物理/エネルギーと保存則
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エネルギーと保存則
質点や質点の集まりの運動を調べるときに有用な
各種の保存法則が、運動の法則から導かれる。
導出の仕方が理解できると、力学への理解が深まる。
エネルギー
物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。
この規定は抽象的で具体例を知らないと、良く分からないだろう。
その方たち向けに簡単に説明する。
人間が地表の石(質量m)を、非常にゆっくりと高さhまで持ち上げたとする。
この時、人間が石に行った仕事は、上向きの力(㎎+無限に小さい正の力)でhだけ動かしたのでmghとなる。
何故なら、上に移動させるため加えた小さい正の力は無限に小さく出来るので無視出来るから。
上に持ち上げられた物体は、支えをなくせば、引力㎎に引かれて落下運動する。
これを利用して、直接この石に仕事をさせることができる。
例えば、石に紐をつけ、延ばした紐の他端に動かしたい物体をつけて、石を自由にすれば、
石は物体を力㎎で引っ張りながら、地表まで落ちる。
この時物体はhだけ移動するので、石が物体に行う仕事はmghとなる。
このようにhの高さに持ち上げられた石は、仕事をする能力を持つ。
その量はmghで、最初人間が石に対して行った仕事に等しい。
位置に依存して有する能力なので、石は、位置エネルギーを持つという。
仕事量も表したい時には、「石の位置エネルギーはmgh」と表現する。
また、地表からhの高さに持ち上げられた石は、
支えをなくして自由にすると落下運動を行う。
運動物体は仕事をする能力を持つ。
何故なら、運動している物体は他の物体に接触すると力を与えて動かし、
仕事をするからである。
速度が速いほど、この能力は増す。
この場合の「仕事する能力」は、運動に基因するので、運動エネルギーという。
従って、位置エネルギーは直接に仕事をする能力だけでなく、
運動エネルギーという形態に変化する能力ももつ。
石は落下するに従って位置エネルギーをへらし、運動エネルギーは増していく(速度が速くなるため)。
こうして人間の行った仕事は、
石の位置エネルギーになり、
それは仕事をしたり、
運動エネルギーなど他のエネルギーに変換され、
その後仕事にも変換できる。
これ等の過程でエネルギーは保存されるのか、
工夫したら、最初に人間の行った仕事より多くの仕事が得られのではないか。
この節では、このようなエネルギーの問題を調べる。
- エネルギー(ウィキペディア)の自然科学の項を参照のこと。
運動エネルギー(kinetic energy)
運動している粒子は、それを止めようとする物体に力を与え、動かすことが出来る。
運動している粒子は,運動に起因する何らかのエネルギーを持っていると考えられる。
止まった段階ではこのエネルギーは零になるので、
運動している粒子の持つエネルギーの量は、止まるまでに使った仕事で計れる。
質量$m$の粒子が速度$\vec v$で運動しているとき、
止まるまでになす仕事を求めてみる。
速度方向をx軸とする座標$O-x$をとる。
力が作用しなければ、粒子はx軸の上をx正方向にむかって、速さ$v:=\|\vec v\|$で等速直線運動を続ける。
この粒子が原点を通過する瞬間(t=0)から、x軸方向の力$ F=-f、f>0$(負の向き)を、止まるまで与え続ける。この間、粒子は、作用反作用の法則により、$ F=f、f>0$の力で、止めようとする物体を押し返しながら、止まるまで仕事をし続ける。
止まるまでの距離を求めるため、運動法則を用いる。
この粒子の運動方程式は
$m\frac{d^2}{dt^2}x(t)=-f \qquad (1) $,
ここで、$x(0)=0,v(0)=v$(初期条件)$\qquad (2)$
(1)式の両辺を$m$で割り、$v(t):=\frac{d}{dt}x(t)$を代入すると、
$\frac{d}{dt}v(t)=-\frac{f}{m}$
この方程式を満たし、初期条件(2)を満たす関数$v$は、
$v(t)=-\frac{f}{m}t+v \qquad \qquad (3)$
この式から、粒子が停止する時刻は
$t_1=\frac{mv}{f}$
このときの粒子の位置は、
$\frac{d}{dt}x(t)=-\frac{f}{m}t+v \qquad (4) $
を解いて、停止時刻でのxを求めればよい。
初期条件式(2)を満たす(4)式の解は
$x(t)=-\frac{f}{2m}t^2+vt \qquad (4) $
故に、止まる位置は
$x(t_1)=-\frac{f}{2m}{t_1}^2+vt_1=\frac{mv^2}{2f}$
粒子が止まるまで,なした仕事は、
$W=f \frac{mv^2}{2f}= \frac{mv^2}{2}$
以上の考察より、粒子の運動エネルギーを次のように決める。
定義;
質量$m$、速度$\vec v$の質点の運動エネルギーを、
$\frac{mv^2}{2}$
で定める。
- ウィキペディア(運動エネルギー)
- ウィキペディア(Kinetic_energy) in English
仕事エネルギー定理(Work-energy theorem)
空間には適当に原点Oを定めておく。
必要ならば直交座標$O-x_{1}x_{2}x_{3}$をいれる。
仕事エネルギー定理
質量$m$の質点が力 $\vec F(t)$を受けて運動している(注参照のこと)。
力は時間に関して連続であるか、区分的に連続(不連続点が有限個しかない)と仮定する。
時刻$t$ の質点の位置を$\vec{x}(t)$で表し、
