物理/運動の法則の応用

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(版間での差分)
(運動方程式を初期状態を使って、解く)
(エネルギー)
 
(間の209版分が非表示)
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= 解説 =
= 解説 =
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運動の3法則と力の法則を用いると、分子から銀河まであらゆる物体の運動を求めることが出来きます(その正しさは人工衛星や惑星の運動などで確かめられているが、もっとはるかかなたの天体運動にも正しいというのは仮説である)。
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運動の3法則、万有引力の法則と力の法則を用いると、分子から銀河まであらゆる物体の運動を求めることが出来きる。<br/>
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運動の3法則からはエネルギー保存則や運動量保存則などの重要な保存則を導く事が出来る(次章で学ぶ)。
+
 
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その正しさは地上の物体や人工衛星、惑星の運動などで確かめられている。<br/>
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しかし、もっとはるかかなたの宇宙でもこれ等の法則は正しいのだろうか。<br/>
 +
天体観測は、世界各地で行われ、年々新しい発見がされているが、現在のところ、この理論が間違っていることを示す観測結果は、得られていない。<br/>
 +
そこで、これらの法則は宇宙の全体を支配しているものと、現在は信じられている。<br/>
 +
 
 +
運動の3法則からはエネルギー保存則や運動量保存則などの重要な保存則を導く事が出来る。<br/>
 +
これらの保存則は、色々な運動を調べるとき、大変役立つ。これらについては次節で学ぶ。
==  質点の色々な運動==
==  質点の色々な運動==
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最初に質点とみなせる物体のいくつかの運動を考える。
+
最初に最も簡単な運動から考える。<br/>
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それは質点とみなせる物体の運動である。
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===  落体運動===
+
===  質点の落体運動===
地球上の物体は高いところから落とすと、時間とともに速度を増しながら落下する。<br/>
地球上の物体は高いところから落とすと、時間とともに速度を増しながら落下する。<br/>
-
質点の質量を$M$とすると、そこに作用する[[物理/力学(2)_力と運動の法則#.E3.80.80.E5.9C.B0.E7.90.83.E3.81.AE.E9.87.8D.E5.8A.9B.E3.81.A8.E9.87.8D.E5.8A.9B.E5.8A.A0.E9.80.9F.E5.BA.A6.E3.80.80|重力による力]]は、真下(地球の[[wikipedia_ja:重心|重心]];後で学ぶ)の方向に大きさ$Mg$<br/>
+
質点とみなせる物体の落下運動を、運動法則と力の法則を用いて、解析しよう。<br/>
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落下の方向を負にした一次元座標を考え方向まで考慮すると、重力加速度は$-g$、質点$M$に作用する力は$-Mg$
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質点の質量を$m$とすると、そこに作用する[[物理/力学(2)_力と運動の法則#.E3.80.80.E5.9C.B0.E7.90.83.E3.81.AE.E9.87.8D.E5.8A.9B.E3.81.A8.E9.87.8D.E5.8A.9B.E5.8A.A0.E9.80.9F.E5.BA.A6.E3.80.80|重力による力]]は、<br/>
-
落下の加速度を$\alpha$と置くと、運動の第2法則より$M\alpha=-Mg$.
+
真下(厳密には地球の[[wikipedia_ja:重心|重心]];後で学ぶ)の方向・向きに大きさ$Mg$である。<br/>
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ゆえに質点の落下加速度$\alpha$は負の重力加速度$-g$に等しい。
+
落下の向きを負にした落下方向の一次元座標を考えると、重力加速度は$-g$で、質点$m$に作用する力は$-mg$である。<br/>
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$t$で微分して$-g$となる関数は$-gt+c$なので、質点の速度は$-gt+c$である(cは定数で、初期時刻0における質点の初期速度)。微分して$-gt+c$となる関数を求めれば質点の位置$x(t)=-\frac{1}{2}gt^{2}+ ct + d$$d$は定数で初期時刻0での質点の高さ)が得られる。<br/>
+
落下の加速度を$\alpha$と置くと、運動の第2法則より$m\alpha=-mg$.<br/>
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ゆえに質点の落下加速度$\alpha$は負の重力加速度$-g$に等しい。<br/>
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$t$で微分して$-g$となる関数は$-gt+c$なので、質点の速度は$-gt+c$である。<br/>
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ここでcは定数で、初期時刻0における質点の速度であり、初期速度と呼ばれる。<br/>
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微分して$-gt+c$となる関数を求めれば質点の位置$x(t)=-\frac{1}{2}gt^{2}+ ct + d$が得られる。<br/>
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ここで、$d$は定数で初期時刻0での質点の位置(高さ)である。<br/>
これはガリレオが明らかにした落体法則である。<br/>
これはガリレオが明らかにした落体法則である。<br/>
参考文献;
参考文献;
24 行: 37 行:
===  投射体の運動===
===  投射体の運動===
質点を地面に対して角度$\theta$(ラジアン)、速さ$u$で投げたときの、質点はどのような運動を行うだろうか。<br/>
質点を地面に対して角度$\theta$(ラジアン)、速さ$u$で投げたときの、質点はどのような運動を行うだろうか。<br/>
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ガリレオは、慣性法則と落体の法則を組み合わせてりようして、放物線を描いて飛ぶことを発見した。<br/>
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ガリレオは、慣性法則と落体の法則を組み合わせて利用して、放物線を描いて飛ぶことを発見した。<br/>
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ニュートン力学を用いれば、運動の第2法則と重力から、以下のように、この運動を導ける。<br/>
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ニュートン力学を用いれば、運動の第2法則と質点に働く力(重力)から、以下のように、この運動を導ける。<br/>
====適切な座標系をいれる====
====適切な座標系をいれる====
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質点が投げ出された場所を原点とし、飛んでいく方向に地面と水平に引いた半直線をx軸の正の側に、地面と直角で上方に向かう半直線をy軸の正の側とする座標を定める。
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質点が投げ出された場所を原点とし、飛んでいく方向に地面と水平に引いた半直線をx軸の正の側に、地面と直角で上方に向かう半直線をy軸の正の側とする座標を定める。図参照。
====質点に作用する力を求める====
====質点に作用する力を求める====
-
空気抵抗を無視すれば、質点に作用する力は、地球からの重力だけである。この力は、質点の質量を$M$,重力加速度を$g$とすると、$\vec F=(o,-Mg)$である。
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空気抵抗を無視すれば、質点に作用する力は、地球からの重力だけである。この力は、質点の質量を$M$,重力加速度を$g$とすると、質点の位置に関係なく常に、$\vec F=(o,-Mg)$である。
====運動の第2法則から質点の運動方程式をつくる====
====運動の第2法則から質点の運動方程式をつくる====
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これを$y(t)=-\frac{1}{2}gt^2+(u\sin{\theta})t$に代入すると<br/>
これを$y(t)=-\frac{1}{2}gt^2+(u\sin{\theta})t$に代入すると<br/>
$y(t)=(-g/2u^2\cos^2{\theta})x^2(t)+(\tan{\theta})x(t)$<br/>
$y(t)=(-g/2u^2\cos^2{\theta})x^2(t)+(\tan{\theta})x(t)$<br/>
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これは上に凸な放物線である。<br/>
+
これは上に凸な[[wikipedia_ja:放物線|放物線]]である。<br/>
参考文献は
参考文献は
*[[wikibooks_ja:高等学校理科 物理I 運動とエネルギー|ウィキブックス(高等学校理科 物理I 運動とエネルギー)]]の2.4.1 ニュートン方程式
*[[wikibooks_ja:高等学校理科 物理I 運動とエネルギー|ウィキブックス(高等学校理科 物理I 運動とエネルギー)]]の2.4.1 ニュートン方程式
116 行: 129 行:
これは軌道が円の場合のケプラーの第3法則である。
これは軌道が円の場合のケプラーの第3法則である。
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====ケプラーの法則と運動の第2法則から万有引力の法則を導く====
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====万有引力の法則を,ケプラーの法則と運動の第2法則から導く====
惑星が太陽の周りを円運動しているとき、太陽が惑星に及ぼしている力を計算する。<br/>
惑星が太陽の周りを円運動しているとき、太陽が惑星に及ぼしている力を計算する。<br/>
ケプラーの第2法則より、円運動する惑星は角速度一定である。これを$\omega_0$とする。<br/>
ケプラーの第2法則より、円運動する惑星は角速度一定である。これを$\omega_0$とする。<br/>
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太陽の位置を原点とし円の半径を$r$とすると、この惑星の加速度は$\vec{\alpha}(t)=-r( \frac{d\theta(t)}{dt})^2( \cos\theta(t), \sin\theta(t)) =-r\omega_0^2( \cos\theta(t), \sin\theta(t))$ 。これは、太陽にむかう大きさ$r\omega_0^2$のベクトル。<br/>
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太陽の位置を原点とし円の半径を$r$とすると、この惑星の加速度は$\vec{\alpha}(t)=-r( d\theta(t)/dt)^2( \cos\theta(t), \sin\theta(t)) =-r\omega_0^2( \cos\theta(t), \sin\theta(t))$ 。これは、太陽にむかう大きさ$r\omega_0^2$のベクトル。<br/>
運動の第2法則より、惑星に働く力$\vec F$は、太陽の方向に、大きさ$mr\omega_0^2$  <br/>
運動の第2法則より、惑星に働く力$\vec F$は、太陽の方向に、大きさ$mr\omega_0^2$  <br/>
 +
ここで、$m$ は惑星の慣性質量である。<br/>
$\omega_0^2$を$r$の関数で表すためケプラーの第3法則と用いる。<br/>
$\omega_0^2$を$r$の関数で表すためケプラーの第3法則と用いる。<br/>
惑星の公転周期$T$と円の半径$r$の間には$T^2/r^3=C,\quad C$;定数<br/>
惑星の公転周期$T$と円の半径$r$の間には$T^2/r^3=C,\quad C$;定数<br/>
$T=2\pi/\omega_0$なので
$T=2\pi/\omega_0$なので
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$(2\pi/\omega_0)^2/r^3=C \quad $∴$\omega_0^2=\frac{4\pi^2}{C}r^{-3}$<br/>
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$(2\pi/\omega_0)^2/r^3=C \quad $∴$\omega_0^2=4\pi^2/(Cr^{3})$<br/>
それゆえ、力の大きさは<br/>
それゆえ、力の大きさは<br/>
$mr\omega_0^2=\frac{4\pi^2}{C} \frac{m}{r^2}$<br/>
$mr\omega_0^2=\frac{4\pi^2}{C} \frac{m}{r^2}$<br/>
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さらに、太陽の質量$M$が$k$倍になると、惑星に働く力も$k$倍になるので力の比例部分$\frac{4\pi^2}{C}$$M$に比例することが分かる。<br/>
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さらに、太陽の質量$M$が$k$倍になると、質量$M$の太陽が$k$個あり、それぞれが惑星に上記の力を与えると考えられる。<br/>
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比例定数を$G$とおくと、$\frac{4\pi^2}{C}=GM$<br/>
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すると惑星に働く力は$k$倍になるので力の比例部分$\frac{4\pi^2}{C}$は太陽の質量$M$に比例することが分かる。<br/>
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比例定数を$G$とおくと、$\frac{4\pi^2}{C}=GM$     <br/>
従って惑星に働く力の大きさは、太陽の方向に、
従って惑星に働く力の大きさは、太陽の方向に、
$GM\frac{m}{r^2}=G\frac{mM}{r^2}$<br/>
$GM\frac{m}{r^2}=G\frac{mM}{r^2}$<br/>
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これは万有引力の法則である。
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これは万有引力の法則である。<br/>
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(注)この式は万有引力の法則の式と同じだが、質量$m$は、慣性質量であり、対称性から太陽の質量$M$も慣性質量と考えられる。<br/>
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しかしニュートンは重力を生む質量は、慣性質量と完全には一致しない可能性もあると考え、重力質量という概念を生みだしと思われる。<br/>
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既述のように、多くの実験の結果、両質量は同一であると考えられている。<br/>
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重量質量を使わず、慣性質量だけを用いても、ニュートン力学を構成することが出来る。これを提唱する物理学者もいる。<br/>
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それには万有引力の法則のかわりに、次の法則を採用すればよい。<br/>
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外力が働かないときは、どんな2質点も、お互いに相手に向かって,
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加速度運動して近ずく。両者の加速度は、両者の距離の2乗$r^2$に反比例し、それぞれの慣性質量の比に反比例する。<br/>
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式で書くと、<br/>
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質点1の慣性質量と加速度の大きさを$m_1$,$\alpha_1$  <br/>
 +
質点2の慣性質量と加速度の大きさを$m_2$,$\alpha_2$ <br/>
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とすると、$m_1\alpha_1=m_2\alpha_2$、$m_1\propto 1/r^2$,$m_2 \propto 1/r^2$ <br/>
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この法則と運動法則により2質点間に働く力(万有引力)を求めると、<br/>
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ニュートンの万有引力の法則と同じ式だが、質量は慣性質量になり、<br/>
 +
重量質量を用いずニュートン力学が構成できる。<br/>
===  振り子と単振動 ===
===  振り子と単振動 ===
138 行: 167 行:
===  質点のつり合い===
===  質点のつり合い===
-
質点に力F1,,Fnが作用し、質点が静止したまま(あるいは等速直線運動)であるとき、それらの力は釣り合っているという。釣り合いの条件は、F1+    +Fn=0です(運動の第2法則と力の合成則から導出できる)。
+
質点に力F1,,Fnが作用し、質点が静止したまま(あるいは等速直線運動)であるとき、それらの力は釣り合っているという。<br/>
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釣り合いの条件は、F1+    +Fn=0です(運動の第2法則と力の合成則から導出できる)。
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===  振り子と単振動 ===
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*[[wikipedia_ja:自由振動|ウィキペディア(単振動)]]の「振り子」の項を見てください。
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===  質点のつり合い===
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質点に力F1,,Fnが作用し、質点が静止したまま(あるいは等速直線運動)であるとき、それらの力は釣り合っているという。釣り合いの条件は、F1+    +Fn=0です(運動の第2法則と力の合成則から導出できる)。
+
==仕事とエネルギー==
==仕事とエネルギー==
===仕事===
===仕事===
-
物体に力を加えて動かす時、力はこの物体に仕事をするという。仕事(の量)は力の大きさと動かした距離の積に比例する。<br/>
+
物体に力を加えて動かす時、力はこの物体に仕事をするという。<br/>
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正確には、加えられる力$\vec F$ が一定で、力の向きに対して角度$\alpha$[rad] だけ傾いている直線上を$\vec s$移動したとき、''仕事W'' は、<br/>
+
仕事(の量)は力の大きさと動かした距離の積に比例する。<br/>
 +
正確には、加えられる力$\vec F$ が一定で、<br/>
 +
力の向きに対して角度$\theta$[rad] だけ傾いている直線上を $\vec s$ 移動したとき、<br/>
 +
''仕事W'' は、<br/>
 +
$W=\|\vec F\|\|\vec s\| \cos\theta$    <br/>
 +
で定義する。<br/>
 +
ここで任意のヴェクトル$\vec a$に対して、$\|\vec{a}\|$はその大きさ$\sqrt{\sum_{i}a_i^2}$を表す。<br/>
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$W=\|\vec F\|\|\vec s\| \cos\alpha$    <br/>
 
