物理/質点の運動と質点系

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物理力学質点の運動と質点系

運動の3法則、万有引力の法則と力の法則を用いると、分子から銀河まであらゆる物体の運動を求めることが出来きる。

その正しさは地上の物体や人工衛星、惑星の運動などで確かめられている。
しかし、もっとはるかかなたの宇宙でもこれ等の法則は正しいのだろうか。
天体観測は、世界各地で行われ、年々新しい発見がされているが、現在のところ、この理論が間違っていることを示す観測結果は、得られていない。
そこで、これらの法則は宇宙の全体を支配しているものと、現在は信じられている。

運動の3法則からはエネルギー保存則や運動量保存則などの重要な保存則を導く事が出来る。
これらの保存則は、色々な運動を調べるとき、大変役立つ。これらについては次節で学ぶ。

目次

質点の色々な運動

最初に最も簡単な運動から考える。
それは質点とみなせる物体の運動である。

質点の落体運動

地球上の物体は高いところから落とすと、時間とともに速度を増しながら落下する。
質点とみなせる物体の落下運動を、運動法則と力の法則を用いて、解析しよう。
質点の質量をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-403-QINUとすると、そこに作用する重力による力は、
真下(厳密には地球の重心;後で学ぶ)の方向・向きで、大きさはUNIQ2e9770c128376269-MathJax-404-QINUである。
真上向きの一次元座標を考えると、重力加速度はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-405-QINUで、質点UNIQ2e9770c128376269-MathJax-406-QINUに作用する力はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-407-QINUである。
落下の加速度をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-408-QINUと置くと、運動の第2法則よりUNIQ2e9770c128376269-MathJax-409-QINU.
ゆえに質点の落下加速度UNIQ2e9770c128376269-MathJax-410-QINUは負の重力加速度UNIQ2e9770c128376269-MathJax-411-QINUに等しい。
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-412-QINUで微分してUNIQ2e9770c128376269-MathJax-413-QINUとなる関数はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-414-QINUなので、質点の速度はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-415-QINUである。
ここでcは定数で、初期時刻0における質点の速度であり、初期速度と呼ばれる。
微分してUNIQ2e9770c128376269-MathJax-416-QINUとなる関数を求めれば質点の位置UNIQ2e9770c128376269-MathJax-417-QINUが得られる。
ここで、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-418-QINUは定数で初期時刻0での質点の位置(高さ)である。
これはガリレオが明らかにした落体法則である。
参考文献;

投射体の運動

質点を地面に対して角度UNIQ2e9770c128376269-MathJax-419-QINU(ラジアン)、速さUNIQ2e9770c128376269-MathJax-420-QINUで投げたときの、質点はどのような運動を行うだろうか。
ガリレオは、慣性法則と落体の法則を組み合わせて利用して、放物線を描いて飛ぶことを発見した。
ニュートン力学を用いれば、運動の第2法則と質点に働く力(重力)から、以下のように、この運動を導ける。

適切な座標系をいれる

質点が投げ出された場所を原点とし、飛んでいく方向に地面と水平に引いた半直線をx軸の正の側に、地面と直角で上方に向かう半直線をy軸の正の側とする座標を定める。図参照。

ファイル:GENPHY00010203-01.jpg
図 投射体の座標
 

質点に作用する力を求める

空気抵抗を無視すれば、質点に作用する力は、地球からの重力だけである。この力は、質点の質量をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-421-QINU,重力加速度をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-422-QINUとすると、質点の位置に関係なく常に、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-423-QINUである。

運動の第2法則から質点の運動方程式をつくる

質点の位置ベクトルをUNIQ2e9770c128376269-MathJax-424-QINUで表すと
運動方程式は、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-425-QINUである。
座標成分表示すると
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-426-QINU,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-427-QINU UNIQ2e9770c128376269-MathJax-428-QINU
これらの式の両辺を、mで割ると
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-429-QINU,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-430-QINU UNIQ2e9770c128376269-MathJax-431-QINU

運動の初期状態の指定

投げ上げた瞬間を時刻UNIQ2e9770c128376269-MathJax-432-QINUとおくと、
  質点の初期位置はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-433-QINU,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-434-QINU
  初期速度はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-435-QINU

運動方程式を初期状態を使って解く

(1)x成分の式を解く
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-436-QINUは、x成分の速度の定義UNIQ2e9770c128376269-MathJax-437-QINUから
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-438-QINUと書ける。
上の式を解こう。
tで微分して零となる関数は定数なのでUNIQ2e9770c128376269-MathJax-439-QINUと書くと、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-440-QINU
ここで、速度の初期条件からUNIQ2e9770c128376269-MathJax-441-QINUなので
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-442-QINU
次に(1)式を解こう。
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-443-QINUで微分してUNIQ2e9770c128376269-MathJax-444-QINUとなるのはUNIQ2e9770c128376269-MathJax-445-QINU(bは未知定数)なので、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-446-QINU
ここで、ⅹの初期条件から、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-447-QINU なのでUNIQ2e9770c128376269-MathJax-448-QINU
故に、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-449-QINU
(2)式から、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-450-QINUが得られる。

