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物理/運動量と力学的エネルギー保存則

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(解説)
(運動量と力学的エネルギー保存則)
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t2t1F(t)dt=p(t2)p(t1)<br/>
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質点に作用する力を時間で積分したt2t1F(t)dtを力積と呼ぶ。<br/>
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質点の運動量の変化に等しいことが分かる。
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力積は、運動量の変化に等しい。
*[[wikibooks_ja:高等学校理科 物理II 力と運動|ウィキブックス(高等学校理科 物理Ⅱ)]] の1.1.2 運動量と力積<br/>
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==運動量保存則( law of conservation of momentum )==
==運動量保存則( law of conservation of momentum )==
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質点の場合、外力がなければ、その運動量は一定なので、保存される。<br/>
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質点の場合、外力がなければ、その運動量は保存される(一定である)。<br/>
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質点系(質点の集まり)の場合でも、質点系に作用する外力のベクトル和が零ならば、<br/>内力(質点系内の質点間に働く力)があっても、運動量が保存されることが分かる(注)。<br/>
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質点系(質点の集まり)の場合でも、質点系に作用する外力のベクトル和が零ならば、<br/>内力(質点系内の質点間に働く力)があっても、運動量が保存されることが示せる。(注)<br/>
これを'''運動量保存則'''とよぶ。
これを'''運動量保存則'''とよぶ。
*[[wikipedia_ja:運動量保存の法則|ウィキペディア(運動量保存の法則)]]
*[[wikipedia_ja:運動量保存の法則|ウィキペディア(運動量保存の法則)]]
(注)質点系の各質点の位置をri、質量をmiとし、<br/>
(注)質点系の各質点の位置をri、質量をmiとし、<br/>
質点mi に作用する外力をfi、<br/>
質点mi に作用する外力をfi、<br/>
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mi に、他の質点mjから作用する内力をfijとする(i,j=1N)。<br/>
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すると、各質点に対して、運動の第2法則により、<br/>
すると、各質点に対して、運動の第2法則により、<br/>
dpi(t)dt=fi+jifij  <br/>
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==運動エネルギー(kinetic energy)==
==運動エネルギー(kinetic energy)==
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運動エネルギーを学ぶ前にエネルギーと仕事について理解しましょう。
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運動エネルギーを学ぶ前に仕事とエネルギーについて理解しよう。
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===仕事とは何か===
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*[[wikipedia_ja:仕事 (物理学)|ウィキペディア(仕事 (物理学))]]
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===エネルギーとは何か===
===エネルギーとは何か===
*[[wikipedia_ja:エネルギー|ウィキペディア(エネルギー)]]
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===仕事とは何か===
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*[[wikipedia_ja:仕事|ウィキペディア(仕事)]]の力学での仕事の項
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===仕事の量の求め方===  
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===力が変動したり、物体の移動が曲線であるときの仕事===  
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力、 $ \vec{F} $が一定で物体が直線的に ''P'' から ''Q'' に変位するときは前記の説明から力のなした仕事 ''W'' は、内積 を用いて、 W=FPQ で表せることが分かる。内積については
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物体に力 Fを作用させ、<br/>
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直線的に ''P'' から ''Q'' に変位させるとき、力のなした仕事 ''W'' は、<br/>
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内積 を用いて、<br/>
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で表せる。内積については
*[[wikibooks_ja:高等学校数学B ベクトル|ウィキブックス(高等学校数学B ベクトル)]] の1.1.6~ 1.1.8を参照のこと。
*[[wikibooks_ja:高等学校数学B ベクトル|ウィキブックス(高等学校数学B ベクトル)]] の1.1.6~ 1.1.8を参照のこと。
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力を受けた時の物体の運動は直線とは限らないが、運動の軌跡を細かく区切って眺めると、線分に近いので、今後物体の変位は、線分をつなぎ合わせたものと考える。すると各線分毎に仕事を計算しそれをたせば、全体の仕事量を求めることができる。
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力が向きや大きさを変えたり、<br/>
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仕事をどのように決めたらよいだろうか。<br/>
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運動の軌跡(向きつき曲線C)を細かく区切ってn個の小部分に分けると、<br/>
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小部分を細かくしていったときの極限<br/>
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を力のなす仕事と定義する。<br/>
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軌跡が連続で、<br/>
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力が時間とともに連続的に変化したり、有限個の不連続点がある場合、<br/>
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この極限は存在することが数学的に証明できる。<br/>
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興味ある方は、付録2可積分条件をご覧ください。<br/>
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===運動エネルギー===
===運動エネルギー===