-
で定義する。ここで任意のヴェクトル$\vec a$に対して、$\|\vec{a}\|$は、そのベクトルの大きさ(長さともいう)$\sqrt{\sum_{i}a_i^2}$である。<br/>
 
 +
特に、この式において$\theta=0$(すなわち $\cos\theta = 1$)とすると<br/>
 +
「加えられる力が一定であり力の方向が運動の方向と一致している場合」になり、<br/>
 +
$W=\|\vec F\|\|\vec s\| $ である。<br/>
 +
また、$\theta=\pi/2$($\cos\theta = 0$)のとき、$W = 0$となる。<br/>
 +
すなわち、力が運動の方向と直角方向にはたらいている場合、その力は仕事をしない。 <br/>
-
特に、この式において$\alpha=0$(すなわち $\cos\alpha = 1$)とすると「加えられる力が一定であり力の方向が運動の方向と一致している場合」になり、$W=\|\vec F\|\|\vec s\| $ である。<br/>
+
$W=\|\vec F\|(\|\vec s\| \cos\theta)$と表現すると、<br/>
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また、$\alpha=\pi/2$($\cos\alpha = 0$)のとき、$W = 0$となる。すなわち、力が運動の方向と直角方向にはたらいている場合、その力は仕事をしない。 <br/>
+
仕事は、力の方向に$\|\vec s\| \cos\theta$だけ動かしたときの仕事に等しいことが分かる。<br/>  
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$W=\|\vec F\|(\|\vec s\| \cos\alpha)$と表現すると、仕事は、力の方向に$\|\vec s\| \cos\alpha$だけ動かしたときの仕事に等しいことが分かる。<br/>  
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$W=(\|\vec F\| \cos\theta)\|\vec s\|$と表現すると、<br/>
-
 
