物理/8章の付録
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2018年1月27日 (土) 16:03時点における版
8章の付録
問の解答
問
limn→∞(1+1n)n が存在し、2より大きく3以下であることを証明する。
(1)準備; 2項定理;を用いた展開
a_n\triangleq (1+\frac{1}{n})^{n} \qquad (n は自然数) とおく。
すると、
2 \leq a_1=1+\frac{1}{1}=2\quad \lt a_2=(1+\frac{1}{2})^{2} =2\frac{1}{4}である。
以下に、数列 \{a_n\}_{n=1}^{\infty} が単調増大で、有界(2より大、3より小)である事を示す。
するとテキストの定理により、この数列は2より大きく、3以下のある実数に収束することが分かる。
nが3以上の自然数の時は、a_nを2項定理を用いて展開すると
a_n=(1+\frac{1}{n})^{n}=\sum_{m=0}^{n}{}_n\mathrm{C}_{m}1^{n-m}(\frac{1}{n})^m \qquad \qquad (1)
ここで {}_n\mathrm{C}_{m} は、n個のものからm個取り出す取り出し方の総数で、
mが1以上でn 以下の自然数の時は
{}_n\mathrm{C}_{m}=\frac{n!}{m!(n-m)!} \qquad \qquad (2)
ここで、m が1以上の自然数の時は m!\triangleq 1\cdot 2\cdot 3 \cdots (m-1)\cdot m
mが零の時は \quad 0!\triangleq 1 と定義。
すると、
{}_n\mathrm{C}_{0}=\frac{n!}{0!n!}=1\qquad \qquad (3)
m \geq 1のとき、{}_n\mathrm{C}_{m} =\frac{n!}{m!(n-m)!}=\frac{n\cdot (n-1)\cdot (n-2) \cdots \Bigl(n-(m-1)\Bigr) }{m!} \qquad (4)
式(1)に式(2)を代入し,式(3)、(4)を利用して計算すると
a_n = 1+\sum_{m=1}^{n}\frac{n(n-1)(n-2)\cdots \Bigl(n-(m-1)\Bigr)}{m!}1^{n-m}(\frac{1}{n})^m
=2+\sum_{m=2}^{n}\frac{1(1-\frac{1}{n})(1-\frac{2}{n})\cdots (1-\frac{m-1}{n})}{m!}\qquad \qquad (5)
ここで、n より小さい全ての自然数 i に対して
0 \lt 1-\frac{i}{n} \lt 1 なので、
2 \lt a_n \lt 2+\sum_{m=2}^{n}\frac{1}{m!} \qquad \qquad \qquad (6)
(2)すべての2以上の自然数 n に関して、
2 \lt a_n \lt 3 \qquad \qquad \qquad (7)
であることを示す。
式(6)から
2\lt a_n,
a_n \lt 2+\sum_{m=2}^{n}\frac{1}{m!} \qquad \qquad (8)
右辺の m は2以上の自然数なので、
\frac{1}{m!} \leq \frac{1}{(m-1)m}=\frac{1}{m-1}-\frac{1}{m}
である。故に、
a_n \lt 2+\sum_{m=2}^{n}(\frac{1}{m-1}-\frac{1}{m})=2+(1-\frac{1}{n})=3-\frac{1}{n}\lt 3
(3)数列 \{a_n\}_{n=1}^{\infty} は単調増加
n \geq 2 の時、常に a_n \lt a_{n+1} を示せばよい。
式(5)を利用すると(注参照)、
a_{n+1}=2+\sum_{m=2}^{n+1}\frac{1(1-\frac{1}{n+1})(1-\frac{2}{n+1})\cdots (1-\frac{m-1}{n+1})}{m!}
すると、
a_{n+1} - a_n = \sum_{m=2}^{n+1}\frac{1(1-\frac{1}{n+1})(1-\frac{2}{n+1})\cdots (1-\frac{m-1}{n+1})}{m!} - \sum_{m=2}^{n}\frac{1(1-\frac{1}{n})(1-\frac{2}{n})\cdots (1-\frac{m-1}{n})}{m!}
\quad 右辺の第一項の和を2つに分けると、
= \frac{1(1-\frac{1}{n+1})(1-\frac{2}{n+1})\cdots (1-\frac{n}{n+1})}{m!}
\quad + \sum_{m=2}^{n}\frac{1(1-\frac{1}{n+1})(1-\frac{2}{n+1})\cdots (1-\frac{m-1}{n+1})}{m!} - \sum_{m=2}^{n}\frac{1(1-\frac{1}{n})(1-\frac{2}{n})\cdots (1-\frac{m-1}{n})}{m!}
= \frac{
1(1-\frac{1}{n+1})(1-\frac{2}{n+1})\cdots (1-\frac{n}{n+1})
}{m!}
\quad + \sum_{m=2}^{n}\frac{
1(1-\frac{1}{n+1})(1-\frac{2}{n+1})\cdots (1-\frac{m-1}{n+1})
-1(1-\frac{1}{n})(1-\frac{2}{n})\cdots (1-\frac{m-1}{n})}{m!}
上の式で、全てのi\in \{1,2,,,,n\}に対して,(1-\frac{i}{n+1})\gt 0と(1-\frac{i}{n+1})\gt (1-\frac{i}{n}) なので、
a_{n+1} - a_n \gt 0
(注)式(3)のnに n+1 を代入すればよい。
ネイピア数 e について
定義;e\triangleq \lim_{}(1+\frac{1}{n})^n をネイピア数と呼ぶ。
命題1
(1) 2 \lt e \leq 3
(2)e=\sum_{m=0}^{\infty}\frac{1}{m!} \qquad ただし、0!\triangleq 1,\quad m!\triangleq 1\cdot 2\cdot 3\cdots (m-1)\cdot m \qquad \qquad (9)
三角関数の微分
準備
次の命題が、三角関数の微分を求めるうえで中心的役割を果たす。
命題2
\lim_{\theta\to 0,\theta\neq 0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1
証明
まず、\theta を正に保ちながら零に近づける場合を考える。
すると、 0 \lt \theta \lt \pi/2 と考えて良い。
点Oを中心にし、半径1の円を考え、円周上に一点Aをさだめる。