$\vec{v}(t)=\frac{d\vec{x}}{dt}(t)$とおく。
すると
ⅰ)時刻$t_1$から $t_2$までに力の行う仕事は
$W=\int_{t_1}^{t_2}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt
=\int_{t_1}^{t_2}(\vec{F}(t)\cdot \frac{d\vec{x}(t)}{dt}dt
$
ここで$(\vec{F}\cdot \vec{v})(t):=\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)$
ⅱ)$W=\frac{1}{2}m\|v(t_2)\|^2 - \frac{1}{2}m\|v(t_1)\|^2 $
すなわち力がなした仕事は、運動エネルギーの変化量に等しい。
(注)万有引力や電磁気力は、場所によって変化するので、
位置ベクトル$\vec x$にいる質点の受ける力は$\vec{G}(\vec x)$である。
すると、時刻$t$に質点の受ける力は時間の関数$\vec{F}(t):=\vec{G}(\vec{x}(t))$となる。
人為的に時間により力を変えて物体の運動を制御することもある。
この場合にも適用できるような記述にした。
ⅰ)の証明;
2つの異なる方法で証明する。
第一の方法は、時刻tまでに力の行う仕事を$W(t)$と書き、
この実数値関数が微分可能で
$\frac{dW}{dt}(t)=(\vec{F}\cdot \vec{v})(t):=\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)$
であることを導く。
次に実数値関数
$(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)$
が積分可能であることを示す。
すると、
$\int_{t_1}^{t_2}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt$の被積分関数$(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)$の原始関数が$W(t)$になる。
「2.6 剛体の回転運動と釣合い」の「1.8.6 慣性モーメントの計算(2)原始関数を利用する方法」で証明した定理より、
$\int_{t_1}^{t_2}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt=[W(t)]_{t_1}^{t_2}=W(t_2)-W(t_1)=W$
を得る。
(注)物理学では、数学的厳密性にとらわれず、
直観を利用した記号法を用いた計算をすることが多い。
無限小という架空の概念(0だが、完全な0ではない)を操つり計算を進める記号法である。参考までに紹介する。
$dt$を無限小と考えると、
$\frac{dW(t)}{dt}=\frac{W(t+dt)-W(t)}{dt}$
ここで$dt$は無限小なので、右辺の極限を取らなくても成立すると考えている。
両辺に$dt$を掛ける(この時は無限に小さいが0でないと考える)と、
$dW(t)=W(t+dt)-W(t)$
$dt$が無限小なので、その時間内の
その時間内の質点の軌跡は線分で、連続な力は$\vec{F}(t)$になるため、
この式の右辺は
$=\vec{F}(t)\cdot (\vec{x}(t+dt)-\vec{x}(t)$
ここで$dt$が無限小で、$\vec{x}(t+dt)-\vec{x}(t)=\vec{v}(t)dt$が成立するので、
$=\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)dt$
故に
$dW(t)=\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)dt$
が得られる。
時刻$t$を$t_1$から$t_2$まで寄せ集める(積分する)と
$W(t_2)-W(t_1)=\int_{t=t_1}^{t_2}dW(t)=\int_{t=t_1}^{t_2}\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)dt$
第二の方法は、
曲線にそった仕事の定義(「2.3 質点の運動」の仕事の項の説明)にしたがって、
質点の軌跡を細かく分割し、各小部分で力の行う仕事を求め、加え合わせて、
命題を証明する方法である。
第一の方法による証明:
力$\vec{F}(t)$は連続関数と仮定して良い。
なぜなら、有限個の点で不連続の場合は、
連続となる小区間ごとに考えればよいから。
独立変数$t\in [t_1,t_2]$に対して、
$W(t)=$時刻$t_1$から時刻$t$までの間に力の行った仕事
で、$[t_1,t_2]$上の関数$W$を定義する。この定義より、W(t_1)=0である。
時刻$t\in (t_1,t_2)$における、関数の微係数を求めよう。
$\frac{dW}{dt}(t)
=\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0}\frac{W(t+\delta)-W(t)}{\delta}
=\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)$
であることを以下に示す。
$\delta$が極めて微小な正数と考える(負数の場合も同様に証明出来る)。
力が$[t,t+\delta]$の間に行う仕事