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仕事は、<br/>
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$W=(\|\vec F\| \cos\alpha)\|\vec s\|$と表現すると、仕事は、大きさ$\|\vec F\| \cos\alpha$ の$\vec s$方向の力を加えて、$\vec s$だけ動かしたときの仕事に等しいことが分かる。<br/>  
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大きさ$\|\vec F\| \cos\theta$ の$\vec s$方向の力を加えて、$\vec s$だけ動かしたときの仕事に等しい<br/>
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ことが分かる。
171 行: 204 行:
====内積の定義と仕事の内積表現====
====内積の定義と仕事の内積表現====
ベクトル$\vec a,\vec b$の内積$ \vec a \cdot \vec b $は、$\|\vec{a}\|\|\vec{b}\|
ベクトル$\vec a,\vec b$の内積$ \vec a \cdot \vec b $は、$\|\vec{a}\|\|\vec{b}\|
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\cos\alpha$で定義する。<br/>
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\cos\theta$で定義する。<br/>
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ここで、$\theta$は、ベクトル$\vec a,\vec b$のなす角($0\le \theta \le \pi$ )である。
*[[wikibooks_ja:高等学校数学B ベクトル|ウィキブックス(高等学校数学B ベクトル)]] の1.1.6~ 1.1.8を参照のこと。<br/>
*[[wikibooks_ja:高等学校数学B ベクトル|ウィキブックス(高等学校数学B ベクトル)]] の1.1.6~ 1.1.8を参照のこと。<br/>
-
ウィキブックスでは2次元のベクトルを中心にして説明しているが、3次元ベクトルの場合にも、成り立つように修正することは容易である。<br/>
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ウィキブックスでは2次元のベクトルを中心にして説明しているが、<br/>
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例えば、ベクトル$\vec a = (a _1,a _2,a_3)$の長さは、$\|\vec a\|= \sqrt {a _1^2 +a _2^2+a _3^2}$,ベクトルの内積は、この長さを使えば、全く同じ式で良い。
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3次元ベクトルの場合にも、成り立つように修正することは容易である。<br/>
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===== 仕事の内積を使った表現=====
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例えば、ベクトル$\vec a = (a _1,a _2,a_3)$の長さは、$\|\vec a\|= \sqrt {a _1^2 +a _2^2+a _3^2}$,<br/>
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ベクトルの内積は、この長さを使えば、全く同じ式で良い。
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===== 内積を使った 仕事の表現=====
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内積 $\cdot $を用いると、物体に力$\vec{F}$を加えて、$\vec{PQ}$(P点からQ点まで)動かした時の力のなす仕事は、$ W=\vec{F}\cdot\vec{PQ} $と表せる。
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内積 $\cdot $を用いると、<br/>
 +
物体に力$\vec{F}$を加えて、$\vec{PQ}$(P点からQ点まで)動かした時の力のなす仕事は、<br/>
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$ W=\vec{F}\cdot\vec{PQ} $と表せる。<br/>
=====  内積の性質=====
=====  内積の性質=====
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仕事は、前述のように内積で表現できるので、内積の性質を調べておくと、仕事について考察する時役に立つ。<br/>
+
仕事は、前述のように内積で表現できるので、内積の性質を調べておくと、仕事について考察する時に役に立つ。<br/>
-
$\vec a,\vec b,\vec c$が、すべて同じ次元(2か3)のベクトルとし、 $\alpha$は実数とする。必要に応じて、ベクトルは[[http://ja.iwschool.org/wiki/%E7%89%A9%E7%90%86/%E5%8A%9B%E5%AD%A6(1)_%E9%80%9F%E5%BA%A6%E3%80%81%E5%8A%A0%E9%80%9F%E5%BA%A6%E3%81%A8%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AB#.E3.83.99.E3.82.AF.E3.83.88.E3.83.AB.E3.81.AE.E5.BA.A7.E6.A8.99.E8.A1.A8.E7.A4.BA]]直交座標表示する。この時、 <br/>
+
$\vec a,\vec b,\vec c$が、すべて同じ次元(2か3)のベクトルとし、 $\alpha$は実数とする。<br/>
(1)$\vec a \cdot \vec b =\vec b \cdot \vec a$ <br/>
(1)$\vec a \cdot \vec b =\vec b \cdot \vec a$ <br/>
-
(2)$\vec a \cdot \vec b =\sum_{i}a_ib_i$ <br/>
+
(2)$\vec a \cdot \vec b =\sum_{i}a_ib_i$ 、<br/>
 +
ここで$a_1,b_1$はそれぞれ$\vec a,\vec b$のx座標成分、同様に、添え字2はy座標成分、3はz座標成分<br/>
 +
直交座標系はどんなものでも良い。しかしすべてのベクトルは同じ座標系で座標成分表示しなければならない。<br/>
(3)$(\vec a +\vec b) \cdot \vec c =\vec a \cdot \vec c+\vec b \cdot \vec c$   <br/>
(3)$(\vec a +\vec b) \cdot \vec c =\vec a \cdot \vec c+\vec b \cdot \vec c$   <br/>
(4)$(\alpha \vec a)\cdot \vec b =\vec a \cdot (\alpha \vec b)=\alpha (\vec a \cdot \vec b)$ <br/>
(4)$(\alpha \vec a)\cdot \vec b =\vec a \cdot (\alpha \vec b)=\alpha (\vec a \cdot \vec b)$ <br/>
193 行: 233 行:
(1)は、内積の定義から明らか。 <br/>
(1)は、内積の定義から明らか。 <br/>
(2);次の三角形の余弦定理を利用する。<br/>
(2);次の三角形の余弦定理を利用する。<br/>
-
三角形の余弦定理;<br/>
+
三角形の[[wikipedia_ja:余弦定理|第2余弦定理]];<br/>
-
図のような$\triangle {ABC}$を考える。頂点A,B,Cの対辺の長さをそれぞれ、$a,b,c$$\angle{ACB}=\theta$とする。すると<br/>
+
図のような$\triangle {ABC}$を考える。<br/>
-
$c^2=a^2+b^2-2ab\cos\theta$<br/>
+
頂点A,B,Cの対辺の長さをそれぞれ$a,b,c$とし、$\angle{ACB}=\theta$とする。<br/>
-
余弦定理の証明;頂点$A$から対辺$BC$におろした垂線の足を$H$とする。
+
すると、$c^2=a^2+b^2-2ab\cos\theta$<br/>
-
ピタゴラスの3平方の定理により、<br/>
+
余弦定理の証明;頂点$A$から対辺$BC$におろした垂線の足を$H$とする。<br/>
-
$c^2=\overline{BH}^2+\overline{AH}^2$。$\qquad$ 右辺の第2項に、再び、ピタゴラスの3平方の定理を適用して、<br/>
+
[[wikipedia_ja:ピタゴラスの定理 |ピタゴラスの定理]]により、<br/>
 +
$c^2=\overline{BH}^2+\overline{AH}^2$。$\qquad$ 右辺の第2項に、再び、ピタゴラスの定理を適用して、<br/>
$=\overline{BH}^2+(b^2-\overline{CH}^2)$ $\qquad$ $\overline{BH}=a-\overline{CH}$を代入すると、<br/>
$=\overline{BH}^2+(b^2-\overline{CH}^2)$ $\qquad$ $\overline{BH}=a-\overline{CH}$を代入すると、<br/>
$=(a-\overline{CH})^2+(b^2-\overline{CH}^2)=a^2+b^2-2a\overline{CH}$,$\quad$ $\overline{CH}=b\cos\theta$なので、代入すると<br/>
$=(a-\overline{CH})^2+(b^2-\overline{CH}^2)=a^2+b^2-2a\overline{CH}$,$\quad$ $\overline{CH}=b\cos\theta$なので、代入すると<br/>
$=a^2+b^2-2ab\cos\theta$  <br/>
$=a^2+b^2-2ab\cos\theta$  <br/>
証明終わり。<br/>
証明終わり。<br/>
 +
(2)の証明  <br/>
 +
ベクトル$\vec a $と$\vec b $を、<br/>
 +
始点が点$C$である有向線分で表現し、その終点を$B$,$C$で表す。<br/>
 +
すると$\vec a=\vec{CB}$, $\vec b=\vec{CA}$である。<br/>
 +
ベクトル$\vec c=\vec a-\vec b$を導入すると、<br/>
 +
$\vec c=\vec a-\vec b=\vec{CB}-\vec{CA}=\vec{CB}+\vec{AC}=\vec{AB}$<br/>
 +
3角形$\triangle {ABC}$を考え、第2余弦定理を適用しよう。<br/>
 +
$\angle{ACB}=\theta$とおく。すると、<br/>
 +
$\|\vec c\|^2=\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-2\|\vec a\|\|\vec b\|\cos{\theta}$<br/>
 +
$=\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-2\vec a \cdot \vec b$が得られる。<br/>
 +
この式を変形して$\vec a \cdot \vec b$だけを左辺に置くと、<br/>
 +
$\vec a \cdot \vec b=(\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-\|\vec c\|^2)/2$ 。<br/>
 +
$\vec c=\vec{AB}=\vec{AC}+\vec{CB}=-\vec b+\vec a$なので、<br/>
 +
 +
$\vec a \cdot \vec b=(\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-\|\vec a-\vec b\|^2)/2 $  <br/>
 +
この右辺を、ベクトルの直交座標成分で表すと、次式が得られる。 <br/>
 +
$\vec a \cdot \vec b=(\sum_{i}a_i^2+\sum_{i}b_i^2-\sum_{i}(a_i-b_i)^2 )/2 $<br/>$=\sum_{i}a_i b_i$ <br/>
 +
(2)の証明終わり。 <br/>
 +
(性質3)の証明;ある一つの直交座標系をさだめ、両辺を、性質(2)を利用して、座標成分であらわす。両辺が等しいことが分かる。<br/>
 +
(性質4)の証明;同様に、3つの式を、座標成分表示すれば、みな等しいことが、簡単に分かる。
====物体が曲線運動するときの仕事量の求め方====  
====物体が曲線運動するときの仕事量の求め方====  
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物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。
物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。
*[[wikipedia_ja:エネルギー|エネルギー(ウィキペディア)]]の自然科学の項を参照のこと。
*[[wikipedia_ja:エネルギー|エネルギー(ウィキペディア)]]の自然科学の項を参照のこと。
-
 
