物理/運動量と力学的エネルギー保存則
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目次 |
エネルギーと保存則
質点や質点の集まりの運動を調べるときに有用な
各種の保存法則が、運動の法則から導かれる。
導出の仕方が理解できると、力学への理解が深まる。
下記の記事以外にも、導出法をインターネット検索して調べ、よく考えよう。
エネルギー
物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。
- エネルギー(ウィキペディア）の自然科学の項を参照のこと。
運動エネルギー(kinetic energy)
運動している粒子は、それを止めようとする物体に力を与え、動かすことが出来る。
運動している粒子は,運動に起因する何らかのエネルギーを持っていると考えられる。
止まった段階ではこのエネルギーは零になるので、
運動している粒子の持つエネルギーの量は、止まるまでに使った仕事で計れる。
質量UNIQ57d820fbce713f-MathJax-116-QINUの粒子が速度UNIQ57d820fbce713f-MathJax-117-QINUで運動しているとき、
止まるまでになす仕事を求めてみる。
速度方向をｘ軸とする座標UNIQ57d820fbce713f-MathJax-118-QINUをとる。
力が作用しなければ、粒子はｘ軸の上をｘ正方向にむかって、速さUNIQ57d820fbce713f-MathJax-119-QINUで等速直線運動を続ける。
この粒子が原点を通過する瞬間(t=0)から、ｘ軸の負方向に力UNIQ57d820fbce713f-MathJax-120-QINUを、止まるまで与え続ける。この間、粒子は、作用反作用の法則により、UNIQ57d820fbce713f-MathJax-121-QINUの力で、押し返しながら、止まるまで仕事をし続ける。
止まるまでの距離を求めるため、運動法則を用いる。
この粒子の運動方程式は
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-122-QINU,
ここで、UNIQ57d820fbce713f-MathJax-123-QINU(初期条件)UNIQ57d820fbce713f-MathJax-124-QINU
(1)式の両辺をUNIQ57d820fbce713f-MathJax-125-QINUで割り、UNIQ57d820fbce713f-MathJax-126-QINUを代入すると、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-127-QINU
この方程式を満たし、初期条件(2)を満たす関数UNIQ57d820fbce713f-MathJax-128-QINUは、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-129-QINU
この式から、粒子が停止する時刻は
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-130-QINU
このときの粒子の位置は、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-131-QINU
を解いて、停止時刻でのｘを求めればよい。
初期条件式(2)を満たす(4)式の解は
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-132-QINU
故に、止まる位置は
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-133-QINU
粒子が止まるまで,なした仕事は、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-134-QINU
以上の考察より、粒子の運動エネルギーを次のように決める。
定義；
質量UNIQ57d820fbce713f-MathJax-135-QINU、速度UNIQ57d820fbce713f-MathJax-136-QINUの質点の運動エネルギーを、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-137-QINU
で定める。
- ウィキペディア（運動エネルギー）
- ウィキペディア（Kinetic_energy） in English
仕事エネルギー定理（work-energy theorem)
物体に力 F を加え P 点から Q 点に動かした時の
運動エネルギーの変化量 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-138-QINUは、その物体に加えられた仕事量 W (=F・PQ)に等しい
ことを主張する定理です。
運動の第２法則の両辺を、この物体の軌道 PQ にそって積分すると得られる。
- ウィキブックス（高等学校理科 物理Ⅰ運動とエネルギー） の運動エネルギーと位置エネルギー
- ウィキペディア（Kinetic_energy） in English
保存力と位置エネルギー
物体に力 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-139-QINU が作用しているとする。
この力で物体を P 点から Q 点に動かす時、
この力の行う仕事が移動経路に関係なく２点の位置だけで決まる時、
この力を保存力(conservative force ) という。
この仕事の量を、Q 点を基準とした P 点でのこの物体の位置エネルギー（あるいはポテンシャルエネルギー potential energy)と言う。
保存力は次のように言いかえることができる。物体にかかる力 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-140-QINU に逆らって、力 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-141-QINU を加えて、物体をQ 点から P 点に動かす時、この力 > UNIQ57d820fbce713f-MathJax-142-QINUの行う仕事が移動経路に関係なく２点の位置だけで決まる時、力 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-143-QINUを保存力という。ここで力 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-144-QINUは、物体に作用する力 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-145-QINUとつり合いをとるための力であり、力 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-146-QINUは、力がつりあって静止する物体を、移動経路に沿って、無限にゆっくりと動かすのに必要な、無限に小さい力である。このため UNIQ57d820fbce713f-MathJax-147-QINU のなす仕事は零とみなせる。
