物理/電気と磁気(1) 静電気と電界、電流と磁界

提供: Internet Web School

(版間での差分)
 
(間の72版分が非表示)
1 行: 1 行:
[[物理]]
[[物理]]
-
> [[物理/9章 電気と磁気(1)静電気と電界、電流と磁界|第9章  電磁気(1)静電気と電界、電流と磁界]] <br/>
+
> [[物理/電気と磁気(1) 静電気と電界、電流と磁界|9章 電気と磁気(1) 静電気と電界、電流と磁界]]
-
テレビ、電話、携帯電話、冷蔵庫、パソコン、コピー機。現代社会は電気や磁気を利用した製品に満ちています。9章、10章では、電気・磁気は何か、どのような性質を持つかについて学びます。
+
 
-
参考文献;[[wikibooks_ja:高等学校理科 物理II 電気と磁気|ウィキブックス(高等学校理科 物理II 電気と磁気)]]  
+
テレビ、電話、携帯電話、冷蔵庫、パソコン、コピー機。<br /> 現代社会は電気や磁気を利用した製品に満ちている。<br /> この章と次の章では、電気・磁気は何か、どのような性質を持つかについて学ぶ。
 +
 
 +
*参考文献;[[wikibooks_ja:高等学校理科 物理II 電気と磁気|ウィキブックス(高等学校理科 物理II 電気と磁気)]]  
 +
== 電磁気現象の根源 ==
 +
物質をつくっている原子は、原子核と電子から出来ている。<br />詳しいことは11章で学ぶが、原子核はいくつかの陽子と中性子からできている。<br />電子の個数は陽子と同数である。<br />
 +
陽子は正の電荷+eをもち、電子はこれと同じ大きさで符号が反対の負の電荷-eを持つ。</br>同符号の電荷は互いに反発し、異符号の電荷は互いに引き合う。
 +
 
 +
陽子と電子の存在により、原子や分子、固体・液体など物体は生成され、<br />電荷、電流、磁石、電磁場、電磁波などの現象が生じる。<br />この章と次章でこれらについて学ぶ。<br />
 +
(注)電荷の正負について:陽子どうし、電子どうしは反発するが、陽子と電子は引き合う。従って陽子と電子はことなった電荷である。さらに陽子と電子の個数が同じだと離れた所からみると、打ち消し合って電荷がないようにみえる。このため一方の電荷に+、他方にーをつけて扱うと大変具合が良い。そこで正、負の電荷として両者をあつかうのである。どちらにーをあててもよかったが歴史的に電子にーをあてた。<br />なお、原子核のなかで電気的に反発する複数の陽子がくっついているのは、反発力より強い核力で引き合っているため(後で学ぶ)。
 +
 
 +
==静電気==
 +
この節では、まず、静止した電荷(静電気という)の性質を学ぶ。
 +
 
 +
===電荷===
 +
原子は正負等しい電荷をもつので、離れた所から観測すれば、正と負の電荷が打ち消しあっている(電荷をもたない)。<br />したがって、物質は通常は電荷を持たない。物質が電子をいくつか失ったり、獲得すると、物質は電荷を帯びる。帯電するという。<br />したがって全ての電荷はe の整数倍である。eを電気素量という。
 +
====点電荷====
 +
大きさの無視できる電荷を点電荷という。
 +
====電荷の単位====
 +
電荷の単位は、クーロンとよばれ、電流を利用して決められる。
 +
*[[wikipedia_ja:クーロン|ウィキペディア(クーロン)]]
 +
====電荷保存の法則====
 +
電荷は消滅も生成もしないことが、経験によって確かめられている。これを電荷保存法則という。
 +
*[[wikipedia_ja:電荷保存則|ウィキペディア(電荷保存の法則)]]
 +
 
 +
====摩擦電気====
 +
2つの物質をこすりあわせると、このエネルギーで、電子が一方の物質から他方の物質に移動して、<br />前者は正の電荷を帯び、(電荷保存法則より)後者はそれと同じ大きさの負の電荷を帯びる。<br />この帯電した電気を摩擦電気という。
 +
*[[wikipedia_ja:摩擦電気|ウィキペディア(摩擦電気)]]
 +
 