===仕事の単位===
===仕事の単位===
-
仕事の定義から、仕事の単位は、力の単位と長さの単位を掛けたものになる。<br/>
+
仕事の定義$W=\|\vec F\|\|\vec s\| \cos\theta$から、仕事の単位は、力の大きさ$\|\vec F\|$の単位と長さ$\|\vec s\|$の単位を掛けたものになる($ \cos\theta$ は無単位なので )。<br/>
-
MKSA単位系では、力は$N$(ニュートン)、長さは$m$(メートル)なので、$Nm$ が仕事の単位であり、$J$(ジュール)と呼ぶ。
+
MKSA単位系では、力の大きさの単位は$N$(ニュートン)、長さの単位は$m$(メートル)なので、仕事の単位は$Nm$ となる。<br/>
 +
これを$J$(ジュール)と呼ぶ。$J=Nm$である。
*[[wikipedia_ja:ジュール|ジュール(ウィキペディア)]]
*[[wikipedia_ja:ジュール|ジュール(ウィキペディア)]]
-
 
-
==  質点系の運動==
 
-
2個以上の質点が集まって出来ている系を質点系という。<br/>
 
-
質点系の運動を考えよう。
 
-
===  質点系の運動と重心===
 
-
質点系とは、いくつかの質点が集まって作っている系のこと。  <br/>
 
-
系の各質点は離れ離れでも良く、また系の任意の2つの質点間には作用・反作用の法則を満たす力が働いていてもよい。この力を質点系の”内力”という。  <br/>
 
-
質点系の各質点に外部から力(外力という)が加わる時、この質点系はどんな運動をするだろうか。<br/>
 
-
質点系の各質点の位置を$\vec{r_i}$、質量を$m_i $とし、質点$m_i$ に作用する外力を$\vec{f_i}$、他の質点$m_j $からうける内力を$\vec{f_{ij}}$とする($i,j=1 \ldots N$)。<br/>
 
-
すると、各質点に対して、運動の第2法則により、$d (m_i \vec{v_i})/dt=\vec{f_i}+\sum_{j\neq i}\vec{f_{ij}} $, $\qquad$ ここで$\vec{v_i}=d\vec{r_i}/dt$、<br/>
 
-
$i=1 \ldots N$について加え合わせると、$\vec{f_{ij}}+\vec{f_{ji}}=0$なので、<br/>
 
-
$\frac{d^2}{dt^2} \sum_i{ m_i \vec{r_i}} =\frac{d}{dt} \sum_i{ m_i \vec{v_i}} =\sum_i{\vec{f_i}}  $    <br/>
 
-
が得られる。質点系の全質量$M= \sum_i{m_i} $と質点系に働く全外力$\vec{F}= \sum_i{\vec{f_i}} $を用いて書きなおすと、<br/>
 
-
$M\frac{d^2}{dt^2}(\sum_i{ m_i \vec{r_i}}/M)= \vec{F} $  <br/>
 
-
質点系の重心$\vec{R}$を $\quad \vec{R}=\sum_i{ m_i \vec{r_i}}/M $ で定義すると、<br/>
 
-
$M\frac{d^2}{dt^2}R= \vec{F} $  <br/>
 
-
この式は、力$\vec{F}$をうける質量$M$の質点の運動方程式と同じであることに注目してください。<br/>
 
-
以下の解説も参考にしてください。
 
-
*[[wikipedia_ja:質点|ウィキペディア(質点系の力学)]]
 
-
 
-
==  剛体の運動とつり合い==
 
-
===  剛体===
 
-
 
-
剛体(Rigid body)とは、<br/>
 
-
質点の集まりであって、それらの、どの2質点の間の距離も変わらない,特殊な質点系のことを言う。<br/>
 
-
(注)どの2質点の間の距離も変わらなければ変形は起こらない。<br/>
 
-
固くて変形しにくい物体を理想化した概念である。
 
-
 
-
===  剛体の運動 ===
 
-
剛体は変形しない質点系なので、その運動は、重心の運動と、重心の周りの回転運動を合成したものになる。<br/>
 
-
重心の運動は前の節で説明したように、質点の運動と同じように扱える。<br/>
 
-
重心の周りの回転運動について解析するには、少し難しい数学が必要になる。<br/>
 
-
*[[wikipedia_ja:剛体の力学|ウィキペディア(剛体の力学)]]を参照のこと。
 
-
このテキストでは、固定軸の周りの回転と釣り合いの条件だけを学ぶ。<br/>
 
-
一般の回転運動については、大学で学ぶ。
 
-
 
-
===固定軸のまわりの回転運動 ===
 
-
 
-
剛体が、剛体の中を通る固定軸の周りを回転する運動(車輪の回転など)を考える。応用も考え、回転軸は重心を通らなくてもよいように一般化しておく。<br/>
 
-
(注)なお、軸が動かないようにするためには軸受が必要である。工夫しても回転時に軸と軸受の間に多少の摩擦が生じるが、これは無視出来ると仮定する。
 
-
====回転運動の表示法 ====
 
-
固定軸まわりの剛体の運動はどのように表示したらよいだろうか。<br/>
 
-
・剛体の位置;固定軸の周りを回転するので、(軸上にない)剛体の一点につけた印は、軸を中心とする円周上を回転する。その回転角を指定すれば剛体の位置(姿勢)が分かる。<br/>
 
-
 議論を簡単にするため、 剛体につけた印から固定軸へ垂線をひき、その足を原点,固定軸をz座標とする3次元座標xyzを考える。<br/>
 
-
剛体の印はxy平面上の点になるので、x軸から反時計まわりの角度$\phi$が決まる。
 
-
これが剛体の位置を指定する一次元変数である。<br/>
 
-
ゆえに剛体の固定軸まわりの回転は一次元の運動である。<br/>
 
-
・この$\phi$の時間変化$\phi=\phi (t)$を明らかにすれば、剛体の回転運動は定まる。<br/>
 
-
これを時間で微分した$d\phi (t)/dt$を角速度、<br/>
 
-
さらにもう一回時間微分した$d^2\phi (t)/dt^2$を角加速度と呼ぶ。
 
-
====回転力(トルク) ====
 
-
力と仕事との関係を考察すると、回転力をどのように定めたらよいかが分かる。   <br/>
 
-
質点に、一定の力$\vec F=(F_x,F_y,F_z)$を作用させて、x軸方向に変位させる(質点はこの軸の上でしか動けないように拘束されているとする)。変位は一次元の変数$x$であらわせ、力のなした仕事は、$W=\vec F \cdot (x,0,0)=F_{x}x$である。 <br/>
 
-
逆に物体に一定の力を加え、x軸の正方向に$x$だけ変位させた時の仕事$W$が分かれば、質点を動かした力は<br/>
 
-
$F_x=W/x$<br/>で求められる。<br/>
 
-
$F_y,F_z$は、質点をx軸上で動かすことには全く寄与せず、質点を動かした力は、<br/>
 
-
$F_x$なのである。従って力のなした仕事からは、$F_y,F_z$は求められない。<br/>
 
-
固定軸まわりの回転もその変位は一次元の変数である回転角度で表わせるので、これに倣って、<br/>
 
-
$W/$回転した角度 <br/>
 
-
を、回転にかんする力であると考える。この回転力を'''トルク'''とも呼ぶ。<br/>
 
-
<br/>
 
-
図4.1のように剛体の任意の一点$P(x,y,z)$を考える(図では、z座標を省略し2次元のxy平面を書いてある)。
 
-
 
-
[[File:GENPHY00010004 fig4-1.jpg|right|frame|図4.1 ☆☆キャプションはココに書いて下さい☆☆]]
 
