物理/平面と空間,ベクトル

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8.1 平面と空間のベクトル

目次

平面と空間,ベクトル

平面や空間への直観を重視し、幾何学的な説明をする。

以後、物理数学の説明では、集合についての初歩的知識を使う。
また定理等の証明では、(数理的)論理とくに一階述語論理の初等的知識が必要になる。
集合と論理の導入部については

を読んでください。
この本では、不十分なので、以下に若干補足する。

(数理的)論理

数学的な議論は、(幾つかの)真の命題から他の真の命題を導く推論の連続である。
ここで、命題(proposition)というのは、内容の真偽が客観的に確定する文(叙述、言明)あるいは式のこと。
これらの推論に共通に用いられる論理的推論法を、
記号を用いて表現し数学的に研究するのが、数理的論理学である。

命題論理

述語論理

集合について

以下の説明では、集合についてのごく初歩的知識を使うので、なじみのない方は、
集合の素朴な定義と集合の表記法、
集合Aの補集合 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-403-QINU、
2つの集合A,Bの包含関係すなわち,  AとBが等しい A=B, AはBの部分集合 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-404-QINUあるいはUNIQ4050f992019db6c-MathJax-405-QINU、
AはBの真の部分集合 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-406-QINU 

および、
2つ以上の集合の演算(AとBの和集合UNIQ4050f992019db6c-MathJax-407-QINU、共通集合UNIQ4050f992019db6c-MathJax-408-QINU、差集合UNIQ4050f992019db6c-MathJax-409-QINU、対称差集合UNIQ4050f992019db6c-MathJax-410-QINU、直積UNIQ4050f992019db6c-MathJax-411-QINU)
などについて、以下の記事で学習してほしい。

集合の演算規則

A,B,C,D等は集合とする。
命題1 (交換法則) 集合の和、共通部分、対称差 という演算は交換可能である。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-412-QINU数式で書けば UNIQ4050f992019db6c-MathJax-413-QINU
命題2 (結合法則)UNIQ4050f992019db6c-MathJax-414-QINU(注参照)
命題3(分配法則) UNIQ4050f992019db6c-MathJax-415-QINU
命題4 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-416-QINU
命題5 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-417-QINU
命題6 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-418-QINU

(注)対称差についても結合法則 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-419-QINUは成立する。
興味ある方は証明して下さい。

平面と空間

我々は、太古の昔から自分たちの暮らすこの世界は、縦、横、高さをもつ3次元の空間であり、
この空間なかの、縦、横をもち、高さのない平らな無限の拡がりを平面として認識してきた。
この空間や平面、その中にある色々な図形の性質を厳密に理解しようとして、
平面幾何学や立体幾何学(ユークリッド幾何学)を生み出してきた。
この中で考えられた平面や空間は、2次元および3次元のユークリッド空間と呼ばれる。
下記の記事中の「序文」と「1. 直観的な説明」をお読みください。

また、この章の「2. 我々の住む空間の数学的モデル(1)」も御覧ください。

ベクトルの和と実数倍

空間の異なる2点、P,Qを通る直線は必ず一本あり、一本に限られる。
これを直線UNIQ4050f992019db6c-MathJax-420-QINUという。
この直線で、PとQの間にある部分だけを考えるとき、線分UNIQ4050f992019db6c-MathJax-421-QINUという。
この線分に向き(矢印で表示)をつけたものを有向線分UNIQ4050f992019db6c-MathJax-422-QINUという。
この有向線分と長さと方向・向きの等しい有向線分を全て同一なものとみなすと
ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-423-QINUが得られる。
詳しくは、
2章力学の「有向線分からベクトルへ」を参照のこと。

ベクトルの和や実数倍については2章力学の1節で説明したが、重要なので 証明は除いて、定義と性質だけを再度記載する。

2つのベクトルの和

和の定義

定義;2つのベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-424-QINUとベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-425-QINUの和を、次のように定義する。
・UNIQ4050f992019db6c-MathJax-426-QINU,UNIQ4050f992019db6c-MathJax-427-QINUと表現して、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-428-QINU;