図のように、円周上の点Bを、線分OBが直線OAとなす角がx(ラジアン)となるようにとる。
図から\triangle{OAB} \subset 扇形OAB \subset \triangle{OAP}
\quad ここで、点PはAを通り線分OAと垂直な直線と半直線OBの交点。
すると、
\triangle{OAB}の面積 \lt 扇形OAB の面積 \lt \triangle{OAP}の面積
ここで、\triangle{OAB}の面積=\frac{1\cdot \sin{\theta}}{2},\quad 扇形OAB の面積=\pi\cdot 1^{2}\cdot \frac{\theta}{2\pi}\quad \triangle{OAP}の面積=\frac{1\cdot \tan{\theta}}{2}なので、
\frac{\sin{\theta}}{2} \lt \frac{\theta}{2}\lt \frac{\tan{\theta}}{2}=\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}\qquad 各項を2倍すると、
\sin{\theta}\lt \theta \lt \frac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}
\quadここで \sin{\theta}\gt 0 なので、これで上式の各項を割ると、
1 \lt \frac{\theta}{\sin{\theta}} \lt \frac{1}{\cos{\theta}}
1 \gt \frac{\sin{\theta}}{\theta} \gt \cos{\theta}
故に、極限の性質から
1 \geq \lim_{\theta\to 0,\theta\neq 0}\frac{\sin \theta}{\theta} \geq \lim_{\theta\to 0,\theta\neq 0}\cos{\theta}=1
これより、\lim_{\theta\to 0,\theta\neq 0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1 が得られる。
定理1 三角関数の微分
(1)\frac{d}{d\theta}\sin{\theta}=\cos{\theta}
(2)\frac{d}{d\theta}\cos{\theta}=-\sin{\theta}
証明
(1); \frac{d}{d\theta}\sin{\theta} \triangleq \lim_{h\to 0,h\neq 0}\frac{\sin (\theta+h)-\sin \theta}{h}
ここで、
\sin (\theta+h)-\sin \theta = \sin \bigl((\theta + \frac{h}{2})+\frac{h}{2}\bigr) - \sin \bigl((\theta + \frac{h}{2})-\frac{h}{2}\bigr)
サイン関数の加法定理を適用すると
=\sin (\theta + \frac{h}{2})\cos \frac{h}{2} + \cos (\theta + \frac{h}{2})\sin \frac{h}{2} - \Bigl( \sin (\theta + \frac{h}{2})\cos \frac{h}{2} - \cos (\theta + \frac{h}{2})\sin \frac{h}{2} \Bigr) = 2\cdot \cos (\theta + \frac{h}{2})\sin \frac{h}{2}
故に、
\frac{d}{d\theta}\sin{\theta} \triangleq \lim_{h\to 0,h\neq 0}\frac{\sin (\theta+h)-\sin \theta}{h} = \lim_{h\to 0,h\neq 0}\frac{2\cdot \cos (\theta + \frac{h}{2})\sin \frac{h}{2}}{h}=\lim_{h\to 0,h\neq 0}\cos (\theta + \frac{h}{2})\frac{\sin \frac{h}{2}}{h/2}
=\lim_{h\to 0,h\neq 0}\cos (\theta + \frac{h}{2})\lim_{h\to 0,h\neq 0}\frac{\sin \frac{h}{2}}{h/2}
\quad ここで、
\quad \lim_{h\to 0,h\neq 0}\cos (\theta + \frac{h}{2}) = \cos \theta
\quad \lim_{h\to 0,h\neq 0}\frac{\sin \frac{h}{2}}{h/2} = 1 \quad (上の命題2より)
\quad なので、
=\cos \theta
指数関数と対数関数
正の実数の累乗の指数の拡張
実数の累乗(自然数乗)
a を任意の実数、n を2以上の自然数とする。
a^1=a,\quad a^2=a\cdot a,\quad a^3=a^2\cdot a=a\cdot a\cdot a ,\quad \cdots \quad a^n=a^{n-1}\cdot a, \cdots
を総称して、a の累乗と呼ぶ。
a^n をa の n 乗 、n をその指数と呼ぶ。
実数の自然数乗の3つの計算規則
累乗が次のような計算規則を満たすことは、容易に証明できる。
命題3
a,b を任意の実数、 m, n を任意の自然数とすると、
(1) a^{m}a^{n} = a^{m+n}
(2) (a^{m})^n =a^{m n}
(3) (ab)^n = a^n b^n
証明は、累乗の定義と積の交換法則から容易にできるので省略する。
指数関数とn次関数
a を正の実数とするとき、累乗a^{\alpha} の
\alpha を独立変数とするか、a を独立変数にするかで、
次の2種の関数が定まる。
定義
a を正の実数, \alphaを自然数とするとき、次の2つの関数を考える。
1)f_{a}; ({\bf N} \ni) \alpha \to a^{\alpha} \bigl(\in {\bf R}^{+}\triangleq (0,\infty)\bigr)
これは、指数を変数とする関数なので、指数関数という。
2)g_{\alpha}; ({\bf R}^{+}\ni) a \to a^{\alpha} (\in {\bf R}^{+})
これは、\alpha次の単項関数である。
命題 指数関数の性質
指数関数f_{a}(\alpha )=a^{\alpha} \quad (\alpha \in {\bf N}) は次の性質を持つ。
1)0 \lt a \lt 1のとき、{\bf N}から{\bf R}^{+}への狭義単調減少の連続関数で、\lim_{\alpha \to \infty ,\alpha \in {\bf N} } a^{\alpha} = 0
2)1 \lt aのとき、{\bf N}から{\bf R}^{+}への狭義単調増加の連続関数
