物理/剛体の回転運動と釣合い

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物理力学剛体の回転運動と釣合い

目次

☆☆剛体の回転運動

ある点の周りの力のモーメントUNIQ63ea17055686f667-MathJax-408-QINU が、その点をとおる、あらゆる回転軸にかんする回転力を表現していることがわかった。
この節では力UNIQ63ea17055686f667-MathJax-409-QINUと運動量の変化の関係をあたえるニュートンの運動方程式(第2法則)を変形して、
回転力UNIQ63ea17055686f667-MathJax-410-QINUにかんする方程式を導く。
またその応用として、剛体のつり合い条件を求める。

剛体の内部力についての仮定

直交右手座標系UNIQ63ea17055686f667-MathJax-411-QINU を定める。原点 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-412-QINU は、考察に都合のよい点を選ぶ。

剛体をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-413-QINU個の(質点と考えてよい)微小部分UNIQ63ea17055686f667-MathJax-414-QINUに分け、
その質量をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-415-QINU、位置ベクトルをUNIQ63ea17055686f667-MathJax-416-QINUとする。
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-417-QINUが外部から受ける力をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-418-QINU、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-419-QINU が剛体の他の部分UNIQ63ea17055686f667-MathJax-420-QINU から受ける力(内力)をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-421-QINUとおく。
後者は、剛体が変形しないよう、剛体の原子間に働かせる力に起因する。
この原子間の力は、原子の電荷による電気力と、
原子同士が接近しすぎたときに作用する量子力学的力により生じる。
作用・反作用の法則(運動の第3法則)から、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-422-QINU 。
さらに、剛体の2点間に働く内力の方向は、
その2点を結ぶ直線の方向と同じだと、仮定する。

各質点のニュートンの運動方程式  

各質点ごとに、ニュートンの運動方程式を立てると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-423-QINU
これを変形して
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-424-QINU UNIQ63ea17055686f667-MathJax-425-QINU 
この式から、
力UNIQ63ea17055686f667-MathJax-426-QINUの回転力UNIQ63ea17055686f667-MathJax-427-QINUにかんする式を導こう。

UNIQ63ea17055686f667-MathJax-428-QINUにかんする式の誘導

式(1)の両辺に左側から、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-429-QINU のベクトル積を施すと、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-430-QINU UNIQ63ea17055686f667-MathJax-431-QINU
ベクトル積の性質3と性質4により、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-432-QINU UNIQ63ea17055686f667-MathJax-433-QINU
ここで、ベクトル積の性質8より
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-434-QINU
なので、 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-435-QINU
質点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-436-QINUの運動量をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-437-QINUと書くと、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-438-QINUなので、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-439-QINU
定義;角運動量(運動量のモーメントともいう)
質点の位置ベクトルをUNIQ63ea17055686f667-MathJax-440-QINU、運動量をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-441-QINUと書くとき、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-442-QINUを,この質点の角運動量と呼ぶ。
これを用いると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-443-QINU

 回転の運動方程式の導出 

故に、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-444-QINU
ここで、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-445-QINU
式(4)の右辺の第2項の上付き添え字i,jを、それぞれ、j'と i'でおきかえられるので、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-446-QINU
内力は作用反作用の法則が適用できると仮定しているので、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-447-QINU 。この式を上の式の右辺に代入すると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-448-QINU
この式の右辺の和をとる変数i',j' を i,j におきかえると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-449-QINU
この式を、式(5)の右辺の第2項に代入して整頓すると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-450-QINU
さらに、内力に関する第2の仮定により、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-451-QINU とUNIQ63ea17055686f667-MathJax-452-QINUは同じ方向なので、ベクトル積の定義より、この項は、零となることが分かる。
故に、式(4)の右辺の第2項は零となり、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-453-QINU
が得られる。全角運動量をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-454-QINUとおけば、
式(6)は、次のように書ける。

命題;回転運動の関するオイラーの運動方程式
剛体の内力に上述の2つの仮定を付ける。このとき、
剛体に作用する全ての外部力の原点周りの力のモーメントUNIQ63ea17055686f667-MathJax-455-QINUと、
全角運動量UNIQ63ea17055686f667-MathJax-456-QINUの間には、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-457-QINU (7)

