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物理/運動の法則の応用

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物理運動の法則の応用

目次

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解説

運動の3法則、万有引力の法則と力の法則を用いると、分子から銀河まであらゆる物体の運動を求めることが出来きる。

その正しさは地上の物体や人工衛星、惑星の運動などで確かめられている。
しかし、もっとはるかかなたの宇宙でもこれ等の法則は正しいのだろうか。
天体観測は、世界各地で行われ、年々新しい発見がされているが、現在のところ、この理論が間違っていることを示す観測結果は、得られていない。
そこで、これらの法則は宇宙の全体を支配しているものと、現在は信じられている。

運動の3法則からはエネルギー保存則や運動量保存則などの重要な保存則を導く事が出来る。
これらの保存則は、色々な運動を調べるとき、大変役立つ。これらについては次節で学ぶ。

質点の色々な運動

最初に最も簡単な運動から考える。
それは質点とみなせる物体の運動である。

質点の落体運動

地球上の物体は高いところから落とすと、時間とともに速度を増しながら落下する。
質点とみなせる物体の落下運動を、運動法則と力の法則を用いて、解析しよう。
質点の質量をmとすると、そこに作用する重力による力は、
真下(厳密には地球の重心;後で学ぶ)の方向・向きに大きさMgである。
落下の向きを負にした落下方向の一次元座標を考えると、重力加速度はgで、質点mに作用する力はmgである。
落下の加速度をαと置くと、運動の第2法則よりmα=mg.
ゆえに質点の落下加速度αは負の重力加速度gに等しい。
tで微分してgとなる関数はgt+cなので、質点の速度はgt+cである。
ここでcは定数で、初期時刻0における質点の速度であり、初期速度と呼ばれる。
微分してgt+cとなる関数を求めれば質点の位置x(t)=12gt2+ct+dが得られる。
ここで、dは定数で初期時刻0での質点の位置(高さ)である。
これはガリレオが明らかにした落体法則である。
参考文献;

投射体の運動

質点を地面に対して角度θ(ラジアン)、速さuで投げたときの、質点はどのような運動を行うだろうか。
ガリレオは、慣性法則と落体の法則を組み合わせて利用して、放物線を描いて飛ぶことを発見した。
ニュートン力学を用いれば、運動の第2法則と質点に働く力(重力)から、以下のように、この運動を導ける。

適切な座標系をいれる

質点が投げ出された場所を原点とし、飛んでいく方向に地面と水平に引いた半直線をx軸の正の側に、地面と直角で上方に向かう半直線をy軸の正の側とする座標を定める。図参照。

質点に作用する力を求める

空気抵抗を無視すれば、質点に作用する力は、地球からの重力だけである。この力は、質点の質量をM,重力加速度をgとすると、質点の位置に関係なく常に、F=(o,Mg)である。

運動の第2法則から質点の運動方程式をつくる

質点の位置ベクトルをr=(x,y)で表すと
運動方程式は、M(d2/dt2)r(t)=Fである。
座標成分表示すると
M(d2/dt2)x(t)=0, M(d2/dt2)y(t)=Mg

運動の初期状態の指定

投げ上げた瞬間を時刻t=0とおくと、質点の初期位置はr(0)=(0,0), 初期速度はv(0)=(ucosθ,usinθ)

運動方程式を初期状態を使って解く

(1)x成分の式を解く
M(d2/dt2)x(t)=0は、M(d/dt)vx(t)=0なので(d/dt)vx(t)=0  tで微分して零となるtの関数は定数なのでaと書くと、vx(t)=a
速度の定義より、(d/dt)x(t)=vxなので、(d/dt)x(t)=a. で微分してaとなるのはat+b(bは未知定数)なので、x(t)=at+b
初期条件から、a=vx(0)=ucosθ, またx(0)=a0+b=0なのでb=0
故に、x(t)=(ucosθ)t

(2)y成分の式を解く   
M(d2/dt2)y(t)=Mgは、(d/dt)vy(t)=g tで微分してgとなる関数はgt+c(cは未知定数)なので、
vy(t)=gt+c 故に(d/dt)y(t)=gt+c
tで微分してgt+cとなる関数は、12gt2+ct+dなので、y(t)=12g2t+ct+d   
初期速度の条件から、c=g0+c=vy(0)=usinθ d=12g0+c0+d=y(0)=0   
故に、y(t)=12gt2+(usinθ)t

(3)運動の軌跡(xとyとの関係式)を求める   
x(t)の式からt=x(t)/(ucosθ)
これをy(t)=12gt2+(usinθ)tに代入すると
y(t)=(g/2u2cos2θ)x2(t)+(tanθ)x(t)
これは上に凸な放物線である。
参考文献は

惑星運動

前述のようにケプラーは、火星と太陽の観測データをユークリッド幾何学を巧みに利用して分析し次の惑星運動の3法則を発見した。

惑星運動の3法則を運動の第2法則と万有引力の法則から導く

この3法則は、運動の第2法則と万有引力の法則から導くことが出来るが少し難しい数学が必要である。大学で学ぶ。
惑星の軌道を太陽を中心とする円運動に限定すると、高校の数学の知識で3法則を導ける。
この場合ケプラーの第一法則は、仮定から、明白なので、第二法則から始める。

ケプラーの第2法則の導出 
図 惑星の位置座標


第二法則は、太陽と惑星を結ぶ動径の単位時間に掃く面積が一定であることを主張する。円運動のばあい、これは等速円運動であることと同じである。
そこで等速円運動であることを導こう。
太陽と惑星は質点として扱い、質量をそれぞれM,mとする。

惑星の軌道面をxy平面にし、太陽をその原点にとる。円運動の半径をr, 太陽と時刻tにおける惑星を結ぶ線分が、x軸となす角度をθ=θ(t)とおく。


惑星Pの位置;r(t)=r(cosθ(t),sinθ(t))
惑星の速度;v(t)=dr(t)/dt=r(dcosθ(t)/dt,dsinθ(t)/dt)
=r(sinθ(t)dθ(t)dt,cosθ(t)dθ(t)dt) =rdθ(t)dt(sinθ(t),cosθ(t))

惑星の加速度;α(t)=dv(t)/dt=r(d2θ(t)/dt2)(sinθ(t),cosθ(t))
+r(dθ(t)/dt)(cosθ(t)dθ(t)dt,sinθ(t)dθ(t)dt)
=r(d2θ(t)/dt2)(sinθ(t),cosθ(t))r(dθ(t)dt)2(cosθ(t),sinθ(t))
惑星に働く力;万有引力の法則より、太陽の方向に向いた、大きさGMm/r2の力なので
F(t)=(GMm/r2)(cosθ(t),sinθ(t))
と表せる。
この力が、惑星の運動を変化させ、上述の加速度を生じさせたのだから、運動の第2法則mα(t)=F(t)より、
mr(d2θ(t)/dt2)(sinθ(t),cosθ(t))mr(dθ(t)dt)2(cosθ(t),sinθ(t)
=(GMm/r2)(cosθ(t),sinθ(t))
変形すると、
mr(d2θ(t)/dt2)(sinθ(t),cosθ(t))
=(mr(dθ(t)dt)2GMm/r2)(cosθ(t),sinθ(t)) (1)

(sinθ(t),cosθ(t))(cosθ(t),sinθ(t))は直交するベクトルなので、(1)式が成立する必要十分条件は、
d2θ(t)/dt2=0(2),
mr(dθ(t)dt)2GMm/r2=0(3)
である。
(2)式から、角速度ω(t)=dθ(t)dt=ω0(定数)が
(3)式から、mr(dθ(t)dt)2=GMm/r2
得られる。
これらより、惑星は等角速度
ω0=±GM/r3 (4)
で太陽の周りを回転することが分かり、ケプラーの第2法則が得られた。