・和の別の定義;
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-429-QINU,UNIQ4050f992019db6c-MathJax-430-QINUと表現する。  
有向線分UNIQ4050f992019db6c-MathJax-431-QINUと有向線分UNIQ4050f992019db6c-MathJax-432-QINUを2辺とする平行四辺形UNIQ4050f992019db6c-MathJax-433-QINUを作る。
すると、 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-434-QINU;
が成り立つ。
この両者は同値である。

和の性質

UNIQ4050f992019db6c-MathJax-435-QINU ; 交換法則 

UNIQ4050f992019db6c-MathJax-436-QINU ;結合法則 

零ベクトルの存在

零ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-437-QINUが存在し、 すべてのベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-438-QINUに対して、 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-439-QINU
が成り立つ。

逆元の存在

任意のベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-440-QINUは、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-441-QINUを満たすベクトルを
一つ、そして一つだけ持つ。
これをUNIQ4050f992019db6c-MathJax-442-QINUの逆元(逆ベクトル)と言い、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-443-QINUで表す。
それは、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-444-QINUと大きさ、方向が同じで、向きが逆のベクトルである。
定義から、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-445-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-446-QINU と表現しておくと、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-447-QINU と表現できる。

ベクトルの引算

任意のベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-448-QINU から、任意のベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-449-QINU を引いたベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-450-QINUを、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-451-QINU
で定義する。

ベクトルの実数倍

UNIQ4050f992019db6c-MathJax-452-QINUを任意の実数とする。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-453-QINUが零ベクトルでない時、そのUNIQ4050f992019db6c-MathJax-454-QINU倍、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-455-QINUは次のように定義する。
・UNIQ4050f992019db6c-MathJax-456-QINUが正数のとき;UNIQ4050f992019db6c-MathJax-457-QINUは、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-458-QINUと方向・向きは同じで、大きさがUNIQ4050f992019db6c-MathJax-459-QINU倍であるベクトルで定義する。
・UNIQ4050f992019db6c-MathJax-460-QINUのとき;UNIQ4050f992019db6c-MathJax-461-QINUで定義する。
・UNIQ4050f992019db6c-MathJax-462-QINUのとき;UNIQ4050f992019db6c-MathJax-463-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-464-QINUのときは、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-465-QINUとする。
このように定義すると、
ベクトルの実数倍がベクトルとして定まる。
次の諸法則が成り立つ。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-466-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-467-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-468-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-469-QINU

 内積とノルム

内積とノルムは物理学で良く使われる。
本テキストで必要となる命題と証明を紹介する。
以下では、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-470-QINUは、すべて同じ次元(2か3)のベクトルとし、 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-471-QINUは実数とする。
なお、全ての命題は、4次元以上のベクトルに対しても成り立つが省略する(注参照)。
座標成分表示が必要な命題では、直交座標系表示を用いる。
(注)n次元(>3)も含めた一般のn次元ベクトルの内積は、後述の命題2

 2-ノルムと内積の定義

実ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-472-QINUの2-ノルム(あるいはユークリッドノルム)とは、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-473-QINUのことで、
ベクトルの長さ(大きさ)を表す。
実ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-474-QINUの内積とは
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-475-QINU
ここで、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-476-QINUは、ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-477-QINUのなす角(UNIQ4050f992019db6c-MathJax-478-QINU )である。
この定義から、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-479-QINU
であることが分かる。

以後、単にノルム、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-480-QINU とかけば、2-ノルムであるとする。

 内積とノルムの性質

命題1
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-481-QINU
証明;内積の定義から明らか。