(2)y成分の式を解く   
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-451-QINUは、y成分の速度を用いて表現するとUNIQ2e9770c128376269-MathJax-452-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-453-QINU tで微分してUNIQ2e9770c128376269-MathJax-454-QINUとなる関数はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-455-QINU(cは未知定数)なので、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-456-QINU
速度の定義から(3)式は、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-457-QINU
tで微分してUNIQ2e9770c128376269-MathJax-458-QINUとなる関数は、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-459-QINUなので、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-460-QINU   
次に位置と速度の初期条件から係数UNIQ2e9770c128376269-MathJax-461-QINUを決めよう。
(3)式を用いると、初期速度の条件UNIQ2e9770c128376269-MathJax-462-QINUから、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-463-QINU 故にUNIQ2e9770c128376269-MathJax-464-QINU
(4)式のt=0を代入すると yの初期値UNIQ2e9770c128376269-MathJax-465-QINUから、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-466-QINU故にUNIQ2e9770c128376269-MathJax-467-QINU
(4)式に(5),(6)式を代入して、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-468-QINU

(3)運動の軌跡(xとyとの関係式)を求める   
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-469-QINUの式からUNIQ2e9770c128376269-MathJax-470-QINU
これをUNIQ2e9770c128376269-MathJax-471-QINUに代入すると
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-472-QINU
故に、運動の軌跡
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-473-QINU
は、次の方程式
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-474-QINU
のグラフであることが分かった(注参照)。
xの2乗の係数が負なので、上に凸な放物線である。
参考文献は

(注)質点は、このグラフ上を時間tの進行とともに、x方向に速さaで運動する。

惑星運動

前述のようにケプラーは、火星と太陽の観測データをユークリッド幾何学を巧みに利用して分析し次の惑星運動の3法則を発見した。
(1) 第1法則(楕円軌道の法則)
惑星は、太陽を焦点のひとつとする楕円軌道上を動く。
(2) 第2法則(面積速度一定の法則)
惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く面積(面積速度)は、一定である。
(3) (調和の法則)
惑星の公転周期の2乗は、軌道長半径の3乗に比例する。

惑星運動の3法則を運動の第2法則と万有引力の法則から導く

この3法則は、運動の第2法則と万有引力の法則から導くことが出来るが少し難しい数学が必要である。大学で学ぶ。
惑星の軌道を太陽を中心とする円運動に限定すると、高校の数学の知識で3法則を導ける。
この場合ケプラーの第一法則は、仮定から、明白なので、第二法則から始める。

ケプラーの第2法則の導出 
図 惑星の位置座標


第二法則は、太陽と惑星を結ぶ動径の単位時間に掃く面積が一定であることを主張する。
円運動のばあい、これは等速円運動であることと同じである。
そこで等速円運動であることを導こう。
太陽と惑星は質点として扱い、質量をそれぞれUNIQ2e9770c128376269-MathJax-475-QINUとする。

惑星の軌道面をxy平面にし、太陽をその原点にとる。円運動の半径をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-476-QINU, 太陽と時刻UNIQ2e9770c128376269-MathJax-477-QINUにおける惑星を結ぶ線分が、x軸となす角度をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-478-QINUとおく。


惑星Pの位置;UNIQ2e9770c128376269-MathJax-479-QINU
惑星の速度;UNIQ2e9770c128376269-MathJax-480-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-481-QINU =UNIQ2e9770c128376269-MathJax-482-QINU

惑星の加速度;UNIQ2e9770c128376269-MathJax-483-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-484-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-485-QINU
惑星に働く力;万有引力の法則より、太陽の方向に向いた、大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-486-QINUの力なので
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-487-QINU
と表せる。
この力が、惑星の運動を変化させ、上述の加速度を生じさせたのだから、運動の第2法則UNIQ2e9770c128376269-MathJax-488-QINUより、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-489-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-490-QINU
変形すると、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-491-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-492-QINU

UNIQ2e9770c128376269-MathJax-493-QINU とUNIQ2e9770c128376269-MathJax-494-QINUは直交するベクトルなので、(1)式が成立する必要十分条件は、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-495-QINU,
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-496-QINU
である。
(2)式から、角速度UNIQ2e9770c128376269-MathJax-497-QINU(定数)が
(3)式から、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-498-QINUが
得られる。
これらより、惑星は等角速度
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-499-QINU UNIQ2e9770c128376269-MathJax-500-QINU (4)
で太陽の周りを回転することが分かり、ケプラーの第2法則が得られた。

ケプラーの第3法則の導出 

惑星が太陽の周りを一周する時間UNIQ2e9770c128376269-MathJax-501-QINU(周期という)は、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-502-QINUなので、(4)式より、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-503-QINU,
故にUNIQ2e9770c128376269-MathJax-504-QINU, UNIQ2e9770c128376269-MathJax-505-QINU
これは軌道が円の場合のケプラーの第3法則である。

