職業家庭/誰もが幸福な人生を追求できる社会とは?

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目次

 誰でも平和で幸福な人生を送る権利がある

 平和とはなに?

以下、平和という言葉は、 
単に戦争や内乱のない状態(消極的平和)をいうのでなく、
  「積極的平和」=戦争の原因となる構造的暴力もない状態
  であることを指します。
 

 幸福な人生とは?

皆さんは、きっと幸福な人生を送りたいと願っていることでしょう。
そんなあなたは、どんな人生を幸福だと考えていますか。
あまり考えたことがないかもしれません。
じつは、どんな人生を幸福と考えるかは人さまざまで、
昔から多くの哲学者がその考えを発表してきました。

平凡社の哲学辞典(1974年)をみると、次のように書かれています。
「幸福
一般に心身の要求がみたされた状態をいうが、要求およびその主体がいかに考えるかによって、色々な相違が生じる。
幸福を個人の感性的要求の満足すなわち快楽と同一視するもの(エピクロス学派,,,)、
消極的に苦痛や不快のない状態、あるいは自足、無欲などの精神的独立の状態を考えるもの(,,,ストア学派)、
自我や人格の全体的、永続的満足とみなすもの(プラトン,,,),
超現世的な宗教的悦楽となすもの(新プラトン派、キリスト教)などである」
(文中の,,,は一部省略を表す)。

もしかすると、上記のいくつかを同時に満たす人生を幸福と考える人もいるでしょう。
あなたも、どんな人生を送りたいか、この学習を機会に考えてみることをお勧めします。
必要ならば、
下記の文献やネット検索で見つけた気に入った記事も参考にしてください。
検索に当たっては、「幸福とはなにか」など、適当と思われるキーワードをいくつか試すとよいです。

 豊かな人生とも良く言うけど 

 誰もが幸福な人生を追求できる社会とは? 

法律のうえでは、、誰でも、どんな夢でも持て、それを追求することが許されても、
自分の夢や幸せな人生をあきらめてしまった人や、初めから、それを持つことすらできない環境で育った方もいるでしょう。
生活費すら事欠く(衣食住さえままならない)、その夢を実現するために必要な学習をするお金がない・時間がない、健康を壊してしまった、自然災害にあってしまった
など色々な理由で、夢を追求することができないならば、絵にかいた餅ですね。
誰でも幸福追求ができるようになれるのには何が必要なのでしょうか。

それには、以下のような社会環境が必要なのです。

 (1)全ての人の人格が認められ、誰でも個人として尊重されること 

もし、すべての人々の個人的人権は認めていなかったり、或る理想や価値観を持つ人々を差別や弾圧する社会ならば、
「誰もが自分の夢を自由に持つ」ことはできず、社会に認められる一部の人しか幸福な人生を追求できなくなってしまいます。
ですから、全ての人の人格が認められ、誰でも個人として尊重されることが、根底的な条件となります。

 人は誰でも個人として尊重されることを合意している国際社会

数千万人の犠牲者をだした第二次世界大戦の反省から、
1945年10月24日、国際連合(以後、国連という)が、51ヵ国の加盟国で設立された[2]。
同日発効した国連憲章において個人の人権の保障が規定され、
その後世界で、人権保障が発展していった。

1948年12月10日の第3回国連総会で採択された世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights、略称:UDHR)は、
すべての人民とすべての国が達成すべき基本的人権についての宣言である。

国際人権規約 は、世界人権宣言の理念実現のため1966年、国連総会で採択された。
社会権規約(A条約)と自由権規約(B規約)からなる。
  日本は1979年に批准した(一部未批准)。
条約と同様の拘束力を持つ。

これ等変化の背景

この発展の背景には、第二次世界大戦後の世界史的大変化の最大のもの、
植民地主義の崩壊がある。
多くの国が独立し、民主主義と人権を掲げる国になっていった。

1945年後の世界の植民地の独立の推移表;

この変化が、民主主義と人権、平和の国際秩序の発展という、世界史的大変化を促進した。

 児童の人権の国際的保障

児童にかんしては、上述した人権保障にくわえて、
親や社会の保護がなければ生存できない児童ならではの権利の保障が必要である。
1959年に子どもの権利を促進する国際文書である「児童の権利に関する宣言」が採択された。

特筆すべきは、この条約で児童は「保護の対象」としてではなく「権利の主体」として扱われていることである。

 (2)非戦(戦争放棄)

国が戦争を始めれば、全ての人々の個人的人権が踏みにじられてしまいます。
それどころか、その地に住む多くの人々の命が奪われます。
個人的な夢の実現、幸福追求は、全くできなくなってしまいます。
非戦は、個人的人権の保障の土台です。

 国連憲章における武力行使の禁止規定と問題点

200828  
 

国際連合の主要な目的の一つは、次のとおり平和の維持、侵略行為の防止・鎮圧である。 
  「 1. 国際の平和及び安全を維持すること。 
  そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と 
  侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること 
  並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整または解決を 
  平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。」

 国連憲章  
 武力行使の禁止規定と問題点 

国連憲章には、個別的自衛権と集団的自衛権が規定されている。

しかし集団的自衛権は米・ソなどの覇権国家によって度々乱用されて侵略行為の口実にされた。

 日本国憲法の戦争放棄・軍隊放棄

 コスタリカの非武装条項と日本国憲法第9条との違い

200828
コスタリカは、憲法で常備軍を置かないことを定めている。
しかし憲法公布以降今日まで軍隊を持っていない。
  憲法で非戦、戦力不保持を定めた日本では、自衛隊という巨大な戦力を持つのとは大違いである。
この違いはどのような理由から生じているか、次の文章を読めばわかるでしょう。