命題2
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-482-QINU
ここでUNIQ4050f992019db6c-MathJax-483-QINUはそれぞれUNIQ4050f992019db6c-MathJax-484-QINUのx座標成分、同様に、添え字2はy座標成分、3はz座標成分
直交座標系はどんなものでも良い。しかしすべてのベクトルは同じ座標系で座標成分表示しなければならない。
証明
次の三角形の余弦定理を利用する。
三角形の第2余弦定理;
図のようなUNIQ4050f992019db6c-MathJax-485-QINUを考える。
頂点A,B,Cの対辺の長さをそれぞれUNIQ4050f992019db6c-MathJax-486-QINUとし、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-487-QINUとする。
すると、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-488-QINU
余弦定理の証明;頂点UNIQ4050f992019db6c-MathJax-489-QINUから対辺UNIQ4050f992019db6c-MathJax-490-QINUにおろした垂線の足をUNIQ4050f992019db6c-MathJax-491-QINUとする。
ピタゴラスの定理により、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-492-QINU。UNIQ4050f992019db6c-MathJax-493-QINU 右辺の第2項に、再び、ピタゴラスの定理を適用して、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-494-QINU UNIQ4050f992019db6c-MathJax-495-QINU UNIQ4050f992019db6c-MathJax-496-QINUを代入すると、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-497-QINU,UNIQ4050f992019db6c-MathJax-498-QINU UNIQ4050f992019db6c-MathJax-499-QINUなので、代入すると
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-500-QINU
余弦定理の証明終わり。
命題2の証明  
ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-501-QINUとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-502-QINUを、
始点が点UNIQ4050f992019db6c-MathJax-503-QINUである有向線分で表現し、その終点をUNIQ4050f992019db6c-MathJax-504-QINU,UNIQ4050f992019db6c-MathJax-505-QINUで表す。
するとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-506-QINU, UNIQ4050f992019db6c-MathJax-507-QINUである。
ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-508-QINUを導入すると、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-509-QINU
3角形UNIQ4050f992019db6c-MathJax-510-QINUを考え、第2余弦定理を適用しよう。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-511-QINUとおく。すると、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-512-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-513-QINUが得られる。
この式を変形してUNIQ4050f992019db6c-MathJax-514-QINUだけを左辺に置くと、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-515-QINU 。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-516-QINUなので、

UNIQ4050f992019db6c-MathJax-517-QINU
この右辺を、ベクトルの直交座標成分で表すと、次式が得られる。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-518-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-519-QINU
命題2の証明終わり。

命題3
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-520-QINU   
証明
ある一つの直交座標系をさだめ、両辺を、命題2を利用して、座標成分であらわす。両辺が等しいことが分かる。

系; UNIQ4050f992019db6c-MathJax-521-QINU   
証明;命題1を利用して、左辺の項の順番を入れ替え、命題3を適用し、再び命題1を用いればよい。

命題4
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-522-QINU
が成り立つ。
証明
同様に、3つの式を、座標成分表示すれば、みな等しいことが、簡単に分かる。

命題5(シュワルツの不等式)
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-523-QINU
証明;UNIQ4050f992019db6c-MathJax-524-QINUなので内積の定義から、ただちに分かる。

命題6 ノルムの三角不等式
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-525-QINU
証明
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-526-QINU
命題3を使って計算すると、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-527-QINU
命題5より、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-528-QINU
故にUNIQ4050f992019db6c-MathJax-529-QINU
両辺の平方根をとれば所要の不等式を得る。

 一般のノルムの定義とノルムの同等性 

定義
n次元ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-530-QINU に対し、実数値 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-531-QINU を対応させる関数は、

次の3つの条件(ノルム条件という)を満たすならばノルムと呼ばれる。

1)UNIQ4050f992019db6c-MathJax-532-QINU 

2)UNIQ4050f992019db6c-MathJax-533-QINU 
3)任意の実数UNIQ4050f992019db6c-MathJax-534-QINUに対し、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-535-QINU


ノルムと呼ばれるものには、いろいろなものがある。
例えば

p‐ノルム(UNIQ4050f992019db6c-MathJax-536-QINU); UNIQ4050f992019db6c-MathJax-537-QINU
以下未完成

UNIQ4050f992019db6c-MathJax-538-QINU;


などがある。
2‐ノルムは、p=2の場合である。
これ等のノルムの間には次の順序関係が成り立つ。

定理
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-539-QINU

系;
p をⅠより大きい実数、あるいは UNIQ4050f992019db6c-MathJax-540-QINU とする。
ベクトル列 (UNIQ4050f992019db6c-MathJax-541-QINU が、p-ノルムでベクトル UNIQ4050f992019db6c-MathJax-542-QINU に収束する
必要十分条件は
1-ノルムで収束することである。式でかくと
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-543-QINU

次の定理は2-ノルムの場合のシュワルツの不等式の一般化である。

定理
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-544-QINU とする。qを UNIQ4050f992019db6c-MathJax-545-QINU を満たす実数とすると、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-546-QINU
である。
但し、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-547-QINU とする。