-
 
-
 
-
まず一点$P(x,y,z)$に力$\vec F=(F_{x},F_{y},F_{z})$が作用して、微小角$\Delta\theta$だけ回転したときの仕事$\Delta W$を計算し回転力を求めよう。<br/>
 
-
$P$点から回転軸(z軸)に垂線を下ろし、その足を$O$とする。<br/>
 
-
$\vec{OP}$の長さを$r$、x軸となす角を$\theta$ラジアンと置く。$\theta=\phi+$定数である。<br/>
 
-
剛体が微小角$\Delta\theta$回転して、点$P$が図の点$Q$に移動したとする。<br/>
 
-
すると角$\angle OPQ$はほぼ直角(=$\pi /2$)で$\vec{PQ}$の長さ$PQ$は、$PQ=r(\Delta\theta)$。<br/>
 
-
 
-
$\vec{PQ}$のx成分とy成分は、図4-1中に示したように、それぞれ、$-QR=-PQ*y/r$、$PR=PQ*x/r$。<br/>
 
-
$PQ=r(\Delta\theta)$を代入すると、<br/>
 
-
$\vec{PQ}_x=-y(\Delta\theta)$、$\vec{PQ}_y=x(\Delta\theta)$、$\vec{PQ}_z=0$<br/>
 
-
力$\vec{F}=(F_{x},F_{y},F_{z})$が、物体を$\vec{PQ}$だけ動かしたので、その仕事は
 
-
$\Delta W=\vec{F} \cdot \vec{PQ}$(内積)。この右辺を内積の性質を用いて座標成分で表すと、$F_{x}*(-y)\Delta\theta+F_{y} x\Delta\theta+F_{z}* 0$<br/>
 
-
$=(xF_{y}-yF_{x})*\Delta\theta$ 。<br/>
 
-
ゆえに、力$\vec{F}$のz軸まわりの回転力は$\Delta W/\Delta\theta=xF_{y}-yF_{x}$
 
-
<br/>
 
-
 
-
=====回転力(トルク)の特徴=====
 
-
(1)力$\vec{F}$のz軸まわりの回転力は,$\vec{F}_z$には関係しない。言いかえるとz軸を固定軸とする剛体にz軸の方向の力を加えても、z軸の周りの回転は起こらない。<br/>
 
-
(2)剛体の1点$P(x,y,z)$に作用する力$\vec F$を、$\vec{OP}$方向の成分$\vec F_r$と、$P$の描く、点$P$を中心とする回転円の(左回りの)接線方向の力$\vec F_t$とz軸と平行の成分に分解する。<br/>
 
-
この時、<br/>
 
-
・力$\vec F$のz軸まわりの回転力は、$\vec F_t$のz軸まわりの回転力に等しい。<br/>数式で表すと、$xF_{y}-yF_{x}=x(F_t)_{y}-y(F_t)_{x}$<br/>
 
-
・力$\vec F_r$のz軸まわりの回転力は、零である。すなわち、動径方向の力は回転に寄与しない。  <br/>
 
-
(3)剛体に作用する力の作用点を、力の作用線上で動かす限り、回転力は変化しない。<br/>
 
-
ここで、力の作用線とは、力の作用点を通り、力の方向と重なる直線のこと。<br/>
 
-
これらはいずれも直観と合致する。
 
-
 
-
=====他の軸の周りの回転力=====
 
-
力$\vec{F}$のx軸、y軸まわりの回転力も同様に計算できる。結果は、<br/>
 
-
x軸まわり;$yF_{z}-zF_{y}=y(F_t)_{z}-z(F_t)_{y}$<br/>
 
-
y軸まわり;$zF_{x}-xF_{z}=z(F_t)_{x}-x(F_t)_{z}$
 
-
 
-
 
-
=====原点まわりの力のモーメント=====
 
-
位置ベクトル$\vec r=(x,y,z)$の剛体の点$P$に作用する力$\vec F$の原点まわりの力のモーメントを、<br/>
 
-
$\vec N=($x軸まわりのトルク、y軸まわりのトルク、z軸まわりのトルク$)$で定義する。<br/>
 
-
数式で書くと、<br/>
 
-
$\vec N=(yF_{z}-zF_{y},zF_{x}-xF_{z},xF_{y}-yF_{x})$,<br/>
 
-
 
-
=====トルクとベクトル積=====
 
-
以上の結果は、ベクトル積(クロス積ともいう)を用いると簡潔、正確に表現でき、計算も容易になる。<br/>
 
-
3次元ベクトル$\vec a,\vec b$ のベクトル積$\vec a \times \vec b$は、3次元ベクトルであり,<br/>
 
-
大きさは$\vec a,\vec b$ を2辺とする平行四辺形の面積に等しく、<br/>
 
-
方向はこの四辺形に垂直で、$(\vec a,\vec b,\vec a \times \vec b)$が右手系をなすように定めたものである。
 
-
 
-
*[[wikipedia_ja:クロス積|ウィキペディア(クロス積)]]
 
-
 
-
======  ベクトル積の性質======
 
-
$ \vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$を3次元ベクトルとする。<br/>
 
-
 
-
性質0. $ \qquad \vec{a} $ を, $\vec{c} $と垂直な成分$ \vec{a_\perp}$ と,平行な成分$\vec{a_\parallel}$ の和に分解するとき、 <br/>
 
-
$\qquad \vec{a} \times \vec{c}= (\vec{a_\perp}+\vec{a_\parallel})\times \vec{c}=\vec{a_\perp} \times \vec{c}$  <br/>
 
-
性質1.$ \qquad \vec{a} \times \vec{b}= -\vec{b} \times \vec{a}$    <br/>
 
-
性質2.$ \qquad (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}= \vec{a} \times \vec{c} + \vec{b} \times \vec{c}$ <br/>
 
-
性質3.$\qquad (\vec{e_1},\vec{e_2}, \vec{e_3})$ をそれぞれ長さ1で互いに直交し、[[wikipedia_ja:右手系|右手系]]をなす、ベクトルとする。この時、<br/>
 
-
$ \qquad  \vec{e_1} \times \vec{e_2} = \vec{e_3}, \vec{e_2} \times \vec{e_3} = \vec{e_1}, \vec{e_3} \times \vec{e_1} = \vec{e_2}$<br/>
 
-
性質4.ベクトルを直交座標系(e_1,e_2,e_3)の座標成分で表示しておく。すると$\vec a \times \vec b=(a_yb_z-a_zb_y,a_zb_x-a_xb_z,a_xb_y-a_yb_x)$
 
-
 
-
性質0の証明;ベクトル積の定義から明らかである。<br/>
 
-
性質1の証明;ベクトル積の定義から明らかである。<br/>
 
-
性質2の証明;① $ \vec{a}, \vec{b}$ と$ \vec{c}$ が直交する場合。<br/>
 
-
$\vec{a} \times \vec{c} $は、$ \vec{a} $を、$\vec{c} $と垂直な平面H内で90度回転($(\vec{a},\vec{c},\vec{a} \times \vec{c})$が右手系をなすように)して、長さを$|\vec{c}|$倍したベクトル。$\vec{b} \times \vec{c} $は、同じ平面H内で$ \vec{b} $を、同じ方向に、90度回転して、長さを$|\vec{c}|$倍したベクトル。$ (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}$も、同じ平面内を同じ向きに90度回転し、長さを$|\vec{c}|$倍したベクトル。従って$ \vec{a}$と$\vec{b}$から作られる平行四辺形と$\vec{a}\times \vec{c} $ と$\vec{b}\times \vec{c} $からつくられる平行四辺形は相似となり、$ (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}$は後者の対角線となる。対角線ベクトルは2辺のベクトル和に等しいので、$ (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}= \vec{a} \times \vec{c} + \vec{b} \times \vec{c}$が示せた。 <br/>
 
-
② 一般の場合。<br/>
 
-
性質0より、$\perp$ を$\vec{c}$と垂直な成分を表すとすると、 $ (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}= (\vec{a}+ \vec{b})_\perp \times \vec{c} \qquad \qquad \qquad $(1)<br/>
 
