物理/物理学とは何か

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物理物理学とは何か

目次

解説

このテキストでは
主に高等学校の物理の内容を記述する。力学にかんしては大学教養課程で学ぶ内容も記述する。

物理学の本(Text books of physics)

高等学校用の物理の教科書

(注)上記2冊の本は、編集半ばであり重要でも記載のない項目が相当ある。そこで本テキストでは重要事項の多くは説明する。
なお、英文では次の本を参照のこと。

大学教養課程の教科書

中の「一般教養課目」群の教科書

物理学とは何か(What is physics)

私たちの住む世界は不思議に満ちています。
夜空の星座は季節とともに規則的に移動するが、何故だろう。昼と夜がどうしてあるのだろう。地球に季節があるのはなぜだろう。
空は何故青くみえるのか。美しい虹は何だろう。
物体はなぜ落下や運動をするのだろう。物質ごとに硬さ、色、電気を通すものと通さないもの、等があるが、何故だろう。どうしてこうも多様な物質があるのか、
こうした自然界の不思議の理由を解き明かそうとするのが、物理学です。
・物理学とは何かを知ろうと国語辞典を見てみると、
例えば、新辞林(三省堂)では
「物質の構造を探究し,微視的および巨視的な自然現象を支配する法則を,物質の構成要素間の相互作用として捉え探究する自然科学の最も基礎的な分野」
と説明している。
・これでは、抽象的すぎてよく分からないかもしれません。
ノーベル物理学賞をとった朝永 振一郎が書いた、「物理学とは何だろうか〈上〉 (岩波新書)」 では、物理学とは
「われわれをとりかこむ自然界に生起するもろもろの現象ーただし主に無生物にかんするものーの奥に存在する法則を、
観察事実に拠りどころを求めつつ追求する」
学問と説明している。 物理学とはどんな学問なのかのイメージが多少、もてると思う。
さらに知りたい方は次の記事もご覧ください。

この教材と問題を解いていくにつれ、物理学は何かについて理解が深まるでしょう。


物理学と工学 

物理学の特徴(Features of physics)

自然界の現象を量的にとらえる

下記のガリレオの項を参照のこと。

数学が大きな役割を果たす

自然という書物は、数学という言葉で書かれている(ガリレオ・ガリレイの言葉)。

(注)自然界の現象を量的にとらえると、その法則が数式を利用して正確・簡潔に記述できるため、冒頭のガリレオによる有名な言葉が残された。

理論の正否をきめるのは実験

どんなに理論が美しくても、実験結果と合わないものは否定される。

古典物理学の誕生の概観

天体の運動

天動説

私たちが太陽や夜空の星たちをみると、東の空から西の空へ動き、毎日一周するように見える。
そこで古代から17世紀ころまで人々は、地球が宇宙の中心にあり、その周りを太陽や星々が一日一回、回転すると考えた。 これを天動説という。
 星を観測している人々は、多くの星(恒星とよぶ)は、
同じ時刻に見える場所が、毎日規則的(約1度づつ西に)移動し、一年経つと、元の場所に戻ること、
これらの星の間の角度が変わらず、星座は同じ形を保ちながら、夜空を移動していくこと、
に気付いていた。
この知識を用いて暦が作られ、雨季や乾季を予測して農耕に役立てたり、社会生活に利用した。

ところが、少数の星は、不思議な運動をしていた。
これらの星は、通常は、恒星とは逆に東のほうに移動(順行という)して行くが、
その速さが変化するだけでなく、時々、ある期間、逆向きに進む(逆行する)のである。
人々は困惑し、これらの星に惑星(planet;語源はギリシア語のプラネテス(さまよう者、放浪者などの意))という名前を付けた。
こうした惑星の動きにより、地球上での出来事を予測しようと占星術が生まれた。
人々は、なぜ星たちはこのような運動をするのか知ろうとした。
そして、星たちはそれぞれ、地球を中心とする大きな球体(天空)のなかにありその中を動くと考えた。
恒星は、天空の最も外側の境界の球面上に固定されている。
この球面は一日に361度、東から西に、地球の周りを回転する。こう考えると、恒星は一日に一回回転し、しかも一日に1度づつ西の方に移動することを説明できる。
惑星の運動を説明することは、なかなか難しかった。
惑星たちは、恒星と同じように、それぞれ自分の天空の球面に固定され、この球面は一日に360度より少ない回転をするとしたいが、 これでは、一定の速さで惑星は順行だけすることになり、観察事実と合わない。
そこで、天球面に固定されるのは、惑星の軌道の中心であって、惑星はこれを中心とする円の上を回転するというモデルを考えた。 こうすれば順行の速さが変化し、時に、逆行することも、説明できる。
しかし、観測結果と合うように、惑星の天球の回転角度や、惑星の円運動を決めることは、大変困難であった。

