物理/静電気と電界・静磁気

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物理9章 電気と磁気(1) 静電気と電界、静磁気

テレビ、電話、携帯電話、冷蔵庫、パソコン、コピー機。
現代社会は電気や磁気を利用した製品に満ちている。
この章と次の章では、電気・磁気は何か、どのような性質を持つかについて学ぶ。

目次

 電磁気現象の根源 

詳しいことは11章で学ぶが、物質をつくっている原子は、原子核とその周りを回る電子から出来ている。
原子核はいくつかの陽子と中性子からできている。 
陽子は正の電荷+eをもち、電子はこれと同じ大きさで符号が反対の負の電荷-eを持つ。
電子の個数は陽子と同数であり、原子を離れて眺めると、正負の電荷が打ち消しあって電気を持たないように見える。
電荷の間には電気力が働く。同符号の電荷は互いに反発し、異符号の電荷は互いに引き合う。  
原子核と電子は引き合い、原子を作っている。また近くの原子同士も電気力で引き合い分子をつくり、気体や液体、固体をつくる。
帯電、静電気、磁石、電流、電磁波など、すべての電磁気現象は、電子と陽子の存在と運動によって生じる。 
この章と次章でこれらの電磁気現象とその法則について学ぶ。    
(注)電荷の正負について:陽子どうし、電子どうしは反発するが、陽子と電子は引き合う。従って陽子と電子はことなった電荷である。さらに陽子と電子の個数が同じだと離れた所からみると、打ち消し合って電荷がないようにみえる。このため一方の電荷に+、他方にーをつけて扱うと大変具合が良い。そこで正、負の電荷として両者をあつかうのである。どちらにーをあててもよかったが歴史的に電子にーをあてた。
なお、原子核のなかで電気的に反発する複数の陽子がくっついているのは、反発力より強い核力で引き合っているため(後で学ぶ)。

静電気

この節では、まず、静止した電荷(静電気という)の性質を学ぶ。

帯電と電気素量

原子は正負等しい電荷をもつので、離れた所から観測すれば、正と負の電荷が打ち消しあって,電荷をもたない。
物質は、原子から出来ているので、通常は電荷を持たない。
物質が電子をいくつか失ったり、獲得すると、物質は電荷を帯びる。帯電するという。
したがって全ての物質の電荷量は e の整数倍である。e を電気素量という。

点電荷

大きさの無視できる小さな電荷を点電荷という。

電荷の単位

電荷の単位は、クーロン([C])とよばれ、電流を利用して決められる。

電気素量は、$ e = 1.6\times 10^{-19}[C] $

電荷保存の法則

電荷は消滅も生成もしないことが、経験によって確かめられている。これを電荷保存法則という。

導体、不導体、半導体

導体(電気伝導体ともいう); ウィキペディア(電気伝導体)  
不導体(絶縁体ともいう); ウィキペディア(絶縁体)
半導体;  ウィキペディア(半導体)

摩擦電気

2つの不導体をこすりあわせると、このエネルギーで、電子が一方の物質から他方の物質に移動する。 
前者は正の電荷をもつ陽子の個数が電子の個数より多くなるので正の電荷を帯び、後者はそれと同じ大きさの負の電荷を帯びる。 
この帯電した電気を摩擦電気という。

クーロンの法則

同符号の2つの電荷は互いに反発し、異符号の電荷は互いに引き合う。 
2つの静止した点電荷間の力の向きは、これらを結ぶ直線の方向と一致し、その大きさは、2つの電荷の積に比例し、その距離の2乗に反比例する。クーロンの法則という。具体的には、

向きと大きさを同時に記述できるのでベクトル表示は便利である。

電荷$q_1$の位置ベクトルを$\vec{r_1}$、電荷$q_2$の位置ベクトルを$\vec{r_2}$、電荷$q_1$が電荷$q_2$から受けるクーロン力を$\vec{F_1}$とすると   
$\vec{F_1}=k\frac{1}{||\vec{r_1}-\vec{r_2}||^2}\frac{\vec{r_1}-\vec{r_2}}{||\vec{r_1}-\vec{r_2}||}$

この表現法に慣れておくとよい。ここで、$ k=\frac{1}{4 \pi \varepsilon_0} $ で $\varepsilon_0 $は真空の誘電率と呼ばれる。
実測によると$k = 9.0\times 10^{9}[\frac{N m^2}{C^2}]$ 、$\varepsilon_0 = 8.9\times 10^{-12} [\frac{C^2}{N m^2}]$ である。   

運動する2つの電荷の間にも力が働くが大変複雑であり、大学で学ぶ。


 3つ以上の電荷に働く力

N 個(>2)の電荷$q_1,,,,q_N $ があるとき、$q_1$ に作用する電気力は、$q_2,,,,q_N $ のそれぞれから$q_1$が受けるクーロン力(ベクトル表示)の和になることが実験で確かめられている。
これを、クーロン力の重ね合わせ原理という。

 クーロン力は保存力

クーロン力は、5章 力学(4) 運動量と力学的エネルギー保存則によれば、保存力であることが分かる。
保存力は位置エネルギをもつ。クーロン力の位置エネルギーを電位という。詳しくは後述する。

電気力は重力よりはるかに大きいこと

質量1gの2つの質点にそれぞれ1クーロンの電気を帯電させ、1cm離しておいたときに作用する, 静電気力と重力を計算して比較すること。

電界(電場ともいう)