-
$(\vec{a}+ \vec{b})_\perp =\vec{a}_\perp +\vec{b}_\perp$なので、(1)式は、<br/>
 
-
$ = (\vec{a}_\perp +\vec{b}_\perp) \times \vec{c}$,①より、<br/>
 
-
$ = \vec{a}_\perp \times \vec{c}+\vec{b}_\perp\times \vec{c}=\vec{a} \times \vec{c}+\vec{b} \vec{c}$  $ \qquad $ 証明終わり。<br/>
 
-
性質3の証明;ベクトル積と$(e_1,e_2,e_3)$ の定義から、明らかである。<br/>
 
-
性質4の照明;$\vec a \times \vec b=(a_x $
 
-
 
-
======  トルクのベクトル積表示======
 
-
位置ベクトル$\vec r=(x,y,z)$の剛体の点$P$に作用する力$\vec F$の原点まわりの力のモーメントを、<br/>
 
-
$\vec N=($x軸まわりのトルク、y軸まわりのトルク、z軸まわりのトルク$)$で定義する。<br/>数式で書くと、<br/>
 
-
$\vec N=(yF_{z}-zF_{y},zF_{x}-xF_{z},xF_{y}-yF_{x})$,<br/>
 
-
ベクトル積を用いると、$\quad$    $\vec N=\vec r \times \vec F$
 
-
 
-
====剛体の複数個所に作用する力の回転力 ====
 
-
次に剛体の多くの点に力を加えたときの回転力を求めよう。<br/>
 
-
力の作用点を$P_i(x_i,y_i,z_i)$、力を$\vec{F_i}\quad (i=1,2,,,n)$とする。<br/>
 
-
これらの力のもとで剛体がz軸まわりを$\Delta\theta$だけ微小回転するときの、各力のなす仕事の合計は、<br/>
 
-
$(\sum_{i=1}^{n}(x_{i}(F_{i})_{y}-y_{i}(F_{i})_{x}))*\Delta\theta$ <br/>
 
-
従って、作用点$P_i(x_i,y_i,z_i)$の力、$\vec{F_i}\quad (i=1,2,,,n)$のz軸まわりの回転力は、<br/>
 
-
$\sum_{i=1}^{n}(x_{i}(F_{i})_{y}-y_{i}(F_{i})_{x})$ <br/>
 
-
この結果は、力が一か所に作用する場合と全く同じ考えで導ける。<br/>
 
-
同様に、x軸まわりとy軸まわりの回転力も導ける。<br/>
 
-
従って、力$\vec{F_i}\quad (i=1,2,,,n)$の原点まわりの力のモーメントは、<br/>
 
-
$\vec N=\sum_{i=1}^{n}\vec N_i$    <br/>
 
-
$=\sum_{i=1}^{n}(y_{i}(F_{i})_{z}-z_{i}(F_{i})_{y},z_{i}(F_{i})_{x}-x_{i}(F_{i})_{z},x_{i}(F_{i})_{y}-y_{i}(F_{i})_{x})$
 
-
 
-
====回転運動の方程式 ====
 
-
z軸を固定軸とする剛体の回転の運動方程式を求めよう。<br/>
 
-
この軸のまわりの回転にかんする力(z軸まわりのトルク)が作用する時の剛体の回転速度の変化の式を求めればよい。<br/>
 
-
 
-
剛体を(質点と考えてよい)$N$個の微小部分$P_i(i=1 \cdots N)$に分け、その質量を$m_i$、座標を$(x_i,y_i,z_i)$とする。<br/>
 
-
この点に外部から作用する力を$\vec {F}_i$とする。<br/>
 
-
回転軸となるz軸がぶれないようにするため、軸受が設けられた時はそこからの力が回転軸と接する剛体部分にかかるので、$\vec {F'}_{i}$とおく。<br/>
 
-
さらに剛体は変形しないように、任意の2点間に変形を打ち消すための力(内力と呼ぶ)がかかっている。$P_i$に、$P_j$からかかる力を$\vec {F}_{ij}$とおく。<br/>
 
-
軸受と回転軸とのあいだの摩擦は無視できるほど小さいと仮定する。すると$P_i$の回転円の接線方向の$\vec {F'}_{i}$の成分$(\vec {F'}_{i})_t$は$0$となる。<br/>
 
-
また作用・反作用の法則(運動の第3法則)から、$\vec F_{ij}=-\vec F_{ji}$<br/>
 
-
====  てこの原理と力のモーメント====
 
-
てこの原理については、
 
-
*[[wikipedia_ja:てこ#.E3.81.A6.E3.81.93.E3.81.AE.E5.8E.9F.E7.90.86|ウィキペディ
 
-
====  作用線の定理====
 
-
剛体の場合、作用線に沿って力の作用点を移動しても、力の作用は変わらない。何故かは、考えてみましょう。<br/>
 
-
*[[wikipedia_ja:作用線の定理|ウィキペディア(作用線の定理)]]
 
-
 
-
===  剛体のつり合い===
 
-
いくつかの力が作用し、剛体が静止したままであるか、<br/>
 
-
重心が等速直線運動を続け、重心の周りの回転が変化しない場合に、剛体(に作用している力)は釣り合っているという。
 
-
 
-
==  気体や液体の圧力と浮力==
 
-
 
= CAIテスト  =
= CAIテスト  =
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*<span class="pops"> [[cai_ja:GENPHY00010002|CAIテストのページへ(新しいWindowが開きます)]] </span>

2015年1月27日 (火) 16:45 時点における最新版

物理運動の法則の応用

目次

解説

運動の3法則、万有引力の法則と力の法則を用いると、分子から銀河まであらゆる物体の運動を求めることが出来きる。

その正しさは地上の物体や人工衛星、惑星の運動などで確かめられている。
しかし、もっとはるかかなたの宇宙でもこれ等の法則は正しいのだろうか。
天体観測は、世界各地で行われ、年々新しい発見がされているが、現在のところ、この理論が間違っていることを示す観測結果は、得られていない。
そこで、これらの法則は宇宙の全体を支配しているものと、現在は信じられている。

運動の3法則からはエネルギー保存則や運動量保存則などの重要な保存則を導く事が出来る。
これらの保存則は、色々な運動を調べるとき、大変役立つ。これらについては次節で学ぶ。

質点の色々な運動

最初に最も簡単な運動から考える。
それは質点とみなせる物体の運動である。

質点の落体運動

地球上の物体は高いところから落とすと、時間とともに速度を増しながら落下する。
質点とみなせる物体の落下運動を、運動法則と力の法則を用いて、解析しよう。
質点の質量を$m$とすると、そこに作用する重力による力は、
真下(厳密には地球の重心;後で学ぶ)の方向・向きに大きさ$Mg$である。
落下の向きを負にした落下方向の一次元座標を考えると、重力加速度は$-g$で、質点$m$に作用する力は$-mg$である。
落下の加速度を$\alpha$と置くと、運動の第2法則より$m\alpha=-mg$.
ゆえに質点の落下加速度$\alpha$は負の重力加速度$-g$に等しい。
$t$で微分して$-g$となる関数は$-gt+c$なので、質点の速度は$-gt+c$である。
ここでcは定数で、初期時刻0における質点の速度であり、初期速度と呼ばれる。
微分して$-gt+c$となる関数を求めれば質点の位置$x(t)=-\frac{1}{2}gt^{2}+ ct + d$が得られる。
ここで、$d$は定数で初期時刻0での質点の位置(高さ)である。
これはガリレオが明らかにした落体法則である。
参考文献;

投射体の運動

質点を地面に対して角度$\theta$(ラジアン)、速さ$u$で投げたときの、質点はどのような運動を行うだろうか。
ガリレオは、慣性法則と落体の法則を組み合わせて利用して、放物線を描いて飛ぶことを発見した。
ニュートン力学を用いれば、運動の第2法則と質点に働く力(重力)から、以下のように、この運動を導ける。

適切な座標系をいれる

質点が投げ出された場所を原点とし、飛んでいく方向に地面と水平に引いた半直線をx軸の正の側に、地面と直角で上方に向かう半直線をy軸の正の側とする座標を定める。図参照。

質点に作用する力を求める

空気抵抗を無視すれば、質点に作用する力は、地球からの重力だけである。この力は、質点の質量を$M$,重力加速度を$g$とすると、質点の位置に関係なく常に、$\vec F=(o,-Mg)$である。

運動の第2法則から質点の運動方程式をつくる

質点の位置ベクトルを$\vec r=(x,y)$で表すと
運動方程式は、$M(d^2/dt^2)\vec{r(t)}=\vec F$である。
座標成分表示すると
$M(d^2/dt^2)x(t)=0$,$\quad$ $M(d^2/dt^2)y(t)=-Mg$