 +
====クーロンの法則====
 +
同符号の2つの電荷は互いに反発し、異符号の電荷は互いに引き合う。<br />2つの静止した点電荷間の力の向きは、これらを結ぶ直線の方向と一致し、その大きさは、2つの電荷の積に比例し、その距離の2乗に反比例する。具体的には、
 +
*[[wikipedia_ja:クーロンの法則|ウィキペディア(クーロンの法則)]]
 +
を参照のこと。向きも考慮したベクトル表示にも慣れたおくと良い。電荷<tex>q_1</tex>の位置ベクトルを<tex>r_1</tex>、電荷<tex>q_2</tex>の位置ベクトルを<tex>r_2</tex>、電荷<tex>q_1</tex>が電荷<tex>q_2</tex>から受けるクーロン力を<tex>\mathit{F_1}</tex>とすると
 +
<tex>\mathit{F_1}=\frac{q_1q_2}{4 \pi \varepsilon_0}\frac{1}{|r_1-r_2|^2}\frac{r_1-r_2}{|r_1-r_2|}</tex>にも慣れたおくと良い。
 +
=====3つ以上の電荷に働く力=====
 +
N 個(>2)の電荷<tex>q_1,,,,q_N </tex> があるとき、<tex>q_1</tex> に作用する電気力は、<tex>q_2,,,,q_N </tex> のそれぞれから<tex>q_1</tex>が受けるクーロン力(ベクトル表示)の和になることが実験で確かめられている。
 +
これを、'''クーロン力の重ね合わせ原理'''という。
 +
=====クーロン力は保存力=====
 +
クーロン力が保存力である。このことを確かめてください。保存力については、[[5章 力学(4) 運動量保存則と力学的エネルギー法則|5章 §4 保存力と位置エネルギーおよび力学的エネルギー保存則 ]]を参照のこと。
 +
=====自己力について=====
 +
点電荷が自分自身に力(自己力という)を与えるだろうか。これは大変難しい問題であり、いまだに未解決の問題もある。高校では、この力を無視しても良い現象を扱う。
 +
====電気力は重力よりはるかに大きいこと====
 +
質量1gの2つの質点にそれぞれ1クーロンの電気を帯電させ、1cm離しておいたときに、作用する静電気力と重力を計算して比較すること。
 +
===電界(あるいは電場)===
 +
電荷間に作用する力を近接作用の考え方で考察して電界(電場ともいう)という重要な概念を得る。<br />クーロンの法則を電界の概念でいいかえると、電界にかんするガウスの法則が得られる。電界から電位や電圧という重要な概念も得られる。
 +
====遠隔作用と近接作用====
 +
電荷の間のクーロン力はどのようにして働くのだろうか。遠隔作用と近接作用の二通りの考え方がある。遠隔作用では、電荷が互いに直接力を及ぼしていると考える。近接作用では、電荷が空間を歪ませ電界を作り、この歪んだ空間(電界)がもう一つの電荷に力を及ぼすと考える。現在は近接作用が自然の法則であると考えられている。
 +
====電界の定義====
 +
電荷に静電気力(クーロン力)を及ぼす空間を電界と呼ぶ。<br />空間の任意の点の電界の強さと向きは、その点に単位電荷を置いたときに作用する静電気力で定義する。詳しくは
 +
*[[wikipedia_ja:電場|ウィキペディア(電場)]]
 +
=====電界によるクーロンの法則の表現=====
 +
電荷<tex> \mathit{q} </tex>が、電荷<tex> \mathit{q'} </tex>から受ける力は、<br /> <tex> \mathit{q'} </tex> が<tex> \mathit{q} </tex>点に作る電界<tex> \mathit{E} </tex> を用いて、
 +
<tex> \mathit{F}=\mathit{q}\mathit{E} </tex>
 +
====点電荷のつくる電界====
 +
点電荷のつくる電界については
 +
*[[wikipedia_ja:電場|ウィキペディア(電場)]] の2.1 クーロンの法則
 +
を参照のこと。静電荷の作る電界は、時間変動がなく、静電界と呼ばれる。 
 +
====2つ以上の点電荷の作る電界====
 +
クーロン力の重ね合わせの原理と電界の定義から、それぞれの電荷がつくる電界のベクトル和を取れば良いことが分かる。'''電界の重ね合わせの原理'''という。
 +
====電界の単位====
 +
<tex> \mathit{F}=\mathit{q}\mathit{E} </tex>, <br />電荷<tex>\mathit{q}</tex>の単位はC(クーロン)、力<tex> \mathit{F} </tex>の単位はN(ニュートン)なので、<br />電界<tex> \mathit{E} </tex>の単位は<tex> \mathit{N/C} </tex> である。
 +
====電気力線とガウスの法則====
 +
=====電気力線とは  =====
 +
電場を目で見て理解できるように工夫したのが電気力線。<br />電界内で正の電荷が電界から力を受けて非常にゆっくりと動く時の向きのついた軌跡(曲線)を考え、電気力線と呼ぶ。<br />正確には、曲線の各点の接線の向きが電界の向きに一致するとき、電気力線という。
 +
=====電気力線の本数と密度=====
 +
ある点で電界の強さが<tex> \mathit{E} </tex> であるとき、<br />その点の周りに電界と直交する微小な平面部分を考え、<br /> そこを<tex>1m^2 </tex> あたり<tex> \mathit{E} </tex>本の密度で電気力線が通るように描いて、電界の強さを表示する(電界の強さが、負のときは向きを逆に、また整数でなく、例えば0.1のような時は、一つの電気力線が0.1本を表すとして、図示すればよい。もっと厳密な方法は大学で学ぶ)。
 +
 
 +
=====ガウスの法則=====
 +
● O点に置かれた一つの点電荷<tex> +q </tex>がつくる電気力線;O点を始点とする外向きの半直線。<br />その密度;O点を中心、半径<tex>r</tex> [m]の球面上での電界の強さは、<tex>\mathit{E}=\frac{q}{4 \pi \varepsilon_0}\frac{1}{r^2} [N/C] </tex>なので、<tex>1m^2 </tex> あたり E 本の電気力線が球面を、中から外に向かって、貫く。<br />球面の中から外に向かう電気力線の本数;球面の面積は<tex> 4 \pi r^2  </tex> なので、球面全体を貫いて出ていく電気力線の総本数は<tex>\frac{q}{\varepsilon_0} </tex>。球面の半径を変えてもこの本数は変わらない。少し高等な数学を利用すると、O点を含む任意の形状の立体の表面を貫いて出ていく電気力線の総数も、<tex>\frac{q}{\varepsilon_0} </tex>であることが示せる。<br />●O点を含まない任意の形状の立体の表面を考えると、O点からの半直線である電気力線がこの面から立体の中にはいると、必ず出ていくので、この立体に入る電気力線の本数は、出ていく本数と等しい。前者は負の本数と取り決めると、合計して、0本となる。故に、任意の形状の立体の表面を貫いて出ていく電気力線の総数=<tex>\frac{q}{\varepsilon_0} </tex>が成立する。ここで<tex> q </tex>はこの立体の内部にある点電荷。<br />
 +
● 重ね合わせの原理をもちいると、上記の法則は次のように、一般化出来る。<br />
 +
任意の形状の立体の表面を貫いて出ていく電気力線の総数=<tex>\frac{q}{\varepsilon_0} </tex>。
 +
ここで、<tex>q</tex>はこの立体の内部にある全電荷量。これを'''ガウスの法則'''という。
 +
=====ガウスの法則の応用=====
 +
例1:面密度<tex>\sigma </tex>で、一様に電荷が分布する無限に広い平面の作る電界。<br />解:<tex>E=\frac{\sigma}{2 \varepsilon_0} </tex><br />例2:平行板コンダンサー;2枚の金属の薄い平板を距離dをへだてて平行に置いたもの。<br />その1枚に面密度 <tex>+\sigma </tex>、他方の板に面密度<tex>-\sigma </tex>
 +
の電荷を帯電させた時、周りに生じる電界を求めよ。<br />解:例1と重ね合わせの原理より、極板間では<tex>E=\frac{\sigma}{\varepsilon_0} </tex>,他では零。
 +
 