電荷間に作用する力を近接作用の考え方で考察して電界(電場ともいう)という重要な概念を得る。
クーロンの法則を電界の概念でいいかえると、電界にかんするガウスの法則が得られる。電界から電位や電圧という重要な概念も得られる。

遠隔作用と近接作用

電荷の間のクーロン力はどのようにして働くのだろうか。 
遠隔作用と近接作用という二つの考え方がある。
遠隔作用では、離れた電荷が直接互いに力を及ぼしていると考える。
動いている電荷間に働く力を直接記述すると大変複雑であり、遠隔作用に基づく電磁気現象の記述や解析は困難である。

近接作用では、電荷は空間全体の性質をかえ電界を作り、この電界の中におかれた他の電荷は、その場所の電界から力を受けると考える。 
この考え方に基づく現象の記述や解析は、遠隔作用にくらべ、簡明・容易である。 
現在では近接作用に基づいて、電磁気の基本法則は記述・解析され、有効性が確かめられている。

電界の定義

電荷に静電気力(クーロン力)を及ぼす空間を電界(電場ともいう)と呼ぶ。
特に時間がたっても変化しない電界を静電界という。 空間の任意の点の電界の強さと向きは、その点に単位電荷を置いたときに作用する静電気力で定義する。 
正確にいうと、単位電荷をおくと、空間の電界をつくっている電荷達に力を及ぼし、動かしてしまい、電界を変えてしまうので、
無限小の電荷qを置いた時作用する電気力を $\vec{f}$ とするとき、 $ \vec{f}/q $  で電界を決め, $ \vec{E(x)} $  で表す。

力はベクトルなので、作用する電気力で定義する電界はベクトルである。
詳しくは

静止した点電荷の作る電界 

空間の位置$\vec{r}$に置いた電荷$\mathit{q}$が位置ベクトル$\vec{r'}$ の場所に作る電界は、クーロンの法則と 電界の定義から、
$\vec{E_q(r')}=\frac{kq}{|\vec{r'}-\vec{r}|^2}\frac{\vec{r'}-\vec{r}}{|\vec{r'}-{r}|}$

電界によるクーロンの法則の表現

場所$\vec{r}$の電荷$ \mathit{q} $と、場所$\vec{r'}$の電荷$ \mathit{q'} $の間に働く電気力は、
$\vec{F}=qk\frac{q'}{|\vec{r}-\vec{r'}|^2}\frac{\vec{r}-\vec{r'}}{|\vec{r}-{r'}|}=q\vec{E_{q'}(r)}$ ; 電荷$ \mathit{q} $ に働く力
$\vec{F'}=q'k\frac{q}{|\vec{r'}-\vec{r}|^2}\frac{\vec{r'}-\vec{r}}{|\vec{r'}-\vec{r}|}=q'\vec{E_q(r')}$ ;電荷$ \mathit{q'} $ に働く力

点電荷のつくる電界

点電荷のつくる電界については

を参照のこと。静電荷の作る電界は、時間変動がなく、静電界と呼ばれる。 

2つ以上の点電荷の作る電界

クーロン力の重ね合わせの原理と電界の定義から、それぞれの電荷がつくる電界のベクトル和を取れば良いことが分かる。電界の重ね合わせの原理という。

電界の単位

$ \vec{F}=\mathit{q}\vec{E} $、電荷$\mathit{q}$の単位はC(クーロン)、力$ \vec{F} $の単位はN(ニュートン)なので、
電界$ \vec{E} $の単位はN/C である。

電気力線とガウスの法則

電気力線とは  

電界を目で見て理解できるように工夫したのが電気力線。
電界内で正の電荷が電界から力を受けて非常にゆっくりと動く時の向きのついた軌跡(曲線)を考え、電気力線と呼ぶ。
正確には、曲線の各点における電界が、その曲線に接しているような曲線を電気力線という。

電気力線の本数と密度

ある点Pで電界の強さが$ \mathit{E}=|\vec{E}| $ であるとき、
その点の周りに電界と直交する微小な平面部分を考え、
 そこを$1m^2 $ あたり$ \mathit{E} $本の密度で電気力線が通るように描いて、電界の強さを表示する(電界の強さが、負のときは向きを逆に、また整数でなく、例えば0.1のような時は、一つの電気力線が0.1本を表すとして、図示すればよい)。