- ウィキペディア（ポテンシャル）の保存力の項
- ウィキペディア（位置エネルギー）
- ウィキペディア（Potential_energy） in English
を参照のこと。
保存力の十分条件
質点Ａが質点Ｂに力 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-148-QINUを及ぼしているとする。
その力の方向が２質点を結ぶ直線方向の引力あるいは斥力で、大きさが２点間の距離で決まると仮定する。この仮定を数式で書こう。質点Ａ，Ｂの位置ベクトルを UNIQ57d820fbce713f-MathJax-149-QINUと表すと、 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-150-QINU。
ここで< UNIQ57d820fbce713f-MathJax-151-QINUは任意の関数。
この時、この力 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-152-QINU>は保存力になる。
証明。質点BをＰ点から、経路Ｃに沿って、Ｑ点まで動かすときの仕事が、経路Ｃに無関係であることを示せばよい。簡単にするため、質点Ａと経路Ｃは同一平面に含まれると仮定し、この平面上で議論する。
経路Ｃを質点Ａを中心とする円弧の一部と質点Ａに向かう線分を交互につなぐ線で、つぎのように、近似する。
ⅰ）Ｐ点からＱ点まで向かう経路Ｃの長さをｎ等分する点を UNIQ57d820fbce713f-MathJax-153-QINUとする。
ⅱ）質点Ａを中心とし、 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-154-QINUを通る円と、質点Ａと UNIQ57d820fbce713f-MathJax-155-QINUを結ぶ直線の交点を UNIQ57d820fbce713f-MathJax-156-QINUとし、経路Ｃの UNIQ57d820fbce713f-MathJax-157-QINUと UNIQ57d820fbce713f-MathJax-158-QINUの間を、この円の弧 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-159-QINUと線分 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-160-QINUで近似する。
ⅲ）経路Ｃの UNIQ57d820fbce713f-MathJax-161-QINUと UNIQ57d820fbce713f-MathJax-162-QINUの間も同様に、質点Ａを中心とする円弧 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-163-QINUと線分 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-164-QINUで近似する。
ⅳ）以下同様にして、経路Ｃの UNIQ57d820fbce713f-MathJax-165-QINUと UNIQ57d820fbce713f-MathJax-166-QINUの間を、
質点Ａを中心とする円弧 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-167-QINUと線分UNIQ57d820fbce713f-MathJax-168-QINUで近似する。
等分数nを大きくすると、この近似経路にそって移動する時の力のなす仕事は、経路Ｃに沿った移動の仕事と殆ど同じになり、UNIQ57d820fbce713f-MathJax-169-QINUのとき一致する。
近似経路のうち質点Ａを中心とする円弧を動く時の力のなす仕事は、零となる（力の方向が２質点を結ぶ直線方向の引力あるいは斥力なので、移動経路と常に直交するから）。
次に、近似経路のうち、質点Ａを通る直線上を動く経路の仕事を計算しよう。
線分UNIQ57d820fbce713f-MathJax-170-QINUという経路を、
質点ＡとＰ点を結ぶ直線UNIQ57d820fbce713f-MathJax-171-QINUに含まれる線分に、
次のように移し替える。
ⅰ）質点Ａを中心とし点UNIQ57d820fbce713f-MathJax-172-QINUを通る円と直線UNIQ57d820fbce713f-MathJax-173-QINUとの交点をUNIQ57d820fbce713f-MathJax-174-QINU とおき、 UNIQ57d820fbce713f-MathJax-175-QINU とおく。
ⅱ）線分UNIQ57d820fbce713f-MathJax-176-QINUを直線UNIQ57d820fbce713f-MathJax-177-QINU上の線分UNIQ57d820fbce713f-MathJax-178-QINUでおきかえる。
すると力に関する仮定から、
線分UNIQ57d820fbce713f-MathJax-179-QINUでの移動にさいして力のなす仕事は、
線分UNIQ57d820fbce713f-MathJax-180-QINUでの移動のとき力のなす仕事に等しい。
従って任意の経路Ｃにそって移動するときに力のなす仕事は、
常に、線分UNIQ57d820fbce713f-MathJax-181-QINUにそって移動するとき、力のなす仕事に等しい。（証明終わり）
問：質点Ａを固定する。この質点が他の質点に及ぼす重力は保存力であることを確かめてください。
ポテンシャルから力を求める方法
ある基準点Ｑから見た,
保存力UNIQ57d820fbce713f-MathJax-182-QINU（未知）のポテンシャルエネルギーUNIQ57d820fbce713f-MathJax-183-QINUが既知の時、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-184-QINUを、UNIQ57d820fbce713f-MathJax-185-QINUから求めることができる。
Ｑ点を原点とする直交座標系を1つ固定する。
この力で、質点を位置ベクトルUNIQ57d820fbce713f-MathJax-186-QINU の点から、
位置ベクトルUNIQ57d820fbce713f-MathJax-187-QINU の点まで動かす時
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-188-QINUは微小にとる。
