 0}p_1\frac{f\left((s_1+up_1)+p_1\delta,s_2+tp_2\right) -f(s_1+up_1,s_2+tp_2)}{p_1\delta}=p_1\frac{\partial f}{\partial x_1}(s_1+up_1,s_2+tp_2)
故にgは微分可能で、
g'(u)=p_1\frac{\partial f}{\partial x_1}(s_1+up_1,s_2+tp_2)
従って、p_1が何であっても
g'(u)=p_1\frac{\partial f}{\partial x_1}(s_1+up_1,s_2+tp_2)\qquad\qquad (4)
となることが分かった。
3)g(t)-g(0)に平均値の定理する。
関数gはD_g上で微分可能なので、連続でもある。
そこで区間[0,t](t>0の場合) [t,0](t<0の場合)で平均値の定理を適用すると、
g(t)-g(0)=g'(\lambda t)tを満たす\lambda\in (0,1)が存在する。
式(4)から、
g(t)-g(0)=p_1\frac{\partial f}{\partial x_1}(s_1+\lambda tp_1,s_2+tp_2)
式(2)から、
g(t)-g(0)=f(s_1+tp_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2+tp_2)なので
f(s_1+tp_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2+tp_2)=tp_1\frac{\partial f}{\partial x_1}(s_1+\lambda tp_1,s_2+tp_2)
この式を、式(1)に代入すると
\Delta(t)
=tp_1\frac{\partial f}{\partial x_1}(s_1+\lambda tp_1,s_2+tp_2)
+\left(f(s_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2)\right)
故に
\frac{\Delta(t)}{t}
=p_1\frac{\partial f}{\partial x_1}(s_1+\lambda tp_1,s_2+tp_2)+\frac{f(s_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2)}{t} \qquad\qquad (5)
定理の仮定から、関数fはC^i級なので、その偏導関数は連続になるので
式(5)の第1項はt->0のときp_1\frac{\partial f}{\partial x_1}(s_1,s_2)に収束する。
式(5)の第2項は,
p_2\neq 0の時、
\frac{f(s_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2)}{t}
=p_2\frac{f(s_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2)}{p_2t}なので、
t->0のときp_2\frac{\partial f}{\partial x_2}(s_1,s_2)に収束する。
p_2= 0の時は
f(s_1,s_2+tp_2)-f(s_1,s_2)=0なので式(5)の第2項は0となり、
その極限も0である。
従ってこの場合もp_2\frac{\partial f}{\partial x_2}(s_1,s_2)に収束する。
故に
\lim_{t \to 0,t \neq 0}\frac{\Delta(t)}{t}=\sum_{i=1}^{2}p_i \frac{\partial f}{\partial x_i}
が示せた。証明終わり。
====微分(全微分) ====
定義1;微分可能(全微分可能ともいう)、導値(微分係数)、導関数
定理1;
微分可能ならば、偏微分可能
定理2
C^{1}$級の関数は微分可能