物理/音と音波
提供: Internet Web School
(→(5)ドップラー効果) |
(→(5)ドップラー効果) |
||
252 行: | 252 行: | ||
この間にf回の振動が観測されるので、一秒間あたりの振動数(周波数)は<br/> | この間にf回の振動が観測されるので、一秒間あたりの振動数(周波数)は<br/> | ||
$\frac{f}{t_2-t_1}=\frac{v_s}{v_s-v}f$<br/><br/> | $\frac{f}{t_2-t_1}=\frac{v_s}{v_s-v}f$<br/><br/> | ||
- | |||
- | |||
'''命題2'''<br/> | '''命題2'''<br/> | ||
静止音源が周波数fの音を出している。<br/> | 静止音源が周波数fの音を出している。<br/> | ||
261 行: | 259 行: | ||
観測者が音源を通り過ぎた瞬間に、観測音の周波数は急減し、 | 観測者が音源を通り過ぎた瞬間に、観測音の周波数は急減し、 | ||
$\tilde{f}=\frac{v_s-v}{v_s}f \qquad \qquad (5')$<br/> | $\tilde{f}=\frac{v_s-v}{v_s}f \qquad \qquad (5')$<br/> | ||
- | に変わる。<br/><br/> | + | に変わる。<br/> |
+ | 注を参照のこと。<br/><br/> | ||
証明<br/> | 証明<br/> | ||
- | 音源から一秒間(時刻0から、時刻1まで) | + | 音源から一秒間(時刻0から、時刻1まで)だけ周波数 f の音を出すとする。<br/> |
このときの観測者と音源の距離を L とおく。<br/> | このときの観測者と音源の距離を L とおく。<br/> | ||
- | + | すると、速さ v で音源に近づく観測者が、<br/> | |
$\quad $ 最初の音を聞く時間 $t_1$ は、<br/> | $\quad $ 最初の音を聞く時間 $t_1$ は、<br/> | ||
$\qquad $ $L-vt_1=v_s t_1$<br/> | $\qquad $ $L-vt_1=v_s t_1$<br/> | ||
282 行: | 281 行: | ||
色々なケースを統一的に扱うため、空気が静止して見える一次元の慣性座標系を | 色々なケースを統一的に扱うため、空気が静止して見える一次元の慣性座標系を | ||
用いる。<br/><br/> | 用いる。<br/><br/> | ||
- | + | (注); 音源が動き、観測者が静止している場合(命題1)と結果が異なることに注意が必要である。<br/> | |
+ | その理由を考えると面白い。<br/><br/> | ||
+ | 音源も、観測者も、ある直線上を等速運動する場合に、そのドップラー効果を調べよう。<br/> | ||
'''命題3'''<br/> | '''命題3'''<br/> | ||
- | + | 音源は、周波数(振動数) $f$ の音を出しながら、x軸上を速度 $v$ で等速運動している。<br/> | |
観測者はx軸上を速度 $u $ で等速運動している。<br/> | 観測者はx軸上を速度 $u $ で等速運動している。<br/> | ||
(1)観測者が音源の負側にいる場合<br/> | (1)観測者が音源の負側にいる場合<br/> | ||
315 行: | 316 行: | ||
証明終わり<br/><br/> | 証明終わり<br/><br/> | ||
(注)この命題から、観測者が音源とすれ違うか追い越すと、その瞬間に観測周波数は急変することが分かる。<br/><br/> | (注)この命題から、観測者が音源とすれ違うか追い越すと、その瞬間に観測周波数は急変することが分かる。<br/><br/> | ||
- | + | 最後に、超音波による血流速度の測定などに応用される命題を説明する。<br/><br/> | |
'''命題4'''<br/> | '''命題4'''<br/> | ||
412 行: | 413 行: | ||
従って、その周波数(振動数) $\tilde{f}$ は、<br/> | 従って、その周波数(振動数) $\tilde{f}$ は、<br/> | ||
$\tilde{f}=\frac{f}{\delta t}=\frac{v_s+v_2}{v_s+v_1}\frac{v_s}{v_s-v_2}f$<br/><br/> | $\tilde{f}=\frac{f}{\delta t}=\frac{v_s+v_2}{v_s+v_1}\frac{v_s}{v_s-v_2}f$<br/><br/> | ||