2015年2月7日 (土) 11:00時点における版

物理運動量と力学的エネルギー保存則

目次

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運動量と力学的エネルギー保存則

質点や質点の集まりの運動を調べるときに有用な
各種の保存法則が、運動の法則から導かれる。
導出の仕方が理解できると、力学への理解が深まる。
下記の記事以外にも、導出法をインターネット検索して調べ、よく考えよう。

運動量と力積 (momentum or linear momentum and Impulse)

質点に力\vec{F}(t)が作用しているとする。
運動の第2法則\vec{F}(t)=\frac{d\vec{p}(t)}{dt} の両辺を
時間に関してt_1から t_2まで積分してみよう。ここで\vec{p}(t)=m\vec{v}(t)は質点の運動量。
すると、
\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)dt=\vec{p}(t_2)-\vec{p}(t_1)
となる。
質点に作用する力を時間で積分した\int_{t_1}^{t_2}\vec{F}(t)dtを力積と呼ぶ。
力積は、運動量の変化に等しい。

n個の質点を持つ質点系の運動量は、各質点の運動量の和で定義する。
この場合にも質点系への力積は質点系の運動量の変化に等しいことが、
運動の第2法則から導ける。

運動量保存則( law of conservation of momentum )

質点の場合、外力がなければ、その運動量は保存される(一定である)。
質点系(質点の集まり)の場合でも、質点系に作用する外力のベクトル和が零ならば、
内力(質点系内の質点間に働く力)があっても、運動量が保存されることが示せる。(注)
これを運動量保存則とよぶ。

(注)質点系の各質点の位置を\vec{r_i}、質量をm_i とし、
質点m_i に作用する外力を\vec{f_i}
m_i に、質点系の他の質点m_j から作用する内力を\vec{f_{ij}}とする(i,j=1 \ldots N)。
すると、各質点に対して、運動の第2法則により、
\frac{d\vec{p}_i(t)}{dt}=\vec{f_i}+\sum_{j\neq i}\vec{f_{ij}}  
各ベクトルを自由ベクトルとみなして,上の式をi=1 \ldots Nについて加え合わせると、
\sum_i{\vec{f_i}}=0 \qquad \vec{f_{ij}}+\vec{f_{ji}}=0(作用反作用の法則)なので、
\frac{d}{dt} \sum_i{\vec{p}_i(t)} =0
が得られる。ゆえに、\sum_i{\vec{p}_i(t)}は保存される。

運動エネルギー(kinetic energy)

運動エネルギーを学ぶ前に仕事とエネルギーについて理解しよう。

仕事とは何か

エネルギーとは何か


力が変動したり、物体の移動が曲線であるときの仕事

物体に力 \vec{F}を作用させ、
直線的に P から Q に変位させるとき、力のなした仕事 W は、
内積 \cdot を用いて、
W=\vec{F}\cdot\vec{PQ}  
で表せる。内積については

力が向きや大きさを変えたり、
物体が動ける範囲が制約され直線的に動けないときは、
仕事をどのように決めたらよいだろうか。
運動の軌跡(向きつき曲線C)を細かく区切ってn個の小部分に分けると、
この小部分では力はほぼ一定で、
しかも形状は線分に近い。
そこで、
i番目の小部分上で、力を一定値\vec{{F^n}_i}で近似し、
i番目の小部分を向きつき線分\vec{{P^n}_{i-1}{P^n}_i}で近似する。
すると、この小部分の移動で力のなした仕事は
{W^n}_i=\vec{F^n}_i\cdot \vec{{P^n}_{i-1}{P^n}_i } 
で近似できる。
これをすべて加えた
W^n=\sum_{i=1}^{n}{W^n}_i
は、力のなした仕事の近似値を与えると考えられる。
そこで、分割数nをどんどん増やし、
小部分を細かくしていったときの極限
W=\lim_{n\to \infty}W^n
を力のなす仕事と定義する。
軌跡が連続で、
力が時間とともに連続的に変化したり、有限個の不連続点がある場合、
この極限は存在することが数学的に証明できる。
興味ある方は、付録2可積分条件をご覧ください。