 +
 
 +
===電位と電圧===
 +
電界中で電荷は力を受ける。その力と逆向きで同じ大きさ(実際にはそれより無限小大きい)の力を与えて、単位電荷を基準とするO点からA点に動かすのに必要なエネルギーを、O点を基準点としたA点の電位という。以下を参照のこと。
 +
*[[wikipedia_ja:電位|ウィキペディア(電位)]]
 +
2点間の電位の差を、電位差あるいは電圧という。
 +
=====電位は移動経路によらず、同じ値になること=====
 +
クーロン力は保存力である(このことを確かめてください)。そのため、今説明した電位は、O点からA点に動かす経路には関係なく定まる。保存力については、[[物理/力学(4) 運動量と力学的エネルギー保存則|力学(4) 運動量と力学的エネルギー保存則]] を参照のこと。
 +
 
 +
====電位・電圧の単位====
 +
電荷の単位を[C],仕事の単位を[J]にした時の電位を、ボルトという。すなわち[V]=[J/C]。
 +
*[[wikipedia_ja:ボルト|ウィキペディア(ボルト)]]
 +
 
 +
====点電荷のつくる電界の電位====
 +
電位の基準点として無限の彼方をとる。A点に置かれた+q[C]の電荷のつくる電界の電位は、A点から距離r[m]の点で、<tex>\mathit{V}=\frac{q}{4 \pi \varepsilon_0 r}</tex>
 +
====2つ以上の点電荷の作る電界の電位====
 +
電界の重ね合わせの原理から、それぞれの点電荷のつくる電位を加えればよい。
 +
 
 +
====等電位面====
 +
電位の等しい点をつないで出来る面を等電位面という。等電位面と電気力線は直交していることが示せる。導体のすぐ外側の電界は、導体表面に垂直である。理由を考えてみてください。
 +
====静電界中の導体と静電誘導====
 +
導体に、静電界をかけると、内部の自由電子が電界から力を受け、導体内部の電界が零になるまで(速やかに)移動する。これを静電誘導という。詳しくは
 +
*[[wikipedia_ja:静電誘導|ウィキペディア(静電誘導)]]
 +
 
 +
====静電遮蔽====
 +
静電界の中に置かれた、導体の箱の中の空間には、電荷が存在しない限り、電界は存在しない。すなわち、導体の箱の内部は、外部の静電界から遮蔽されている。
 +
====電界中の不導体と誘電分極====
 +
*[[wikipedia_ja:誘電分極|ウィキペディア(誘電分極)]]
 +
===コンデンサー===
 +
コンデンサーは電気を蓄える道具である。
 +
*[[wikipedia_ja:コンデンサ|ウィキペディア(コンデンサ)]]
 +
====蓄えられる電気量と電圧の関係====
 +
<tex>Q = C V </tex> <br/>
 +
Cはコンデンサーの電気容量と呼ばれる。その単位は[[wikipedia_ja:ファラド|ファラッド[F]]]。<br/>平行板コンデンサーの場合には、極板の面積をS,極板間の距離をdとすると、<tex>C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}</tex>.  <br/>  ここで、<tex>\varepsilon_0 </tex>は真空の誘電率と呼ばれる。実測によると<tex>\varepsilon_0 = 8.85418782^{-12} </tex>F/m である。
 +
 
 +
====コンデンサーの誘電率====
 +
真空だった極板間を誘電体(不導体)で満たすと、誘電分極のため、コンデンサーの容量が、増える。<tex>C = \varepsilon_r \varepsilon_0  \frac{S}{d}</tex>。 ここで、<tex> \varepsilon_r </tex>は比誘電率といい、1以上の、誘電体に固有な値。
 +
*[[wikipedia_ja:比誘電率|ウィキペディア(比誘電率)]]
 +
<tex> \varepsilon_r \varepsilon_0 </tex>を、この不導体の誘電率という。
 +
 
 +
====たくわえられるエネルギー====
 +
コンデンサーに電荷<tex> Q_1 </tex>を蓄えるのに必要なエネルギーEは、<tex> E = \frac{1}{2} Q_1 V_1 =\frac{1}{2} C {V_1}^2</tex> である。 ここで、<tex> Q_1 = C V_1 </tex><br/>
 +
その理由:横軸にQ,縦軸にVをとり、<tex>Q = C V </tex> のグラフ(直線)を書く。q = C v とし、電荷をq からq+<tex>\delta{q} </tex>まで増やすのに必要なエネルギーは<tex> \delta{E} = \delta{q}</tex> v なので,<tex> \delta{q} </tex>を小さくとれば、<tex> \delta{E} </tex>は,Q軸と直交する2本の直線<tex> Q=q, Q=q+\delta{q} </tex> と直線<tex>Q = C V </tex> で囲まれた領域の面積にほぼ等しい。
 +
全エネルギーE は、<tex> q = 0 </tex> で <tex> \delta{E} </tex>を求め始め、q=0+<tex>\delta{q} </tex> 、 q=0 +2<tex>\delta{q} </tex> 、、、、と増やして<tex> q = Q_1 -\delta{q} </tex> までの<tex> \delta{E} </tex>を求め。加え合わせればよい。故にE は、Q軸と直線<tex> Q = Q_1 </tex> ,直線<tex>Q = C V </tex>によって囲まれる3角形の面積になる。
 +
 
 +
== 静磁気==
 +
古代ギリシアでは、鉄を引き寄せる石として磁石はすでに知られていた。現代では、磁石や磁気現象は多くの機器で利用されている。
 +
===磁石===
 +
磁石にはN極とS極の2つの磁極がある。これらの磁極は単独で存在することはなく、必ず両極が一緒になって磁石を構成する。詳しくは
 +
*[[wikipedia_ja:磁石|ウィキペディア(磁石)]]
 +
 