で、
\lim_{\alpha \to \infty ,\alpha \in {\bf N} } a^{\alpha} = \infty
連続性以外は、明らかなので証明は省略する。
自然数全体の集合{\bf N}は離散集合なので、
そのうえで定義された任意の関数は連続となる。
「8.2 解析入門(1)実数の性質、連続関数、微分 \quad 「1.3 関数とその連続性」の「1.3.2 関数の極限と連続性」を参照のこと。
命題 n次の単項関数の性質
\alpha= n \in {\bf N} とする。
n次の単項関数g_{n}(a)=a^{n} \quad (a \in {\bf R}^{+}) は
{\bf R}^{+}から{\bf R}^{+}への狭義単調増加の連続関数で、
\lim_{a\to 0,a \in {\bf R}^{+} } a^{n} = 0
\lim_{a\to \infty,a\in {\bf R}^{+} } a^{n} = \infty
である。
証明
{\bf R}^{+}上では狭義単調増加であることは容易に示せる。
連続性については、\lim_{\delta \to 0}(a+\delta)^n = a^n であることを示せばよい。
例えば、2項定理で(a+\delta)^n を展開して極限をとればよい。
この節の目的
この節の目的は、累乗にかんする計算規則を満たすようにしながら、
累乗の指数を実数まで拡張することである。
しかし a が負数だと、指数を有理数に拡張するとき不都合が起きてしまう。
例えば
\frac{1}{2} の時, a^{\frac{1}{2}}= \sqrt{a} は実数でなく虚数となり、
実数値関数の枠組みに収まらなくなる。
そこで、このような不都合が起こらないように 今後はa を正の実数に限定し、
次の計算規則を満たすようにしながら、指数を自然数から整数、整数から有理数、有理数から実数へと順に拡張していく。
累乗に関する計算規則
a, b を任意の正の実数、\alpha,\quad \betaを指数とすると、
(1) a^{\alpha}a^{\beta} = a^{\alpha+\beta} \qquad \qquad \qquad (累乗規則1)
(2) (a^{\alpha})^\beta =a^{\alpha \beta} \qquad \qquad \qquad (累乗規則2)
(3) (ab)^\beta = a^\beta b^\beta \qquad \qquad \qquad (累乗規則3)
計算規則(3)を守ろうとすると、1^\beta \equiv 1 と定めなければならないことが分かる。
何故ならば b=1の時、a^\beta = (a・1)^\beta = a^\beta 1^\beta となり、 a^\beta \neq 0 であるから。
そこで 今後は常に 1^\beta \equiv 1 と定め、 a \neq 1 の場合だけを考察する。
本節のもう一つの目的は、指数の拡張に伴い累乗に伴う2つの関数
f_{a}(\alpha)=a^\alpha とg_{\alpha}(a)=a^\alpha の性質が、どのようになるか考察する事である。
指数の整数への拡張
任意の正の実数a(\neq 0,1) を考える。
aの累乗の指数を、累乗に関する3つの規則が成り立つようにしながら、整数に拡張しよう。
まず、規則(1)を守ろうとすれば
a^0 = 1 \qquad \qquad \qquad (4)
と定義しなければならないことが分かる。
何故ならば、n\in {\bf N} の時、
a^{n} = a^{n+0}= a^n a^0
となり、 a^n \neq 0 だから両辺を a^n で割ればよい。
次に任意の自然数 n に対して、
a^{-n} を累乗に関する規則(1)を満たすように定義しよう。
a^{-n}a^n = a^{-n+n} = a^0 = 1
両辺を a^n で割れば
a^{-n} = \frac{1}{a^n} \qquad \qquad \qquad(5)
命題
式(4),(5)に従って指数を整数に拡大すると、
3つの累乗の規則はすべて成立する。
証明
(1)\alpha ,\beta を任意の整数とすると、
a^{\alpha}a^{\beta} = a^{(\alpha +\beta) } であることを示す。
(ケース1)指数の一方が正の整数(自然数)で、他方が負の整数の時
m,n を自然数として、
a^{m}a^{-n} = a^{m-n} を示せばよい。
a^{m}a^{-n} = \frac{a^m}{a^n}\quad (by equation (5)
m \gt n 、m=n 、m \lt n という3つの場合に分けて証明する。
1)m \gt n の時
\frac{a^m}{a^n}=a^{m-n}
2) m=n の時
\frac{a^{\alpha}}{a^{-\beta}} \quad \bigl(式(5)より\bigr)
==== 指数の有理数への拡張 ====
これ以降、有理数全体のなす集合を{\bf Rat}とかく。
a (\neq 1) を任意の正の実数、 \frac{m}{n} を任意の有理数のとき、
a の有理数乗 a^{\frac{m}{n}} を、計算規則を満たすように定義しよう。
指数n を任意の自然数(正の整数)、 m を任意の整数と仮定してよい。
\qquad (注)nが負の時はa^{\frac{m}{n}} = a^{\frac{-m}{-n}} なので、
\qquad \quad -n,-m を改めてn,m と置けば良い。\Box
累乗規則(2)を満たすように定義するには、
(a^{\frac{m}{n}})^{n} = (a^{\frac{m}{n}})^{\frac{n}{1}} = a^{m} でなければならない。
これは、a^{\frac{m}{n}} が a^{m} のn乗根であることを示す。
しかしnが偶数のときは、-a^{\frac{m}{n}} もa^{m} のn乗根となるので、
正のn乗根 のほうを、a^{\frac{m}{n}} とかく。
'''定義''' 正の実数の有理数乗
aを正の実数とする。
a^{\frac{m}{n}} とは、
a^{m} の正のn乗根である。
すなわち、
(a^{\frac{m}{n}})^{n} =a^{m} を満たす正の実数である。
最初に、この定義できちんと正の実数が一つだけ決まることを証明しよう。
a=1のときは、n乗すると1になる正数は1だけなので
1^{\frac{m}{n}}=1
であることが分かるので、a \neq 1 の場合を考える。
'''命題3'''
a \neq 0,1 を任意の正の実数、 m を任意の整数,nを任意の自然数とする。
すると、n 乗すると a^{m} になる正の実数 b (i.e. \quad b^n = a^{m})が存在し、ただ一つに限る。
証明
(1) 存在性
f(x) \triangleq x^n という、零と正の実数の上で定義された、関数を考える。
この関数はxが増加するにつれて、連続的に、零から正の無限大に狭義に単調に増加(注参照)していく。