ベクトル積 

本節での全ての命題で、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-548-QINUは3次元ベクトル
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-549-QINUを実数とする。

命題7
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-550-QINU を, UNIQ4050f992019db6c-MathJax-551-QINUと垂直な成分UNIQ4050f992019db6c-MathJax-552-QINU と,平行な成分UNIQ4050f992019db6c-MathJax-553-QINU の和に分解するとき、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-554-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-555-QINU
証明;ベクトル積の定義から、容易に示せる。
2つのベクトルの作る平行四辺形の面積と方向・向きを考えれば良い。

命題8
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-556-QINU
証明;2つのベクトルを入れ替えても、それらが作る平行四辺形の面積は変わらず、この四辺形に直交する直線の方向も変わらない。
しかし、ベクトル積の向きは、逆向きになる。
ベクトル積の定義から、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-557-QINU が示せた。

命題9
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-558-QINU 
証明;実数UNIQ4050f992019db6c-MathJax-559-QINU が正、零、負の場合に分けて考える。
いずれの場合にも, ベクトル積の定義とベクトルと実数の積の命題から、容易に証明できる。

命題10 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-560-QINU 
証明;
この証明には少し工夫が必要である。
ベクトル積の命題の中でも、もっとも大切なものなので、詳しく説明しよう。
① UNIQ4050f992019db6c-MathJax-561-QINU とUNIQ4050f992019db6c-MathJax-562-QINU が直交する場合。図参照のこと
・議論をやさしくするため、ベクトルを、空間の原点UNIQ4050f992019db6c-MathJax-563-QINU を始点とする有向線分で代表させる。
・UNIQ4050f992019db6c-MathJax-564-QINU と直交しUNIQ4050f992019db6c-MathJax-565-QINU を通る平面をUNIQ4050f992019db6c-MathJax-566-QINUとする。
・仮定よりUNIQ4050f992019db6c-MathJax-567-QINUは、ともに平面UNIQ4050f992019db6c-MathJax-568-QINU上のベクトルである。
・UNIQ4050f992019db6c-MathJax-569-QINUも、
ベクトル積の定義により、共にUNIQ4050f992019db6c-MathJax-570-QINU と直交するので、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-571-QINU上のベクトルである。
これら四つのベクトルはすべて平面UNIQ4050f992019db6c-MathJax-572-QINU上にあるので、今後の議論はこの平面上で進める。
 ⅰ)UNIQ4050f992019db6c-MathJax-573-QINU の張る平行四辺形は,
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-574-QINUの張る平行四辺形を、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-575-QINU倍し,原点周りに90度回転したものになることを、示そう。

・UNIQ4050f992019db6c-MathJax-576-QINUは、ベクトル積の定義から、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-577-QINU と直交する。
そのため、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-578-QINU を平面UNIQ4050f992019db6c-MathJax-579-QINU上で、原点まわりに、90度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致する。
・UNIQ4050f992019db6c-MathJax-580-QINUも、同様に考え、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-581-QINU を平面UNIQ4050f992019db6c-MathJax-582-QINU上で、原点まわりに、90度右回りか、左回りすれば、方向と向きが一致することが分かる。
・どちら周りの回転になるかは、ベクトル積の定義によって決まるが、
後者の回転の向きが、前者の回転の向きと一致することが分かる。
・UNIQ4050f992019db6c-MathJax-583-QINU の大きさは、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-584-QINU なので、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-585-QINU の大きさのUNIQ4050f992019db6c-MathJax-586-QINU倍になる。
同様に、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-587-QINU の大きさは、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-588-QINU の大きさのUNIQ4050f992019db6c-MathJax-589-QINU倍になる。
・以上の結果より、所望の結果は示された。

 ⅱ)UNIQ4050f992019db6c-MathJax-590-QINUを示そう。
・ ⅰ)と同じ議論により、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-591-QINUはUNIQ4050f992019db6c-MathJax-592-QINUの張る平行四辺形の対角線を、原点周りに90度、同じ向きに回転させ、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-593-QINU倍させたものであることが分かる。
・すると、ⅰ)で示したことから、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-594-QINUは
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-595-QINU の張る平行四辺形の対角線UNIQ4050f992019db6c-MathJax-596-QINU に等しいことが分かる。
・以上で①が示せた。

