物理/音と音波
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音と音波
音波とは、狭い意味では、空気の粗密の振動が伝わっていく縦波である。
広義には、気体、液体、固体の中を伝わる縦波(粗密波)を音波という。
音波は波なので、反射、屈折、回折、干渉など、波に共通する特有の性質をもつ。
そのため、「4.1 波の性質」で述べたことは、すべて成立する。
音波の伝わり方
音波の速さ
乾燥した空気をつたわる音波の速さ V は
空気温度 t℃ が高くなると早くなり、
V=331.3+0.6t(1)
で表せる(注参照)。
液体や固体中の音波の速さは、空気中よりずっと大きい。
音速の測定や理論研究の歴史、種々の媒質中の音速については、
を参照のこと。
(注) 空気は静止していると仮定している。
一定速度で動く空気中では、
その空気に対する音の相対速度が、式(1)で表される。
音の3要素
音の3要素 とは次の3つである。
(1)音の高さ;
振動数の高い音ほど、高音に聞こえる。
1オクターブ高い音とは、振動数が2倍になることをいう。
ちなみに、人間の耳に聞こえる音は、振動数が20Hzから2万Hzの音である。
可聴音という。
(2)音の強さ;
音には強く聞こえる音と弱く聞こえる音がある。
音の強弱は、媒質の密度、波の振幅と振動数によって決まる。
媒質密度と振動数が同じならば、振幅の大きな音ほど強く聞こえる。
(3)音色;
発音体が違うと振動数と強さが同じ音でも、音の感じが違う。
これを音色あるいは、ねいろという。
波の多くは、波形が正弦関数で表せないので、
振動数や振幅が同じでも、波形が異なるため音色が異なる。
音の性質
以下の(1)から(7)までの音の性質については、
- [[wikibooks_ja:高等学校理科 物理I 波/音波と振動|高等学校理科 物理I 波/音波と振]動]で学んでください。
以下には、簡単に要点を補足をします。
この節では、座標系を考えるときは、空気が静止してみえる慣性座標系を用いる。
(1)音のうなり
振動数(周波数)がわずかに異なり、変位の方向が等しい2つの音波(波)が干渉して、
振動数が中間とみなせ、
振幅がゆっくり周期的(振動数は2つの音波の振動数の差に等しい)に変わる合成波を生ずる現象を言う。
音声波では、ウォーンウォーンという、うなりに似た音に聞こえるため、「うなり」と言われる。
一般の波でも、うなりは当然生じる。
うなりに関する命題
2つの波の変位の方向が同じなので、その方向を、変位量の座標軸(y軸)に選ぶ。すると
音源1と音源2からの正弦波を個別に、ある地点Aで観測すると、
その変位量は,時刻原点を適切に選べば、
y1=A1sin(2πν1t)
y2=A2sin(2πν2t+θ)
と書ける。
ここで、 |ν1−ν2| は微小数。
この2つの波が同時にA地点にくる場合、その合成波は次の命題で与えられる。
命題
適切に時間の原点を選び、
ν:=ν1+ν22、 Δ:=ν1−ν22 とおけば、
y(s):=y1(s)+y2(s)
=√A21+A22+2A1A2cos(2π2Δs+2ξ1)sin(2πνs+ξ)(a)
ここで、ξ1=ν+Δ2Δθ(b)
ξ は、
tanξ=(A1−A2)sin(2πΔs+ξ1)(A1+A2)cos(2πΔs+ξ1)(c)
で与えられる。
注を参照のこと。
証明;
ν1=ν+Δ,ν2=ν−Δ なので、
y1=A1sin(2πν1t)=A1sin(2πνt+2πΔt)
y2=A2sin(2πν2t+θ)=A2sin(2πνt−2πΔt+θ)
両者の初期位相角が、絶対値が等しく、逆符号になるよう、時間の原点を変えよう。
そのため、時間原点を a だけ移動させた時間を s とおくと、t=s+a 。