そこで、B\triangleq \{x \in [0,\infty)\ |\ x^n \leq a^{m} \} という集合を考える。
この集合は、上に有界な区間になり、実数の連続性から上限(sup)bを持つ。
この時、 b \in B, \quad b^n = a^{m} であることを示そう。
b が集合B (\in {\bf R})の上限なので、任意の自然数nに対して、
0 \leq b - b_{n} \lt \frac{1}{n}
を満たす b_{n} \in B が存在する。
明らかに
\lim_{n \to \infty}b_{n} = b
すると、関数 f(x) \triangleq x^n は連続なので、
\lim_{n \to \infty}b_{n}^n = b^n \qquad \qquad \qquad (a)
ところが b_{n} \in B \triangleq \{x \in [0,\infty)|x^n \leq a^{m} \}なので、
b_{n}^n \leq a^{m} \qquad \qquad \qquad (b)
式(a)、(b) から、 b^n \leq a^{m} がえられるので、
b \in B
が示せた。(従って、Bは閉区間 [o,b] である。)
b^n = a^{m} であることを背理法を使って示そう。
もし、b^n \lt a^{m} だとすると、関数 f(x) = x^n は連続なので
充分小さな正の実数\delta をとると、(b + \delta) ^n \lt a^{m} を満たす。
すると (b + \delta) \in B となり、
bが B の上限であることに矛盾してしまう。
故に、背理法により、b^n = a^{m} が証明できた。
(2)一意性
関数 f(x) = x^n は狭義の単調増加関数なのでb以外の数b'(\neq b)では、
{b'}^n \neq b^n =a^m
(証明終り) \qquad \qquad \Box
(注) 関数fが狭義単調増加とは、 x \lt y \Rightarrow f(x) \lt f(y) を満たすこと。
'''命題4'''
任意の正の実数 a \neq 1 にたいして、その有理数乗を上記のように定義すると 3つの累乗規則 (1)~(3) が成り立つ。
証明;
1) 累乗規則(1)が成り立つことを示す。
2個の有理数の指数を 自然数n,\quad \tilde{n}と整数m,\quad \tilde{m} を用いて、
\alpha = \frac{m}{n},\quad \beta = \frac{\tilde{m}}{\tilde{n}}と表現する。
すると、累乗規則(1)は、次のように表される。
a^{\frac{m}{n}}a^{\frac{\tilde{m}}{\tilde{n}}} = a^{\frac{m}{n}+\frac{\tilde{m}}{\tilde{n}}}
この左辺を b \triangleq a^{\frac{m}{n}}a^{\frac{\tilde{m}}{\tilde{n}}},
右辺を c \triangleq a^{\frac{m}{n}+\frac{\tilde{m}}{\tilde{n}}} とおく。
b^{n \tilde{n}} = c^{n \tilde{n}} \qquad \qquad \qquad (a)
であることを示せば、b = c が得られ,
累乗規則(1)が成立することが分かる。
まず左辺を考える。
b^{n \tilde{n}} = (a^{\frac{m}{n}}a^{\frac{\tilde{m}}{\tilde{n}}})^{n \tilde{n}}
指数が自然数の累乗規則(3)から
= (a^{\frac{m}{n}})^{n \tilde{n}}(a^{\frac{\tilde{m}}{\tilde{n}}})^{n \tilde{n}}
指数が自然数の累乗規則(2)から
= \Bigl((a^{\frac{m}{n}})^{n}\Bigr)^{\tilde{n}}\Bigl((a^{\frac{\tilde{m}}{\tilde{n}}})^{\tilde{n}}\Bigr)^{n}
実数の有理数乗の定義から、
= (a^{m})^{\tilde{n}}(a^{\tilde{m}})^{n}
指数が整数の累乗規則(2)から
= a^{m \tilde{n}}a^{\tilde{m}n}
指数が整数の累乗規則(1)から
= a^{m \tilde{n} + \tilde{m}n}
故に、b^{n \tilde{n}} = a^{m \tilde{n} + \tilde{m}n}
次に、右辺を考える。
c^{n \tilde{n}} = (a^{\frac{m}{n}+\frac{\tilde{m}}{\tilde{n}}})^{n \tilde{n}}
= (a^{ \frac{m\tilde{n}+n\tilde{m}}{n\tilde{n}}})^{n \tilde{n}}
実数の有理数乗の定義から、
= a^{m\tilde{n} + n\tilde{m}} = b^{n \tilde{n}}
これで、式(a)が示され、累乗規則(1)が成り立つことが証明できた。
2)累乗規則(2)と累乗規則(3)が成り立つことは読者がしてください。
証明終わり。
指数が有理数の場合,命題2は次のように拡張出来る。
'''命題5'''
{\bf Rat}の上で定義される関数
f_a(\alpha) \triangleq a^{\alpha} \qquad (\alpha \in {\bf Rat})を考える。
1)a を1より大きい正の実数とすると、
f_aは単調増大で
\lim_{\alpha \to \infty,\alpha \in {\bf Rat}}a^{\alpha} = \infty \quad \lim_{\alpha \to -\infty}f_a(\alpha) = 0
2)a が1より小さい正の実数のとき、
f_aは単調減少し、
\lim_{\alpha \to \infty,\alpha \in {\bf Rat}}f_a(\alpha) = 0\quad \lim_{\alpha \to -\infty,\alpha \in {\bf Rat}}f_a(\alpha) = \infty
3)a = 1 のとき、f_a \equiv 1
証明
1)のみ証明する。2)の場合も同様に証明できる。
① \frac{m}{n} \lt \frac{m'}{n'} ,\quad n,m \in {\bf N} とすると、
a^{\frac{m}{n}} \lt a^{\frac{m'}{n'}} を示そう。
\alpha \triangleq a^{\frac{m'}{n'}} \div a^{\frac{m}{n}} \gt 1
を示せばよい。
正数の有理数乗の計算規則から、
\alpha \triangleq a^{\frac{m'}{n'}} \div a^{\frac{m}{n}}=a^{\frac{m'}{n'}-\frac{m}{n}}
=a^{ \frac{m'n-n'm}{n'n} }