② 一般の場合。
命題1より、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-597-QINU をUNIQ4050f992019db6c-MathJax-598-QINUと垂直な成分を表すとすると、 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-599-QINU(1)
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-600-QINUなので、(1)式は、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-601-QINU
①より、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-602-QINU UNIQ4050f992019db6c-MathJax-603-QINU 命題4の証明終わり。
 

命題10の系  
   UNIQ4050f992019db6c-MathJax-604-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-605-QINU
証明;
命題8より、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-606-QINU 命題9から
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-607-QINU 命題4より、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-608-QINU
再び命題8より、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-609-QINU前半の証明終わり
命題8より、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-610-QINU
再び命題8より、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-611-QINU UNIQ4050f992019db6c-MathJax-612-QINU証明終わり。
  命題11
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-613-QINU を
それぞれ大きさ(長さ)1で互いに直交し、右手系をなす、ベクトル(右手系をなす正規直交基底)とする。

この時、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-614-QINU
証明;ベクトル積とUNIQ4050f992019db6c-MathJax-615-QINU の定義から明らかである。

命題12
ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-616-QINUを,命題5で用いた基底UNIQ4050f992019db6c-MathJax-617-QINUで決まる座標を用いて
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-618-QINU と表示しておく。
するとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-619-QINU 
証明;UNIQ4050f992019db6c-MathJax-620-QINU,
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-621-QINUと表せるので、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-622-QINU 命題3の系から
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-623-QINU UNIQ4050f992019db6c-MathJax-624-QINU (1)
式(1)の第1項 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-625-QINU に UNIQ4050f992019db6c-MathJax-626-QINU を代入して、命題3の系を使って変形すると、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-627-QINU UNIQ4050f992019db6c-MathJax-628-QINU (2)
命題10と命題11を使うと、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-629-QINU 。
同様の計算を行うと、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-630-QINU

UNIQ4050f992019db6c-MathJax-631-QINU
式(2)にこれらを代入して、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-632-QINU UNIQ4050f992019db6c-MathJax-633-QINU (3)

式(1)の第2項、第3項も同様に計算すると、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-634-QINU UNIQ4050f992019db6c-MathJax-635-QINU (4)

UNIQ4050f992019db6c-MathJax-636-QINU UNIQ4050f992019db6c-MathJax-637-QINU (5)

式(3),(4),(5) を、式 (1)に代入すると、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-638-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-639-QINU
命題12の証明終わり。
命題13
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-640-QINU
証明
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-641-QINUを証明しよう。
残りも、同様に証明出来るので各自試みてください。
右手系をなす一つの直交座標系を決める。
3つのベクトルを、この座標系で成分表示して、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-642-QINU  とする。
命題12から、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-643-QINU
内積の定義から
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-644-QINU 
これを整頓すると
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-645-QINU UNIQ4050f992019db6c-MathJax-646-QINUも、これと同じように計算すると同じ式になる。
命題13の証明終わり。

定義
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-647-QINU を3つのベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-648-QINU の行列式(determinant)という。

ファイル:GENPHY00010801-01.pdf
図 3つのベクトルの張る平行6面体の体積

この3つのベクトルの張る平行4面体の、符号付の体積である(図参照)。

命題13の系1
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-649-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-650-QINU

命題13の系2
3つの空間ベクトルを、ある右手系をなす直交座標系の成分で表示して
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-651-QINU  とする。
この時、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-652-QINU の行列式は
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-653-QINU

この式は、命題13の証明のなかで導出されている。

命題13の系3
行列式UNIQ4050f992019db6c-MathJax-654-QINU は、3つのベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-655-QINUの双線形関数である。すなわち
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-656-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-657-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-658-QINU
ここで、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-659-QINU は任意の実数、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-660-QINUは任意の3次元ベクトルである。