万有引力の法則を,ケプラーの法則と運動の第2法則から導く

惑星が太陽の周りを円運動しているとき、太陽が惑星に及ぼしている力を計算する。
ケプラーの第2法則より、円運動する惑星は角速度一定である。これをUNIQ2e9770c128376269-MathJax-506-QINUとする。
太陽の位置を原点とし円の半径をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-507-QINUとすると、この惑星の加速度はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-508-QINU 。これは、太陽にむかう大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-509-QINUのベクトル。
運動の第2法則より、惑星に働く力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-510-QINUは、太陽の方向に、大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-511-QINU
ここで、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-512-QINU は惑星の慣性質量である。
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-513-QINUをUNIQ2e9770c128376269-MathJax-514-QINUの関数で表すためケプラーの第3法則と用いる。
惑星の公転周期UNIQ2e9770c128376269-MathJax-515-QINUと円の半径UNIQ2e9770c128376269-MathJax-516-QINUの間にはUNIQ2e9770c128376269-MathJax-517-QINU;定数
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-518-QINUなので UNIQ2e9770c128376269-MathJax-519-QINU∴UNIQ2e9770c128376269-MathJax-520-QINU
それゆえ、力の大きさは
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-521-QINU
さらに、太陽の質量UNIQ2e9770c128376269-MathJax-522-QINUがUNIQ2e9770c128376269-MathJax-523-QINU倍になると、質量UNIQ2e9770c128376269-MathJax-524-QINUの太陽がUNIQ2e9770c128376269-MathJax-525-QINU個あり、それぞれが惑星に上記の力を与えると考えられる。
すると惑星に働く力はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-526-QINU倍になるので力の比例部分UNIQ2e9770c128376269-MathJax-527-QINUは太陽の質量UNIQ2e9770c128376269-MathJax-528-QINUに比例することが分かる。
比例定数をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-529-QINUとおくと、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-530-QINU
従って惑星に働く力の大きさは、太陽の方向に、 UNIQ2e9770c128376269-MathJax-531-QINU
これは万有引力の法則である。
(注)この式は万有引力の法則の式と同じだが、質量UNIQ2e9770c128376269-MathJax-532-QINUは、慣性質量であり、対称性から太陽の質量UNIQ2e9770c128376269-MathJax-533-QINUも慣性質量と考えられる。
しかしニュートンは重力を生む質量は、慣性質量と完全には一致しない可能性もあると考え、重力質量という概念を生みだしと思われる。
既述のように、多くの実験の結果、両質量は同一であると考えられている。
重量質量を使わず、慣性質量だけを用いても、ニュートン力学を構成することが出来る。これを提唱する物理学者もいる。
それには万有引力の法則のかわりに、次の法則を採用すればよい。
外力が働かないときは、どんな2質点も、お互いに相手に向かって, 加速度運動して近ずく。両者の加速度は、両者の距離の2乗UNIQ2e9770c128376269-MathJax-534-QINUに反比例し、それぞれの慣性質量の比に反比例する。
式で書くと、
質点1の慣性質量と加速度の大きさをUNIQ2e9770c128376269-MathJax-535-QINU,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-536-QINU  
質点2の慣性質量と加速度の大きさをUNIQ2e9770c128376269-MathJax-537-QINU,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-538-QINU 
とすると、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-539-QINU、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-540-QINU,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-541-QINU 
この法則と運動法則により2質点間に働く力(万有引力)を求めると、
ニュートンの万有引力の法則と同じ式だが、質量は慣性質量になり、
重量質量を用いずニュートン力学が構成できる。

等速円運動する物体に働く向心力

質量mの質点が、半径rの円周上を等速運動(速さv)しているとする。
  前章の等速円運動の加速度で説明したように
  この質点は円の中心向きの大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-542-QINUの加速度を持つ。
  すると運動の第一法則により、この物体に作用する力が存在しないといけない。
  その力は運動の第2法則により、
  円の中心に向かう大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-543-QINUの力であることが分かる。
  円の中心に向かう力を向心力(あるいは求心力)という。

等速円運動する物体中の質点に働く遠心力

質量mの質点とみなした物体が円運動しているとき、
その物体中にある粒子を考えてみよう。
この粒子(質量UNIQ2e9770c128376269-MathJax-544-QINU)は慣性法則により、物体から力を受けなければ等速直線運動をする。
物体と一緒に等速円運動するには、物体ないし物体中の他の粒子から(の合力として)大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-545-QINUの向心力を受けねばならない。
この向心力を受けない限り遠心方向に動いてしまうことになる。
粒子(正確には円運動する物体に固定された観測系)からみると粒子は大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-546-QINUの遠心方向の力をうけているように見えるのである。
円運動する観測系から見た、慣性法則に起因する、この遠心方向の力を遠心力という。