$W(t+\delta)-W(t)$の考察から始める。
この間、質点は$\vec x=\vec{x}(t)$に従って、
$\vec{x}(t)$から$\vec{x}(t+\delta)$まで移動する。
$\delta$がきわめて微小なので、
この軌跡は、ベクトル$\vec{x}(t+\delta)-\vec{x}(t)$
(の始点を、位置ベクトル$\vec{x}(t)$の終点にしたもの)とみなせる。
力は時間に関して連続なので、この微小時間中は$\vec{F}(t)$とみなした良い。
(みなすという処理は厳密さに欠けるが直観的理解を優先した)。
すると、$[t,t+\delta]$の間に力の行う仕事は、
$W(t+\delta)-W(t)=\vec{F}(t)\cdot \left(\vec{x}(t+\delta)-\vec{x}(t)\right)$
となる。図参照のこと。
ゆえに、
$\frac{dW}{dt}(t)
=\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0}\frac{W(t+\delta)-W(t)}{\delta}$
$=\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0}\frac{\vec{F}(t)\cdot
\left(\vec{x}(t+\delta)-\vec{x}(t)\right)}{\delta}$
$=\lim_{\delta \to 0,\delta \neq 0}
\vec{F}(t)\cdot\frac{\left(\vec{x}(t+\delta)-\vec{x}(t)\right)}{\delta}$
$=\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)\qquad \qquad (1)$
式(1)は$[t_1,t_2]$上の連続関数関数なので
積分可能である(8章物理数学の8.3積分参照)。
そこでこの区間上で積分すると
$\int_{t_1}^{t_2}\frac{dW}{dt}(t)dt=\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)dt$
上式の左辺の被積分関数の原始関数は$W(t)$なので、
$\int_{t_1}^{t_2}\frac{dW}{dt}(t)dt=[W(t)]_{t_1}^{t_2}=W(t_2)-W(t_1)=W$
ゆえに、
$W=\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)\cdot \vec{v}(t)dt$
第二の方法による証明
時刻$t_1$から$t_2$までの質点の運動の軌跡は、向きのついた曲線
$\vec{C}:=\{\vec{x}(t) \mid t_1\leq t \leq t_2\}$
で表わせる。向きは時刻が進むときに進む方向にいれる。
時刻$t_1$から$t_2$までを、n個の小区間
$[s^{n}_{i-1},s^{n}_i](i=1,2,,,n)$に分割する。ここで$(s^{n}_0=t_{1}<s^{n}_{1}<s^{n}_{2},,,,<s^{n}_{n}=t_2)$
この分割を$\Delta^{n}:=\{[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]\mid i=1,2,3,,,n\}$と書く。
n個の小区間の長さの最大値を$|\Delta^{n}|$と記す。$|\Delta^{n}|:=\max_{i}(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})$
これに対応して軌跡$C$は、
n個の小部分$\vec{C^{n}_i}=\{\vec{x}(t) \mid t \in [s^{n}_{i-1},s^{n}_i] \},(i=1,2,,,n)$に分割される。
$\vec{C^{n}_i}$の端点を$P^{n}_{i-1},P^{n}_i$とおくと、
$\vec{x}(s^{n}_{i-1})=\vec{OP^{n}_{i-1}}$ 、
$\vec{x}(s^{n}_i)=\vec{OP^{n}_i}$である 。
時間の分割数nを増やし、$\lim_{n\to \infty}|\Delta^{n}|=0$となるように分割する。
するとnが十分大きい時、
各時間分割$[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]$の間に質点はほぼ等速直線運動するので、
対応する軌跡Cの小部分$C^{n}_i$は、有向線分$\vec{P^{n}_{i-1}P^{n}_i}=\vec{x}(s^{n}_i)- \vec{x}(s^{n}_{i-1}) $で近似できる。
力も時刻が$[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]$の間、ほぼ一定である。
(注)この後の証明は少し難しい。
そこで、正確さに欠けるが直観的に、命題が成り立つ理由を書いてみる。
各時間分割$[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]$の間に力が行う仕事$W^{n}_i$は
$W^{n}_i=\vec{F}(s^{n}_{i-1})\cdot \left(\vec{x}(s^{n}_i)- \vec{x}(s^{n}_{i-1})\right)$
にほぼ等しい。
ここで、$s^{n}_i- s^{n}_{i-1}$が小さいので、微分の定義から