命題14
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-661-QINU
証明
ベクトル積の定義を用いると、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-662-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-663-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-664-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-665-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-666-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-667-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-668-QINU
証明終わり
(注) この公式の覚え方。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-669-QINU は UNIQ4050f992019db6c-MathJax-670-QINU、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-671-QINUの両方に直交、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-672-QINU は UNIQ4050f992019db6c-MathJax-673-QINU と直交。
これから、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-674-QINU は UNIQ4050f992019db6c-MathJax-675-QINU と UNIQ4050f992019db6c-MathJax-676-QINUが張る(一次結合)ベクトルであることが分かる。
この係数が他の2つのベクトルの内積であることだけを記憶しておくと、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-677-QINU
各項の符号は、

命題14の系1
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-678-QINU
従って、一般に外積は結合法則を満たさない。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-679-QINU
証明
命題8から
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-680-QINU
この右辺に命題14を適用すると、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-681-QINU
証明終わり

命題14の系2
1)UNIQ4050f992019db6c-MathJax-682-QINU
2)UNIQ4050f992019db6c-MathJax-683-QINU
証明
1) UNIQ4050f992019db6c-MathJax-684-QINU とおくと、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-685-QINU
命題14から
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-686-QINU
行列式の定義から、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-687-QINU
故に、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-688-QINU
2)は、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-689-QINU とおくと,
命題14の系1を用いて、同様にして証明できる。

命題14の系3
1)UNIQ4050f992019db6c-MathJax-690-QINU
2)UNIQ4050f992019db6c-MathJax-691-QINU
証明
1) UNIQ4050f992019db6c-MathJax-692-QINU とおくと、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-693-QINU
行列式の性質から、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-694-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-695-QINU の定義式を代入して
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-696-QINU
命題14の系1を適用して、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-697-QINU
内積の性質から
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-698-QINU
1)が示せた。
2)も、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-699-QINU とおけば、同様にして証明できる。

行列

行列Aとは, mn個の数 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-700-QINU を m 行、n 列に並べた
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-701-QINU
のことをいう。行と列の数を明示したいときは、m×n行列という。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-702-QINUは、行列Aの第i行、第j列の要素という。
ベクトルの各座標成分を横に並べて表示した
n次元の横ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-703-QINUは1行n列の行列とみなす。
同じく、ベクトルの各座標成分を縦に表示した,n次元縦ベクトル
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-704-QINU
は、n行1列行列とみなす。

 転置行列

行列の行と列を入れ替える操作を転置といい、記号Tで表す。
上記の行列Aの行と列を入れ替えた行列をAの転置行列といい、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-705-QINU で表す。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-706-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-707-QINU である。

 行列の教科書の紹介 

行列を用いると連立一次方程式は、
一変数の一次方程式UNIQ4050f992019db6c-MathJax-708-QINUと同じ形式UNIQ4050f992019db6c-MathJax-709-QINUで表現され、
その解も一変数の一次方程式の解UNIQ4050f992019db6c-MathJax-710-QINUと同じ形式の UNIQ4050f992019db6c-MathJax-711-QINU で与えられる。
(注)|A| は行列Aの行列式(determinant)である。
下記の教科書や行列式(ウィキペディア)を参照のこと。

このほかにも行列は、多くの数理的な分野で欠かせない武器となり、独自の重要な分野となっている。
以下の文献で学習のこと。

さらに深く学びたい方は、次節の線形代数学をどうぞ。

 我々の住む空間の数学的モデル(1)

この節では概要だけを記述するので、イメージをつかめれば良い。
詳しくは次節で説明する。

(1)私たちの住む(宇宙)空間UNIQ4050f992019db6c-MathJax-712-QINUを無限に点(場所)が集まってできる集合と考える。
この空間では、経験によると、以下の諸事実が成り立つ。
①この空間のどのような2点UNIQ4050f992019db6c-MathJax-713-QINUをとっても、
その2点を通る直線は必ず一本あり、一本に限る(直線の公理。注参照)。
直線UNIQ4050f992019db6c-MathJax-714-QINUと書く。
2点UNIQ4050f992019db6c-MathJax-715-QINUは、この直線上にあるので、その長さ(距離)は物差しなどで測れる。

(注)公理とは、経験上自明と思われるが、それ以上簡単な事実から証明出来ないため、
正しいと認めた命題のこと。
「点」や「直線」、「通る」などの言葉は
意味が分かっているという前提に立ち、その意味を定義しないで用いる。
点や直線、通るなどの表現がでてくる公理をすべて満たすものとして、
その性質が正確に規定される。無定義語という。

