簿記経理/財務諸表

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目次

概要

 財務諸表は,株主や債権者といった利害関係者に企業の体力(財政状態)や成長力(経営成績)を明らかにするための書類であり,一般的に「決算書」と呼ばれているものである[w5].具体的には,企業が利害関係者に対して一定期間の経営成績や財務状態等を明らかにするために,複式簿記に基づき作成される[w3]

 企業等は,商法その他の法令にしたがって決算を行い,財務諸表(商法上は計算書類と呼ぶ)を作成する義務がある. 決算を行うことで,その事業年度の利益が確定し,株主は利益を配当する,または社内留保して事業に再投資するか,その使い道を株主総会で決定することができる. また,債権者等の利害関係者に企業が債務をどれだけ支払う能力を持っているか,あるいはどれだけ利益を獲得することができたか,といった情報を提供することが可能になる[w5]

商法と証券取引法

 企業等は,商法(及び商法計算書類規則)の規定に基づいて計算書類及び附属明細書という決算書を作成する. すべての企業に作成義務があり,実務を考慮して,企業を大会社・中会社・小会社に区分し,それぞれに応じた開示や監査制度を規定している[w5]

  一方,上場企業や株式店頭上場企業等は,商法のほかに証券取引法に定める財務諸表を作成することになる(この財務諸表を含む書類に有価証券報告書がある).

 商法に定める計算書類との違いは,以下の通り[w5]

  1. 損益計算書がより詳細であり,企業が収益を獲得する能力をどれほど持っているかをより詳しく把握できる
  2. 連結財務諸表が中心で,グループ全体の財政状態や経営成績を知ることができる
  3. 資金の出入りを詳細に記載したキャッシュフロー計算書が含まれている

財務諸表の種類

 財務諸表は, 企業の資産や負債・株主資本を明らかにする貸借対照表, 売上高や経費・その結果としての利益を示す損益計算書, 資金がどのように調達され,どのように運用されたかを表すキャッシュフロー計算書, 配当可能利益をどのように処分したか,残りの利益はいくらかを計算する株主資本等変動計算書, 等から構成される[w5]. (平成H18年施行の会社法の改正により,従来の「利益処分計算書」が廃止され,「株主資本等変動計算書」に変わった)

 注記など副次的な情報とともに開示するのが通常であるが,副次的な情報と区別する意味でこれらの表を特に基本財務諸表と呼ぶこともある. 単一企業について作成する財務諸表を個別財務諸表といい,子会社を含む企業グループを単一の組織体とみなして親会社が作成する財務諸表を連結財務諸表という. また,四半期決算で作成するものを四半期財務諸表及び四半期連結財務諸表という[w3]

貸借対照表(B/S)

 貸借対照表は,企業のある一定時点における資産・負債・純資産の状態を表すために,複式簿記と呼ばれる手法により損益計算書などと同時に作成され, その企業の株主・債権者その他利害関係者に経営状態に関する情報を提供する. また株式会社では,官報・新聞あるいはインターネット上での決算公告が義務付けられており,損益計算書とともに公告される[w6]

 一般的に,開業時・決算時・清算時に作成されるほか,月次で作成されることもある.決算前に,中間貸借対照表を作成する場合もある.

 借方には「資産の部」があり,企業のある時点における資産の額が表示される.一方,貸方は「負債の部」と「純資産の部」に分かれている. それぞれ企業のある時点での負債の額と純資産の額とが記載される. また純資産の部は,株主が最初に投入した資本金及び資本剰余金と,企業活動によりもたらされた利益の蓄積額から配当などで社外に流出した金額を差し引いた利益剰余金などが記載されている.

損益計算書(P/L)

 企業のある一定期間における収益(revenue)と費用(expense)の状態を表すために,複式簿記と呼ばれる手法により貸借対照表などと同時に作成され, その企業の株主や債権者などに経営成績に関する情報を提供する[w7]

 日本の損益計算書の構成について,区分は 会社計算規則第119条に定められている.

  • 売上高(A), 売上原価(B), 売上総利益(または売上総損失)C = A - B
  • 販売費及び一般管理費(D), 営業利益(または営業損失)E = C - D
  • 営業外収益(F), 営業外費用(G), 経常利益(または経常損失)H = E + F - G
  • 特別利益(I), 特別損失(J), 税引前当期純利益(または税引前当期純損失) K = H + I - J
  • 法人税等(L), 法人税等調整額(M), 当期純利益(または当期純損失)N = K - L - M

キャッシュ・フロー計算書(C/F)

 キャッシュ・フロー計算書は,会計期間における資金(現金及び現金同等物)の増減,つまり収入と支出(キャッシュ・フローの状況)を営業活動・投資活動・財務活動ごとに区分して表示する[w8]

 キャッシュ・フロー計算書において,資金とは「現金および現金同等物」を指す. 現金(Cash)とは,手許現金および要求払預金(普通預金や当座預金など)をいう. また現金同等物(Cash equivalents)とは,容易に換金可能であり,かつ価値の変動について僅少なリスクしか負わない短期投資を指す. 具体的には,定期預金(3ヶ月以内のもの),譲渡性預金,コマーシャル・ペーパーなどがこれに含まれる. 現金と現金同等物間での取引は計算書には表示されない[w8]

株主資本等変動計算書(S/S)

 2006年に新会社法が施行される以前は,資本の部(現・純資産の部)の変動状況は個別ベースでは利益処分計算書(利益処分案),連結ベースでは連結剰余金計算書という財務諸表によっていた. しかし会社法で剰余金の処分を定期株主総会以外でも行うことができるようになるなど,時期や方法が大幅に自由度の高いものとなった. そのため,期中の純資産の変動を適切に把握できる必要性から新たに株主資本等変動計算書が作成されることになった[w9]

 株主資本等変動計算書においては,純資産を株主資本,評価・換算差額,新株予約権,非支配株主持分(連結株主資本等変動計算書においてのみ作成)の4つに分けて掲載する. 株主資本の期中の変動額については変動した事由ごとに区分して表示される. 株主資本以外の項目は原則として当期の変動額の純額で表示する. このように株主資本と株主資本以外の項目について扱いが異なるのは,現在の日本の会計基準が投資の成果を表す純利益とそれを生み出す株主資本との関係を重視しているからである[w9]

参考文献

関連項目


演習課題

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