 +
===磁荷のクーロン則===
 +
磁荷のあいだにも、電荷と同じ形式の力が働く。
 +
*[[wikipedia_ja:磁荷に関するクーロンの法則|ウィキペディア(磁荷に関するクーロンの法則)]]
 +
====磁荷の単位====
 +
真空中の磁荷A,Bの距離が1mのときに、<tex>6.3 \times 10^4[N] </tex>の力が生じ、かつ、A,Bの大きさが等しい時の磁荷の大きさを1Wb(1ウェーバ)ときめる。
 +
*[[wikipedia_ja:ウェーバ|ウィキペディア(ウェーバ)]]
 +
 
 +
===磁界と磁力線===
 +
電荷の場合と全く同じように、磁荷の間の力を近接作用としてとらえる。すると、磁荷によって周りの空間は磁気的に歪み(磁界あるいは磁場という)、ここに他の磁荷を置くと、その点の磁界によって力を受けると考えられる。各点における磁界''H''は、その点に1WbのN極を置いたときに受ける磁気力で定義する。従って、磁界の単位は[N/Wb] となる。</br>
 +
● 磁力線:電界に対応して電気力線を考えたように、N極を正の電荷に対応させると、磁界にたいして磁力線を考えることができる。磁力線の密度は磁界の強さに対応させる。
 +
 
-
==電荷と静電気==
 
-
簡単な静止した電気(静電気と呼ぶ)から学習しましょう。
 
-
==電界(あるいは電場)==
 
-
==電位==
 
-
==電流==
 
==電流と磁界==
==電流と磁界==
-
==磁界が電流に及ぼす力==
+
この節では静止した電荷でなく動く電荷の性質をしらべる。
 +
===電流===
 +
電荷の流れを電流という。多くの場合は、導体中の自由電子が動いて電流となる。[[wikipedia_ja:電解液|電解液(イオン溶液ともいう)]]では、正負のイオンが動いて電流となる。<br/>
 +
電流によって電荷は移動し、後で学ぶように、磁場を発生する。
 +
====定常電流====
 +
時間がたっても流れ方が変化せず、一定に流れる電流のこと。'''この章では、単に電流といえば定常電流をさす'''。
 +
====電流の向きと大きさの単位====
 +
電流の向きは、正の電荷の流れる向きと定めている。電子が移動する電流のばあい、電流の向きとは逆に電子が動いていることになる。<br/>
 +
電流の大きさ(略して電流)は、平行電流が及ぼしあう力(後で学ぶ)によって、定められ、アンペア[A]という単位でよばれる。
 +
*[[wikipedia_ja:アンペア|ウィキペディア(アンペア)]]
 +
 
 +
===電流が作る磁界===
 +
電流は磁界をつくる。エルステッドは1820年に電流は方位磁針を動かす磁界を作り出すことを発見。
 +
====無限に長い直線導線に電流Iを流す時にできる磁界<tex> \vec{H} </tex> ====
 +
実験によると、任意の点Pの磁界<tex> \vec{H(P)} </tex> は、大きさは、P点から電流までの距離rに反比例し、向きは、電流を中心としP点を通る円の接線の右ねじの方向(電流の方向に右ねじが進むときの、ねじの回転方向)である。
 +
====アンペールの研究 ====
 +
[[wikipedia_ja:アンドレ=マリ・アンペール|アンペール]]が、詳しい実験と考察により、任意の形状の電流の作る磁界に関するアンペールの法則を明らかにした。
 +
この過程で次の重要な原理を、実験により発見した。
 +
=====磁界の重ね合わせの原理=====
 +
電流<tex> I_1</tex> がP点に作る作る磁界を<tex> H_1(P)</tex>,電流<tex> I_2</tex> がP点に作る作る磁界を<tex> H_2(P)</tex> とすると、2つの電流<tex> I_1</tex>と
 +
<tex> I_2</tex> が同時に流れた時にP点に作る作る磁界は<tex> H_1(P)+H_2(P)</tex>
 +
=====環状の電流は磁石のようにふるまう=====
 +
電流が流れている環状の線が作る磁場は、環の大きさに比べて十分離れたところでは、この環を縁とする板磁石のつくる磁界と同じになる。
 +
====アンペールの法則====
 +
実験で明らかにした以上の事実から、アンペールは次のような重要な法則を導いた。
 +
*[[wikipedia_ja:アンペールの法則|ウィキペディア(アンペールの法則)]]
 +
この記述中の「閉じた経路にそって磁場の大きさを足し合わせ」た値は、この経路にそって1Wbの磁荷を一周するとき磁荷が磁界から受ける仕事と同じ値である。この値がこの閉路を貫く電流(右ねじの回転方向が磁荷の回転方向と一致するように回したときの、右ねじの進行方向の電流を正とする)に等しくなる、というのがアンペールの法則である。なお、導出は少し難しいので、高校では扱いません。
 +
 
