会社法・企業倫理/持続可能性の追求

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目次

概要

現在「持続可能性」という言葉には,地球環境の持続可能性という意味だけでなく, 人間の社会経済システムの持続可能性も暗黙のうちに含まれるようになっている. 特に国際機関などでは,生態系の崩壊を待つまでもなく,地球規模での貧富の差の拡大と, 悪化する途上国の貧困問題という人間社会のひずみが,人類社会の存続を脅かす可能性があることが 強く認識されるようになってきた [r1]

科学技術と産業社会の発達により,大量の余剰生産物が生み出され,「モノの需要」は個人の生存のための基本的なニーズではなく, 人々の無限大に拡大する欲望によって動かされるようになった. そのようなヒトの無限の欲望にあわせた「無限の成長」が必要なように思えてしまう. しかし,地球(上の資源)が有限であることを認識すれば,それは幻想にすぎないことがすぐにわかる.

持続可能性を議論するのであれば「最適規模」という考え方を考慮しなければならない. 質的な向上を意味する持続可能な発展は,この「最適規模」の概念とは矛盾しない. 地球環境の有限性が明らかな以上,「(無限の)成長」ではなく「持続可能な発展」が,人類最大かつ共通の課題となっている [r2][r3]

持続可能な開発」は現在,環境保全についての基本的な共通理念として,国際的に広く認識されている. これは「環境」と「開発」を互いに反するものではなく,共存し得るものとしてとらえ, 環境保全を考慮した節度ある開発が(ある範囲までは)可能である,という考えである.

持続可能な農業とは,持続可能性を考えた農業のことである. 農業に関する環境問題は,実は多様で深刻なものも多い.農地開拓の際に自然環境を破壊したり,作物の栽培に必要な淡水を過剰に使用することで水資源の減少を招いている. 収穫率を優先するあまり,農薬により土壌汚染や水質汚染を起こしている. このように,人類の持続可能性を直接脅かす可能性が高いものが食料危機と水資源不足である [r1]

本起業コースでは,イノベーション科目群として「新農業」「新養殖」を設置している. 具体的なソリューションについては各科目の内容を参照すること.

環境と社会の持続可能性

地球の生態的な特徴に着目し,持続可能な社会の原則として広く受け入れられている一例として, 「ナチュラルステップの4つのシステム条件」がある(図1) [r4]. この4条件のうち1~3の条件は,地球環境の有限性を前提とした社会・経済システムの原則を示し, 4は、社会の持続可能性に配慮した条件となっている.

表1:ナチュラルステップ 4つのシステム条件(文献 [r4] から引用)
4つのシステム条件 持続可能性の基本原則
持続可能な社会では自然の中で 持続可能な社会を構築するためには
1. 地殻から掘り出した物質の濃度が増え続けない 1. 地殻から掘り出した物質(重金属や化石燃料など)が蓄積していくことに加担しない
2. 人間社会が作り出した物質の濃度が増え続けない 2. 人間社会で作り出した化学物質と物質(ダイオキシン、PCB、DDTなど)が蓄積していくことに加担しない
3. 物理的な方法で劣化しない 3. 自然や自然のプロセスの物理的な劣化や破壊に加担しない(森林の乱伐採や重要な野生の生息地を消滅させるなど)
4. 人々が自らの基本的ニーズを満たそうとする行動を妨げる状況を作り出してはならない 4. 人々が自らの基本的なニーズを満たそうとする行動を妨げる状況を作り出すことに加担しない(不安定な労働条件や不十分な給料など)

上記の4条件を満たす社会・経済システムとは,例えば以下のような様態が考えられる.

  • エネルギー源を化石燃料依存から再生可能エネルギーにシフトする
  • プラスチックや鉄非鉄金属・希少金属などの鉱物資源を,リユース・リサイクルして使う循環型の仕組みを作る
  • 分解しない有害化学物質への依存をやめる
  • 森林資源や生物の多様性を保護する
  • 植林などによって表土流出などによる土地の劣化や砂漠化を食い止める
  • 限られた資源を公平に分配できる社会制度を構築する

つまり,環境とともに持続可能な社会とは,高い資源の効率性(経済面での効率性と環境負荷面での効率性)と, 公平な分配制度がきちんと組み込まれている社会と言えるであろう.

社会システムの持続可能性

企業の持続可能性

参考文献

関連項目

演習課題

個人用ツール