例えば、
「物体を円軌道を一定の速さで動く車両、その中の粒子を人間」
あるいは 「物体を円軌道を一定の速さで動く比重の異なる2種の液体が詰まった瓶、その中の粒子を液体粒子」
などを思い浮かべてほしい。
前者の例では車両に乗っている人間の足裏がこの力を受けて、車両とともに円運動する。
ところが人間の重心は慣性力で直進しようとするので、遠心方向に倒れていく。
車両に固定された観測系からは、人間の重心は遠心方向に大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-547-QINUの力が作用しているようにをみえるのである。
後者の例では、2種の液体粒子の質量をそれぞれUNIQ2e9770c128376269-MathJax-548-QINUとすると、
これ等の粒子は瓶や周りの液体粒子からの合力が大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-549-QINUの向心力にならないと瓶とともに円運動をすることはできず、
慣性法則のため瓶の中で遠心方向に動いてしまう。
各液体粒子は、あたかも大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-550-QINUの遠心方向の力を受けているような現象がおこる。
この結果、より大きな遠心力を受ける質量の大きい液体粒子が円運動の中心から離れた側に集まり、
2種の液体粒子の分離ができる(遠心分離機)。

振り子と単振動

振り子

上記の記事の運動方程式の導出は不正確なので、簡単に説明する。

 

図のように振り子の支点を通り水平な直線をx軸、
原点を通り鉛直な直線をy軸にとる。y軸と振り子の腕(おもりを釣るす紐など)のなす角度をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-551-QINU、
腕の長さをUNIQ2e9770c128376269-MathJax-552-QINU とする。
振り子の腕の重さは無視でき、振り子のおもりは、質量m[kg]の質点とみなすことができるとする。
おもりの位置ベクトルをUNIQ2e9770c128376269-MathJax-553-QINU(x,yは座標成分)と書く。
おもりは振り子の支点(原点)を中心とした半径UNIQ2e9770c128376269-MathJax-554-QINU上を運動するので、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-555-QINU を満たし、
変数UNIQ2e9770c128376269-MathJax-556-QINUを用いて、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-557-QINU 
と表現できる。

運動方程式

(1)おもりに働く力
おもりには、重力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-558-QINUと振り子の紐の張力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-559-QINUが働く。
ここで、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-560-QINUは、大きさがUNIQ2e9770c128376269-MathJax-561-QINUで、
方向・向きが鉛直下方(y軸の負の向き)のベクトルである。
重力ベクトルと呼ぶことにする。
(2)運動方程式
時刻tのおもりの位置ベクトルをUNIQ2e9770c128376269-MathJax-562-QINUとすると、ニュートンの運動方程式から、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-563-QINU
振り子の腕が鉛直下方(y軸の負の側の半直線)となす角を
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-564-QINUとすると、この運動方程式の座標成分表示は、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-565-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-566-QINU
ここで、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-567-QINU
紐の張力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-568-QINUは、おもりが円周上を運動するように拘束する力であり、
時刻によって変化する未知量である。
このため、上の式は解くことができない。
そこで、式(2)と式(3)から、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-569-QINUを消去する。
式(2)×UNIQ2e9770c128376269-MathJax-570-QINU+式()×UNIQ2e9770c128376269-MathJax-571-QINUを計算すると、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-572-QINU
両辺をmで割ると、 UNIQ2e9770c128376269-MathJax-573-QINU
この式は、変数x、y、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-574-QINUを含むので、まだ解けない。

座標変換

式(1)を利用すると、xとyはともに一変数UNIQ2e9770c128376269-MathJax-575-QINUの関数となるので、
式(4)は一変数の微分方程式に変換できる。
合成関数の微分の性質を利用して
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-576-QINU
関数の積と合成関数の微分の性質([[1]]参照) を利用して
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-577-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-578-QINU
故に UNIQ2e9770c128376269-MathJax-579-QINU
同様にして、 UNIQ2e9770c128376269-MathJax-580-QINU
式(5)、(6)を式(4)に代入して整頓すると
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-581-QINU
故に、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-582-QINU
これが、振り子の運動方程式である。

おもりの振幅が小さいときの近似  

運動方程式(7)を解くことは困難なので、
おもりの振幅が小さい(UNIQ2e9770c128376269-MathJax-583-QINUが常に小さい)場合の近似解を求めよう。
この場合、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-584-QINUなので(注参照)、
運動方程式は
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-585-QINU
で近似できる。

(注)UNIQ2e9770c128376269-MathJax-586-QINUはUNIQ2e9770c128376269-MathJax-587-QINUにおいて微分可能なので、
8章物理数学の2節「極限と微分」中の「微係数の意味」の命題により、
微小なUNIQ2e9770c128376269-MathJax-588-QINUに対して、 UNIQ2e9770c128376269-MathJax-589-QINU
実際に、いくつかのUNIQ2e9770c128376269-MathJax-590-QINUにたいして、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-591-QINUと比較すると、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-592-QINUに対して,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-593-QINU,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-594-QINU誤差率(UNIQ2e9770c128376269-MathJax-595-QINU)0.0065
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-596-QINUに対して,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-597-QINU,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-598-QINU 誤差率 0.0272
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-599-QINUに対して,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-600-QINU,UNIQ2e9770c128376269-MathJax-601-QINU 誤差率 0.0430