 +
====アンペールの法則の応用====
 +
アンペールの法則を用いると、色々な電流の作る磁界が、実験をしなくても、数式の計算だけで求められる。<br/>
 +
例1.無限に長い直線導線に電流Iを流す時にできる磁界<tex> \vec{H} </tex>: <br/>直線電流を軸とした回転で対称な現象なので、<tex> \vec{H} </tex>は、導線からの距離rが等しい場所では大きさはすべて等しい。任意の点Pに電流Iがつくる磁界を<tex> \vec{H_I}</tex>とすると重ね合わせの原理から、同じ大きさの電流を逆に流すとき、P点の磁界は<tex> \vec{H_{-I}} = \vec{-H_I}</tex>。
 +
これを上下逆にしてながめると、対称性から<tex> \vec{H_I}</tex> とおなじにみえなければならないので、<tex> \vec{H_I}</tex>は、P点を始点として、<tex> \vec{O(P)P} </tex>と直交したベクトル(ここでO(P)はP点から直線電流におろした垂線の足)。さらにアンペールの法則を用いると<tex>\vec{ H_I}</tex>は、Iと平行な成分を持たないことが示せる。従っては、<tex> \vec{H(P)} </tex>は、電流までの距離rが等しい場所では大きさはすべて等しい。この値を<tex> \vec{H(r)} </tex>と書く。その向きは、電流と垂直に交わり、かつ、電流を中心とする半径rの円の接線の、(電流の方向に進む)右ねじの回転方向である。従って、この円に沿って1Wbの磁荷を一周させるとき、磁荷の受ける仕事は、<tex> 2\pi r  |\vec{H(r)}| </tex>となる。アンペールの法則から、
 +
<tex> I=2\pi r|\vec{H(r)}|</tex> ∴<tex> |\vec{H(r)}|=I/2 \pi r</tex> 
 +
<br/>
 +
例2.円筒形の長い中空の筒に導線を一様に密にまいたコイル(ソレノイドという。1mあたりn巻き)に、電流Iを流した時にできる磁界: <br/>
 +
厳密な解は難しいので、近似解をアンペールの法則から求めよう。<br/>コイルを流れる電流はコイルの各場所で右ねじの方向の磁界を発生させる。これらがある場所では強めあい、他の場所では弱めあって、現実の磁界が出来る。<br/>
 +
ソレノイドの外側の側面の近くの磁界は、反対側の側面の電流のつくる磁界と弱めあい、ほぼ零。<br/>
 +
ソレノイドの内側の磁界はつよめあうので大きい。ソレノイドが、その軸のまわりの回転に関して対称なので、磁界の方向はソレノイド軸と平行で、磁界の大きさは、軸からの距離の等しいところでは同じ。<br/>
 +
さらに軸からの距離に関係なく同じ大きさ(Hと書く)であることが、アンペールの法則から、次のように証明できる。<br/>軸に平行で、軸からの距離<tex> r_1</tex>と軸からの距離<tex> r_2</tex>の長さlの線分を対辺とする、ソレノイド内部の長方形を考えろ。これにそって1Wbの磁荷を動かす時に磁荷の受けるエネルギーは、この長方形を貫く電流の大きさ零に等しい。これより導ける。<br/>
 +
内側の磁界の大きさは、'''H=nI'''。 何故なら、ソレノイドの軸と平行で長さがlの2本の線分(一方はソレノイドの外側で側面に近いもの、他方はソレノイド内部)を対辺とする長方形を考え、これにアンペールの法則を適用すれば、これを一周する1Wbの磁荷のうける仕事=Hl,これがこの長方形を貫く電流総和=nlI に等しい。
 +
=====もっと一般の電流の作る磁界=====
 +
アンペールの法則から直接計算するのは難しい。アンペールの法則と磁界の重ね合わせの原理から、磁界計算に大変都合のよい、ビオ・サバールの法則がえられるが、これについては大学で学ぶ。興味のある方は
 +
*[[wikipedia_ja:ビオ・サバールの法則|ウィキペディア(ビオ・サバールの法則)]]
 +
をご覧ください。
 +
===磁界が電流に及ぼす力===
 +
電流は磁石に力を与えるので、(作用・反作用の原理から)磁石は電流に力を与えるはずである。近接作用の立場でいえば、磁界は電流に力を及ぼすことになる。アンペールは、磁石や電流のつくる磁界が電流に与える力について詳しい実験をおこない、その法則を明らかにした。
 +
====磁界中の電流がうける力====
 +
磁界中の導線に電流を流すと導線は力を受ける。
 +
====平行電流が及ぼしあう力====
 +
====ローレンツ力====
 +
 
 +
====磁界中を動く導線と誘導起電力====
 +
====磁界中を動く導線と電界====
 +
 
 +
===磁束密度と物質の透磁率===
 +
====磁束密度====
 +
===物質の透磁率===
 +
====磁界と磁束密度====
 +
 
 +
 
 +
 
 +
== CAIテスト  ==
 +
 
 +
*<span class="pops"> [[cai_ja:GENPHY00010009|CAIテストのページへ(新しいWindowが開きます)]] </span>

2011年5月14日 (土) 16:19 時点における最新版

物理9章 電気と磁気(1) 静電気と電界、電流と磁界

テレビ、電話、携帯電話、冷蔵庫、パソコン、コピー機。
現代社会は電気や磁気を利用した製品に満ちている。
この章と次の章では、電気・磁気は何か、どのような性質を持つかについて学ぶ。

目次

 電磁気現象の根源 

物質をつくっている原子は、原子核と電子から出来ている。
詳しいことは11章で学ぶが、原子核はいくつかの陽子と中性子からできている。
電子の個数は陽子と同数である。
陽子は正の電荷+eをもち、電子はこれと同じ大きさで符号が反対の負の電荷-eを持つ。</br>同符号の電荷は互いに反発し、異符号の電荷は互いに引き合う。

陽子と電子の存在により、原子や分子、固体・液体など物体は生成され、
電荷、電流、磁石、電磁場、電磁波などの現象が生じる。
この章と次章でこれらについて学ぶ。
(注)電荷の正負について:陽子どうし、電子どうしは反発するが、陽子と電子は引き合う。従って陽子と電子はことなった電荷である。さらに陽子と電子の個数が同じだと離れた所からみると、打ち消し合って電荷がないようにみえる。このため一方の電荷に+、他方にーをつけて扱うと大変具合が良い。そこで正、負の電荷として両者をあつかうのである。どちらにーをあててもよかったが歴史的に電子にーをあてた。
なお、原子核のなかで電気的に反発する複数の陽子がくっついているのは、反発力より強い核力で引き合っているため(後で学ぶ)。

静電気

この節では、まず、静止した電荷(静電気という)の性質を学ぶ。

電荷

原子は正負等しい電荷をもつので、離れた所から観測すれば、正と負の電荷が打ち消しあっている(電荷をもたない)。
したがって、物質は通常は電荷を持たない。物質が電子をいくつか失ったり、獲得すると、物質は電荷を帯びる。帯電するという。
したがって全ての電荷はe の整数倍である。eを電気素量という。

点電荷

大きさの無視できる電荷を点電荷という。

電荷の単位

電荷の単位は、クーロンとよばれ、電流を利用して決められる。

電荷保存の法則

電荷は消滅も生成もしないことが、経験によって確かめられている。これを電荷保存法則という。

摩擦電気

2つの物質をこすりあわせると、このエネルギーで、電子が一方の物質から他方の物質に移動して、
前者は正の電荷を帯び、(電荷保存法則より)後者はそれと同じ大きさの負の電荷を帯びる。
この帯電した電気を摩擦電気という。