+ | 最後に;ドップラー効果は色々応用範囲が広い現象である。<br/> | ||
+ | 興味がある方は、命題4を、音源も等速直線運動している場合に拡張してみてください。 | ||
==='''(7)音の干渉'''=== | ==='''(7)音の干渉'''=== | ||
音も波なので、波の重ね合わせの原理が成立つ。<br/> | 音も波なので、波の重ね合わせの原理が成立つ。<br/> | ||
そのため一般の波でおこる干渉も起こる。<br/> | そのため一般の波でおこる干渉も起こる。<br/> |
2016年9月4日 (日) 01:49時点における版
目次 |
音と音波
音波とは、狭い意味では、空気の粗密の振動が伝わっていく縦波である。
広義には、気体、液体、固体の中を伝わる縦波(粗密波)を音波という。
音波は波なので、反射、屈折、回折、干渉など、波に共通する特有の性質をもつ。
そのため、「4.1 波の性質」で述べたことは、すべて成立する。
音波の伝わり方
音波の速さ
乾燥した空気をつたわる音波の速さ $V$ は
空気温度 t℃ が高くなると早くなり、
$V=331.3+0.6 t \qquad \qquad (1)$
で表せる(注参照)。
液体や固体中の音波の速さは、空気中よりずっと大きい。
音速の測定や理論研究の歴史、種々の媒質中の音速については、
を参照のこと。
(注) 空気は静止していると仮定している。
一定速度で動く空気中では、
その空気に対する音の相対速度が、式(1)で表される。
音の3要素
音の3要素 とは次の3つである。
(1)音の高さ;
振動数の高い音ほど、高音に聞こえる。
1オクターブ高い音とは、振動数が2倍になることをいう。
ちなみに、人間の耳に聞こえる音は、振動数が20Hzから2万Hzの音である。
可聴音という。
(2)音の強さ;
音には強く聞こえる音と弱く聞こえる音がある。
音の強弱は、媒質の密度、波の振幅と振動数によって決まる。
媒質密度と振動数が同じならば、振幅の大きな音ほど強く聞こえる。
(3)音色;
発音体が違うと振動数と強さが同じ音でも、音の感じが違う。
これを音色あるいは、ねいろという。
波の多くは、波形が正弦関数で表せないので、
振動数や振幅が同じでも、波形が異なるため音色が異なる。
音の性質
以下の(1)から(7)までの音の性質については、
- [[wikibooks_ja:高等学校理科 物理I 波/音波と振動|高等学校理科 物理I 波/音波と振]動]で学んでください。
以下には、簡単に要点を補足をします。
この節では、座標系を考えるときは、空気が静止してみえる慣性座標系を用いる。
(1)音のうなり
振動数(周波数)がわずかに異なり、変位の方向が等しい2つの音波(波)が干渉して、
振動数が中間とみなせ、
振幅がゆっくり周期的(振動数は2つの音波の振動数の差に等しい)に変わる合成波を生ずる現象を言う。
音声波では、ウォーンウォーンという、うなりに似た音に聞こえるため、「うなり」と言われる。
一般の波でも、うなりは当然生じる。
うなりに関する命題
2つの波の変位の方向が同じなので、その方向を、変位量の座標軸(y軸)に選ぶ。すると
音源1と音源2からの正弦波を個別に、ある地点Aで観測すると、
その変位量は,時刻原点を適切に選べば、
$y_1=A_1\sin (2\pi \nu _{1}t)$
$y_2=A_2\sin (2\pi \nu _{2}t+\theta)$
と書ける。
ここで、 $|\nu _{1}-\nu _{2}|$ は微小数。
この2つの波が同時にA地点にくる場合、その合成波は次の命題で与えられる。
命題
適切に時間の原点を選び、
$\nu:=\frac{\nu _{1}+\nu _{2}}{2}$、 $\Delta:=\frac{\nu _{1}-\nu _{2}}{2}$ とおけば、
$y(s):=y_1(s)+y_2(s)$
$=\sqrt{A_{1}^2+A_{2}^2+2A_1A_2\cos{(2\pi 2\Delta s+2\xi_1)}}
\sin (2\pi \nu s+\xi) \qquad (a)$
ここで、$\xi_1=\frac{\nu+\Delta}{2\Delta}\theta \qquad (b) $
$\qquad \xi$ は、
$\qquad \tan \xi=\frac{(A_1-A_2)\sin (2\pi \Delta s+\xi_1)}{(A_1+A_2)\cos (2\pi \Delta s+\xi_1)}\qquad (c)$
で与えられる。
注を参照のこと。
証明;
$\nu_1=\nu+\Delta,\quad \nu_2=\nu-\Delta$ なので、
$y_1=A_1\sin (2\pi \nu _{1}t)=A_1\sin (2\pi \nu t + 2\pi \Delta t)$