これを、上の2つの式に代入して、変形すると
y1=A1sin(2πνs+2πΔs+(2πνa+2πΔa))
y2=A2sin(2πνs−2πΔs+(2πνa−2πΔa+θ))
初期位相条件を満たすような a を求めるため、
(2πνa+2πΔa)=−(2πνa−2πΔa+θ)
とおき、a を求めると、a=−θ4πν
すると、それぞれの初期位相は、
ξ1=(2πν+2πΔ)−θ4πν=−ν+Δ2νθ
ξ2=−((2πν−2πΔ)−θ4πν+θ)=−ξ1
このため、
y1=A1sin(2πνs+(2πΔs+ξ1))
y2=A2sin(2πνs−(2πΔs+ξ1))
これら2式に、三角関数の加法定理を適用すると、
y1=A1sin(2πνs+(2πΔs+ξ1))
=A1sin(2πνs)cos(2πΔs+ξ1)+A1cos(2πνs)sin(2πΔs+ξ1)
y2=A2sin(2πνs)cos(2πΔs+ξ1)−A2cos(2πνs)sin(2πΔs+ξ1)
従って
y=y1+y2
=(A1+A2)sin(2πνs)cos(2πΔs+ξ1)+(A1−A2)cos(2πνs)sin(2πΔs+ξ1)(d)
最後に、この右辺が A,ξ を適切に決めれば Asin(2πνs+ξ) と表現できることを示そう。
Asin(2πνs+ξ)
を加法定理を適用して書き直すと
Asin(2πνs+ξ)=Asin(2πνs)cos(ξ)+Acos(2πνs)sin(ξ)
この式を、式 (d) と比較すると
Acosξ=(A1+A2)cos(2πΔs+ξ1)
Asinξ=(A1−A2)sin(2πΔs+ξ1)
この2つの式から、式(c)が得られる。
さらに、sin2x+cos2x=1 を用いて A2 を計算すると、
A2=(A1+A2)2cos2(2πΔs+ξ1)+(A1−A2)2sin2(2πΔs+ξ1)
=(A1+A2)2cos2(2πΔs+ξ1)+(A1−A2)2(1−cos2(2πΔs+ξ1))=(A1−A2)2+4A1A2cos2(2πΔs+ξ1)
ここで、加法定理からcos(2x)=cos(x+x)=cos2x−sin2x=2cos2x−1 なので、 2cos2x=1+cos(2x)
この式を用いると
A2=(A1−A2)2+4A1A2cos2(2πΔs+ξ1)
=(A1−A2)2+2A1A2(1+cos(2π2Δs+2ξ1)
=A21+A22+2A1A2cos(2π2Δs+2ξ1)
これでAを得る。
(注)A1≠A2 のときは、
tanξ=(A1−A2)sin(2πΔs+ξ1)(A1+A2)cos(2πΔs+ξ1)(c)
から、ξ は時刻 s とともに振動する。
このため、合成波の形は振動数 ν の正弦波からずれる。
このずれは、A1と A2 が近いほど小さくなる。
A1=A2 のときは、式cから、ξ=0 となり、式 a は、
y1+y2=√A21+A22+2A1A2cos(2π2Δs+2ξ1)sin(2πνs)(a′)
となるので、
合成波は、振動数 ν の正弦波が振幅をゆっくり周期的に変動させる波になる。
これより2つの正弦波の合成波は、
両者の振動数が近く、両者の振幅も近いならば、
「振動数(周波数)が2つの元の波の振動数の中間で、
その振幅が 振動数 |2Δ|=|ν1−ν2| で振動する波形」
に近いことが分かる。
これにより、ウォーンウォーンという、うなりを生じる理由が理解できる。
(2)発音体の振動(その1)。弦の固有振動
張った弦をこすったり、はじいて振動させると、波が起き、両側に進行し、固定端で反射する。
反射波と進行波は重なり合って合成波である定常波ができる(注参照)。
弦は、図の実線と点線の間を往復運動する。
弦の両端は固定され振動しないので、定常波の節になる。
この定常波の振動を、弦の固有振動、その振動数を固有振動数という。