この命題の導出までは詳しく述べたが、本テキストではこれ以上は深入りしない。
この先にも興味がある方は、次の記事をご覧ください。

角運動量の保存則

固定軸の周りの剛体の回転運動の方程式

回転運動の運動方程式から、任意の軸の周りの回転運動の方程式が簡単に導出できる。
z軸周りの場合を例にとり、説明する。
z軸周りの回転力はUNIQ63ea17055686f667-MathJax-458-QINUなので、
回転運動の方程式から
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-459-QINU
この式の右辺に,UNIQ63ea17055686f667-MathJax-460-QINU を代入すると
右辺
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-461-QINU (微分の加法性から)
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-462-QINU (内積の加法性から)
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-463-QINU (ベクトル積の性質8から)
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-464-QINU UNIQ63ea17055686f667-MathJax-465-QINUを代入し、ベクトル積の性質を用いると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-466-QINU
故に、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-467-QINU
剛体はz軸の周りを回転するので、
その各点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-468-QINU(位置ベクトルUNIQ63ea17055686f667-MathJax-469-QINU)は、
z軸と直交する平面上を、z軸を中心とする円を描いて運動する。
この拘束条件を考慮して、
時刻UNIQ63ea17055686f667-MathJax-470-QINUの位置ベクトルUNIQ63ea17055686f667-MathJax-471-QINUの座標成分を書きなおすと、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-472-QINU
ここでUNIQ63ea17055686f667-MathJax-473-QINUは、点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-474-QINUとz軸との距離、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-475-QINUは、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-476-QINUをxy平面に正射影した像がx軸となす角度である。図参照。
剛体につけておいた印UNIQ63ea17055686f667-MathJax-477-QINUの位置ベクトルUNIQ63ea17055686f667-MathJax-478-QINUを
xy平面に正射影した像がx軸となす角(回転角)UNIQ63ea17055686f667-MathJax-479-QINUを用いると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-480-QINU
(UNIQ63ea17055686f667-MathJax-481-QINUは、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-482-QINUごとに決まる、定数)と書ける。

式(1)の右辺を、式(2)を利用して、変形すると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-483-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-484-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-485-QINU
ここで、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-486-QINUは、括弧内のベクトルのUNIQ63ea17055686f667-MathJax-487-QINU座標成分(z座標成分)を表す。

ベクトル積の性質6より、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-488-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-489-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-490-QINU
ここで、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-491-QINUを代入すると
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-492-QINU
以上により、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-493-QINU 
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-494-QINU
が得られた。 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-495-QINUとおくと、この式は
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-496-QINU
と書ける。ここでUNIQ63ea17055686f667-MathJax-497-QINUを、剛体の軸まわりの慣性モーメントと呼ぶ。
これがz軸を固定軸とする剛体の回転運動の運動方程式である。
原点を始点とする任意の回転軸UNIQ63ea17055686f667-MathJax-498-QINUまわりの回転の方程式も同様に得られる。

この方程式の変数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-499-QINU は、一次元のスカラーなので、
質点がなめらかに拘束され、直線上を運動するときの運動方程式
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-500-QINU
と、対比させる。すると、
質点に作用する力 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-501-QINU  <===> 剛体に作用する回転力UNIQ63ea17055686f667-MathJax-502-QINU
質点の質量 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-503-QINU     <===> 剛体のUNIQ63ea17055686f667-MathJax-504-QINU軸まわりの慣性モーメント
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-505-QINU、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-506-QINUは質量UNIQ63ea17055686f667-MathJax-507-QINUとUNIQ63ea17055686f667-MathJax-508-QINU軸を延長した直線との距離
質点の位置変数 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-509-QINU  <===> 剛体のUNIQ63ea17055686f667-MathJax-510-QINU軸周りの回転角変数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-511-QINU
質点の速度 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-512-QINU <===>剛体のUNIQ63ea17055686f667-MathJax-513-QINU軸周りの角速度UNIQ63ea17055686f667-MathJax-514-QINU;
質点の運動量 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-515-QINU <===> 剛体の角運動量UNIQ63ea17055686f667-MathJax-516-QINU;
運動方程式UNIQ63ea17055686f667-MathJax-517-QINU <===> UNIQ63ea17055686f667-MathJax-518-QINU

