会社法・企業倫理/持続可能性の追求

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石油精製触媒のRe(レニウム)は,1mg使用しても鉄1t使用したに匹敵する資源枯渇インパクトをもつ.
石油精製触媒のRe(レニウム)は,1mg使用しても鉄1t使用したに匹敵する資源枯渇インパクトをもつ.
なお石油などの非金属資源も同様の手法で計算でき,原油の場合は鉄比でほぼ0.74となる <sup> [[#参考文献|[r7]]] </sup>.
なお石油などの非金属資源も同様の手法で計算でき,原油の場合は鉄比でほぼ0.74となる <sup> [[#参考文献|[r7]]] </sup>.
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=== 資源生産性の向上 ===
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使用するのが再生不可能な資源であれば,それだけ資源の枯渇を促進させることにもつながる.
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企業の持続可能性を議論する際,環境面でなく,資源以外のファクタ(要素)を検討する必要がある.
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しかし円安の進行,原材料・仕入価格の高騰,人手不足など中小企業を取り巻く環境は依然として厳しい.
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安定した財務基盤やブランド力,他社との差別化が確立できない老舗企業は,業歴の年数だけで生き残ることが難しい.
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常に新たな発想,柔軟な経営方針など,新興企業の利点を取り入れることも必要となっている.
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外部環境変化への追従を目的とし,人的リソースの再配置も含めた,事業継続性に対する危機感と戦略変更を余儀なくされるケースが出てきた.
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proxy fight(株主総会議決権行使にかかる他の株主の委任状を,会社の経営陣あるいは別の立場の株主と争奪する多数派工作)
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まで発展するケースさえある.
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これらの社内紛争は,企業価値を毀損(きそん)するものであって,顧客・株主の利益には帰さない.
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外部環境つまり市場・顧客の変化への追従は,業態・規模によってケースバイケースであろうが,
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どのような業態であっても,変化への追従を無視して放置すれば,システムが硬直化・陳腐化することは
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避けられない.
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自動車業界では「極小量生産,高価格化」か「大量生産,低価格化」か,という2つの方向性がある.
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前者は40名の社員で一台100万ユーロ(1億3千万円)の超高級車を年間20台生産(タクトタイム=1年)し,
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後者は7万人の(単独)社員で一台2万ユーロ(260万円)の大衆車を年間20万台生産(タクトタイム=56秒)している.
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市場が企業の対応可能能力を超えてシュリンク(縮小)した場合,どちらの方が企業の持続可能性へ与える影響が少ないか,
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火を見るよりも明らかであろう.
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経営の継承という観点から,本起業コースでは,起業戦略科目群として「[[経営継承論]]」を設置している.
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具体的な戦略については各科目の内容を参照すること.
== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
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*[r6] 地球の未来を考える(サステナブル・ナレッジ), http://www.flow-stock.com/chikyuutop.html
*[r6] 地球の未来を考える(サステナブル・ナレッジ), http://www.flow-stock.com/chikyuutop.html
*[r7] 原田幸明(2005)『材料のエコバランス評価と資源生産性』金属, Vol.75, No.9,アグネ技術センター.
*[r7] 原田幸明(2005)『材料のエコバランス評価と資源生産性』金属, Vol.75, No.9,アグネ技術センター.
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*[r8] 東京商工リサーチ『2014年「倒産企業の平均寿命」調査』http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20150209_05.html
== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2015年4月26日 (日) 23:50 時点における最新版

会社法・企業倫理 > 持続可能性の追求

目次

概要

現在「持続可能性」という言葉には,地球環境の持続可能性という意味だけでなく, 人間の社会経済システムの持続可能性も暗黙のうちに含まれるようになっている. 特に国際機関などでは,生態系の崩壊を待つまでもなく,地球規模での貧富の差の拡大と, 悪化する途上国の貧困問題という人間社会のひずみが,人類社会の存続を脅かす可能性があることが 強く認識されるようになってきた [r1]

科学技術と産業社会の発達により,大量の余剰生産物が生み出され,「モノの需要」は個人の生存のための基本的なニーズではなく, 人々の無限大に拡大する欲望によって動かされるようになった. そのようなヒトの無限の欲望にあわせた「無限の成長」が必要なように思えてしまう. しかし,地球(上の資源)が有限であることを認識すれば,それは幻想にすぎないことがすぐにわかる.