ファイル:GENPHY00010402-01.pdf
(2-1)定常波の波長
両端の変位が零であることから、定常波動の波長 λ と弦の長さ l の間には次の関係が成立つことが分かる。
l=λ2n,(n=1.2,3,,,) 変形すると
λ=2ln,(n=1.2,3,,,)
ここで、nは定常波の腹の数。
上の式から、λ は n の関数であることがわかるので、λn とかく。
すると
λn=2ln,(n=1.2,3,,,)(2)
腹の数が1の固有振動を基本振動(1倍振動)、n≥2の固有振動を、n倍振動と呼ぶ。
進行波の速さをVとし、n倍振動数を fn 、その波長をλn とかくと、
V=fnλn
fn=V2ln(n=1.2,3,,,)(3)
が成立つ。
(注)「1.4.6.3 定常波と進行波」を参照のこと。
(2-2)弦を伝わる波の速さ
未完
(3)発音体の振動(その2) 気柱の振動
細長い管の中の柱状の空気のことを気柱という(注参照)。
管中の波は、その両端で反射し、元の波と反射波は重ねあって合成波をつくる。
この合成波は定常波になる。
その波長や周波数(振動数)は、ある固有の値しか取れない。
これらについて学ぶ。
波の変位量としてなにを用いているかで、同じ端でも自由端にも固定端にもなるので注意してください。
(注)管の断面の大きさが音波の波長に比べて小さいと、
管のなかの音波は、管の軸に沿って進む平面波になる。
気柱ではこのような波を扱う。
参考文献;
ウィキブックス(高等学校理科 物理I 波/音波と振動 1.3 気柱の振動)
(3.1) 気柱の固有振動
以下では、管の長さを l ,音速を Vs で表す。
(3.1.1) 閉管の場合
図を参照のこと。
ファイル:GENPHY00010402-022.pdf
閉管とは、一方が閉じ他端が開放されている音響管のこと。
この管の定常波は、片方の端が腹で他端が節になる。
音を空気の位置の振動とみると、閉端は固定端で定常波の節、開放端は自由端で、定常波の腹になる。
疎密波と考えると、閉端は自由端で定常波の腹、開放端は固定端で定常波の節になる。
波長が最も長い定常波は、
一方の端が腹で他端が節になり、他に腹も節もない波であり、
基本振動という。この定常波は、気柱の長さ l の中に14 波長あるので、
波長は λ1=4l,周波数は f1=Vsλ1=Vs4l である。
波長が2蕃目に長い定常波は、
節である固定端から 2l3 の所にも節をもち、この間は波長の2分の一、
残りの部分に波長の4分の一があるので、
気柱部分は 34 波長である。
故に波長は λ2=4l3,周波数はf2=Vsλ2=3Vs4l=3f1で3倍振動である。
一般にn(≥1)番目の振動は、長さlの気柱の中に
12(n−1)+14=2n−14 波長分あるので、
l=λn2(n−1)+λn4(a)
ここで、λn はこの定常波の波長、λn2 は、節と節の間の距離(=腹と腹の距離)を表す。
故に波長 λn=4l2n−1、 周波数 fn=Vsλn=(2n−1)Vs4l=(2n−1)f1 で,(2n-1)倍振動。
(3.1.2) 開管の場合
図を参照のこと。
ファイル:GENPHY00010402-03.pdf
開管とは、両端とも開放された音響管のこと。
波を空気の位置の振動とみると、両端は自由端であり、
この管の定常波は、両方とも腹になる。
波を粗密波とみると、両端は固定端であり、
この管の定常波は、両方とも節になる。
波長が最も長い定常波は、腹(ないし節)が両端にだけあるもので、
基本振動と呼ぶ。長さlの気柱中に2分の一波長あるので、
波長は λ1=2l、周波数(振動数)は f1=Vsλ1=Vs2lである。
2番目に波長の長い定常波は、両端と管の真中に腹(あるいは節)がある波で、
