物理/物質の構造と性質

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目次

「 6.1 物質の構造と性質 」

 物質は何からできているのだろうか

この世界はいろいろなもの(物質)に溢れているが、これらは一体何からできているだろうか。
  太古の昔から、こうしたことを考える人々がいた。
 

 ギリシャ時代

ギリシャ時代の哲学者たちも、このことを考えていろいろな説を唱えた。
  例えば、

アリストテレスの4元論

アリストテレスは、
  この世界のすべての物質は、4つの物質(火、空気、水、土)からできている
  と考えた。
 

デモクリトスの原子論

デモクリトスは、
  物質は、どんどん小さくしていったら、原子に至る、
  原子は、新たにできたり、消滅したりせず、分割もできない、
無数の原子の結合や分離によって、いろいろな物質はできている、
と考えた。
現代の物質観に通じる考えであったが、
アリストテレスの権威が大きく、近代までアリストテレスの4元論が支配的であった。

 近代の物質観

ルネッサンスを経て産業革命が起き、近代科学が発展する時期になると、
古来からの占星術から近代的な力学が誕生したが、
錬金術からは、
さまざまな物質の構造・性質および物質相互の反応(化学反応)を研究する化学が誕生した。

 近代的な原子論の誕生

化学の分野でも、定量的な研究が進み、
気体反応の法則、倍数比例の法則などの発見が続いた。
これらのな法則は、これから説明するように
物質が原子からできていると仮定すると明快に説明することができる。
こうして化学の分野の研究者の中に原子論がひろがっていった。

 倍数比例の法則
 気体反応の法則
 ドルトンの原子説

ドルトンは、こうした法則がなぜ成立するか考察して原子説を提唱した。

 アボガドロの法則 

困ったことに原子の考えに基づくと、
一個の原子が2等分されねばならないという矛盾が生じてしまうことが起こる。
例えば、水素2リットルと酸素1リットルを反応させると2リットルの水蒸気になる。
すると、水素原子2個と酸素原子一個から、2個の水という化合物ができることになる。
一個の水には酸素原子の半分が含まれるという結論になり、
これ以上(化学的に)分割できないという原子の概念に矛盾してしまう。
アボガドロは、この矛盾を解決するため
・原子は分子を形成する
・等温、等圧、等体積の気体は、種類によらず同数の分子を含む
という仮説をたてた。
水素ガスと酸素ガスの反応の例では、
水素原子が2個結合してできた水素分子 $H_2$が2個と、
酸素原子が2個結合してできた酸素分子 $O_2$ 一個が反応して,
2個の水分子ができると、合理的に説明できる。
$2H_2 + O_2 \Rightarrow 2H_{2}O$

 原子論の決着 

原子論はひろがっていったものの反対者も多かった。
この論争に終止符をうったのが、ブラウン運動の発見と、
この運動を理論的に証明したアインシュタインによる論文であった。

 現代の原子論・物質観

 原子の構造

 原子

現代の原子論・物質観に記述されているように、
原子は分割不能は粒子ではなく、
正の電気をもった陽子と電気的に中性の中性子が結合した原子核と
負の電気をもった電子が電気力(クーロン力)で引き合い
一つの粒子となったものである。

= 元素

元素とは、化学的反応によってそれ以上簡単な成分に分解できない物質である。
正確には化学元素という。
現在118種の元素が見つかっている。
物質はいくつかの元素の組合せから出来ている。
一つの元素は、その元素に対応する原子番号(原子のもつ陽子の数)の原子が結合したもの。
但し原子番号が同じでも中性子数が異なる同位元素も少量含まれることがある。
元素の違いは、それを作っている原子が異なることに起因する。

 ラザフォードの惑星型原子モデル

原子核と電子は、どのように原子を構成しているのだろうか。
  歴史的にはラザフォードの原子モデルが知られている。
ラザフォードは、
  太陽が原子核で、
  その周りをまわる惑星が電子で
惑星の軌道が電子軌道にあたる
という原子モデルを提唱した。