持続可能性を議論するのであれば「最適規模」という考え方を考慮しなければならない. 質的な向上を意味する持続可能な発展は,この「最適規模」の概念とは矛盾しない. 地球環境の有限性が明らかな以上,「(無限の)成長」ではなく「持続可能な発展」が,人類最大かつ共通の課題となっている [r2][r3]

持続可能な開発」は現在,環境保全についての基本的な共通理念として,国際的に広く認識されている. これは「環境」と「開発」を互いに反するものではなく,共存し得るものとしてとらえ, 環境保全を考慮した節度ある開発が(ある範囲までは)可能である,という考えである.

持続可能な農業とは,持続可能性を考えた農業のことである. 農業に関する環境問題は,実は多様で深刻なものも多い.農地開拓の際に自然環境を破壊したり,作物の栽培に必要な淡水を過剰に使用することで水資源の減少を招いている. 収穫率を優先するあまり,農薬により土壌汚染や水質汚染を起こしている. このように,人類の持続可能性を直接脅かす可能性が高いものが食料危機と水資源不足である [r1]

本起業コースでは,イノベーション科目群として「新農業」「新養殖」を設置している. 具体的なソリューションについては各科目の内容を参照すること.

環境と社会の持続可能性

地球の生態的な特徴に着目し,持続可能な社会の原則として広く受け入れられている一例として, 「ナチュラルステップの4つのシステム条件」がある(表1) [r4]. この4条件のうち1~3の条件は,地球環境の有限性を前提とした社会・経済システムの原則を示し, 4は、社会の持続可能性に配慮した条件となっている.

表1:ナチュラルステップ 4つのシステム条件(文献 [r4] から引用)
4つのシステム条件 持続可能性の基本原則
持続可能な社会では自然の中で 持続可能な社会を構築するためには
1. 地殻から掘り出した物質の濃度が増え続けない 1. 地殻から掘り出した物質(重金属や化石燃料など)が蓄積していくことに加担しない
2. 人間社会が作り出した物質の濃度が増え続けない 2. 人間社会で作り出した化学物質と物質(ダイオキシン、PCB、DDTなど)が蓄積していくことに加担しない
3. 物理的な方法で劣化しない 3. 自然や自然のプロセスの物理的な劣化や破壊に加担しない(森林の乱伐採や重要な野生の生息地を消滅させるなど)
4. 人々が自らの基本的ニーズを満たそうとする行動を妨げる状況を作り出してはならない 4. 人々が自らの基本的なニーズを満たそうとする行動を妨げる状況を作り出すことに加担しない(不安定な労働条件や不十分な給料など)

上記の4条件を満たす社会・経済システムとは,例えば以下のような様態が考えられる.

  • エネルギー源を化石燃料依存から再生可能エネルギーにシフトする
  • プラスチックや鉄非鉄金属・希少金属などの鉱物資源を,リユース・リサイクルして使う循環型の仕組みを作る
  • 分解しない有害化学物質への依存をやめる
  • 森林資源や生物の多様性を保護する
  • 植林などによって表土流出などによる土地の劣化や砂漠化を食い止める
  • 限られた資源を公平に分配できる社会制度を構築する

つまり,環境とともに持続可能な社会とは,高い資源の効率性(経済面での効率性と環境負荷面での効率性)と, 公平な分配制度がきちんと組み込まれている社会と言えるであろう.

資源生産性に強い企業の持続可能性

社会システムの持続可能性として注目されている指標のひとつに「資源生産性」がある. 資源生産性とは,天然資源や原材料・エネルギーを投入した時,投入量一単位当たりどれだけ付加価値を生み出せるかを指す. 新興国の台頭とともに資源価格が不安定さを増す中で,企業が優れた省エネルギーや新エネルギー技術を元に国際競争に打ち勝つ ためのキーワードとして使われている. 資源をめぐる環境は厳しさを増しているなか,急速に経済成長する新興国が大量の資源を必要とするようになっており,今後, 需要増大が不可避な状況にある [r5]

再生可能資源 VS 再生不能資源

資源には「再生可能な資源」と「再生不可能な資源」がある.

再生可能な資源とは,例えば森林・水・魚などが挙げられる. 森林を一度伐採しても,苗木を植えることで再び森林を作り出すことができる. しかし,自然資源は,消費してから再生させるまでには時間がかかる特徴がある.