ケプラーの第3法則の導出 

惑星が太陽の周りを一周する時間T(周期という)は、T=2π/ω0なので、(4)式より、
T=2π/GM/r3=2πr3/GM,
故にT2=4π2r3/GM, T2/r3=4π2/GM
これは軌道が円の場合のケプラーの第3法則である。

万有引力の法則を,ケプラーの法則と運動の第2法則から導く

惑星が太陽の周りを円運動しているとき、太陽が惑星に及ぼしている力を計算する。
ケプラーの第2法則より、円運動する惑星は角速度一定である。これをω0とする。
太陽の位置を原点とし円の半径をrとすると、この惑星の加速度はα(t)=r(dθ(t)/dt)2(cosθ(t),sinθ(t))=rω20(cosθ(t),sinθ(t)) 。これは、太陽にむかう大きさrω20のベクトル。
運動の第2法則より、惑星に働く力Fは、太陽の方向に、大きさmrω20
ここで、m は惑星の慣性質量である。
ω20rの関数で表すためケプラーの第3法則と用いる。
惑星の公転周期Tと円の半径rの間にはT2/r3=C,C;定数
T=2π/ω0なので (2π/ω0)2/r3=Cω20=4π2/(Cr3)
それゆえ、力の大きさは
mrω20=4π2Cmr2
さらに、太陽の質量Mk倍になると、質量Mの太陽がk個あり、それぞれが惑星に上記の力を与えると考えられる。
すると惑星に働く力はk倍になるので力の比例部分4π2Cは太陽の質量Mに比例することが分かる。
比例定数をGとおくと、4π2C=GM
従って惑星に働く力の大きさは、太陽の方向に、 GMmr2=GmMr2
これは万有引力の法則である。
(注)この式は万有引力の法則の式と同じだが、質量mは、慣性質量であり、対称性から太陽の質量Mも慣性質量と考えられる。
しかしニュートンは重力を生む質量は、慣性質量と完全には一致しない可能性もあると考え、重力質量という概念を生みだしと思われる。
既述のように、多くの実験の結果、両質量は同一であると考えられている。
重量質量を使わず、慣性質量だけを用いても、ニュートン力学を構成することが出来る。これを提唱する物理学者もいる。
それには万有引力の法則のかわりに、次の法則を採用すればよい。
外力が働かないときは、どんな2質点も、お互いに相手に向かって, 加速度運動して近ずく。両者の加速度は、両者の距離の2乗r2に反比例し、それぞれの慣性質量の比に反比例する。
式で書くと、
質点1の慣性質量と加速度の大きさをm1,α1  
質点2の慣性質量と加速度の大きさをm2,α2 
とすると、m1α1=m2α2m11/r2,m21/r2 
この法則と運動法則により2質点間に働く力(万有引力)を求めると、
ニュートンの万有引力の法則と同じ式だが、質量は慣性質量になり、
重量質量を用いずニュートン力学が構成できる。

振り子と単振動

質点のつり合い

質点に力F1,,Fnが作用し、質点が静止したまま(あるいは等速直線運動)であるとき、それらの力は釣り合っているという。
釣り合いの条件は、F1+ +Fn=0です(運動の第2法則と力の合成則から導出できる)。

仕事とエネルギー

仕事

物体に力を加えて動かす時、力はこの物体に仕事をするという。
仕事(の量)は力の大きさと動かした距離の積に比例する。
正確には、加えられる力F が一定で、
力の向きに対して角度θ[rad] だけ傾いている直線上を s 移動したとき、
仕事W は、
W=Fscosθ    
で定義する。
ここで任意のヴェクトルaに対して、aはその大きさia2iを表す。


特に、この式においてθ=0(すなわち cosθ=1)とすると
「加えられる力が一定であり力の方向が運動の方向と一致している場合」になり、
W=Fs である。
また、θ=π/2cosθ=0)のとき、W=0となる。
すなわち、力が運動の方向と直角方向にはたらいている場合、その力は仕事をしない。

W=F(scosθ)と表現すると、
仕事は、力の方向にscosθだけ動かしたときの仕事に等しいことが分かる。

W=(Fcosθ)sと表現すると、
仕事は、
大きさFcosθ のs方向の力を加えて、sだけ動かしたときの仕事に等しい
ことが分かる。


仕事の内積を用いた表現

内積は、仕事の記述や計算に便利な数学の概念である。

内積の定義と仕事の内積表現

ベクトルa,bの内積abは、abcosθで定義する。
ここで、θは、ベクトルa,bのなす角(0θπ )である。

ウィキブックスでは2次元のベクトルを中心にして説明しているが、
3次元ベクトルの場合にも、成り立つように修正することは容易である。
例えば、ベクトルa=(a1,a2,a3)の長さは、a=a21+a22+a23,
ベクトルの内積は、この長さを使えば、全く同じ式で良い。

内積を使った 仕事の表現

内積 を用いると、
物体に力Fを加えて、PQ(P点からQ点まで)動かした時の力のなす仕事は、
W=FPQと表せる。

内積の性質

仕事は、前述のように内積で表現できるので、内積の性質を調べておくと、仕事について考察する時に役に立つ。
a,b,cが、すべて同じ次元(2か3)のベクトルとし、 αは実数とする。

(1)ab=ba
(2)ab=iaibi
ここでa1,b1はそれぞれa,bのx座標成分、同様に、添え字2はy座標成分、3はz座標成分
直交座標系はどんなものでも良い。しかしすべてのベクトルは同じ座標系で座標成分表示しなければならない。
(3)(a+b)c=ac+bc   
(4)(αa)b=a(αb)=α(ab)
が成り立つ。

(証明)
(1)は、内積の定義から明らか。
(2);次の三角形の余弦定理を利用する。
三角形の第2余弦定理;
図のようなABCを考える。
頂点A,B,Cの対辺の長さをそれぞれa,b,cとし、ACB=θとする。
すると、c2=a2+b22abcosθ
余弦定理の証明;頂点Aから対辺BCにおろした垂線の足をHとする。
ピタゴラスの定理により、
c2=¯BH2+¯AH2 右辺の第2項に、再び、ピタゴラスの定理を適用して、
=¯BH2+(b2¯CH2) ¯BH=a¯CHを代入すると、
=(a¯CH)2+(b2¯CH2)=a2+b22a¯CH, ¯CH=bcosθなので、代入すると
=a2+b22abcosθ
証明終わり。
(2)の証明  
ベクトルabを、
始点が点Cである有向線分で表現し、その終点をB,Cで表す。
するとa=CB, b=CAである。
ベクトルc=abを導入すると、
c=ab=CBCA=CB+AC=AB
3角形ABCを考え、第2余弦定理を適用しよう。
ACB=θとおく。すると、
c2=a2+b22abcosθ
=a2+b22abが得られる。
この式を変形してabだけを左辺に置くと、
ab=(a2+b2c2)/2 。
c=AB=AC+CB=b+aなので、

ab=(a2+b2ab2)/2
この右辺を、ベクトルの直交座標成分で表すと、次式が得られる。
ab=(ia2i+ib2ii(aibi)2)/2
=iaibi
(2)の証明終わり。
(性質3)の証明;ある一つの直交座標系をさだめ、両辺を、性質(2)を利用して、座標成分であらわす。両辺が等しいことが分かる。
(性質4)の証明;同様に、3つの式を、座標成分表示すれば、みな等しいことが、簡単に分かる。