クーロンの法則

同符号の2つの電荷は互いに反発し、異符号の電荷は互いに引き合う。
2つの静止した点電荷間の力の向きは、これらを結ぶ直線の方向と一致し、その大きさは、2つの電荷の積に比例し、その距離の2乗に反比例する。具体的には、

を参照のこと。向きも考慮したベクトル表示にも慣れたおくと良い。電荷q_1の位置ベクトルをr_1、電荷q_2の位置ベクトルをr_2、電荷q_1が電荷q_2から受けるクーロン力を\mathit{F_1}とすると \mathit{F_1}=\frac{q_1q_2}{4 \pi \varepsilon_0}\frac{1}{|r_1-r_2|^2}\frac{r_1-r_2}{|r_1-r_2|}にも慣れたおくと良い。

3つ以上の電荷に働く力

N 個(>2)の電荷q_1,,,,q_N があるとき、q_1 に作用する電気力は、q_2,,,,q_N  のそれぞれからq_1が受けるクーロン力(ベクトル表示)の和になることが実験で確かめられている。 これを、クーロン力の重ね合わせ原理という。

クーロン力は保存力

クーロン力が保存力である。このことを確かめてください。保存力については、5章 §4 保存力と位置エネルギーおよび力学的エネルギー保存則 を参照のこと。

自己力について

点電荷が自分自身に力(自己力という)を与えるだろうか。これは大変難しい問題であり、いまだに未解決の問題もある。高校では、この力を無視しても良い現象を扱う。

電気力は重力よりはるかに大きいこと

質量1gの2つの質点にそれぞれ1クーロンの電気を帯電させ、1cm離しておいたときに、作用する静電気力と重力を計算して比較すること。

電界(あるいは電場)

電荷間に作用する力を近接作用の考え方で考察して電界(電場ともいう)という重要な概念を得る。
クーロンの法則を電界の概念でいいかえると、電界にかんするガウスの法則が得られる。電界から電位や電圧という重要な概念も得られる。

遠隔作用と近接作用

電荷の間のクーロン力はどのようにして働くのだろうか。遠隔作用と近接作用の二通りの考え方がある。遠隔作用では、電荷が互いに直接力を及ぼしていると考える。近接作用では、電荷が空間を歪ませ電界を作り、この歪んだ空間(電界)がもう一つの電荷に力を及ぼすと考える。現在は近接作用が自然の法則であると考えられている。

電界の定義

電荷に静電気力(クーロン力)を及ぼす空間を電界と呼ぶ。
空間の任意の点の電界の強さと向きは、その点に単位電荷を置いたときに作用する静電気力で定義する。詳しくは

電界によるクーロンの法則の表現

電荷 \mathit{q} が、電荷 \mathit{q'} から受ける力は、
 \mathit{q'}  \mathit{q} 点に作る電界 \mathit{E}  を用いて、  \mathit{F}=\mathit{q}\mathit{E}

点電荷のつくる電界

点電荷のつくる電界については

を参照のこと。静電荷の作る電界は、時間変動がなく、静電界と呼ばれる。 

2つ以上の点電荷の作る電界

クーロン力の重ね合わせの原理と電界の定義から、それぞれの電荷がつくる電界のベクトル和を取れば良いことが分かる。電界の重ね合わせの原理という。

電界の単位

 \mathit{F}=\mathit{q}\mathit{E} , 
電荷\mathit{q}の単位はC(クーロン)、力 \mathit{F} の単位はN(ニュートン)なので、
電界 \mathit{E} の単位は \mathit{N/C}  である。

電気力線とガウスの法則

電気力線とは  

電場を目で見て理解できるように工夫したのが電気力線。
電界内で正の電荷が電界から力を受けて非常にゆっくりと動く時の向きのついた軌跡(曲線)を考え、電気力線と呼ぶ。
正確には、曲線の各点の接線の向きが電界の向きに一致するとき、電気力線という。

電気力線の本数と密度

ある点で電界の強さが \mathit{E}  であるとき、
その点の周りに電界と直交する微小な平面部分を考え、
 そこを1m^2 あたり \mathit{E} 本の密度で電気力線が通るように描いて、電界の強さを表示する(電界の強さが、負のときは向きを逆に、また整数でなく、例えば0.1のような時は、一つの電気力線が0.1本を表すとして、図示すればよい。もっと厳密な方法は大学で学ぶ)。

ガウスの法則

● O点に置かれた一つの点電荷 +q がつくる電気力線;O点を始点とする外向きの半直線。
その密度;O点を中心、半径r [m]の球面上での電界の強さは、\mathit{E}=\frac{q}{4 \pi \varepsilon_0}\frac{1}{r^2} [N/C] なので、1m^2 あたり E 本の電気力線が球面を、中から外に向かって、貫く。
球面の中から外に向かう電気力線の本数;球面の面積は 4 \pi r^2  なので、球面全体を貫いて出ていく電気力線の総本数は\frac{q}{\varepsilon_0} 。球面の半径を変えてもこの本数は変わらない。少し高等な数学を利用すると、O点を含む任意の形状の立体の表面を貫いて出ていく電気力線の総数も、\frac{q}{\varepsilon_0} であることが示せる。
●O点を含まない任意の形状の立体の表面を考えると、O点からの半直線である電気力線がこの面から立体の中にはいると、必ず出ていくので、この立体に入る電気力線の本数は、出ていく本数と等しい。前者は負の本数と取り決めると、合計して、0本となる。故に、任意の形状の立体の表面を貫いて出ていく電気力線の総数=\frac{q}{\varepsilon_0} が成立する。ここで q はこの立体の内部にある点電荷。
● 重ね合わせの原理をもちいると、上記の法則は次のように、一般化出来る。
任意の形状の立体の表面を貫いて出ていく電気力線の総数=\frac{q}{\varepsilon_0} 。 ここで、qはこの立体の内部にある全電荷量。これをガウスの法則という。