$y_2=A_2\sin (2\pi \nu _{2}t +\theta)=A_2\sin (2\pi \nu t - 2\pi \Delta t +\theta)$
両者の初期位相角が、絶対値が等しく、逆符号になるよう、時間の原点を変えよう。
そのため、時間原点を a だけ移動させた時間を s とおくと、$t=s+a$ 。
これを、上の2つの式に代入して、変形すると
$y_1=A_1\sin \left(2\pi \nu s +2\pi \Delta s+(2\pi \nu a+2\pi \Delta a)\right)$
$y_2=A_2\sin \left(2\pi \nu s -2\pi \Delta s+(2\pi \nu a-2\pi \Delta a +\theta)\right)$
初期位相条件を満たすような a を求めるため、
$(2\pi \nu a+2\pi \Delta a)=-(2\pi \nu a-2\pi \Delta a +\theta)$
とおき、a を求めると、$a=\frac{-\theta}{4\pi \nu}$
すると、それぞれの初期位相は、
$\xi_1=(2\pi \nu +2\pi \Delta )\frac{-\theta}{4\pi \nu}=-\frac{\nu+\Delta}{2\nu}\theta $
$\xi_2=-\left((2\pi \nu -2\pi \Delta)\frac{-\theta}{4\pi \nu} +\theta\right)=-\xi_1$
このため、
$y_1=A_1\sin{\left(2\pi \nu s +(2\pi \Delta s+\xi_1)\right)}$
$y_2=A_2\sin{\left(2\pi \nu s -(2\pi \Delta s+\xi_1)\right)}$
これら2式に、三角関数の加法定理を適用すると、
$y_1=A_1\sin{\left(2\pi \nu s +(2\pi \Delta s+\xi_1)\right)}$
$=A_1\sin{(2\pi \nu s)} \cos{(2\pi \Delta s+\xi_1)}+A_1\cos{(2\pi \nu s)} \sin{(2\pi \Delta s+\xi_1)}$
$y_2=A_2\sin{(2\pi \nu s)} \cos{(2\pi \Delta s+\xi_1)}-A_2\cos{(2\pi \nu s)} \sin{(2\pi \Delta s+\xi_1)}$
従って
$y=y_1+y_2$
$=(A_1+A_2)\sin{(2\pi \nu s)} \cos{(2\pi \Delta s+\xi_1)}+(A_1-A_2)\cos{(2\pi \nu s)} \sin{(2\pi \Delta s+\xi_1)} \qquad (d)$
最後に、この右辺が $A,\quad \xi$ を適切に決めれば $A\sin{(2\pi \nu s+\xi)}$ と表現できることを示そう。
$A\sin{(2\pi \nu s+\xi)}$
を加法定理を適用して書き直すと
$A\sin{(2\pi \nu s+\xi)}=A\sin(2\pi \nu s) \cos(\xi) +A\cos(2\pi \nu s) \sin(\xi)$
この式を、式 (d) と比較すると
$A\cos \xi=(A_1+A_2)\cos(2\pi \Delta s+\xi_1)$
$A\sin \xi=(A_1-A_2)\sin(2\pi \Delta s+\xi_1)$
この2つの式から、式(c)が得られる。
さらに、$\sin^{2}x +\cos^{2}x=1$ を用いて $A^2$ を計算すると、
$A^2=(A_1+A_2)^{2}\cos^{2}(2\pi \Delta s+\xi_1)+(A_1-A_2)^{2}\sin^{2}(2\pi \Delta s+\xi_1)$
$=(A_1+A_2)^{2}\cos^{2}(2\pi \Delta s+\xi_1)+(A_1-A_2)^{2}\left(1-\cos^{2}(2\pi \Delta s+\xi_1)\right)=(A_1-A_2)^{2}+4A_1A_2\cos^{2}(2\pi \Delta s+\xi_1)$
$\quad $ ここで、加法定理から$\cos(2x)=\cos(x+x)=\cos^{2}x-\sin^{2}x=2\cos^{2}x-1$ なので、 $2\cos^{2}x=1+\cos(2x)$
この式を用いると
$A^2=(A_1-A_2)^{2}+4A_1A_2\cos^{2}(2\pi \Delta s+\xi_1)$