2世紀にプトレマイオスは、恒星と惑星の動きを(当時の観測精度を考えれば)正確に説明・予測できるようにするため、天動説を体系的にまとめた。

 天動説のほころびと地動説 

プトレマイオスの天動説は長い間信じられてきた。
15世紀頃、商工業が発展し大航海時代になると、星図を利用して船の場所を正確に推定する必要性が高まり、プトレマイオスによる星やとりわけ惑星の位置の誤差が問題になってきた。
また、一年の長さの食い違いも問題であった。
これを正そうとしてコペルニクスは地動説(地球も星達も、太陽を中心にして円運動)を唱えた。

 

火星の不思議な運動;大きな逆行の謎

どちらの説によっても、惑星の運行、特に火星の運行の説明は困難で、謎であった。

ティコブラーエとケプラーの挑戦

天動説が正しいか地動説が正しいか、火星を始め惑星はなぜ複雑な運動をするのか?。
ティコ・ブラーエは正確な天体運動の観測こそが、これらを解明する鍵であると認識した。
自ら天文台をつくり、当時としては最高の精度の観測を約20年間、毎晩続けた。
所員としてむかえられたケプラーは、地動説を信じていた。
彼は、ティコ・ブラーエの観測データをもとに、太陽の周りの火星の運行の仕方を明らかにしようとした。
多くの失敗の末、
太陽の方向=地球から見て太陽は星座のどこに見えるか、と、太陽と火星の間の角度という観測データから
ユークリッド幾何学を利用して、火星の運行の軌跡を計算する、天才的方法を思いつき、謎を解いた。
この方法については、朝永 振一郎;物理学とは何だろうか〈上〉岩波新書 に優れた解説がある。
さらに他の惑星のデータも解析し、惑星の3つの運動法則を発見した。

 惑星運動に関するケプラーの法則 

この法則により惑星の位置は正確に予測できるようになった。
地動説が天動説より、現実をよく説明できることがあきらかにされ、同時に、
長い間信じられてきた、星たちは円運動をするという信仰が破られた。

 地動説の正しさ(1) 

地球より内側をまわる金星は、
夕方だけ西空に、三日月状に欠けて現れ、やがて沈んでいってしまうか、
明け方だけ東空に、上記の場合と逆の欠け方をして現れ、登りながら空が明るくなり見えなくなるか、
夕方と明け方の両方に、それぞれ、西空と東空に、満月状に現れるか、
全く見えないか
のいずれかである。
地動説に基づき、何故このような見え方をするのか、考えてみよう。
天動説で、このことを説明出来るだろうか。
とても難しく、なかなか出来ないでしょう。

地上の物体の運動

古代の運動の認識

日々の生活や労働の中で、物を動かさねばならないことが、絶えず起こります。
こうしたj経験を通して、
重いものは軽いものより動かすのに力がいるなど力と運動にかんする認識が芽生え、力や運動の性質の理解も進展していった。
人類は、梃子 の原理を今から約7000年前には、経験的に、発見していた。
紀元前5,000年頃のエジプトのピラミッド建設では梃子を使って重い石などを持ち上げていた。
また梃子の原理を利用して重さ(正確には、後で説明する質量 )をはかる天秤ばかりも、このころには使われていた。

ギリシャ時代にアルキメデスは、梃子を使用する経験の中で得られた簡単な法則をいくつか選び出し、それらの法則を用いて、 梃子の原理を論証するなど、
梃子や滑車にかれらかわる基本法則を導き、実際に応用した。てこの原理については次節で述べる。