運動の初期状態の指定

投げ上げた瞬間を時刻$t=0$とおくと、質点の初期位置は$\vec{r}(0)=(0,0)$,$\quad$ 初期速度は$\vec{v}(0)=(u\cos{\theta},u\sin{\theta})$

運動方程式を初期状態を使って解く

(1)x成分の式を解く
$M(d^2/dt^2)x(t)=0$は、$M(d/dt)v_{x}(t)=0$なので$(d/dt)v_{x}(t)=0$。$\quad$  tで微分して零となるtの関数は定数なので$a$と書くと、$v_{x}(t)=a$
速度の定義より、$(d/dt)x(t)=v_{x}$なので、$(d/dt)x(t)=a$.$\quad$ $t$で微分して$a$となるのは$at+b$(bは未知定数)なので、$x(t)=at+b$
初期条件から、$a=v_{x}(0)=u\cos{\theta}$,$\quad$ また$x(0)=a0+b=0$なので$b=0$。
故に、$x(t)=(u\cos{\theta})t$

(2)y成分の式を解く   
$M(d^2/dt^2)y(t)=-Mg$は、$(d/dt)v_{y}(t)=-g$ $\quad$ tで微分して$-g$となる関数は$-gt+c$(cは未知定数)なので、
$v_{y}(t)=-gt+c$ $\quad$故に$(d/dt)y(t)=-gt+c$
tで微分して$-gt+c$となる関数は、$-\frac{1}{2}gt^2+ct+d$なので、$y(t)=-\frac{1}{2}g^2t+ct+d$   
初期速度の条件から、$c=-g0+c=v_{y}(0)=u\sin{\theta}$ $\quad$ $d=-\frac{1}{2}g0+c0+d=y(0)=0$   
故に、$y(t)=-\frac{1}{2}gt^2+(u\sin{\theta})t$

(3)運動の軌跡(xとyとの関係式)を求める   
$x(t)$の式から$t=x(t)/(u\cos{\theta})$
これを$y(t)=-\frac{1}{2}gt^2+(u\sin{\theta})t$に代入すると
$y(t)=(-g/2u^2\cos^2{\theta})x^2(t)+(\tan{\theta})x(t)$
これは上に凸な放物線である。
参考文献は

惑星運動

前述のようにケプラーは、火星と太陽の観測データをユークリッド幾何学を巧みに利用して分析し次の惑星運動の3法則を発見した。

惑星運動の3法則を運動の第2法則と万有引力の法則から導く

この3法則は、運動の第2法則と万有引力の法則から導くことが出来るが少し難しい数学が必要である。大学で学ぶ。
惑星の軌道を太陽を中心とする円運動に限定すると、高校の数学の知識で3法則を導ける。
この場合ケプラーの第一法則は、仮定から、明白なので、第二法則から始める。

ケプラーの第2法則の導出 
図 惑星の位置座標


第二法則は、太陽と惑星を結ぶ動径の単位時間に掃く面積が一定であることを主張する。円運動のばあい、これは等速円運動であることと同じである。
そこで等速円運動であることを導こう。
太陽と惑星は質点として扱い、質量をそれぞれ$M,m$とする。

惑星の軌道面をxy平面にし、太陽をその原点にとる。円運動の半径を$r$, 太陽と時刻$t$における惑星を結ぶ線分が、x軸となす角度を$\theta =\theta(t)$とおく。


惑星Pの位置;$\vec{r}(t)=r(\cos\theta(t),\sin\theta(t))$
惑星の速度;$\vec{v}(t)=d\vec{r}(t)/dt=r(d\cos\theta(t)/dt,d\sin\theta(t)/dt)$
$=r(- \sin\theta(t)\frac{d\theta(t)}{dt},\cos\theta(t)\frac{d\theta(t)}{dt})$ =$ r \frac{d\theta(t)}{dt}(- \sin\theta(t), \cos\theta(t)) $

惑星の加速度;$\vec{\alpha}(t)=d\vec{v}(t)/dt=r(d^2\theta(t)/dt^2)(-\sin\theta(t),\cos\theta(t))$
$+r(d\theta(t)/dt)(-\cos\theta(t)\frac{ d\theta(t)}{dt},-\sin\theta(t)\frac{ d\theta(t)}{dt} )$
$= r(d^2\theta(t)/dt^2)(-\sin\theta(t),\cos\theta(t))-r( \frac{d\theta(t)}{dt})^2( \cos\theta(t), \sin\theta(t)) $
惑星に働く力;万有引力の法則より、太陽の方向に向いた、大きさ$GMm/r^2$の力なので
$\vec{F}(t)=-(GMm/r^2)(\cos\theta(t),\sin\theta(t))$
と表せる。
この力が、惑星の運動を変化させ、上述の加速度を生じさせたのだから、運動の第2法則$\quad m\vec{\alpha}(t)=\vec{F}(t)\quad$より、
$mr(d^2\theta(t)/dt^2)(-\sin\theta(t),\cos\theta(t))-mr( \frac{d\theta(t)}{dt})^2( \cos\theta(t), \sin\theta(t)$
$ =-(GMm/r^2)(\cos\theta(t),\sin\theta(t))$
変形すると、
$mr(d^2\theta(t)/dt^2)(-\sin\theta(t),\cos\theta(t))$
$ =(mr(\frac{d\theta(t)}{dt})^2-GMm/r^2)( \cos\theta(t), \sin\theta(t)) \qquad ------ \qquad (1)$

$(-\sin\theta(t),\cos\theta(t))$ と$( \cos\theta(t), \sin\theta(t))$は直交するベクトルなので、(1)式が成立する必要十分条件は、
$d^2\theta(t)/dt^2=0 \qquad ------ \qquad (2)$,
$mr(\frac{d\theta(t)}{dt})^2-GMm/r^2=0 \qquad ------ \qquad (3)$
である。
(2)式から、角速度$\omega(t)=\frac{d\theta(t)}{dt}=\omega_{0}$(定数)が
(3)式から、$mr(\frac{d\theta(t)}{dt})^2=GMm/r^2$が
得られる。
これらより、惑星は等角速度
$\Large{\omega_{0}=\pm\sqrt{GM/r^3}}$ $\qquad ------ \qquad $ (4)
で太陽の周りを回転することが分かり、ケプラーの第2法則が得られた。

ケプラーの第3法則の導出 

惑星が太陽の周りを一周する時間$T$(周期という)は、$T=2\pi/\omega_0$なので、(4)式より、
$T=2\pi/\sqrt{GM/r^3}=2\pi\sqrt{r^3/GM}$,
故に$T^2=4\pi^2r^3/GM$, $T^2/r^3=4\pi^2/GM$
これは軌道が円の場合のケプラーの第3法則である。

万有引力の法則を,ケプラーの法則と運動の第2法則から導く

惑星が太陽の周りを円運動しているとき、太陽が惑星に及ぼしている力を計算する。
ケプラーの第2法則より、円運動する惑星は角速度一定である。これを$\omega_0$とする。
太陽の位置を原点とし円の半径を$r$とすると、この惑星の加速度は$\vec{\alpha}(t)=-r( d\theta(t)/dt)^2( \cos\theta(t), \sin\theta(t)) =-r\omega_0^2( \cos\theta(t), \sin\theta(t))$ 。これは、太陽にむかう大きさ$r\omega_0^2$のベクトル。
運動の第2法則より、惑星に働く力$\vec F$は、太陽の方向に、大きさ$mr\omega_0^2$
ここで、$m$ は惑星の慣性質量である。
$\omega_0^2$を$r$の関数で表すためケプラーの第3法則と用いる。
惑星の公転周期$T$と円の半径$r$の間には$T^2/r^3=C,\quad C$;定数
$T=2\pi/\omega_0$なので $(2\pi/\omega_0)^2/r^3=C \quad $∴$\omega_0^2=4\pi^2/(Cr^{3})$
それゆえ、力の大きさは
$mr\omega_0^2=\frac{4\pi^2}{C} \frac{m}{r^2}$
さらに、太陽の質量$M$が$k$倍になると、質量$M$の太陽が$k$個あり、それぞれが惑星に上記の力を与えると考えられる。
すると惑星に働く力は$k$倍になるので力の比例部分$\frac{4\pi^2}{C}$は太陽の質量$M$に比例することが分かる。
比例定数を$G$とおくと、$\frac{4\pi^2}{C}=GM$
従って惑星に働く力の大きさは、太陽の方向に、 $GM\frac{m}{r^2}=G\frac{mM}{r^2}$
これは万有引力の法則である。
(注)この式は万有引力の法則の式と同じだが、質量$m$は、慣性質量であり、対称性から太陽の質量$M$も慣性質量と考えられる。
しかしニュートンは重力を生む質量は、慣性質量と完全には一致しない可能性もあると考え、重力質量という概念を生みだしと思われる。
既述のように、多くの実験の結果、両質量は同一であると考えられている。
重量質量を使わず、慣性質量だけを用いても、ニュートン力学を構成することが出来る。これを提唱する物理学者もいる。
それには万有引力の法則のかわりに、次の法則を採用すればよい。
外力が働かないときは、どんな2質点も、お互いに相手に向かって, 加速度運動して近ずく。両者の加速度は、両者の距離の2乗$r^2$に反比例し、それぞれの慣性質量の比に反比例する。
式で書くと、
質点1の慣性質量と加速度の大きさを$m_1$,$\alpha_1$  
質点2の慣性質量と加速度の大きさを$m_2$,$\alpha_2$ 
とすると、$m_1\alpha_1=m_2\alpha_2$、$m_1\propto 1/r^2$,$m_2 \propto 1/r^2$ 
この法則と運動法則により2質点間に働く力(万有引力)を求めると、
ニュートンの万有引力の法則と同じ式だが、質量は慣性質量になり、
重量質量を用いずニュートン力学が構成できる。