ガウスの法則の応用

例1:面密度\sigma で、一様に電荷が分布する無限に広い平面の作る電界。
解:E=\frac{\sigma}{2 \varepsilon_0}
例2:平行板コンダンサー;2枚の金属の薄い平板を距離dをへだてて平行に置いたもの。
その1枚に面密度 +\sigma 、他方の板に面密度-\sigma の電荷を帯電させた時、周りに生じる電界を求めよ。
解:例1と重ね合わせの原理より、極板間ではE=\frac{\sigma}{\varepsilon_0} ,他では零。


電位と電圧

電界中で電荷は力を受ける。その力と逆向きで同じ大きさ(実際にはそれより無限小大きい)の力を与えて、単位電荷を基準とするO点からA点に動かすのに必要なエネルギーを、O点を基準点としたA点の電位という。以下を参照のこと。

2点間の電位の差を、電位差あるいは電圧という。

電位は移動経路によらず、同じ値になること

クーロン力は保存力である(このことを確かめてください)。そのため、今説明した電位は、O点からA点に動かす経路には関係なく定まる。保存力については、力学(4) 運動量と力学的エネルギー保存則 を参照のこと。

電位・電圧の単位

電荷の単位を[C],仕事の単位を[J]にした時の電位を、ボルトという。すなわち[V]=[J/C]。

点電荷のつくる電界の電位

電位の基準点として無限の彼方をとる。A点に置かれた+q[C]の電荷のつくる電界の電位は、A点から距離r[m]の点で、\mathit{V}=\frac{q}{4 \pi \varepsilon_0 r}

2つ以上の点電荷の作る電界の電位

電界の重ね合わせの原理から、それぞれの点電荷のつくる電位を加えればよい。

等電位面

電位の等しい点をつないで出来る面を等電位面という。等電位面と電気力線は直交していることが示せる。導体のすぐ外側の電界は、導体表面に垂直である。理由を考えてみてください。

静電界中の導体と静電誘導

導体に、静電界をかけると、内部の自由電子が電界から力を受け、導体内部の電界が零になるまで(速やかに)移動する。これを静電誘導という。詳しくは

静電遮蔽

静電界の中に置かれた、導体の箱の中の空間には、電荷が存在しない限り、電界は存在しない。すなわち、導体の箱の内部は、外部の静電界から遮蔽されている。

電界中の不導体と誘電分極

コンデンサー

コンデンサーは電気を蓄える道具である。

蓄えられる電気量と電圧の関係

Q = C V
Cはコンデンサーの電気容量と呼ばれる。その単位はファラッド[F]
平行板コンデンサーの場合には、極板の面積をS,極板間の距離をdとすると、C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}.
ここで、\varepsilon_0 は真空の誘電率と呼ばれる。実測によると\varepsilon_0 = 8.85418782^{-12} F/m である。

コンデンサーの誘電率

真空だった極板間を誘電体(不導体)で満たすと、誘電分極のため、コンデンサーの容量が、増える。C = \varepsilon_r \varepsilon_0  \frac{S}{d}。 ここで、 \varepsilon_r は比誘電率といい、1以上の、誘電体に固有な値。

 \varepsilon_r \varepsilon_0 を、この不導体の誘電率という。

たくわえられるエネルギー

コンデンサーに電荷 Q_1 を蓄えるのに必要なエネルギーEは、 E = \frac{1}{2} Q_1 V_1 =\frac{1}{2} C {V_1}^2 である。 ここで、 Q_1 = C V_1
その理由:横軸にQ,縦軸にVをとり、Q = C V のグラフ(直線)を書く。q = C v とし、電荷をq からq+\delta{q} まで増やすのに必要なエネルギーは \delta{E} = \delta{q} v なので, \delta{q} を小さくとれば、 \delta{E} は,Q軸と直交する2本の直線 Q=q, Q=q+\delta{q} と直線Q = C V で囲まれた領域の面積にほぼ等しい。 全エネルギーE は、 q = 0  \delta{E} を求め始め、q=0+\delta{q} 、 q=0 +2\delta{q} 、、、、と増やして q = Q_1 -\delta{q} までの \delta{E} を求め。加え合わせればよい。故にE は、Q軸と直線 Q = Q_1 ,直線Q = C V によって囲まれる3角形の面積になる。

 静磁気

古代ギリシアでは、鉄を引き寄せる石として磁石はすでに知られていた。現代では、磁石や磁気現象は多くの機器で利用されている。

磁石

磁石にはN極とS極の2つの磁極がある。これらの磁極は単独で存在することはなく、必ず両極が一緒になって磁石を構成する。詳しくは

磁荷のクーロン則

磁荷のあいだにも、電荷と同じ形式の力が働く。

磁荷の単位

真空中の磁荷A,Bの距離が1mのときに、6.3 \times 10^4[N] の力が生じ、かつ、A,Bの大きさが等しい時の磁荷の大きさを1Wb(1ウェーバ)ときめる。

磁界と磁力線

電荷の場合と全く同じように、磁荷の間の力を近接作用としてとらえる。すると、磁荷によって周りの空間は磁気的に歪み(磁界あるいは磁場という)、ここに他の磁荷を置くと、その点の磁界によって力を受けると考えられる。各点における磁界は、その点に1WbのN極を置いたときに受ける磁気力で定義する。従って、磁界の単位は[N/Wb] となる。</br> ● 磁力線:電界に対応して電気力線を考えたように、N極を正の電荷に対応させると、磁界にたいして磁力線を考えることができる。磁力線の密度は磁界の強さに対応させる。


電流と磁界

この節では静止した電荷でなく動く電荷の性質をしらべる。

電流

電荷の流れを電流という。多くの場合は、導体中の自由電子が動いて電流となる。電解液(イオン溶液ともいう)では、正負のイオンが動いて電流となる。
電流によって電荷は移動し、後で学ぶように、磁場を発生する。