アリストテレス(ギリシア・BC384~322頃)の運動論

人や動物が物体に力を加えると荷物は動く。力を加えるのをやめると止まる。
強い力を加えれば早く動く。
他方、物体は、力を加えなくても、落下や上昇運動を行う。重いものは落下し、その速さは落ちるにつれて早くなる。重いものほど早くおちる。
炎など軽いものは上に昇っていく。
アリストテレスはこのような多くの運動を注意深く観察し、運動について思索し、次のような運動論を唱えた。
①物の本性は静止である。物体は、力を受けなければ運動しない。運動している物体は何らかの力を受けている。
②運動には次の2つの種類がある。
  ⅰ)自然運動;外部からの力でなく、物体の内部にある力で生じる運動。
物質には本来の居場所が決まっており、そこに向かおうとする力が内在している。この内在力の源は、その物体の重さである。
例えば石の居場所は地球の中心。そこに向かおうとする内在力で落ち始める。人は、この時の内在力を重さとして、認識する。
あるべき場所が近くなるほど、この力が強くなり、石の落下は早くなっていく。
重いものほど、内在力が大きいので早く落ちる。
  ⅱ)強制運動;外部から加える力(強制力)で起こる運動。
重いものは弱い強制力では動かない。運動への抵抗力があるためで、これを超える力で動きだす。
強い強制力を加えるほど、早く動く。
運動への抵抗力の大きいほど、同じ力では、動き方が遅くなる。
強制力を加えるのをやめれば強制運動はなくなる。
  以上を要約するとアリストテレスは、
物体は、強制力$F$ が抵抗力 $r$を超える場合動き、その速さ$v$は、強制力$F$に比例し、抵抗力 $r$ に反比例するとした。
数式で書けば、$v \propto F/r$ 、変形すると $rv \propto F$ 

 ガリレオによる地上の物体の運動法則の発見と数学 

ガリレオは、アリストテレスの運動論に疑問をもった。

落体の運動法則

(1)物体の落下の速さは重さによらず一定である
・仮説「落下の速さは重さによらず一定」を推論で導く。
 重い物体ほど早く落ちると仮定すると、次のように推論して、矛盾が起こることを示した。
   重いものAと軽いものBを結びつけたABの落下速度$V_{AB}$は,どうなるか?
   ⅰ)$V_{AB}> V_A>V_B$  ∵ABはAより重たいから。
   ⅱ)$V_A> V_{AB}>V_B$ ∵BはAより遅く落ちるので、一緒に結んだ状態ではAの落下速度を遅くする作用をする。$V_A> V_{AB}$。
$\qquad$ $\quad$ AとBを結んで落とすと、早く落ちようとするAがBを下に引っ張るので、B単独の速度より早くなる。$ V_{AB}>V_B$
このⅰ)とⅱ)は矛盾する。
数学でよく利用する背理法によって、物体の落下の速さは重さによらず一定であるという仮説が導かれる。
・仮説の実験による検証
こうした結論を得たガリレオは、この正しさを次のような実験で確かめた。
速度を小さくして空気抵抗の影響を小さくするため、斜面上で重い球と軽い球を同時に落下させ、その速さが同じことを、確かめた。
斜面の角度をいろいろ変えても、両者の落下の速さは同じであった。
そこで斜面角度を90度(地面と直角。自由落下になる)にしても、落下の速さは同じであると、結論を下した。
(2)落下速度は落下時間に比例して増大する(等加速度運動) 
さらに、物体が落下するとき、その速さがどのように変化するかに関心を持った。
速度を数量で表しその変化の仕方を明らかにしようとした。
このことに関心をもったのはガリレオが初めてであり、画期的なことであった。

・論理思考で落下速度についての仮説を得る。
自然は単純であるという信念に基づき、まず落下速度は落下距離に比例するという仮説をたてた。
この仮説から、数学を使って、落下時間と落下距離の関係を導こうとしたが、いくら時間が経過しても落下しないという結果が得られ、この仮説をあきらめた。
次に落下速度は、時間に比例して増大するという仮説をたてた。
・実験による仮説の検証  
当時の技術水準では時間とともに変化する速度を計測することは出来づ、この仮説を直接実験で確かめることは出来なかった。
そこで、この仮説から、数学を使って落下距離は時間の2次関数で表せることを示した。
この式から、等時間間隔毎の落下距離を算出した。斜面上のこれらの位置に鈴をつけ、転がり落ちる球が、この位置を通過するとき鈴がなるようにした。水時計で時間をはかり、実際に等間隔で鈴がなることを確かめた。
斜面の角度を急にして、落下速度を早くしても、落下速度は、時間に比例して増大することを 実験で確かめ、仮説の正しさを立証した。