振り子と単振動

質点のつり合い

質点に力F1,,Fnが作用し、質点が静止したまま(あるいは等速直線運動)であるとき、それらの力は釣り合っているという。
釣り合いの条件は、F1+ +Fn=0です(運動の第2法則と力の合成則から導出できる)。

仕事とエネルギー

仕事

物体に力を加えて動かす時、力はこの物体に仕事をするという。
仕事(の量)は力の大きさと動かした距離の積に比例する。
正確には、加えられる力$\vec F$ が一定で、
力の向きに対して角度$\theta$[rad] だけ傾いている直線上を $\vec s$ 移動したとき、
仕事W は、
$W=\|\vec F\|\|\vec s\| \cos\theta$    
で定義する。
ここで任意のヴェクトル$\vec a$に対して、$\|\vec{a}\|$はその大きさ$\sqrt{\sum_{i}a_i^2}$を表す。


特に、この式において$\theta=0$(すなわち $\cos\theta = 1$)とすると
「加えられる力が一定であり力の方向が運動の方向と一致している場合」になり、
$W=\|\vec F\|\|\vec s\| $ である。
また、$\theta=\pi/2$($\cos\theta = 0$)のとき、$W = 0$となる。
すなわち、力が運動の方向と直角方向にはたらいている場合、その力は仕事をしない。

$W=\|\vec F\|(\|\vec s\| \cos\theta)$と表現すると、
仕事は、力の方向に$\|\vec s\| \cos\theta$だけ動かしたときの仕事に等しいことが分かる。

$W=(\|\vec F\| \cos\theta)\|\vec s\|$と表現すると、
仕事は、
大きさ$\|\vec F\| \cos\theta$ の$\vec s$方向の力を加えて、$\vec s$だけ動かしたときの仕事に等しい
ことが分かる。


仕事の内積を用いた表現

内積は、仕事の記述や計算に便利な数学の概念である。

内積の定義と仕事の内積表現

ベクトル$\vec a,\vec b$の内積$ \vec a \cdot \vec b $は、$\|\vec{a}\|\|\vec{b}\| \cos\theta$で定義する。
ここで、$\theta$は、ベクトル$\vec a,\vec b$のなす角($0\le \theta \le \pi$ )である。

ウィキブックスでは2次元のベクトルを中心にして説明しているが、
3次元ベクトルの場合にも、成り立つように修正することは容易である。
例えば、ベクトル$\vec a = (a _1,a _2,a_3)$の長さは、$\|\vec a\|= \sqrt {a _1^2 +a _2^2+a _3^2}$,
ベクトルの内積は、この長さを使えば、全く同じ式で良い。

内積を使った 仕事の表現

内積 $\cdot $を用いると、
物体に力$\vec{F}$を加えて、$\vec{PQ}$(P点からQ点まで)動かした時の力のなす仕事は、
$ W=\vec{F}\cdot\vec{PQ} $と表せる。

内積の性質

仕事は、前述のように内積で表現できるので、内積の性質を調べておくと、仕事について考察する時に役に立つ。
$\vec a,\vec b,\vec c$が、すべて同じ次元(2か3)のベクトルとし、 $\alpha$は実数とする。

(1)$\vec a \cdot \vec b =\vec b \cdot \vec a$
(2)$\vec a \cdot \vec b =\sum_{i}a_ib_i$ 、
ここで$a_1,b_1$はそれぞれ$\vec a,\vec b$のx座標成分、同様に、添え字2はy座標成分、3はz座標成分
直交座標系はどんなものでも良い。しかしすべてのベクトルは同じ座標系で座標成分表示しなければならない。
(3)$(\vec a +\vec b) \cdot \vec c =\vec a \cdot \vec c+\vec b \cdot \vec c$   
(4)$(\alpha \vec a)\cdot \vec b =\vec a \cdot (\alpha \vec b)=\alpha (\vec a \cdot \vec b)$
が成り立つ。

(証明)
(1)は、内積の定義から明らか。
(2);次の三角形の余弦定理を利用する。
三角形の第2余弦定理;
図のような$\triangle {ABC}$を考える。
頂点A,B,Cの対辺の長さをそれぞれ$a,b,c$とし、$\angle{ACB}=\theta$とする。
すると、$c^2=a^2+b^2-2ab\cos\theta$
余弦定理の証明;頂点$A$から対辺$BC$におろした垂線の足を$H$とする。
ピタゴラスの定理により、
$c^2=\overline{BH}^2+\overline{AH}^2$。$\qquad$ 右辺の第2項に、再び、ピタゴラスの定理を適用して、
$=\overline{BH}^2+(b^2-\overline{CH}^2)$ $\qquad$ $\overline{BH}=a-\overline{CH}$を代入すると、
$=(a-\overline{CH})^2+(b^2-\overline{CH}^2)=a^2+b^2-2a\overline{CH}$,$\quad$ $\overline{CH}=b\cos\theta$なので、代入すると
$=a^2+b^2-2ab\cos\theta$
証明終わり。
(2)の証明  
ベクトル$\vec a $と$\vec b $を、
始点が点$C$である有向線分で表現し、その終点を$B$,$C$で表す。
すると$\vec a=\vec{CB}$, $\vec b=\vec{CA}$である。
ベクトル$\vec c=\vec a-\vec b$を導入すると、
$\vec c=\vec a-\vec b=\vec{CB}-\vec{CA}=\vec{CB}+\vec{AC}=\vec{AB}$
3角形$\triangle {ABC}$を考え、第2余弦定理を適用しよう。
$\angle{ACB}=\theta$とおく。すると、
$\|\vec c\|^2=\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-2\|\vec a\|\|\vec b\|\cos{\theta}$
$=\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-2\vec a \cdot \vec b$が得られる。
この式を変形して$\vec a \cdot \vec b$だけを左辺に置くと、
$\vec a \cdot \vec b=(\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-\|\vec c\|^2)/2$ 。
$\vec c=\vec{AB}=\vec{AC}+\vec{CB}=-\vec b+\vec a$なので、

$\vec a \cdot \vec b=(\|\vec a\|^2+\|\vec b\|^2-\|\vec a-\vec b\|^2)/2 $
この右辺を、ベクトルの直交座標成分で表すと、次式が得られる。
$\vec a \cdot \vec b=(\sum_{i}a_i^2+\sum_{i}b_i^2-\sum_{i}(a_i-b_i)^2 )/2 $
$=\sum_{i}a_i b_i$
(2)の証明終わり。
(性質3)の証明;ある一つの直交座標系をさだめ、両辺を、性質(2)を利用して、座標成分であらわす。両辺が等しいことが分かる。
(性質4)の証明;同様に、3つの式を、座標成分表示すれば、みな等しいことが、簡単に分かる。

物体が曲線運動するときの仕事量の求め方

力を受けた時の物体の運動は直線とは限らないが、運動の軌跡を細かく区切って眺めると、線分に近いので、物体の変位は、ごく短い線分をつなぎ合わせたものと考える。すると各線分毎に仕事を計算しそれをたせば、全体の仕事量を求めることができる。

エネルギー

物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。

仕事の単位

仕事の定義$W=\|\vec F\|\|\vec s\| \cos\theta$から、仕事の単位は、力の大きさ$\|\vec F\|$の単位と長さ$\|\vec s\|$の単位を掛けたものになる($ \cos\theta$ は無単位なので )。
MKSA単位系では、力の大きさの単位は$N$(ニュートン)、長さの単位は$m$(メートル)なので、仕事の単位は$Nm$ となる。
これを$J$(ジュール)と呼ぶ。$J=Nm$である。

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