物体が曲線運動するときの仕事量の求め方

力を受けた時の物体の運動は直線とは限らないが、運動の軌跡を細かく区切って眺めると、線分に近いので、物体の変位は、ごく短い線分をつなぎ合わせたものと考える。すると各線分毎に仕事を計算しそれをたせば、全体の仕事量を求めることができる。

エネルギー

物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。

仕事の単位

仕事の定義W=Fscosθから、仕事の単位は、力の大きさFの単位と長さsの単位を掛けたものになる(cosθ は無単位なので )。
MKSA単位系では、力の大きさの単位はN(ニュートン)、長さの単位はm(メートル)なので、仕事の単位はNm となる。
これをJ(ジュール)と呼ぶ。J=Nmである。

質点系の運動

2個以上の質点が集まって出来ている系を質点系という。
質点系というときは、各質点は密集していても、離れ離れでも良い。互いに固着しようが、自由に動けようが構わない。
すべての物質は、分子の集合と考えたり、細分化して極小部分に分け、それらの集合と考えれば、十分な精度で、質点系とみなすことができる。
そのため質点系の運動の法則を、ニュートンの運動法則から導出すれば、その応用範囲は非常に広い。

質点系の運動と重心

系の任意の2つの質点間には作用・反作用の法則を満たす力が働いていてもよい。
この力を質点系の”内力”という。  
質点系の各質点に外部から力(外力という)が加わる時、この質点系はどんな運動をするだろうか。
質点系の各質点の位置をri、質量をmiとし、
質点mi に作用する外力をfi
mi に、他の質点mjから作用する内力をfijとする(i,j=1N)。
すると、各質点に対して、運動の第2法則により、
d(mivi)/dt=fi+jifij  ここでvi=dri/dt
各ベクトルを自由ベクトルとみなしてi=1Nについて加え合わせると、fij+fji=0なので、
d2dt2imiri=ddtimivi=ifi
が得られる。
質点系の全質量M=imiと質点系に働く全外力F=ifiを用いて書きなおすと、
Md2dt2(imiri/M)=F
質点系の重心R R=imiri/M で定義すると、
Md2dt2R=F
この式は、力Fをうける質量Mの質点の運動方程式と同じである。
以下の解説も参考にしてください。

複雑にみえる運動も重心の運動をみれば簡単である  

体操選手の運動は、跳躍や着地などで空中をまいながら、回転や体の屈伸、ひねりなどを行う。大変複雑である。
しかし、導出した質点系の重心の運動法則から、体の重心の運動は、投射体の運動であり、放物線をえがいて移動することが分かる。
空中に飛び出た瞬間の速度(速さと方向・向き)で、その軌跡は完全に決まってしまうのである。

剛体の運動とつり合い

剛体

剛体(Rigid body)とは、
質点系であって、それらの、どの2質点の間の距離も変わらない,特殊な系のことを言う。
どの2質点の間の距離も変わらなければ変形は起こらない。
固くて変形しにくい物体を理想化した概念である。

剛体の運動 

剛体は変形しない質点系なので、その運動は、重心の運動と、重心の周りの回転運動を合成したものになる。
重心の運動は前の節で説明したように、質点の運動と同じように簡単に扱える。
重心の周りの回転運動について解析するには、少し難しい数学が必要になる。

このテキストでは、固定軸の周りの回転運動を中心に、 剛体運動の初歩と釣合の条件について学ぶ。

固定軸のまわりの回転運動 

剛体が、剛体の中を通る固定軸の周りを回転する運動(車輪の回転など)を考える。
応用も考え、回転軸は重心を通らなくてもよいように一般化しておく。
(注)なお、軸が動かないようにするためには軸受が必要である。
工夫しても回転時に軸は軸受から多少の摩擦力を受け、回転にブレーキがかかる。
しかし、これは無視出来るほど小さいと仮定する。
すると軸が受ける力は、軸の変動を防ぎ、固定軸の周りの運動に限定させる作用を持ち、
回転を遅める作用は持たないことになる。

回転運動の表示法 

固定軸まわりの剛体の運動はどのように表示したらよいだろうか。
・剛体の位置を表す変数;回転角
剛体が幾ら回転したか分かるように、剛体の、回転軸上にない一点Psに印を付ける。
次に、角度を測る基準線をきめるため、座標系を決めよう。
Psから固定軸へ垂線をひき、その足を原点Oとし,固定軸をz座標とする(静止した)3次元直交座標Oxyzを考える。
剛体が固定軸の周りを回転すると、印Psはxy平面上を、原点Oを中心に円を描いて動くことになる。
その位置ベクトルOPsがx軸の正方向となす角度ϕを、回転角と呼ぶ。図参照。
但し、x軸から反時計回りの角を正にする。
また一回転した後ならば、一回転の角2πを加え、逆周りに一回転した後なら2πを引き、
角度だけでなく回転数も分かるようにする。
回転角が指定されると、点Psの位置が決まる。
それだけでなく剛体は変形しないので、剛体のすべての点の位置がきまる。
そこで回転角ϕの時間変化ϕ=ϕ(t)を明らかにすれば、剛体の回転運動は定まる。
固定軸のまわりの回転運動において回転角の果たし役割は、質点の運動において質点の位置が果たし役割に対応していることが分かる。
・回転の角速度と角加速度
ϕ=ϕ(t)を時間で微分したdϕ(t)/dtを回転の角速度と呼ぶ。
直観的には、時刻tの瞬間の、回転の速さ(回転角の時間に対する変化率)を表す。
さらにもう一回時間微分したd2ϕ(t)/dt2を回転の角加速度と呼ぶ。

回転力(トルク) 

質点の運動に倣って、剛体に作用する力によって、その位置(=回転角)がどう変化するかの法則を導出したい。
しかし、剛体の回転の場合、ある方向の力は、剛体の回転に全く関係しない。 例えば、回転軸から放射状にでる半直線方向の力は全く回転の変化に寄与しない。
そこで剛体の回転を変化させる力とはなにかという問題から考察する必要が起こる。
質点運動における力の定義(力と運動量の変化の関係)や力と仕事の関係など力の係っている式のなかから、
剛体の回転運動に容易に拡張出来るものを選び、その式から、回転に関する力を求めることを試みる。
力の定義からは、回転運動への拡張を、推測することは難しい。
力と仕事の関係の考察をしてみよう。

力と仕事の関係からの考察 

適当な直交座標系をさだめ、ベクトルは、座標成分で表示する。
質点に、一定の力F=(Fx,Fy,Fz)を作用させて、x軸方向に変位させる。
質点はこの軸の上でしか動けないように拘束され、摩擦はないと仮定する。
質点の変位ベクトルは一次元の変数xを使ってs=(x,0,0)と表せる。
すると力のなす仕事は、W=F(x,0,0)=Fxxである。 
逆に物体に一定の力を加え、x軸上でxだけ変位させた時の仕事Wが分かれば、質点を動かした力は
Fx=W/x
で求められる。
Fy,Fzは、質点をx軸上で動かすことには全く寄与せず、
x軸に拘束された質点を動かす力は、Fxなのである。
固定軸まわりの回転もその変位は一次元の変数である回転角度で表わせるので、
これに倣って、
W/回転した角度 
を、回転にかんする力であると考える。これを回転力と呼ぶ。トルクともいう。