こうして、落体の運動法則が明らかにされた。
・なお、ガリレオは自由落下運動は、物体が地球から引力を受けた結果起きることは認識していたが、なぜ、引力を受けるか、その理由を探索することは、意味がないと考えていた。この理由が万有引力であることは、後のニュートンが発見した。 (3)意義  
①2000年近く信じられてきたアリストテレスの運動学の根本的変革の一歩
②近代の物理学の方法の開拓  
・運動を時々刻々の速度や位置で表し数量化する
・観測事実と数学を利用した推論により、時間、速度、落下距離という数量の間に成り立つと思われる関係についての仮説を立てる。
・この仮説を、実験で検証する
・実験で確かめられた仮説を、法則と呼び、数式を用いて、簡潔・正確に表現する。
③微積分学の端著を開く
この探求にさいして、時々刻々増加する速度を扱うことになり、瞬間速度の概念を考案した。
一様に増加する瞬間速度のグラフを書き、その面積が位置であることを示した。
これらは微積分学の端著を開くものであった。

慣性の法則 

ガリレオは、アリストテレスの唱えた強制運動論(力を加えなければ運動は止まる)にも疑問を持った。
彼は若い時から振り子の運動にも興味を持ち、実験と推論を組み合わせ、その性質の解明に取り組んだ。
そこで得た事実をもとに、推論をもとにして、この疑問の解決を図った。
そして、物体は力を加えなければ、同じ速さでまっすぐ運動し続けるという、仮説を得た。
この仮説を利用した多くの運動の解析結果が、実験結果と一致した。この仮説は法則として認められ、慣性の法則と呼ばれている。
この法則は、古代からの運動観を打ち破り、ニュートン力学を打ち立てる道を開いた、画期的なもの。

どのように推論したのか 

(1)振り子の運動からの考察から  
ガリレオを若い時から振り子の運動に興味をもった。
振り子の錘をある高さから放して、振り子運動を開始させると、
その錘は、腕の長さの円弧を描いて、速度を増しながら真下まで下方に動き、それを通り過ぎて、上方に速度を減らしながらのぼっていき、ある点で止まる。
そして今までの軌道を逆の方向に運動して、ほぼ元の位置まで来て止まるり、以後この運動を繰り返す。
錘が一回往復するのに要する時間を振り子の周期と呼ぶ。
ガリレオは振り子の腕の長さを色々かえて観察して、その周期は、長さの平方根に比例して変化(例えば、長さを4倍すると周期は2倍)することを発見。
もし長さを、どんどん大きくしていったら、振り子の錘はどんどん直線に近い軌道をゆっくりを動くようになり、
長さが無限大になれば、直線の軌道を周期無限大で動くだろう。これは振り子の錘は、永久に戻ってこないで、直線運動を続けることだ、と推測した。図1を参照のこと。

(2)摩擦のない平面のうえの、完全に球形の重くて堅い球の運動の考察(思考実験)から
ガリレオは、重い物体は地球の中心に向かって運動し、暴力(=物体に外部から加える強制力)によってのみ上方に運動する、
という古代から認識されている事実を前提として、
慣性法則が成り立つことを次のように説明した(ガリレオ著;天文対話より要約)。
ⅰ)摩擦のない平面を傾け、この球をこの斜面の上に乗せ、自由にする(=外から力を加えない)と、球は下方に傾いているほうに、その平面が続く限り、絶えず速さを増しながら動き続ける。
この球を、同じ斜面上にじっとさせておくには、この球に、外から力を加える(手で押さえるなどの)必要がある。
この球を、同じ斜面上を上のほうに動かすには、この球に上向きの外力を加える必要がある。 
上方に動かした球に力を加えるのをやめる(自由にする)と、減速して、だんだん遅くなっていく。