$=(A_1-A_2)^{2}+2A_1A_2(1+\cos(2\pi 2\Delta s+2\xi_1)$
$=A_{1}^2+A_{2}^{2}+2A_1A_2\cos(2\pi 2\Delta s+2\xi_1)$
これでAを得る。
(注)$A_1 \neq A_2$ のときは、
$\quad \tan{\xi}=\frac{(A_1-A_2)\sin{(2\pi \Delta s+\xi_1)}}{(A_1+A_2)\cos{(2\pi \Delta s+\xi_1)}}\qquad (c)$
から、$\xi$ は時刻 s とともに振動する。
このため、合成波の形は振動数 $\nu$ の正弦波からずれる。
このずれは、$A_1$と $A_2$ が近いほど小さくなる。
$A_1=A_2$ のときは、式cから、$\xi=0$ となり、式 a は、
$y_1+y_2=\sqrt{A_{1}^2+A_{2}^2+2A_1A_2\cos{(2\pi 2\Delta s+2\xi_1)}}
\sin{(2\pi \nu s)} \qquad (a')$
となるので、
合成波は、振動数 $\nu $ の正弦波が振幅をゆっくり周期的に変動させる波になる。
これより2つの正弦波の合成波は、
両者の振動数が近く、両者の振幅も近いならば、
「振動数(周波数)が2つの元の波の振動数の中間で、
その振幅が 振動数 $|2\Delta|=|\nu _{1}-\nu _{2}|$ で振動する波形」
に近いことが分かる。
これにより、ウォーンウォーンという、うなりを生じる理由が理解できる。
(2)発音体の振動(その1)。弦の固有振動
張った弦をこすったり、はじいて振動させると、波が起き、両側に進行し、固定端で反射する。
反射波と進行波は重なり合って合成波である定常波ができる(注参照)。
弦は、図の実線と点線の間を往復運動する。
弦の両端は固定され振動しないので、定常波の節になる。
この定常波の振動を、弦の固有振動、その振動数を固有振動数という。
ファイル:GENPHY00010402-01.pdf
(2-1)定常波の波長
両端の変位が零であることから、定常波動の波長 $\lambda$ と弦の長さ $l$ の間には次の関係が成立つことが分かる。
$l=\frac{\lambda}{2}n,\quad (n=1.2,3,,,)$ 変形すると
$\lambda=\frac{2l}{n},\quad (n=1.2,3,,,)$
ここで、nは定常波の腹の数。
上の式から、$\lambda$ は n の関数であることがわかるので、$\lambda_n$ とかく。
すると
$\lambda_n=\frac{2l}{n},\quad (n=1.2,3,,,) \qquad \qquad (2)$
腹の数が1の固有振動を基本振動(1倍振動)、$n \geq 2$の固有振動を、n倍振動と呼ぶ。
進行波の速さをVとし、n倍振動数を $f_n$ 、その波長を$\lambda_n$ とかくと、
$V=f_n \lambda_n$
$f_n =\frac{V}{2l}n \quad (n=1.2,3,,,) \qquad \qquad (3)$
が成立つ。
(注)「1.4.6.3 定常波と進行波」を参照のこと。
(2-2)弦を伝わる波の速さ
未完
(3)発音体の振動(その2) 気柱の振動
細長い管の中の柱状の空気のことを気柱という(注参照)。
管中の波は、その両端で反射し、元の波と反射波は重ねあって合成波をつくる。
この合成波は定常波になる。
その波長や周波数(振動数)は、ある固有の値しか取れない。
これらについて学ぶ。
波の変位量としてなにを用いているかで、同じ端でも自由端にも固定端にもなるので注意してください。
(注)管の断面の大きさが音波の波長に比べて小さいと、
管のなかの音波は、管の軸に沿って進む平面波になる。
気柱ではこのような波を扱う。
参考文献;
ウィキブックス(高等学校理科 物理I 波/音波と振動 1.3 気柱の振動)
$\quad $(3.1) 気柱の固有振動
以下では、管の長さを $l$ ,音速を $V_s$ で表す。
$\qquad $(3.1.1) 閉管の場合
図を参照のこと。
ファイル:GENPHY00010402-022.pdf
$\qquad \quad $ 閉管とは、一方が閉じ他端が開放されている音響管のこと。
$\qquad \quad $ この管の定常波は、片方の端が腹で他端が節になる。
$\qquad \quad $ 音を空気の位置の振動とみると、閉端は固定端で定常波の節、開放端は自由端で、定常波の腹になる。
$\qquad \quad $ 疎密波と考えると、閉端は自由端で定常波の腹、開放端は固定端で定常波の節になる。
$\qquad \quad $ 波長が最も長い定常波は、