再生不可能な資源とは,例えば石油や石炭・鉱物などが挙げられる. それらは再生されることがなく,すべて使い切ってしまえば,地球上から無くなってしまう. もちろん,石油や石炭は,何千万年という時間の経過によって再生させることは可能かもしれないが, 今を生きる私達にとっては,再生不可能資源という認識を持たざるを得ない.

再生不能の「資源枯渇指標」として,原田ら([r7])は 「一定量の資源を消費することによって資源消費速度がいかに加速されるか」 という,一種の資源枯渇加速度で表すことを提案している. 原田らの研究によると,LCD透明電極に使用されているIn(インジウム), 燃料電池電極や触媒に使用されているPt(白金), 石油精製触媒のRe(レニウム)は,1mg使用しても鉄1t使用したに匹敵する資源枯渇インパクトをもつ. なお石油などの非金属資源も同様の手法で計算でき,原油の場合は鉄比でほぼ0.74となる [r7]

資源生産性の向上

ある電器メーカーの36型ハイビジョンテレビ(製品重量=80~90kg)は,1993年製造当時は 約584トン(製品重量の約6,500倍)の資源を使用していた [r5]. これに対して,資源生産性を向上した2003年製造のものでは,約210トンと大幅に削減された, という例がある.つまり,技術革新や使用素材の見直しなどによって,資源生産性が高まった ことを意味している.

大量の資源を使えば,大量の廃棄物が発生する. また,加工するために大量のエネルギーを必要とし,そのエネルギーの使用により大量の排出物 が発生する.加工するためのエネルギーを作り出すために,大量の資源(原油,原子力)が投入 されていることを忘れてはいけない. 使用するのが再生不可能な資源であれば,それだけ資源の枯渇を促進させることにもつながる.

資源以外のファクタ

企業の持続可能性を議論する際,環境面でなく,資源以外のファクタ(要素)を検討する必要がある.

企業寿命の短縮化 [r8] が表面化している. 2014年の企業倒産件数は,6年連続で前年を下回り,24年ぶりに1万件を割った. しかし円安の進行,原材料・仕入価格の高騰,人手不足など中小企業を取り巻く環境は依然として厳しい. このため,業歴10年未満で事業を断念せざるを得なくなるケースも見られ,平均寿命を押し下げる格好となった [r8]

2014年の老舗企業(業歴30年以上)の負債上位をみると,バブル期に不動産やゴルフ場開発を行い,バブル崩壊で行き詰まり, その債務整理が一巡したことで倒産したケースが目立つ. 安定した財務基盤やブランド力,他社との差別化が確立できない老舗企業は,業歴の年数だけで生き残ることが難しい. 常に新たな発想,柔軟な経営方針など,新興企業の利点を取り入れることも必要となっている.

外部環境変化への追従を目的とし,人的リソースの再配置も含めた,事業継続性に対する危機感と戦略変更を余儀なくされるケースが出てきた. 新旧経営陣との摩擦・衝突が発生し, proxy fight(株主総会議決権行使にかかる他の株主の委任状を,会社の経営陣あるいは別の立場の株主と争奪する多数派工作) まで発展するケースさえある. これらの社内紛争は,企業価値を毀損(きそん)するものであって,顧客・株主の利益には帰さない.

外部環境つまり市場・顧客の変化への追従は,業態・規模によってケースバイケースであろうが, どのような業態であっても,変化への追従を無視して放置すれば,システムが硬直化・陳腐化することは 避けられない.

自動車業界では「極小量生産,高価格化」か「大量生産,低価格化」か,という2つの方向性がある. 前者は40名の社員で一台100万ユーロ(1億3千万円)の超高級車を年間20台生産(タクトタイム=1年)し, 後者は7万人の(単独)社員で一台2万ユーロ(260万円)の大衆車を年間20万台生産(タクトタイム=56秒)している. 市場が企業の対応可能能力を超えてシュリンク(縮小)した場合,どちらの方が企業の持続可能性へ与える影響が少ないか, 火を見るよりも明らかであろう.

経営の継承という観点から,本起業コースでは,起業戦略科目群として「経営継承論」を設置している. 具体的な戦略については各科目の内容を参照すること.

参考文献

関連項目

演習課題

個人用ツール