 (3)社会的共通資本が整っていること

以下の社会的共通資本が存在し維持されていること$^{注参照}$ 。

(注) この概念と以下の項目 1)、2)、3)は、
宇沢弘文  社会的共通資本 (岩波新書)2000年11月出版、2014.10.6 第15刷
からの引用である。 

 1)自然環境   

美しく豊かな自然
;大気、水、土壌、森林、河川、湖沼、海洋、沿岸湿地帯など;が、安定的に維持されている。

 2)社会的インフラストラクチャ― 

社会的インフラストラクチャ― ; 道路、交通機関、上下水道、電力・ガスなど、
普通社会資本と呼ばれるものが整備されていること。

 3)制度資本 

制度資本とは、教育、医療、金融、司法、行政などの制度をひろい意味での資本と考えて命名したもの。

① 家族との時間や夢実現のための学習時間が取れる適性時間の労働で、
$ \quad $ 健康で文化的な生活ができる最低限の収入が得られる労働法制。
$ \quad $ 例えば、全国一律の最低賃金が、一日8時間労働でこの額を超えるようになっている。

② 健康的な衣食住が入手できる

③ すべての人が、その能力や資質を伸ばせるように、
$ \ $ 必要時に必要な学習ができる教育環境が整っていること。
$ \quad $ このためには、小学校から大学までの授業料無料化が必要である。
$ \quad $ また、学校以外の多様な教育機関を社会が持つことも必要であろう。
④ 疾病、傷害時に、誰でも高水準の医療サービスを受けられる。
$ \quad $ このためには国民全体を対象とする医療保険制度が必要である。

⑤ 個人的努力だけでは克服困難な事態になっても、社会的に支える制度が整っている
$ \quad $ 例えば、重病、失業、倒産、自然災害、貧困など個人(家族)の危機時に、
$ \quad $ 公的に支える制度が整っていることが必要である。

その他どんな条件が必要か考えてみましょう。

 各国の憲法は、どこまで個人の人権の保障をしているか

先進諸国の多くは、政府の統治を憲法に基づいて行っている。
国民が定めた憲法がさだめる範囲で、政治はその権力を行使できる統治形態である。
これを立憲主義(憲法に立脚する、という意味)という。
これに基づく諸国の憲法は、主に、権力(立法、行政、司法 等の権力者)への国民の命令という性格を持つ。

 日本国憲法 

太平洋戦争前・戦中の日本では、
  「死は鴻毛より軽し」(ウィキペディア(軍人勅諭))と教育され、国民の生命・人権は羽毛より軽んじられた。
日本国・軍は人命を粗末にし、アジア諸国で2000万人ともいわれる多くの人を殺し、
  300万人以上の自国民を死に追いやった。
悲惨な敗戦(1945年)の現実を味わった当時の日本人の多くは、
2度とこのようなことは繰り返さないことを誓い、「国民主権」、「戦争放棄・個人の人権尊重」を日本政府に押し付けた(注参照)。
特筆すべきことは憲法前文で、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と謳っていること。

この憲法前文を具体化するため「第2章 戦争放棄 第9条」で戦争放棄(軍隊の放棄、交戦権の不所持)を定め、
「第3章 国民の権利及び義務」で
国民の諸権利・人権として、
「生命、自由及び幸福追求の権利(憲法13条)」をはじめ数多く保障し、権力側に実行・尊重するよう規定している。
 14条, 15条, 16条, 17条, 18条, 19条, 20条, 21条, 22条, 23条, 24条, 25条, 26条, 27条, 28条, 29条, 31条, 32条, 33条, 34条, 35条, 36条, 37条, 38条, 39条, 40条  
他方、これらの諸権利・自由が侵されないよう、日常的に保持する努力を国民の義務として課している(12条)。
この条文は、憲法前文の
「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。   」という決意を条文として規定したともみられ、
単なる保持義務ではなく、排除権に近い、強い保持義務であるという見方もある。

(注)参考文献
(1)日本国憲法検証 1945-2000 資料と論点 竹前栄治・監修
$\quad $ 第一巻 憲法制定史 - 憲法は押し付けられたか 竹前栄治・岡部史信 著(小学館 2000年)
$\quad $ 195頁~197頁 「日本政府はどのような理由でGHQ草案の受け入れを決めたか」の201頁
(2)9条を活かす日本 伊藤千尋 著(新日本出版社 2018年)
$\quad $「第1章 世界に広がる憲法9条ー日本の世界史的任務」の35頁~56頁 「2節 ひからせるのは私たちだ」

 フランス憲法の人権

フランス憲法は、その前文で国民の人権については、フランス革命時に定めた
下記の人権宣言を準用すると述べている。


 スウェーデン憲法の人権規定

スウェーデン憲法は、4つの基本法からなる。
このため人権規定も分かれて規定されているが、全般的な人権規定は、統治法に設けられている。

統治法に設けられている人権規定は以下の通り。


 中華人民共和国の人権規定


 イラン・イスラーム共和国における人権

 国連「平和への権利宣言」(2016年12月19日総会にて採択)

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