波長は λ2=l、周波数は f2=Vsλ2=Vsl=2f1であり、2倍振動という。
一般にn(≥1)番目の振動は、長さlの気柱の中に
12n 波長分あるので、
l=12nλn (b)
故に、波長は λn=2ln ,周波数は fn=nVs2l でn倍振動。
(3.1.3)両端閉管
両端とも閉じた音響管を両端閉管という。
管内の空気の疎密波の固有振動は
両端を節とする定常波の振動である。
(3.1.4)開口端補正
これまで開口端の圧力は大気圧と等しい一定値になると仮定し、
疎密波として考えると節、空気の位置の振動と考えると、腹になるとしてきた。
しかし厳密には、開口部から空気を吹き出そうとすると、
外の空気から圧力を受けるので、管の入り口は完全に自由に空気の移動ができるわけではない。
そのため、音を疎密波と考えると節、また空気の位置変動の振動と考えるときには腹は、開口部から少しはみ出す。
そこで、腹の位置を一層正確に知るためには、この量を補正する必要がある。
本テキストでは、この問題は扱わない。
(4)固有振動と共鳴・共振
張った弦や気柱の空気の振動などは、それぞれ固有の定常振動数をもつことが分かった。一般に、振動する系は、それぞれ固有の振動数を持つ。
これを系の固有振動という。
振動系の固有振動数と等しい振動数の力をこの系に与えると
この系は激しく振動し始める。この現象を共鳴または共振と呼ぶ。
これについては下記もご覧ください。
(5)ドップラー効果
皆さんも、日ごろ
救急車のサイレンは、近づいているときは高い音に聞こえ、通り過ぎた瞬間に
低い音にかわることに気付いているでしょう。
一般に、音源の音を、音源に対し動いている人が聞くと、
元の音より高い周波数(=振動数)や低い周波数に聞こえる。
これを「ドップラー効果」という。
実用上重要な原理なので、やや詳細に議論しよう。
命題1
音速を vs とする。
音源が周波数 f の音を出しながら、静止している観測者に速度 v>0 で近づくとき、
観測者が聞く音の周波数 ˜f は、
˜f=vsvs−vf (4)
である。 ここで、v<vs である。
音源が通り過ぎて遠ざかるようになった瞬間に、観測周波数は急減し、
˜f=vsvs+vf (4′)
証明
音源から時刻 t=0 から一秒間だけ音を出すとする。
時刻0での、音源と観測者との距離を L とすると、
この音が観測される時刻は t1=Lvs
最後(t=1)の音は、音源と観測者の距離が L−v のとき発せられるので、
観測される時刻は t2=1+L−vvs
この間にf回の振動が観測されるので、一秒間あたりの振動数(周波数)は
ft2−t1=vsvs−vf
命題2
静止音源が周波数fの音を出している。
観測者が速さ v(>0) で音源に近づいているときに聞くこの音の周波数 ˜f は、
˜f=vs+vvsf (5)
ここで、 vs は、音速である。
観測者が音源を通り過ぎた瞬間に、観測音の周波数は急減し、
˜f=vs−vvsf (5′)
に変わる。
注を参照のこと。
証明
音源から一秒間(時刻0から、時刻1まで)だけ周波数 f の音を出すとする。
このときの観測者と音源の距離を L とおく。
すると、速さ v で音源に近づく観測者が、
最初の音を聞く時間 t1 は、
L−vt1=vst1
最後の音を聞く時間 t2 は、
L−vt2=vs(t2−1)
これら2式から、
t2−t1=vsvs+v
この間に、音は f 回 振動しているので、一秒当たりの振動の回数(周波数、振動数)は、
˜f=vs+vvsf
同様に考えると、
観測者が音源を通り過ぎた瞬間からは、音源から 速さ v で遠ざかるため、
˜f=vs−vvsf
が、得られる。
次に、一つの直線上を、音源と観測者がともに等速度で運動している場合の
ドップラー効果について考察する。