故に、
{\alpha}^{n'n} = a^{m'n-n'm}
\qquad \frac{m}{n} \lt \frac{m'}{n'} から、
\qquad m'n-n'm \gt 0 なので、a^{m'n-n'm} \gt 1であり
\gt 1
故に、 {\alpha}^{n'n} \gt 1
自然数乗すると1より大きくなる正の実数は1より大きい実数しかないので、
\alpha \gt 1 が得られた。
② \lim_{\alpha \to \infty,\alpha \in {\bf Rat}}a^{\alpha}= \infty を示そう。
関数 f_a(\alpha) は単調増加(①で証明)なので、
\lim_{n \to \infty,n \in {\bf N}}a^n = \infty
を示せばよいが、これは自明である。
③ \lim_{\alpha \to -\infty,\alpha \in {\bf Rat}}f_a(\alpha) = 0
も、同様にして示せる。
証明終わり \qquad \qquad \qquad \Box
以上の結果をまとめて、次の定理を得る。
\Large {\bf{定理1}}
a \neq 0,1 の正の実数とする。
(1) a の有理数乗 a^{\frac{m}{n}}\quad(m;整数、n \in {\bf N}) をa^{m}の正のn乗根で定義すると、
'''累乗に関する計算規則'''
a, b を任意の正の実数、\alpha,\beta \in {\bf Rat} を指数とすると、
\quad 1) a^{\alpha}a^{\beta} = a^{\alpha+\beta} \qquad \qquad (累乗規則1)
\quad 2) (a^{\alpha})^\beta =a^{\alpha \beta} \qquad \qquad (累乗規則2)
\quad 3) (ab)^\beta = a^\beta b^\beta \qquad \qquad (累乗規則3)
を満たす。
(2){\bf Rat}の上で定義される関数
f_a(\alpha) \triangleq a^{\alpha} \qquad (\alpha \in {\bf Rat})を考えると、
\quad1)a\gt 1 のとき、 f_aは狭義の単調増大(従って一対一)で、
\quad \lim_{\alpha \to \infty,\alpha \in {\bf Rat}}a^{\alpha} = \infty \quad \lim_{\alpha \to -\infty}f_a(\alpha) = 0
\quad 2)a \lt 1 のとき、 f_aは狭義の単調減少(従って一対一)で、
\lim_{\alpha \to \infty,\alpha \in {\bf Rat}}f_a(\alpha) = 0\quad \lim_{\alpha \to -\infty,\alpha \in {\bf Rat}}f_a(\alpha) = \infty
\quad 3)a = 1 のとき、f_a \equiv 1
(3)関数 f_a(\alpha) \triangleq a^{\alpha} \quad (\alpha \in {\bf Rat})は連続関数である。
すなわち、
\frac{m_k}{n_k}\to \frac{m}{n} \quad ({\bf N} \ni k\to \infty) \quad (m_k,m は整数、 n_k,n は自然数)
ならば、
a^{\frac{m_k}{n_k}} \to a^{\frac{m}{n}}
証明
(1)、(2)はすでに証明したことなので、(3)だけを証明する。
|a^{ \frac{m_k}{n_k} } - a^{ \frac{m}{n} }| =
|a^{ \frac{m}{n} }| |a^{ \frac{m_k}{n_k}- \frac{m}{n} }-1| なので、
\lim_{\frac{m_k}{n_k}\to \frac{m}{n} }|a^{\frac{m_k}{n_k}- \frac{m}{n}}-1| = 0
を、示せばよい。
\frac{\tilde{m_k}}{\tilde{n_k}}\triangleq \frac{m_k}{n_k}- \frac{m}{n} とおくと、
\lim_{ \frac{ \tilde{m_k} }{ \tilde{n_k} }\to 0 }
|a^{\frac{ \tilde{m_k} }{ \tilde{n_k} } } - 1|= 0
を示せばよい。
このために、次の補題をまず証明する。
'''補題'''
\lim_{n\to \infty}|a^{ \frac{1}{n} }- 1|=0 \qquad \quad (b)
\lim_{n\to \infty}|a^{ \frac{-1}{n} }- 1|=0 \qquad \quad (c)
補題の証明
1) 式(b)を背理法で証明する。
もし式(b)が成立しないとする。
すると或る小さな正数\epsilon が存在し、
どのような自然数 n_0 をとっても、ある自然数n \gt n_0 が存在して
|a^{ \frac{1}{n} }- 1| \geq \epsilon
となる。(注参照)
すると、自然数の部分列 \{ n_k \}_{k\in {\bf N}}
\quad (n_k \lt n_{k+1},k=1,2,3,\cdots) が存在して、
(\forall k\in {\bf N})( |a^{ \frac{1}{n_k} }- 1| \geq \epsilon)\qquad (d)
となる。
① a \gt 1 の場合
a^{ \frac{1}{n_k} } \gt 1なので、
(\forall k\in {\bf N})( a^{ \frac{1}{n_k} }- 1 \geq \epsilon)
すなわち、
(\forall k\in {\bf N})( a^{ \frac{1}{n_k} } \geq 1+\epsilon)
両辺をn_k乗して
(\forall k\in {\bf N})(a \geq (1+\epsilon)^{n_k})
2項定理から
(1+\epsilon)^{n_k} \geq 1+n_k\epsilon
であることがわかるので、
(\forall k\in {\bf N})(a \geq 1+n_k\epsilon ) \qquad \qquad (e)
n_k \to \infty \quad (k \to \infty) なので、
式(e)から、a = \infty となり、矛盾が生じてしまう。
② a \lt 1 の場合も同様にして、矛盾が生じることが示せる。
③ 故に、式(b)が成立しないと仮定すると矛盾が生じるので、
背理法により、式(b)が成立することが、証明できた。
2)式(c)の証明も同様にしてできるので省略する。\Box
任意の正数\epsilon に対して、ある番号k_{\epsilon}が定まって、
k \geq k_{\epsilon}というすべての自然数kに対して、