$\qquad \quad $ 一方の端が腹で他端が節になり、他に腹も節もない波であり、
$\qquad \quad $ 基本振動という。この定常波は、気柱の長さ l の中に$\frac{1}{4}$ 波長あるので、
$\qquad \quad $ 波長は $\lambda_1=4l$,周波数は $f_1=\frac{V_s}{\lambda_1}=\frac{V_s}{4l}$ である。
$\qquad \quad $ 波長が2蕃目に長い定常波は、
$\qquad \quad $ 節である固定端から $\frac{2l}{3}$ の所にも節をもち、この間は波長の2分の一、
$\qquad \quad $ 残りの部分に波長の4分の一があるので、
$\qquad \quad $ 気柱部分は $\frac{3}{4}$ 波長である。
$\qquad \quad $ 故に波長は $\lambda_2=\frac{4l}{3}$,周波数は$f_2=\frac{V_s}{\lambda_2}=\frac{3V_s}{4l}=3f_1$で3倍振動である。
$\qquad \quad $ 一般にn($\geq 1$)番目の振動は、長さlの気柱の中に
$\frac{1}{2}(n-1)+\frac{1}{4}=\frac{2n-1}{4}$ 波長分あるので、
$l=\frac{\lambda_{n}}{2}(n-1) +\frac{\lambda_{n}}{4} \qquad \qquad (a)$
$\qquad \quad $ ここで、$\lambda_n$ はこの定常波の波長、$\frac{\lambda_{n}}{2}$ は、節と節の間の距離(=腹と腹の距離)を表す。
$\qquad \quad $ 故に波長 $\lambda_n=\frac{4l}{2n-1}$、 周波数 $f_n=\frac{V_s}{\lambda_n}=\frac{(2n-1)V_s}{4l}=(2n-1)f_1$ で,(2n-1)倍振動。
$\qquad$(3.1.2) 開管の場合
図を参照のこと。
ファイル:GENPHY00010402-03.pdf
$\qquad \quad $ 開管とは、両端とも開放された音響管のこと。
$\qquad \quad $ 波を空気の位置の振動とみると、両端は自由端であり、
$\qquad \quad $ この管の定常波は、両方とも腹になる。
$\qquad \quad $ 波を粗密波とみると、両端は固定端であり、
$\qquad \quad $ この管の定常波は、両方とも節になる。
$\qquad \quad $ 波長が最も長い定常波は、腹(ないし節)が両端にだけあるもので、
$\qquad \quad $ 基本振動と呼ぶ。長さlの気柱中に2分の一波長あるので、
$\qquad \quad $ 波長は $\lambda_1=2l$、周波数(振動数)は $f_1=\frac{V_s}{\lambda_1}=\frac{V_s}{2l}$である。
$\qquad \quad $ 2番目に波長の長い定常波は、両端と管の真中に腹(あるいは節)がある波で、
$\qquad \quad $ 波長は $\lambda_2=l$、周波数は $f_2=\frac{V_s}{\lambda_2}=\frac{V_s}{l}=2f_1$であり、2倍振動という。
$\qquad \quad $ 一般にn($\geq 1$)番目の振動は、長さlの気柱の中に
$\frac{1}{2}n$ 波長分あるので、
$\qquad \quad $ $l=\frac{1}{2}n\lambda_n \qquad \qquad (b)$
$\qquad \quad $ 故に、波長は $\lambda_n=\frac{2l}{n}$ ,周波数は $f_n=\frac{nV_s}{2l}$ でn倍振動。
$\qquad$(3.1.3)両端閉管
$\qquad \quad $ 両端とも閉じた音響管を両端閉管という。
$\qquad \quad $ 管内の空気の疎密波の固有振動は
$\qquad \quad $ 両端を節とする定常波の振動である。
$\quad$(3.1.4)開口端補正
$\qquad \quad $これまで開口端の圧力は大気圧と等しい一定値になると仮定し、
$\qquad \quad $疎密波として考えると節、空気の位置の振動と考えると、腹になるとしてきた。
$\qquad \quad $しかし厳密には、開口部から空気を吹き出そうとすると、
$\qquad \quad $外の空気から圧力を受けるので、管の入り口は完全に自由に空気の移動ができるわけではない。
$\qquad \quad $そのため、音を疎密波と考えると節、また空気の位置変動の振動と考えるときには腹は、開口部から少しはみ出す。