ガウスの法則

● O点に置かれた一つの点電荷$ +q $がつくる電気力線の場合;
電気力線はO点を始点とする外向きの半直線となる。
その密度;O点を中心とし半径$r$ [m]の球面上での電界の大きさは、$\mathit{E}=\frac{q}{4 \pi \varepsilon_0}\frac{1}{r^2}=\frac{kq}{r^2}$ [N/C] なので、この球面を$1m^2 $ あたり$\mathit{E}=\frac{kq}{r^2}$ 本の電気力線が、中から外に向かって、貫く。
球面の中から外に向かう電気力線の総本数;球面の面積は$ 4 \pi r^2 $ なので、球面全体を貫いて出ていく電気力線の総本数は$\frac{q}{\varepsilon_0} =4\pi kq$。球面の半径を変えてもこの本数は変わらない。大学で学ぶ少し高等な数学を利用すると、O点を含む任意の形状の立体の表面を貫いて出ていく電気力線の総数も、$\frac{q}{\varepsilon_0} $であることが示せる。
●O点を含まない任意の形状の立体の表面を考えると、O点からの半直線である電気力線がこの面から立体の中にはいると、必ず出ていくので、この立体に入る電気力線の本数は、出ていく本数と等しい。前者は負の本数と取り決めると、立体を出ていく本数の合計は0本となる。故に、電荷が内部にあろうとなかろうと任意の形状の立体の表面を貫いて出ていく電気力線の総数=$\frac{q}{\varepsilon_0} $が成立する。ここで$ q $はこの立体の内部にある点電荷。
● 重ね合わせの原理をもちいると、上記の法則は次のように、一般化出来る。
任意の形状の立体Vの表面Sを貫いて出ていく電気力線の総数=$\frac{Q}{\varepsilon_0} $。 ここで、$Q$はこの立体の内部にある全電荷量。
これをガウスの法則という。電磁気学の基本法則の一つで重要な法則である。
● ガウスの法則は電磁気学の基本法則のひとつで、色々応用されるので、理解を深めるため別の表現を記しておく。
「任意の形状の立体Vの表面Sを貫いて出ていく電気力線の総数」を、電界$\vec E$とSの各点$\vec r$に立体Vの外部にむけて立てた長さ1の垂線$\vec n(\vec r)$(Sの点$\vec r$におけるVの単位外法線と呼ぶ)を用いて表現しよう。
$\vec n(\vec r)$と$\vec E(\vec r)$が方向も向きも一致するときは、面Sは、点$\vec r$の近くの小部分$dS(\vec r)$で、$\vec E(\vec r)$と直交するので、ここを貫いて出ていく電気力線の本数はE($\vec r$)×$dS(\vec r)$の面積=$\vec E(\vec r)$の外法線成分×$dS(\vec r)$の面積。
$\vec n(\vec r)$と$\vec E(\vec r)$が方向は一致するが向きは逆の時は、点$\vec r$の近くの小部分$dS(\vec r)$で、$\vec E(\vec r)$と直交するが、電気力線は、この小部分から、立体Vに、流れ込む。その本数はマイナスで数え、-E($\vec r$)×$dS(\vec r)$の面積=$\vec E(\vec r)$の外法線成分×$dS(\vec r)$の面積。
$\vec n(\vec r)$と$\vec E(\vec r)$が角度$\theta$のとき。$\vec E(\vec r)$の、小部分$dS(\vec r)$に対する直交成分は、$\vec E(\vec r)$の外法線成分であるので、この部分を貫いて外部に出ていく電気力線の数は、この場合も、$\vec E(\vec r)$の外法線成分。
局面Sの微小部分$dS(\vec r)$を寄せ集めてS全体にすると、
「任意の形状の立体Vの表面Sを貫いて出ていく電気力線の総数」は、電界$\vec E$の外法線成分のS全体での平均値×面Sの面積となる。
従ってガウスの法則は、次のように言いかえることができる。
S上の電界$\vec E$の外法線成分のS全体での平均値×面Sの面積=$\frac{Q}{\varepsilon_0} $。
あるいは、$\varepsilon_0 \vec E$の外法線成分のS全体での平均値×面Sの面積=$Q$。

(注)これは真空中にある電荷について成立する。不導体である流体、気体中では、電荷$Q$により、勝手に分極電荷という別の電荷が誘導され、これのつくる電界が加わって電気力線の数がかわってしまうので、ガウスの法則は成り立たない。しかし分極電荷も電荷にくわえれば、ガウス法則は常に成り立つ。これについては、[| 2.5 電界中の不導体と誘電分極]で学ぶ。

ガウスの法則の応用

例1:面密度(単位面積あたりの電荷量)$\sigma $ で、一様に電荷が分布する無限に広い平面の作る電界。
ヒント 平面から距離dの点の電界は、対称性から向きはこの平面に直行し、大きさはどのでも等しい。平面から距離d以内の点のつくる正方体を考え、ガウスの法則を適用する。
解:$E=\frac{\sigma}{2 \varepsilon_0} $
例2:平行板コンダンサー(2枚の金属の薄い平板を距離dをへだてて平行に置き電極をつけたもの。dに比べ極板面積は十分大きいとする)の1枚の極板に面密度 $+\sigma $、他方の極板に面密度$-\sigma $の電荷を帯電させた時、周りに生じる電界を求めよ。
解:例1と重ね合わせの原理より、極板間では$E=\frac{\sigma}{\varepsilon_0} $, 他では零。

電位と電圧

電界中で電荷は力を受ける。その力と逆向きで同じ大きさ(実際にはそれより無限小だけ大きい)の力を与えて、単位電荷を基準とするO点からA点に(電荷の運動エネルギーが無視できるほどに)ゆっくり動かすのに必要なエネルギーを、O点を基準点としたA点の電位(electric potential) という。
前述のように点電荷のクーロン力は保存力なので、O点からA点に動かす経路に関係なく,このエネルギーは一定なので、電位は定まる。  
複雑に配置された電荷のつくる電界の場合にも、重ね合わせの原理から、電界からうける力は保存力となり、電位は経路に関係なく定まる。  

電位については以下を参照のこと。

2点間の電位の差を、電位差あるいは電圧という。

また保存力については、

を参照のこと。

電界と直交する曲線上では等電位

曲線のどの場所でも電界と直交する曲線Cを考える。この上では電位は等しいことが次のようにして示せる。
曲線上の任意の点Aから、曲線上の他の点Bまで、単位電荷を曲線にそってゆっくり移動させよう。
この時電荷に加える力は、電界と逆むきで大きさの等しい力である(これ以外に、C上をゆっくり動かすために無限に小さな力を加えたもの。しかしこれはいくらでも小さくできるので無視できる)。
しかしC上を動くときは、動く方向は、常に電界と直交するので、電荷に加える力とも直交し、仕事は零となる。したがって電位は等しい。