運動エネルギー

この説明をよんで、何故 \frac{1}{2}mv^2 が運動エネルギーと定義されたのかを考えて理解しましょう。

仕事エネルギー定理(work-energy theorem)

物体に力 F を作用して P 点から Q 点に動かした時の運動エネルギーの変化量 \frac{1}{2}mV(Q)^2 - \frac{1}{2}mV(P)^2 は、その物体に加えられた仕事量 W (=FPQ)に等しいことを主張する定理です。運動の第2法則の両辺を、この物体の軌道 PQ にそって積分すると得られます。

保存力と位置エネルギーおよび力学的エネルギー保存則

保存力と位置エネルギーあるいはポテンシャルエネルギー

物体に力 \vec{F} が作用しているとする。この力で物体を P 点から Q 点に動かす時、この力の行う仕事が移動経路に関係なく2点の位置だけで決まる時、この力を保存力(conservative force ) と言い、
この仕事の量を、Q 点を基準とした P 点でのこの物体の位置エネルギー(あるいはポテンシャルエネルギー potential energy)と言う。


保存力は次のように言いかえることができる。物体にかかる力 \vec{F}  に逆らって、力 -\vec{F}+\delta を加えて、物体をQ 点から P 点に動かす時、この力 > -\vec{F} の行う仕事が移動経路に関係なく2点の位置だけで決まる時、力 \vec{F} を保存力という。ここで力 -\vec{F} は、物体に作用する力 \vec{F} とつり合いをとるための力であり、力 \delta は、力がつりあって静止する物体を、移動経路に沿って、無限にゆっくりと動かすのに必要な、無限に小さい力である。このため \delta のなす仕事は零とみなせる。

を参照のこと。

 保存力の十分条件 

質点Aが質点Bに力  \vec{F_{A}(B)} を及ぼしているとする。
その力の方向が2質点を結ぶ直線方向の引力あるいは斥力で、大きさが2点間の距離で決まると仮定する。この仮定を数式で書こう。質点A,Bの位置ベクトルを  \vec{P_{A}}, \vec{P_{B}} と表すと、 \vec{F_{A}(B)} =f(||\vec{P_{B}}- \vec{P_{A}} ||) \times (\vec{P_{B}}-\vec{P_{A}})/||\vec{P_{B}}- \vec{P_{A}} || 。 ここで< f は任意の関数。
この時、この力 \vec{F_{A}(B)} >は保存力になる。
証明。質点BをP点から、経路Cに沿って、Q点まで動かすときの仕事が、経路Cに無関係であることを示せばよい。簡単にするため、質点Aと経路Cは同一平面に含まれると仮定し、この平面上で議論する。
経路Cを質点Aを中心とする円弧の一部と質点Aに向かう線分を交互につなぐ線で、つぎのように、近似する。 
ⅰ)P点からQ点まで向かう経路Cの長さをn等分する点を P_0=P,P_1,\ldots,P_n=Q とする。 
ⅱ)質点Aを中心とし、 P_0 を通る円と、質点Aと P_1 を結ぶ直線の交点を P_{0}' とし、経路Cの P_0 P_1 の間を、この円の弧 (P_0,P_{0}') と線分 [P{0}',P_1 ] で近似する。
ⅲ)経路Cの P_1 P_2 の間も同様に、質点Aを中心とする円弧 (P_1,P_{1}') と線分 [P_{1}',P_2 ] で近似する。 ⅳ)以下同様にして、経路Cの P_{n-1} P_{n}=Q の間を、質点Aを中心とする円弧 (P_{n-1},P_{n-1}') と線分[P_{n-1}',P_n]で近似する。