$\qquad \quad $ そこで、腹の位置を一層正確に知るためには、この量を補正する必要がある。
$\qquad \quad $ 本テキストでは、この問題は扱わない。
(4)固有振動と共鳴・共振
張った弦や気柱の空気の振動などは、それぞれ固有の定常振動数をもつことが分かった。一般に、振動する系は、それぞれ固有の振動数を持つ。
これを系の固有振動という。
振動系の固有振動数と等しい振動数の力をこの系に与えると
この系は激しく振動し始める。この現象を共鳴または共振と呼ぶ。
これについては下記もご覧ください。
(5)ドップラー効果
皆さんも、日ごろ
救急車のサイレンは、近づいているときは高い音に聞こえ、通り過ぎた瞬間に
低い音にかわることに気付いているでしょう。
一般に、音源の音を、音源に対し動いている人が聞くと、
元の音より高い周波数(=振動数)や低い周波数に聞こえる。
これを「ドップラー効果」という。
実用上重要な原理なので、やや詳細に議論しよう。
命題1
音速を $v_s$ とする。
音源が周波数 f の音を出しながら、静止している観測者に速度 v$\gt 0$ で近づくとき、
観測者が聞く音の周波数 $\tilde{f}$ は、
$\tilde{f}=\frac{v_s}{v_s-v}f \qquad \qquad (4)$
である。 ここで、$v \lt v_s$ である。
音源が通り過ぎて遠ざかるようになった瞬間に、観測周波数は急減し、
$\tilde{f}=\frac{v_s}{v_s+v}f \qquad \qquad (4')$
証明
音源から時刻 t=0 から一秒間だけ音を出すとする。
時刻0での、音源と観測者との距離を $L$ とすると、
この音が観測される時刻は $t_1=\frac{L}{v_s}$
最後(t=1)の音は、音源と観測者の距離が $L-v$ のとき発せられるので、
観測される時刻は $t_2=1+\frac{L-v}{v_s}$
この間にf回の振動が観測されるので、一秒間あたりの振動数(周波数)は
$\frac{f}{t_2-t_1}=\frac{v_s}{v_s-v}f$
命題2
静止音源が周波数fの音を出している。
観測者が速さ v($\gt 0$) で音源に近づいているときに聞くこの音の周波数 $\tilde{f}$ は、
$\tilde{f}=\frac{v_s+v}{v_s}f \qquad \qquad (5)$
ここで、 $v_s$ は、音速である。
観測者が音源を通り過ぎた瞬間に、観測音の周波数は急減し、
$\tilde{f}=\frac{v_s-v}{v_s}f \qquad \qquad (5')$
に変わる。
注を参照のこと。
証明
音源から一秒間(時刻0から、時刻1まで)だけ周波数 f の音を出すとする。
このときの観測者と音源の距離を L とおく。
すると、速さ v で音源に近づく観測者が、
$\quad $ 最初の音を聞く時間 $t_1$ は、
$\qquad $ $L-vt_1=v_s t_1$
$\quad $ 最後の音を聞く時間 $t_2$ は、
$\qquad $ $L-vt_2=v_s (t_2-1)$
これら2式から、
$t_2-t_1=\frac{v_s}{v_s+v}$
この間に、音は f 回 振動しているので、一秒当たりの振動の回数(周波数、振動数)は、
$\tilde{f}=\frac{v_s+v}{v_s}f$
同様に考えると、
観測者が音源を通り過ぎた瞬間からは、音源から 速さ v で遠ざかるため、
$\tilde{f}=\frac{v_s-v}{v_s}f$
が、得られる。
次に、一つの直線上を、音源と観測者がともに等速度で運動している場合の
ドップラー効果について考察する。
色々なケースを統一的に扱うため、空気が静止して見える一次元の慣性座標系を
用いる。
(注); 音源が動き、観測者が静止している場合(命題1)と結果が異なることに注意が必要である。
その理由を考えると面白い。
音源も、観測者も、ある直線上を等速運動する場合に、そのドップラー効果を調べよう。
命題3
音源は、周波数(振動数) $f$ の音を出しながら、x軸上を速度 $v$ で等速運動している。
観測者はx軸上を速度 $u $ で等速運動している。
(1)観測者が音源の負側にいる場合
観測者は、
$\tilde{f}=\frac{v_s+u}{v_s+v}f \qquad \qquad (6)$
の周波数の音を聞く。 ここで、 $v_s$ は音速である。
(2)観測者が音源の正側にいる場合
観測者は、
$\tilde{f}=\frac{v_s-u}{v_s-v}f\qquad \qquad (6')$
の周波数の音を聞く。 ここで、 $v_s$ は音速である。
証明
(1)の場合(図参照)
ファイル:GENPHY00010402-04.pdf