振り子の運動の近似解  

振動が小さく抑えられている時の振り子の運動方程式は 式(8)で精度よく近似できるので、
その解は、本来の運動方程式(7)の精度の高い近似解になることが予想される(注1参照)。
式(8)の解を求めよう。
tで2回微分すると、自分自身のマイナス倍になる関数UNIQ2e9770c128376269-MathJax-602-QINUとしては、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-603-QINUとUNIQ2e9770c128376269-MathJax-604-QINU が知られている(注2参照)。
そこで
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-605-QINUとなるように、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-606-QINUと定めると、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-607-QINUとUNIQ2e9770c128376269-MathJax-608-QINUは、式(8)を満たす。
すると、振り子の初期時刻(t=0)の角度と初期角速度UNIQ2e9770c128376269-MathJax-609-QINU をみたす式(8)の解は、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-610-QINU
で与えられる。ここで、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-611-QINU
三角関数の加法定理を用いると、
式(9)はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-612-QINU
と書ける(注3)。ここで、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-613-QINU
命題
時刻tの振り子おもりの鉛直下方からの角度をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-614-QINUとおく。
初期時刻t=0の、おもりの角度UNIQ2e9770c128376269-MathJax-615-QINU、 初期角速度UNIQ2e9770c128376269-MathJax-616-QINU
の振り子(腕の長さl)の微小振動運動は、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-617-QINU
を満たす。
振り子の周期Tは、式(10)の三角関数内の角度がUNIQ2e9770c128376269-MathJax-618-QINU増加する時間なので、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-619-QINUを満たす。
系;腕の長さlの振り子の微小振動の周期Tは、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-620-QINU

(注1)常微分方程式論により、この妥当性は保証される。通常、理工系の大学の専門課程で学ぶ。
(注2)UNIQ2e9770c128376269-MathJax-621-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-622-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-623-QINU
(注3)UNIQ2e9770c128376269-MathJax-624-QINUに加法定理を適用すると、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-625-QINU
この式が、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-626-QINUに等しくなるように UNIQ2e9770c128376269-MathJax-627-QINUを決めればよい。
このためには、両式のUNIQ2e9770c128376269-MathJax-628-QINUの係数が等しく、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-629-QINUの係数が等しくなるようにUNIQ2e9770c128376269-MathJax-630-QINUを決めればよい。
すなわち、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-631-QINU.
これより、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-632-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-633-QINU
故に、上式でUNIQ2e9770c128376269-MathJax-634-QINUをきめると、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-635-QINU が成立する。

単振動

質点のつり合い

質点に力F1,,Fnが作用し、質点が静止したまま(あるいは等速直線運動)であるとき、それらの力は釣り合っているという。
釣り合いの条件は、F1+ +Fn=0です(運動の第2法則と力の合成則から導出できる)。

質点系の運動

2個以上の質点が集まって出来ている系を質点系という。
質点系というときは、各質点は密集していても、離れ離れでも良い。互いに固着しようが、自由に動けようが構わない。
すべての物質は、分子の集合と考えたり、細分化して極小部分に分け、それらの集合と考えれば、十分な精度で、質点系とみなすことができる。
そのため質点系の運動の法則を、ニュートンの運動法則から導出すれば、その応用範囲は非常に広い。

質点系の重心とその運動

系の任意の2つの質点間には相互に及ぼしあう力が働いていてもよい。
この相互作用力は作用・反作用の法則から、
大きさと方向は同じで向きは逆である。 この力を質点系の”内力”という。  
質点系の各質点に外部から力(外力という)が加わる時、この質点系はどんな運動をするだろうか。
質点系の各質点の位置をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-636-QINU、質量をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-637-QINUとし、
質点UNIQ2e9770c128376269-MathJax-638-QINU に作用する外力をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-639-QINU、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-640-QINU に、他の質点UNIQ2e9770c128376269-MathJax-641-QINUから作用する内力をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-642-QINUとする(UNIQ2e9770c128376269-MathJax-643-QINU)。
すると、各質点に対して、運動の第2法則により、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-644-QINU  UNIQ2e9770c128376269-MathJax-645-QINU ここでUNIQ2e9770c128376269-MathJax-646-QINU、
各ベクトルを自由ベクトルとみなしてUNIQ2e9770c128376269-MathJax-647-QINUについて加え合わせると、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-648-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-649-QINU
上の式の第3項の変数名iとjを入れ替えると
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-650-QINU
剛体の内力についての仮定から、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-651-QINUなので、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-652-QINU
故に、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-653-QINU
が得られる。
質点系の全質量UNIQ2e9770c128376269-MathJax-654-QINUと質点系に働く全外力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-655-QINUを用いて書きなおすと、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-656-QINU

 質点系の重心とその運動

質点系の重心UNIQ2e9770c128376269-MathJax-657-QINUを UNIQ2e9770c128376269-MathJax-658-QINU で定義する。
すると式(a)から次の命題が得られる。