この方針を実行して回転力を具体的に求めよう。

剛体に力を加え微小角動かす時の、力のなす仕事の算出 

図4.1のように剛体の任意の一点P(x,y,z)を考える。
z座標の上方からxy平面を見下ろしているので、z座標は点になりOと書いてある。

図4.1 ☆☆キャプションはココに書いて下さい☆☆

まず一点P(x,y,z)に力F=(Fx,Fy,Fz)が作用して、微小角Δθだけ回転したときの
仕事ΔWを計算し回転力を求めよう。
P点から回転軸(z軸)に垂線を下ろし、その足をO=(0,0,z)とする。
OPの長さをr、x軸となす角をθ(ラジアン)と置く。
この角度は、
剛体につけた印の位置ベクトルOPsがx軸となす回転角ϕ
このベクトルとOP(をxy平面に平行移動したベクトル)の間の角の和である。
後者は、剛体なので、運動しても変わらない定数である。そこで、θ=ϕ+定数,と書ける。
剛体がz軸の周りを微小角Δθ回転して、点Pが図の点Qに移動したとする。
すると角OPQはほぼ直角(=π/2)でPQの長さPQは、PQ=r(Δθ)

PQのx成分とy成分は、図4-1中に示したように、それぞれ、QR=PQy/rPR=PQx/r
PQ=r(Δθ)を代入すると、
PQx=y(Δθ)PQy=x(Δθ)PQz=0
P(x,y,z)に作用する力F=(Fx,Fy,Fz)が、物体をPQだけ動かしたので、
その仕事は、ΔW=FPQ(内積)。
この右辺を内積の性質を用いて座標成分で表すと、
Fx(y)Δθ+FyxΔθ+Fz0
=(xFyyFx)Δθ

z軸まわりの回転力の導出 

ゆえに、力Fのz軸まわりの回転力(トルク)TezΔW/Δθ=xFyyFx に等しい。
これより、ΔW=TezΔθが得られる。
この式と、直線上に拘束された質点の運動における、力と仕事の関係式(  節  項)と対比させると、
Tez は、拘束された直線の上を動かすときに、働いた力の成分が対応し、
Δθ は、変位量   に対応していることが分かる。

z軸まわりの回転力(トルク)の性質

(1)力Fのz軸まわりの回転力は,Fzには関係しない。
言いかえるとz軸を固定軸とする剛体にz軸の方向の力を加えても、z軸の周りの回転は起こらない。
(2)剛体の1点P(x,y,z)に作用する力Fを考える。
P(x,y,z)からz軸に下ろした垂線の足をO(0,0,z)と書く。 力Fを、, OP方向の成分Frと、
z軸まわりの回転によりPの描く、Oを中心とする回転円の(左回りの)接線方向の成分Ft
および、これら2成分に直交する成分(z軸と平行)
に分解する(図参照)。この時、
・力Frのz軸まわりの回転力は、零である。
すなわち、動径方向の力は回転に寄与しない。  
・力Fのz軸まわりの回転力は、Ftのz軸まわりの回転力に等しい。
数式で表すと、xFyyFx=x(Ft)yy(Ft)x
(3)剛体に作用する力の作用点を、力の作用線上で動かす限り、回転力は変化しない。
ここで、力の作用線とは、力の作用点を通り、力の方向と重なる直線のこと。

これらはいずれも直観と合致する。
証明は、試みてほしい。

他の軸の周りの回転力

Fのx軸、y軸まわりの回転力も同様に計算できる。結果は、
x軸まわりの回転力;yFzzFy=y(Ft)zz(Ft)y
y軸まわりの回転力;zFxxFz=z(Ft)xx(Ft)z


原点まわりの力のモーメント

位置ベクトルr=(x,y,z)の剛体の点Pに作用する力Fの原点まわりの力のモーメントを、
N=(x軸まわりのトルク、y軸まわりのトルク、z軸まわりのトルク)で定義する。
数式で書くと、
N=(yFzzFy,zFxxFz,xFyyFx),

ベクトル積と力のモーメントのベクトル積表示

以上の結果は、ベクトル積(クロス積ともいう)を用いると簡潔、正確に表現でき、
回転運動の性質を調べるのが容易になる。
3次元ベクトルa,b のベクトル積a×bとは、3次元ベクトルであり,
大きさはa,b を2辺とする平行四辺形の面積に等しく、
方向はこの四辺形に垂直で、向きは、(a,b,a×b)が右手系をなすように定めたものである。

次の項で説明するベクトル積の性質6を用いると、
位置ベクトルrの点に作用するF
原点まわりの力のモーメントは、N=r×F
x軸まわりの回転力(トルク)は、Nex と表せることが分かる。
y軸とz軸周りの回転力も、それぞれ 
Ney ,Nezで 表せる。


ベクトル積の性質

力のモーメントやトルクの性質を調べるには、ベクトル積の性質についての知識が必要になる。
a,b,cを3次元ベクトル
αを実数とする。
すると次の性質が成り立つ。
性質1. a を, cと垂直な成分a と,平行な成分a の和に分解するとき、
a×c=a×c
a×c=0
性質2.a×b=b×a
性質3.(a+b)×c=a×c+b×c 
性質3の系. a×(b+c)=a×b+a×c
(a+b+c)×d=a×d+b×d+c×d
性質4.(αa)×b=α(a×b)=a×(αb) 
性質5.(e1,e2,e3)
それぞれ大きさ(長さ)1で互いに直交し、右手系をなす、ベクトル(右手系をなす正規直交基底)とする。

この時、
e1×e2=e3,e2×e3=e1,e3×e1=e2
性質6.ベクトルa,bを,性質5で用いた基底(e1,e2,e3) で決まる座標の座標成分で表示しておく。
するとa×b=(aybzazby,azbxaxbz,axbyaybx) 
性質7.(a×b)c=(c×a)b=(b×c)a
性質8. a(t)b(t)を,tにかんして微分可能な、ベクトルに値をとる関数とする。すると、
a(t)×b(t) は、tにかんして微分可能で、
ddt(a(t)×b(t))=(ddta(t))×b(t)+a(t)×(ddtb(t))

証明

性質1の証明;ベクトル積の定義から、容易に示せる。
2つのベクトルの作る平行四辺形の面積と方向・向きを考えれば良い。
性質2の証明;2つのベクトルを入れ替えても、それらが作る平行四辺形の面積は変わらず、この四辺形に直交する直線の方向も変わらない。しかし、右手系をなす方向は、逆向きになる。ベクトル積の定義から、a×b=b×a が示せた。
性質3の証明;
この証明には少し工夫が必要である。
ベクトル積の性質の中でも、もっとも大切なものなので、詳しく説明しよう。
① a,bc が直交する場合。図参照のこと
・議論をやさしくするため、ベクトルを、空間の原点O を始点とする有向線分で代表させる。
c と直交しO を通る平面をHとする。
・仮定よりa,bは、ともに平面H上のベクトルである。
a×c,b×cも、
ベクトル積の定義により、共にc と直交するので、H上のベクトルである。
これら四つのベクトルはすべて平面H上にあるので、今後の議論はこの平面上で進める。
 ⅰ)a×c,b×c の張る平行四辺形は,
a,bの張る平行四辺形を、c倍し,原点周りに90度回転したものになることを、示そう。

a×cは、ベクトル積の定義から、a と直交する。
そのため、a を平面H上で、原点まわりに、90度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致する。
b×cも、同様に考え、b を平面H上で、原点まわりに、90度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致することが分かる。
・どちら周りの回転になるかは、ベクトル積の定義によって決まるが、
後者の回転の向きが、前者の回転の向きと一致することが分かる。
a×c の大きさは、
a×c=accosπ/2=ac なので、a の大きさのc倍になる。
同様に、b×c の大きさは、a の大きさのc倍になる。
・以上の結果より、所望の結果は示された。