音源が時刻 $t \in [0,1]$ の間だけ、周波数fの音を出すと仮定する。
時刻 t=0 における観測者と音源の距離を L とおく。
すると、観測者が最初の音を聞く時刻 $t_1$ は
$L-ut_1=v_st_1$
を満たす。
時刻t=1のときの、観測者と音源の距離は $L-u+v$ なので
観測者が最後の音を聞く時刻 $t_2$ は、
$L-u+v-u(t_2-1)=v_s(t_2-1)$
を満たす。
これら2式から
$t_2-t_1=\frac{v_s+v}{v_s+u}$
この間に、観測者の聞く音は、f回振動しているので、
一秒間あたりの振動の回数(周波数あるいは振動数)は
$\tilde{f}=f \div (t_2-t_1)=\frac{v_s+u}{v_s+v}f$
(2) 観測者が音源の正側にいる場合
同様にして証明できるので省略。
証明終わり
(注)この命題から、観測者が音源とすれ違うか追い越すと、その瞬間に観測周波数は急変することが分かる。
最後に、超音波による血流速度の測定などに応用される命題を説明する。
命題4
周波数fの音を出している固定音源に、観測者がいて、
速さ v で近づく板からの反射音を観測すると、周波数は
$\tilde{f}=\frac{v_s+v}{v_s-v}f=(1+\frac{2v}{v_s-v})f$
証明
記述を簡単にするため、音源は、時刻0から一秒間だけ音を出すとする。
時刻t=0 の、音源と板との距離を L とおくと、
時刻 t における音源と板との距離は $L(t)=L-vt$ で表せる。
(1)最初(t=0)にだした音の反射音が聞こえる時刻 $t_1$
最初の音が出たときの音源と板との距離は $L(0)=L$
最初の音が板に届く時刻を $t^{1}_{1}$ とする。
この間、音は $v_{s}t^{1}_{1}$ だけ進み、
板は 音源方向に $vt^{1}_{1}$ だけ近づくので、
$\quad v_{s}t^{1}_{1}+vt^{1}_{1}=L(0)$
故に、 $t^{1}_{1}=\frac{L(0)}{v_{s}+v} \qquad \qquad (7)$
この時刻に最初の音の反響音が発生する。
このときの反響音源と観測者の距離は、$L(t^{1}_{1})$ なので、
観測者に到達するまでに要する時間は $\frac{L(t^{1}_{1})}{v_s}$
故に、
$t_1=t^{1}_{1}+\frac{L(t^{1}_{1})}{v_s}\qquad \qquad (8)$
(2)最後(t=1)にだした音の反射音が聞こえる時刻 $t_2$
最後(t=1)の音が出たときの音源と板との距離は $L(1)$ 。
最後の音が板に届く時刻を $t^{2}_{1}$ とする。
この間、音は $v_{s}(t^{2}_{1}-1)$ だけ進み、
板は 音源方向に $v(t^{2}_{1}-1)$ だけ近づくので、
$\quad v_{s}(t^{2}_{1}-1)+v(t^{2}_{1}-1)=L(1)$
故に、 $t^{2}_{1}=\frac{L(1)+v_s+v}{v_{s}+v}= \frac{L(0)+v_s}{v_{s}+v}\qquad \qquad (9)$
この時刻に最初の音の反響音が発生する。
このときの反響音源と観測者の距離は、$L(t^{2}_{1})$
なので、観測者に到達するまでに要する時間は $\frac{L(t^{2}_{1})}{v_s}$
故に、
$t_2=t^{2}_{1}+\frac{L(t^{2}_{1})}{v_s}\qquad \qquad (10)$
(3)観測者の聞く反響音の周波数
最初の音の反響音から、最後の音の反響音までの時間は,式(8)、(10)から
$T:=t_2-t_1=t^{2}_{1}-t^{1}_{1}+\frac{1}{v_s}(L(t^{2}_{1})-L(t^{1}_{1}))$
$=(t_2-t_1)(1-\frac{v}{v_s})=\frac{v_s-v}{v_s+v}$
この間にf回の振動があるので、周波数は
$\tilde{f}=\frac{f}{T}=\frac{v_s+v}{v_s-v}f$
命題5(命題4の一般化)
原点にある静止音源Oが、周波数 f で同位相の音を四方に出している。
この音源を通る x 軸上を,
観測者 $P_1$ と反射板 $P_2$ がそれぞれ等速 $v_1$、$v_2$ で運動している。
前者の時刻 t の位置を $L_1(t)=L_{1,0}+v_{1}t$ と表わし、
後者の時刻 t 位置を $L_2(t)=L_{2,0}+v_{2}t$ と表す。
但し,考察時間[0,T]中は、 $0 \lt L_1(t) \lt L_2(t)$ と仮定し、
音速は $v_s$ とする。
このとき、観測者 $P_1$ が聞く、