定理(重心の運動方程式)
任意の質点系を考える。
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-659-QINUをこの質点系の全質量、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-660-QINUは質点系に作用する外力の合力(系内の各質点に作用する系外からの力のベクトル和のこと)、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-661-QINUは、質点系の重心
とすると、重心は次の微分方程式に従って運動する。
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-662-QINU

定理の系
任意の質点系を考える。
この質点系に作用する外力の合力が零ならば
系の重心は等速直線運動する。

以下の解説も参考にしてください。

複雑にみえる運動も重心の運動をみれば簡単である  

体操選手の運動は、跳躍などで空中をまいながら、回転や体の屈伸、ひねりなどを行う。大変複雑で美しい。
しかし、導出した質点系の重心の運動法則から、体の重心の運動は、投射体の運動であり、放物線をえがいて移動することが分かる。
空中に飛び出た瞬間の重心の位置と速度(速さと方向・向き)で、その軌跡は完全に決まってしまうのである。
複雑さ・美しさは、重心周りの体の姿勢・ひねりとその変化、それに伴う重心周りの回転変化によって、もたらされる。
これらは大変複雑であり、本テキストの範囲をこえる。 変形しない物体(剛体)の回転運動については、今後説明する。

ガリレイの相対性原理

どのような慣性座標系で観測しても力学の法則は同じであるという原理。
一つの慣性系にたいして等速度並進運動(注)する観測系を考えると、
力の働いてない物体はやはり、等速度運動するので慣性系であり、
運動の第2、第3法則、万有引力の法則、力の合成則が成立することを主張している。
(注) 座標系UNIQ2e9770c128376269-MathJax-663-QINUの任意の点UNIQ2e9770c128376269-MathJax-664-QINUが、 座標系UNIQ2e9770c128376269-MathJax-665-QINUからみると、
すべて同じ速度(UNIQ2e9770c128376269-MathJax-666-QINUで移動すること。
言い換えると、S'系の各座標軸上の点(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)が、
S系からみると皆、同じ速度(UNIQ2e9770c128376269-MathJax-667-QINUで移動すること。

重要な原理なので、「2.8 ガリレイ変換とガリレイの相対性原理」で詳しく考察しよう。

仕事

物体に力を加えて動かす時、力はこの物体に仕事をするという。
仕事(の量)は力の大きさと動かした距離の積に比例する。
正確には、加えられる力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-668-QINU が一定で、
力の向きに対して角度UNIQ2e9770c128376269-MathJax-669-QINU[rad] だけ傾いている直線上を UNIQ2e9770c128376269-MathJax-670-QINU 移動したとき、
仕事W は、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-671-QINU    
で定義する。
ここで任意のヴェクトルUNIQ2e9770c128376269-MathJax-672-QINUに対して、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-673-QINUはその大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-674-QINUを表す。


特に、この式においてUNIQ2e9770c128376269-MathJax-675-QINU(すなわち UNIQ2e9770c128376269-MathJax-676-QINU)とすると
「加えられる力が一定であり力の方向が運動の方向と一致している場合」になり、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-677-QINU である。
また、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-678-QINU(UNIQ2e9770c128376269-MathJax-679-QINU)のとき、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-680-QINUとなる。
すなわち、力が運動の方向と直角方向にはたらいている場合、その力は仕事をしない。

UNIQ2e9770c128376269-MathJax-681-QINUと表現すると、
仕事は、力の方向にUNIQ2e9770c128376269-MathJax-682-QINUだけ動かしたときの仕事に等しいことが分かる。

UNIQ2e9770c128376269-MathJax-683-QINUと表現すると、
仕事は、
大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-684-QINU のUNIQ2e9770c128376269-MathJax-685-QINU方向の力(力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-686-QINUのUNIQ2e9770c128376269-MathJax-687-QINU方向成分)を加えて、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-688-QINUだけ動かしたときの仕事に等しいことが分かる。


仕事の内積を用いた表現

内積は、仕事の記述や計算に便利な数学の概念である。

内積の定義と仕事の内積表現

ベクトルUNIQ2e9770c128376269-MathJax-689-QINUの内積UNIQ2e9770c128376269-MathJax-690-QINUは、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-691-QINUで定義する。
ここで、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-692-QINUは、ベクトルUNIQ2e9770c128376269-MathJax-693-QINUのなす角(UNIQ2e9770c128376269-MathJax-694-QINU )である。

ウィキブックスでは2次元のベクトルを中心にして説明しているが、
3次元ベクトルの場合にも、成り立つように修正することは容易である。
例えば、ベクトルUNIQ2e9770c128376269-MathJax-695-QINUの長さは、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-696-QINU,
ベクトルの内積は、この長さを使えば、全く同じ式で良い。

内積を使った 仕事の表現

内積 UNIQ2e9770c128376269-MathJax-697-QINUを用いると、
物体に力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-698-QINUを加えて、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-699-QINU(P点からQ点まで)動かした時の力のなす仕事は、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-700-QINUと表せる。

内積の性質

仕事は前述のように内積で表現できるので、
内積の性質を調べておくと、仕事について考察する時に役立つ。
以下では、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-701-QINUは、すべて同じ次元(2か3)のベクトルとし、 UNIQ2e9770c128376269-MathJax-702-QINUは実数とする。
座標成分表示が必要な命題では、直交座標系表示を用いる。