という、対応関係があることが分かる。
この節で得た固定軸まわりの回転運動の方程式から、
もし重心まわりの力のモーメントUNIQ63ea17055686f667-MathJax-519-QINU ならば、重心を通る任意の軸まわりの回転力が零なので、
重心を通る任意の軸まわりの角加速度が零、角速度が一定となることが分かる。
命題
次の3条件は同等である。
(1)剛体は釣り合っている。
(2)剛体に作用する力のベクトル和が零で、重心の周りの力のモーメントNが零である。
(3)剛体に作用する力のベクトル和が零で、ある点の周りの力のモーメントNが零である。

剛体の回転の運動エネルギー  

剛体の各微小部分(質量UNIQ63ea17055686f667-MathJax-520-QINU)の速度を UNIQ63ea17055686f667-MathJax-521-QINUと書くと、
その運動エネルギーは UNIQ63ea17055686f667-MathJax-522-QINUなので、
剛体全体の運動エネルギーは、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-523-QINU
回転運動している各微小部分の速度は、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-524-QINUと書けるので、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-525-QINU

物理振り子

剛体は、重心を通らない水平軸の周りで、重力の作用を受け振動する。
これを物理振り子、あるいは実体振り子という。

水平回転軸をx軸とし、鉛直上方をz軸の正方向とし、yz平面が剛体の重心を通る座標系を考え、
回転軸とこの平面の交点を原点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-526-QINU、重心をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-527-QINUと記す。図参照。
回転はなめらかで摩擦力は無視できるとする。
すると、回転軸から、この剛体が受ける力は、剛体をこの軸に支える作用を持つだけで、剛体の振動に何の影響も与えない。
そこで、剛体にかかる力は、重力だけと考えて良い。
重力の原点周りの力のモーメントUNIQ63ea17055686f667-MathJax-528-QINUは、
剛体の重心UNIQ63ea17055686f667-MathJax-529-QINUに、剛体の全質量UNIQ63ea17055686f667-MathJax-530-QINUがあるとしたときの
重力の原点周りのモーメントに等しいことが分かっている。 故に、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-531-QINU
x軸まわりの力のモーメントは、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-532-QINU
従って、回転の運動方程式は
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-533-QINU
ここでUNIQ63ea17055686f667-MathJax-534-QINUは、軸まわりの、振り子の慣性質量。


剛体の慣性モーメントの計算(一次元の剛体) 

剛体UNIQ63ea17055686f667-MathJax-535-QINUは、ごく細く、まっすぐな棒で,
長さUNIQ63ea17055686f667-MathJax-536-QINU、質量密度(単位長さあたりの質量)は一定でUNIQ63ea17055686f667-MathJax-537-QINUとする。
棒の左端からUNIQ63ea17055686f667-MathJax-538-QINUの場所UNIQ63ea17055686f667-MathJax-539-QINUを通り、棒に直交する軸まわりの慣性モーメントを具体的に計算しよう。
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-540-QINUを原点とし、棒と同じ方向の数直線を考え、これを座標系として採用。
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-541-QINUと表現する。
剛体UNIQ63ea17055686f667-MathJax-542-QINUの慣性モーメントは、
剛体を質点とみなせるほど細かい部分UNIQ63ea17055686f667-MathJax-543-QINUに分割して、
各UNIQ63ea17055686f667-MathJax-544-QINUの質量UNIQ63ea17055686f667-MathJax-545-QINUと、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-546-QINUとUNIQ63ea17055686f667-MathJax-547-QINUとの距離UNIQ63ea17055686f667-MathJax-548-QINUを用いて、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-549-QINUで定義した。但しUNIQ63ea17055686f667-MathJax-550-QINU

剛体の分割と慣性モーメントの近似式・リーマン和 

UNIQ63ea17055686f667-MathJax-551-QINUの質量UNIQ63ea17055686f667-MathJax-552-QINUは、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-553-QINUの長さUNIQ63ea17055686f667-MathJax-554-QINUに質量密度UNIQ63ea17055686f667-MathJax-555-QINUを掛ければ得られるので
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-556-QINUであり、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-557-QINU
と書ける。
しかし、剛体UNIQ63ea17055686f667-MathJax-558-QINUをいくら細かく分割しても、
各小区間UNIQ63ea17055686f667-MathJax-559-QINUは大きさ(長さ)をもつので、
原点との距離UNIQ63ea17055686f667-MathJax-560-QINUは、一つに定まらない。
そこで、各小区間UNIQ63ea17055686f667-MathJax-561-QINUから、代表点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-562-QINUを選びだし、その点の原点からの距離UNIQ63ea17055686f667-MathJax-563-QINU、(UNIQ63ea17055686f667-MathJax-564-QINU絶対値)を、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-565-QINUとみなす。
すると、慣性モーメントUNIQ63ea17055686f667-MathJax-566-QINUの式は
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-567-QINU
で近似される。