等分数nを大きくすると、この近似経路にそって移動する時の力のなす仕事は、経路Cに沿った移動の仕事と殆ど同じになり、\lim_{n \to \infty}のとき一致する。 近似経路のうち質点Aを中心とする円弧を動く時の力のなす仕事は、零となる(力の方向が2質点を結ぶ直線方向の引力あるいは斥力なので、移動経路と常に直交するから)。 次に、近似経路のうち、質点Aを通る直線上を動く経路の仕事を計算しよう。 線分[P_{i-1}',P_i ],i=1,2,,,nという経路を、質点AとP点を結ぶ直線l に含まれる線分に、次のように移し替える。 ⅰ)質点Aを中心とし点P_iを通る円と直線l との交点を P_{i}'',i=1,2,,,n とおき、 P_{0}=P とおく。 ⅱ)線分[P_{i-1}',P_i ],i=1,2,,,nを直線l 上の線分[P_{i-1}'',P_{i}'' ],i=1,2,,,nでおきかえる。
すると力に関する仮定から、線分[P_{i-1}',P_i ]での移動にさいして力のなす仕事は、線分[P_{i-1}'',P_{i}'' ]での移動のとき力のなす仕事に等しい。
従って任意の経路Cにそって移動するときに力のなす仕事は、常に、線分[P,P_{n} ]にそって移動するとき、力のなす仕事に等しい。(証明終わり) 問:質点Aを固定する。この質点が他の質点に及ぼす重力は保存力であることを確かめてください。 ==== ポテンシャルから力を求める方法 ==== 保存力\vec{F}(未知)の、ある基準点Qから見たポテンシャルエネルギー\phiが既知の時、\vec{F}を、\phiから求めることができる。 Q点を原点とする直交座標系を1つ固定する。この力で、質点を 位置ベクトル\vec{r} の点から、位置ベクトル\vec{r}+(\Delta_{x},0,0) の点まで動かす時(\Delta_{x}は微小にとる。するとこの間の力は一定値\vec{F}(r)で近似できる)、力のする仕事は、ほぼ \vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}である。すると、\phi(\vec r)+\vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}は、質点を原点から位置ベクトル\vec{r} の点まで動かし、引き続いて位置ベクトル\vec{r}+(\Delta_{x},0,0) の点まで動かす時の、力のなす仕事になるので、保存力であることから、\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0)) にほぼ等しい。従って\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0))\simeq \phi(\vec r)+\vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x} 故に \lim_{\Delta_{x} \to \0}\frac{\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0))-\phi(\vec r)}{\Delta_{x}}=\vec{F}_{x}(\vec{r});力のx成分。
同様にして
\lim_{\Delta_{y} \to \0}\frac{\phi(\vec r+(0,\Delta_{y},0))-\phi(\vec r)}{\Delta_{y}}=\vec{F}_{y}(\vec{r});力のy成分。 \lim_{\Delta_{z} \to \0}\frac{\phi(\vec r+(0,0,\Delta_{z}))-\phi(\vec r)}{\Delta_{z}}=\vec{F}_{z}(\vec{r});力のz成分。

力学的エネルギーと力学的エネルギー保存則(kinetic energy and conservation of kinetic energy )

力学的エネルギーは

を見てください。
仕事エネルギー定理の仕事量W(=\vec{F}\cdot\vec{PQ} 。 ここで\vec{PQ} は変位ベクトル)をきめる力\vec{F}が 保存力\vec{Fc}と外力\vec{Fo}の和からなるとき、
W=(\vec{Fc}+\vec{Fo})\cdot\vec{PQ}=\vec{Fc}\cdot\vec{PQ} +\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}
=Pのポテンシャルエネルギー(U(P)-U(Q))+\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}となる。
一方仕事エネルギー定理から、W=\frac{1}{2}m{V(Q)}^2-\frac{1}{2}m{V(P)}^2なので、この両式から、
\left(\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)\right)-\left( \frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P)\right)=\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}が得られる。
もし保存力以外の力\vec{Fo} が零ならば、\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)=\frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P) (力学エネルギー保存則)が得られる。
もっと知りたい方は次をどうぞ。


エネルギー保存則は物理学のなかで最も基本的な原理です。
熱エネルギーも含めたもっと一般的なエネルギー保存則は、後の章で学びます。

保存則の応用

衝突の問題

2質点の衝突

質点の壁との衝突

力学に必要な物理量(時間、距離、速度、加速度、質量、力)の単位と単位変換

CAIテスト

個人用ツール