$\frac{\vec{x}(s^{n}_i)- \vec{x}(s^{n}_{i-1})}{s^{n}_i)- s^{n}_{i-1}}
\approx \frac{d\vec{x}}{dt} (s^{n}_{i-1})=\vec{v}(s^{n}_{i-1})$
そこで、
$\vec{x}(s^{n}_i)- \vec{x}(s^{n}_{i-1})$
$\approx
\vec{v}(s^{n}_{i-1})(s^{n}_i)- s^{n}_{i-1})$
故に、
$W^{n}_i \approx \vec{F}(s^{n}_{i-1})\cdot\vec{v}(s^{n}_{i-1})(s^{n}_i)- s^{n}_{i-1})$
$=(\vec{F}\cdot\vec{v})((s^{n}_{i-1}) (s^{n}_i)- s^{n}_{i-1})$
力が時間$[t_1,t_2]$の間に行う仕事$W^n$は、
$W^n=\sum_{i=1}^{n}W^{n}_i $
$\approx
\sum_{i=1}^{n}(\vec{F}\cdot\vec{v})((s^{n}_{i-1}) (s^{n}_i)- s^{n}_{i-1})$
この式は、nが大きくなるほど、等式に近くなる。
最後の項$\sum_{i=1}^{n}(\vec{F}\cdot\vec{v})((s^{n}_{i-1}) (s^{n}_i)- s^{n}_{i-1})$は、
$[t_1,t_2]$上で定義された区分的に連続な実数値関数
$f(t):=(\vec{F}\cdot\vec{v})(t)=\vec{F}(t)\cdot\vec{v}(t)$
の、時間分割$\Delta^{n}:=\{[s^{n}_{i-1},s^{n}_i]\mid i=1,2,3,,,n\}$に対応する
リーマン和である。
そこで、nを無限に大きくしていくと、最後の式は
$W:=\lim_{n\to \infty}W^n=\int_{t_1}^{t_2}f(t)dt
=\int_{t_1}^{t_2}(\vec{F}\cdot\vec{v})(t)$
$=\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)\cdot\vec{v}(t)dt$
に収束する(8章の8.3 積分に証明あり)。
正確な証明に戻る;
任意の時刻${\xi}_i\in [s^{n}_{i-1},s^{n}_i]$を代表点として選び、
この区間上の力を$\vec{F}({\xi}_i)$で近似する。
この近似を用いると、仕事の定義から、力が$C_i$で行う仕事は
$W_i(\Delta^n,{\xi}_i)= \vec F({\xi}_i)\cdot \vec{P_{i-1}P_i}
=\vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s^{n}_i)-\vec{x}(s^{n}_{i-1})$
故に、時間をn分割したときの仕事Wの近似値は、
$W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\sum_{i=1}^{n} W_i(\Delta^n,{\xi}_i)$
$=\sum_{i=1}^{n} \vec F({\xi}_i)\cdot(\vec{x}(s^{n}_i)-\vec{x}(s^{n}_{i-1})\qquad (1)$
ここで、
$\vec{x}(s^{n}_i)-\vec{x}(s^{n}_{i-1})
=\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\frac{d\vec{x}(t)}{dt}dt
=\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\vec{v}(t)dt$
$=\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}
\left(\vec{v}({\xi}_i)+(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt$
$=\vec{v}({\xi}_i)(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})
+\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)$
この式を(1)式に代入すると、
$W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})$
$=\sum_{i=1}^{n} (\vec{F}\cdot \vec{v})({\xi}_i)(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})
+\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \qquad (2)$
(2)式の右辺の第一項は、実数値関数
$(\vec{F}\cdot \vec{v})(t):=\vec{F}(t)\cdot\vec{v}(t)$
の、n等分割と代表点$\{\xi_i\}_{i=1}^{n}$に対応するリーマン和
$I^{\vec{F}\cdot \vec{v} ,\Delta^n}(\xi_1,,,\xi_n)$である。
この関数は区分的に連続なので、
リーマン積分の定理(物理数学のリーマン積分参照)から、積分可能で