そこで、この分割を
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-568-QINU と表し、 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-569-QINU
で,慣性モーメントの近似式を表すことにする。
すると、

慣性モーメントの近似式は、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-570-QINU
と書ける。
この値は分割の仕方と分割小区間の代表点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-571-QINUの選び方によって変化する。
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-572-QINUの中で、原点に最も近い点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-573-QINUにとると
最小値 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-574-QINU
をとり、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-575-QINUの中で、原点に最も遠い点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-576-QINUにとると
最大値 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-577-QINU
を取る。
関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-578-QINUを使って表現すれば、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-579-QINU
であり、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-580-QINUを満たす。
質量密度が場所で変わるときは、、関数はUNIQ63ea17055686f667-MathJax-581-QINUになり、
剛体の重心を求めるときは、後述するように、別の関数が現れる。
そこで、数学の分野では、一般の関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-582-QINUにたいして
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-583-QINU
を求め、分割UNIQ63ea17055686f667-MathJax-584-QINUとUNIQ63ea17055686f667-MathJax-585-QINUの代表点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-586-QINUに関する関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-587-QINUのリーマン和と呼ぶ。
その最小値UNIQ63ea17055686f667-MathJax-588-QINUと最大値UNIQ63ea17055686f667-MathJax-589-QINUも,同様に定義される。

UNIQ63ea17055686f667-MathJax-590-QINU 慣性モーメントの近似式(1)は、関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-591-QINUにたいするリーマン和である。

慣性モーメントの近似式の意味 

今後、関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-592-QINUは、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-593-QINUで定義された有界関数として、 議論を進める。
有界関数とは、十分大きな正数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-594-QINUを選べば、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-595-QINUの全ての点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-596-QINUに対して、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-597-QINUとなること。
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-598-QINUを代入すれば、考察対象の剛体の慣性モーメントの話になる。
リーマン和
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-599-QINU
は、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-600-QINUのグラフを、棒グラフで近似したときの棒グラフの作る面積(各角柱の面積和)であることが分かる。図参照。
また、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-601-QINUは一点鎖線でしめす、小さいほうの長方形の和であり、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-602-QINUは点線でしめす、大きいほうの長方形の和である。


UNIQ63ea17055686f667-MathJax-603-QINUは、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-604-QINUのグラフとx軸およびy軸と平行な直線UNIQ63ea17055686f667-MathJax-605-QINU、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-606-QINUで囲まれる部分の面積UNIQ63ea17055686f667-MathJax-607-QINUを近似している。
また、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-608-QINU
であり、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-609-QINUは面積を下から評価し、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-610-QINUは面積を上から評価していることがわかる。
分割を限りなく細かくしていくとき、
リーマン和が分割や代表点の選び方に関係ない数に収束するならば、
その極限値は、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-611-QINUのグラフとx軸およびy軸と平行な直線UNIQ63ea17055686f667-MathJax-612-QINU、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-613-QINUで囲まれる部分の面積
と考えられる。
もし、分割UNIQ63ea17055686f667-MathJax-614-QINUを細かくしていくとき
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-615-QINUとUNIQ63ea17055686f667-MathJax-616-QINUが同じ値に収束することが示せれば、
(3)式と(4)式から、リーマン和は、関数のグラフの作る面積UNIQ63ea17055686f667-MathJax-617-QINUに収束することが分かった。

可積分の定義と積分 

「分割を細かくしていくとき、リーマン和が収束する」ということは、
面積を決める上で決定的に重要がことなので、
可積分という名を付けて、数学的に厳密に定義する。 このためにはまず、分割の大きさを定める必要がある。
定義:分割の大きさ
分割 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-618-QINUの大きさとは、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-619-QINU

定義:可積分と積分
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-620-QINUを、有界閉区間UNIQ63ea17055686f667-MathJax-621-QINU上で定義され、実数の値をとる関数とする。