|a^{\frac{ \tilde{m_k} }{ \tilde{n_k} } } - 1|\lt \epsilon
を示せば、
\lim_{ \frac{ \tilde{m_k} }{ \tilde{n_k} }\to 0 }
|a^{\frac{ \tilde{m_k} }{ \tilde{n_k} } } - 1|= 0
が示せて、証明が終了する。
補題により、\epsilon に対して、ある番号n_0をさだめ,
n \geq n_0ならば、
|a^{ \frac{1}{n} }- 1|\lt \epsilon
|a^{ \frac{-1}{n} }- 1|\lt \epsilon
が成立するようにできる。
\lim_{k \to \infty}\frac{ \tilde{m_k} }{ \tilde{n_k} }= 0
なので、
自然数n_0に対して、
ある番号k(n)\in {\bf N} が存在して、
k(n)以上のどんな自然数kに対しても、
\frac{-1}{n_0}\lt \frac{ \tilde{m_k} }{ \tilde{n_k}}\lt \frac{1}{n_0}
すると指数関数f_{a}(\alpha)=a^{\alpha} の単調性から、
a^{ \frac{ \tilde{m_k} }{ \tilde{n_k} } } は、a^{\frac{-1}{n_0}}とa^{\frac{-1}{n_0} }の間の数となり、
|a^{\frac{ \tilde{m_k} }{ \tilde{n_k} } } - 1|\lt \epsilon
が示せた。
定理の証明終わり。 \qquad \qquad \qquad \qquad \Box
==== 指数の実数への拡張 ====
a を、正の実数とする。
任意の実数 \alpha に対して 指数 a^{\alpha} を定義しよう。
\bf{定義}
1)\{\alpha_n\}_{n=1}^{\infty} を \alpha に収束する有理数の単調増加数列とするとき、
\underline{a^{\alpha}} \triangleq \lim_{n \to \infty}a^{\alpha_{n}}\qquad (a)
2)\{\beta_n\}_{n=1}^{\infty} を \alpha に収束する有理数の単調減少数列とするとき、
\overline{a^{\alpha}} \triangleq \lim_{n \to \infty}a^{\beta_{n}}\qquad (b)
\bf{命題6}
1)定義の式(a)、(b) は収束する。
2)\alpha に収束する、別の,
\qquad 有理数の単調増加数列\{\alpha'_n\}_{n=1}^{\infty}と単調減少数列\{\beta'_n\}_{n=1}^{\infty} をとっても、
\qquad \lim_{n \to \infty}a^{\alpha'_{n}} = \underline{a^{\alpha}} \qquad
\lim_{n \to \infty}a^{\beta'_{n}} = \overline{a^{\alpha}}
3)\underline{a^{\alpha}} = \overline{a^{\alpha}}
証明
a = 1 の場合は 1の有理数乗は常に1になるので命題は明らかである。
a \gt 1 の場合を証明する。0 \lt a \lt 1 の場合も同じように証明できる。
1){\bf Rat}上の関数 f_a(\alpha) = a^{\alpha} は単調増加(定理1)なので、
\{a^{\alpha_{n}}\}_{n} は上に有界な単調増加数列、
\{a^{\beta_{n}}\}_{n}は下に有界な単調減少数列となる。
このため、「8.2 解析入門(1)」の
[[物理/解析入門(1)実数の性質、連続関数,微分と導関数#実数の連続性と極限#実数列の極限|「1.2.3 実数列の極限」]]の定理1から、
これらは、ともに収束することが保証される。
2)\lim_{n \to \infty}a^{\alpha'_{n}} =\lim_{n \to \infty}a^{\alpha_{n}}(= \underline{a^{\alpha}}) を示そう。
\gamma_{n}\triangleq \alpha_{n}-\alpha'_{n}\quad (\in \bf{Rat},n \in \bf{N})
とおく。
すると、\lim_{n \to \infty}\gamma_{n}=0 \in \bf{Rat}
定理1(有理数を累乗とする指数関数の連続性)から、
\lim_{n \to \infty}a^{\gamma_{n}}=a^0 = 1
a^{\gamma_{n}}
a^{\alpha_{n}-\alpha'_{n}} =\frac{ a^{\alpha_{n}} }{ a^{\alpha'_{n}} } 故に、 \lim_{n \to \infty}\frac{ a^{\alpha_{n}} }{ a^{\alpha'_{n}} } = 1 上式の分子も分母も収束するので 1= \lim_{n \to \infty}\frac{a^{\alpha_{n}}}{ a^{\alpha'_{n}}}
\frac{ \lim_{n \to \infty}a^{\alpha_{n}} }{ \lim_{n \to \infty} a^{\alpha'_{n}} } 3)2)の証明と殆ど同じようにして出来る。 \{\alpha_n\}_{n=1}^{\infty} を \alpha に収束する有理数の単調増加数列 \{\beta_n\}_{n=1}^{\infty} を \alpha に収束する有理数の単調減少数列とする。 \gamma_{n}\triangleq \beta_{n}-\alpha_{n}\quad (\in \bf{Rat},n \in \bf{N}) とおく。 すると、\lim_{n \to \infty}\gamma_{n}=0 \in \bf{Rat} 定理1(有理数を累乗とする指数関数の連続性)から、 \lim_{n \to \infty}a^{\gamma_{n}}=a^0 = 1 a^{\gamma_{n}}
a^{\beta_{n}-\alpha_{n}} =\frac{ a^{\beta_{n}} }{ a^{\alpha_{n}} } 故に、 \lim_{n \to \infty}\frac{ a^{\beta_{n}} }{ a^{\alpha_{n}} } = 1 上式の分子も分母も収束するので 1= \lim_{n \to \infty}\frac{a^{\beta_{n}}}{ a^{\alpha_{n}}}
\frac{ \lim_{n \to \infty}a^{\beta_{n}} }{ \lim_{n \to \infty} a^{\alpha_{n}} } = \frac{\overline{a^{\alpha}}}{\underline{a^{\alpha}}}
証明終わり。\qquad \qquad \qquad \Box
\bf{a^{\alpha}の定義 }