電位・電圧の単位

電荷の単位を[C],仕事の単位を[J]にした時の電位を、ボルトという。すなわち[V]=[J/C]。

点電荷のつくる電界の電位

電位の基準点として無限の彼方をとる。A点に置かれた+q[C]の電荷のつくる電界の電位は、A点から距離r[m]の点Pで、$\mathit{V}=\frac{q}{4 \pi \varepsilon_0 r}$ 。  これは単位の正電荷を無限遠点からP点まで、クーロン力に抗した力を加えゆっくり動かす時の力のなすエネルギーを積分計算して求めればよい。

2つ以上の点電荷の作る電界の電位

電界の重ね合わせの原理から、それぞれの点電荷のつくる電位を加えればよい。

 電気双極子 

電気双極子(electric dipole)とは、微小な距離だけ離れた、大きさの等しい正負一対の電荷のこと。  
後述するように電気双極子は自然界によく現れるので、双極子のつくる電位$\phi$を調べることは大切である。 
電荷をq,-qとし、-qからqへのベクトルを $\vec d$ とする。空間の原点を両電荷の中点に選ぶ。
位置ベクトル $\vec r$ の電位は、重ね合わせの原理より、

$\phi(\vec r)\,=\,\frac{q}{4 \pi \varepsilon_0 r_q}\,-\,\frac{q}{4 \pi \varepsilon_0 r_{-q}}\,=\,\frac{q}{4 \pi \varepsilon_0}(\frac{1}{r_q}-\frac{1}{r_{-q}})\hspace{150pt} (9-1)$
ここで、 $r_q$  は点電荷qと位置ベクトル$\vec r$ の点との距離、 $r_{-q}$  は点電荷-qと位置ベクトル$\vec r$ の点との距離。
次の説明も参考に。

 遠方に作る電位と双極モーメント 

双極子の電荷間の距離 d に比べて、ずっと離れた点 $\vec r$ の電位を簡略な式で近似しよう。
式(9.1)で $r_q$ は、点電荷 q と位置ベクトル$\vec r$ の点との距離なので、$r_q=||\vec r -\frac{\vec d}{2}||=\sqrt{\sum_{i=1}^3 |r_i-d_i/2|^2}$、同様に、$r_{-q}=||\vec r +\frac{\vec d}{2}||=\sqrt{\sum_{i=1}^3 |r_i+d_i/2|^2}$
$||\vec d|| \ll ||\vec r|| $ の時、まず、$\frac{1}{r_q}$ を簡略化する。
$\frac{1}{r_q}= 1/||\vec r -\frac{\vec d}{2}||= 1/||\vec r|| \times ||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-\frac{\vec d}{2||\vec r||}||= 1/||\vec r||\times ||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-\frac{||\vec d||}{2||\vec r||}\frac{\vec d}{||\vec d||}||$
$f(x)=1/{||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-x\frac{\vec d}{||\vec d||}||}$ という関数を導入すると
$\frac{1}{r_q}=\frac{1}{||\vec r||}f(\frac{||\vec d||}{2||\vec r||})$
ここで $\frac{||\vec d||}{2||\vec r||}$ は微小なので、$f(\frac{||\vec d||}{2||\vec r||})$ は、 $x=0$ での、$y=f(x)$ の接線の$x=\frac{||\vec d||}{2||\vec r||}$ での値$y=f(0)+f'(0)\frac{||\vec d||}{2||\vec r||}$ で精度良く近似できる。そのため、
$(9-2)\hspace{50pt} \frac{1}{r_q} \simeq \frac{1}{||\vec r||}(f(0)+f'(0)\frac{||\vec d||}{2||\vec r||}) $

ここで、
$(9-3)\hspace{150pt} f(0)=1$

$f'(0)=\lim_{x \to 0} \frac{f(x)-f(0)}{x}=\lim_{x \to 0}\frac{1}{x}(\frac{1}{||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-x\frac{\vec d}{||\vec d||}||}-1)=\lim_{x \to 0}\frac{1}{x}(\frac{1-||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-x\frac{\vec d}{||\vec d||}||}{||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-x\frac{\vec d}{||\vec d||}||}) $