もし、ある実数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-622-QINUが存在して、
どんな分割UNIQ63ea17055686f667-MathJax-623-QINUと代表点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-624-QINUであっても、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-625-QINU
が成り立つ時、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-626-QINUはUNIQ63ea17055686f667-MathJax-627-QINU上で(リーマン)可積分であるという。
このとき、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-628-QINU をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-629-QINUのUNIQ63ea17055686f667-MathJax-630-QINU上での(リーマン)積分といい、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-631-QINU
などと書く。

 積分の性質 

定理(積分の線形性)
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-632-QINUを、区間UNIQ63ea17055686f667-MathJax-633-QINU上で定義された、任意の実数値関数であり、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-634-QINUを任意の実数とする。
このとき、
(1)UNIQ63ea17055686f667-MathJax-635-QINUがUNIQ63ea17055686f667-MathJax-636-QINU上で可積分ならば、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-637-QINUもUNIQ63ea17055686f667-MathJax-638-QINU上で可積分
(2)このとき、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-639-QINU

証明;リーマン和の定義から、区間UNIQ63ea17055686f667-MathJax-640-QINUの任意の分割UNIQ63ea17055686f667-MathJax-641-QINUと 分割区間の任意の代表点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-642-QINU(UNIQ63ea17055686f667-MathJax-643-QINUはUNIQ63ea17055686f667-MathJax-644-QINUに含まれる意)に対して、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-645-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-646-QINUは可積分なので、その定義から、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-647-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-648-QINU
(1)式の両辺の極限UNIQ63ea17055686f667-MathJax-649-QINU をとろう。
右辺の極限
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-650-QINU
極限の性質から、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-651-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-652-QINU
従って(1)式の左辺の極限UNIQ63ea17055686f667-MathJax-653-QINU も存在して、右辺の極限と一致する。 証明終わり。

慣性モーメントの計算(1)リーマン和の極限を求める方法

UNIQ63ea17055686f667-MathJax-654-QINUは、先述の、ごく細い一様な質量密度UNIQ63ea17055686f667-MathJax-655-QINUのまっすぐな棒で、
座標系を入れて、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-656-QINUと表現しておく。
原点を通りこの棒と直交する軸のまわりの(この棒の)慣性モーメントを、
リーマン和の極限を取って求めよう。
区間UNIQ63ea17055686f667-MathJax-657-QINUをn(UNIQ63ea17055686f667-MathJax-658-QINU)等分して得られる点列,
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-659-QINU
を分点とする分割をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-660-QINUと記す。すると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-661-QINU, UNIQ63ea17055686f667-MathJax-662-QINUであり、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-663-QINU  
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-664-QINUという分割の列は、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-665-QINUを満たす。
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-666-QINUがリーマン可積分であることを認めれば、
可積分の定義から、どんな代表点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-667-QINUを選んでも、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-668-QINUとなる。

そこで、代表点をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-669-QINUと選ぶ。
関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-670-QINUを用いると、 分割UNIQ63ea17055686f667-MathJax-671-QINUを用いた慣性モーメントの近似値は次のようになる。
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-672-QINU
ここで、 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-673-QINU(注参照)を利用して、この式を計算すると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-674-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-675-QINUなので、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-676-QINU
故に、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-677-QINU

(注)UNIQ63ea17055686f667-MathJax-678-QINUの証明
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-679-QINU なので、両辺のj=1,2,,,n に関する和を取る。
左辺の和はUNIQ63ea17055686f667-MathJax-680-QINU
右辺の和はUNIQ63ea17055686f667-MathJax-681-QINU
故に、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-682-QINU UNIQ63ea17055686f667-MathJax-683-QINU UNIQ63ea17055686f667-MathJax-684-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-685-QINUの略証
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-686-QINUなので、この両辺のj=1,2,,,nに関する和を取る。
左辺の和はUNIQ63ea17055686f667-MathJax-687-QINU、右辺の和はUNIQ63ea17055686f667-MathJax-688-QINU,故にUNIQ63ea17055686f667-MathJax-689-QINU


慣性モーメントの計算(2)原始関数を利用する方法

積分可能な関数の積分をリーマン和の極限から求める計算は煩雑であり、複雑な形状の剛体の慣性モーメントを求めるにはふさわしくない。
次の定理が強力な計算法を提供する。