②直線UNIQ4050f992019db6c-MathJax-716-QINUは空間全体を覆わないので、直線外の空間の点UNIQ4050f992019db6c-MathJax-717-QINUをとれる。
3点UNIQ4050f992019db6c-MathJax-718-QINUを通る平面が常に唯一つ存在する(平面の公理1)。
これを平面UNIQ4050f992019db6c-MathJax-719-QINUと書こう。
平面は、この面上にある2点を通る直線を含む(平面の公理2)。
空間の中のどの平面上でもユークリッドの平面幾何学は成り立つ(空間UNIQ4050f992019db6c-MathJax-720-QINUの性質)。
直線UNIQ4050f992019db6c-MathJax-721-QINUと直線UNIQ4050f992019db6c-MathJax-722-QINUは、平面UNIQ4050f992019db6c-MathJax-723-QINU上の直線であり、角度UNIQ4050f992019db6c-MathJax-724-QINUがきまる。
③空間の中の異なる2直線UNIQ4050f992019db6c-MathJax-725-QINUとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-726-QINUの間には次の3つの関係のうちのいずれか一つ(しかも一つだけ)が成り立つ。
 ⅰ)交わる(この時は2直線は同一平面上にあることが、
直線と平面の公理から簡単に証明出来る。
 ⅱ)同一平面上にあるが交わらない(平行という)。
 ⅲ)同一平面上にない。
平行な2直線は、同じ方向であるという。
④平面UNIQ4050f992019db6c-MathJax-727-QINUも空間全体を覆わないので、空間にはこの平面外の点UNIQ4050f992019db6c-MathJax-728-QINUが存在する。
⑤空間の2点UNIQ4050f992019db6c-MathJax-729-QINUを結ぶ線分UNIQ4050f992019db6c-MathJax-730-QINU(直線UNIQ4050f992019db6c-MathJax-731-QINUの、点PとQの間の部分)に
PからQに向けた向きを付けた有向線分UNIQ4050f992019db6c-MathJax-732-QINUを考える。
これはP点からみたQ点の位置を、
P点からQ点を見たときの方向・向きと距離で表したもの。
Q点が、P点から見て、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-733-QINUの方向・向きおよび距離の点であることを
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-734-QINUと表す。
次にQ点からUNIQ4050f992019db6c-MathJax-735-QINUの方向・向きおよび距離にある点UNIQ4050f992019db6c-MathJax-736-QINUを考える 。
点Rは元の点PからUNIQ4050f992019db6c-MathJax-737-QINUの方向・向きおよび距離の位置にある。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-738-QINUで、2つの有向線分の和を定義すると
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-739-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-740-QINUそこでUNIQ4050f992019db6c-MathJax-741-QINUと決めておけば
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-742-QINU
となり、3点の位置関係が正しく表現出来ることが分かる。
⑥P点を始点とするすべての有向線分を要素とする集合を
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-743-QINU
と記す。するとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-744-QINU
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-745-QINUとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-746-QINUはどのような関係にあるだろうか。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-747-QINUの任意の要素UNIQ4050f992019db6c-MathJax-748-QINUと
方向・向きと大きさが等しく、始点がQである有向線分を作ってみよう。
異なる3点UNIQ4050f992019db6c-MathJax-749-QINUを通る平面は常に唯一つ存在する。
この平面上で、ユークリッド幾何学を使い、
平行四辺形UNIQ4050f992019db6c-MathJax-750-QINUを作ることが出来る。
するとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-751-QINUであり、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-752-QINUはUNIQ4050f992019db6c-MathJax-753-QINUと方向・向きは同じで、大きさ(長さ、距離)も等しい。
2つの有向線分が、方向・向きと大きさが同じならば、 ある点からみた他の点の位置を、有向線分の方向・向きと大きさで指定するかぎり、 2つの有向線分は同じ点を指定する。そこで方向・向きと大きさが等しい2つの有向ベクトルは同一視して、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-754-QINUと書く。