$=\lim_{x \to 0}\frac{\frac{1}{x}(1-||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-x\frac{\vec d}{||\vec d||}||)}{||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-x\frac{\vec d}{||\vec d||}||}= \lim_{x \to 0}\frac{1}{x}(1-||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-x\frac{\vec d}{||\vec d||}||)= \lim_{x \to 0}\frac{1}{x}(1-||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-x\frac{\vec d}{||\vec d||}||^2)/(1+||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-x\frac{\vec d}{||\vec d||}||)$
$ =\lim_{x \to 0}\frac{1}{2x}(1-||\frac{\vec r}{||\vec r ||}-x\frac{\vec d}{||\vec d||}||^2) $ 、
上の式を $ ||\vec{a}- \vec{b}||^2=||\vec{a}||^2+||\vec{b}||^2-2\vec{a} \cdot \vec{b} $ (ここで、 $ \vec{a} \cdot \vec{b}=\sum_{n=1}^{3}a_{n}b_{n} $) 、実数αに対して$||\alpha \vec{a}||=\|\alpha \| ||\vec{a}||=$ を利用して変形すると
$ (9-4)\hspace{50pt} f'(0)=\lim_{x \to 0}\frac{1}{2x}(-x^{2}+2x \frac{\vec{r}\cdot\vec{d}}{||r||\times||d||}) =\frac{\vec{r}\cdot\vec{d}}{||r||\times||d||} $ 、
(9-2)式に、 (9-3),(9-4)式を代入して、
$(9-5)\hspace{50pt}\frac{1}{r_q} \simeq \frac{1}{||\vec r||}(1+\frac{\vec{r}\cdot\vec{d}}{2||r||^2}) $ 、
同様に計算すると
$(9-6)\hspace{50pt} \frac{1}{r_{-q}} \simeq \frac{1}{||\vec r||}(1-\frac{\vec{r}\cdot\vec{d}}{2||r||^2})$ 、
(9-1)式に、 (9-5),(9-6)式を代入すると、
$(9-7)\hspace{50pt}\phi(\vec r)=\frac{q \vec{r}\cdot\vec{d}}{4 \pi \varepsilon_0 ||r||^3} $
上の式で、$\vec{p}=q \vec{d}$ (-qからqへのベクトルを$\vec{d}$ とする) と置き一対の電荷-q、q の作る双極子モーメントと呼ぶ。これを用いると、双極子が離れた点$\vec{r}$に作る電位は、
  $ (9-8)\hspace{50pt} \phi(\vec r)=\frac{ \vec{r}\cdot\vec{p}}{4 \pi \varepsilon_0 ||r||^3} $

等電位面

電位の等しい点をつないで出来る面を等電位面という。等電位面と電気力線は直交していることが示せる。導体のすぐ外側の電界は、導体表面に垂直である。理由を考えてみてください。

静電界中の導体と静電誘導

導体に、静電界をかけると、導体内部にもこの電界が及び、導体内部の自由電子はこの電界から力を受けて移動し始める。導体の片側(電気力線の下流側)は正、その反対側は負に、帯電していき、その電荷により、外部電界を打ち消す方向の電界が発生する。この電界と外部電界の和が導体内部の電界となる。この導体内部の電界により、自由電子は力を受けて動き続けて、短時間のうちに、導体の帯電が増え、導体内部の電界は零になる。これを静電誘導という。導体の内部電界が零になると電子の移動はなくなる。詳しくは

静電遮蔽

静電界の中に置かれた、導体の箱の中の空間には、電荷が存在しない限り、電界は存在せず、電位は一定である。このように導体の箱の内部は、外部の静電界から遮蔽されている。   
問い。何故か、考察せよ。   
ヒント: 背理法で証明する。もし、箱の内部の電位が一定でないとすると、「電位は、ある内部の点pで最大値をとり、その値は導体箱の電位(一定)より大きい」か、 「ある内部の点p’で最小値をとり、その値は導体箱の電位より小さい」。前者では、p点を含む小さな立体を考えると、それを内から外へ貫く電気力線の数は正となり、ガウスの法則に反する。後者でも同様。

コンデンサー

コンデンサーは電気を蓄える道具である。

コンデンサーに蓄えられる電気量Qと電圧Vの関係

重ね合わせの原理から、コンデンサーの極板の帯電量$\pm Q$と、この電荷の作る電界は正比例する。電界と電圧も正比例するので、帯電量Qは、極板間の電圧Vに正比例する。
$Q = C V $
Cはコンデンサーの電気容量と呼ばれる。その単位は,上の式を用いて決められ、ファラッド[]と呼ばれる。$C = V/Q $ で、電位Vの単位はボルト$[V] $、電荷Qの単位はクーロン$[C] $を用いて、$[F]=[V/C]$と定める。$[V]=[Nm/C]$([N]は力の単位、ニュートン)なので$[F]=[\frac{C^2}{N m}]$とも書ける。

平行板コンデンサーの場合には、極板の面積をS,極板間の距離をdとすると、
$C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}.......(9-9) $
ここで、$\varepsilon_0 = 8.85418782*10^{-12} $[F/m] は真空の誘電率, [F/m]=$[\frac{C^2}{N m^2}]$ 。 この電気容量の式は、$Q = CV$の両辺に$d/S$をかけた式$\sigma d = CVd/S$に、$V = E d=\frac{\sigma}{\varepsilon_0}d $を代入して得られる式 $\sigma d = CEd^2/S$ に $E=\frac{\sigma}{\varepsilon_0} $ を代入し、Cについて整頓して得られる。

たくわえられるエネルギー

コンデンサーに電荷$ Q_1 $を蓄えるのに必要なエネルギーEは、$ E = \frac{1}{2} Q_1 V_1 =\frac{1}{2} C {V_1}^2$ である。 ここで、$ V_1 $は、$ Q_1 = C V_1 $を満たす値。
その理由:横軸にQ,縦軸にVをとり、$V = Q/C $ のグラフ(直線)を書く。電荷q を$0 \le q \lt Q_1 $ とし、$dq $を非常に小さい値とする。電荷量を$q$から$q+dq $まで増やすのに必要なエネルギーを求めよう。
増加する電荷dqは微小なのでこの間、極板間の電圧$v = q/C $は殆ど増加しない。そこで、この時必要なエネルギーは$ d E =v dq=(q/C) dq$ と考えられる。(下記の注を参照のこと)
$V = Q/C $ のグラフでいえば、これは、Q軸と直交する2本の直線$ Q=q, Q=q+dq $ と直線$V=0 $(Q軸)、直線$V= Q/C$ で囲まれた領域の面積にほぼ等しい。 全エネルギーEは、$ q = 0 $ で $ d E $を求め始め、$q=0+dq $ 、 $q=0+2(dq)$ 、、、、と増やして$ q=Q_1-dq$ までの$ d E $を求め。加え合わせればよい。故にE は、Q軸と直交する直線$ Q=Q_1 $ ,直線$V = Q/C$とQ軸によって囲まれる3角形の面積になる。故に$ E = \frac{1}{2} Q_1 V_1 =\frac{1}{2} C {V_1}^2$ (終わり)
(注)数学が強い方は積分計算で簡単にEを求められる。 $ E =\int_0^{Q_1}(q/C)dq=[q^{2}/2C]_0^{Q_1}=Q_1^{2}/2C= C {V_1}^2/2$