定理
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-690-QINUを数直線上の区間、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-691-QINUをUNIQ63ea17055686f667-MathJax-692-QINU上可積分な実数値関数
とする。
もしUNIQ63ea17055686f667-MathJax-693-QINUが、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-694-QINU上で微分可能で
全てのUNIQ63ea17055686f667-MathJax-695-QINUの点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-696-QINUで、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-697-QINU
を満たす関数ならば(注参照)、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-698-QINU
上記の条件を満たす関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-699-QINUを、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-700-QINUの原始関数という。
(注)関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-701-QINUは、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-702-QINU上でしか定義されていないので、
端点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-703-QINUでは、通常の微分は定義できない。そこで、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-704-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-705-QINU
と定義する。
証明;
区間UNIQ63ea17055686f667-MathJax-706-QINUの任意の分割
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-707-QINU
に対して、
代表点をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-708-QINU(UNIQ63ea17055686f667-MathJax-709-QINUはUNIQ63ea17055686f667-MathJax-710-QINUの点の意)とすると、 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-711-QINUのリーマン和は
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-712-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-713-QINU
小区間UNIQ63ea17055686f667-MathJax-714-QINUでの関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-715-QINUの平均勾配
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-716-QINU
は、平均値の定理により、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-717-QINUの中のある一点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-718-QINUにおけるUNIQ63ea17055686f667-MathJax-719-QINUの接線の勾配
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-720-QINUに等しので、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-721-QINU
故に、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-722-QINU
そこで、各小区間UNIQ63ea17055686f667-MathJax-723-QINUの代表点をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-724-QINUと選べば、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-725-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-726-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-727-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-728-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-729-QINUは可積分なので、 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-730-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-731-QINU
証明終わり。

さて、慣性モーメントを求めたい剛体では、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-732-QINUなので、その原始関数は、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-733-QINU
従って、慣性モーメントは、定理を適用して、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-734-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-735-QINU,UNIQ63ea17055686f667-MathJax-736-QINUを代入して、整頓すると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-737-QINU

重心の計算 

質量密度が場所により変わる、長さUNIQ63ea17055686f667-MathJax-738-QINUのごく細い棒UNIQ63ea17055686f667-MathJax-739-QINUの重心を求めてみよう。
考えやすくするため、 棒の一端を原点にし、他端がx軸の正の位置にくるように座標系UNIQ63ea17055686f667-MathJax-740-QINUをいれる。
この座標系で剛体はUNIQ63ea17055686f667-MathJax-741-QINUと書ける。 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-742-QINUを小区間UNIQ63ea17055686f667-MathJax-743-QINUに分割(分割UNIQ63ea17055686f667-MathJax-744-QINUと記す)し、これらの小区間を質点とみなせば、その重心は、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-745-QINU
で定義された(1.1.1節参照)。ここでUNIQ63ea17055686f667-MathJax-746-QINU は第i質点の質量、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-747-QINU、 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-748-QINUは第i質点の位置ベクトル。
ベクトルを座標成分表示すると、この問題では一次元なので、 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-749-QINU、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-750-QINU
しかし、実際には UNIQ63ea17055686f667-MathJax-751-QINUは、質点ではないので、 位置ベクトルは、定まらない。
またその質量も密度が一定ならば、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-752-QINUできまるが、
密度が変化するならば、定まらない。
そこで、各小区間 UNIQ63ea17055686f667-MathJax-753-QINUの代表点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-754-QINUを選び
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-755-QINU,UNIQ63ea17055686f667-MathJax-756-QINU
で近似する。
すると分割UNIQ63ea17055686f667-MathJax-757-QINUと代表点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-758-QINUに対応する、 質量UNIQ63ea17055686f667-MathJax-759-QINUと重心UNIQ63ea17055686f667-MathJax-760-QINUの近似値は、それぞれ
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-761-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-762-QINU