a を任意の正の実数、\alpha を任意の実数とするとき、
a の \alpha乗を、
a^{\alpha} \triangleq \underline{a^{\alpha}} (= \overline{a^{\alpha}})
で定義する。
\Large{\bf{定理2}}
1)任意の正の実数a に対して、その実数乗を上述のように定義すると、
累乗の計算規則を満たす。
2)実数空間 {\bf R} で定義された指数関数
f_{a}(x)= a^x \quad (x \in {\bf R})
は、 a \neq 1 ならば、一対一関数で
a \gt 1 ならば単調増加、\quad a \lt 1 ならば単調減少である
3) a \neq 1 ならば、指数関数f_{a}(x)= a^x は {\bf R}から無限開区間(0,\infty)の上への、連続関数である。
証明
1) a, b を任意の正の実数、\alpha,\quad \betaを実数とすると、
a^{\alpha}a^{\beta} = a^{\alpha+\beta} \ (規則1)\quad
(a^{\alpha})^\beta =a^{\alpha \beta} \ (規則2)\quad (ab)^\beta = a^\beta b^\beta \ (規則3) を示せばよい。
皆同じように証明できるので、規則1だけを証明する。
実数 \alpha に収束する任意の有理数の単調増加列 \{\alpha_n\}_{n} と、
実数 \beta に収束する任意の有理数の単調増加列 \{\beta_n\}_{n} をとれば、
定理1から、有理数乗では規則1は成り立つので、
a^{\alpha_n}a^{\beta_n} = a^{\alpha_n+\beta_n}
極限(\lim_{n\to \infty})をとれば、
\lim_{n\to \infty}(a^{\alpha_n}a^{\beta_n}) = \lim_{n\to \infty}a^{\alpha_n+\beta_n}
この左辺は極限の性質から\lim_{n\to \infty}a^{\alpha_n}\lim_{n\to \infty}a^{\beta_n} に等しいので、
\lim_{n\to \infty}a^{\alpha_n}\lim_{n\to \infty}a^{\beta_n}= \lim_{n\to \infty}a^{\alpha_n+\beta_n} \qquad \qquad (a)
命題6とその直後のa^{\alpha}の定義から、
\lim_{n\to \infty}a^{\alpha_n} = \underline{a^{\alpha}}= a^{\alpha}
\lim_{n\to \infty}a^{\beta_n} = \underline{a^{\beta}}= a^{\beta}
\lim_{n\to \infty}a^{\alpha_n+\beta_n} = \underline{a^{\alpha+\beta}}= a^{\alpha + \beta}
この3つの式を式(a)に代入すると、
a^{\alpha}a^{\beta}=a^{\alpha + \beta}
累乗規則の1が成り立つことが示せた。
=== 対数と対数関数 ===
1と異なる正の実数 a を考える。
指数関数 f_{a}(x) = a^x は,定理2から、
{\bf R} から (0,\infty) の上への、一対一、連続関数である。
定義1
実数 a を a\gt 0,\ a\neq 1 とする。この時、
任意の正の実数 Xに対して、
a^x = X
を満たす実数xが唯一つ定まる。
このxを X の'''a を底とする対数'''と呼び、\log_{a}X とかく。
指数関数 f_{a}(x) = a^x は
{\bf R} から (0,\infty) の上への、一対一関数
なので、逆関数を考えることができる。
*[[File:GENPHY00010804-01.pdf|right|frame|図 指数関数と対数関数]]
*[[File:図1 指数関数と対数関数.jpg]]
定義2
a を1と異なる正の実数とする。
\log_{a} a^x \triangleq x \qquad \qquad \qquad (1)
この関数を、a を底とする対数関数とよぶ。
定理1
a を 1と異なる正の実数とする。
1) a を底とする対数関数 \log_{a} は、
指数関数f_{a}(x)=a^xの逆関数であり、
(\log_{a}\cdot f_{a})(x) = x \quad (x \in {\bf R})\qquad \qquad \qquad (2)
すなわち、
\log_{a}(a^x) = x \quad (x \in {\bf R})\qquad \qquad \qquad (2')
と(注参照)、
(f_{a}\cdot \log_{a})(y) = y \quad \bigl(y \in (0,\infty)\bigr)\qquad \qquad \qquad (3)
すなわち、
a^{\log_{a}(y)} = y \quad \bigl(y \in (0,\infty)\bigr)\qquad \qquad \qquad (3')
を満たす。
2)指数関数f_{a}(x)=a^x は
(0,\infty) から {\bf R} の上への一対一で
連続な関数である。
(注) 2つの関数f、gに対して、その合成関数(f\cdot g) は、
(f\cdot g)(x)\triangleq f\bigl(g(x)\bigr) で定義される。
定理2
a を 1と異なる正の実数とする。
すると
1) 任意の2つの正の実数b、cに対して,
\qquad \log_{a}b + \log_{a}c = \log_{a}bc \qquad \qquad \qquad (4)
2) 任意の2つの正の実数 b,c に対して,
\qquad \log_{a}b - \log_{a}c = \log_{a}\frac{b}{c} \qquad \qquad \qquad (5)
3) 任意の正の実数 b と任意の実数 c に対して
\qquad \log_{a}b^c = c \log_{a}b \qquad \qquad \qquad (6)
証明
1) 指数関数f_{a}(x)=a^x の性質から、
a^{x_{b}}= b,\quad a^{x_{c}}= c \qquad \qquad \qquad (7)
を満たす、実数 x_{b} \quad x_{c} がそれぞれ唯一つ定まる。
式(7)から対数関数の定義を用いると、
\log_{a}b = x_{b} \quad \log_{a}c = x_{c}\qquad \qquad \qquad (8)
すると、
\quad \log_{a}b + \log_{a}c = x_b + x_c \quad (式(8)から)
=\log_{a} a^{x_b + x_c } \quad (式(1)から)
=\log_{a} (a^{x_b} a^{x_c }) \quad (指数関数の性質から)