反射板 $P_2$ による反射音の周波数は、
$\tilde{f}=\frac{v_s+v_1}{v_s+v_2}\frac{v_s-v_2}{v_s}f$
証明;
記述を簡単にするため、音源は時刻0から一秒間だけ音を出すと仮定する。
この音が反射板で反射し、観測者に聞こえる時間区間
$[t^{0}_{P_1},t^{1}_{P_1}]$ を求めよう。
(1) まず、t=0 に音源から出た音が反射して観測者に届く時刻 $t^{0}_{P_1}$ を求めよう。
2段階にわけて計算する。
1)、最初(t=0)の音が反射板で反射する時刻 $t^{0}_{P_2}$ 。
音は x 軸の正方向にも速度 $v_s$ で進むので、時刻 $t^{0}_{P_2}$ には、
座標 $v_{s}t^{0}_{P_2}$ の点に達する。
時刻 $t^{0}_{P_2}$ における反射板の位置は、 $L_2(t^{0}_{P_2})=L_{2,0}+v_{2}t^{0}_{P_2}$ なので、
$v_{s}t^{0}_{P_2}=L_{2,0}+v_{2}t^{0}_{P_2}$
これより、$t^{0}_{P_2}=\frac{L_{2,0}}{v_s-v_2} $
2) 反射音が観測者に届く時刻 $t^{0}_{P_1}$ 。
反射板 $P_2$ で反射した音は、x軸 の負方向に $v_s$ の速さで進む。
他方、観測者は x軸 の正方向に、速さ $v_1$ で進むので
両者は $v_s+v_1$ の速さで近づく。
音が反射した瞬間の、観測者と反射板の距離は $L_2(t^{0}_{P_2})-L_1(t^{0}_{P_2})$
そこで、音が反射後、観測者に届くまでにかかる時間は、
$\frac{L_2(t^{0}_{P_2})-L_1(t^{0}_{P_2})}{v_s+v_1}$
$=\frac{(L_{2,0}-L_{1,0})+(v_2-v_1)t^{0}_{P_2}}{v_s+v_1}$
故に、
$t^{0}_{P_1}=t^{0}_{P_2}+\frac{(L_{2,0}-L_{1,0})+(v_2-v_1)t^{0}_{P_2}}{v_s+v_1}$
$=\frac{L_{2,0}-L_{1,0}}{v_s+v_1}+(1+\frac{v_2-v_1}{v_s+v_1})t^{0}_{P_2}$
$=\frac{L_{2,0}-L_{1,0}}{v_s+v_1}+\frac{v_S+v_2}{v_s+v_1}t^{0}_{P_2}\qquad \qquad (a)$
(2) t=1 に音源から出た音が反射して観測者に届く時刻 $t^{0}_{P_1}$ を求めよう。
t=0 の時と同様に考えればよいので、概略を示す。
1)t=1 に音源から出た音が反射板に到達する時刻 $t^{1}_{P_2}$ ;
$(t^{1}_{P_2}-1)v_s=L_2(t^{1}_{P_2})=L_{2,0}+v_{2}t^{1}_{P_2}$
を満たす。
これを解くと、
$t^{1}_{P_2}=\frac{L_{2,0}+v_s}{v_s-v_2}$
2))t=1 に音源から出た音が反射して観測者に到達する時刻 $t^{1}_{P_1}$ ;
反射した瞬間の観測者と反射板の距離は $L_2(t^{1}_{P_2})-L_1(t^{1}_{P_2})$
反射後、反射音が観測者まで届くにに要する時間は $\frac{L_2(t^{1}_{P_2})-L_1(t^{1}_{P_2})}{v_s+v_1}$
故に
$t^{1}_{P_1}=t^{1}_{P_2}+\frac{L_2(t^{1}_{P_2})-L_1(t^{1}_{P_2})}{v_s+v_1}$
$=\frac{(L_{2,0}-L_{1,0})}{v_s+v_1}+\frac{v_s+v_2}{v_s+v_1}t^{1}_{P_2}=\frac{(L_{2,0}-L_{1,0})}{v_s+v_1}+\frac{v_s+v_2}{v_s+v_1}\frac{L_{2,0}+v_s}{v_s-v_2}$
(3) 観測者が聞く反射音の周波数
以上から、観測者は
時間間隔 $\delta t:=t^{1}_{P_2}-t^{0}_{P_2}$ の間に
f 回の振動音を聞くことが分かった。
従って、その周波数(振動数) $\tilde{f}$ は、
$\tilde{f}=\frac{f}{\delta t}=\frac{v_s+v_2}{v_s+v_1}\frac{v_s}{v_s-v_2}f$
最後に;ドップラー効果は色々応用範囲が広い現象である。
興味がある方は、命題4を、音源も等速直線運動している場合に拡張してみてください。
(7)音の干渉
音も波なので、波の重ね合わせの原理が成立つ。
そのため一般の波でおこる干渉も起こる。