 ラザフォードの惑星型原子モデルのもつ問題点

① 古典電磁気学によれば、
原子核の周りを公転する電子(負電荷)は絶えず電磁波を発生してエネルギーを失い、
軌道半径は小さくなって原子核に衝突してしまう。
② 次節で説明する光電効果を説明できない

電子殻と価電子

原子内の電子軌道を回る電子には
  化学結合や物性に深く関わるものと、ほとんど関係しないものがある。
化学結合や物性に関わる電子は価電子と呼ばれ、
通常、原子内の最外殻を回っている。

原子・分子の構造と物質の性質

 物質をつくる力

・正の電荷をもつ原子核と負の電荷をもつ電子の間に働く電気力(クーロン力)と、
陽子や中性子の間に働く核力
の二つが原子を作り
原子核と電子の間に働くクーロン力が分子をつくり、
さらには分子間力を生み出し、物質を構成する。

 核力

 分子を作る力

 分子間力

 物性

物性とは、物質の示す物理的性質のこと。
機械的性質(力学的性質)、熱的性質、電気的性質、磁気的性質、光学的性質がある。
詳しくは

物質の物性はその原子・分子の構造や運動から決まる。
正確には量子論が必要になるが、(注を参照のこと)
その知識を背景にした古典物理学による説明でも近似的に説明できることもある。
また、化学では、古典物理学よりも、これらの研究が進んでいた。
以下の、教科書も参考に。

(注)原子の構造や運動、
原子がなぜ結合して分子になるのか、
分子が結合して物質を形成する力はなぜ生じるか、
化学反応はなぜ生じるのか。
物質の物性は、どうして決まるのか
古典物理学では理解できないことが多い。
何故ならば、これ等に関与する原子や電子などの極小の物質の振る舞い(運動)の知識が必要になるが、
こうした微小粒子の振る舞いは古典力学や古典電磁気学から結論される結果と大きく異なることが多いからである。
20世紀になって、こうした微粒子の運動が研究され、量子力学が生まれ発展した。
正確に化学反応を知ろうと思えば、量子力学が不可欠である。
この理論は大学の専門課程で学ぶ。

物質の3態

物質は気体、液体、固体という3つの状態をとる。
$H_{2}O$ の場合、水蒸気、水、氷である。
何故、こうしたことが起こるのだろうか?
分子の熱運動が小さい低温の場合には、
分子間力が勝って物体は小さく固く結合して固体になり、
分子の熱運動が大きい高温では分子間力を完全に打ち破り
個々の分子が勝手に熱運動で動き回るため気体になる。
この中間では、両者が釣り合い、原子・分子間の距離はあまりひろがらないが、その相対的な位置関係は熱運動で自由に変わるため液体になる。詳しくは

 固体の電気的性質 

固体の電気的性質を原子・分子の構造から理解しよう。他の性質については物性論という大学の専門課程の科目であつかう。本テキストでは触れない。

 固体と結晶 

個体とは、力を加えても変形しにくく、ほぼ一定の形、体積を保つ物質。
固体を構成する原子、分子が、規則的にならんでいる物質は結晶とよばれ、
そうでない固体は、非晶質とよばれる。
結晶中の原子の並びの間隔はおよそ,$10^{-10}$~$10^{-11} m $程度である。

 導体、半導体、不導体(絶縁体) 

 金属

金属は電気を良く通す。金属結合という結合にその原因がある。

 半導体の電気的性質とバンド構造 

高等学校物理/物理II/バンドギャップ(ウィキブックス)

半導体とその応用 

「高等学校物理/物理II/電気と磁気中」の「半導体」(ウィキブックス)

 ダイオードとトランジスタ 

ダイオードについては、

トランジスタについては、

そのうえで、

 発光ダイオード =

 シリコン光電池(太陽電池) 

太陽電池(Solar cell)は、光起電力効果を利用し、
光エネルギーを電力に変換する電力機器である。

 半導体レーザー 

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