 ⅱ)(a+b)×c=a×c+b×cを示そう。
・ ⅰ)と同じ議論により、
(a+b)×ca,bの張る平行四辺形の対角線を、原点周りに90度、同じ向きに回転させ、c倍させたものであることが分かる。
・すると、ⅰ)で示したことから、(a+b)×c
a×c,b×c の張る平行四辺形の対角線a×c+b×c に等しいことが分かる。
・以上で①が示せた。

② 一般の場合。
性質1より、cと垂直な成分を表すとすると、 (a+b)×c=(a+b)×c(1)
(a+b)=a+bなので、(1)式は、
=(a+b)×c
①より、
=a×c+b×c=a×c+bc 性質3の証明終わり。
性質3の系の証明;
性質2より、
a×(b+c)=(b+c)×a
性質3より、 =(b×a+c×a)
再び性質2より、
=a×b+a×c 前半の証明終わり
性質2より、
(a+b+c)×d=(a+b)×d+c)×d
再び性質2より、
=a×d+b×d+c×d 証明終わり。
  

性質4の証明;実数α が正、零、負の場合に分けて考える。いずれの場合にも ベクトル積の定義とベクトルと実数の積の性質から、容易に証明できる。
性質5の照明;ベクトル積と(e1,e2,e3) の定義から明らかである。
性質6の証明;a=axex+ayey+azez,
b=bxex+byey+bzezと表せるので、
a×b=(axex+ayey+azez)×b 性質3の系から
=axex×b+ayey×b+azez×b (1)

式(1)の第1項 axex×bb=bxex+byey+bzez を代入して、性質3の系を使って変形すると、
axex×b=axex×bxex+axex×byey+axex×bzez (2)
性質4と性質5を使うと、
axex×bxex=axbxex×ex=0
同様の計算を行うと、
axex×byey=axbyex×ey=axbyez

axex×bzez=axbzex×ez=axbzey

式(2)にこれらを代入して、
axex×b=axbyezaxbzey  (3)

式(1)の第2項、第3項も同様に計算すると、
ayey×b=aybzexaybxez (4)

azez×b=azbxeyazbyex (5)

式(3),(4),(5) を、式 (1)に代入すると、
a×b=axbyezaxbzey+aybzexaybxez+azbxeyazbyex
=(aybzazby)ex+(azbxaxbz)ey+(axbyaybx)ez
性質6の証明終わり。

性質7の証明;
(a×b)c=(c×a)bを証明しよう。
残りも、同様に証明出来るので各自試みてください。
右手系をなす一つの直交座標を決める。
3つのベクトルを、この座標の成分で表示して、性質6と内積の性質を使えば、左右が等しいことが証明できる。
概略をスケッチしよう。
(a×b)c=(aybzazby,azbxaxbz,axbyaybx)(cx,cy,cz)=(aybzazby)cx+(azbxaxbz)cy+(axbyaybx)cz 
(c×a)bも、これと同じように計算する。
これら両式を整頓すると、同じものであることが分かる。
性質7の証明終わり。 性質8の証明;
性質8. a(t)b(t)を,tにかんして微分可能な、ベクトルに値をとる関数とする。すると、
a(t)×b(t) は、tにかんして微分可能で、
ddt(a(t)×b(t))
=(ddta(t))×b(t)+a(t)×(ddtb(t)) すでにこのテキストで紹介した、ベクトル値関数の微分の定義を用いて証明する。
ddt(a(t)×b(t))=limδt0(a(t+δt)×b(t+δt)a(t)×b(t))/δt (1)  
この極限が存在し、
ddta(t)×b(t)+a(t)×ddtb(t)
になることを示せば性質8は証明できたことになる。
極限の計算が進むよう、右辺の式の分母は変形しよう。
関数の積の微分公式の証明と同じ技巧を用いる。
a(t+δt)×b(t+δt)a(t)×b(t)  
=a(t+δt)×b(t+δt)a(t)×b(t+δt)+a(t)×b(t+δt)a(t)×b(t)  
ベクトル積の性質3を利用すると、 
=(a(t+δt)a(t))×b(t+δt)+a(t)×(b(t+δt)b(t))

この式を式(1)の右辺の分子の項に代入し整頓すると
ddt(a(t)×b(t))=limδt0a(t+δt)×b(t+δt)a(t)×b(t)δt  
=limδt0(a(t+δt)a(t))×b(t+δt)+a(t)×(b(t+δt)b(t))δt
ベクトル積の性質4を使い、
=limδt0(a(t+δt)a(t)δt×b(t+δt)+a(t)×b(t+δt)b(t)δt)
極限の性質を使って、
=limδt0a(t+δt)a(t)δt×limδt0b(t+δt)+a(t)×limδt0b(t+δt)b(t)δt
式中の極限は、a,bが、微分可能なので存在し、
limδt0a(t+δt)a(t)δt=da(t)dt
limδt0b(t+δt)b(t)δt=db(t)dt
また、limδt0b(t+δt)=b(t) なので、
所望の結果が得られた。性質8の証明終わり。

力のモーメントの性質

ベクトル積の性質が分かったところで、再び、力のモーメントの考察に戻る。
剛体の一点 P に加えられた力 F の、原点周りの力のモーメントは、
N=r×F=OP×F で定義した。
すると、
x軸まわりの回転力(トルク)は、Tex=Nex
y軸とz軸周りの回転力も、それぞれ 
Tey=Ney,Tez=Nez 
で表せることは、すでに説明した。
ところが、もっと一般に、どんな軸の周りの回転力も、N から得られる。
定理;
eを、原点を始点とする大きさ1の任意のベクトルとする。
すると、
Neは、力Fe軸の周りの回転力になる。式で書くと、Te=Ne 
この式を、回転力の定義に基づいて言い換えると、
Fのもとで、剛体をe軸の右まわりに角度ϕだけ回転させたとき、 Fのなす仕事Wは、W=Teϕ=(Ne)ϕ
証明;
9つに分けて示す。
ⅰ)準備 
図のように、剛体の点 P から、e 軸に垂線を下ろし、その足を Q とする。
力 F のもとで、剛体が e を固定軸にして、
微小時間に、微小角δϕ だけ回転したとする。
このとき、P が移った先を、P とする。
ⅱ)回転角 δϕ が微小なので、
この回転中の P の軌跡(円弧の微小部分)は、有向線分PP で精度高く、近似できる。
ⅲ)この間に力 F がなした仕事 δW は、δW=PPF
この仕事を、回転角δϕで割ると、力の e 軸周りの回転力が得られる。そこで、PP を、この定理で与えられている諸量を使って表現し、これを用いて、仕事を計算しよう。
ⅳ)有向線分PPの方向を求める。
PP は、e 軸と垂直でQ を通る平面H上にあり、
Qを中心とする円の弧の微小部分をなすので、線分QP と直交する。PPQP
また、e 軸と垂直でQ を通る平面H上にあるので、 PPe 軸とも直交し、従って線分OQと直交する。PPOQ
ゆえに、PP は、3点O,Q,Pを通る平面 OQP と直交する。
すると、PP は、平面 OQP 上のすべての線分と直交する。
ゆえに、PPe,PPOP 
これで、PP の方向は、求まった。
ⅴ)有向線分PP の向き 
点 P は、e 軸の周りを右周りに回転するので、その向きは、 e×OP と同じ向きである。
ⅵ)PP の大きさ。
PPは、 Q を中心とする、半径 QP の円弧の一部なので、 その中心角δϕ を用いて、PP=QPδϕ
ⅶ)ⅳ)、ⅴ)、ⅵ)から  PP=e×re×rQPδϕ
ⅷ)PP=e×rδϕが成り立つ。
なぜなら、
e×r=ersinθ=rsinθ=QP ,ここで θ はer の間の角。
この式をⅶ)で得られた式に代入すれば、所望の結果が得られる。
ⅸ)δW=PPF=(e×rδϕ)F=(e×r)Fδϕ=(r×F)eδϕ
ⅹ)Te=δWδϕ=(r×F)e=Ne
定理の証明終わり。