(1)UNIQ2e9770c128376269-MathJax-703-QINU
(2)UNIQ2e9770c128376269-MathJax-704-QINU 、
ここでUNIQ2e9770c128376269-MathJax-705-QINUはそれぞれUNIQ2e9770c128376269-MathJax-706-QINUのx座標成分、同様に、添え字2はy座標成分、3はz座標成分
直交座標系はどんなものでも良い。しかしすべてのベクトルは同じ座標系で座標成分表示しなければならない。
(3)UNIQ2e9770c128376269-MathJax-707-QINU   
   UNIQ2e9770c128376269-MathJax-708-QINU   
(4)UNIQ2e9770c128376269-MathJax-709-QINU
が成り立つ。
(5)UNIQ2e9770c128376269-MathJax-710-QINU
(6)ノルムの性質;UNIQ2e9770c128376269-MathJax-711-QINU

証明は、本テキストの「8章 物理数学の8.1平面と空間のベクトル」にある。

内積の応用,座標変換;未完。座標変換の視点から書きなおす事 

運動の解析では、作用する力を適切に直交分解し、運動をその分解方向の運動成分に分けて考察すると、大変見通しが良くなることがある。
質点mが力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-712-QINUを受けて運動している時、その運動は
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-713-QINU
(運動の第2法則)に支配される。
ある斜線に軌道が抵抗なく限定されている運動や
その斜線に正射影した位置ベクトルとその変化(運動)を見たい場合には、
以下のように、内積を使うと便利である。
この斜線上の任意の一点Oを原点とし、斜線の方向と等しい、大きさ1のベクトルUNIQ2e9770c128376269-MathJax-714-QINUと、
それに直交する大きさ1のベクトルUNIQ2e9770c128376269-MathJax-715-QINUをとる(向きは適当でよい)。 方向・向きを指定するための大きさ1のベクトルを、方向ベクトルと呼ぼう。
次に、運動の第2法則の両辺と、方向ベクトルUNIQ2e9770c128376269-MathJax-716-QINUとの内積をとると、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-717-QINU
内積の性質を使うと、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-718-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-719-QINU(力のUNIQ2e9770c128376269-MathJax-720-QINU方向成分)
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-721-QINU(位置ベクトルを、斜線上に正射影した位置を表すベクトル)
を導入すると、上の式は
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-722-QINU
が得られる。 同様に斜線に直交する運動成分は UNIQ2e9770c128376269-MathJax-723-QINU
運動がこの斜線に、拘束されているときは、q方向の運動はなく、
常に UNIQ2e9770c128376269-MathJax-724-QINU である。

力が変動したり、物体の移動が曲線であるときの仕事

物体に作用する万有引力は、
物体の位置により決まる。

力の場

質点がどこにあろうが、 その位置UNIQ2e9770c128376269-MathJax-725-QINUに応じて力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-726-QINUが作用する空間を力の場という。
万有引力は位置UNIQ2e9770c128376269-MathJax-727-QINUについての連続なベクトル値関数である。

力の場の力のおこなう仕事の近似値  

この力を受けて運動する物体は曲線を描いて運動することが多い(彗星、惑星の運動など)。
物体がさまざまな理由で運動を拘束され曲線を描いて動くときもある。
こうした場合、力のなす仕事をどのように決めたらよいだろうか。

運動の軌跡(向きつき曲線C)を、細かく区切って
n個の向きつき小曲線部分UNIQ2e9770c128376269-MathJax-728-QINUに分ける(i=1,2,,,n)。
各小部分UNIQ2e9770c128376269-MathJax-729-QINUの両端の位置ベクトルを、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-730-QINUと書く。図参照のこと。
この分割に名前を付けUNIQ2e9770c128376269-MathJax-731-QINUと書く。
nを増やして分割を細かくすると、
連続的に変化する力は、各小部分UNIQ2e9770c128376269-MathJax-732-QINU上でほぼ一定となる。
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-733-QINUの形状もほぼ線分とみなせるようになる。
そこで、i番目の小部分上の一点UNIQ2e9770c128376269-MathJax-734-QINUを選び、
この小部分上では、力をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-735-QINUで近似する。
また、i番目の小部分を向きつき線分
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-736-QINU
で近似する。
すると、この小部分の移動で力の行う仕事は
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-737-QINU 
で近似できる。
これをすべて加えた
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-738-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-739-QINU
は、力のなした仕事の近似値を与えると考えられる。

線積分可能性の定義

ある数Wが存在して、
分割数nをどんどん増やし、小部分の長さを零に近づくて行く。
この時、分割の仕方UNIQ2e9770c128376269-MathJax-740-QINUやUNIQ2e9770c128376269-MathJax-741-QINUの選び方によらず
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-742-QINU
となるとき、
ベクトル値関数UNIQ2e9770c128376269-MathJax-743-QINUは、曲線Cに沿って線積分可能という。
このとき、Wのことを、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-744-QINUの曲線Cに沿った線積分といい、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-745-QINU 
   と記す。 