電界中の不導体と誘電分極 

不導体は、自由電子をもたないので電界のなかにおいても何の変化も起こさないように思える。しかし、 ファラデーは、コンデンサーの極板間に不導体をいれると、その容量が増すことを発見した。

ファラデーの発見した経験則と比誘電率 

コンデンサーの極板間の距離を $ d $、極板面積を$S$と置く。 厚さ$ d $、上底と下底の面積が$S$の不導体の板でコンデンサー極板間を隙間なく満たすと、コンデンサーの容量$C_{r}$ は$\varepsilon_r $倍に増える。 $C_{r} = \varepsilon_r C=\varepsilon_r \varepsilon_0 \frac{S}{d}$。 ここで、$ \varepsilon_r $は比誘電率といい、1以上の、誘電体に固有な値。

$ \varepsilon_r \varepsilon_0 $を、この不導体の誘電率と呼び、$ \varepsilon $ で表す。  

極板間を完全には満たさない薄い不導体の板をいれても、その厚さに応じて、コンデンサーの容量は増加する。

不導体表面に電荷が誘導される

ファラデーの発見した経験則をもとに、不導体に何が起こるのかを考察しよう。 
(1) 帯電増加量
極板間に不導体が入っていない時、両極板の間に電圧Vをかけると、極板にはそれぞれ$ \pm Q=\pm CV $の電荷が帯電する。
次に比誘電率$ \varepsilon_r $で厚さ$ d $の不導体をコンデンサー間に(隙間なく)挿入すると、両極板には、それぞれ$ \pm Q_{r}=\pm C_{r}V=\pm \varepsilon_r Q $の電気が貯まる。
増加した帯電量は、$ \delta Q=C_{r}V-CV= \varepsilon_r CV-CV=(\varepsilon_r-1)CV $ 。


(2) 両極板の電荷のつくる電界の大きさ
極板間に不導体が入っていない時、電荷は$ \pm Q=\pm CV $なので、極板の表面電荷密度は$ \pm \sigma =\pm Q/S=\pm CV/S $。これが極板間につくる電界$ \vec E $は、方向が正電極から負電極へむかう垂線の方向と一致し、大きさは、$E=\sigma/\varepsilon_0=Q/(S \varepsilon_0)$

不導体を挿入した場合、電荷は$ \pm Q_{r}=\pm C_{r}V= \pm \varepsilon_r Q$なので、極板の表面電荷密度は$ \pm \sigma_{r} =\pm Q_{r}/S=\pm \varepsilon_r \sigma$。これが極板間につくる電界$ \vec E_{r} $は、方向が正電極から負電極へむかう垂線の方向と一致し、大きさは、$E_{r}=\sigma_{r}/\varepsilon_0=\varepsilon_r \sigma/\varepsilon_0=\varepsilon_r E$

(3) 正極板がわの不導体の表面に負電荷が誘導され、その逆符号の電荷が負極板側の表面に誘導される
不導体を挿入したときも、極板電圧Vは変えていないので、厚さdの不導体の内部の電界の大きさは、$ V/d=E $ となっているはずである。
もし不導体に何の変化もないならば、不導体内部の電界の大きさは(2)より、$E_{r}=\varepsilon_r E$ であり、内部電界が$ E $ であることと矛盾する。
これより正極板に接する不導体の表面に、正極で増加した帯電量を相殺する$ -\delta Q=-(Q_{r}-Q)= -(\varepsilon_r-1 )Q $の負電荷が誘導され、負極板に接する不導体の表面に、負極で減少した帯電量を相殺する$ \delta Q=(Q_{r}-Q)= (\varepsilon_r-1 )Q $の正電荷が誘導されることが類推できる。この時、極板とそれに接する不導体の表面に帯電する電荷は合計すると、$ \pm Q$となり、この電荷がつくる電界の大きさはEとなり、極板間電圧はEd=Vでうまくいく。
なお、不導体の正負の表面電荷は、電界が掛かっている時だけ現れ、掛からなくなると消失する。正と負の電荷のあらわれた不導体の部分を切って、2つに分けても、それぞれに正負同量の表面電荷があらわれ、正の電荷や負の電荷を取り出すこともできない。このように電界のなかで不導体の表面に現れる電荷は、真の電荷ではない。次の節で説明するように誘電分極という現象よって誘導された電荷なので、分極電荷といい、不導体のことを誘電体とも呼ぶ。