(注)剛体が固定軸の周りでなく、自由に回転するときでも、
ある瞬間には、ある軸の周りの回転になっている。
力のモーメントは、どんな軸周りの回転力の情報も含んでいることが証明されたので、
  回転運動一般に有効な概念であることが分かる。



剛体の複数個所に作用する力の回転力 

次に剛体の多くの点に力を加えたときの回転力を求めよう。
力の作用点をPi(xi,yi,zi)、力をFi(i=1,2,,,n)とする。
これらの力のもとで剛体がz軸まわりをΔθだけ微小回転するときの、各力のなす仕事の合計は、
(ni=1(xi(Fi)yyi(Fi)x)Δθ
従って、作用点Pi(xi,yi,zi)の力Fi(i=1,2,,,n)の全体がもつz軸まわりの回転力は、
Tez=ni=1Tiez=ni=1(xi(Fi)yyi(Fi)x) ここでTiezは力Fiのz軸まわりの回転力。

同様に、x軸まわりとy軸まわりの回転力も、それぞれ
Tex=ni=1Tiex=ni=1(yi(Fi)zzi(Fi)y)
Tey=ni=1Tiey=ni=1(zi(Fi)xxi(Fi)z)
Fiの原点周りに力のモーメントNiNi=(Tiex,Tiey,Tiez)で定義した。
全ての力の原点周りの力のモーメントも、同様に
N=(Tex,Tey,Tez)で定義する。すると、
N=(ni=1Tiex,ni=1Tiey,ni=1Tiez)=ni=1Ni
全ての力の原点周りの力のモーメントNも、上述の定理と同様の定理(定理の系と呼ぶ)が成り立つ。
定理の系
Nを剛体に作用する全ての力のモーメントとし、
eを、原点を始点とする大きさ1の任意のベクトルとする。
すると、
Neは、力Fe軸の周りの回転力になる。
式で書くと、Te=Ne 
この式を、回転力の定義に基づいて言い換えると、
Fi(i=1,2,,,n)のもとで、剛体をe軸の右まわりに角度ϕだけ回転させたとき、
これらの力のなす仕事Wは、W=Teϕ=(Ne)ϕ

この系は、内積の性質を使えば、定理から、容易に導かれる。

回転運動の方程式 

N が、あらゆる回転軸にかんする回転力を表現していることがわかった。
Fと運動量の変化の関係をあたえるニュートンの運動方程式(第2法則)を変形して、
回転力Nにかんする方程式を導こう。
直交右手座標系Oxyz を定める。原点 O は、考察対象に都合のよい点を選ぶ。

剛体をN個の(質点と考えてよい)微小部分Pi(i=1N)に分け、
その質量をmi、位置ベクトルをri(xi,yi,zi)とする。
Piが外部から受ける力をFi
Pi が剛体の他の部分Pj(ji) から受ける力(内力)をFijとおく。
後者は、剛体が変形しないよう、剛体の原子間に働かせる力に起因する。
この原子間の力は、原子の電荷による電気力と、
原子同士が接近しすぎたときに作用する量子力学的力により生じる。
作用・反作用の法則(運動の第3法則)から、Fij=Fji 。
さらに、剛体の2点間に働く内力の方向は、
その2点を結ぶ直線の方向と同じだと、仮定する。

各質点のニュートンの運動方程式  

各質点ごとに、ニュートンの運動方程式を立てると、
mid2ridt2=Fi+jiFi,j(i=1N)
これを変形して
Fi=mid2ridt2jiFi,j(i=1N) (1) 
この式から、
Fiの回転力Ni=ri×Fiにかんする式を導こう。

Ni=ri×Fiにかんする式の誘導  

式(1)の両辺に左側から、ri のベクトル積を施すと、
Ni=ri×Fi=ri×(mid2ridt2jiFi,j) (i=1N)
ベクトル積の性質3と性質4により、
=miri×d2ridt2jiri×Fi,j (2)
ここで、ベクトル積の性質8より
ddt(ri×dridt)=dridt×dridt+ri×d2ridt2=ri×d2ridt2
なので、 Ni=middt(ri×dridt)iri×Fi,j=ddt(ri×midridt)jiri×Fi,j(3)
質点Piの運動量をPiと書くと、
Pi=mivi=midridtなので、
Ni=ddt(ri×Pi)jiri×Fi,j
定義;角運動量(運動量のモーメントともいう)
質点の位置ベクトルをr、運動量をpと書くとき、
l=r×pを,この質点の角運動量と呼ぶ。
これを用いると、
Ni=dlidtjiri×Fi,j

 回転の運動方程式の導出  

故に、
N=iNi=dilidtijiri×Fi,j(4)
ここで、
ijiri×Fi,j=i<jri×Fi,j+i>jri×Fi,j(5)
式(4)の右辺の第2項の上付き添え字i,jを、それぞれ、j'と i'でおきかえられるので、
i>jri×Fi,j=j>irj×Fj,i
内力は作用反作用の法則が適用できると仮定しているので、
Fj,i=Fi,j 。この式を上の式の右辺に代入すると、
i>jri×Fi,j=j>irj×Fi,j
この式の右辺の和をとる変数i',j' を i,j におきかえると、
i>jri×Fi,j=i<jrj×Fi,j
この式を、式(5)の右辺の第2項に代入して整頓すると、
ijiri×Fi,j=i<j(rirj)×Fi,j
さらに、内力に関する第2の仮定により、rirj とFi,jは同じ方向なので、ベクトル積の定義より、この項は、零となることが分かる。
故に、式(4)の右辺の第2項は零となり、
N=dilidt(6)
が得られる。全角運動量をL=iliとおけば、
式(6)は、次のように書ける。

命題;回転運動の関するオイラーの運動方程式
剛体の内力に上述の2つの仮定を付ける。このとき、
剛体に作用する全ての外部力の原点周りの力のモーメントN=iNi=iri×Fiと、
全角運動量L=ili=iri×piの間には、
N=dLdt (7)

この命題の導出までは詳しく述べたが、本テキストではこれ以上は深入りしない。
この先にも興味がある方は、次の記事をご覧ください。

固定軸の周りの剛体の回転運動の方程式

回転運動の運動方程式から、任意の軸の周りの回転運動の方程式が簡単に導出できる。
z軸周りの場合を例にとり、説明する。
z軸周りの回転力はTez=Nezなので、
回転運動の方程式から
Tez=Nez=dLdtez
この式の右辺に,L=iri×pi を代入すると
右辺
=diri×pidtez 微分の加法性から
=(i dri×pidt)ez 内積の加法性から
=i(dri×pidtez) ベクトル積の性質8から
=i(dridt×pi+ri×dpidt)ez pi=midridtを代入し、ベクトル積の性質を用いると、
=i(ri×d2ridt2)ez
故に、
Tez=i(miri×d2ridt2)ez(1)
剛体はz軸の周りを回転するので、
その各点Pi(位置ベクトルri=OPi)は、
z軸と直交する平面上を、z軸を中心とする円を描いて運動する。
この拘束条件を考慮して、
時刻tの位置ベクトルri(t)の座標成分を書きなおすと、
ri(t)=(xi,yi,zi)=(ˆricosθi(t),ˆrisinθi(t),zi)(2)
ここでˆriは、点Piとz軸との距離、
θ(t)は、ri(t)をxy平面に正射影した像がx軸となす角度である。図参照。
剛体につけておいた印Psの位置ベクトルOPs
xy平面に正射影した像がx軸となす角(回転角)ϕを用いると、
θi(t)=ϕ(t)+ϕi (3)
ϕiは、Piごとに決まる、定数)と書ける。