=\log_{a}(bc) \quad (式(7)から)
2)も同様に証明できる。
3)X \triangleq \log_{a}b^c とおく。すると、対数の定義から、
a^X = b^c
\qquad bは正の実数なので、x_b=\log_{a}b とおくと、 a^{x_b}= bなので、
= (a^{x_b})^c = a^{x_b c} \quad (指数関数の性質から)
故に
a^X = a^{x_b c}
指数関数が一対一関数なので、X = x_b c = c \log_{a}b
X の定義から、\log_{a}b^c = c \log_{a}b \qquad \qquad \Box
定理3 底の変換公式
任意の3つの正の実数 a(\neq 1),b,c(\neq 1) に対して
\qquad \log_{a}b = \frac{\log_{c}b}{\log_{c}a}\qquad \qquad \qquad (9)
証明
定理1の式(3')から、
\quad a^{\log_{a}b} = b \qquad \qquad \qquad (10)
底をcとする対数をとれば、
\log_{c}a^{\log_{a}b} = \log_{c} b
\qquad 定理2の式(6)から、\log_{c}a^{\log_{a}b} = (\log_{a}b)(\log_{c}a)なので、
(\log_{a}b)(\log_{c}a) = \log_{c} b
a,\quad c は、1と異なる正の実数であるため、 \log_{c}a \neq 0 となり、 \log_{a}b = \frac{\log_{c}b }{\log_{c}a}
が得られた。
証明終わり。 \qquad \qquad \qquad \Box
=== 対数関数 ===
1と異なる正の実数 a を考える。
指数関数 f_{a}(x) = a^x は,定理2から、
{\bf R} から (0,\infty) の上への、一対一、連続関数である。
すると、その逆関数\quad (0,\infty) \ni a^x \to x \in {\bf R} が定義できる。
*[[File:GENPHY00010804-01.pdf|right|frame|図 指数関数と対数関数]]
*[[File:図1 指数関数と対数関数.jpg]]
定義
a を1と異なる正の実数とする。
\log_{a} a^x \triangleq x \qquad \qquad \qquad (1)
この関数を、a を底とする対数関数とよぶ。
定理1
a を 1と異なる正の実数とする。
1) a を底とする対数関数 \log_{a} は、
指数関数f_{a}(x)=a^xの逆関数であり、
(\log_{a}\cdot f_{a})(x) = x \quad (x \in {\bf R})\qquad \qquad \qquad (2)
すなわち、
\log_{a}(a^x) = x \quad (x \in {\bf R})\qquad \qquad \qquad (2')
と(注参照)、
(f_{a}\cdot \log_{a})(y) = y \quad \bigl(y \in (0,\infty)\bigr)\qquad \qquad \qquad (3)
すなわち、
a^{\log_{a}(y)} = y \quad \bigl(y \in (0,\infty)\bigr)\qquad \qquad \qquad (3')
を満たす。
2)指数関数f_{a}(x)=a^x は
(0,\infty) から {\bf R} の上への一対一で
連続な関数である。
(注) 2つの関数f、gに対して、その合成関数(f\cdot g) は、
(f\cdot g)(x)\triangleq f\bigl(g(x)\bigr) で定義される。
定理2
a を 1と異なる正の実数とする。
すると
1) 任意の2つの正の実数b、cに対して,
\qquad \log_{a}b + \log_{a}c = \log_{a}bc \qquad \qquad \qquad (4)
2) 任意の2つの正の実数 b,c に対して,
\qquad \log_{a}b - \log_{a}c = \log_{a}\frac{b}{c} \qquad \qquad \qquad (5)
3) 任意の正の実数 b と任意の実数 c に対して
\qquad \log_{a}b^c = c \log_{a}b \qquad \qquad \qquad (6)
証明
1) 指数関数f_{a}(x)=a^x の性質から、
a^{x_{b}}= b,\quad a^{x_{c}}= c \qquad \qquad \qquad (7)
を満たす、実数 x_{b} \quad x_{c} がそれぞれ唯一つ定まる。
式(7)から対数関数の定義を用いると、
\log_{a}b = x_{b} \quad \log_{a}c = x_{c}\qquad \qquad \qquad (8)
すると、
\quad \log_{a}b + \log_{a}c = x_b + x_c \quad (式(8)から)
=\log_{a} a^{x_b + x_c } \quad (式(1)から)
=\log_{a} (a^{x_b} a^{x_c }) \quad (指数関数の性質から)
=\log_{a}(bc) \quad (式(7)から)
2)も同様に証明できる。
3)X \triangleq \log_{a}b^c とおく。すると、対数の定義から、
a^X = b^c
\qquad bは正の実数なので、x_b=\log_{a}b とおくと、 a^{x_b}= bなので、
= (a^{x_b})^c = a^{x_b c} \quad (指数関数の性質から)
故に
a^X = a^{x_b c}
指数関数が一対一関数なので、X = x_b c = c \log_{a}b
X の定義から、\log_{a}b^c = c \log_{a}b \qquad \qquad \Box
定理3 底の変換公式
任意の3つの正の実数 a(\neq 1),b,c(\neq 1) に対して
\qquad \log_{a}b = \frac{\log_{c}b}{\log_{c}a}\qquad \qquad \qquad (9)
証明
定理1の式(3')から、
\quad a^{\log_{a}b} = b \qquad \qquad \qquad (10)
底をcとする対数をとれば、
\log_{c}a^{\log_{a}b} = \log_{c} b
\qquad 定理2の式(6)から、\log_{c}a^{\log_{a}b} = (\log_{a}b)(\log_{c}a)なので、
(\log_{a}b)(\log_{c}a) = \log_{c} b
a,\quad c は、1と異なる正の実数であるため、 \log_{c}a \neq 0 となり、 \log_{a}b = \frac{\log_{c}b }{\log_{c}a}
が得られた。
証明終わり。 \qquad \qquad \qquad \Box $