(4)誘電体の内部の電界は外部から作用する電界と分極電荷の作る電界の和であること
不導体の表面に誘導された電荷$ \mp \delta Q=(Q_{r}-Q)= \mp(\varepsilon_r-1 )Q $は,ガウスの法則を利用した、今まで何回も使った論法により、 誘電体の内部に電界をつくり、その大きさは、$ E_p= \delta Q/(S \varepsilon_0)=\sigma_p/\varepsilon_0$、ここで $\sigma_p=\delta Q/S =(Q_r-Q)/S=\sigma_r-\sigma$は不導体の表面の分極電荷の面密度で、分極電荷密度あるいは分極の大きさという。電界の方向は、$ \vec E_{r}$と逆向き。
故に、$ \vec E_{r}+\vec{E_{p}}$の大きさは、$E_{r}-E_{p}=\sigma_{r}/\varepsilon_0-\sigma_p/\varepsilon_0= (\sigma_{r}-\sigma_p)/\varepsilon_0=(\sigma_{r}-(\sigma_r-\sigma))/\varepsilon_0=\sigma/\varepsilon_0 =E$で、向きは$ \vec E_{r}$の向きと等しい($\vec E$の向きと同じ)。故に、$ \vec E_{r}+\vec{E_{p}}=\vec E$

(5)誘電体に外部から作用する電界$ \vec E_{r}$,分極の大きさ$\sigma_p$と誘電体の内部の電界$\vec E$の関係
$\sigma_p=\sigma_r-\sigma=(Q_r-Q)/S=(C_r-C)V/S=(\varepsilon_r-1)CV/S=(\varepsilon_r-1)CEd/S$
上の式に$C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}.......(9-9) $ を代入し、整頓すると、
$\sigma_p=(\varepsilon_r-1)\varepsilon_0 E$;分極の大きさと誘電体の内部の電界の関係
$\vec E_{r}=\varepsilon_r \vec E$;誘電体に外部から作用する電界と誘電体の内部の電界の関係  
$\sigma_r=Q_r/S=C_rV/S=\varepsilon_r CEd/S$に$C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}$ を代入し整頓すると、
$\sigma_r=\varepsilon_0 \varepsilon_r E $あるいは $E=\sigma_r/\varepsilon_0 \varepsilon_r $;比誘電率$\varepsilon_r $の不導体を挿入したコンデンサーの電極電荷と不導体内部の電界の大きさの関係。

誘電分極 

では、何故コンデンサーの電極間に挿入された(電界のかかった)不導体の表面に、電荷が現れるのだろうか?  
電界が掛かると誘電体を作っている原子の中の電子達(負電荷-q)と原子核(正電荷;+q)は電界から互いに逆の力をうける。不導体では(自由電子がなく)すべての電子は原子核と電気力で引き合っている(ばねで引き合っているかのように)。このため電界の大きさに比例して上流側に電子が、下流側に原子核がづれて、電界からの力と電気力が釣り合ったところで止る。づれた電子達の電荷総量$ -q $の重心から原子核の重心へのベクトルを $\vec d$と置くと、その向きは、多くの元素では、電界の向きと一致する。誘電体の各原子は双極子モーメント$\vec{p}=q\vec{d}=qd\vec{E}/E$を持つ、電気双極子になる。 
この現象を誘電分極(dielectric polarization)という。  
単位体積中の双極子モーメントの和を $\vec{P}$ と書き、単位体積あたりの双極モーメントと呼ぶ。不導体の単位体積中の原子数をNとすると、$\vec{P}=Nq\vec{d}=Nqd(\vec{E}/E)$

誘電体の各原子が、向きの揃った電気双極子になると、誘電体の表面の原子中でも、(電子から見ると)電界$\vec{E} $ 方向に、距離$d=||\vec{d}|| $ だけ正電荷q がずれるので、電気力線の上流側の誘電体の表面には、負電荷が現れ、下流側の誘電体表面には、正電荷が現れる。誘電体の内部は、誘電体の外部から見る限り、正負の電荷が打ち消し合って、電気を持たないように見える。

一つの原子は移動可能電荷$\pm q $をもち単位体積中にN個の原子があるので、巨視的にながめると、不導体中に(流体のように)単位体積あたり$\pm Nq $の電荷が一様に分布している。電界のかからないときは、正と負の電荷が、ぴったりかさなって、打ち消し合い帯電してないようにふるまうが、電界がかかると負電荷は電界の上流側に全く形を変えないで少し移動し、正電荷は電界の下流方向に少し移動(負電荷からみると正電荷は$\vec{d}$だけ移動)し、不導体のそれどれの表面に電荷があらわれる。
この議論から、分極電荷は表面から、いくらかの厚さをもった部分に現れることがわかったが、非常に薄いので、表面に分布する電荷のように扱う。

単位体積あたりの双極モーメントが$\vec{P}$ の不導体の表面の分極電荷密度 

コンデンサーの例で、考える。
極板間に挿入された不導体に極板電荷のつくる電界が作用して不導体の原子が分極して、$q\vec{d}$という双極モーメントを持つとする。単位体積あたりの双極モーメントは、単位体積当たりの原子数をNとして、$\vec P=Nq\vec{d}$となる。
導体の各表面の$\vec{d}$方向(多くの不導体では$\vec{E}$方向に同じ)に長さ$d$の範囲にわたって電荷が誘導される。
正の極板に接する不導体の面は、$\vec{d}$と直交するので、深さ$d$までの領域が負に帯電。

不導体の単位表面あたりの深さdまでの体積は$d$なので、電荷密度-Nqをかけて、$-Nqd=\vec{P}$がこの浅い領域の誘導電荷量となる。
この電荷は、$d$が小さいので、表面電荷密度とみなせる。

同様に、負の極板に接する不導体の面では、$ Nqd = ||\vec{P}|| $が表面電荷密度。
他方、$\sigma_p$も電極に接する不導体表面に現れる誘導電荷密度なので、$\sigma_p = Nqd = ||\vec{P}|| $。これが、単位体積あたりの双極モーメントが$\vec{P}$ の不導体の表面の分極電荷密度である。 