式(1)の右辺を、式(2)を利用して、変形すると、
=imi((ˆricosθi(t),ˆrisinθi(t),zi)׈ri(cosθi˙θi2sinθi¨θi,sinθi˙θi2+cosθi¨θi,0))ez
=imiˆri((ˆricosθi(t),ˆrisinθi(t),zi)×(cosθi˙θi2sinθi¨θi,sinθi˙θi2+cosθi¨θi,0))3
ベクトル積の性質6より、
=imiˆri
(ˆricosθi(t)(sinθi(t)˙θi(t)2+cosθi(t)¨θi(t))ˆrisinθi(t)(cosθi(t)˙θi(t)2sinθi(t)¨θi(t))
=imi(ˆri)2¨θi(t)
ここで、θi(t)=ϕ(t)+ϕiを代入すると
=(imi(ˆri)2)¨ϕ(t)
以上により、
Tez=Nez 
=(imi(ˆri)2)¨ϕ(t)(4)
が得られた。これがz軸を固定軸とする剛体の回転運動の運動方程式である。
この方程式の変数ϕ は、一次元のスカラーなので、
質点がなめらかに拘束され、直線上を運動するときの運動方程式
F=m¨x
と、対比させる。すると、
質点に作用する力 F  <===> 剛体に作用する回転力Tez=Nez
質点の質量 m     <===> I=imi(ˆri)2
質点の位置変数 x(t)  <===> 剛体のz軸周りの回転角変数ϕ(t)
質点の速度 ˙x=dx(t)dt <===>˙ϕ(t);剛体の角速度
質点の運動量 m˙x <===> I˙ϕ;剛体の角運動量

という、対応関係があることが分かる。

 z軸の周りの慣性モーメント 

この対応関係に基づき、次の定義をする。 定義;剛体の軸周りの慣性モーメント
剛体の固定軸まわりの回転運動を考える。
剛体の各微小部分Piの質量をmi,
回転軸までの距離をˆri)とする。このとき、
I=imi(ˆri)2
のことを、剛体の軸周りの慣性モーメントと呼ぶ。

この記号を使うと、z軸を固定軸とする剛体の回転運動の運動方程式は、
Tez=Nez 
=I¨ϕ(t)(4)
と書ける。
剛体の回転の運動エネルギー
剛体の各微小部分(質量mi)の速度を viと書くと、
その運動エネルギーは 12mivi2,(i=1n)なので、
剛体全体の運動エネルギーは、K=i12mivi2
回転運動している各微小部分の速度は、vi=ˆri˙ϕと書けるので、
K=i12miˆri2˙ϕ2=12I˙ϕ2,(5)
物理振り子
剛体は、重心を通らない水平軸の周りで、重力の作用を受け振動する。
これを物理振り子、あるいは実体振り子という。

回転軸と垂直で、剛体の重心を通る平面を考え、
回転軸とこの平面の交点を原点O、重心をGと記す。図参照。
回転はなめらかで摩擦力は無視できるとする。
すると、回転軸から、この剛体が受ける力は、剛体をこの軸に支える作用を持つだけで、剛体の振動に何の影響も与えない。
そこで、剛体にかかる力は、重力だけと考えて良い。

 慣性モーメントの計算 

この節は、直観的な見通しを良くするため、 分割の扱いに厳密でないところがある。

(1)準備;集合と分割
剛体を、無限個の点の集まった集合と考える。 集合についてなじみのない方は、下記をご覧ください。

剛体Vを、質点とみなせるほど小さいN個の小部分(部分集合)に分割し、それぞれにその境界も付け加える。それらに番号をふり、
Vi(i=1,2,,N)と名をつける。
分割を記号で表すため、集合族(集合Viを要素とする集合)Δ={V1,V2,,VN}を用いる。

1次元の剛体(とても細い棒状の剛体)の場合
剛体に重なる一次元座標Oxをいれると、
剛体はV=[a,b],
その分割は区間の集合{Vi=[xi1,xi]i=1,2,,,,n} 但しx0=a,xn=b
この場合、Viの境界はxi1xi
Viの一次元体積(長さのこと)はv(Vi)=xixi1

2次元の剛体(とても薄い板状の剛体)の場合
分割した微小部分は、その境界が連続な閉曲線(境界上を辿っていくと元の場所にもどる)によって囲まれた領域であるとする。
このとき我々は各Viの2次元体積v(Vi)(面積のこと)を求めることが出来る。
剛体VVi,(i=1,2,N)和集合Ni=1Viと等しくなる(V=Ni=1Vi)。
言い換えると、ξVの要素である(ξGと記す )ための必要十分条件は、ξはあるVi(i=1,2,N)の要素であること。
また2つの分割小部分ViVj(ij)共通部分を持たないか、共通部分は両者の境界に含まれる。
3次元の剛体(とても薄い板状の剛体)の場合
後述。

(2)慣性モーメントの近似値
剛体Vの慣性モーメントは、各Viの質量miと回転軸までの距離ˆriを用いて、
I=imiˆr2i
で定義してきた。
しかし、いくら細かく分割しても、小部分は大きさを持つため、
この分割小領域のどの点を選ぶかによって回転軸との距離ˆriは、変わってしまう。
そこで、空間の点ξに対して、 ˆr(ξ)を,ξと回転軸との距離をあたえる関数と定め、
Viのなかから任意の一点ξi(Viの代表点と呼ぶ)を選びだすと、
IΔ(ξ1,,,ξn)=imiˆr2(ξi)が、慣性モーメントの近似値と考えられる。
(3)慣性モーメントの近似値は、代表点の選び方に関係なく、一定値に収束する
慣性モーメントの近似値は代表点の選び方で変わってしまうが、分割を細かくしていくと、代表点のとり方によらず、一定の値Iに収束するので、これが剛体の慣性モーメントと呼ぶのにふさわしいものとなる。
何故収束するのか?
説明を簡単にするため、まず細い棒状の剛体で説明する。
均質な細い棒状の剛体の場合
剛体Vは、ごく細い一様な密度の棒とする。長さをl、質量をMとすると、単位長さ当たりの質量はρ=M/l
軸は棒と直角で、左端からaの場所Oを通るとする。
Oを原点とし、棒と同じ方向の数直線を考え、これを座標系として採用。
G=[a,la]をn個の小区間Vi=[xi1,xi](i=1,2,,,n)に分割。ここでx0=a,xn=la
この分割に名前を付け、Δ={Vii=1,2,,,n}と記す。
xi(i=1,2,,,n)を分割Δの分点と呼ぶ。
Viの質量はmi=ρv(Vi)=ρ(xixi1)
Viの原点Oからの距離の2乗は、幅があり一意に決まらないので、適当に選んだ代表点ξi([ξi1,ξi])を用いて、ˆr2i(ξi)2
故に、軸周りの慣性モーメントIの分割Δに対応する近似値は、
IΔ(ξ1,,,ξn)=imiξi2=iρ(xixi1)ξi2=iρξi2v(Vi)
・関数y=f(x):=ρx2を導入すると、上式は、次のように書ける。
IΔ(ξ1,,,ξn)=if(ξi)v(Vi)=if(ξi)(xixi1)
これは、y=f(x)=ρx2のグラフを、図のよう、棒グラフで近似したときの棒グラフの作る面積(各角柱の面積和)であることが分かる。
y=f(x)=ρx2のグラフとx軸およびy軸と平行な直線x=ax=laで囲まれる部分の面積
を近似している。