定常電流

時間がたっても流れ方が変化せず、一定に流れる電流のこと。この章では、単に電流といえば定常電流をさす

電流の向きと大きさの単位

電流の向きは、正の電荷の流れる向きと定めている。電子が移動する電流のばあい、電流の向きとは逆に電子が動いていることになる。
電流の大きさ(略して電流)は、平行電流が及ぼしあう力(後で学ぶ)によって、定められ、アンペア[A]という単位でよばれる。

電流が作る磁界

電流は磁界をつくる。エルステッドは1820年に電流は方位磁針を動かす磁界を作り出すことを発見。

無限に長い直線導線に電流Iを流す時にできる磁界 \vec{H}

実験によると、任意の点Pの磁界 \vec{H(P)} は、大きさは、P点から電流までの距離rに反比例し、向きは、電流を中心としP点を通る円の接線の右ねじの方向(電流の方向に右ねじが進むときの、ねじの回転方向)である。

アンペールの研究 

アンペールが、詳しい実験と考察により、任意の形状の電流の作る磁界に関するアンペールの法則を明らかにした。 この過程で次の重要な原理を、実験により発見した。

磁界の重ね合わせの原理

電流 I_1 がP点に作る作る磁界を H_1(P),電流 I_2 がP点に作る作る磁界を H_2(P) とすると、2つの電流 I_1 I_2 が同時に流れた時にP点に作る作る磁界は H_1(P)+H_2(P)

環状の電流は磁石のようにふるまう

電流が流れている環状の線が作る磁場は、環の大きさに比べて十分離れたところでは、この環を縁とする板磁石のつくる磁界と同じになる。

アンペールの法則

実験で明らかにした以上の事実から、アンペールは次のような重要な法則を導いた。

この記述中の「閉じた経路にそって磁場の大きさを足し合わせ」た値は、この経路にそって1Wbの磁荷を一周するとき磁荷が磁界から受ける仕事と同じ値である。この値がこの閉路を貫く電流(右ねじの回転方向が磁荷の回転方向と一致するように回したときの、右ねじの進行方向の電流を正とする)に等しくなる、というのがアンペールの法則である。なお、導出は少し難しいので、高校では扱いません。

アンペールの法則の応用

アンペールの法則を用いると、色々な電流の作る磁界が、実験をしなくても、数式の計算だけで求められる。
例1.無限に長い直線導線に電流Iを流す時にできる磁界 \vec{H} :
直線電流を軸とした回転で対称な現象なので、 \vec{H} は、導線からの距離rが等しい場所では大きさはすべて等しい。任意の点Pに電流Iがつくる磁界を \vec{H_I}とすると重ね合わせの原理から、同じ大きさの電流を逆に流すとき、P点の磁界は \vec{H_{-I}} = \vec{-H_I}。 これを上下逆にしてながめると、対称性から \vec{H_I} とおなじにみえなければならないので、 \vec{H_I}は、P点を始点として、 \vec{O(P)P} と直交したベクトル(ここでO(P)はP点から直線電流におろした垂線の足)。さらにアンペールの法則を用いると\vec{ H_I}は、Iと平行な成分を持たないことが示せる。従っては、 \vec{H(P)} は、電流までの距離rが等しい場所では大きさはすべて等しい。この値を \vec{H(r)} と書く。その向きは、電流と垂直に交わり、かつ、電流を中心とする半径rの円の接線の、(電流の方向に進む)右ねじの回転方向である。従って、この円に沿って1Wbの磁荷を一周させるとき、磁荷の受ける仕事は、 2\pi r  |\vec{H(r)}| となる。アンペールの法則から、  I=2\pi r|\vec{H(r)}| ∴ |\vec{H(r)}|=I/2 \pi r
例2.円筒形の長い中空の筒に導線を一様に密にまいたコイル(ソレノイドという。1mあたりn巻き)に、電流Iを流した時にできる磁界: 
厳密な解は難しいので、近似解をアンペールの法則から求めよう。
コイルを流れる電流はコイルの各場所で右ねじの方向の磁界を発生させる。これらがある場所では強めあい、他の場所では弱めあって、現実の磁界が出来る。
ソレノイドの外側の側面の近くの磁界は、反対側の側面の電流のつくる磁界と弱めあい、ほぼ零。
ソレノイドの内側の磁界はつよめあうので大きい。ソレノイドが、その軸のまわりの回転に関して対称なので、磁界の方向はソレノイド軸と平行で、磁界の大きさは、軸からの距離の等しいところでは同じ。
さらに軸からの距離に関係なく同じ大きさ(Hと書く)であることが、アンペールの法則から、次のように証明できる。
軸に平行で、軸からの距離 r_1と軸からの距離 r_2の長さlの線分を対辺とする、ソレノイド内部の長方形を考えろ。これにそって1Wbの磁荷を動かす時に磁荷の受けるエネルギーは、この長方形を貫く電流の大きさ零に等しい。これより導ける。
内側の磁界の大きさは、H=nI。 何故なら、ソレノイドの軸と平行で長さがlの2本の線分(一方はソレノイドの外側で側面に近いもの、他方はソレノイド内部)を対辺とする長方形を考え、これにアンペールの法則を適用すれば、これを一周する1Wbの磁荷のうける仕事=Hl,これがこの長方形を貫く電流総和=nlI に等しい。

もっと一般の電流の作る磁界

アンペールの法則から直接計算するのは難しい。アンペールの法則と磁界の重ね合わせの原理から、磁界計算に大変都合のよい、ビオ・サバールの法則がえられるが、これについては大学で学ぶ。興味のある方は

をご覧ください。

磁界が電流に及ぼす力

電流は磁石に力を与えるので、(作用・反作用の原理から)磁石は電流に力を与えるはずである。近接作用の立場でいえば、磁界は電流に力を及ぼすことになる。アンペールは、磁石や電流のつくる磁界が電流に与える力について詳しい実験をおこない、その法則を明らかにした。

磁界中の電流がうける力

磁界中の導線に電流を流すと導線は力を受ける。

平行電流が及ぼしあう力

ローレンツ力

磁界中を動く導線と誘導起電力

磁界中を動く導線と電界

磁束密度と物質の透磁率

磁束密度

物質の透磁率

磁界と磁束密度

CAIテスト

個人用ツール