UNIQ63ea17055686f667-MathJax-763-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-764-QINU
ここで、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-765-QINU
もし、関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-766-QINUが積分可能ならば、分割UNIQ63ea17055686f667-MathJax-767-QINUを細かくしていけば UNIQ63ea17055686f667-MathJax-768-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-769-QINU
もし関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-770-QINUの原始関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-771-QINUが存在する(UNIQ63ea17055686f667-MathJax-772-QINU)ならば
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-773-QINU
もし関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-774-QINUも積分可能ならば、分割UNIQ63ea17055686f667-MathJax-775-QINUを細かくしていけば UNIQ63ea17055686f667-MathJax-776-QINU
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-777-QINU
もし関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-778-QINUの原始関数UNIQ63ea17055686f667-MathJax-779-QINUが存在する(UNIQ63ea17055686f667-MathJax-780-QINU)ならば
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-781-QINU
例;UNIQ63ea17055686f667-MathJax-782-QINUならば、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-783-QINUなので UNIQ63ea17055686f667-MathJax-784-QINU
また、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-785-QINUとなるのでUNIQ63ea17055686f667-MathJax-786-QINU となり、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-787-QINU
例;UNIQ63ea17055686f667-MathJax-788-QINUならば、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-789-QINUなので UNIQ63ea17055686f667-MathJax-790-QINU
このときUNIQ63ea17055686f667-MathJax-791-QINUなので
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-792-QINUである。UNIQ63ea17055686f667-MathJax-793-QINU


剛体の釣り合い(再論)

剛体が釣合うときどのような条件が成立するかについては、前節2.5(剛体と回転力)の「1.3 てこの原理と剛体の釣り合い」で論じたが、
この条件があれば、逆に、剛体は釣り合うことを論じる。
理解しやすくするため、ある程度重複することはいとわず説明する。

剛体に働く力の作用線

力が作用する点を着力点といい、
着力点を通り力のベクトルと方向が等しい直線を、力の作用線という。
剛体に働く力は、その着力点をかえると、一般には、剛体の運動への効果が異なってしまう。
しかし、力のベクトル和と、力のモーメント和が不変となるように力の着力点を移動したり力の合成をすることは、
剛体の運動には全く影響がでないので、許される。
例えば、力の着力点をその作用線にそってうごかしたり、
同じ着力点をもつ複数の力を、それらのベクトル和に置き換えることは許される。

剛体のつり合い

いくつかの力が作用し、剛体が静止したままであるか、
重心UNIQ63ea17055686f667-MathJax-794-QINUが等速直線運動(静止も含む)を続け、
重心の周りの回転が変化しない(回転しないままか、同じ回転を続ける)場合に、
剛体(に作用している力)は釣り合っているという。
重心が等速直線運動を行うのは、
剛体に作用する外力のベクトル和が0になることであり、その場合に限る。
これについては、3節(質点の運動と質点系)の「2.1 質点系の運動と重心」で説明した。
重心周りの回転が変化しないのは、重心まわりの外力のモーメントの総和が0になることであり、この場合に限る。これについては、本節の前項「1.5 固定軸の周りの剛体の回転運動の方程式」で説明した。
定理;剛体のつり合い
剛体に、外力UNIQ63ea17055686f667-MathJax-795-QINUがはたらいている。
このとき、次の条件は同等である。
ⅰ)剛体は釣り合っている。
ⅱ)外力のベクトル和が零で、重心UNIQ63ea17055686f667-MathJax-796-QINUまわりの外力のモーメントの和が零。
ⅲ)外力のベクトル和が零で、任意の固定点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-797-QINUまわりの外力のモーメントの和が零。
証明;条件ⅰ)とⅱ)が同等であることは、すでに、説明した。
条件ⅱ)とⅲ)の同等性を示そう。
外力の和が零であるという条件の下で、
「任意の固定点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-798-QINUまわりの外力のモーメントの和UNIQ63ea17055686f667-MathJax-799-QINUは常に等しい」
ことを示せば良い。
外力UNIQ63ea17055686f667-MathJax-800-QINUの作用点をUNIQ63ea17055686f667-MathJax-801-QINUとする。
すると、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-802-QINUまわりの外力のモーメントの和UNIQ63ea17055686f667-MathJax-803-QINUは
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-804-QINU

任意の点UNIQ63ea17055686f667-MathJax-805-QINUまわりの外力のモーメントの和UNIQ63ea17055686f667-MathJax-806-QINUは
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-807-QINU

UNIQ63ea17055686f667-MathJax-808-QINUを(1)式に代入すると
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-809-QINU
ベクトル積の性質から、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-810-QINU
仮定と(2)式から、
UNIQ63ea17055686f667-MathJax-811-QINU 
故に、UNIQ63ea17055686f667-MathJax-812-QINU 
証明終わり。

 

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