区間の分割に対応する、関数y=f(x)のリーマン和とリーマン積分

区間[a,b]上で定義された一般の関数y=f(x)に対しても、
そのグラフとx軸およびy軸と平行な直線x=ax=bで囲まれる部分の面積
の近似値を考えることが出来る。
I=[a,b]の分割をΔ={I1,I2,,In},Ii=[xi1,xi](i=1,2,,,n),x0=a,xn=b とする。

この分割によるリーマン和を次式で定義する。
S(f,Δ,{ξi}ni=1)=if(ξi)v(Ii)=if(ξi)(xixi1) ここで、ξ Ii,i=1,2,,,,nである。
これは、y=f(x)のグラフの作る面積を、長方形の面積の和で、近似したもの。

分割を細かくした時、代表点ξIiに無関係な値に収束するならば、その値が y=f(x)のグラフの作る面積であると考えられる。そこで、この極限をy=f(x)のグラフの作る面積であると定義する。 y=f(x)=ρx2の場合、リーマン和は、
分割Δに対応する慣性モーメントIの近似値
IΔ(ξ1,,,ξn)に等しい。


次に、分割を細かくしていくときのリーマン和の挙動を調べたいので、分割の大きさの定義を与える。
Ii=[xi1,xi]の中の2点の距離の最大値を、Iiの径d(Ii)と呼ぶ。d(Ii)=xixi1である。
分割Δの径d(Δ)を、
d(Δ)=max{i=1,2,,,n}d(Ii)
で定義する。ここで、max{i=1,2,,,n}d(Ii)は、d(Ii)(i=1,2,,,n)の中の最大値を指す。
定義;リーマン可積分   
もし、ある実数αが存在して、Iiの代表点ξi(i=1,2,,,n)の選び方によらず、
limd(Δ)0S(f,Δ,{ξi})=α
であるとき、fI上で(リーマン)可積分であるという。
αfI上でのリーマン積分と呼び、
α=If=If(x)dx  
などと書く。

この積分の定義から、積分に関する重要な性質が導かれる。
定理(積分の線形性)
f,gを、区間I上で定義された、任意の実数値関数であり、
c,dを任意の実数とする。
このとき、
(1)f,gI上で可積分ならば、cf+dgI上で可積分
(2)このとき、I(cf+dg)=cIf+dIg

証明;リーマン和の定義から、区間Iの任意の分割Δ={I1,,,,In}と 分割区間の任意の代表点ξIi(i=1,2,,,,n)に対して、
S(cf+dg,Δ,{ξi}ni=1)=cS(f,Δ,{ξi}ni=1)+dS(g,Δ,{ξi}ni=1)(1)
f,gは可積分なので、その定義から、
limd(Δ)0S(f,Δ,{ξi})=If
limd(Δ)0S(g,Δ,{ξi})=Ig
(1)式の両辺の極限limd(Δ)0 をとろう。
右辺の極限
=limd(Δ)0(cS(f,Δ,{ξi}ni=1)+dS(g,Δ,{ξi}ni=1)
極限の性質から、
=climd(Δ)0S(f,Δ,{ξi}ni=1)+dlimd(Δ)0S(g,Δ,{ξi}ni=1
=cIf+dIg
従って(1)式の左辺の極限I(cf+dg) も存在して、右辺の極限と一致する。 証明終わり。











均質な薄い板状の剛体の場合
薄い板状で均質(単位面積当たりの質量ρが一定)な剛体で、回転軸が剛体に垂直である場合を例に、
IΔが一定の値Iに収束する理由を説明しよう。右図参照のこと。
Δ=(V1,V2,,VN);剛体の任意の分割

mi=ρv(Vi);ここで、v(Vi)Viの2次元体積(面積のこと)
剛体と回転軸の交点Oから、Viの点ξ(今後ξVi と書く )までの距離ˆr(ξ)=Oξの最小値をlmi=ˆr(ξm)、最大値をlMi=ˆr(ξM)と記す。
ここで、ξmViのなかで点Oとの距離が最も小さい点
ξMViのなかで点Oとの距離が最も大きい点。
すると、Viの中からどんな代表点ξiと選んでも、
lmi=ˆr(ξmi)=Oξmiˆr(ξi)=Oξiˆr(ξMi)=OξMi(i=1,2,,,N)
これらを使って、慣性モーメントの近似式
IΔ=imiˆr2(ξi)=ρiˆr2(ξi)v(Vi)
を下と上から評価すると、
sΔ=ρiOξmi2v(Vi)
IΔ=ρiOξi2v(Vi)
SΔ=ρiOξMi2v(Vi)   (1)
故に、

0SΔsΔ=ρi(OξMi2Oξmi2)v(Vi)                              (2)

上式の右辺を上から評価しよう。
OξMi2Oξmi2=(OξMiOξmi)(OξMi+Oξmi)
ここで、
OξMiOξmi OξMiOξmi
=ξmiξMi =ξMiξmi
である。
定義;有界集合の径
Viの径d(Vi)を,
Viの任意の2要素ξ,ξ間の距離ξξの最大値
で定義する(記号表示では,d(Vi)=maxξ,ξViξξ
すると、
OξMiOξmid(Vi)
さらに剛体は有限の大きさなので、ある正数Lが存在して、すべての剛体の要素ξOξLを満たす。
このため、OξMi+Oξmi 2L
これらを使って(2)式の右辺を評価すると
0SΔsΔi2Lρd(Vi)v(Vi)
分割Δ=V1,,,,VNの径d(Δ)を、
d(Vi),(i=1,2,,,N)の最大値で定義すると、
上式から、 0SΔsΔi2Lρd(Vi)v(Vi)2Lρd(Δ)iv(Vi)=2Lρd(Δ)v(G)                           (3)
これより、
limd(Δ)0(SΔsΔ)=0 (4)
最後に、分割の仕方に関係ない、実数Iが存在して、limd(Δ)0sΔ)=I が存在することを示そう。 これが言えれば、(4)式からlimd(Δ)0SΔ)=limd(Δ)0sΔ)=Iが言え、
(1)式から 慣性モーメントの近似式
IΔ=ρiOξi2v(Vi)
代表点ξiの選び方に無関係に、
limd(Δ)0SΔ)=Iが導かれる。

定義;分割の細分
剛体Vの2つの分割Δ,Δを考える。
Δ=V1,V2,,,,VNΔ=V1,V2,,,,VNの細分とは、
Δのどの要素Gi(i=1,2,,,N)も、Δのある要素Gj(j=1,2,,,N)に含まれることを言う。
記号では、ΔΔと記す。
定義;2つの分割の最小の共通細分
Vの2つの分割Δ={V1,V2,,,,VN}Δ={V1,V2,,,,VN}に対して、
ΔΔとは、{ViVji=1,2,,,N,j1,2,,,N}という分割のこと。

補助命題
剛体Vの2つの分割Δ,Δを考える。
(1)Δ ΔΔ,ΔΔΔ(2)ΔΔならば
sΔsΔSΔSΔ









この考え方を正確に展開して得られる数学が(リーマン)積分とよばれる分野である。

てこの原理と力のモーメント

てこの原理については、

作用線の定理

剛体の場合、作用線に沿って力の作用点を移動しても、力の作用は変わらない。何故かは、考えてみましょう。

剛体のつり合い

いくつかの力が作用し、剛体が静止したままであるか、
重心が等速直線運動を続け、重心の周りの回転が変化しない場合に、剛体(に作用している力)は釣り合っているという。

気体や液体の圧力と浮力

CAIテスト

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