ⅱ)次にこの平面を水平にする。
球を乗せじっとさせた状態で、手を離す。 面は水平なので、どの方向にも下に傾いていないため、自由にしても動くことはない。球はじっと静止したまま。
 この球に衝撃を与えると、その方向にまっすぐに動き出す。
 しかし運動は、上方に向けたものでないので、減速はしない。
 また下方にむけた運動でないので加速もしない。
 従って、同じ速さで、この平面が続く限り、動き続ける。
こうして、動いているものは、外力が働かないかぎり、いつまでも、同じ速さで、まっすぐ動き続ける。
(注意)実は物体が、水平な、まっすぐな線上を動いていくと、地表からだんだん離れ、高くなっていく。地球からの引力に逆らって物体が運動するため減速していき、やがて止まって、次には、逆に戻りだす。ガリレオの考察にしたがえば、減速しない運動は地表に沿った円(正確には大円)運動ということになる。
デカルトが、現在知られている慣性法則に修正した。

投射体の運動

次にガリレオは、水平から角度θ(ラジアン)の方向に、速さ$v$で投げた物体の運動について考察した。
投げ上げられた瞬間から、物体は地球から引っ張られる力だけを受けるので真下にむけて落下運動を始める。
一方、慣性法則によれば、この物体は、投げだされた方向に速さ$v$で運動し続ける。
投射体の運動は、この2つの運動が一緒になったものである。
それでは、この2つの運動をどのように、合成したら、実際の投射体の運動になるのだろうか
ガリレオは、ここでも自然は単純であるとの考えから、この2つの運動は独立であり、落体の運動と慣性運動を足し合わせればよいとの 仮説を立てた。図2参照のこと。
この仮説に基づき、投射体の運動の軌跡を、数学を用いて計算すると、放物線が得られる。
実際に(空気の抵抗の影響を受けにくい)重く小さい球体を投げて、その軌跡を観察すると、計算した放物線と同じように見えた。
そこで、この仮説は正しいと結論した。

ガリレオの相対性原理と地動説の擁護  

ガリレオは天動説ではなく地動説を正しいと確信していた。
天動説を信奉する人たちは、
もし地球が動いていれば、マスト等から物体を落とせば、地面に落ちるまでにマストの根元は移動してしまので、
物体は、マストの根元のところに落ちないはずである。しかし現実は物体を落とせば、真下のマスト根元に落ちる。 地動説は誤りだと批判した。
ガリレオは、地動説への批判の是非を検討した。
その武器は慣性法則と投射体の運動の理論であった。
一定の速さでまっすぐ動いている船のマストの上から、物体をおとすと、この物体は慣性法則で、船の進行方向に船と同じ速さで運動しながら、落下運動していく。だから物体はマストの根元のところに落ちる。 これを陸上で船を横から観測すれば、物体は放物線の軌跡を描きながら、マストの根元のところに落ちていく。しかし船上の人が観察すれば、物体は真下におちるように見える。
すなわち、一定の速さで直線運動する船上では、落下運動は地上での落下運動とおなじである。図3参照のこと。
同様に慣性法則を利用すれば、船の上での投射体の運動も、地上の投射体の運動も、まったく区別がつかないことが分かる。
こうして、ガリレオは、力学の法則は、一定の速さでまっすぐ動いている観測系で観測するかぎり、同一であるという仮説(ガリレオの相対性原理)を得た。
地球は、物体が落下に要する短い時間の間で考えれば、一定の速さで直線的に運動しているので、
地球が静止しているときと同じように、物体は真下に落ちる。
彼は、このように主張して、地動説を擁護した。

ニュートン力学(古典力学)の誕生;天体と地上の物体の運動の統一 

・ニュートンは、地上の物体の運動も、惑星(天体の物体)の運動も、 同じ法則にしたがっていると考えた。
・先人の発見した運動の法則のなかから根本的なものを選びだし、
自ら発見した運動法則を付け加えて、運動の3法則に纏めた。
・さらにケプラーの法則と運動の3法則から物体間に働く万有引力の法則を得た。
・多くの地上の物体の運動と天体の運行を、これら4つの法則から厳密に導き、体系化して次の本に纏めた。

これら4法則については、次節で説明する。

 

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