すると経験上、空間UNIQ4050f992019db6c-MathJax-755-QINUはつぎの性質を持つことが分かっている。
空間UNIQ4050f992019db6c-MathJax-756-QINUの公理;
空間UNIQ4050f992019db6c-MathJax-757-QINUの任意の2点P,Qを考える。 UNIQ4050f992019db6c-MathJax-758-QINUの任意の要素には、
それとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-759-QINUの関係にある、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-760-QINUの要素が一つ対応する。
逆に
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-761-QINUの任意の要素には、
それとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-762-QINUの関係にある、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-763-QINUの要素が一つ対応する。

そこで、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-764-QINU関係のある有向線分を、おなじものと考えると
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-765-QINUとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-766-QINUは同じ集合になる。
すなわちUNIQ4050f992019db6c-MathJax-767-QINU関係のある有向線分を、おなじものと考えると
どの点から空間を見た時も、
空間のすべての点を表すのに必要な、有向線分(方向・向きと距離の集まり)は、
皆同じである。

定義: 方向・向きと長さの等しい有向線分を(始点は異なっても、) 同じものとみなした時、有向線分をベクトルと呼ぶ。

記号で書くと、
有向線分UNIQ4050f992019db6c-MathJax-768-QINU 有向線分UNIQ4050f992019db6c-MathJax-769-QINU 
<==>
ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-770-QINU ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-771-QINU

今後はUNIQ4050f992019db6c-MathJax-772-QINUを有向線分とみなすときは、有向線分UNIQ4050f992019db6c-MathJax-773-QINU と書き、
ベクトルとみなす時は単にUNIQ4050f992019db6c-MathJax-774-QINUと書いて区別する。

空間の性質から、ベクトルの集合とみたUNIQ4050f992019db6c-MathJax-775-QINUは皆等しくなる。
これをベクトル集合UNIQ4050f992019db6c-MathJax-776-QINUで表す。
⑦空間の性質1
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-777-QINUの2つのベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-778-QINUを、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-779-QINUと表現すると、
ベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-780-QINUの和は
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-781-QINUで定義する。
この和はP点に関係なく、唯一つのベクトルを定めることが証明できる。
和の交換則と結合則が成り立つ。
ベクトルの実数倍も定義出来る。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-782-QINUは線形空間(ベクトル空間ともいう)になる。
これ等はユークリッド幾何学を用いて証明出来る。
⑧ 線形空間UNIQ4050f992019db6c-MathJax-783-QINUは3次元空間
P点から空間を眺めると、②で述べたように
Pを通る平面UNIQ4050f992019db6c-MathJax-784-QINUが存在する。
この平面上には、P点で交わる2本の直線UNIQ4050f992019db6c-MathJax-785-QINUとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-786-QINUが存在する。
そこで2つのベクトルUNIQ4050f992019db6c-MathJax-787-QINUとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-788-QINUを考える。
すると,平面上の任意の点RをP点から見たときの方向・向き、距離UNIQ4050f992019db6c-MathJax-789-QINUは、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-790-QINUとUNIQ4050f992019db6c-MathJax-791-QINUの線形結合UNIQ4050f992019db6c-MathJax-792-QINU
で表せる。ここで、UNIQ4050f992019db6c-MathJax-793-QINUは、適当な実数である。
逆に、任意の線形結合UNIQ4050f992019db6c-MathJax-794-QINUに対し、
平面上に点Rが定まり、
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-795-QINU
この事実はユークリッド幾何学を用いて容易に示すことができる。
平面は、このように2つのベクトルで表せるので2次元と呼ぶ。
空間は、平面UNIQ4050f992019db6c-MathJax-796-QINUで覆われないので、平面外の点Sがとれる。
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-797-QINUは線形結合UNIQ4050f992019db6c-MathJax-798-QINUでは表せない。
我々の住む空間の公理2
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-799-QINUは実数UNIQ4050f992019db6c-MathJax-800-QINU
空間UNIQ4050f992019db6c-MathJax-801-QINUを点をすべて記述するには
3つの独立なベクトルを用いなければならないので
UNIQ4050f992019db6c-MathJax-802-QINUは3次元空間とも呼ばれる。

⑩3次元空間の座標と座標表示
この空間には座標系を考えるができる。
ベクトルの座標表示をすると、ベクトル演算を数の計算に帰着でき便利である。

ベクトルを直交座標表示して、数の計算に帰着すると、
座標の直交性が役立ち、計算が大変簡単になる。

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