するとこの間の力は一定値UNIQ57d820fbce713f-MathJax-189-QINUで近似できる）、
力のする仕事は、ほぼ UNIQ57d820fbce713f-MathJax-190-QINUである。
すると、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-191-QINUは、
質点を原点から位置ベクトルUNIQ57d820fbce713f-MathJax-192-QINU の点まで動かし、
引き続いて位置ベクトルUNIQ57d820fbce713f-MathJax-193-QINU の点まで動かす時の、
力のなす仕事になるので、保存力であることから、UNIQ57d820fbce713f-MathJax-194-QINU にほぼ等しい。
従ってUNIQ57d820fbce713f-MathJax-195-QINU
故に UNIQ57d820fbce713f-MathJax-196-QINU；力のｘ成分。
同様にして
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-197-QINU；力のｙ成分。
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-198-QINU；力のｚ成分。
力学的エネルギーと力学的エネルギー保存則(kinetic energy and conservation of kinetic energy )
力学的エネルギーは
- ウィキペディア（力学的エネルギー）
- ウィキペディア（Kinetic_energy） in English
を見てください。
仕事エネルギー定理の仕事量W（UNIQ57d820fbce713f-MathJax-199-QINU 。 ここでUNIQ57d820fbce713f-MathJax-200-QINU は変位ベクトル）をきめる力UNIQ57d820fbce713f-MathJax-201-QINUが
保存力UNIQ57d820fbce713f-MathJax-202-QINUと外力UNIQ57d820fbce713f-MathJax-203-QINUの和からなるとき、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-204-QINU
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-205-QINUのポテンシャルエネルギーUNIQ57d820fbce713f-MathJax-206-QINUとなる。
一方仕事エネルギー定理から、UNIQ57d820fbce713f-MathJax-207-QINUなので、この両式から、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-208-QINUが得られる。
もし保存力以外の力UNIQ57d820fbce713f-MathJax-209-QINU が零ならば、UNIQ57d820fbce713f-MathJax-210-QINU
（力学エネルギー保存則）が得られる。
もっと知りたい方は次をどうぞ。
エネルギー保存則は物理学のなかで最も基本的な原理です。
熱エネルギーも含めたもっと一般的なエネルギー保存則は、後の章で学びます。
運動量と保存則
運動量と力積 (momentum or linear momentum and Impulse)
質点に力UNIQ57d820fbce713f-MathJax-211-QINUが作用しているとする。
運動の第２法則UNIQ57d820fbce713f-MathJax-212-QINU の両辺を
時間に関してUNIQ57d820fbce713f-MathJax-213-QINUから UNIQ57d820fbce713f-MathJax-214-QINUまで積分してみよう。ここでUNIQ57d820fbce713f-MathJax-215-QINUは質点の運動量。
すると、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-216-QINU
となる。
質点に作用する力を時間で積分したUNIQ57d820fbce713f-MathJax-217-QINUを力積と呼ぶ。
力積は、運動量の変化に等しい。
- ウィキブックス（高等学校理科 物理Ⅱ） の1.1.2 運動量と力積
ｎ個の質点を持つ質点系の運動量は、各質点の運動量の和で定義する。
この場合にも質点系への力積は質点系の運動量の変化に等しいことが、
運動の第２法則から導ける。
運動量保存則( law of conservation of momentum )
質点の場合、外力がなければ、その運動量は保存される(一定である)。
質点系(質点の集まり)の場合でも、質点系に作用する外力のベクトル和が零ならば、
内力(質点系内の質点間に働く力)があっても、運動量が保存されることが示せる。(注）
これを運動量保存則とよぶ。
（注）質点系の各質点の位置をUNIQ57d820fbce713f-MathJax-218-QINU、質量をUNIQ57d820fbce713f-MathJax-219-QINUとし、
質点UNIQ57d820fbce713f-MathJax-220-QINU に作用する外力をUNIQ57d820fbce713f-MathJax-221-QINU、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-222-QINU に、質点系の他の質点UNIQ57d820fbce713f-MathJax-223-QINUから作用する内力をUNIQ57d820fbce713f-MathJax-224-QINUとする(UNIQ57d820fbce713f-MathJax-225-QINU)。
すると、各質点に対して、運動の第２法則により、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-226-QINU
各ベクトルを自由ベクトルとみなして,上の式をUNIQ57d820fbce713f-MathJax-227-QINUについて加え合わせると、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-228-QINU(作用反作用の法則)なので、
UNIQ57d820fbce713f-MathJax-229-QINU
が得られる。ゆえに、UNIQ57d820fbce713f-MathJax-230-QINUは保存される。
保存則の応用
衝突の問題
2質点の衝突
質点の壁との衝突
力学に必要な物理量（時間、距離、速度、加速度、質量、力）の単位と単位変換
- ウィキペディア（物理単位）
- wikibooks(High_School_Physics/Si_units) ,in English