次に一様な電界$\vec{E}$に、任意の方向に置かれた誘電体の単位体積あたりの双極モーメントが$\vec{P}$であるとき、誘電体の表面に現れる分極電荷を算出しよう。

誘電体の表面の単位長の外法線(表面に直交し、誘電体内部から外部に向かう、単位長さのベクトル)を$\vec{n}$と書くと、

その表面に現れる、分極電荷の面密度$\sigma_p$ は、$\vec P \cdot \vec n$ であることが導ける。

電束と電束密度

電荷Qの作る電界中に不導体があると、電界の下流側と上流側の面にそれぞれ正、負同量の分極電荷が現れて、電荷Qの作る電界を弱める電界をつくり、不導体中の電界は、両者の和になる。このため、不導体中の電界は外部の電界より弱くなる。電気力線の本数は、電界の強さに比例するようにとりきめたので、不導体の中では本数は急減してしまう。このため、電荷を内部に含む立体の表面の一部あるいは全部が不導体に含まれる場合、立体表面を貫く電気力線の本数は$\frac{Q}{\varepsilon_0} $より少なくなってしまい、[ガウスの法則]は成り立たないように見える。
しかし、これは電界が分極電荷のつくる電界も加えたものなのに電荷は分極電荷をくわえてないためにおこった現象であり、電荷として真の電荷だけでなく分極電荷も考慮すれば、ガウスの法則は成立する。
「立体を貫く電気力線の本数は$\frac{Q+Q_{p}}{\varepsilon_0} $となる。
 ここで$Q_{p}$は、この立体に含まれる分極電荷の総量。しかし$Q_{p}$は測定も難しく、この方法は手間がかかる。そこで電気力線に代わって不導体中でも量の変わらないものを考え、ガウスの法則をその量を使って記述することを考える。

 点電荷の電束と電束密度 

点電荷qがある時、そこから(実際には流れるものはないが)qに等しい流体のようなものが湧き出し、電気力線にそって色々な方向に流れると考える。各方向への流量は、電界の強さに比例して配分されると考える。この流れを電束といい、その量を電束量と呼ぼう

qを中心とする半径rの球面Sでの単位面積当たりの電束量を求めよう。qという量の電束が点電荷から湧き出し、放射状の電界にそって流れ出し、球面Sを通り抜けるが、この球面上では、電界の大きさは等しい(E=$q/4\pi r^2 \varepsilon_0$)ので、どの方向にも等しい密度で流れることがわかる。そこで球面Sの単位面積当たりの電束量は、qをSの面積で割った、$q/4\pi r^2$となる。 これは、$\varepsilon_0 E$に等しい。

次に、電束の密度と方向を与える、電束密度ベクトル(単に電束密度とも呼ぶ)を次のように定める。
電荷qを原点とする位置ベクトル$\vec r$の点での電束密度ベクトルとは、ベクトルの方向は電気力線の向き(=電界の向き)、その大きさは、その点をとおり、電気力線と直交する小平面$ds$をとり、そこを単位面積あたりとおり抜ける電束の量で、定義する。

真空中のガウスの法則は、Vを球や立方体などの立体、Sをその表面(=閉局面)とすると、
$\varepsilon_0 \vec E $ の外法線成分のS全体での平均値×面Sの面積=q。ここで、qはこの立体の内部にある点電荷量
であった。
そこで真空中では、$\varepsilon_0 \vec E $が電束密度ベクトルであり、局面Sの一部である局面$\delta S$を貫き電束は、
$\varepsilon_0 \vec E $ の外法線成分の$\delta S$全体での平均値×面$\delta S$の面積となる。

$ds$は小さいので、qを中心とする半径r=$||\vec r||$の球面にほぼ、のっているため、球面の一部と考えてよい。電界の大きさはこの球面(面積$4\pi r^2$)上で一定なので、電束密度もこの球面上で一定で、$q/4\pi r^2$。そこで$ds$上でも電束密度は$q/4\pi r^2$。  

 静磁気

古代ギリシアでは、鉄を引き寄せる石として磁石はすでに知られていた。現代では、磁石や磁気現象は多くの機器で利用されている。

磁石

磁石にはN極とS極という2種の磁荷がある。これらの磁極は単独で存在することはなく、必ず両極が一緒になって磁石を構成する。 詳しくは

これまでのところ、磁荷は電荷とことなり、N極だけの磁荷やS極だけの磁荷は発見されていない。そこで、現在は単磁極は存在しないという仮説のもとで理論が作られている。

磁荷のクーロン則

磁荷のあいだにも、電荷と同じ形式の力が働く。

磁荷の単位

真空中の磁荷A,Bの距離が1mのときに、$6.3 \times 10^4[N] $の力が生じ、かつ、A,Bの大きさが等しい時の磁荷の大きさを1Wb(1ウェーバ)ときめる。

磁界と磁力線

電荷の場合と全く同じように、磁荷の間の力を近接作用としてとらえる。すると、磁荷によって周りの空間は磁気的に歪み(磁界あるいは磁場という)、ここに他の磁荷を置くと、その点の磁界によって力を受けると考えられる。各点における磁界は、その点に1WbのN極を置いたときに受ける磁気力で定義する。従って、磁界の単位は[N/Wb] となる。
● 磁力線:N極の磁荷を正の電荷に対応させると、電界に対応して電気力線を考えたように、磁界にたいして磁力線を考えることができる。

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