色々なケースを統一的に扱うため、空気が静止して見える一次元の慣性座標系を
用いる。
(注); 音源が動き、観測者が静止している場合(命題1)と結果が異なることに注意が必要である。
その理由を考えると面白い。
音源も、観測者も、ある直線上を等速運動する場合に、そのドップラー効果を調べよう。
命題3
音源は、周波数(振動数) f の音を出しながら、x軸上を速度 v で等速運動している。
観測者はx軸上を速度 u で等速運動している。
(1)観測者が音源の負側にいる場合
観測者は、
˜f=vs+uvs+vf(6)
の周波数の音を聞く。 ここで、 vs は音速である。
(2)観測者が音源の正側にいる場合
観測者は、
˜f=vs−uvs−vf(6′)
の周波数の音を聞く。 ここで、 vs は音速である。
証明
(1)の場合(図参照)
ファイル:GENPHY00010402-04.pdf
音源が時刻 t∈[0,1] の間だけ、周波数fの音を出すと仮定する。
時刻 t=0 における観測者と音源の距離を L とおく。
すると、観測者が最初の音を聞く時刻 t1 は
L−ut1=vst1
を満たす。
時刻t=1のときの、観測者と音源の距離は L−u+v なので
観測者が最後の音を聞く時刻 t2 は、
L−u+v−u(t2−1)=vs(t2−1)
を満たす。
これら2式から
t2−t1=vs+vvs+u
この間に、観測者の聞く音は、f回振動しているので、
一秒間あたりの振動の回数(周波数あるいは振動数)は
˜f=f÷(t2−t1)=vs+uvs+vf
(2) 観測者が音源の正側にいる場合
同様にして証明できるので省略。
証明終わり
(注)この命題から、観測者が音源とすれ違うか追い越すと、その瞬間に観測周波数は急変することが分かる。
最後に、超音波による血流速度の測定などに応用される命題を説明する。
命題4
周波数fの音を出している固定音源に、観測者がいて、
速さ v で近づく板からの反射音を観測すると、周波数は
˜f=vs+vvs−vf=(1+2vvs−v)f
証明
記述を簡単にするため、音源は、時刻0から一秒間だけ音を出すとする。
時刻t=0 の、音源と板との距離を L とおくと、
時刻 t における音源と板との距離は L(t)=L−vt で表せる。
(1)最初(t=0)にだした音の反射音が聞こえる時刻 t1
最初の音が出たときの音源と板との距離は L(0)=L
最初の音が板に届く時刻を t11 とする。
この間、音は vst11 だけ進み、
板は 音源方向に vt11 だけ近づくので、
vst11+vt11=L(0)
故に、 t11=L(0)vs+v(7)
この時刻に最初の音の反響音が発生する。
このときの反響音源と観測者の距離は、L(t11) なので、
観測者に到達するまでに要する時間は L(t11)vs
故に、
t1=t11+L(t11)vs(8)
(2)最後(t=1)にだした音の反射音が聞こえる時刻 t2
最後(t=1)の音が出たときの音源と板との距離は L(1) 。
最後の音が板に届く時刻を t21 とする。
この間、音は vs(t21−1) だけ進み、
板は 音源方向に v(t21−1) だけ近づくので、
vs(t21−1)+v(t21−1)=L(1)
故に、 t21=L(1)+vs+vvs+v=L(0)+vsvs+v(9)
この時刻に最初の音の反響音が発生する。
このときの反響音源と観測者の距離は、L(t21)
なので、観測者に到達するまでに要する時間は L(t21)vs
故に、
t2=t21+L(t21)vs(10)
(3)観測者の聞く反響音の周波数
最初の音の反響音から、最後の音の反響音までの時間は,式(8)、(10)から
T:=t2−t1=t21−t11+1vs(L(t21)−L(t11))
=(t2−t1)(1−vvs)=vs−vvs+v