$W=\lim_{n\to \infty}W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\lim_{n\to \infty}\sum_{i=1}^{n} (\vec{F}\cdot \vec{v})({\xi}_i)(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})
=\int_{t_1}^{t_2}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt$
である。
補題;(2)式右辺の第2項は、nを無限にしていくと、0に収束する。
記号で書くと、
$\lim_{n\to \infty}\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt=0$
この補題を用いると、
$W=\lim_{n\to\infty}W(\Delta^n,\{{\xi}_i\}_{i=1}^{n})=\int_{[t_1,t_2]}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt$
これで定理のⅰ)の証明はできた。
定理のⅱ)の証明
運動の第2法則から、$\vec{F}(t)=m\frac{d\vec v(t)}{dt}$なので、
$W=\int_{[t_1,t_2]}(\vec{F}\cdot \vec{v})(t)dt
=\int_{[t_1,t_2]}(m\frac{d\vec v}{dt} \cdot \vec{v})(t)dt$
ここで、
$\frac{d(\vec{v} \cdot \vec{v})}{dt}(t)=2(\frac{d\vec v}{dt} \cdot \vec{v})(t)$(「8章の8.3 積分」のベクトル値関数の微分参照のこと)なので
$=\frac{m}{2}\int_{[t_1,t_2]}\frac{d(\vec{v} \cdot \vec{v})}{dt}(t)dt$
ここで、被積分関数$\frac{d(\vec{v} \cdot \vec{v})}{dt}(t)$の
原始関数は$\vec{v} \cdot \vec{v}$なので、
$=\frac{m}{2}[(\vec{v} \cdot \vec{v})(t)]_{t_1}^{t_2}$
$=\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_2)\|^2-\frac{m}{2}\|\vec{v}(t_1)\|^2$
ⅱ)の証明終わり。
補題の証明;
$\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|$
$\leq \sum_{i=1}^{n}\| \vec{F}({\xi}_i)\cdot \int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \|$
$\leq \sum_{i=1}^{n}\| \vec{F}({\xi}_i)\|\|\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|$
$M:=max_{t\in [t_1,t_2]}\|\vec{F}(t)\|$とおくと、
$\leq M\sum_{i=1}^{n}\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\|\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|\qquad (3)$
$\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)=\int_{{\xi}_i}^{t}\frac{d\vec{v}(s)}{ds}ds$
$=\int_{{\xi}_i}^{t}\frac{\vec{F}(s)}{m}ds$
なので、
$\|\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\|
\leq \int_{{\xi}_i}^{t}\|\frac{\vec{F}(s)}{m}\|ds
\leq
\frac{M}{m}(s^{n}_i-s^{n}_{i-1}) \qquad \qquad (4)$
(4)式を(3)式に代入すると
$\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt \|
\leq \frac{M^2}{m}\sum_{i=1}^{n}(s^{n}_i-s^{n}_{i-1})^2$
ここで、$s^{n}_i-s^{n}_{i-1}\leq |\Delta^n|,(i=1,2,,,n)$なので、
$\leq
\frac{M^{2}(t_2-t_1)}{m}|\Delta^n|$
故に、
$\lim_{n\to\infty}\|\sum_{i=1}^{n} \vec{F}({\xi}_i)\cdot
\int_{s^{n}_{i-1}}^{s^{n}_i}\left(\vec{v}(t)-\vec{v}({\xi}_i)\right)dt\|
\leq
\frac{M^{2}(t_2-t_1)}{m}\lim_{n\to\infty}|\Delta^n|
=0$
補題の証明終わり。
保存則の応用
衝突の問題
2質点の衝突
力学に必要な物理量(時間、距離、速度、加速度、質量、力)の単位と単位変換
- ウィキペディア(物理単位)
- wikibooks(High_School_Physics/Si_units) ,in English