曲線に沿った仕事の定義

力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-746-QINUが、向きつき曲線Cに沿って線積分可能であるとき、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-747-QINU
を、力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-748-QINUによって質点をCに沿って動かすときの、
力の行う行う仕事と定義する。


どのような条件があると線積分が可能になるか、とか、
この計算をこれ以上具体的に進めるには、
空間中の向きのついた曲線を数式で表現しなければならない。

連続な力の場のなす仕事

命題;連続な力の場のなす仕事
質点が連続な力の場から力UNIQ2e9770c128376269-MathJax-749-QINUを受け、
点UNIQ2e9770c128376269-MathJax-750-QINUから点UNIQ2e9770c128376269-MathJax-751-QINU まで曲線Cに沿って移動したとする。
この軌跡(曲線Cに、点UNIQ2e9770c128376269-MathJax-752-QINUから点UNIQ2e9770c128376269-MathJax-753-QINUへむけた向きをいれたもの)が、
実数のある閉区間UNIQ2e9770c128376269-MathJax-754-QINU上で定義された、
滑らかなベクトル値関数UNIQ2e9770c128376269-MathJax-755-QINUで表せるならば、
力のなす仕事UNIQ2e9770c128376269-MathJax-756-QINUは、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-757-QINU
(注)滑らかな関数とは、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-758-QINU上で連続で、
開区間UNIQ2e9770c128376269-MathJax-759-QINUで微分可能で導関数が連続なもの。
我々が経験するすべての曲線は、
曲線を表示するための、パラメータ区間上のベクトル値関数であらわせる。
この関数が滑らかというのが、この命題の課す制約である。
証明;
曲線Cにそった、力の線積分が可能であり、Wとなることを示す。
曲線の分割を得るため、パラメータの分割を行う。
パラメータUNIQ2e9770c128376269-MathJax-760-QINUからUNIQ2e9770c128376269-MathJax-761-QINUまでを、n個の小区間
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-762-QINUに分割する。ここでUNIQ2e9770c128376269-MathJax-763-QINU
この分割をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-764-QINUと書く。
n個の小区間の長さの最大値をUNIQ2e9770c128376269-MathJax-765-QINUと記す。UNIQ2e9770c128376269-MathJax-766-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-767-QINU(i=1,2,,,,,n)をCの分割の分点とすることで、
Cのn分割UNIQ2e9770c128376269-MathJax-768-QINUが得られる。これをUNIQ2e9770c128376269-MathJax-769-QINUと書く。
任意のUNIQ2e9770c128376269-MathJax-770-QINUを選び
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-771-QINU
を、UNIQ2e9770c128376269-MathJax-772-QINU上の力の代表点とする。

UNIQ2e9770c128376269-MathJax-773-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-774-QINU UNIQ2e9770c128376269-MathJax-775-QINU が、パラメータの分割を細かくしていくと、
分割UNIQ2e9770c128376269-MathJax-776-QINU や UNIQ2e9770c128376269-MathJax-777-QINUの選び方に無関係な定数に収束することを示せばよい。

UNIQ2e9770c128376269-MathJax-778-QINUが小さいので、微分の定義から
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-779-QINU
そこで、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-780-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-781-QINU
故に、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-782-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-783-QINU
力がパラメータ区間UNIQ2e9770c128376269-MathJax-784-QINUの間に行う仕事UNIQ2e9770c128376269-MathJax-785-QINUは、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-786-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-787-QINU
この式は、nが大きくなるほど、等式に近くなる。
最後の項UNIQ2e9770c128376269-MathJax-788-QINUは、
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-789-QINU上で定義された連続な実数値関数
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-790-QINU
の、パラメータ区間の分割UNIQ2e9770c128376269-MathJax-791-QINUに対応する リーマン和である。
そこで、nを無限に大きくしていくと、最後の式は
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-792-QINU
UNIQ2e9770c128376269-MathJax-793-QINU
に収束する(8章の8.3 積分に証明あり)。

(注)この証明は、
「この式は、nが大きくなるほど、等式に近くなる」
ことの証明がないので、不正確である。
きちんとした証明は、8章物理数学の8.3積分で与える。

仕事の単位 

仕事の定義UNIQ2e9770c128376269-MathJax-794-QINUから、仕事の単位は、力の大きさUNIQ2e9770c128376269-MathJax-795-QINUの単位と長さUNIQ2e9770c128376269-MathJax-796-QINUの単位を掛けたものになる(UNIQ2e9770c128376269-MathJax-797-QINU は無単位なので )。
MKSA単位系では、力の大きさの単位はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-798-QINU(ニュートン)、長さの単位はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-799-QINU(メートル)なので、仕事の単位はUNIQ2e9770c128376269-MathJax-800-QINU となる。
これをUNIQ2e9770c128376269-MathJax-801-QINU(ジュール)と呼ぶ。UNIQ2e9770c128376269-MathJax-802-QINUである。

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