この間にf回の振動があるので、周波数は
˜f=fT=vs+vvs−vf
命題4を、観測者が固定音源にいないで、等速直線運動をしている場合に拡張する。
命題5
原点にある静止音源Oが、周波数 f で同位相の音を四方に出している。
この音源を通る x 軸上を,
観測者 P1 と反射板 P2 がそれぞれ等速 v1、v2 で運動している。
前者の時刻 t の位置を L1(t)=L1,0+v1t と表わし、
後者の時刻 t 位置を L2(t)=L2,0+v2t と表す。
但し,考察時間[0,T]中は、 0<L1(t)<L2(t) と仮定し、
音速は vs とする。
このとき、観測者 P1 が聞く、
反射板 P2 による反射音の周波数は、
˜f=vs+v1vs+v2vs−v2vsf
証明;
記述を簡単にするため、音源は時刻0から一秒間だけ音を出すと仮定する。
この音が反射板で反射し、観測者に聞こえる時間区間
[t0P1,t1P1] を求めよう。
(1) まず、t=0 に音源から出た音が反射して観測者に届く時刻 t0P1 を求めよう。
2段階にわけて計算する。
1)、最初(t=0)の音が反射板で反射する時刻 t0P2 。
音は x 軸の正方向にも速度 vs で進むので、時刻 t0P2 には、
座標 vst0P2 の点に達する。
時刻 t0P2 における反射板の位置は、 L2(t0P2)=L2,0+v2t0P2 なので、
vst0P2=L2,0+v2t0P2
これより、t0P2=L2,0vs−v2
2) 反射音が観測者に届く時刻 t0P1 。
反射板 P2 で反射した音は、x軸 の負方向に vs の速さで進む。
他方、観測者は x軸 の正方向に、速さ v1 で進むので
両者は vs+v1 の速さで近づく。
音が反射した瞬間の、観測者と反射板の距離は L2(t0P2)−L1(t0P2)
そこで、音が反射後、観測者に届くまでにかかる時間は、
L2(t0P2)−L1(t0P2)vs+v1
=(L2,0−L1,0)+(v2−v1)t0P2vs+v1
故に、
t0P1=t0P2+(L2,0−L1,0)+(v2−v1)t0P2vs+v1
=L2,0−L1,0vs+v1+(1+v2−v1vs+v1)t0P2
=L2,0−L1,0vs+v1+vS+v2vs+v1t0P2(a)
(2) t=1 に音源から出た音が反射して観測者に届く時刻 t0P1 を求めよう。
t=0 の時と同様に考えればよいので、概略を示す。
1)t=1 に音源から出た音が反射板に到達する時刻 t1P2 ;
(t1P2−1)vs=L2(t1P2)=L2,0+v2t1P2
を満たす。
これを解くと、
t1P2=L2,0+vsvs−v2
2))t=1 に音源から出た音が反射して観測者に到達する時刻 t1P1 ;
反射した瞬間の観測者と反射板の距離は L2(t1P2)−L1(t1P2)
反射後、反射音が観測者まで届くにに要する時間は L2(t1P2)−L1(t1P2)vs+v1
故に
t1P1=t1P2+L2(t1P2)−L1(t1P2)vs+v1
=(L2,0−L1,0)vs+v1+vs+v2vs+v1t1P2=(L2,0−L1,0)vs+v1+vs+v2vs+v1L2,0+vsvs−v2
(3) 観測者が聞く反射音の周波数
以上から、観測者は
時間間隔 δt:=t1P2−t0P2 の間に
f 回の振動音を聞くことが分かった。
従って、その周波数(振動数) ˜f は、
˜f=fδt=vs+v2vs+v1vsvs−v2f
最後に;ドップラー効果は色々応用範囲が広い現象である。
興味がある方は、命題4を、音源も等速直線運動している場合に拡張してみてください。
(7)音の干渉
音も波なので、波の重ね合わせの原理が成立つ。
そのため一般の波でおこる干渉も起こる。